JP3744152B2 - プラスチック気泡シートおよびその製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック気泡シートの改良に関し、その気泡シートを製造する装置にも関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンに代表されるプラスチックを材料とし、多数の凹みを設けたフィルム(「キャップフィルム」とよばれる)と、平坦なフィルム(「バックフィルム」とよばれる)とを貼り合わせて製造した、多数の密閉された気泡を有するシートが、主として包装用の緩衝材として広く使用されている。 用途に応じて気泡の大きさに種々のグレードがあり、気泡の頂にもう1枚のプラスチックフィルム(「ライナーフィルム」とよばれる)を貼り合わせて3層構成にしたものもある。 こうしたプラスチック気泡シートの多くは長尺の巻物の形で出荷され、長手方向および(または)幅方向の切断、打ち抜き、折り畳みなどの二次加工を受けて使用される。
【0003】
そのような二次加工品の寸法精度に対する要求は、用途によってさまざまなレベルがある。 たとえば、紙封筒の内面にこの気泡シートのライニングを施したものが、内容物の保護機能をもった「緩衝封筒」として製造・販売されており、この用途に向ける気泡シートの切断品は、寸法精度が低いと封筒内で気泡シートの端が紙から離れていたり、あるいは折り重ね部分にはみ出したりして、商品価値を損なう。 菓子類の容器とする缶の中敷きや上敷きにする気泡シートも、小さすぎては機能が不完全になるし、大きすぎては缶に納まらないから、精度よく切断や打ち抜きをしなければならない。
【0004】
ところが、気泡シート二次加工品の寸法精度は、これまで、高めることが困難であった。 その理由を追求したところ、長尺の巻物から気泡シートを繰り出して二次加工するとき、ピンチロールの引取り速度と繰り出しに対する抵抗との関係で、気泡シートに加わる張力がさまざまに変化し、それに応じて気泡シートが伸縮するためであることがわかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、従来のプラスチック気泡シートにおいて不可避であった、二次加工時の伸び縮みに起因する低い製品寸法精度を改善し、所要の精度をもった二次加工品を得ることが容易なプラスチック気泡シートを提供することにある。
【0006】
本発明の第二の目的は、このようなプラスチック気泡シートを製造するに適した装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラスチック気泡シートは、図1に示すように、プラスチックフィルムに多数の凹みを設けたキャップフィルムと、平坦なプラスチックフィルムであるバックフィルムとを貼り合わせ、多数の密閉された気泡を形成したプラスチック気泡シート(1A)の長尺の製品において、各気泡(2)が、形状は、低い円柱状体であって、寸法は、直径Dが6〜50 mm 、高さが2〜30 mm であり、配置は、長手方向に関しては直線上にあるが、幅方向には千鳥状であり、配置のピッチが、長手方向には(1.1〜1.5)D、幅方向には(1.0〜1.5)Dであることを特徴とする。
【0008】
従来の製品は、図2に示すように、千鳥状に配置された気泡(2)が幅方向に関して直線上に並ぶ気泡シート(1B)であった。 千鳥状の配置は、単位面積あたりの気泡の密度を高め、十分な緩衝能力を得る上で、どうしても選択せざるを得ない配置である。 図2の従来の配置では、引張り応力を受けて比較的変形しやすい気泡部分と比較的変形しにくい貼り合わせ部分とがジグザグに存在するため、長手方向に引張り応力が加わったとき応力分散が生じやすく、わずかな引張り応力でも長手方向によく伸びる。 これに対して、本発明に従う千鳥状配置の気泡シートでは、図1にみるとおり、長手方向の応力に対して気泡部分と貼り合わせ部分とが直列に並んでいて、しかも長手方向の直線上の気泡の間隔がせまいため、応力分散が生じ難く、同じ引張り応力に対しても生じる伸びが小さい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のプラスチック気泡シートは、気泡の配置以外の点は、従来品と同様に製造できる。つまり、材料としては、常用のポリエチレンをはじめ、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロンそのほか多種類のプラスチックが使用できる。
【0010】
