JP3742707B2 - 時変振動機構に用いる制振起動方法 - Google Patents

時変振動機構に用いる制振起動方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、対象物を上昇・下降させながら水平方向に移動させることにより搬送するクレーンや、カッティングマシンにおけるキャリッジ等のように、駆動の際に、加速や減速を要する時変振動機構を有する装置に用いる制振起動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、種々の装置において振動の発生を防止するための制御方法が研究開発されており、このような制御方法のなかに、例えば、特開昭63−314606号や特開昭63−314607号に開示されている、ロボットのアームの先端に発生する振動を抑制する方法がある。
【0003】
これらの方法はいずれも、ロボットのアームの先端に取り付けた加速度センサの信号を外乱トルクとしてフィードバックし、このフィードバックされたデータに応じてロボットのアームに加える加速度を制御することにより制振するものである。
【0004】
したがって、この方法によると、実際にロボットに振動が発生してから制振の制御に入るようになり、振動自体の発生を防止することはできないという問題がある。また、このような方法によると、高速度演算のできるCPUが必要となり、装置が高価で複雑になるという問題もあった。
【0005】
また、上記従来例のような、センサ等を用いたフィードバックによる制御を行うことなく、振動機構を制御対象とし、その固有の周期と同程度の時間で、しかも残留振動を生じさせることなく起動・停止できる駆動関数を求める方法として、日本機械学会論文集(C編)51巻469号(昭60−9)に開示された”振動機構系の最適な高速起動制御”がある。
【0006】
この制御方法は、振動機構系をサーボモータで駆動する場合のモータおよび制御回路の動特性を考慮したもので、図9に示すように、駆動力fを、質量m1 の駆動点1に負荷し、ばね定数のばね2を介して質量m2 の制御対象点3を起動する場合の制振方法を示している。
【0007】
なお、図10は、駆動力fを、駆動点1に負荷する駆動力f1 と制御対象点3に負荷する駆動力f2 とに分けて考えることをができることを示している。また、図9および図10において、xは駆動点1の変位、yは制御対象点3の変位をそれぞれ示している。
【0008】
この場合、まず、残留振動が生じない制御対象点3の変位y(t)を、式
【数8】
Figure 0003742707
という時間関数で表すとともに、制御対象点3が停止状態から残留振動なく時間Tで速度Vとなる条件式
【数9】
Figure 0003742707
を用い、これらの式から、最適な駆動関数を求める。
【0009】
そして、この駆動関数に追従するように駆動点1が加速するようにモータを駆動させるプログラムを作成し、このプログラムに沿ってモータを制御することにより、制御対象点3に振動を生じさせない駆動が可能になる。この結果、複雑で高価な装置を用いることなく装置の振動自体の発生を防止することができるようになるというものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法においては、ロボットのアーム等のような時間の経過によっても共振周波数が変化しない、いわゆる時不変振動機構に対しては制振効果を発揮するが、クレーンのように、物を目的地に移動させる際、ロープを伸縮させて物を上昇・下降させる動作が加わるような、共振周波数が時間とともに変わる時変振動機構に対しては、制振効果を発揮することができない。
【0011】
このため、時変振動機構を有する装置において、上記のような方法を用いても、加速・減速の終了時には、やはり残留振動が生じるという問題がある。
この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、共振周波数が時間とともに変化する時変振動機構を有する装置における振動発生を防止することにより、その装置の起動から停止までの時間を短縮させることのできる時変振動機構に用いる制振起動方法の提供をその目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明にかかる時変振動機構に用いる制振起動方法では、まず、共振周波数が時間とともに変化する時変振動機構を有する装置における、時変パラメーターを時間tの多項式で表した時変振動機構に対応する運動方程式を立てる。
【0013】
この場合、一般的な運動方程式をもとに、使用する装置特有の運動方程式を考えるが、この際に、共振周波数を経時的に変化させる要素を時変パラメーターとして多項式を作りこれを上記運動方程式に含ませる。これによって、この運動方程式が時変振動機構に対応するものとなる。
