JP3740131B2 - アルミニウム合金溶湯の精錬方法およびアルミニウム合金溶湯用精錬用フラックス - Google Patents

アルミニウム合金溶湯の精錬方法およびアルミニウム合金溶湯用精錬用フラックス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金 (以下、単にアルミニウム合金と言い、アルミニウムも単にAlとも言う) 溶湯の精錬方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、圧延板材、押出形材、鍛造などのAl合金展伸材用の鋳塊の溶解、鋳造工程においては、通常、溶解炉において、Al原料 (Al地金、Al合金材製品のスクラップなど) を溶解後、成分調整を行い、Al合金溶湯の精錬を行う。
【0003】
このAl合金溶湯 (以下、単にAl溶湯と言う) の精錬とは、塩素ガス、塩化物系のフラックス、あるいは非ハロゲン系のフラックスを溶湯中に吹き込み、溶湯中の特に水素などのガス成分の脱ガスや介在物の滓化を行い、Al溶湯表面から滓を除去する除滓を行うなどの溶湯を清浄化処理する工程である。
【0004】
そして、これら精錬後のAl溶湯は、溶解炉から保持炉を経由してまたは経由しないで、各々移湯樋などを介して鋳型に移湯供給される。この際、移湯中の溶湯は、鋳型直前の移湯樋やフィルターボックスに設けられたフィルターによりアルミナ等の酸化物系の介在物が更に除去されるなどして、鋳型に供給され、前記Al合金展伸材用の鋳塊に鋳造される。
【0005】
近年では、塩素ガスや塩化物系のフラックスの有害性などの問題から、これらに代えて、非ハロゲン系の精錬用フラックスを不活性ガスをキャリアガスとしてAl溶湯中に吹き込み、溶湯の脱ガスおよび除滓を促進させることが用いられるようになっている。
【0006】
この非ハロゲン系の精錬用フラックスとして、例えば、硫酸カリウム(K2SO4) を主体とし、これに硫酸塩の融点を下げるための硫酸リチウムや、硫酸マグネシウムなどを更に加えた混合系のフラックスが提案されている (特許文献1参照) 。また、Al溶湯の脱ガスおよび除滓用の精錬フラックスとして、硫酸カリウム単体からなるフラックスが提案されている (特許文献2参照) 。
【0007】
【特許文献1】
特開平07−207358号公報 (第1 〜2 頁)
【特許文献1】
特開平11−323449号公報 (第1 〜2 頁)
【0008】
しかし、これらの非ハロゲン系の精錬用フラックスにより、塩素乃至塩化物を用いることによる前記弊害は確かに防止されるものの、肝心の、溶湯中のH2ガスなどの脱ガスおよび脱介在物などの精錬効率が、塩素乃至塩化物系の精錬効率よりも劣る問題がある。
【0009】
Al合金展伸材の分野においては、電子・電気部品分野の用途におけるAl合金展伸材の表面性状 (表面平滑性、表面粗度) などに対する要求は益々厳しくなっている。更に、缶などの包装容器用や自動車などの輸送機用、あるいは構造材用途などでも高強度化、高成形性、高耐食性化など、Al合金展伸材の高品質化の要求も益々厳しくなっている。したがって、これに伴い、Al合金鋳塊中のH2や介在物などの不純物をより低減する必要性が益々増している。
【0010】
また、Al溶解原料は、Al合金展伸材スクラップのリサイクルシステムの確立の社会的要請に基づき、従来のAl地金主体から、Al合金展伸材のスクラップを主体とするものに変わりつつある。この結果、Al溶解原料を100%スクラップとすることも行われるようになっている。しかし、Al合金展伸材スクラップをAl溶解原料とした場合、スクラップからの不純物元素、或いはH2などのガス成分の混入量の増大は、スクラップを前処理したとしても避けがたくなっている。
【0011】
しかし、Al合金の精錬分野において、これらの要求や必要性に対応して、前記塩素乃至塩化物並の精錬効率を有する非ハロゲン系の精錬用フラックスは未だ実用化されていないのが実情であり、前記脱ガスおよび脱介在物の高い低減レベルでの精錬を行おうとすれば、塩素乃至塩化物フラックスを併用せざるを得ないのが実情であった。
【0012】
これに対し、非ハロゲン系のAl合金精錬用フラックスとして、ミョウバンを用いることが本出願人によって提案された (特許文献3参照) 。このミョウバンフラックスによれば、前記要求や必要性に対応して、脱ガスおよび脱介在物の高い低減レベルを達成しうる精錬を可能にする。
【0013】
【特許文献3】
特開2000−239757号公報 (第1 〜2 頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ただ、このミョウバンフラックスは、Al溶湯中に吹き込んだ際に、未反応のフラックスが生じやすい。この未反応のフラックスは、前記Al溶湯中での精錬作用に寄与せずにAl溶湯表面に浮上し、Al溶湯表面に既に存在する滓などと反応して、Al溶湯の滓化を促進しやすい作用を有する。
【0015】
