JP3743549B2 - ポリウレタン組成物、ポリウレタン繊維、及びポリウレタン繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素酸化物(NOx)による変色劣化に対して安定化されたポリウレタン組成物、ポリウレタン繊維、及び該ポリウレタン繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイソアネート、比較的低分子量のポリマージオール及び低分子量の多官能性活性水素化合物から製造されるポリウレタンは、機械的性質が優れること、加工しやすいこと等の理由から、フォーム、エラストマー、塗料、合成皮革、繊維等の広い用途に用いられている。中でもポリイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネートを用いて得られたポリウレタンは、力学的性質が特に優れていることから広く用いられている。しかしながら、芳香族イソシアネートから得られるポリウレタンは特に窒素酸化物(NOx)による変色が特に著しいという欠点がある。NOxは、燃焼ガスや排気ガス中に含まれ、極めて微量でもポリウレタンの著しい変色を引き起こす。そのため、NOxによるポリウレタンの変色を抑制することは古くより検討されてきた課題であった。NOxによるポリウレタンの変色劣化を抑制するための安定剤として、例えば亜リン酸エステル系酸化防止剤、脂肪族アミン誘導体やヒドラジン誘導体などの変色防止剤などが知られている。この中でも、亜リン酸エステル系酸化防止剤や脂肪族アミン誘導体としてのヒンダードアミン化合物などが、安定化効果が特に高いことから広く用いられている。
【0003】
しかしながら、亜リン酸エステル系酸化防止剤やヒンドードアミン化合物はポリウレタンの熱酸化劣化を抑制する効果が小さいため、加工安定性や耐熱性を付与するためには、フェノール系酸化防止剤との併用が必要である。ポリウレタンの安定剤として、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤、ヒンダードアミン化合物の3 種類の安定剤を併用することは、既に公知であり、ポリウレタンの変色劣化に対して極めて優れた効果を有する。しかしながら、これらの安定剤を配合したポリウレタン組成物を、例えば繊維における染色加工のような二次加工を施した場合に、その安定化効果が著しく損なわれることがしばしばあった。このように二次加工によって安定化効果が失われてしまうようなポリウレタン組成物は、最終製品として変色や劣化といった不都合を起こす危険性が大きく重大な欠点を有するものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
亜リン酸エステル系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びヒンダードアミン化合物とを配合したポリウレタンは劣化に対して高い安定性を示すものの、各種加工によってその安定化効果が失われてしまう場合があった。本発明が解決しようとする課題は、中間製品のみならず、染色加工などの後加工を経た最終製品であっても、NOxによる変色劣化に対して充分に安定化されたポリウレタン組成物又はポリウレタン繊維の提供である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、ポリウレタンに、(a)フェノール系酸化防止剤、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤、及び(c)ヒンダードアミン化合物を配合したポリウレタン組成物において、ヒンダードアミン化合物として、特定のヒンダードアミン化合物を用いることで、染色加工のような後加工を経た後での安定化効果が高まることを見い出した。さらに、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤としてそれぞれ特定の化合物を用いると、さらに高い安定化効果が得られること、加えて本発明のポリウレタン組成物から得られるポリウレタン繊維が、NOxによる変色劣化に対して後加工を経た後でも高度に安定化されていることを見い出し、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、ポリウレタンに対して、(a)フェノール系酸化防止剤と、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤と、(c)ヒンダードアミン化合物とを配合してなる組成物であって、ヒンダードアミン化合物が、下記一般式(5);
【化11】
〔上記一般式中において、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。R3は水素原子又はメチル基を表す。R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。X1は−O−基、又は−NH−基を表す。〕で表される群より選ばれる1種又は2種以上の混合物のラジカル重合性ヒンダードアミン誘導体単量体成分(D3)
【0006】
及び下記一般式(6);
【化12】
〔上記一般式中において、R5は水素原子又はメチル基を表す。R6は炭素数5〜10の飽和のシクロアルキル基を表す。Y1は−O−基、又は−NH−基を表す。〕で表される群より選ばれる1種又は2種以上の混合物のラジカル重合性単量体成分(F2)とを必須成分としてラジカル共重合して得られるヒンダードアミン化合物であって、該ヒンダードアミン化合物中の成分(D3)及び成分(F2)の重量分率が、下記数式(7)及び(8);
80≦(W D3 +W F2 )≦100 数式(7)
0.5≦(W D3 ÷W F2 )≦2.3 数式(8)
〔上記数式中、W D3 は成分(D3)の重量%、W F2 は成分(F2)の重量%を表す。〕を満たすことを特徴とするヒンダードアミン化合物であるポリウレタン組成物であり、並びに、ポリウレタンに対して、(a)フェノール系酸化防止剤と、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤と、(c)ヒンダードアミン化合物とを配合してなる組成物であることを特徴とするポリウレタン組成物であり、並びに、ポリウレタンに対して、(a)フェノール系酸化防止剤と、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤と、(c)ヒンダードアミン化合物とを配合してなる組成物であって、
【0011】
ヒンダードアミン化合物が、下記一般式(7);
【化13】
〔上記一般式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。R7、R8は水素原子、もしくはメチル基のいずれかを表す。R9は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、もしくは炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。X、Yは,−O−基、もしくは−NH−基のいずれかを表す。n,mは、0.35≦(n/m)≦1.75となるような正の数を表す。〕で表される構造のヒンダードアミン化合物であることを特徴とするポリウレタン組成物であり、
【0012】
並びに、該ポリウレタン組成物におけるフェノール系酸化防止剤が、下記式(8);
【化14】
〔上記一般式中、R10は、t−ブチル基、sec−ブチル基、及びネオペンチル基から選ばれた基を表す。〕で表されるフェノール系酸化防止剤であり、
