JP3742698B2 - 荷重支持にチャネルまたは冷却材棒を選択的に用いる燃料集合体構造および方法 - Google Patents

荷重支持にチャネルまたは冷却材棒を選択的に用いる燃料集合体構造および方法 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
この発明は、沸騰水型原子炉容器における燃料集合体の構造に関し、特に、燃料集合体の荷重を支持するのに冷却材棒を選択的に利用し、これにより燃料タイロッドを用いる必要をなくした、燃料集合体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
沸騰水型原子炉容器における従来の燃料集合体は、下部タイプレート、上部タイプレート、そして上部および下部タイプレート間に支持された複数の密閉燃料棒の配列を含む。燃料棒は、蒸気を発生させるのに必要な臨界反応を支持するために、密閉容器内に核燃料ペレットを収容したものである。燃料棒の配列内には1本以上の冷却材棒が含まれ、同じく上部および下部タイプレート間に支持されている。タイプレート、燃料棒および冷却材棒はチャネルで囲まれている。このチャネルは、通常、断面が正方形で、金属(好ましくはジルカロイと称される合金)で形成される。水が燃料集合体の底部から頂部に流れる。水は、チャネル内の下部タイプレートを経て内部に入り、直立している燃料棒間を通過する。水と発生した蒸気が燃料棒間のチャネル内部から、上部タイプレートを通って外に出る。チャネルは、必要な減速冷却材の流れを、タイプレート間に限定された流路に閉じこめる。
【0003】
下部タイプレートおよび上部タイプレートは、密閉された燃料棒を鉛直な直立する格子配列状態に支持する役目を果たす。代表的には、上部タイプレートは、燃料棒支持点の上方格子配列を形成する。通常、これらの支持点のうち約8個に対応するおすねじ付きタイロッドおよび取付け具を配置する。タイロッドは、燃料棒と同様の燃料を収容し、下端がねじ切りされ、下部タイプレートに取り付けられるようになっている。同様に、下部タイプレートは、燃料棒支持点の下方格子配列を形成する。これらの下方支持点は、大部分、上部タイプレートの上方支持点に対応する。通常、これらの支持点のうち約8個にめすねじ穴をねじ切りする。これらのねじ穴は、上部タイプレートの上方穴に対応する。下部タイプレートのこれらのねじ切り支持点に燃料タイロッドのねじ切り下端を配置する。こうして、通常、2つのタイプレートを燃料タイロッドで一緒に結着する。
【0004】
またタイプレートは、流体流れを燃料集合体に出入りさせる開口の格子配列を画定する。具体的には、下部タイプレートは、水冷却材を内部に入れるための開口の第1格子配列を画定する。この冷却材は、反応で生成したはやい中性子を減速、すなわちスローダウンして反応を継続するおそい(または熱)中性子を生成する能力を発揮する。同時に、冷却材がチャネル内の燃料集合体を通して上方に通過するにつれて、冷却材の一部が蒸気に変換される。この蒸気と蒸気に変換されず、液相に留まっている冷却材は、上部タイプレートを通って外に出る必要がある。その結果、上部タイプレートには、燃料棒支持点の格子配列間に、独特の開口の配列を形成する。上部タイプレートの開口配列は、蒸気/水の2相混合物が燃料集合体から外に流れ出るのを許す。
【0005】
燃料バンドルは、炉のいわゆる「停止」(outage)時に定期的に交換および/または点検する必要がある。原子炉の中心にある蒸気を発生する炉心から上置き要素を取り除いて、遮蔽水を通して炉心へのアクセスを可能にしたときに、このような停止が起こる。このような「停止」中に、炉容器炉心の数セクションの取外し、検査および/または交換を行う。放射線抑制用水浴に沈められた炉心においては、燃料集合体をハンドルで遠隔把持することにより、検査のために交換すべき燃料バンドルを取り外す。ハンドルは、燃料集合体を容器から取りはずすときに、ハンドルに対して従属関係にある燃料集合体の全重量に対する支持点を、燃料集合体の頂部に設定しなければならない。ひとたび燃料集合体をハンドルで支持したら、燃料集合体の全重量はハンドルにより支えられる。この重量には、燃料棒および冷却材棒の重量、上部タイプレートの重量、下部タイプレートの重量および包囲チャネルの重量が含まれる(600ポンド以上)。
