JP3741072B2 - エアバッグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置に使用されるエアバッグに関し、特に、膨張完了時にエアバッグの厚さや形状を規制するためのテザーを備えたエアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、エアバッグ装置のエアバッグとしては、特開2001−114060に示す構成のものがあった。このエアバッグ装置では、エアバッグが、エアバッグの外周壁を構成する可撓性を有したエアバッグ本体と、可撓性を有した布材からなる帯状のテザーと、を備えていた。
【0003】
テザーは、長さ方向の両端部をエアバッグ本体に結合させる結合端として、膨張完了時のエアバッグ本体の形状を規制していた。すなわち、上記公報のテザーは、エアバッグ本体の厚さを規制して、エアバッグ本体の板形状を維持させるために、配設されていた。
【0004】
しかし、テザーには、エアバッグ本体の膨張完了時、大きなテンションが作用することから、テザーの結合端が、破損し易かった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、テザーにおけるエアバッグ本体との結合部位の破損を、簡便な構成で、防止することができるエアバッグを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るエアバッグは、膨張完了時の外周壁を構成する可撓性を有した袋状のエアバッグ本体と、
長さ方向の端部をエアバッグ本体に結合させる結合端として、膨張完了時のエアバッグ本体の形状を規制可能な、可撓性を有した帯状の布材からなるテザーと、
を備えて構成されるエアバッグであって、
テザーの結合端が、テザーの幅方向における少なくとも一方の縁側に、テザーの長さ方向に沿う折目を付けるように、テザー用の布材の縁を折って形成した折り部、を備え、
テザーの折り部が、布材を重ねて一体化させた状態で、エアバッグ本体に結合されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るエアバッグでは、テザーの結合端におけるテザー幅方向の少なくとも一方の縁側において、テザーが、折り部の重ねた複数層の何れかを、補強用(緩衝用)の当て布のように使用して、エアバッグ本体に結合されている。そのため、エアバッグの膨張時に、強い衝撃が、テザー結合端のエアバッグ本体との結合部位における縁側端部に加わっても、その衝撃が緩和されて、テザーの破損が抑えられる。
【0008】
特に、この折り部は、テザーの幅方向の縁を折るものであり、テザーの長さ方向の縁を折って、エアバッグ本体と結合させるものでない。そのため、テザーに引張力が作用した際、テザーにおけるエアバッグ本体との結合部位のエリアの中では、特に、テザーの幅方向の縁側端部に、応力集中が生じやすい。しかし、本発明では、テザーの幅方向の縁側を折って、折り部が形成されている。そのため、折り部を、テザーの長さ方向に沿う全長に、配設させることが可能となって、テザーにおけるエアバッグ本体との結合部位の縁側端部に作用する応力集中を、折り部の折り重ねた層数(枚数)に応じて、分散させることができる。その結果、本発明のテザーは、テザーの長さ方向の縁を折ってエアバッグ本体に結合させる場合に比べて、テザーにおけるエアバッグ本体との結合部位の破損を、一層、防止することができる。
【0009】
そして、このテザーにおけるエアバッグ本体との結合部位の破損を防止する構成は、テザーの幅方向の縁を、単に、折るだけで、簡単に、形成できる。
【0010】
したがって、本発明に係るエアバッグでは、テザーにおけるエアバッグ本体との結合部位の破損を、簡便な構成で、防止することができる。
【0011】
なお、帯状のテザーの折り部は、テザーの幅方向の両縁に、それぞれ、設けてもよいが、テザーの幅方向の両縁において、一方の縁が、他方の縁に比べて、大きなテンションを受ける場合には、その一方の縁側だけに、折り部を設けて、テザーをエアバッグ本体側に結合させてもよい。
【0012】
そして、テザーにおける折り部と、エアバッグ本体における折り部との結合部位と、の間に、可撓性を有した補強布が、介在されていれば、補強布が、エアバッグ本体の緩衝材となり、エアバッグ本体におけるテザーとの結合部位の破損を、防止することができる。
【0013】