【0013】
かつ、亜リン酸エステル系酸化防止剤が、下記式(9);
【化15】
で表される構造を含む水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトール ホスファイト ポリマーであり、ポリウレタンに対する、(a)フェノール系酸化防止剤の配合量が0.1〜2重量%、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤の配合量が0.1〜2重量%、及び、(c)該ヒンダードアミン化合物の配合量が0.5〜5重量%であることを特徴とするポリウレタン組成物であり、並びに、該ポリウレタン組成物におけるヒンダードアミン化合物中のヒンダードアミノ基の全部又は一部が、有機カルボン酸、炭酸ガス、リン酸、リン酸エステル化合物、亜リン酸、亜リン酸エステル化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物と、塩を形成していることを特徴とするポリウレタン組成物であり、
【0014】
並びに、該ポリウレタン組成物から得られるポリウレタン繊維であり、ポリウレタンに対して、(a)フェノール系酸化防止剤と、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤と、(c)下記一般式(5);
【化16】
〔上記一般式中において、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。R3は水素原子又はメチル基を表す。R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。X1は−O−基、又は−NH−基を表す。〕で表される群より選ばれる1種又は2種以上の混合物のラジカル重合性ヒンダードアミン誘導体単量体成分(D3)、
【0015】
及び下記一般式(6);
【化17】
〔上記一般式中において、R5は水素原子又はメチル基を表す。R6は炭素数5〜10の飽和のシクロアルキル基を表す。Y1は−O−基、又は−NH−基を表す。〕で表される群より選ばれる1種又は2種以上の混合物のラジカル重合性単量体成分(F2)とを必須成分としてラジカル共重合して得られるヒンダードアミン化合物であって、該ヒンダードアミン化合物中の成分(D3)及び成分(F2)の重量分率が、下記数式(3)及び(4);
80≦(W D3 +W F2 )≦100 数式(3)
0.5≦(W D3 ÷W F2 )≦2.3 数式(4)
〔上記数式中、W D3 は成分(D3)の重量%、W F2 は成分(F2)の重量%を表す。〕を満たすヒンダードアミン化合物とを必須成分として配合して紡糸することを特徴とするポリウレタン繊維の製造方法であり、
【0020】
並びに、ヒンダードアミン化合物が、下記一般式(7);
【化18】
〔上記一般式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。R7、R8は水素原子、もしくはメチル基のいずれかを表す。R9は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、もしくは炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。X、Yは,−O−基、もしくは−NH−基のいずれかを表す。n,mは、0.35≦(n/m)≦1.75となるような正の数を表す。〕で表される構造である該ポリウレタン繊維の製造方法であり、
【0021】
並びに、フェノール系酸化防止剤が、下記一般式(8);
【化19】
〔上記一般式中、R10は、t−ブチル基、sec−ブチル基、及びネオペンチル基から選ばれた基を表す。〕で表されるフェノール系酸化防止剤であり、
【0022】
かつ、亜リン酸エステル系酸化防止剤が、下記式(9);
【化20】
で表される構造を含む水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトール ホスファイト ポリマーである該ポリウレタン繊維の製造方法であり、並びにポリウレタンに対する、(a)フェノール系酸化防止剤の配合量が0.1〜2重量%、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤の配合量が0.1〜2重量%、及び、(c)該ヒンダードアミン化合物の配合量が0.5〜5重量%である、該ポリウレタン繊維の製造方法であり、及び、ヒンダードアミン化合物におけるヒンダードアミノ基の全部又は一部が、有機カルボン酸、炭酸ガス、リン酸、リン酸エステル化合物、亜リン酸、亜リン酸エステル化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物と、塩を形成していることを特徴とする該ポリウレタン繊維の製造方法である。
【0023】
【発明の実施の形態】
フェノール系酸化防止剤は、公知の任意のフェノール系酸化防止剤を用いることができる。溶剤への溶解性や、ポリウレタンとの相溶性などを考慮して、適当な化合物を選ぶことができる。フェノール系酸化防止剤の例としては、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(4−sec−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(4−ネオペンチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、p−クロロメチルスチレンとp−クレゾールの重縮合物、p−クロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの重縮合物、p−クレゾールとジビニルベンゼン重縮合物のイソブチレン反応物、などが挙げられる。中でも1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(4−sec−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(4−ネオペンチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸が特に好ましく、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸が最も好ましい。フェノール系酸化防止剤は、実際の使用において劣化を充分に抑制できるような量をポリウレタンに配合して用いることができる。また、2種類以上のフェノール系酸化防止剤を併用してもよい。フェノール系酸化防止剤の配合量は、ポリウレタンに対して配合量は0.1〜2重量%の間にあることが好ましい。
【0024】