【0014】
つぎに、この装置で駆動する制御対象物の加速または減速の終了時に振動が生じない境界条件を設定する。例えば、使用する装置がクレーンであれば、起動前の時間が0の場合には、ロープの振れ角度,振れ角速度,トロリーの位置,トロリーの速度がともに0となり、加速終了時には、トロリーの位置および速度が所定値になり、かつ、ロープの振れ角度,振れ角速度が0になるといった条件等である。
【0015】
ついで、上記運動方程式および境界条件の式で係数を決定することが可能な次数の方程式を求め、これらの式を解くことによって起動方式を求める。これは、上記と同様クレーンの場合であれば、ロープの振れ角度やトロリーの位置を時間の関数として表し、これによって得られる式と上記の運動方程式および境界条件の式とで、起動方式を決定することができる。
【0016】
なお、この場合の上記運動方程式の次数は、後述するように、上記の方法で得られた等式の数と未知数の数との関係で求められる。
そして、求められた起動方式に沿うように装置を駆動させ制御対象物の加速・減速制御を行う。
【0017】
これによって、他の予期せぬ外因が生じない限り、加速・減速の終了時における制御対象物の振動発生が防止できるようになり、加速・減速の終了と略同時に制御対象物が停止するようになる。この結果、制御対象物の起動から停止までの時間が短縮できるようになる。また、制御対象物の振動により生じる他の問題、たとえば危険の発生等のあらゆる問題も解消できるようになる。
【0018】
なお、この発明に使用できる装置としては、共振周波数が時間とともに変化する時変振動機構を有するものであればどのようなものにでも使用が可能であるが、特に、クレーンやプロッタ,カッティングマシンのキャリッジ等には効果的である。この場合において、装置がクレーンである場合には、時変パラメーターは伸縮するロープの長さになり、装置がキャリッジの場合には、時変パラメーターはベルトのばね定数になる。
【0019】
また、他の時変振動機構を有する装置においては、時間とともに共振周波数を変化させるその装置特有の要素を時変パラメーターとすることにより、この発明は、時変振動機構を有する全ての装置に利用することができる。その場合の装置の駆動は、モータ駆動,油圧駆動等の形式を問わない。
つぎに、この発明による制振起動方法を図面を用いて詳しく説明する。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明にかかる制振起動方法を行うためのクレーン装置の駆動部10を示している。すなわち、図1において、11は枠状の支持部であり、12はその支持部11に移動自在の状態で横架されたレールである。このレール12は両端側に係合されたベルト13の駆動により支持部11の長手方向に沿って移動できるようになっている。
【0021】
14はレール12の長手方向に沿って移動自在に設けられたトロリーであり、その下側に巻上げ巻下げが可能なロープ15が垂下され、このロープ15の下端に荷物16が吊り下げられている。17はトロリー14を移動させるためのベルトである。ベルト13,17はともに、モータ(図示せず)の駆動によりプーリ(図示せず)を介して走行するようになっている。
【0022】
また、図2は、この駆動部10を含めたクレーン装置の主要部の構成を示している。図2において、18はCPUであり、入力装置(図示せず)を介して入力される制振起動方法に必要なデータや台形情報等を、メモリ19に送り記憶させる。また、このCPU18は、上記各種のデータや情報に基づいて演算処理をしながら、メモリ19が記憶するプログラムに沿って作動し、駆動部10を駆動させるようになっている。
【0023】
20はCPU18から送られる出力信号をアナログ信号に変換するD/A変換器であり、21はサーボドライバである。このサーボドライバ21は駆動部10のモータ(図示せず)に接続され、D/A変換器20から送られる信号によって、モータを回転させることにより、駆動部10を駆動させるようになっている。
【0024】
このようなクレーン装置を用いて、荷物16を振動させることなく搬送するには、まず、クレーンの運動方程式と、加速開始時刻と加速終了時刻とで荷物16に振れがなく、かつトロリー14が所定の速度と位置に到達する境界条件を考え、この運動方程式と境界条件から起動方法を決定する。
【0025】
すなわち、クレーン装置におけるロープ15の長さに変化を伴う運動方程式は、図3に示すように、ロープ15の長さをl[m]、荷物16の質量をm[kg]、ロープ15の振れ角度をθ[rad]、粘性摩擦係数(この場合荷物16に対する空気抵抗による摩擦やロープ15の曲げによるエネルギー損失が主なものとなる。)をD[Ns/m]、重力加速度をg[m/s2 ]、トロリー14の位置(移動距離)をx[m]とすると、