この未反応のフラックスの生成やAl溶湯の滓化は、ミョウバンフラックスならずとも、反応性の良い塩素ガスなどの気体精錬剤に比べた、固体精錬剤である前記粉末フラックス全般に特有の問題でもある。
【0016】
しかし、このミョウバンフラックスは、前記優れた脱水素や脱介在物の作用乃至反応性により、未反応のフラックスが生成しAl溶湯表面に浮上した場合、これまでの他の非ハロゲン系のAl合金精錬用フラックスの場合と違い、却って、Al溶湯表面の前記滓化が促進されやすいという特有の問題がある。そして、このAl溶湯表面の滓化が促進されるほど、滓の生成量が多くなり、相対的に鋳造されるAl溶湯の歩留りが低下すると言う、実用上の問題を有する。
【0017】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、ミョウバンフラックスの優れた脱水素や脱介在物の高い低減レベルを維持しながら、Al溶湯表面の滓化を極力抑制してAl溶湯の歩留りを向上しうるとともに、除滓性を向上させた、Al合金溶湯の精錬方法およびAl合金溶湯用精錬用フラックスを提供しようとするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための、本発明に係るAl合金溶湯の精錬方法の要旨は、展伸材用アルミニウム合金溶湯に対し、精錬用フラックスとしてミョウバン粉末を用いて、溶湯中の水素を低減する溶湯精錬を行い、合わせて溶湯表面に浮上した滓を溶湯から除去するに際し、前記ミョウバン粉末の結晶水を含む水分率を加熱乾燥質量方式による測定方法で0.7 〜4.0%とし、前記溶湯精錬の際の滓発生量をアルミニウム合金溶湯量の3 質量% 以下に抑制したことである。
【0019】
また、同じく、上記目的を達成するための、本発明に係るAl合金溶湯の精錬方法の要旨は、ミョウバン粉末からなる展伸材用アルミニウム合金溶湯の精錬用フラックスであって、ミョウバン粉末の結晶水を含む水分率を加熱乾燥質量方式による測定方法で0.7 〜4.0%としたことである。
【0020】
本発明者らは、展伸材用Al合金溶湯( 以下、単にAl溶湯とも言う) に対し、精錬用フラックスとしてミョウバン粉末を用いるに際し、ミョウバン粉末の水分率 (含水量) と溶湯精錬の際の滓発生量とに相関関係があることを知見した。そして、このミョウバン粉末の水分率を、従来の水分率よりは多いが、含水量自体としては微量な0.7 〜4.0%の特定範囲とすることによって、脱ガスおよび脱介在物などの精錬効率を阻害せずに、Al溶湯表面の滓化を極力抑制してAl溶湯の歩留りを向上しうるとともに、除滓性を向上させうることも知見した。
【0021】
本アルミニウム合金溶湯技術分野において、ミョウバン粉末を含めた展伸材用アルミニウム合金溶湯の精錬用フラックスの水分率について、これまでは、脱ガスおよび脱介在物などの精錬効率の観点から、フラックスの水分率が少ないほど良いとされてきた。
【0022】
実際、前記特許文献3などでも、ミョウバンの粉末の水分率については、ミョウバンの吸湿性による、吸湿水分の溶湯中への混入による水素量の増大や、フラックスの吹き込み作業の阻害、などの大きな問題となりうると認識されていた。このため、ミョウバンを乾燥状態でフラックスとして使用するために、例えば、使用直前にミョウバンを加熱して乾燥させる等の手段を用いることも好ましいことが開示されている。したがって、これら乾燥して使用する場合の、ミョウバンの粉末の結晶水を含む従来の水分率の通常のレベルは、加熱乾燥質量方式による測定方法で0.3%以下と、必然的に少なくなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明における各要件の意義について、以下に説明する。
【0024】
先ず、本発明におけるフラックスとしてのミョウバン粉末について説明する。即ち、ミョウバンは、一般式R3R1(SO4)2・nH2O(n=12 、10、6 、4 、3 、2 又は0)や、R1[R3(H2O)6](SO4)2・nH2O(n=12 、10、6 、4 、3 、2 又は0)などの組成式で表される3 価の金属(R3)と1 価の金属(R1)の硫酸塩の複塩の総称である。そして、3 価の金属(R3)としては、Al、Fe、Cr、および1 価の金属(R1)などとしては、K 、NH4 、Naがある。中でも、代表的なものは、AlK(SO4)2 ・nH2O(n=12 、10、6 、3 、2 又は0)のカリウムミョウバンまたは焼きカリウムミョウバンと、AlNH4(SO4)2 ・nH2O(n=12 、10、6 、4 、3 、2 又は0)のアンモニウムミョウバンまたは焼きアンモニウムミョウバンである。
【0025】
次に、本発明におけるフラックスとしてのミョウバン粉末の作用効果について説明する。前記各ミョウバンは、種類によって異なるものの、加熱されると、Al合金の溶湯温度以下の約650 ℃付近から亜硫酸ガス(SO)やSO2 などのSOX ガスが分解放出し始め、約950 ℃付近において熱分解が完了し、同時に酸化Alを生成する、という特性を有する。この内、加熱温度400 〜550 ℃の間では、例えば、アンモニウムミョウバンでは硫酸アンモニウム、カリミョウバンでは硫酸カリなどの硫酸塩を放出する。