亜リン酸エステル系酸化防止剤としては、任意の公知の化合物を用いることができる。溶剤への溶解性や、ポリウレタンとの相溶性などを考慮して、適当な化合物を選ぶことができる。亜リン酸エステル系酸化防止剤の例としては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンフォスフォナイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−ペンタエリスリール・ジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリール・ジホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライル(オクタデシルホスファイト)、トリス(モノ及び/あるいはジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトール・ジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトール ホスファイトポリマー、水添ビスフェノールA ホスファイトポリマー、テトラフェニル テトラ(トリデシル) ペンタエリスリトール テトラホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデン ジフェニル ジホスファイト、テトラフェニル ジプロピレングリコール ジホスファイトなどが挙げられる。なかでも、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトール ホスファイトポリマー、水添ビスフェノールA ホスファイトポリマーが好ましい。亜リン酸エステル系酸化防止剤は、実際の使用において劣化を充分に抑制できるような量をポリウレタンに配合して用いることができる。また、2種類以上の亜リン酸エステル系酸化防止剤を併用してもよい。亜リン酸エステル系酸化防止剤の配合量は、ポリウレタンに対して0.1〜2重量%の間にあることが好ましい。
【0029】
本発明におけるヒンダードアミン化合物の酸性溶液への溶解度は、以下の方法によって測定される。
(ヒンダードアミン化合物1kgあたりの塩基量の測定)
ヒンダードアミン化合物0.0200gを正確に秤量する。ヒンダードアミン化合物が溶液の状態である場合には、一旦溶液からヒンダードアミン化合物を分離してから秤量してもよいし、溶液のままヒンダードアミン化合物の重量が所定の量になるような溶液量を秤量してもよい。ヒンダードアミン化合物を分離する方法としては、再沈澱、再結晶、溶媒の留去など公知の任意の方法を用いることができる。秤量したヒンダードアミン化合物は溶媒100mlに溶解する。用いる溶媒は、ヒンダードアミン化合物をよく溶解し、溶媒自身が塩基性を示さず、水と混和するものであることが望ましい。そのような溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒などを挙げることができる。これらの溶媒の中から、測定しようとするヒンダードアミン化合物が溶解するものを、適宜選択して使用することができる。ヒンダードアミン化合物溶液を、電位差滴定装置(COMTITE−980/平沼産業株式会社)を用いて、1/100Nの塩酸水溶液によって、ガラス電極(GE−101/平沼産業株式会社)及び比較電極(RE−101/平沼産業株式会社)を用いて、中和滴定する。滴定曲線における終点を滴定量とする。ヒンダードアミン化合物1kgあたりの塩基量は、下記数式(9)によって求めることができる。
BA=V×F×10-2÷0.0200 数式(9)
〔上記数式中、BAはヒンダードアミン化合物1kg当たりの塩基量(eq/kg)を、Vは滴定量(ml)を、Fは1/100N塩酸水溶液のファクターを、それぞれ表す。〕
【0030】
(酸性溶液の調製)
酢酸1.200g、無水酢酸ナトリウム0.250gを正確に秤量しメスフラスコを用いて1lの純水に溶解する。
(ヒンダードアミン化合物の酸性溶液への溶解度測定)
ヒンダードアミン化合物1kg当たりの塩基量から、溶解性試験のための試料重量を総塩基量が5.0×10-5molになるように下記数式(10)によって求める。
wA=(5×10-2)÷BA 数式(10)
〔上記数式中、wAはヒンダードアミン化合物の重量(g)、BAはヒンダードアミン化合物1kgあたりの塩基量(eq/kg)を、それぞれ表す。〕
【0031】
上記数式(10)によって求めた重量のヒンダードアミン化合物を正確に秤量し、上記のようにして調製した酸性溶液5mlと共にガラスアンプル中に封入する。アンプルを100℃で1時間熱処理し、冷却後開封する。0.45μmの孔径のフィルターで濾過したアンプル内液3mlと、1/10N 水酸化ナトリウム水溶液1mlとを溶媒100mlに溶解する。用いる溶媒は上記の塩基量測定で用いるものと同じ溶媒を用いることができる。混合した溶液を、電位差滴定装置を用いて1/100Nの塩酸水溶液で中和滴定する。ブランクとして、酢酸3.6×10-3g、無水酢酸ナトリウム0.75×10-3gを含む蒸留水3mlと、1/10N 水酸化ナトリウム水溶液1mlとを溶媒100mlに溶解し、同様に滴定する。滴定において、被滴定液中の全ての塩基(ヒンダードアミン化合物、酢酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウム)がすべて滴定された点を終点とし、滴定量を求める。酸性溶液中へのヒンダードアミン化合物の溶解度は、酸性溶液1l(1リットル)当たりに溶け出した塩基量として、試料溶液及びブランク溶液の滴定量より下記数式(11)によって求める。
SA=(VS−VB)÷300 数式(11)
〔上記数式中、SAは、ヒンダードアミン化合物の酸性溶液に対する溶解度(eq/l)を、VSは試料溶液3mlの滴定量(ml)を、VBはブランク溶液3mlの滴定量(ml)を、BAはヒンダードアミン化合物1kg当たりの塩基量(eq/kg)を、それぞれ表す。〕
本発明の請求項1におけるヒンダードアミン化合物において、上記の様にして求めた酸性溶液に対する溶解度は5.0×10-3eq/l以下であることが必要である。溶解度は小さい方が好ましいが2.5×10-3eq/l以下であれば、さらに好ましい特性を示す。
【0045】
本発明におけるヒンダードアミン化合物は、上記一般式(5)で表される群より選ばれる1種又は2種以上の重合性ヒンダードアミン誘導体単量体成分(D3)と、上記一般式(6)で表される群より選ばれる1種又は2種以上の混合物の重合性単量体成分(F2)とを、必須成分として共重合して得られるヒンダードアミン化合物であり、成分(D3)及び成分(F2)の重量分率の和が80〜100重量%の間であること及び、成分(F2)の重量分率に対する成分(D3)の重量分率の比が、0.5〜2.3の間であることのいずれをも満たすことが必要である。各成分の重量分率は、各成分に由来する重量の合計の、該ヒンダードアミン化合物の重量に対する割合で表される。ヒンダードアミン化合物中の各成分の重量を求めることは、高分子の解析方法として公知の任意の方法を用いて行うことができる。定量の例として、1H−NMRによる各成分の定量、中和滴定によるヒンダードアミン成分の定量、などが例としてあげられるがこれに限定されるものではない。また、ヒンダードアミン化合物からの定量が困難な場合には、各種成分の仕込みの重量%を代わりに用いることもできる。成分(D3)と成分(F2)の重量分率の和が、80重量%よりも小さいと、各種加工前後の安定性をバランスよく良好に発現させることができなくなる。より好ましいのは95〜100重量%の範囲である。また成分(F2)の重量分率に対する成分(D3)の重量分率の比が0.3よりも小さいと、加工前の安定化効果が小さくなり、安定化効果を充分に得ようとすると配合量を多くせざるを得ず、経済的にも不利となる。また2.3よりも大きいと、加工前の安定化効果は充分に得られるものの、各種加工後の安定化効果が得られなくなる。中でも、1.0〜1.6の範囲にあることが特に好ましい。
【0046】