そして、この場合、補強布が、テザー用の布材に予め一体化されて設けられている補強部から構成されて、テザー用の布材に一体化されていれば、補強布がテザー用布材と別体の場合に比べて、テザー用布材と補強布とのエアバッグ本体への位置決め等の配置作業が、容易となる。すなわち、補強布が、テザー用布材と別体としていれば、テザー用布材とエアバッグ本体との間から、大きく外れたり、落ちたりする場合が生ずる。しかし、補強布が、テザー用の布材に一体化されていれば、テザー用布材とエアバッグ本体との間から、大きく外れたり、落ちたりすることが、防止される。
【0014】
さらに、補強布を設ける場合、補強布が、外周縁をエアバッグ本体に結合させた周縁結合部位を、設けて、エアバッグ本体に結合され、周縁結合部位が、テザーのエアバッグ本体との結合部位における折り部に位置した縁側端部、を囲むように、配置されていれば、つぎのような作用・効果を得ることができる。
【0015】
すなわち、このような構成では、補強布で囲まれたエアバッグ本体のエリア内には、周縁結合部位によって、膨張時のエアバッグ本体全体の引張力が、伝播され難い。そのため、テザーにおけるエアバッグ本体との結合部位の縁側端部にも、エアバッグ本体全体の引張力が、伝播され難くなって、縁側端部に位置するテザーの折り部とエアバッグ本体との結合強度が、向上する。
【0016】
そして、この場合、テザーのエアバッグ本体との結合部位と、補強布の周縁結合部位と、を、縫合糸を連続させた縫合により、形成すれば、これらの結合部位を、縫合糸を切ることなく、連続作業で形成できることから、補強布やテザーのエアバッグ本体への結合作業が、簡便に行える。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1〜4に示すように、実施形態のエアバッグ41は、膝保護用エアバッグ装置Sに使用されている。この膝保護用エアバッグ装置Sは、図1〜4に示すように、運転者MD(乗員M)の膝Kを保護できるように、運転者MDの車両前方側であるステアリングコラム3の下方に配設されている。
【0018】
なお、本明細書における上下、左右、及び、前後は、膝保護用エアバッグ装置Sを車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後に対応するものである。
【0019】
また、ステアリングコラム3は、図1に示すように、ステアリングホイール1に連結されるコラム本体4と、ステアリングホイール1の下方のコラム本体4を覆うように配設されるコラムカバー8と、を備えて構成されている。コラム本体4は、メインシャフト5と、メインシャフト5の周囲を覆うコラムチューブ6と、を備えて構成されている。
【0020】
コラムカバー8は、略四角筒形状の合成樹脂製として、コラム本体4を覆うように、コラム本体4の軸方向に沿って配設されている。カバー8は、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)10から突出する部位の下面8aを、略長方形形状とし、車両前後方向で、後上がりの曲面状に形成している。
【0021】
膝保護用エアバッグ装置Sは、折り畳まれたエアバッグ41、エアバッグ41に膨張用ガスを供給するインフレーター32、折り畳まれたエアバッグ41とインフレーター32とを収納するとともに車両後方側を開口させたケース12、及び、ケース12の車両後方側を覆うエアバッグカバー18、を備えて構成されている。
【0022】
ケース12は、図1〜3に示すように、板金製として、車両後方側に開口12eを有した箱形状として、ステアリングコラム3の下部側に、配設されている。ケース12における上下方向で対向する壁部12a・12bの外周面には、複数の断面略コ字形状のフック14が、固着されている。また、ケース12には、インフレーター32の後述する本体33の端部を挿通可能な挿通孔12cと、インフレーター32の後述するボルト34cを挿通させるための挿通孔12dと、が、形成されている(図3参照)。このケース12は、図示しないブラケットを利用して、コラム本体4近傍に配置される図示しないインパネリインフォースメントに、連結固定されている。
【0023】
エアバッグカバー18は、ポリオレフィン系等の熱可塑性エラストマーから形成されて、ケース12の車両後方側を覆い可能に、構成されている。
【0024】
また、エアバッグカバー18は、インパネ10におけるコラムカバー8の周縁のロアパネル10b側に配置されて、インパネ10から突出するコラムカバー8の下側周縁を覆っている。インパネ10は、アッパパネル10aとロアパネル10bとから構成されている。カバー18は、ケース12の開口12eを覆う扉部30と、扉部30の周囲に配置される一般部20と、を備えて構成されている。
【0025】