【0026】
即ち、この放出硫酸塩や、前記分解放出亜硫酸ガスが、溶湯中の水素と反応して脱水素を行う作用を有する。Al合金の溶湯温度は約700 ℃程度であり、溶湯中に添加乃至吹き込まれたフラックスとしてのミョウバンは、この溶湯温度下で硫酸塩やSO2 などのSOX ガスを分解放出し、これら硫酸塩のヒューム (微粒子) やSOX ガスが、溶湯中の水素と固体−気体反応乃至気体−気体反応する。そして、この生成した水素化合物を気体化させるか、滓として溶湯から分離除去して、溶湯の脱水素を行うことが可能となる。また、介在物の滓化を促進し、Al溶湯表面から滓を除去する除滓を促進するなどの溶湯を清浄化する効果も有する。
【0027】
より具体的な作用としては、前記生成SOX ガスは、不活性ガスの攪拌効果によって、Al溶湯中に迅速に拡散することによって、そのガス気泡中に、溶湯中のH2ガスを拡散と分圧平衡により取り込む。そして、この微細なSOX ガス気泡が溶湯表面に浮上、揮散することにより、H2ガスが溶湯中より除去される。また、溶湯中の介在物は、生成SOX ガスや不活性ガスの攪拌効果乃至浮上効果によって、溶湯中より溶湯表面に浮上し、滓化が促進されて溶湯中より除去される。
【0028】
また、前記生成ヒュームは、同じくAl溶湯中に迅速に拡散することによって、気体−固体反応により水素と水素化合物を生成する乃至溶融かつ分解してSOX ガスを生成し、前記生成SOX ガスと同様の脱ガスおよび脱介在物効果を発揮する。したがって、これらの複合乃至相乗作用により、溶湯中のH2ガスなどのガス成分と、特に酸化物系の介在物の除去効果が増大する。
【0029】
その一方で、前記したミョウバンの特性の内、溶湯にとって有害な不純物乃至介在物となるべき酸化アルミニウム(Al)は、生成温度が約950 ℃の付近である。したがって、Al合金の溶湯温度に対し、生成温度が十分高温であるので、実際の溶湯の精錬中に酸化Alが生成することは少ない。
【0030】
溶湯中に添加乃至吹き込まれたフラックスとしてのミョウバンは酸化Alとして、あるいは硫酸塩として溶湯中に残留することは殆ど無い。また、仮に、前記酸化Alが生成したとしても、この酸化Alは溶湯中で生成したものであり、Al溶湯が大気と接触して生じる酸化Alに比して、非常に粒子が細かい。この結果、前記生成SOX ガスや不活性ガスの攪拌効果乃至浮上効果によって、溶湯中より溶湯表面に浮上しやすく、滓化が促進され、生成酸化Alが溶湯中に残留することは殆ど無い。
【0031】
それゆえ、フラックスとしてのミョウバンは、溶湯中に残留することなく、溶湯の脱水素や脱介在物を行うことが可能であるという優れた効果を有する。但し、アンモニウムミョウバンは、精錬条件によっては、NH4 が分解して水素を生成する可能性と、この水素が溶湯中に残留するために、水素除去のための不活性ガスによる攪拌の長時間化の可能性もある。
【0032】
したがって、アンモニウムミョウバンのような副作用の可能性の無い、カリミョウバン乃至焼きカリミョウバンを用いることが最も好ましい。なお、本発明では、上記した具体例以外にも、ミョウバンとして分類される化合物の内、脱水素を行う硫酸塩や亜硫酸ガスを放出し、かつ溶湯にとって有害な残留不純物を生じないという精錬作用を有する化合物は、全て発明範囲内として含む。
【0033】
以上のミョウバンフラックスを前提に、次に、本発明の特徴である、Al溶湯に添加するミョウバン粉末の水分率規定の意義について、以下に説明する。
ミョウバン粉末は、前記した通り、上記優れた脱水素や脱介在物の作用により、一方では、Al溶湯中に吹き込んだ際の未反応のフラックスがAl溶湯表面に浮上した場合、Al溶湯表面に既に存在する滓などと反応して、Al溶湯の滓化を促進しやすい作用も有する。このようなAl溶湯表面の滓化が促進されると、滓 (ドロス) の生成量が多くなり、Al溶湯の歩留りを低下させる。
【0034】
このミョウバン粉末のAl溶湯の滓化促進作用に対して、上記優れた脱水素や脱介在物などの精錬作用を維持しつつ、Al溶湯表面の滓化を抑制するために、本発明では、Al溶湯に添加するミョウバン粉末の結晶水を含む水分率を加熱乾燥質量方式による測定方法で0.7 〜4.0%とする。
【0035】
ミョウバン粉末の含有する水分は、前記ミョウバンの一般式中のnH2Oで表される結晶水と、ミョウバン粉末が吸湿した大気中などの水分などである。本発明では、この結晶水と吸湿水分などを合わせたミョウバン粉末の含有する水分量を上記範囲で規定する。
【0036】