上記一般式(5)中のR3は水素原子又はメチル基であり、メチル基がより好ましい。R4は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜10のオキシアルキレン基のいずれかであり、中でも水素原子及びメチル基がさらに好ましく、水素原子が安定化効果の面から最も好ましい。上記一般式(5)中のX1は−O−基又は−NH−基であり、より好ましいのは−O−基である。重合性ヒンダードアミン誘導体単量体成分(D3)は、上記一般式(5)で表される群より選ばれた1種又は2種以上の混合物であり、R3、R4、X1のそれぞれが異なる基で混在していても、それぞれがすべて単一の基であってもよいが、それぞれ全て単一の基であることがより好ましい。最も好ましい組合せとしては、R3がメチル基であり、R4が水素原子であり、X1が−O−基である場合である。重合性ヒンダードアミン誘導体単量体成分(D3)の好ましい例として、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−メタクリルアミド、N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−メタクリルアミド、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アクリルアミド、N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−アクリルアミドが挙げられる。中でも特に好ましいのは、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレートである。最も好ましいのは、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートである。成分(D3)としては、上記のとおり規定された化合物の範囲にある化合物を任意の組成比で混合して用いることができる。中でも、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートのみを用いることが好ましい。
【0047】
上記一般式(6)中のR5は、水素原子又はメチル基であり、メチル基がより好ましい。R6は、炭素数が5〜10の飽和のシクロアルキル基及びその誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上の1価の有機基である。有機基の炭素数が小さいとおのおのの基による効果が小さく、炭素数が大きいと基としての数が少なくなるため結果として効果が小さくなり、加工後での充分な安定化効果が得られない。本発明におけるシクロアルキル基とは、複数の炭素原子が互いに共有結合して閉鎖した環を1個以上有する基であり、2個以上の環が同一基内に存在する場合には、それぞれの環が幾つかの炭素原子を共有していてもよい。また、R6において、環を形成する炭素原子の数は3以上であればよいが、5又は6であることがより好ましい。環を形成する炭素原子は、置換基として炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル鎖を有していてもよい。シクロアルキル基における置換基としてのアルキル基の数に特に制限はないが、炭素原子の総数として5〜10であることが必須である。シクロアルキル基は、炭素原子と水素原子のみで構成されていることが好ましい。シクロアルキル基はすべて共有結合で構成され、二重結合や三重結合などの不飽和結合を含まないことが、安定化効果の面から好ましい。R6におけるX2との結合部位は、シクロアルキル基上の炭素原子でも、シクロアルキル基の置換基として存在するアルキル基のいずれでもよい。R6の具体的な例として下記一般式(23)〜(32);
【0048】
【化21】
【0049】
【化22】
【化23】
【0050】
【化24】
【0051】
【化25】
【0052】
【化26】
【0053】
【化27】
【0054】
【化28】
【0055】
【化29】
【0056】
【化30】
〔上記一般式(23)〜(32)において、Zは、水素原子、炭素数が1〜5である直鎖又は分岐の飽和のアルキル基、Y1との結合部位のいずれかを表す。ただし、上記一般式中における総炭素原子数が10を超えることはなく、ZのうちY1との結合部位の数は1である。〕で表される基などを挙げることができる。中でも好ましい基として、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、デカヒドロナフチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、イソボルニル基などが挙げられる。最も好ましいのはシクロヘキシル基、イソボルニル基である。上記一般式(6)中のY1は−O−基又は−NH−基であり、より好ましいのは−O−基である。重合性単量体成分(F2)は、上記一般式(6)で表される群より選ばれた1種又は2種以上の混合物であり、R5、R6、Y1のそれぞれが、異なる基で混在していても、すべて単一の基であってもよいが、単一の基であることがより好ましい。最も好ましい組合せとしては、R5がメチル基であり、R6がシクロヘキシル基であり、Y1が−O−基である場合である。重合性単量体成分(F2)としての好ましい例として、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロノニルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、デカヒドロナフチルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロノニルアクリレート、シクロデシルアクリレート、デカヒドロナフチルアクリレート、ノルボルニルアクリレート、ボルニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、N−シクロペンチル−メタクリルアミド、N−シクロヘキシル−メタクリルアミド、N−シクロヘプチル−メタクリルアミド、N−シクロオクチル−メタクリルアミド、N−シクロノニル−メタクリルアミド、N−シクロデシル−メタクリルアミド、N−デカヒドロナフチル−メタクリルアミド、N−ノルボルニル−メタクリルアミド、N−ボルニル−メタクリルアミド、N−イソボルニル−メタクリルアミド、N−シクロペンチル−アクリルアミド、N−シクロヘキシル−アクリルアミド、N−シクロヘプチル−アクリルアミド、N−シクロオクチル−アクリルアミド、ノルボルニルメタクリレート、ノルボルニルアクリレート、N−ノルボルニル−メタクリルアミド、N−ノルボルニル−アクリルアミド、N−シクロノニル−アクリルアミド、N−シクロデシル−アクリルアミド、N−デカヒドロナフチル−アクリルアミド、N−ノルボルニル−アクリルアミド、N−ボルニル−アクリルアミド、N−イソボルニル−アクリルアミドが挙げられる。特に好ましい例としては、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、が挙げられ、最も好ましい例はシクロヘキシルメタクリレートである。
【0057】
本発明において、重合性ヒンダードアミン化合物単量体成分(D3)と、重合性単量体成分(F2)の、最も好ましい組合せは、それぞれ、2,2,6,6−テトラメチルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレートである。
【0058】