扉部30は、ケースの開口12eより僅かに大きく形成されて、開口12eを覆う略長方形の板状に形成されている。扉部30は、下端に、扉部30が開く際の回転中心となるヒンジ部29を配置させ、ヒンジ部29を除いた外周縁の逆U字形状の部位に、薄肉の破断予定部28を配置させている。
【0026】
一般部20における扉部30の周縁近傍となる部位には、ケース12の外周側において車両前方側に突出するように配設される4つの側壁部23・24・25・26が、配設されている。そして、ケース12の上部側に配置される上側壁部23と、ケース12の下部側に配置される下側壁部24と、が、エアバッグカバー18をケース12に連結させるための連結部位となる。上側壁部23・下側壁部24には、それぞれ、ケース12のフック14に周縁を係止される係止孔23a・24aが、形成されている。
【0027】
また、一般部20における所定位置には、エアバッグカバー18をロアパネル10bに取付固定させるための取付脚部21が、車両前方側に延びるように形成されている。この取付脚部21は、ロアパネル10bの係止穴10eの周縁に係止されている。ロアパネル10bは、ケース12を収納する収納凹部10cを備えている。収納凹部10cの周縁には、フランジ部10dが形成され、フランジ部10dに、係止穴10eが形成されている(図3参照)。また、取付脚部21の元部には、リブ21aが形成されている。このリブ21aは、取付脚部21の係止穴10eへの係止時に、ロアパネル10bのフランジ部10dに当接して、一般部20を支持している。
【0028】
インフレーター32は、図1〜3に示すように、軸方向を車両の左右方向に沿って配設させたシリンダタイプとしている。インフレーター32は、略円柱状の本体33とディフューザー34とからなる。本体33の一端側には、複数のガス吐出口33aが、形成されている。本体33における他端側には、作動信号入力用のリード線39を結線させたコネクタ38が、接続されている。ディフューザー34は、本体33を覆い可能な略円筒状の板金製の保持筒部34aと、保持筒部34aから突出する複数(実施形態では二本)のボルト34cと、からなる。保持筒部34aは、本体33のガス吐出口33aから吐出される膨張用ガスを流出可能な複数のガス流出口34bを、車両搭載状態の保持筒部34aにおける車両後方側の面に、開口させている。
【0029】
なお、このインフレーター32には、車両に搭載されたエアバッグ作動回路が、車両の前面衝突を検知した際、ステアリングホイール1に搭載された図示しないエアバッグ装置とともに、リード線39を介して、作動信号が入力される。
【0030】
エアバッグ41は、図5〜6に示すように、袋状の外周壁を構成するエアバッグ本体42と、エアバッグ本体42内に配設される2つのテザー56・56と、を備えて構成されている。
【0031】
エアバッグ本体42は、可撓性を有したポリエステルやポリアミド糸等からなる1枚の織布(エアバッグ本体用布材43)から形成されて、図5・6に示すように、展開膨張完了時の形状を、下狭まりの略扇板状としている。また、エアバッグ本体42は、下端42a側のインフレーター32を収納する取付部45と、取付部45の上方側に配置されて、取付部45より左右方向の幅寸法を大きくする膨張部44と、を備えて構成されている。
【0032】
取付部45は、膨張用ガスGの上流側部位とされるもので、エアバッグ41の展開膨張完了時に、ケース12内に収納されるとともに、インフレーター32を利用して、ケース12に保持される部位となる。
【0033】
膨張部44は、膨張用ガスGの下流側部位とされるもので、エアバッグ41の展開膨張時に、ケース開口12eから突出して展開膨張し、運転者MDの膝を保護する。また、膨張部44は、エアバッグ41の膨張完了時に、ケース12の開口12e付近から、コラムカバー下面8a側の上端8b付近までを、覆うこととなる。
【0034】
このエアバッグ41は、エアバッグ本体42の外周壁を構成する1枚の織布からなるエアバッグ本体用布材43を、エアバッグ本体42の下端42aとなる部位で折り、折って対向する部位の周縁相互を、縫合糸54により縫合して、形成されている。そして、エアバッグ本体42は、それぞれ、略扇形状とする運転者MD側の乗員側壁部47と、コラムカバー8側の車体側壁部48と、を備えて、構成されている。なお、縫合糸54は、ポリエステルやポリアミド等の合成樹脂製のマルチフィラメント等から形成されている。
【0035】
車体側壁部48の下部側における取付部45の部位には、2つの挿通孔45a・45aと1つの挿通孔45bとが形成されている。挿通孔45a・45aは、インフレーター32の各ボルト34cを挿通させるものであり、挿通孔45bは、インフレーター32の本体33を挿通させるものである。
【0036】