添加するミョウバン粉末の上記水分率を0.7 % 以上と比較的多くすることで、添加されたミョウバン粉末の水分は、Al溶湯との反応により、Al溶湯表面に水素が発生する。従来技術でも、この発生水素が溶湯中へ混入して、溶湯中の水素量の増大をもたらすことを懸念していた。しかし、本発明のミョウバン粉末の上記水分率レベルでは、Al溶湯表面に発生した水素は、溶湯中へ混入することはなく、Al溶湯表面で燃焼する。この水素の燃焼によって、Al溶湯表面が酸化発熱し、更に、この発熱によって、Al溶湯表面に存在する滓が燃焼して、滓中のAlメタル分は再溶解して、Al溶湯に戻される。この結果、滓中のAlメタル分が少なくなり、滓自体の除滓性 (排出性) が向上するとともに、除滓時に滓とともに排出されるAlメタル分も減少する。したがって、Al溶湯表面の滓化を極力抑制して、Al溶湯の歩留りを向上しうるとともに、除滓性を向上させうる。より具体的には、Al溶湯の歩留り向上として、溶湯精錬の際の滓発生量をAl溶湯量の3 質量% 以下に抑制することが可能となる。また、滓の粘度が低下して、Al溶湯表面から除滓する作業性が著しく向上する。
【0037】
これらの反応は、あくまで、上記ミョウバン粉末の優れた脱水素や脱介在物の作用を阻害することなく進行する。
なお、以上の除滓性向上作用と効果は、ミョウバン粉末をAl溶湯表面に散布して添加した場合だけではなく、Al溶湯中に吹き込んで添加した場合でも、基本的に同じである。即ち、Al溶湯中で発生した水素は、溶湯中へ混入することはなく除滓性が向上する。本発明のミョウバン粉末の上記水分率レベルでは、Al溶湯中へのミョウバン粉末の吹き込みによっても、Al溶湯中で発生した水素は、溶湯中へ混入することなく、Al溶湯表面にまで浮上して、Al溶湯表面で燃焼するものと推考される。
【0038】
一方、以上のAl溶湯の歩留り向上や除滓性向上の作用と効果からは、添加するミョウバン粉末の上記水分率を4.0 % を越えて多くする必要は無い。また、上記水分率が4.0 % を越えた場合、やはり、従来と同様に、上記発生水素の溶湯中への混入による水素量の増大や、フラックスの吹き込み作業の阻害、などの大きな問題となりうる。したがって、本発明では、ミョウバン粉末の結晶水を含む水分率を、上記加熱乾燥質量方式による測定方法で0.7 〜4.0%の範囲とする。
【0039】
この本発明のミョウバン粉末の上記水分率は、ミョウバン粉末を加熱して乾燥後の質量と、当初のミョウバン粉末質量との差から、含有水分量を求めて質量% で水分率を算出する、上記加熱乾燥質量方式による測定方法により行なう。この加熱乾燥質量方式であれば、水分率測定を再現性良く測定することができる。
【0040】
この加熱乾燥質量方式による測定機器は、島津製作所製の電子式水分計(EB-340MOCシリーズ) などが例示される。この電子式水分計によれば、セラミックヒーターにより加熱温度を精密に制御でき、下限は0.01% 程度を限度として、上限は100%程度まで再現性良く測定可能である。
【0041】
以下に、前記した、ミョウバンフラックスのAl溶湯の滓化促進作用に対して、上記優れた脱水素や脱介在物の作用を維持しつつ、Al溶湯表面の滓化を抑制するための、ミョウバン粉末の水分率以外の好ましい態様について説明する。
【0042】
先ず、Al溶湯表面の滓化を抑制するためには、ミョウバン粉末の上記水分率制御に加えて、Al溶湯に添加するミョウバン粉末の平均粒径を小さく、1mm 以下の小粒径とすることが好ましい。添加するミョウバン粉末の平均粒径が小さいほど、ミョウバン粉末の表面積が増大し、反応速度が増す。この反応速度が増すと、Al溶湯中に吹き込まれたミョウバンフラックスは、Al溶湯表面に浮上するまでに、その大部分が、硫酸塩やSOX ガスに分解放出される。この結果、Al溶湯表面に浮上する未反応のミョウバンフラックスが減少するため、上記Al溶湯表面に存在する滓などとの反応が抑制され、Al溶湯表面の滓化が抑制される。
【0043】
また、このミョウバンの微細化は、Al溶湯表面に浮上する未反応のミョウバンを減少させるものであるため、上記優れた脱水素や脱介在物の作用を阻害することなく、却って促進あるいは維持しつつ、Al溶湯表面の滓化を抑制する。一方、ミョウバン粉末の平均粒径が1mm を越えて大きくなった場合、ミョウバン粉末の添加量が多くなるなど、Al溶湯表面の滓化がより厳しい操業条件となった場合には、上記ミョウバン粉末の上記水分率制御の作用が十分でなく、滓発生量がAl合金溶湯量の3 質量% を越えて大きくなる可能性もある。
【0044】
次に、Al溶湯表面の滓化を抑制するためには、ミョウバン粉末の上記水分率制御に加えて、溶湯精錬と除滓に際し、溶湯精錬時における溶湯温度を730 〜780 ℃と比較的高めにすることが好ましい。
【0045】
アルミニウム合金溶解原料を溶解させる際の当初の溶湯温度 (溶解温度) は、前記特許文献3 にも記載している通り、通常750 ℃±10℃の比較的高温レベルである。しかし、溶解後の溶湯精錬時における溶湯温度は、通常の大気雰囲気の溶解炉であれば、精錬作業までの時間の経過や精錬剤やキャリアガスなどの吹き込み量によっても若干低下して、約700 〜720 ℃程度に低くなる場合がある。
【0046】