本発明の請求項4における一般式(7)の、R7、R8は水素原子、もしくはメチル基のいずれかを表す。いずれも同じ基であることが好ましく、いずれもメチル基であることが特に好ましい。またR9は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、もしくは炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。水素原子もしくはメチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。X、Yは,−O−基、もしくは−NH−基のいずれかを表す。X及びYはいずれも同じ基であることが好ましく、いずれも−O−基であることがさらに好ましい。n及びmは、該ヒンダードアミン化合物中におけるそれぞれの構成単位の組成比を表すが、n,mは、0.35≦(n/m)≦1.75となるような正の数であることが好ましく、さらに0.70≦(n/m)≦1.40であることがさらに好ましい。上記一般式(7)で示されるヒンダードアミン化合物は、任意の公知の化合物から任意の方法によって合成することができる。本発明におけるヒンダードアミン化合物は、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、N−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−4−ピペリジル)−メタクリルアミド、N−(1’,2’,2’,6’,6’−ペンタメチル−4−ピペリジル)−メタクリルアミド、N−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−4−ピペリジル)−アクリルアミド、N−(1’,2’,2’,6’,6’−ペンタメチル−4−ピペリジル)−アクリルアミドなどから選ばれる1種又は2種以上の混合物と、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N−シクロヘキシル−メタクリルアミド、N−シクロヘキシル−アクリルアミド、N−シクロヘプチル−アクリルアミド、N−シクロオクチル−アクリルアミドなどからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物からなる化合物とを原料をして合成することができる。原料として、中でも2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレートが好ましい。
【0059】
本発明におけるヒンダードアミン化合物は、上記に示したような化合物を原料として合成することができる。本発明の範囲内であれば、効果を損なわない範囲内で、本発明の範囲外である任意の公知の重合性単量体も同時に共重合してもよい。また、必要に応じて公知の連鎖調節剤を重合反応の際に添加してもよい。重合反応は、公知の任意の方法で行うことができるが、中でもラジカル重合法が好ましく、さらには、簡便であり反応を制御しやすいことから、溶媒中で原料をラジカル重合開始剤の存在下で反応させる溶液重合法が好ましい。用いる重合溶媒は、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、などの炭化水素系溶媒や、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどのアミド系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶媒などの、ラジカルと反応を起こさず単量体と共重合物を溶解する溶媒であれば、任意の溶媒が使用できる。用いる重合開始剤としては、任意の公知の重合開始剤として用いられているものが使用できる。中でも、2,2’−アゾビス(2−ジアミノプロパン)二塩酸塩、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)メチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などのアゾ系重合開始剤などが好ましい。重合仕込み時の単量体濃度は、特に限定されないが、20〜70重量%の間にあることが好ましい。反応の進行に伴って随時溶媒を追加していくこともできる。重合開始剤の添加量は、目的の重合度に応じて自由に変えることができる。特に限定されないが、単量体に対して0.01〜2重量%の範囲が適当である。重合開始剤はそのまま系に加えても、重合溶媒に溶解して加えてもよい。また、一度に加えても何回かに分割して加えてもよい。また必要に応じて公知の連鎖調節剤を加えてもよい。反応温度は特に限定されないが、50〜100℃が好ましい。反応時間は特に限定されないが1〜24時間であることが好ましい。重合体組成物における未反応単量体の量は特に限定されるものではないが、重合体重量に対して20重量%以下であることが望ましい。ヒンダードアミン化合物中における未反応単量体の量が多すぎると、単量体そのものが劣化の原因となり安定化効果が損なわれる場合がある。得られた共重合体は、溶液としてそのまま用いることもできるし、もしくは再沈、溶媒の溜去、カラムクロマトグラフィーなどの任意の方法によって精製してから用いることもできる。本発明におけるヒンダードアミン化合物の分子量は、特に制限されるものではないが1000〜500000の間であることが好ましい。1000より小さいと、樹脂中での移動性が大きくなり、ブリードアウトを起こす恐れがある。500000よりも大きいと、樹脂の物性に悪影響を及ぼす可能性があり、分子量が小さい場合に比べて、安定化効果が劣る恐れがある。さらに好ましい分子量の範囲は、2000〜200000の間である。用途や目的に応じて適当な分子量のものを用いることができる。
【0060】
本発明におけるヒンダードアミン化合物は、ヒンダードアミノ基の全部又は一部が、有機カルボン酸、炭酸ガス、リン酸化合物、リン酸エステル化合物、亜リン酸化合物、亜リン酸エステル化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物と、塩を形成していてもよい。ヒンダードアミン化合物のヒンダードアミノ基の全部又は一部を、上記化合物と塩を形成させることで、ヒンダードアミン化合物が本来有する安定化効果を損なうことなく、ヒンダードアミン化合物の塩基性度や溶解性などを調整することができる。
【0061】
有機カルボン酸としては、炭素数1〜10の有機カルボン酸が好ましく、飽和のカルボン酸であることが好ましい。また、ポリカルボン酸よりもモノカルボン酸が好ましい。具体的な例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、アセト酢酸、ピルビン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、ナフト酢酸、フェニル酢酸などを挙げることができる。
【0062】
リン酸化合物とは、リン酸及びリン酸とアミン、金属イオンなどの塩基化合物との塩を表す。亜リン酸化合物とは、亜リン酸及び亜リン酸とアミン、金属イオンなどの塩基化合物との塩を表す。リン酸エステル化合物としては、リン酸モノエステル化合物又はジエステル化合物が好ましいが、高分子化合物であって一部がリン酸モノエステル又はジエステル構造を有しているような化合物であってもよい。亜リン酸エステル化合物としては、亜リン酸モノエステル化合物又はジエステル化合物が好ましいが、高分子化合物であって一部が亜リン酸モノエステル又はジエステル構造を有しているような化合物であってもよい。リン酸エステル化合物及び亜リン酸エステル化合物は、部分的にアミン、金属イオンなどの塩基化合物との塩であってもよい。
【0063】