【0006】
ひとたび燃料集合体を容器から取りはずしたら、タイプレート、燃料棒および冷却材棒をチャネルから分離することができる。チャネルから分離してしまえば、燃料棒の検査および/または交換は容易である。しかし、従来、燃料タイロッドのねじ切り端栓がそのねじ連結部で焼きつく傾向があり、このため燃料タイロッドの交換が困難で時間がかかるものとなっている。さらに、燃料集合体の設計寿命が長くなるにつれて、腐食作用により燃料タイロッドが弱くなる。この弱化が起こるのは、材料の腐食薄肉化のせいで、また水素の発生およびその吸収による延性の減少による。
【0007】
したがって、上部および下部タイプレート間にねじ係合により連結された燃料タイロッドを含まない燃料集合体構造を開発する必要がある。さらに、燃料集合体のために、腐食作用による影響の少ない構造的荷重経路を利用する必要がある。一般に、腐食は表面現象であるので、体積対表面積比が高い構造体はこの点での余裕が大きい。沸騰水型炉の燃料集合体の通常の設計に余分な構造をつけ加えなければ、体積対表面積比がもっとも高い構成要素はチャネルである。チャネルを用いて荷重を支持する燃料集合体が、本出願人の1995年10月12日付け米国出願番号08/542382(平成8年特許願第263411号)に記載されている。
【0008】
燃料集合体荷重を支えるのにチャネルおよび冷却材棒を選択的に使用できるようにし、燃料集合体全体を炉容器から取りはずすか、燃料バンドル(すなわち、チャネルなし)のみを炉容器から取りはずすことができれば、有効である。
【0009】
【発明の開示】
したがって、この発明の目的は、燃料集合体荷重を支えるための構造部材としてチャネルおよび冷却材棒を選択的に使用できるようにする燃料集合体構造を提供することにある。この発明の別の目的は、燃料タイロッドを利用しない荷重経路を介して燃料集合体を吊り上げることを可能にする燃料集合体構造を提供することにある。この発明の他の目的は、燃料バンドルおよび燃料集合体を吊り上げる方法を提供することにある。
【0010】
このような目的を達成するために、この発明によれば、複数の燃料棒および少なくとも1本の冷却材棒を包囲する燃料集合体チャネルを含む沸騰水型原子炉におけるタイプレート用のラッチピン装置(アセンブリ)が提供される。ラッチピン装置は、燃料集合体チャネルおよび冷却材棒と選択的に係合可能なラッチピンと、前記ラッチピンと協動するアンカーアセンブリとを備える。アンカーアセンブリは、ラッチピンが燃料集合体チャネルおよび冷却材棒の少なくとも一方と係合するようにラッチピンを選択位置に係止する。
【0011】
前記ラッチピンが燃料集合体チャネルおよび冷却材棒のいずれかと係合可能であるか、燃料集合体チャネルおよび冷却材棒と同時に係合可能であるのがよい。好ましくは、前記タイプレートがラッチピン内腔を含み、ラッチピンがラッチピン内腔内に移動自在に配置されている。好適な実施例では、ラッチピンに、前記ラッチピン内腔の外端を画定するヘッドを設け、前記ラッチピン装置はさらに、前記ヘッドと前記ラッチピン内腔の内端間に配置されたばねを含む。この実施例では、ばねが前記ラッチピンを前記燃料集合体チャネルと係合する位置に向かって押圧する。
【0012】
前記アンカーアセンブリが、ラッチピン内腔に形成された少なくとも1個の環状溝と、前記ヘッドを貫通してヘッドの直径方向両側から半径方向外向きに延在するアンカーピンとを備え、前記アンカーピンが前記環状溝にはまる形状とすることが出来る。第1の構成例では、前記アンカーアセンブリが、前記ラッチピン内腔に形成された2個の環状溝を備える。一方の環状溝は、前記ラッチピンが前記冷却材棒と係合する第1ラッチピン位置に対応し、他方の環状溝は、前記ラッチピンが前記燃料集合体チャネルおよび前記冷却材棒からはずれる第2ラッチピン位置に対応する。前記ラッチピンは、前記ラッチピンが前記燃料集合体チャネルと係合し、かつ前記アンカーピンが2個の前記環状溝のいずれにもはまらない第3ラッチピン位置に移動できるような形状とするのがよい。
【0013】