前記した従来の溶湯精錬では、この比較的低い溶湯温度であっても、精錬によって、Al溶湯表面に生成される滓中にAl溶湯 (Alメタル分) が取り込まれる現象は起こりうるものの、その絶対量は少ない。したがって、溶湯表面に浮上した滓の粘度が大幅に上昇し、滓を溶湯表面から分離、除去する除滓性が作業性も含めて低下することはない。しかし、ミョウバンフラックスを用いて溶湯精錬を行う場合には、この溶湯温度の低下が、あるいは、この比較的低い溶湯温度では、ミョウバンフラックスによるAl溶湯の滓化促進作用によって、Al溶湯表面に生成される滓中へのAl溶湯の取り込みを促進してしまう可能性もある。
【0047】
これに対して、溶湯温度を730 〜780 ℃の比較的高温とすれば、ミョウバンフラックスによるAl溶湯の滓化促進作用があったとしても、Al溶湯表面に生成される滓中へのAl溶湯の取り込み量が著しく抑制される。このため、溶湯表面に浮上した滓の粘度は低下し、除滓性を向上させることができる。また、溶湯温度を730 〜780 ℃の比較的高温とすれば、ミョウバンの分解、反応温度が高まり、前記した精錬効果がより効率的に発揮される効果もある。
【0048】
精錬溶湯温度が前記730 ℃未満であれば、Al溶湯表面に生成される滓中へのAl溶湯の取り込みを促進してしまう可能性が高い。一方、溶湯温度を780 ℃を越える高い温度とする必要はない。溶湯温度を780 ℃を越える高い温度とした場合、大気雰囲気では、却って、大気中の水素ガスを溶湯が吸収しやすくなり、精錬効果の点では逆効果となる可能性がある。また、介在物となるスピネル(MgO・Al2O3)の生成も増加する。
【0049】
更に、この溶湯温度の制御に加えて、一旦、Al溶湯表面に生成される滓中へ取り込まれたAlメタル分を分離してAl溶湯に戻すために、Al溶湯表面に生成される滓を攪拌しても良い。この攪拌によって、滓 (ドロス) を被うシェル (殻) が破壊されるため、滓中へ取り込まれたAlメタル分が高温雰囲気やAl溶湯に触れて、再溶解し、滓と分離しやすくなる効果がある。また、前記した発熱作用のあるフラックスを添加し、発熱によって滓中へ取り込まれたAlメタル分が再溶解して、滓と分離しやすくなるようにしても良い。
【0050】
次に、本発明ミョウバン粉末の他の好ましい要件やフラックスとしての好ましい態様や使用態様について以下に説明する。
【0051】
精錬用フラックス組成:
本発明においては、ミョウバン粉末からなる精錬用フラックス組成について、ミョウバン粉末からなるものと規定してる。これはミョウバン粉末のみからなる (ミョウバン粉末単体組成) の意味だけではなく、他のフラックスと組み合わせ乃至混合されて用いることを許容する。
【0052】
前記した通り、本発明のミョウバンフラックスは、溶湯の脱水素および脱介在物そして除滓等の作用効果を兼ね備えている。しかも、ミョウバン自体が従来のフラックスに比較しても安価である。したがって、これらの特性からは、ミョウバン単体でもよい。しかし、Al溶湯精錬における種々のフラックスには、溶湯の脱水素および脱介在物そして除滓以外の役割も有り、これら他の特性を満たすために、あるいは、溶湯の脱水素および脱介在物そして除滓等の作用効果を向上させるために、その他のフラックスと組み合わせて用いる乃至混合されて用いられて良い。なお、これらミョウバン粉末以外のフラックスの上記水分率は、除滓性に対しての影響はミョウバン粉末に比して著しく少ない。このため、従来通り、Al溶湯の水素量を増大させないために、0.3%以下の低いレベルの水分率で良く、ミョウバン粉末に合わせて、水分率を高める必要は一切無い。
【0053】
その他のフラックスとしては、▲1▼溶湯の脱水素および脱介在物用、或いは発熱用の助燃剤としての、硫酸カリウム(K2SO4) 、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸カルシウム(CaSO4) 或いは硫酸アンモニウムなどの硫酸塩や、炭酸カリウム(K2CO3) などの炭酸塩、あるいは硝酸塩、更には、珪フッ化カリウム(K2SiF6)、アルミフッ化カリウム(KAlF4、K3AlF6) などがある。更に、▲2▼溶湯の脱水素および脱介在物用として、KCl などの塩化物やAlF3などのフッ化物がある。
【0054】
更に、▲3▼発熱用の助燃剤としてのAlアトマイズ粉や、酸化鉄などの金属酸化物、硝酸カリウムなどの硝酸塩、▲4▼硫酸塩の融点を下げるためのほう酸リチウムなどのリチウム(Li)乃至マグネシウム(Mg)化合物などがある。そして、これらを、フラックス組成として好ましくは、前記▲1▼のフラックスの場合は単独あるいは合計で40〜60質量% 、前記▲2▼〜▲4▼のフラックスの場合は単独あるいは合計で10〜30質量% 、ミョウバンに加えた混合系のフラックスとして使用できる。但し、塩素の生成を防止する意味からは、前記KCl などの塩化物の使用は極力抑制すべきである。
【0055】
フラックスの添加量:
ミョウバンフラックスのAl溶湯への添加量は、Al溶湯の脱ガス量および脱介在物量と更には除滓量などの精錬必要量から決定される。この点、前記Al合金の製品分野である、電子電気部品分野、自動車などの輸送機分野、構造材分野などの特性要求に対応するためには、Al合金鋳塊中のH2を0.2ml /100gAl 以下、マグネシア(MgO) 、アルミナ (Al2O3)、スピネル (AlとMgの複合酸化物) 等の酸化物の総量を0.02質量%(200 質量 ppm) 以下とすることが好ましい。なお、本発明で言う酸化物の総量とは、酸化物の中で量が多く、かつ測定が可能な前記3 つの主要な酸化物の総量とする。
【0056】
このレベルの精錬を行うための、フラックス中のミョウバン粉末のAl溶湯への添加量は、Al溶湯に対し1 〜0.001 質量% とすることが好ましい。ミョウバン粉末の添加量が0.001 質量% 未満では、前記レベルに脱ガスおよび脱介在物できなくなる可能性がある。一方、ミョウバン粉末の添加量が1 質量% を越えても、精錬効果は向上せず、精錬コストが上昇するとともに、逆に溶湯を汚染する可能性が生じる。
【0057】
フラックスのAl溶湯への添加方法:
ミョウバンフラックスの溶湯への添加は、溶湯中への吹き込み、溶湯表面への添加 (散布) 、あるいはこれらの組み合わせ等を意味する。この内の吹き込み方法は、通常の精錬用フラックスの吹き込み方法と同じである。即ち、一端をAl溶湯中に装入されたノズル乃至ランスから、N2やArガスなどの不活性ガスをキャリアとして、ミョウバン含むフラックス粉末をAl溶湯中に吹き込むことが精錬の効率上好ましい。前記N2やArガスなどの不活性ガスは、フラックスのキャリアとなるとともに、溶湯を攪拌 (バブリング) して、ミョウバンを始めフラックスの精錬作用や滓の溶湯中の浮上を促進する重要な役割を果たす。
【0058】
この吹き込みの他、溶湯表面にミョウバンフラックスを散布して、添加する態様も使用可能であり、吹き込み方式と併用する態様もある。しかし、このような添加方式は、吹き込み方式に比して、精錬効率が低く、上記添加量の範囲でより多い、ミョウバン添加量を必要とする。したがって、各々の精錬条件に応じて、精錬効率を考慮して、好ましい方法を適宜選択する。
【0059】
なお、勿論、溶湯の攪拌 (バブリング) 効果を増すためにキャリアガス用とは別のランス或いは同一のランスによって、フラックスの吹き込み中あるいはフラックスの吹き込み後に不活性ガスを吹き込んで溶湯の攪拌を行っても良い。
【0060】
溶湯精錬の態様:
本発明における溶湯の精錬は、少なくとも溶解炉において行うことが好ましい。この理由は、従来から、フラックス吹き込み等の溶湯の精錬は、主として溶解炉において行われており、溶解炉が、精錬、および精錬の一貫としての、精錬後の除滓処理を行いやすい設備仕様および構造となっているためである。また、介在物等を粗く除去できる効果もある。このため、本発明を溶解炉にて適用する場合は、既存の設備をそのまま利用できる利点もある。
【0061】
勿論、熔解炉の後の保持炉や各移湯樋において、溶解炉における精錬とともに、あるいは熔解炉における精錬を省略して、ミョウバンをフラックスとする精錬を行うことも可能である。しかし、保持炉や各移湯樋では、精錬のための設備や除滓処理設備が元々設置されていない場合が多い。したがって、これらの設備を新たに設ける必要が無い点や、既存の設備をそのまま利用できる点で、熔解炉で精錬を行う方が有利である。
【0062】
更に、本発明では、Al合金鋳塊中のH2を0.2ml /100gAl (100g のAl中のH2量、単位ml) 以下とする、およびアルミナ等の酸化物 (酸化物系介在物) の総量を0.02質量% 以下とすることを保証するために、溶湯の脱ガス精錬を行うことが好ましい。これら溶解炉などにおけるフラックスによる精錬後のAl溶湯を、溶解炉から移湯樋に移し、移湯樋を通じて溶湯を鋳型に供給する際、移湯樋を流下する溶湯中に不活性ガスを吹き込み、溶湯の脱ガス精錬を行うことが好ましい。この際、前記移湯樋に暗渠状の溶湯溜まりを設けたSNIF (スニフ) 方式か、移湯樋をそのまま使用して、移湯樋を流下する溶湯 (移湯中の溶湯流中) に対して、移湯樋底部に不活性ガスを吹き込む。
【0063】
本発明では、更に、前記Al合金鋳塊中の酸化物系介在物の総量を200 質量 ppm以下とすることを確実に保証するために、精錬から鋳造までの移湯中の溶湯を、板状、ヌードル状、ハニカム状、チューブ状などの適宜の形状のセラミック製多孔質体からなる、外部濾過フィルターあるいは内部濾過フィルターにより濾過することが好ましい。前記移湯樋を通じて溶湯を鋳型に供給する際、前記各フィルターにより溶湯を濾過して溶湯中の介在物の除去を行う。
【0064】
精錬の対象とするAl合金:
本発明が精錬の対象とするAl合金は、圧延板材、押出材、鍛造材などの展伸材用のAl合金であれば、特に限定されない。例えば、AA乃至JIS 1000系の純Alから、 2000 系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系などのAl合金にまで広く適用することが可能である。また、本発明方法は、Pb、Ti、Sn、Fe等の金属不純物元素の除去などを目的とした他の精錬方法と併用することも可能である。