そして、エアバッグ本体42における膨張部44内には、上下二段に、左右方向に沿う帯状のテザー56・56が配設されている。各テザー56は、エアバッグ41の膨張完了時に、膨張部44が、中央部44a付近の肉厚を厚くさせず、エアバッグ本体42の板形状を維持できるように、配設されている。そのため、テザー56・56は、膨張部44の中央部44a付近に配設されている。
【0037】
各テザー56は、長さ方向Yの両端を、それぞれ、エアバッグ本体42の乗員側壁部47と車体側壁部48とに結合される結合端57としている。そして、各テザー56は、結合端57・57相互の間の長さ寸法によって、膨張完了時のエアバッグ本体42における乗員側壁部47と車体側壁部48との離隔距離を、規定することとなる。そして、長さ方向Yと直交して幅方向Xとなる左右方向の両縁には、それぞれ、折り部58が形成されている(図7参照)。
【0038】
各折り部58は、後述するテザー用布材60の左右方向の縁部64を折って、布材60を二枚重ねにした部位であり、結合端57の部位にも延設されて、配設されている。さらに、実施形態の場合、各テザー56は、それぞれ、結合端57・57の中間部位で結合する2枚ずつのテザー用布材60から、形成されている。
【0039】
また、実施形態の場合、各テザー56の幅方向Xとなる左右方向の縁側には、それぞれ、エアバッグ本体42との間に、略長方形板状の補強布73が、介在されている。
【0040】
各テザー用布材60は、エアバッグ本体42と同様に、可撓性を有したポリエステルやポリアミド等の織布から形成されている。そして、実施形態の場合、図5〜8に示すように、接続片部61と、補強布73を構成する二つ補強部69・69と、を備えて構成されている。接続片部61は、配置されるテザー56に応じた長さ寸法として、平らに展開した際、図8に示すように、テザー56の幅方向Xとなる左右方向に延びた長方形板状として、左右方向の両縁部64の側を、テザー56の長さ方向Yに沿う折目Cを付けて、折り、縁部64と、縁部64と重なる重なり部65と、によって、折り部58を、形成している。
【0041】
そして、各テザー用布材60は、テザー56の長さ方向Yに沿う一方の端部を、テザー側端部62として、端部62相互を結合させてテザー56を形成する部位としている。また、各布材60は、テザー56の長さ方向Yに沿う他方の端部を、本体側端部63として、エアバッグ本体42の乗員側壁部47若しくは車体側壁部48に結合させる結合端57としている。
【0042】
各補強部69は、布材60を平らに展開させた状態として、それぞれ、略長方形板状として、接続片部61の縁部64から左右方向に突出するとともに、接続片部61の本体側端部63から、テザー56の長さ方向Yにずれて、接続片部61から突出するように、予め、布材60に形成されている。各補強部69と接続片部61の縁部64との境界部位には、折目Cに沿って、テザー側端部62の側から入り込む切れ目67が、形成されている。各補強部69の大きさは、折り部58の幅寸法W0より大きく、幅寸法W0の2〜3倍程度の辺の長さ寸法(外形寸法)W1を有した略四角形状に形成されている。切れ目67の長さは、布材60を平らに展開させた状態の先端部67aが、縫合糸54によって形成した後述する本体側結合部位71の延長線上付近に位置するように、設定されている。なお、本体側結合部位71は、縫合糸54によって結合された部位であり、テザー56の結合端57におけるエアバッグ本体42への結合部位、詳しく述べれば、接続片部61の本体側端部63におけるエアバッグ本体42への結合部位、である。
【0043】
各テザー用布材60のエアバッグ本体用布材43への結合は、まず、各布材60を平らに展開した状態から、接続片部61の左右の両縁部64側に、折目Cを付けて、縁部64を重なり部65に重ねるように折って、それぞれ、折り部58を作るとともに、各補強部69を、接続片部61の折り部58から突出するように、切れ目67の位置で折り返す(図8・9参照)。そして、各補強布69を、エアバッグ本体用布材43の所定部位(エアバッグ本体42の内周面側の所定部位)に当てつつ、接続片部61の本体側端部63を、エアバッグ本体用布材43の所定部位に当てる。
【0044】
なお、この時、接続片部61のテザー側端部62の側を本体用布材43から引き起こせば、図10・11に示す状態となる。そして、この状態は、接続片部61の本体側端部63における左右方向の両縁部63aにおいて、折り部58の縁部64が、直接、エアバッグ本体用布材43と接触せず、縁部64と布材43との間に、補強布73(補強部69)が介在されることとなる。ちなみに、さらに引き起こして、接続片部61のテザー側端部62の側を、本体側端部63に対して、略垂直方向に配置させれば、テザー用布材60の状態は、エアバッグ本体42の膨張完了時の状態と、略同様となる。