別の構成例では、前記アンカーアセンブリが前記ラッチピンの前記ヘッドとは反対の端部に配置されたフックを備え、前記フックが冷却材棒と選択的に係合可能である。この構成では、前記フックが前記ラッチピンの長さ方向軸線からずれて配置されている。前記ラッチピンは、前記ラッチピン内腔内に回転自在に配置され、前記フックが前記冷却材棒と係合する係合位置と、前記フックが前記冷却材棒からはずれる非係合位置との間でラッチピンの長さ方向軸線のまわりを回転する。またさらに、前記ラッチピンは前記ラッチピン内腔の内端にあけた穴を貫通し、前記フックが前記ヘッドとは反対側の、前記穴を通り越したラッチピンの端部に固定される。この配置では、前記アンカーアセンブリはさらにストッパ面を含み、前記非係合位置で前記フックがストッパ面に当接する。
【0014】
前記ラッチピンが、前記ラッチピン内腔内に移動自在に配置された内側シャフトと、この内側シャフトを包囲し、前記ラッチピン内腔内に移動自在に配置された外側シャフトとを含み、前記内側シャフトが前記外側シャフトに対して相対移動可能とすることが出来る。この配置では、前記アンカーアセンブリが、前記ラッチピン内腔に形成された少なくとも1つの環状溝と、前記外側シャフトに形成された穴と、この穴内に配置され、前記環状溝および前記内側シャフトと係合可能なアンカー部材とを備える。アンカー部材がボールであるのがよい。前記アンカーアセンブリが前記ラッチピン内腔に形成された2個の環状溝を備える。一方の環状溝は、前記ラッチピンが前記冷却材棒と係合する第1ラッチピン位置に対応し、他方の環状溝は、前記ラッチピンが前記燃料集合体チャネルと係合する第2ラッチピン位置に対応する。前記内側シャフトが、冷却材棒と係合し得る係合シャフト部分と、移行シャフト部分と、内側シャフトヘッドとを備え、前記内側シャフトヘッドが第1直径部分と、テーパ部分と、直径が第1直径部分より小さい第2直径部分とを備え、前記アンカー部材が前記内側シャフトに前記内側シャフトヘッドのテーパ部分で係合する。前記ラッチピンがさらに、前記外側シャフトの内端に固定され、前記外側シャフトの内側に受けを画定するロックリングを備え、前記ラッチピン装置がさらに、前記受けと前記内側シャフトヘッドの第1直径部分との間に配置されたばねを備え、このばねが前記ラッチピンを前記燃料集合体チャネルと係合する位置に向けて押圧する。前記外側シャフトが前記燃料集合体チャネルと係合し得る外側シャフトヘッドを備え、前記外側シャフトヘッドが、もっとも内側の第1直径と、第1直径より小さい中間位置の第2直径と、第2直径より大きいもっとも外側の第3直径を有する。
【0015】
この発明の別の観点によれば、複数本の燃料棒と、少なくとも1本の冷却材棒と、前記燃料棒および冷却材棒を包囲する燃料集合体チャネルと、前記燃料集合体チャネルの内側に配置され、前記燃料棒および冷却材棒を横方向に支持する上部タイプレートと、前記燃料集合体チャネルおよび冷却材棒と選択的に係合し得るラッチピン装置とを備える燃料集合体が提供される。
【0016】
前記ラッチピン装置がラッチピンを備え、前記冷却材棒が前記ラッチピンを受け入れる形状とされた係合穴を備えるようにすることが出来る。前記ラッチピン装置がさらに、前記ラッチピンと協動するアンカーアセンブリを備えるのがよい。前記アンカーアセンブリは、ラッチピンが燃料集合体チャネルおよび冷却材棒の少なくとも一方と係合するようにラッチピンを選択位置に係止する。前記ラッチピンが燃料集合体チャネルおよび冷却材棒のいずれかと係合可能であるか、燃料集合体チャネルおよび冷却材棒と同時に係合可能である。前記タイプレートがラッチピン内腔を含み、前記ラッチピンが前記ラッチピン内腔内に移動自在に配置することが出来る。前記ラッチピンが前記ラッチピン内腔の外端を画定するヘッドを備え、前記ラッチピン装置がさらに、前記ヘッドと前記ラッチピン内腔の内端間に配置されたばねを備え、このばねが前記ラッチピンを前記燃料集合体チャネルと係合する位置に向かって押圧する。
【0017】
この発明のさらに他の観点によれば、沸騰水型原子炉において燃料集合体を吊り上げる方法が提供される。この方法は、ラッチピン装置を燃料集合体チャネルおよび冷却材棒と選択的に係合可能とし、ラッチピンが燃料集合体チャネルおよび冷却材棒の少なくとも一方と係合するように、ラッチピンを選択位置に係止し、燃料集合体を上部タイプレートを介して吊り上げる工程を含む。
【0018】
【発明を実施する最良の態様】