【0065】
また、本発明が精錬の対象とするAl原料は、本発明の精錬効果がより発揮される、不純物量の多いAl合金展伸材製品のスクラップを主体とすること (スクラップを100%使用することを含め) が好ましい。勿論、鋳造Al合金材の要求品質に応じて、Al地金を溶解原料として使用することもでき、前記スクラップと併用することも可能であるが、Al地金よりも安価なスクラップを溶解原料とすることにより、コストダウンが図れるとともに、スクラップのリサイクルという社会的な意義も大きい。
【0066】
【実施例1】
次に、本発明方法の実施例を説明する。表1 に示す3000系から7000系までの種々のAl合金の溶解、精錬、鋳造を行った。溶解条件は、3004、6063、5082の各Al合金展伸材スクラップを各々溶解原料として、Al溶湯重量20トン/ch の反射炉にて、750 ±10℃の温度で大気溶解し、対応する3004、6063、5082の各々のAl合金のJIS 乃至AA規格成分組成に調整した。
【0067】
この時点 (溶解炉精錬前の)Al 溶湯の中の不純物量は、分圧平衡法による溶湯分析および溶湯冷却後の固化したAlの分析の結果、各溶湯とも、水素は0.4 〜0.45ml /100gAl、マグネシア(MgO) 、アルミナ (Al2O3)、スピネル (AlとMgの複合酸化物) の酸化物の総量は0.04〜0.03質量% のレベルであった。但し、水素はランズレー法により測定し、また、前記各酸化物の量は、JIS に規定されるBr- メタノール法により測定した。
【0068】
その後、表1 に示すように、各ミョウバンフラックス組成で、ミョウバン粉末の水分率と平均粒径、Al溶湯温度を種々変えた条件で、溶解炉中のAl溶湯の精錬を行った。ミョウバン粉末の水分率の測定は、前記島津製作所製の電子式水分計(EB-340MOC) を用いて行なった。なお、使用した他のフラックスである、K2SO4 やアルミナなどの平均粒径は0.7mm 以下であり、水分率は0.3%であった。
【0069】
ここにおいて、表1 に示す発明例のミョウバンフラックスは、全て、市販の焼きカリウムミョウバンを用いた。なお、精錬性能の比較のために、比較例15として、塩素ガスを用いてAl溶湯の精錬を行った。
【0070】
ミョウバンフラックスの吹き込みによる精錬例は、各例とも共通して、Al溶湯に浸漬した鉄パイプ製の吹き込み用ランスを用い、キャリアガスとしてのN2ガス吹き込み量を200 リットル (標準状態)/分とし、10分間の吹き込みを3 回実施した。これによって、ミョウバン粉末添加合計量を20kgとし、Al溶湯に対して各々0.1 質量% の添加量とした。このフラックスの吹き込み終了後、N2ガスによるバブリングは行なわなかった。また、塩素ガスは前記ランスにより50リットル( 標準状態)/分×15分Al溶湯中に吹き込み、その後N2ガスによるバブリングを30分間行った。また、ミョウバンフラックスのAl溶湯表面への散布による精錬例は、各例とも共通して、ミョウバン粉末量をAl溶湯に対して0.1 質量% とした各フラックスを各々Al溶湯に対して表面散布した後、その後N2ガスによるバブリングを30分間行った。
【0071】
各例とも、Al溶湯表面の滓の炉外への排出除去を、除滓器具を用いて人手によりかきだして行い、かつ、精錬処理中に連続的に行った。表1 の各例とも、この排出滓の総重量を、溶解初期のAl溶湯重量で除して、滓 (ドロス) の生成量 (質量%)として計測した。
【0072】
また、この除滓の際、炉外への排出された滓の目視観察と作業性の評価を行い、各例における滓の粘度 (固さ) 、滓中のAlメタル分の多さ、滓の排出のしやすさなどを評価し、滓の排出性として評価した。この際、基準として、表2 の比較例22として、塩素ガスを用いたAl溶湯精錬後に除滓された滓との比較で相対的に評価し、同等以上のものを○、これより劣るものを×、として評価した。これらの結果を表2 に示す。
【0073】
なお、各フラックスの精錬効果のみを評価するために、精錬後のAl溶湯の移湯樋での精錬と濾過フィルターによる溶湯の濾過もあえて行わずに、精錬後のAl溶湯を鋳造して、Al合金鋳塊を製造した。
【0074】
そして、製造したAl合金鋳塊中のH2量を前記測定方法により測定した。また、Al合金鋳塊中の酸化物系介在物として、マグネシア(MgO) 、アルミナ (Al2O3)、スピネル (AlとMgの複合酸化物) 量を各々前記測定方法で測定し、各量を合計して酸化物量 (総量) とした。
【0075】
この内、Al合金鋳塊中のH2量が0.2ml /100gAl 以上のものを×、0.2ml 未満〜0.15ml/100gAl のものを△、0.15ml/100gAl 未満のものを○として評価した。また、前記酸化物の総量も、0.02質量% 以上のものを×、0.02質量% 未満〜0.01質量% 越えのものを△、0.01質量% 以下のものを○として評価した。