【数10】
Figure 0003742707
で表される。
【0026】
そして、ロープ15の長さlは一定速度で変化するため、ロープ15の初期の長さをl0 [m]、ロープ15の単位時間当たりの長さの変化をl1 [m/s]、として、l=l0 +11 tで、上記式(10)を書き直すと、
【数1】
となる。
この際、式の分母にtの項が残らないように、両辺にmlをかける。これによって、式(1)の解x,θがtの整数多項式で表されるようになる。
【0027】
また、上記クレーン装置において、加速開始時と加速終了時で荷物16に振れがなく、かつトロリー14が所定の速度と位置に到達する境界条件は、加速終了時刻をT[s]とし、加速終了時のトロリー14の速度をV[m/s]としたとき、
【数2】
である。
【0028】
上記式(2)は、加速開始時と、加速開始から時間Tが経過した時で振れがないことを表し、時間tが0、すなわち、起動前の状態では、ロープ15の振れ角度、振れ角速度、トロリー14の位置、トロリー14の速度、がともに0となり、加速開始から時間Tが経過した時には、ロープ15の振れ角度、振れ角速度が0で、トロリー14の位置が0.5VT[m]となり、トロリー14の速度がV[m/s]となることを示している。
ここで、0.5VT[m]とは、トロリー14が平均速度0.5V[m/s]でT秒間移動することを意味する。
【0029】
つぎに、求めようとする起動方法の方程式は、上記の運動方程式(1)および境界条件の式(2)を満たすものである。そこで、ロープ15の振れ角θおよびトロリー14の位置xをそれぞれ時間tの多項式
【数11】
Figure 0003742707
とすると、=6,n=8、つまり、θ(t)が6次で、x(t)が8次の式の時、式(1)の両辺はともに7次の式となる。このとき、式(1)における各次の係数を比較することで8個の連立方程式が求められ、境界条件の8個の式(2)と併せた16の連立方程式を解くことによって16個の未知数ai ,bi が決定できる。ただし、上記16個の連立方程式が一次独立でない場合、一義的に定まらない係数が発生するが、その場合は、その係数を0とする。
【0030】
これをより詳しく説明すると、まず、式(1)において、左右両辺の等号がtにかかわらず常に成り立つためには右辺と左辺のtの次数が等しくならなければならない。そのためには=n−2の関係になければならない。これは、左辺の最高次数が、θにtをかけたものであり、右辺の最高次数がxを2回微分したものにtをかけたものであるためである。
【0031】
また、式(1)の左右両辺の次数が、たとえば、j次の式でつり合ったとする。その場合、左右両辺の等号がtにかかわらず常に成り立つ条件としては、左右各次の次数の係数も同じでなければならない。したがって、これらの係数によって、j+1個の等式が得られる。
また、このj+1個の式と、上記境界条件の8個の式(2)とで、計j+9個の等式が得られる。
【0032】
一方、上記式(11)における未知数の数は、+1とn+1の合計数であり、未知数決定の条件としては、j+9=+1+n+1でなければならない。また、jは、式(1)における両辺がつり合う次数であるため、式(1)における両辺の次数+1,n−1と等しくなる。したがって、n=8、=6となり、式(1)は7次の式となる。
【0033】
この結果、式(11)に、n=8、=6を代入することにより、
【数12】
Figure 0003742707
が導け、さらに、この式(12)を、式(1)を代入することによって、式
【数13】
Figure 0003742707
が得られる。この式(13)の両辺の各次の係数を比較し、境界条件を考慮することによって上記の各ai ,bi が決定できる。
【0034】
また、この場合、粘性摩擦係数Dは無視できるほど小さいため、D=0とすれば、=4,n=6で、上記の式を表すことができる。このように次数が下がるのは、成立する16個の連立方程式がすべて一次独立ではなく、一義的に定まらない係数を0とするためである。さらに、サンプル時間tと加速終了時間Tの比t/Tをτで示して正規化すると、トロリー14の加速度を示す式は、
【数14】
Figure 0003742707
で表される簡単な式になる。
【0035】
このようにして、導出された起動方法の式(14)を用いて荷物16の巻き上げ搬送実験を行ったところ図4および図5に示すような結果を得た。
図4において、横軸は時間sで、縦軸は加速度m/s2 を示している。そして、破線aはステップ加速、細線bは正弦波加速、実線cは上記式(14)に基ずく制振加速、によるそれぞれ加速度と時間との関係を表す曲線を示している。