上記のプラスチック気泡シートを製造する本発明の装置は、図3に全体の構成を示すように、プラスチックを溶融して押し出す押出機(図示してない)、2個のTダイ(3a,3b)、一方のTダイ(3a)から押し出されたプラスチックフィルムを真空成形して多数の凹みを設けることによりキャップフィルム(CF)を成形するための、真空吸引手段に連なる多数の凹みを備えた成形ロール(4)、他方のTダイ(3b)から押し出された平坦なプラスチックフィルムであるバックフィルム(BF)を、上記キャップフィルム(CF)に上記成形ロール(4)上で押圧して融着させ、気泡シートを形成させるためのプレスロール(5)、および形成された気泡シート(1A)を引き取る引取手段(6)から本質的に形成される装置において、成形ロール(4)の多数の凹み(41)が、形状は、低い円柱状体であって、寸法は、直径Dが6〜50 mm 、高さが2〜30 mm である気泡を形成するものであり、ロールの円周に沿う多数の直線上にあるが、幅方向には千鳥状に配置されていて、配置のピッチが長手方向には(1.1〜1.5)D、幅方向には(1.0〜1.5)Dであることを特徴とする。
【0011】
上記の気泡シート製造装置には、この分野で知られている技術を任意に適用できる。たとえば、図3に示してあるように、バックフィルム(BF)を押し出すTダイ(3b)からキャップフィルム(CF)との融着を行なうプレスロール(5)に至る間に、フィルムをいったん冷却する冷却ロール(8)と、冷却されたフィルムを再加熱して熱融着性を回復させるための再加熱ロール(9)とを有し、再加熱ロールを冷却ロールよりわずかに高い回転速度で運転して、バックフィルム(BF)が押し出し方向に若干の延伸を受けるように構成した態様である。この態様は、低密度ポリエチレンのように加工しやすいプラスチックを材料とし、しかも気泡製品が多少の剛性をもった、いわゆる「腰のある」ものを得ようとする場合に実施されており、本発明においても採用可能である。
【0012】
従来のプラスチック気泡シートがおしなべて図2にみるような気泡の配置を行なっていたのは、装置製造の都合によるものであった。 すなわち、キャップフィルム製造のための真空成形ロールにキャビティを設ける手法は、これまで伝統的にボール盤を使用した手作業によっていた。 その作業は、ロール表面をいくつかに分割した寸法の、断面が円弧の一部をなす材料を固定しておき、それに対してキャビティの孔をあけ、工具を軸方向にずらしながら、一定間隔で孔をあけて行くという仕事の繰り返しである。
【0013】
ところが、近年の機械加工技術の進歩により、NC制御のマニシングセンターを使用することにより、手作業によらずコンピュータで割り出した位置にもとづく高精度の孔あけ作業をすることが可能になった。 本発明の装置の特徴をなす真空成形ロールは、このようにして、図1に示した気泡の配置を実現した。
【0014】
円周方向の直線上に気泡を成形するためのキャビティを設けることは、一周に設けるキャビティの数を、偶数であれ奇数であれ、任意にえらぶことを容易にする。 上記した従来装置の製造方法によるときは、円周面をいくつかに(通常8個ないし24個)等分割した素材を対象とするため、周方向には偶数個のキャビティが並んだものでなければ製作が困難で、実際上は不可能に近かった。
【0015】
このことは、比較的小さい気泡をもつ気泡シートを製造する装置においてはあまり問題でないが、大きな気泡をもつ真空成形ロールの製作に当たっては問題が大きくなる。 たとえば、外径300mm程度の真空成形ロール上に直径30mmのキャビティを並べようとすると、円周は約942mmであるから、その間隔を10mmとろうとすると(ピッチ40mm)、23.5個という半端な数字となるから、24個を選択せざるを得ない。 その結果、気泡の間隔は9.2mmにされてしまう。 本発明のように円周の直線上にNC制御ボール盤を用いてキャビティを設けて行けば、24個はもちろん23個(気泡の間隔は10.9mm)とすることが可能である。 従って、この方が設計の自由度が高い。
【0016】
【実施例】
外径300mm×長さ1200mmの真空成形ロールに、直径10mm×深さ4mmのキャビティを、円周上のピッチ11.49mm、軸方向のピッチ10.0mmで94個設け、このキャビティ列が軸方向に110個、つまり約1100mmにわたって存在するように設けた。 これは、従来の真空成形ロールのキャビティ配置を90°転換したものである。
【0017】
この真空成形ロールを使用し、常用の低密度ポリエチレンを材料として、図3に示す冷却−再加熱のロールの組を有する装置で、気泡シートを製造した。 両耳の部分を化粧裁ちして、幅1200mm×長さ200mの気泡シートの巻物をつくった。
【0018】
いったん巻物とした気泡シート製品を対象に、ピンチロールで引き出しながら、流れに沿った方向、すなわち長手方向には丸刃スリッターで100mm幅にスリットし、続いて200mmの間隔で、ギロチン刃をそなえた自動カッター幅方向に切断して、長さ200mm×幅100mmの長方形の裁断製品を得た。
【0019】