この発明の上記および他の特徴と効果をさらに明瞭にするために、以下にこの発明の好適な実施態様を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に、この発明の1実施例による沸騰水型原子炉用の燃料集合体(フュールアセンブリ)の断面を示す。燃料集合体10は、複数本の燃料棒12と、1対の冷却材棒14(好適な実施例として2本の冷却材棒14を図示し、説明するが、燃料集合体によっては1本の冷却材棒を使用することも多い)と、これらの燃料棒12および冷却材棒14を取り囲むチャネル16とを含む。燃料棒12は10X10の行列に配置するのが好ましく、複数のスペーサ18によりチャネル内で横移動しないように固定されている。冷却材棒14は通常、燃料棒配列の中心に配置される。冷却材棒14の上端および下端両方に小さな穴を設けて、水を冷却材棒内に引きこむことができるようにし、こうして減速材を燃料棒配列内に導入する。1本のウォータロッドは、スペーサ18それぞれに機械的にロックされたスペーサ捕捉棒としても機能し、これにより各スペーサ18の軸線方向位置を固定する。燃料棒スペーサ18にインコネルXのばねを設けて燃料棒間の間隔を維持する。
【0019】
燃料棒12および冷却材棒14は下部タイプレート20により支持されている。上部タイプレート22は燃料棒12および冷却材棒14を受け入れ、その横移動を阻止する。燃料棒の端栓はピンを有し、そのピンがタイプレート20、22のアンカー穴にはまる。各燃料棒の上部端栓の上に膨張空間を確保し、燃料棒が軸線方向に膨張するのを許す。つまり、燃料棒が上部タイプレート22の穴内ですべることで、軸線方向熱膨張差を吸収する。従来の構造とは異なり、燃料棒を下部タイプレート20または上部タイプレート22にねじ込まない。冷却材棒14の片方または両方を下部タイプレート20にしっかりねじ込んでもよい。従来技術と関連して前述したように、長期の浸漬時間の間にねじ山が焼きつきを起こしがちであるので、なんであれタイプレート20、22にねじ込むのは望ましくない。しかし、燃料棒12とは異なり、冷却材棒14は燃料棒12程頻繁にバンドルから引き抜く必要がない。したがって、この発明では、冷却材棒14はねじ込みその他の手段でしっかりと下部タイプレート20に固定する。
【0020】
ノーズピース26への移行部分として機能する移行部材24が、下部タイプレート20をチャネル16内に支持する。チャネル16を適当な構造により移行部材24に固着する。図示の実施例では、ボルト28をチャネル16を経て移行部材24にねじ込んでいる。チャネル16のほぼ正方形の断面の各側面に一つずつ、4個のボルト28をねじ込むのが好ましい。移行部材24には、その対応する正方形断面の各側面に、対応するボルト受け取り穴30がねじ切りされている。ボルト28は合金X−750製とするのが好ましい。
【0021】
ベイルハンドル・アセンブリ32が上部タイプレート22と一体である。図1および図2に示すように、ベイルハンドル・アセンブリ32はベイルハンドル33および2つのボス部材34を含む。図3は図2のIII−III線方向に見た断面である。ボス部材34には、内部に内腔(チャネル)36が形成されている。ラッチピン38が内腔36内に移動自在に配置されている。ラッチピンキャップまたはヘッド40がラッチピン38の外端に固定され、キャップ40のもっとも外側の第1直径は、チャネル16のラッチピン穴42を通過できる形状となっており、もっとも内側の第2直径は、チャネル16のラッチピン穴42より大きく、ラッチピン38用のストッパ面として作用する。ラッチピンキャップ40の内側面はボス部材34の内腔36の境界を決める。ばね44が、ラッチピンキャップ40の内側面と内腔36の端部との間で、内腔36内にかつラッチピン38のまわりに配置されている。ばね44はラッチピン38を、チャネル16のラッチピン穴42に係合する伸長位置に押圧する。
【0022】
作動時には、移行部材24がボルト28によりチャネル16に剛固に固着されているので、またラッチピン38がチャネル16のラッチピン穴42に挿入されているので、燃料集合体10をベイルハンドル・アセンブリ32で吊りあげる際に、チャネル16が燃料集合体10の構造的荷重を支える。前述したように、チャネル16は、燃料集合体10内の構成要素のうちもっとも高い体積対表面積比を有し、うまく腐食作用を免れる。