【0036】
この実験においては、上記のそれぞれの加速方法でトロリー14を3秒間加速させることを行った。また、T=3[s],D=0[Ns/m]以外の各パラメーターは、荷物16の質量m=30[kg],ロープ15の初期の長さl0 =0.3[m],ロープ15の単位時間当たりの長さの変化l1 =0.18[m/s],加速終了時のトロリー14の速度V=0.75[m/s]とした。
【0037】
図5は、上記の条件によって、トロリー14に、図4のような加速をさせた場合のそれぞれのロープ15の振れを示しており、横軸は時間sで、縦軸はロープ15の振れの角度を示している。この図でわかるように、加速が終了した加速開始から3秒後では、ステップ加速を示す曲線a’および正弦波加速を示す曲線b’がまだ振れている状態であるのに、制振加速による曲線c’には殆ど振れがなく、停止した状態になっていることがわかる。
【0038】
これによって、ステップ加速や正弦波加速による加速を行った場合には、加速終了後もしばらく荷物16に振動が続くのに対し、式(14)による制振加速をトロリー14に加えた場合には、加速終了時にロープ15に振れがなく荷物16が殆ど振動していないことがわかる。
【0039】
なお、上記の例は、停止状態のトロリー14を加速させる場合について説明しているが、これを走行中のトロリー14を減速させ、かつその停止時に荷物16に振れを発生させない場合に応用することもできる。この場合、境界条件の式は、
【数3】
となる。
【0040】
この場合は、時間tが0、すなわち、起動前の状態では、ロープ15の振れ角度、振れ角速度、トロリー14の位置がともに0で、トロリー14の速度がV[m/s]となり、加速開始から時間Tが経過した時には、ロープ15の振れ角度、振れ角速度が0、トロリー14の速度が0で、トロリー14の位置が0.5VT[m]となることを示している。
この8個の式(3)と式(1)をもとに上記と同様の手順をふむことにより、減速時の制振起動方式が得られる。
【0041】
図6は、この発明の制振起動方法をプロッタやカッティングマシンのキャリッジに用いる例を示している。図6において、17,18は、それ自身の長手方向に直交する方向に移動自在になったレール部(図示せず)内に所定間隔を保った状態で内蔵された一対のプーリであり、その周囲にベルト19が巻回されている。
【0042】
そして、このベルト19の所定箇所に、ペンまたはカッターを保持するキャリッジ20が固定され、プーリ18には駆動用のモータ21が連結されている。したがって、モータ21の駆動によりプーリ18が回転するとベルト19が走行し、キャリッジ20もベルト19に追従して左右に移動するようになる。
【0043】
このようなキャリッジ20を振動させることなく加速・減速させるには、上記の例と同様、まず、キャリッジ20の運動方程式と、加速開始時刻と加速終了時刻とでキャリッジ20に振動がなく、かつ所定の速度と位置に到達する境界条件を考え、この運動方程式と上記の境界条件から起動方法を決定する。
【0044】
この場合、プーリ17,18間の距離をl[m],モータ21側のプーリ18から原点(キャリッジ20の起動前の初期位置)Oまでの距離をl0 [m],原点からキャリッジ20までの距離をx[m],プーリ18の半径×回転角をy[m]、ベルト19の単位長さにおけるばね定数をk[N],キャリッジ20の質量をm[kg],粘性摩擦係数(主としてレール部とキャリッジ20との間の摩擦)をD[Ns/m]とすると、プーリ17,18の半径がl,10 に比べて充分小さい場合、キャリッジ20におけるベルト19のばね定数に変化を伴う運動方程式は、
【数4】
となる。
【0045】
これは、キャリッジ20における一般的な運動方程式
【数15】
Figure 0003742707
から得ることができる。すなわち、図6において、プーリ18を基準として、キャリッジ20を右側に引っ張るベルトの長さはl0 +yで表せ、キャリッジ20を左側に引っ張るベルトの長さはl+(l−l0 −y)で表すことができる。
【0046】
したがって、ベルト19の合成されたばね定数をKとすると、式(15)の中のkとKとの関係は、K=k/(l0 +y)+k/(2l−l0 −y)となり、この式から、
【数16】
Figure 0003742707
が導かれる。さらに、キャリッジ起動時のプーリ18の円周の平均加速度をα[m/s2 ]とし、かつ、yが平均加速度αで変位する運動に非常に近いと仮定して、y=1/2・αt2 で近似すると式(16)は式(4)に書き換えられる。ただし、α=目標速度V/加速時間Tの関係にある。
【0047】
また、加速開始時と加速終了時でキャリッジ20が振動することなく、かつ、所定の速度と位置に到達する境界条件は、加速終了時刻をT[s]とし、加速終了時のキャリッジ20の速度をV[m/s])としたとき、