【0045】
そして、エアバッグ本体用布材43に対して、折り部58を設けたテザー用布材60を配置させた後には、縫合糸54を使用した工業用ミシン等の操作によって、接続片部61の本体側端部63を、本体用布材43に対して、縫合して結合する。この時、本体側端部63には、縫合糸54による本体用布材43への結合部位71が、エアバッグ42の左右方向に沿って、直線状に形成される。そして、結合部位71の左右の縁側端部71a付近における折り部58は、補強布73を介在させて、本体用布材43に結合されることとなる。
【0046】
また、この縫合時、縫合糸54によって、補強布73の外周縁を、本体用布材43に対して、縫合して結合する。この補強布73の外周縁における本体用布材43への結合部位は、周縁結合部位75を形成することとなる。周縁結合部位75は、本体側端部63における本体側結合部位71の縁側端部71aを中心として、その周囲の略半周分、縁側端部71aを囲むように、形成されている。周縁結合部位75の半周分の軌跡は、本体側結合部位71から離れた側で、端部71aを包む略C字形状としている。
【0047】
さらに、実施形態の場合、縫合糸54を切断することなく、連結部77を設けて、本体側結合部位71の縁側端部71aと周縁結合部位75とを、連続する縫合作業により、形成している。なお、実施形態の場合、連結部77は、端部71aから接続片部61におけるテザー側端部62から離れた方向に、直線状に、縫合糸54の縫合箇所を延ばして、周縁結合部位75に接続させている。
【0048】
そして、テザー用布材60の接続片部61と補強部69とをエアバッグ本体用布材43に結合させたならば、エアバッグ本体用布材43を、エアバッグ本体42の下端42aとなる部位で折り、接続片部61の対応するテザー側端部62相互を、縫合糸54により、縫合して、各テザー56を形成するとともに、さらに、本体用布材43の外周縁の重なった部位相互を、縫合糸54によって、縫合すれば、エアバッグ41を製造することができる。
【0049】
なお、本体用布材43の外周縁の縫合時には、未縫合部位42b(図5参照)を残しておき、その部位42bからインフレーター32をエアバッグ41内に収納させて、各ボルト34cを挿通孔45aから突出させ、かつ、インフレーター本体33の元部側を挿通孔45bから突出させて、その後、エアバッグ本体42の未縫合部位42bを、縫合することとなる。
【0050】
このように製造したエアバッグ41をエアバッグ装置Sに組み付ける際には、まず、エアバッグ41を折り畳み、ついで、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピングフィルムにより、エアバッグ41をくるむ。この時、挿通孔45a・45bから突出したインフレーター32のボルト34cや本体33の端部は、ラッピングフィルムから突出させておく。
【0051】
そして、インフレーター32の各ボルト34cをケース12の挿通孔12dから突出させるとともに、インフレーター本体33の端部をケース12の挿通孔12cから突出させるようにして、インフレーター32を、折り畳まれたエアバッグ41とともに、ケース12内に収納させ、各ボルト34cにナット36を締結させれば、インフレーター32とエアバッグ41とを、ケース12に収納させるとともに、ケース12に取り付けることができる。
【0052】
その後、ケース12の図示しないブラケットを、既にアッパパネル10aやロアパネル10bを取り付けた車両のインパネリインフォースメントに取り付け、リード線39を結線させたコネクタ38をインフレーター32の本体33に接続させる。ついで、エアバッグカバー18を車両前方側に押し込んで、各取付脚部21をロアパネル10bの係止穴10eに挿入係止させるとともに、上側壁部23及び下側壁部24の各係止孔23a・24aに、ケース12のフック14を係止させて、エアバッグカバー18をケース12に連結させれば、エアバッグ装置Sを車両に搭載することができる。
【0053】
エアバッグ装置Sの車両への搭載後、リード線39を経て、インフレーター32の本体33に作動信号が入力されれば、インフレーター32のガス吐出口33aから膨張用ガスGが吐出され、膨張用ガスGが、ディフューザー34のガス流出口34bを経て、エアバッグ本体42の膨張部44内に流入する。そして、エアバッグ本体42は、膨張して、図示しないラッピングフィルムを破断するとともに、エアバッグカバー18の扉部30を押し、破断予定部28を破断させて、ヒンジ部29を回転中心として扉部30を下開きで開かせることとなる。その結果、エアバッグ本体42(エアバッグ41)は、図1・4の二点鎖線で示すように、コラムカバー下面8aに沿うように、上方へ向かって大きく展開膨張することとなる。