【0076】
そして、更にフラックス精錬したAl合金鋳塊は、添加フラックスの分解生成物を硫酸塩と想定して、鋳塊中の硫酸塩をS 分として分析定量し、このS 分を溶湯中の残留物量として評価した。評価は分解生成物量が 0.002質量% 以上のものを×、0.002 質量% 未満〜0.0005質量% 越えのものを△、0.0005質量% 以下のものを○として行った。これらの結果も表2 に示す。
【0077】
表2 から明らかな通り、ミョウバン粉末の結晶水を含む水分率を0.7 〜4.0%としミョウバンを用いた発明例1 〜10は、比較例15の塩素ガスを用いたAl溶湯精錬後の除滓された滓と同様、滓の粘度が低く、さらさらの粉体状をしており、滓中のAlメタル分も少なく、Al溶湯表面に生成される滓中へのAl溶湯 (Alメタル分) の取り込み量が著しく抑制されていた。また、滓の粘度が低いために、滓の排出作業も容易であり、比較例15と同様に、滓の排出性に優れていた。これらの結果、滓発生量もAl合金溶湯量の3 質量% 以下と少なく、Al合金溶湯の歩留りが高い。
【0078】
また、発明例は、発明例3 、7 、9 を除き、比較例15の塩素ガスを用いたAl溶湯精錬の場合と同様に、Al合金鋳塊中の水素0.15ml /100gAl以下、アルミナ等の酸化物総量が0.01質量% 以下と、低レベルに低減されており、溶湯の脱水素および脱介在物の高い精錬効果も達成されていた。更に、溶湯への残留物 (フラックス残留物、S 分) も0.0005質量% 以下であり、許容できるほど少ない。
【0079】
ただ、発明例の中でも、ミョウバン粉末の水分率が比較的低い発明例1 は、滓の排出作業は容易であったものの、除滓された滓の粘度が比較的高く、また、滓中のAlメタル分も比較的多く、Al溶湯表面に生成される滓中へのAl溶湯 (Alメタル分) の取り込み量が比較的高かった。これは、ミョウバンの平均粒径が比較的大きい発明例4 、Al溶湯温度が717 ℃と比較的低い発明例5 、ミョウバンの水分率が比較的高い発明例7 でも同様の傾向が見られた。そして、ミョウバンの水分率が比較的高い発明例7 では、Al合金鋳塊中の水素が比較的高くなっていた。
【0080】
また、ミョウバン粉末をAl溶湯表面に散布した発明例3 と9 では、ミョウバン粉末を吹き込み方式とした、添加方式のみが違う発明例2 や8 に比して、Al合金鋳塊中の水素量や酸化物総量が、比較的多くなっていた。これは、前記した通り、添加方式の、吹き込み方式に比べた精錬効率の低さであり、よりミョウバンフラックス添加量を増してやれば、同等の精錬性能が得られる。
【0081】
一方、ミョウバン粉末の水分率が低く過ぎる比較例12、14は、除滓された滓の粘度が著しく高く、また、滓中のAlメタル分も著しく多く、滓の排出作業も困難であった。
【0082】
更に、ミョウバン粉末の水分率が高過ぎる比較例11、13は、除滓された滓の粘度が高く、また、滓中のAlメタル分も多いにもかかわらず、滓の排出作業は容易であった。ただ、Al合金鋳塊中の水素が著しく高くなっていた。
【0083】
【表1】
Figure 0003740131
【0084】
【表2】
Figure 0003740131
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明精錬方法によれば、ミョウバンフラックスの優れた脱水素や脱介在物の高い低減レベルを維持しながら、Al溶湯表面の滓化を極力抑制してAl溶湯の歩留りを向上しうるとともに、除滓性を向上させた、Al合金溶湯の精錬方法を提供することができる。したがって、ミョウバンフラックスによるAl合金溶湯精錬の実用化を広める乃至実用上の価値を高めることができる。ミョウバンフラックスによるAl合金溶湯精錬の実用化が広まった場合、この鋳塊に基づいて製造されるAl合金展伸材などのAl合金材製品の品質を格段に高めることができ、Al合金展伸剤の用途を大幅に拡大することが可能となる。また、Al合金展伸材用の溶解原料として、Al合金展伸材のスクラップを主体とすることが可能となり、スクラップのリサイクルシステムの確立などの社会的意義も大きい。

Claims (2)

  1. 展伸材用アルミニウム合金溶湯に対し、精錬用フラックスとしてミョウバン粉末を用いて、溶湯中の水素を低減する溶湯精錬を行い、合わせて溶湯表面に浮上した滓を溶湯から除去するに際し、前記ミョウバン粉末の結晶水を含む水分率を加熱乾燥質量方式による測定方法で0.7 〜4.0%とし、前記溶湯精錬の際の滓発生量をアルミニウム合金溶湯量の3 質量% 以下に抑制したことを特徴とするアルミニウム合金溶湯の精錬方法。
  2. ミョウバン粉末からなる展伸材用アルミニウム合金溶湯の精錬用フラックスであって、ミョウバン粉末の結晶水を含む水分率を加熱乾燥質量方式による測定方法で0.7 〜4.0%としたことを特徴とするアルミニウム合金溶湯用精錬用フラックス。
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