JP3744004B2 - 電動式パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は電動式パワーステアリング装置に関する。
車両の電動式パワーステアリング装置として、補助操舵トルクとなる電動モータの回転出力を歯車装置により減速して、操舵機構の出力軸に適当なトルクと速度とを伝達するように構成したものが知られている。ところで、このような電動式パワーステアリング装置においてその作動時に、歯車装置の駆動歯車と被駆動歯車との間で生ずる騒音が問題となっている。このような騒音を防止する方法として、駆動歯車と被駆動歯車の少なくとも一方において、円筒形の芯金の周りに樹脂製の歯を形成し、それにより歯車噛合時の騒音を減少することも知られている。
ところが、このような芯金樹脂歯製の歯車においては、樹脂の線膨張係数が金属に比して大きいため、歯車の歯先円から芯金外径までの樹脂肉厚を比較的厚めに設定すると、以下の問題点が生じる。すなわち高温雰囲気内で使用する場合、芯金樹脂歯製歯車の樹脂部が著しく膨張するため、歯車のバックラッシュ量が減少して、歯車周りの伝達効率が低下するとともに摺動部の摩耗量も増大する。一方、高温雰囲気内で使用することを前提にバックラッシュ量を定めた場合、使用条件が低温雰囲気内に変わったとき、芯金樹脂歯製歯車の樹脂部が著しく収縮するため、歯車のバックラッシュ量が許容量を超えて増大し、歯車の噛合音の増大や動力伝達遅れ等を招来する。
本願発明は、芯金樹脂歯製歯車を用いた場合において、雰囲気温度が変化するような条件下でも、歯車間の適切なバックラッシュを維持することのできる電動式パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく、本願発明の第1の態様による電動式パワーステアリング装置は、
ハウジングと、
該ハウジングに取り付けられ、回転軸を有するモータと、
該モータの回転軸に連結された駆動歯車と、
該ハウジングに回転自在に支持された出力軸と、
被駆動歯車とからなり、
該被駆動歯車が、前記駆動歯車と噛合する歯を形成した弾性体製の外周部と、該外周部を支持し前記出力軸に連結された金属製の円筒部とからなり、
前記円筒部と前記出力軸は支持部を構成し、該ハウジングの線膨張係数を該駆動歯車の線膨張係数より高くし、
該駆動歯車の線膨張量と該支持部の線膨張量と該外周部の線膨張量との和を、該ハウジングの線膨張量に等しくなるようにした電動式パワーステアリング装置である。
また、本願発明の第2の態様による電動式パワーステアリング装置は、
ハウジングと、
該ハウジングに取り付けられ、回転軸を有するモータと、
該モータの回転軸に連結された駆動歯車と、
該ハウジングに回転自在に支持された出力軸と、
被駆動歯車とからなり、
該被駆動歯車が、前記駆動歯車と噛合する歯を形成した弾性体製の外周部と、該外周部を支持し前記出力軸に連結された金属製の円筒部とからなり、
前記円筒部と前記出力軸は支持部を構成し、該外周部の線膨張係数を該駆動歯車の線膨張係数より高くし、
該駆動歯車の線膨張量と該支持部の線膨張量と該外周部の線膨張量との和を、該ハウジングの線膨張量に等しくなるようにした電動式パワーステアリング装置である。

(作用)
本願発明の電動式パワーステアリング装置によれば、被駆動歯車の外周部の肉厚が、各部の線膨張係数に関連して適切に設定されてなるために、雰囲気温度が変化した場合においても、歯車間の適切なバックラッシュを維持することができる。
以上述べたように、本願発明の電動式パワーステアリング装置によれば、被駆動歯車の外周部の肉厚が、各部の線膨張係数に関連して適切に設定されてなるために、雰囲気温度が変化した場合においても、歯車間の適切なバックラッシュを維持することができる。
[実施例]
以下、本願発明の実施例を図面を参照して以下に詳細に説明する。
図1は、本願発明の実施例である電動式パワーステアリング装置100の軸線方向一部断面図である。
図1において、電動式パワーステアリング装置100は、ハウジング101とそれから延在するチューブ120とから構成されている。ハウジング101はブラケット114により、またチューブ120はブラケット115により車体(図示せず)に固定されている。チューブ120の内側には、一端をステアリングホイール(図示せず)に連結するようになっている入力軸121が延在し、チューブ120に対して回転自在に支持されている。入力軸121の他端はトルク検出装置112に連結している。