本発明におけるヒンダードアミン化合物は、上記に示した範囲に含まれるものであれば2種類以上を同時に使用することができる。該ヒンダードアミンの配合量は、ポリウレタンに対して0.5〜5重量%であることが好ましい。0.5重量%よりも少ないと安定化効果が得られない。5重量%より多くても、安定化効果はさほど向上せず、むしろ力学特性などポリウレタンの特性に対して悪影響を示すようになる。
【0064】
本発明におけるポリウレタン組成物には、目的に応じて他の添加剤を配合することもできる。例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤や、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、高級アルコール、ポリオルガノシロキサン、ポリテトラフルオロエチレンなどの粘着防止剤や、ジヒドラジド誘導体系金属不活性化剤、シュウ酸誘導体系金属不活性化剤などの金属不活性化剤や、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、硫酸バリウム、硅酸マグネシウム、硅酸カルシウムなどの無機微粒子や、難燃剤や、防黴剤や、青み付け剤など公知の添加剤を、目的に応じて任意の量を配合してもよい。これらの添加剤は、ポリウレタンの重合反応に悪影響を及ぼさない範囲で、原料あるいは重合反応中に配合することもできる。
【0065】
他の添加剤の中でも紫外線吸収剤は、配合することによってポリウレタン組成物の光に対する安定性を著しく高めることができるため、配合することが特に好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤などの任意の紫外線吸収剤から、目的に応じて任意のものを用いることができる。中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。ベンゾトリアール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドイロメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、メチル−3−〔3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物などが挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤の例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノール、2,4−ジ(2’,4’−ジメチルフェニル)−6−(2”−ヒドロキシ−4”−n−オクチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。紫外線吸収剤としては、中でも、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。これらの紫外線吸収剤は、単独で、あるいは2種類以上を併用して使用することができる。ポリウレタンに対する配合量は、0.1〜2.0重量%の範囲にあることが好ましい。
【0066】
本発明で使用するポリウレタンは、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系など、公知のポリウレタンを挙げることができる。かかるポリウレタンは、ポリイソシアネート、ポリマージオール、所望により低分子多官能活性水素化合物を反応させて得ることができる。ポリイソシアネートとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの1種又はこれらの混合物を用いることができる。好ましくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。ポリマージオールは、両末端にヒドロキシル基を持つ分子量が600〜7000の実質的に線状の重合体として、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリペンタメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルポリオールや、コポリ(テトラメチレン・ネオペンチレン)エーテルジオール、コポリ(テトラメチレン・2−メチルブチレン)エーテルジオール、コポリ(テトラメチレン・2,3−ジメチルブチレン)エーテルジオール、コポリ(テトラメチレン・2,2−ジメチルブチレン)エーテルジオールなどの2種以上の炭素数6以下のアルキレン基を含むコポリエーテルポリオールや、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸、β−メチルアジピン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの二塩基酸の1種又は2種以上の混合物とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサンなどのグリコールの1種あるいは2種以上の混合物から得られるポリエステルポリオールや、ポリエーテルエステルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどの任意のポリオールを用いることができる。低分子多官能活性水素化合物としては、イソシアネート基と反応しうる活性水素基を分子中に二つ以上有する化合物(鎖延長剤)を挙げることができる。鎖延長剤として、例えば、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアミンや、エチレングリコール、ブタンジオールなどのポリオール、ポリヒドラジド、ポリセミカルバジド、ポリヒドロキシルアミン、水、ヒドラジン、などの1種又は2種以上の混合物が挙げられる。また鎖延長剤と共に末端停止剤として、分子中にイソシアネート基と反応しうる活性水素基をただ1つ有する化合物を併用することもできる。活性水素基を分子中に1つだけ有する化合物として、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミンなどのジアルキルアミンや、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、エタノールアミンなどのモノアルキルアミンや、n−ブタノールなどのモノオール、エチレンジアミンとアセトンの1:1反応物などのジアミンとケトンの脱水縮合物、N ,N−ジメチルヒドラジンなどの1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。ポリウレタンは公知の方法で重合することができる。例えば、溶融重合、溶液重合など任意の方法及びそれらの組合せによって重合することができる。また、原料を一括して混合して反応させるワンショット法、あるいは、まずプレポリマーを形成し鎖延長するプレポリマー法など任意の方法をとることができる。また、反応速度調整剤として、酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸や炭酸ガスなどを、重合反応中の任意の段階で適当な量を添加することもできる。これらの反応調節剤は、プレポリマー反応終了後、鎖延長反応終了までに添加することが好ましい。またこれらの反応速度調節剤は、鎖延長剤や末端停止剤と混合して加えてもよい。重合されたポリウレタンは公知の方法で成形し、おのおのの目的に使用することができる。
【0067】