【数5】
である。
【0048】
すなわち、この場合は、時間tが0、すなわち、起動前の状態では、キャリッジ20の移動距離,キャリッジ20の速度,プーリ18の半径×回転角,その回転速度がともに0で、加速開始から時間Tが経過した時には、キャリッジ20の移動距離およびプーリ18の半径×回転角がともに0.5VT[m]で、キャリッジ20の速度およびプーリ18の周速度がともにV[m/s]となることを示している。
【0049】
上記の運動方程式(4)および境界条件の式(5)と、式(11)をこのケースに対応するよう変形した時間関数の式から、演算によりキャリッジ20に適応する制振起動の式を求めることができ、この式に沿ってモータ21を回転駆動させることにより、加速終了時に、キャリッジ20に振動が発生しない起動が行えるようになる。
【0050】
なお、ベルト19の合成されたばね定数の計算過程において、y=1/2・αt2 と近似しているが、これは運動方程式(16)および境界条件の式(5)を満たす真の解とは異なる。したがって、この計算手順によって導かれた起動方法の方程式のyは真の解とは厳密には異なり、運動方程式(16)から求められるxも厳密には境界条件の式(5)を満たさない。しかし、yが真の解に十分近ければ、xも式(5)と略同一になる。その結果、実用上十分な制振効果が得られる。
【0051】
たとえば、各パラメーターの条件を、ベルト19の単位長さにおけるばね定数kを320[N],キャリッジ20の質量mを1[kg],プーリ17,18間の距離lを0.3[m],加速時間Tを0.2[s],目標速度Vを0.4[m/s],プーリ18から原点Oまでの距離l0 を0.04[m]とすると、プーリ18の半径×回転角yの時間の関数は、
【数17】
Figure 0003742707
のようになる。
【0052】
この式(17)を2回微分することによって加速度を求め、これに沿って、図7に示すような駆動をするようモータ21を制御することによって、図8に示すような結果を得た。図8によると、略0.2秒を経過したのちは、キャリッジ20が一定の速度で移動することがわかる。キャリッジ20に振動が発生している場合には、速度にむらがでてジグザグの曲線になるはずであるが、この場合には、振動の発生がないため、0.2秒以後は水平な直線で示されている。
【0053】
また、逆に、走行するキャリッジ20を減速して停止させる場合には、境界条件の式が、
【数6】
となる。この場合も、この式(6)等を用いて上記と同様このケースに応じた起動方式を求めることができ、これによって、停止時のキャリッジ20に振動が生じなくすることができる。
【0054】
以上のように、この発明にかかる制振起動方法によれば、クレーン装置やキャリッジ20において、加速・減速後に、制御対象物に振動が発生することを防止できるが、この発明は、上記のクレーン装置やキャリッジ20の外、式(7)の運動方程式に該当するすべての機構を有する装置にも応用することができる。
【0055】
すなわち、式(7)において、mは制御対象点の質量,xは制御対象点の変位(一般化座標),cは粘性摩擦係数,ばね定数,fは駆動点の変位(外力)を示している。そして、この発明が使用可能な装置は、これらに該当する要素を含み、かつその要素の少なくとも1個は時間とともに共振周波数が変化する時変パラメーターである時変振動機構を有するものであればよい。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、この発明による制振起動方法では、使用する装置を共振周波数が時間とともに変化する時変振動機構を有するものとしている。そして、時変振動機構における時変パラメーターを時間の多項式で表した運動方程式を立てるとともに、この装置で駆動する制御対象物の加速の終了時に振動が生じない境界条件を設定する。
【0057】
そして、これらの運動方程式および境界条件の式で係数を決定することが可能な次数の方程式を求め、これらの式から求められる起動方式に沿うように装置を駆動させるようになっている。このように、加速・減速の終了時に振動が生じない条件を予め設定し、これを満足する起動方式を求めるため、駆動する装置は、振動が発生しないための理想的な動作をするようになる。
【0058】
したがって、加速・減速の終了と略同時に制御対象物が停止するようになり、その結果、制御対象物の起動から停止までの時間が短縮できるようになり作業効率が大幅に改善される。また、これによって、制御対象物の振動により生じる他の問題も解消できるようになる。