【0023】
図3にさらに言及すると、ボルト43が、ウォータロッド14間かつ上部タイプレート22の穴45内に配置されている。ボルト43は内腔47中に延在する。ほぼ円筒形の部材51がボルト43の端部に固着され、内腔47の境界を決めている。ばね53が、円筒形部材51と内腔47の頂部とによって画定された空間内で、ボルト43のまわりに配置されている。ばね53は、図3に示すように、上部タイプレート22をウォータロッド主ばねサポート55から離間した状態に維持する役目を果たす。さらに、ばね53は、ラッチピン38がラッチピン穴42の上端に係合するように、上部タイプレート22を上向きに押しあげる。またさらに、ウォータロッド主ばねの予備荷重力を上部タイプレート22からそらせる。
【0024】
図4に、この発明によるラッチピン装置(アセンブリ)100を示す。ラッチピン・アセンブリ100は、ラッチピン38により上部タイプレート22とチャネル16間または上部タイプレート22と冷却材棒14間に選択的に取り付けることができる。図4に示すように、この実施例の冷却材棒14は上部タイプレート22を貫通してさらに上方に延在する。図3に示す実施例と同様、ラッチピン38はボス部材34の内腔36内を移動でき、ばね44がラッチピン38を取り囲み、ラッチピン38をチャネルと係合する方向に押圧する。ラッチピン38の端部が上部タイプレート22の穴108を貫通する。
【0025】
ラッチピン38の端部キャップまたはヘッド40′は、アンカーピン102がヘッド40′に貫通しかつヘッド40′の直径方向反対側から半径方向外向きに延在するように、変更されている。内腔36には、アンカーピン102を受け入れる形状の2つの環状溝104が設けられている。
図4に示す位置において、アンカーピン102は内腔36の溝104からはずれている。したがって、ばね44がラッチピン38をチャネルと係合するもっとも外側の位置に押圧する。図5に移ると、ラッチピン38を、好ましくは外部工具(図示せず)により、内向きに駆動すると、ラッチピンシャフトが冷却材棒14の穴106を貫通する。アンカーピン102の位置が2つの溝104のうち内側の溝と合致したとき、外部工具によりラッチピン38を、アンカーピン102が溝104にはまるまで、約90°回転する。この位置で、燃料集合体をベイルハンドル33で吊り上げると、燃料バンドルを容器から取り外すことができ、チャネルは所定位置に留まる。図5に示す位置を第1ラッチピン位置と呼ぶ。
【0026】
図6に、アンカーピン102が2番目の溝104と係合している、第2ラッチピン位置を示す。この位置で、ラッチピン38が冷却材棒14ともチャネル16とも係合していないので、上部タイプレート20を燃料集合体から取りはずすことができる。図4に示す位置では、燃料集合体をベイルハンドル33により吊り上げると、燃料集合体全体を容器から取りはずすことができる。
【0027】
図7−図10に、この発明の別の実施例によるラッチピン装置(アセンブリ)200を示す。この配置では、ラッチピン38′は、上部タイプレート22の穴108を貫通するラッチピン38′の端部にフック部材202が固定されたものに変更されている。アーム部材204がラッチピン38′の端部から延在し、そしてフック部材202がラッチピン38′の長さ方向軸線206からずれるように、フック部材202がアーム部材204の端部に固定されている。その結果、フック部材202を回転して冷却材棒14と係合または脱離することができる。外部工具(図示せず)によりラッチピン38′を回転する。
【0028】
この構成において、フック部材202を冷却材棒14と係合させたとき、ヘッド40はチャネルから引き抜かれた状態に維持される。したがって、燃料集合体をベイルハンドル33で吊り上げるとき、燃料バンドルを、チャネル16なしで、炉容器から取りはずすことができる。図9および図10においては、外部工具によりラッチピン38′を回転することにより、フック部材202を冷却材棒14からはずす。フック部材202を係合状態から解放すると、ばね44がラッチピン38′を外向きに押すので、ヘッド40がチャネル16に係合する(図9参照)。この位置で、燃料集合体をベイルハンドル33で吊り上げると、燃料集合体全体を炉容器から取りはずすことができる。表面208は、ラッチピン38をチャネル16と係合させるときに、フック部材202に対するストッパ面となる。さらに、非係合位置において、フック部材202はウォータロッドに接触しない(図10参照)。