【0054】
そして、実施形態のエアバッグ41では、テザー56の結合端57におけるテザー56の幅方向Xの縁側において、テザー56が、折り部58の重ねた部位64・65の何れかを、補強用(緩衝用)の当て布のように使用して、エアバッグ本体42に結合されている。そのため、エアバッグ41の膨張時に、強い衝撃が、テザー結合端57のエアバッグ本体42との結合部位71における縁側端部71aに加わっても、その衝撃が緩和されて、テザー56の破損が抑えられる。
【0055】
特に、この折り部58は、テザー56の幅方向Xの縁を折るものであり、テザー56の長さ方向Yの縁を、折って、エアバッグ本体42に結合させるものでない。そのため、テザー56に引張力が作用した際、テザー56におけるエアバッグ本体42との結合部位71のエリアの中では、特に、テザー56の幅方向Xの縁側端部71aに、応力集中が生じやすい。しかし、実施形態では、テザー56の幅方向Xの縁64側を折って、折り部58が形成されている。そのため、折り部58を、テザー56の長さ方向Yに沿う全長に、配設させることが可能となって、テザー56におけるエアバッグ本体42との結合部位71の縁側端部71aに作用する応力集中を、折り部58の折り重ねた部位64・65の層数(枚数)に応じて、分散させることができる。その結果、テザー56は、テザー56の長さ方向Yの縁を折って結合させる場合に比べて、テザー56におけるエアバッグ本体42との結合部位71の破損を、一層、防止することができる。
【0056】
そして、このテザー56におけるエアバッグ本体42との結合部位71の破損を防止する構成は、テザー56の幅方向Xの縁64を、単に、折るだけで、簡単に、形成できる。
【0057】
したがって、実施形態のエアバッグ41では、テザー56におけるエアバッグ本体42との結合部位71の破損を、簡便な構成で、防止することができる。
【0058】
なお、帯状のテザー56の折り部58は、テザー56の幅方向Xの両縁64に、それぞれ、設けてもよいが、テザー56の幅方向Xの両縁64において、一方の縁64が、他方の縁64に比べて、大きなテンションを受ける場合には、その一方の縁側64だけに、折り部58を設けて、テザー56をエアバッグ本体42側に結合させてもよい。
【0059】
また、実施形態では、折り部58を縁部64と重なり部65との二枚重ねとしたが、折目Cをさらに付けて、折り部58の布材60の重ねる枚数を増やしてもよい。
【0060】
そして、実施形態では、テザー56における折り部58と、エアバッグ本体42における折り部58との結合部位50と、の間に、可撓性を有した補強布73が、介在されている。そのため、補強布73が、エアバッグ本体42の緩衝材となり、エアバッグ本体42におけるテザー56との結合部位50の破損を、防止することができる。
【0061】
さらに、実施形態では、補強布73が、テザー用布材60に一体化されていれる。そのため、補強布73がテザー用布材60と別体の場合に比べて、テザー用布材60と補強布73とのエアバッグ本体42への位置決め等の配置作業が、容易となる。すなわち、補強布73が、テザー用布材60と別体としていれば、テザー用布材60とエアバッグ本体42との間から、大きく外れたり、落ちたりする場合が生ずる。しかし、実施形態のように、補強布73が、補強部69として、テザー用の布材60に一体化されていれば、テザー用布材60とエアバッグ本体42との間から、大きく外れたり、落ちたりすることが、防止される。
【0062】
勿論、上記の作用・効果を考慮しなければ、補強部69をテザー用布材60に設けずに、補強布73を、テザー用布材60と別体として、配設させてもよい。
【0063】
さらに、実施形態では、補強布73が、外周縁をエアバッグ本体42に結合させた周縁結合部位75を、設けて、エアバッグ本体42に結合され、周縁結合部位75が、テザー56のエアバッグ本体42との結合部位71における折り部58に位置した縁側端部71a、を囲むように、配置されている。
【0064】
このような構成では、補強布73で囲まれたエアバッグ本体42のエリア51内には、周縁結合部位75によって、膨張時におけるエアバッグ本体42の全体、特に、エアバッグ本体42におけるテザー56の結合端57から離れた部位の引張力が、伝播され難くなる。そのため、テザー56におけるエアバッグ本体42との結合部位71の縁側端部71aにも、エアバッグ本体42の全体の引張力が、伝播され難くなって、縁側端部71aに位置するテザー56の折り部58とエアバッグ本体42との結合強度が、向上する。