さらに、この発明は、時変振動機構を有する全ての装置に利用することができるため、実用的効果が極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一例で使用するクレーン装置の駆動部の斜視図である。
【図2】クレーン装置の要部の構成図である。
【図3】クレーン装置におけるトロリーの移動と荷物の振れの関係を示す説明図である。
【図4】加速方法を変えた場合のトロリーの加速度を示す曲線図である。
【図5】加速方法を変えた場合のロープの振れ角度を示す曲線図である。
【図6】この発明の他の例で使用するキャリッジの正面図である。
【図7】プーリの回転の際の周方向の加速度と時間の関係を示す曲線図である。
【図8】プーリの回転の際の周方向の速度と時間の関係を示す曲線図である。
【図9】従来例による駆動力と制御対象点の関係を示す説明図である。
【図10】図7の駆動力を駆動点にかかる力と制御対象点にかかる力とに分けて示した説明図である。
【符号の説明】
10・・・・・駆動部
14・・・・・トロリー
15・・・・・ロープ
16・・・・・荷物
17,18・・プーリ
19・・・・・ベルト
20・・・・・キャリッジ
21・・・・・モータ
c・・・・・・制振加速を示す実線
c’・・・・・制振加速による振れを示す曲線

Claims (4)

  1. 起動後、経時的に共振周波数が変化する時変振動機構を有する装置において、当該装置によって搬送される制御対象物の振動を防止する制振起動方法であって、
    時変パラメーターを時間の多項式で表した前記時変振動機構に対応する運動方程式を立てるとともに、
    前記運動方程式における、前記制御対象物の加速・減速終了時に振動が生じない境界条件の式を設定し、
    時間的にその物理変動量が変化する制御対象物の変数xを時間tの多項式
    Figure 0003742707
    で表現した形式で前記運動方程式に代入し、
    代入後の運動方程式の両辺の時間tの次数が等しく、かつ、境界条件を与える式の個数とから、解を得るのに最適な次数nを決定し、
    代入された運動方程式を解き、前記変数の時間多項式を決定し、
    決定された前記制御対象物の変数の時間変位を定める式に、経過時間を代入して得られる加速度情報を、加速度指令として移動機構に与えることにより、制御対象物を移動させることを特徴とする時変振動機構に用いる制振起動方法。
  2. 装置がクレーンで、時変パラメーターが巻上げ巻下げにより伸縮するロープの長さであり、
    m :荷物の質量[kg]
    0 :初期ロープ長[m]
    1 :ロープの単位時間当たりの長さの変化[m/s]
    θ :ロープの振れ角度[rad]
    D :粘性摩擦係数[Ns/m]
    g :重力加速度[m/s2
    x :トローリの移動距離[m]
    のとき、運動方程式が、
    Figure 0003742707
    で、かつ、
    T :加速終了までの時間[s]
    V :加速終了時のトロリーの速度[m/s]
    のとき、境界条件が式
    Figure 0003742707
    または式
    Figure 0003742707
    である請求項1に記載の時変振動機構に用いる制振起動方法。
  3. 装置がカッティングマシンやプロッタのようにベルトやプーリを介してモータ駆動によりキャリッジを左右に往復移動させる装置で、時変パラメーターがベルトのばね定数であり、
    m :キャリッジの質量[kg]
    l :プーリ間の距離[m]
    0 :モータ側のプーリから原点までの距離[m]
    x :原点からキャリッジまでの距離[m]
    y :駆動プーリの半径×回転角[m]
    k :単位長さにおけるベルトのばね定数[N]
    D :粘性摩擦係数[Ns/m]
    α :プーリ円周の平均加速[m/s2
    のとき、運動方程式が、原点からキャリッジまでの距離x,駆動プーリの半径×回転角yの特性を失わずに、式
    Figure 0003742707
    に近似でき、境界条件が、式
    Figure 0003742707
    または式
    Figure 0003742707
    である請求項1に記載の時変振動機構に用いる制振起動方法。
  4. 使用する装置の運動方程式が、m :制御対象点の質量[kg]
    x :制御対象点の変位[m]
    c :粘性摩擦係数[Ns/m
    ばね定数[N/m]
    f :駆動点の変位[N](外力)
    のとき式
    Figure 0003742707
    に該当する請求項1に記載の時変振動機構に用いる制振起動方法。
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