【0029】
図11−図14に、この発明のさらに他の実施例によるラッチピン装置(アセンブリ)300を示す。図11において、この実施例のラッチピンは、外側シャフト302と内側シャフト304とからなる。外側シャフト302は、内腔36内に配置され、内側シャフト304を取り囲んでいる。外側シャフト302のヘッド部分には、燃料集合体のチャネル16を受け入れるようになった凹所306が設けられている。外側シャフト302には、外側シャフト302の外周に沿ってほぼ均等間隔で、複数(3個以上、好ましくは5個)の穴308があけられている。穴308はアンカー部材またはボール310を受け入れる形状となっている。ロックリング312が外側シャフト302の最内端に、好ましくはねじにより固着され、ばね44用の受けとなる。
【0030】
内側シャフト304は係合シャフト部分314と、移行シャフト部分316と、内側シャフトヘッド318とを含む。内側シャフトヘッド318は、第1直径部分320と、テーパ部分322と、第1直径部分320より直径が小さい第2直径部分324とを含む。テーパ部分322は外側シャフト302に対して穴308に隣接して位置するので、ボール310がテーパ部分322に接触する。内腔36には、ボール310を受け入れる形状の2つの環状溝326が形成されている。
【0031】
図11に示した位置で、外側シャフト302の凹所形成部分306はチャネル16の穴から突出しているので、ラッチピン装置が上部タイプレート22とチャネル16とを連結する。ばね44が、内側シャフトヘッド318を押圧するので、内側シャフトヘッドのテーパ部分322がボール310を外向きに駆動し、溝326と係合させる。その結果、ラッチピン装置300はチャネル係合位置にしっかり固定される。
【0032】
ラッチピン装置がチャネル16からはずれ、冷却材棒と係合するようにラッチピン装置を移動するには、外部工具により、内側シャフト304をばね44の力に抗して内方にずらす。その結果、テーパ部分322が相対移動するので、ボール310が溝326との密接な係合関係から解放される。つぎに、外部工具を用いて外側シャフト302を内方に、ボール310が内側の溝326にはまるまで、駆動する。図12に示すこの状態で、内側シャフト304を冷却材棒14の穴328内に駆動し、これにより冷却材棒14と係合する。したがって、燃料集合体をベイルハンドル33で吊り上げれば、燃料バンドルを、チャネルなしで、炉容器から取りはずすことができる。
【0033】
図13に、この発明のさらに他の実施例によるラッチピン装置(アセンブリ)400を示す。この配置では、ラッチピン38″が、工具402を受け入れる中空なものに変更されている。工具402はラッチピン38″内で、燃料集合体チャネル係合位置(図13に示す)と冷却材棒係合位置との間を移動できる。工具402に、遠隔操作できるハンドル404を設けるのがよい。作動時には、オペレータが工具402を内向きに移動して冷却材棒14と係合させる。工具の長さは、燃料集合体チャネル16および冷却材棒14と同時に係合するか、燃料集合体チャネル16のみに係合するような長さとする。工具の形状は、燃料バンドルをチャネルから取りはずした後冷却材棒に係合できるような形状とするのがよい。工具402には、これをラッチピン38″内の所定位置にロックする構造を設けるのが好ましい。
【0034】
ラッチピン装置100、200、300、400の構成要素はインコネルX−750から形成するのが好ましく、成形部材(たとえば、ヘッド40、ラッチピン38′、内側シャフト304)は棒材から切削加工するのが好ましい。もちろん、当業者であればこれらの構成要素を形成する他の材料や方法も想起できるであろう。この発明は、上に図解し説明した構造に限定されない。
【0035】