本発明におけるフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤、及びヒンダードアミン化合物をポリウレタンに対して配合する方法は特に限定されるものではなく、公知の任意の方法をとることができる。それぞれ単独で配合してもよいし、あらかじめ他の添加剤を含めた数種類の安定剤を混合したものを配合してもよい。また、ポリウレタンの重合反応に影響を及ぼさない範囲で、一部又はすべての添加剤を、原料にあらかじめ配合しておいて重合させることや重合反応中に配合することもできる。またポリウレタンの重合後に配合することもできる。ポリウレタンの重合反応がすべて終了してから、各種添加剤を配合することが好ましい。各種添加剤は、ポリウレタンに対して、溶融混練したり、溶媒に溶解又は分散して加えたりして配合することができる。ポリウレタンを溶液中で重合する場合には、添加剤もあらかじめ溶液又は分散液としてから配合することが好ましい。本発明のポリウレタン繊維の製造方法は、ポリウレタン溶液を原料として用いる乾式紡糸法又は湿式紡糸法に特に適している。
【0068】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお実施例中の部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を表す。
(染色加工モデル処理方法)
評価用筒編地を、95℃の熱水中で1分間処理し、次に190℃の空気中で60秒間処理する。その後、筒編地約7gを重量にして20倍の染色モデル液と共に、密閉した容器中で98℃で30分間処理する。染色モデル液は、1lの純水に、染色助剤としてニューポンTS100(日華化学)0.5g、酢酸0.5g、酢酸ソーダ0.25gを溶解したものを用いる。その後、編地を水洗し乾燥し、180℃の空気中で60秒間処理する。
(NOx変色性試験)
約1gの評価用筒編地を、パーミエーターPD−1−B(株式会社ガステック)を用いて発生させた200ppmのNO2を含む乾燥した空気を500ml/minの流量で連続的に流した密閉した容器中で1.5時間暴露させる。暴露後、JIS−L0855に記載の緩衝尿素溶液、次いで純水で十分洗浄し、窒素気流下で24時間乾燥させ、カラーメーターTC1500MC−88(東京電色株式会社)を用いて、HunterのLab表色系におけるb値を8枚重ねの筒編地について測定する。変色性(Δb)を下記数式(12)によって求めた。
Δb=NOx処理後のb値−NOx処理前のb値 数式(12)
Δb値が小さい程変色が小さく、優れていることを表す。
【0069】
(合成例1):ヒンダードアミン化合物の合成
温度計、攪拌装置、窒素導入管、及び還流冷却管を取り付けた500ccの枝付きフラスコに、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(アデカスタブLA−87/旭電化工業株式会社)60部、シクロヘキシルメタクリレート40部、及びN,N−ジメチルアセトアミド213部を取り、攪拌して溶解した。フラスコを、オイルバス中で窒素をバブリングしながら60℃まで攪拌しながら加熱した。60℃に達した後、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)0.8部を加えた。そのまま攪拌しながら60℃に保ち反応させた。AIBNを最初に添加してから5時間後、AIBN0.2部をさらに加えた。さらに反応を60℃で15時間続けた後、室温まで冷却して反応を終了しヒンダードアミン化合物溶液を得た。円錐角3°、半径14mmのローターを用い、30℃でE型粘度計で測定した溶液粘度は15poiseだった。溶液中の残存単量体をガスクロマトグラフィーにより定量したところ、仕込んだ単量体の重量に対して4重量%だった。テトラヒドロフランを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の数平均分子量は2700だった。得られたヒンダードアミン化合物の1H−NMRスペクトルをDMSO−d6とCDCl3の1:1混合物を溶媒として50℃で測定したところ、ピペリジル基のメチン炭素のプロトンとシクロヘキシル基のメチン炭素のプロトンはそれぞれ、5.0,4.6ppmに検出され、積分比は52:48だった。この積分比が、ヒンダードアミン化合物中での、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート由来の単位とシクロヘキシルメタクリレート由来の単位のmol比であると考えられることから、それぞれの重量分率は、60,40重量%であると計算され、仕込み量から求められる値と一致した。
【0070】
(合成例2)
合成例1と同様にしてヒンダードアミン化合物を重合した後、酢酸5.3部を加えてよく混合しヒンダードアミン化合物溶液を得た。
【0071】
(比較合成例1)
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートの量を80部、シクロヘキシルメタクリレートの量を20部にした他はすべて(合成例1)と同様にしてヒンダードアミン化合物溶液を得た。
【0072】
(比較合成例2)
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートの量を20部、シクロヘキシルメタクリレートの量を80部にした他はすべて(合成例1)と同様にヒンダードアミン化合物溶液を得た。
【0073】
(ヒンダードアミン化合物の酸性溶液への溶解度測定)
上記合成例1及び比較合成例1及び2で得られたヒンダードアミン化合物溶液を純水中に滴下してヒンダードアミン化合物を再沈澱させた。沈澱物を濾過し、80℃で12時間真空乾燥し、ヒンダードアミン化合物を得た。得られたヒンダードアミン化合物は、それぞれ本文中に記載の方法に従って酸性溶液への溶解度を測定した。滴定用の溶媒としてはメタノールを用いた。
【0074】
(実施例1)
(ポリウレタン溶液の製造)
数平均分子量1800のポリテトラメチレンエーテルグリコール175.37部と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート38.92部をN2 気流下80℃で3時間反応させて、両末端がイソシアネート基のプレポリマーを得た。プレポリマーを40℃まで冷却した後、N,N−ジメチルアセトアミド308.36部を加えて溶解し、さらに10℃まで冷却した。エチレンジアミン3.58部とジエチルアミン0.46部をN,N−ジメチルアセトアミド146.86部に溶解した溶液を、高速撹拌しているプレポリマー溶液に一度に加え混合し反応を完結させた。この溶液の30℃における粘度が2000poiseだった。この溶液に、上記合成例1で得られたヒンダードアミン化合物溶液13.42部、酸化防止剤として1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−ジメチルベンジルイソシアヌレート)(サイアノックス1790/日本サイアナミド)2.15部、紫外線吸収剤として2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミル)フェニル〕ベンゾトリアゾール(KEMISORB74/ケミプロ化成株式会社)1.08部、亜リン酸エステル系酸化防止剤として水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトール ホスファイト ポリマー(JPH−3800/城北化学工業)2.15部、及び粘着防止剤としてステアリン酸マグネシウム0.69部を加えて、撹拌混合しポリウレタン溶液を得た。