【0065】
また、実施形態の場合、テザー56のエアバッグ本体42との結合部位71と、補強布73の周縁結合部位75と、が、連結部77を設けて、縫合糸54を連続させた縫合により、形成されている。そのため、これらの結合部位71・75を、縫合糸54を切ることなく、連続作業で形成できることから、テザー56の本体側端部63や補強布73のエアバッグ本体42への結合作業が、簡便に行える。
【0066】
なお、このような作用・効果は、補強布73をテザー用布材60と別体とした場合でも、同様に得られる。
【0067】
また、テザー用布材に補強布としての補強部を一体的に形成する場合には、図12〜14のテザー用布材60Aのように構成してもよい。このテザー用布材60Aは、テザー用布材60と同様に、可撓性を有した織布から形成されて、平らに展開すれば、図14に示すように、接続片部61と、補強布73を構成する2つの補強部69と、を備えて構成されている。
【0068】
但し、この布材60Aの各補強部69は、布材60と同様に、接続片部61の本体側端部63の左右両縁側にあるものの、本体側端部63から、左右両側に突出せずに、テザー側端部62から離れる方向に伸びている。また、本体側端部63におけるエアバッグ本体42との結合部位71の縁側端部71aが、補強部69の中央付近に配置されるように、補強部69が、延設部79を介在させて、本体側端部63から突出している。延設部79は、テザー56の幅方向Xの縁側に形成する折り部58の幅寸法W0分の幅寸法で、接続片部61の左右の縁64から伸びている。
【0069】
そして、この布材60Aのエアバッグ本体用布材43への結合は、まず、各布材60Aを平らに展開した状態から、接続片部61の左右の両縁部64側に、テザー56の長さ方向Yに沿う折目Cを付けつつ、縁部64を重なり部65に重ねるように折って、それぞれ、折り部58を作る。この時、延設部79側も共に折る。その後、各延設部79の補強部69との境界部位に、テザー56の幅方向Xに沿う折目C1を付けて、各補強部69を、折り部58の縁部64側に折る(図15参照)。
【0070】
そして、各補強布69を、エアバッグ本体用布材43の所定部位(エアバッグ本体42の内周面側の所定部位)に当てつつ、接続片部61の本体側端部63を、エアバッグ本体用布材43の所定部位に当て、縫合糸54を使用した工業用ミシン等の操作によって、結合部位71・75・77を形成して、接続片部61の本体側端部63を本体用布材43に結合させるとともに、補強布73を形成する補強部69を本体用布材43に結合することとなる。
【0071】
なお、周縁結合部位75においては、図12・13に示すように、接続片部61のテザー側端部62の側を引き起こして、結合部位71の縁側端部71aの周囲を囲む長さを長くすように、延設させてもよい。さらに、その先端部75aは、エアバッグ本体42の膨張完了時に応力集中が生じないように、曲げて、縁側端部71aの側に向けるようにしてもよい。
【0072】
また、実施形態では、補強布73を設けて、テザー56をエアバッグ本体42に結合させた場合を示したが、図16〜19のように、補強布73を設けずに、テザー56の幅方向Xの縁に、折り部58だけを形成して、エアバッグ本体42に結合させてもよい。
【0073】
さらに、テザー56の結合端57におけるエアバッグ本体42との結合部位71を、縫合糸54を使用した縫合により、形成する場合には、図16に示すように、テザー56の幅方向Xに沿う複数条(図例では2条)の直線状の縫合ラインL1・L2により、形成してもよい。
【0074】
さらに、その結合部位71の縁側端部71aに作用する大きな応力集中に対処するため、図17に示すように、縁側端部71aの縫合ラインL1・L2を、半円弧状の縫合ラインL3により連結させたり、図18に示すように、縫合ラインL1・L2を、円弧状の縫合ラインL4により連結させてもよい。
【0075】
なお、このような直線状の縫合ラインの端部に円弧状ラインL3・L4を設ける場合には、図19に示すように、直線状の縫合ラインL1は、一条としてもよい。
【0076】
また、実施形態では、テザー56や補強布73のエアバッグ本体42への結合手段として、縫合糸54を使用しているが、結合手段はこれに限られるものではなく、例えば、接着剤等を使用してもよい。
【0077】
また、実施形態では、結合端57を長さ方向の両端の二箇所に配置させた一本の帯状のテザー56について説明したが、三又状のテザーのように、エアバッグ本体に結合される結合端が、三つあるものや、あるいは、それ以上の結合端を備えるテザーにおいても、それらのテザーの結合端側に、本発明の折り部を設けて、本発明を適用してもよい。