製品100枚について長手方向の寸法のバラツキをしらべたところ、±2.3%以内であった。 同じ裁断装置を用いて、同じ気泡の大きさとピッチであるが従来の気泡配置すなわち図2の配置をした気泡シートを加工したときは、バラツキを±5%以下におさめるのは容易でなかった。
【0020】
【発明の効果】
本発明のプラスチック気泡シートは、従来品と異なる気泡の配置を選択することによって、長尺の製品を二次加工するに当り長手方向の伸びが小さいから、切断や打ち抜きにおいて、高い寸法精度をもった加工品を得ることができる。 従って、前に挙げた、緩衝封筒の内張りや菓子の缶の敷物のような、高い寸法精度を求められる需要にも、容易にこたえることができる。 長手方向の伸びが小さいということは、当然に幅方向の縮みも少ないということを意味する。
【0021】
上記の効果はまた、要求精度が高くない場合に関しては、二次加工に当って高精度の装置を用いる必要がないとか、特別の注意や熟練を要しない、といったメリットに結びつく。 具体的には、打ち抜き加工を行なっていた製品を切断加工に切り替えることができ、抜き型が不要になる、といった利益をもたらす。
【0022】
ピンチロ−ルで気泡シ−トをくわえて引張るとき、従来の気泡の配置では幅方向に一列に並んだ気泡の列をロ−ルが次々と乗り越えて行くことになる結果、接触が断続的になってガタツキ感が生じる。 本発明に従った気泡の配置であれば、ロ−ルは長手方向に並んだ一列おきの気泡の組のいずれかに乗っているので、接触は連続的であって、ガタツキはない。 このことも、ピンチロ−ルによる引張に当って生じるバラツキを小さくし、結果として寸法精度を向上させるのに役立っている。
【0023】
装置の特徴をなす真空成形ロールは、高い設計の自由度を得ることができ、所望の気泡サイズおよび配置の気泡シート製品の製造を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプラスチック気泡シートの気泡の配置を示す平面図。
【図2】 従来のプラスチック気泡シートの気泡の配置を示す平面図。
【図3】 従来のプラスチック気泡シートの製造装置の構成を示す説明図。
【図4】 図3の装置の一部をなす成形ロールについて、成形用の凹みの配置を示す平面図。
【符号の説明】
1A 本発明のプラスチック気泡シート
1B 従来のプラスチック気泡シート
L 長手方向 W 幅方向
2 気泡
3a 一方のTダイ(キャップフィルム用)
3b 他方のTダイ(バックフィルム用)
4 真空成形ロール
41 成形用の凹み
5 プレスロール
6 引取りロール
7 巻物
8 冷却ロール
9 再加熱ロール
CF キャップフィルム
BF バックフィルム

Claims (3)

  1. プラスチックフィルムに多数の凹みを設けたキャップフィルムと、平坦なプラスチックフィルムであるバックフィルムとを貼り合わせ、多数の密閉された気泡を形成したプラスチック気泡シートの長尺の製品において、各気泡が、形状は、低い円柱状体であって、寸法は、直径Dが6〜50 mm 、高さが2〜30 mm であり、配置は、長手方向に関しては直線上にあるが、幅方向には千鳥状であり、配置のピッチが、長手方向には(1.1〜1.5)D、幅方向には(1.0〜1.5)Dであることを特徴とするプラスチック気泡シート。
  2. プラスチックを溶融して押し出す押出機、2個のTダイ、一方のTダイから押し出されたプラスチックフィルムを真空成形して多数の凹みを設けることによりキャップフィルムを成形するための、真空吸引手段に連なる多数の凹みを備えた成形ロール、他方のTダイから押し出された平坦なプラスチックフィルムであるバックフィルムを、上記キャップフィルムに上記成形ロール上で押圧して融着させ、気泡シートを形成させるためのプレスロール、および形成された気泡シートを引き取る引取手段から本質的に形成される装置において、成形ロールの多数の凹みが、形状は、低い円柱状体であって、寸法は、直径Dが6〜50 mm 、高さが2〜30 mm である気泡を形成するものであり、ロールの円周に沿う多数の直線上にあるが、幅方向には千鳥状に配置されていて、配置のピッチが長手方向には(1.1〜1.5)D、幅方向には(1.0〜1.5)Dであることを特徴とするプラスチック気泡シートの製造装置。
  3. バックフィルムを押し出すTダイからキャップフィルムとの融着を行なうプレスロールに至る間に、フィルムをいったん冷却する冷却ロールと、冷却されたフィルムを再加熱して熱融着性を回復させるための再加熱ロールとを有し、再加熱ロールを冷却ロールよりわずかに高い回転速度で運転して、バックフィルムが押し出し方向に若干の延伸を受けるように構成した請求項2のプラスチック気泡シートの製造装置。
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