図14は、この発明による別のハンドルアセンブリの斜視図である。このハンドルアセンブリを用いれば、この発明のラッチピン装置を、燃料棒を受け入れる上部タイプレート格子を持たない燃料集合体に組み込むことが可能である。燃料集合体の頂部付近に追加のスペーサ18(図1参照)を設けるか、複数のスペーサ18の間隔を燃料集合体に沿ってさらに広げることができる。
【0036】
ハンドルアセンブリ500は、内腔506が内部に形成された1対のボス部材504と一体のベイルハンドル502を含む。1対のアウトリガー510を有する交差部材508は、ベイルハンドル502とほぼ直交するような形状となっている。図14に示すように、ハンドルアセンブリ500の中心平面は、内腔506の長さ方向軸線が規定する平面より下方に位置する。冷却材棒14は中心平面にあけた穴512を上向きに貫通する。この発明のラッチピン装置をハンドルアセンブリ500の構造に組み込むのは容易である。
【0037】
以上、この発明を現在のところもっとも実用的かつ好適と考えられる実施例について説明したが、この発明は図示の実施例に限定されず、特許請求の範囲に含まれる種々の改変や均等な配置をすべて包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による燃料集合体の断面図である。
【図2】図1のII−II線方向に見た図である。
【図3】図2のIII−III線方向に見た断面図である。
【図4】この発明のラッチピン装置の断面図である。
【図5】冷却材棒に係合した状態のラッチピン装置の断面図である。
【図6】中立位置にあるラッチピン装置の断面図である。
【図7】この発明の別の実施例によるラッチピン装置の断面図である。
【図8】図7のラッチピン装置の平面図である。
【図9】燃料集合体チャネルに係合している図7のラッチピン装置の断面図である。
【図10】図9のラッチピン装置の平面図である。
【図11】この発明の他の実施例によるラッチピン装置の断面図である。
【図12】燃料集合体チャネルに係合している図11のラッチピン装置の断面図である。
【図13】この発明のさらに他の実施例によるラッチピン装置の断面図である。
【図14】この発明の別の実施例によるハンドルアセンブリの斜視図である。
【符号の説明】
10 燃料集合体
12 燃料棒
14 冷却材棒
16 チャネル
20 下部タイプレート
22 上部タイプレート
32 ベイルハンドル・アセンブリ
34 ボス部材
36 内腔
38 ラッチピン
40 ラッチピンキャップ
42 ラッチピン穴
44 ばね
100 ラッチピン装置
102 アンカーピン
104 環状溝
200 ラッチピン装置
202 フック部材
204 アーム部材
300 ラッチピン装置
302 外側シャフト
304 内側シャフト
310 ボール
312 ロックリング
314 係合シャフト部分
316 移行シャフト部分
318 内側シャフトヘッド
320 第1直径部分
322 テーパ部分
324 第2直径部分
326 環状溝
400 ラッチピン装置
402 工具

Claims (17)

  1. 複数の燃料棒および少なくとも1本の冷却材棒を包囲する燃料集合体チャネルを含む沸騰水型原子炉におけるタイプレート用のラッチピン装置において、
    燃料集合体チャネルおよび冷却材棒と選択的に係合可能なラッチピンと、
    前記ラッチピンと協動するアンカーアセンブリとを備え、
    前記アンカーアセンブリは、ラッチピンが燃料集合体チャネルおよび冷却材棒の少なくとも一方と係合するようにラッチピンを選択位置に係止するラッチピン装置。
  2. 前記ラッチピンが燃料集合体チャネルおよび冷却材棒と同時に係合可能である、請求項1に記載のラッチピン装置。
  3. 前記タイプレートがラッチピン内腔を含み、前記ラッチピンが前記ラッチピン内腔内に移動自在に配置されている、請求項1に記載のラッチピン装置。
  4. 前記ラッチピンが前記ラッチピン内腔の外端を画定するヘッドを備え、前記ラッチピン装置がさらに、前記ヘッドと前記ラッチピン内腔の内端間に配置されたばねを備え、このばねが前記ラッチピンを前記燃料集合体チャネルと係合する位置に向かって押圧する、請求項3に記載のラッチピン装置。
  5. 前記アンカーアセンブリが、前記ラッチピン内腔に形成された少なくとも1個の環状溝と、前記ヘッドを貫通してヘッドの直径方向両側から半径方向外向きに延在するアンカーピンとを備え、前記アンカーピンが前記少なくとも1つの環状溝にはまる形状となっている、請求項4に記載のラッチピン装置。