(ポリウレタン繊維の製造及び評価用試料の作成)
ポリウレタン溶液を脱泡後、孔径0.3mm、孔数4ホールの口金から、230℃に加熱した空気を流した紡糸筒内に押出し、油剤を繊維に対して5重量%付与しつつ500m/minで巻き取り、44デシテックスのポリウレタン繊維を得た。一口編機(小池製作所製)を用いて、ポリウレタン繊維のみからなる、コース108/in、ウェール178/inの筒編地を作成し評価用の試料とした。
【0075】
(実施例2)
フェノール系酸化防止剤としてp−クロロメチルスチレンとp−クレゾールの重縮合物2.15部を用いた他は、すべて実施例1と同様にして評価用試料を得た。
【0076】
(実施例3)
亜リン酸エステル系酸化防止剤として、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−ペンタエリスリール・ジホスファイト2.15部を用いた他は、すべて実施例1と同様にして評価用試料を得た。
【0077】
(実施例4)
フェノール系酸化防止剤としてp−クロロメチルスチレンとp−クレゾールの重縮合物2.15部、亜リン酸エステル系酸化防止剤として、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−ペンタエリスリール・ジホスファイト2.15部を用いた他は、すべて実施例1と同様にして評価用試料を得た。
【0078】
(実施例5)
ヒンダードアミン化合物として、合成例2で得られたヒンダードアミン化合物溶液13.42部を加えた他は、すべて実施例1と同様にして評価用試料を得た。
【0079】
(比較例1)
ヒンダードアミン化合物として、比較合成例1で得られたヒンダードアミン化合物溶液13.42部を加えた他は、すべて実施例1と同様にして評価用試料を得た。
【0080】
(比較例2)
ヒンダードアミン化合物として、比較合成例2で得られたヒンダードアミン化合物溶液13.42部を加えた他は、すべて実施例1と同様にして評価用試料を得た。
【0081】
(比較例3)
ヒンダードアミン化合物として、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−68/旭電化工業株式会社)4.30部を加えた他は、すべて実施例1と同様にして評価用試料を得た。
【0082】
(比較例4)
ヒンダードアミン化合物として、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:チヌビン770DF/チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社)4.30部を加えた他は、すべて実施例1と同様にして評価用試料を得た。
【0083】
(比較例5)
ヒンダードアミン化合物の代わりに、公知の変色防止剤である4−エチル−2,6−ジメチル−4−アザヘプタンジオ−ルとメチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)の反応物(分子量約4000)4.30部を加えた他は、すべて実施例1と同様にして評価用試料を得た。
【0084】
(比較例6)
ヒンダードアミン化合物及び亜リン酸エステル系酸化防止剤を全く加えなかった他は、実施例1と同様にして評価用試料を得た。
実施例及び比較例で得たポリウレタン繊維筒編地について、染色モデル加工未処理の編地及び染色モデル加工処理上がりの編地のNOx変色性を表1に示した。本発明のポリウレタン繊維は、NOxによって変色劣化しにくく、染色加工した後でもその効果が失われにくいことがわかる。それに対して、本発明外のヒンダードアミン化合物を用いた場合には、染色加工前後での安定化効果が小さかったり、染色加工前では良好に安定化されていても染色加工後では安定加工化が失われてしまったりしていることがわかる。また、ヒンダードアミン化合物の代わりに公知の変色防止剤を用いた場合は、染色加工によって安定化効果は失われにくいものの、その安定化効果は本発明のヒンダードアミン化合物を用いた場合に比べて劣るものであった。従って、本発明のポリウレタン組成物及びポリウレタン繊維は、良好な耐NOx変色性を示し、かつ染色加工のような後加工を経たあとでも安定化効果が保持されている優れたものである。
【0085】
【表1】
【0086】
【発明の効果】
本発明のポリウレタン組成物及びそれから得られるポリウレタン繊維は、窒素酸化物(NOx)による変色劣化に対して、充分に安定化されており、かつ染色加工の如き二次加工を経た後でも、良好な安定化効果が保持される。
Claims (11)
- ポリウレタンに対して、(a)フェノール系酸化防止剤と、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤と、(c)ヒンダードアミン化合物を配合してなる組成物であって、ヒンダードアミン化合物が、下記一般式(5);
80≦(WD3+WF2)≦100 数式(3)
0.5≦(WD3÷WF2)≦2.3 数式(4)
〔上記数式中、WD3は成分(D3)の重量%、WF2は成分(F2)の重量%を表す。〕を満たすヒンダードアミン化合物であることを特徴とするポリウレタン組成物。 - ポリウレタンに対する、(a)フェノール系酸化防止剤の配合量が0.1〜2重量%、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤の配合量が0.1〜2重量%、及び、(c)該ヒンダードアミン化合物の配合量が0.5〜5重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
- ヒンダードアミン化合物におけるヒンダードアミノ基の全部又は一部が、有機カルボン酸、炭酸ガス、リン酸、リン酸エステル化合物、亜リン酸、亜リン酸エステル化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物と、塩を形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン組成物から得られるポリウレタン繊維。
- ポリウレタンに対して、(a)フェノール系酸化防止剤と、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤と、(c)下記一般式(5);
80≦(WD3+WF2)≦100 数式(3)
0.5≦(WD3÷WF2)≦2.3 数式(4)
〔上記数式中、WD3は成分(D3)の重量%、WF2は成分(F2)の重量%を表す。〕を満たすヒンダードアミン化合物とを必須成分として配合して紡糸することを特徴とするポリウレタン繊維の製造方法。 - ポリウレタンに対する、(a)フェノール系酸化防止剤の配合量が0.1〜2重量%、(b)亜リン酸エステル系酸化防止剤の配合量が0.1〜2重量%、及び、(c)該ヒンダードアミン化合物の配合量が0.5〜5重量%である、請求項7〜9のいずれかに記載のポリウレタン繊維の製造方法。
- ヒンダードアミン化合物におけるヒンダードアミノ基の全部又は一部が、有機カルボン酸、炭酸ガス、リン酸、リン酸エステル化合物、亜リン酸、亜リン酸エステル化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物と、塩を形成していることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のポリウレタン繊維の製造方法。
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