トルク検出装置112はまたハウジング101内を延在し、回転自在に支持されている出力軸103に連結されている。出力軸103は図示しない操舵装置に連結され、車輪を操舵するトルクを伝達するようになっている。トルク検出装置112は、入力軸121と出力軸103との相対トルクを検出し、それにより補助操舵力を適切に制御すべく設けられているが、その構成についてはよく知られており、以下に詳細は記載しない。
トルク検出装置112の近傍において、出力軸103にウォームホイール111が同軸に取り付けられている。ウォームホイール111は、図1において紙面に垂直方向に延在している伝達軸130のウォームギヤ130b(図2参照)と噛合している。伝達軸130は、モータ102(図2参照)の回転軸に連結されている。
図1に示す電動式パワーステアリング装置100の作用について以下に説明する。図示しないステアリングホイールからの操舵トルクの入力により、入力軸121が回転し、回転トルク検出装置112を介して出力軸103に回転トルクが伝達される。出力軸は上述したように操舵装置(図示せず)に連結されており、操舵のためのトルクを伝達するようになっている。この場合において、回転トルク検出装置112で検出されたトルクの値は、図示しない判断回路に送られ、そこで所定値と比較される。該トルクが所定値を超えた場合には、補助操舵力を必要とする場合であるので、モータ102を駆動すべく駆動指令が出される。駆動指令により駆動されたモータ102は伝達軸130を回転させ、更にウォームホイール111を介して出力軸103に回転トルクが伝達される。
回転トルク検出装置112で検出されたトルクの値が所定値より低い場合には、補助操舵力は不要であるので、モータ102は駆動されない。
図2は、図1のII-II 線に沿って切断して得られた電動式パワーステアリング装置の要部断面図である。図2において、アルミニウム製のハウジング101の右端に、電動モータ102が取り付けられている。電動モータ102の回転軸(図示せず)は、雌セレーション部(図示せず)を有している。一端に雄セレーション部130aを形成した伝達軸130は、該セレーション部同士の係合により電動モータ102の回転軸に連結され一体的に回転するようになっている。
両端を、軸受104、105によりハウジング101に対して回転自在に支持された伝達軸130は、中央部に駆動歯車であるウォームギヤ130bを形成している。なお、ウォームギヤ130bは、通常の構造用鋼であるS20Cから作られている。右側の軸受104は、間座106、107によりハウジング101に対して軸線方向移動を制限されており、左側の軸受105は、間座108を介してネジ部材109により右方へ押圧されている。この構成により、軸受104、105に適宜予圧を印加することができる。なお、ロックナット110は、ネジ部材109の緩み止めである。
ウォームギヤ130bの上方には、被駆動歯車であるウォームホイール111が設けられている。ウォームホイール111は、S20C製の芯金部(金属性の円筒部)111aの周りに、ポリアミド系樹脂であるナイロン製(弾性体製)の外周部111bを接着した構成となっている。図2では一部のみ示すが、外周部111bの円周部にはウォーム歯111cが形成されている。ウォームホイール111は、出力軸103に連結され一体的に回転するようになっている。出力軸103は、図示しない操舵機構に連結されている。
図3は、図2の電動式パワーステアリング装置をIII-III 線に沿って切断して得られた図であり、ハウジング101については省略している。図3に示す幾何学的関係から、以下の式が得られる。
1+r2=CD (1)
ここで、
1:ウォームギヤ130bの噛合半径
2:ウォームホイール111の噛合半径
CD:ウォームギヤとホイールの軸間距離
である。
更に、ギヤとハウジングの線膨張量が一致すれば、温度変化に関わらず理論的にバックラッシュの変化はゼロとなるのであるから、ウォームギヤ130bの線膨張量[r1 ・k1 ]と、ウォームホイールの外周部111bの線膨張量[(r2 −r3 )・k2 ]と、ウォームホイールの芯金部111aの線膨張量[r3 ・k3 ]とを加えたものが、ハウジング101の線膨張量[CD・k4 ]と等しくなるべきである。よって、以下の式が得られる。