  6. 前記アンカーアセンブリが、前記ラッチピン内腔に形成された2個の環状溝を備え、一方の環状溝は、前記ラッチピンが前記冷却材棒と係合する第1ラッチピン位置に対応し、他方の環状溝は、前記ラッチピンが前記燃料集合体チャネルおよび前記冷却材棒からはずれる第2ラッチピン位置に対応する、請求項5に記載のラッチピン装置。
  7. 前記ラッチピンは、前記ラッチピンが前記燃料集合体チャネルと係合し、かつ前記アンカーピンが前記2個の環状溝のいずれにもはまらない第3ラッチピン位置に移動できるような形状とされている、請求項6に記載のラッチピン装置。
  8. 前記アンカーアセンブリが前記ラッチピンの前記ヘッドとは反対の端部に配置されたフックを備え、前記フックが冷却材棒と選択的に係合可能である、請求項4に記載のラッチピン装置。
  9. 前記フックが前記ラッチピンの長さ方向軸線からずれて配置されている、請求項8に記載のラッチピン装置。
  10. 前記ラッチピンは、前記ラッチピン内腔内に回転自在に配置され、前記フックが前記冷却材棒と係合する係合位置と、前記フックが前記冷却材棒からはずれる非係合位置との間でラッチピン自身の長さ方向軸線のまわりを回転する、請求項8に記載のラッチピン装置。
  11. 前記ラッチピンは前記ラッチピン内腔の内端にあけた穴を貫通し、前記フックが前記ヘッドとは反対側の、前記穴を通り越したラッチピンの端部に固定され、前記アンカーアセンブリはさらにストッパ面を含み、前記非係合位置で前記フックがストッパ面に当接する、請求項10に記載のラッチピン装置。
  12. 前記ラッチピンが、前記ラッチピン内腔内に移動自在に配置された内側シャフトと、この内側シャフトを包囲し、前記ラッチピン内腔内に移動自在に配置された外側シャフトとを含み、前記内側シャフトが前記外側シャフトに対して相対移動可能である、請求項3に記載のラッチピン装置。
  13. 前記アンカーアセンブリが、前記ラッチピン内腔に形成された少なくとも1つの環状溝と、前記外側シャフトに形成された穴と、前記穴内に配置され、前記少なくとも1つの環状溝および前記内側シャフトと係合可能なアンカー部材とを備える、請求項12に記載のラッチピン装置。
  14. 前記アンカー部材がボールであり、前記アンカーアセンブリが前記ラッチピン内腔に形成された2個の環状溝を備え、一方の環状溝は、前記ラッチピンが前記冷却材棒と係合する第1ラッチピン位置に対応し、他方の環状溝は、前記ラッチピンが前記燃料集合体チャネルと係合する第2ラッチピン位置に対応する、請求項13に記載のラッチピン装置。
  15. 前記内側シャフトが、冷却材棒と係合し得る係合シャフト部分と、移行シャフト部分と、内側シャフトヘッドとを備え、前記内側シャフトヘッドが第1直径部分と、テーパ部分と、直径が第1直径部分より小さい第2直径部分とを備え、前記アンカー部材が前記内側シャフトに前記内側シャフトヘッドのテーパ部分で係合する、請求項13に記載のラッチピン装置。
  16. 前記外側シャフトが前記燃料集合体チャネルと係合し得る外側シャフトヘッドを備え、前記外側シャフトヘッドが、もっとも内側の第1直径と、第1直径より小さい中間位置の第2直径と、第2直径より大きいもっとも外側の第3直径を有する、請求項12に記載のラッチピン装置。
  17. 燃料集合体を備え、この燃料集合体が、複数本の燃料棒と、少なくとも1本の冷却材棒と、前記燃料棒および冷却材棒を包囲する燃料集合体チャネルと、この燃料集合体チャネルの内側に配置され、前記燃料棒および冷却材棒を横方向に支持する上部タイプレートと、前記燃料集合体チャネルおよび冷却材棒と選択的に係合し得るラッチピンとを備える、沸騰水型原子炉において、
    前記ラッチピンを前記燃料集合体チャネルおよび冷却材棒と選択的に係合可能とし、前記ラッチピンが前記燃料集合体チャネルおよび冷却材棒の少なくとも一方と係合するように、ラッチピンを選択位置に係止し、前記燃料集合体を前記上部タイプレートを介して吊り上げる工程を含む沸騰水型原子炉において燃料集合体を吊り上げる方法。
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