【0078】
さらに、実施形態では、膝保護用のエアバッグ装置Sのエアバッグを例に採り説明したが、本発明を適用可能なエアバッグはこれに限られるものではなく、テザーを備えていれば、側突用エアバッグ装置・助手席用エアバッグ装置・ステアリングホイール用エアバッグ装置等のエアバッグに、本発明を適用することができる。
【0079】
さらに、本発明は、エアバッグ本体の内周面側にテザーを結合させるエアバッグばかりでなく、例えば、エアバッグ本体の膨張形状を規制するように、エアバッグ本体の外周面側にテザーを結合させたエアバッグにも、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるエアバッグを使用した膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両前後方向の概略断面図である。
【図2】図1に示す膝保護用エアバッグ装置の車両前後方向の概略拡大断面図である。
【図3】図2のIII−III部位の断面図である。
【図4】図1に示す膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両後方側から見た概略正面図である。
【図5】実施形態で使用するエアバッグの正面図である。
【図6】図5のVI−VI部位の概略拡大断面図である。
【図7】実施形態のエアバッグのテザーとエアバッグ本体との結合状態を示す部分斜視図である。
【図8】実施形態のテザー用布材を平らに展開させた部分省略平面図である。
【図9】同実施形態のテザー用布材の折り畳み状態を説明する斜視図である。
【図10】同実施形態のテザー用布材の折り畳み状態を説明する別の斜視図である。
【図11】図10に示す状態を反対側から見た斜視図である。
【図12】別のテザー用布材を使用した場合のテザーとエアバッグ本体との結合状態を示す部分斜視図である。
【図13】図12に示す状態を反対側から見た斜視図である。
【図14】図12・13に示すテザー用布材を平らに展開させた部分省略平面図である。
【図15】図14に示すテザー用布材の折り畳み状態を説明する斜視図である。
【図16】他のテザーとエアバッグ本体との結合状態を示す部分斜視図である。
【図17】さらに他のテザーとエアバッグ本体との結合状態を示す部分斜視図である。
【図18】さらに他のテザーとエアバッグ本体との結合状態を示す部分斜視図である。
【図19】さらに他のテザーとエアバッグ本体との結合状態を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
41…エアバッグ、
42…エアバッグ本体、
43…エアバッグ本体用基布、
54…縫合糸、
56…テザー、
57…結合端、
58…折り部、
60・60A…テザー用布材、
64…縁部、
65…重なり部、
69…補強部、
71…本体側結合部位、
71a…縁側端部、
73…補強布、
75…周縁結合部位、
73…補強布、上縁、
56…縫合部位(結合部位)、
Y…テザーの長さ方向、
X…テザーの幅方向。
Claims (2)
- 膨張完了時の外周壁を構成する可撓性を有した袋状のエアバッグ本体と、
長さ方向の端部を前記エアバッグ本体に結合させる結合端として、膨張完了時の前記エアバッグ本体の形状を規制可能な、可撓性を有した帯状の布材からなるテザーと、
を備えて構成されるエアバッグであって、
前記テザーの前記結合端が、前記テザーの幅方向における少なくとも一方の縁側に、前記テザーの長さ方向に沿う折目を付けるように、前記テザー用の布材の縁を折って形成した折り部、を備え、
前記テザーの折り部が、前記布材を重ねて一体化させた状態で、前記エアバッグ本体に結合され、
前記テザーにおける前記折り部と、前記エアバッグ本体における前記折り部との結合部位と、の間に、可撓性を有した補強布が、介在され、
前記補強布が、前記テザー用の布材に予め一体化されて設けられている補強部から構成され、
前記補強布が、外周縁を前記エアバッグ本体に結合させた周縁結合部位を、設けて、前記エアバッグ本体に結合され、
前記周縁結合部位が、前記テザーの前記エアバッグ本体との結合部位における前記折り部に位置した縁側端部、を囲むように、配置されていることを特徴とするエアバッグ。 - 前記テザーの前記エアバッグ本体との結合部位と、前記補強布の周縁結合部位と、が、縫合糸を連続させた縫合により、形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
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