1・k1 +(r2 −r3)・ k2 +r3・k3 =CD・k4 (2)
ここで、
1 :ウォームギヤ130bの線膨張係数
2 :ウォームホイールの外周部111bの線膨張係数
3 :ウォームホイールの芯金部111aの線膨張係数
4 :ハウジング101の線膨張係数
3 :芯金部111aの半径
である。
(1)、(2)式より、
2(k2−k1)−r3(k2−k3)=CD・(k4−k1) (3)を得る。
2−r3は、ウォームホイールの外周部111bの歯底から芯金部111aの外径までの距離であるから、これに歯丈hkを足したものが外周部111bの肉厚tとなる。すなわち、t=hk +r2−r3と表せる。この式及び(1)式を(3)式に代入すると、
外周部111bの肉厚tは、t=hk +{(CD−r)・(k−k)+CD(k−k)}/(k−k)で表される。
ウォームギヤ130bとウォームホイールの芯金部111aの材質が同じ場合には、k1=k3となり、これを上式に代入すると、t=hk+CD・(k4−k1)/(k2−k1)となる。
あるいは、本実施例では、ウォームギヤ130bとウォームホイールの芯金部111aは、材質が同じであるから、k1=k3となり、これを(3)式に代入して、r2−r3=CD・(k4−k1)/(k2−k1) (4)を得る。r2−r3は、ウォームホイールの外周部111bの歯底から芯金部111aの外径までの距離であるから、これに歯丈hk を足したものが外周部111bの肉厚tとなる。よって、樹脂製の外周部111bの肉厚は、t=hk+CD・(k4−k1)/(k2−k1
なるように設定すれば良い。
ちなみに、本実施例においては、
1=1.17×10-5/°C (S20C)
2=9×10-5/°C (ナイロン)
4=2.36×10-5/°C (アルミニウム)
k=1.68mm
CD=33mm
であるから、上記式よりt=6.695≒6.7mmとなる。
以上、本願発明を実施例を参照して説明してきたが、本願発明は上記実施例に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、弾性体の実施例としてポリアミド系樹脂を代表するナイロンを用いたが、他の樹脂材料もしくは天然ゴムも使用可能である。更に、金属材料として一般構造鋼であるS20Cを用いたが、他の金属材料も上記式を満たすかぎり使用可能である。ただし、ハウジング材料は、歯車の金属部よりも線膨張係数が高くなくてはならない。
本願発明の実施例である電動式パワーステアリング装置の軸線方向要部断面図である。 図1のII-II 面に沿って装置を切断して得られた断面図である。 図2のIII-III 面に沿って装置を切断して得られた断面図である。
符号の説明
101………ハウジング
102………モータ
103………伝達軸
111………ウォームホイール

Claims (2)

  1. ハウジングと、
    該ハウジングに取り付けられ、回転軸を有するモータと、
    該モータの回転軸に連結された駆動歯車と、
    該ハウジングに回転自在に支持された出力軸と、
    被駆動歯車とからなり、
    該被駆動歯車が、前記駆動歯車と噛合する歯を形成した弾性体製の外周部と、該外周部を支持し前記出力軸に連結された金属製の円筒部とからなり、
    前記円筒部と前記出力軸は支持部を構成し、該ハウジングの線膨張係数を該駆動歯車の線膨張係数より高くし、
    該駆動歯車の線膨張量と該支持部の線膨張量と該外周部の線膨張量との和を、該ハウジングの線膨張量に等しくなるようにした電動式パワーステアリング装置。
  2. ハウジングと、
    該ハウジングに取り付けられ、回転軸を有するモータと、
    該モータの回転軸に連結された駆動歯車と、
    該ハウジングに回転自在に支持された出力軸と、
    被駆動歯車とからなり、
    該被駆動歯車が、前記駆動歯車と噛合する歯を形成した弾性体製の外周部と、該外周部を支持し前記出力軸に連結された金属製の円筒部とからなり、
    前記円筒部と前記出力軸は支持部を構成し、該外周部の線膨張係数を該駆動歯車の線膨張係数より高くし、
    該駆動歯車の線膨張量と該支持部の線膨張量と該外周部の線膨張量との和を、該ハウジングの線膨張量に等しくなるようにした電動式パワーステアリング装置。
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