JP3739941B2 - 含鉄冷材の溶解方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、上吹きランスを有すると共に炉底にノズルを有する転炉を用い、種湯となる溶鉄の存在する上記転炉内に含鉄冷材を供給し、炉底ノズルからキャリアーガスと共に微粉炭を吹き込み溶鉄を加炭すると共に上吹きランスから酸素を供給し浴発生ガスを二次燃焼させて効率的に含鉄冷材を溶解し高炭素溶鉄を得る含鉄冷材の溶解方法に関し、特に二次燃焼率を好ましい範囲に制御しながら鉄歩留まりロスを低下させる含鉄冷材溶解方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特公昭56−8085号公報に、上吹きランスを有すると共に炉底に三重管ノズルを有し、溶鉄の存在する転炉内に含鉄冷材を供給し、上記三重管ノズルの内管よりN2 ガスと共に微粉炭を、内管と中間管との間より酸素を、中間管と外管との間よりLPGガスを吹き込むと共に、上吹きランスより酸素を供給して含鉄冷材を溶解し、溶鉄を得る含鉄冷材の溶解方法が提案されている。
【0003】
上記公報に示される、主として上吹きランスより酸素を供給する含鉄冷材の溶解方法に関する代表的な鉄ダスト低減策として、特許第2565731号公報に、含鉄冷材の溶解速度低下、フォーミング等の操業トラブルが生じない範囲で溶鉄炭素濃度を制御する方法、あるいは特開昭57−207106号公報に、炉体に設けた側孔より酸素を供給することにより、ダストを低減し鉄歩留まりの改善を図る方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記特許第2565731号公報に開示される含鉄冷材の炭素濃度制御方法では、鉄ダスト発生の抑制が不十分であり、一方、特開昭57−207106号公報に開示されるように炉体に設けた側孔より酸素を供給すると、鉄ダスト発生は十分抑制されるが、二次燃焼率が好ましい範囲に制御できなくなる問題がある。
【0005】
そこで、排ガス回収、炉耐火物損耗、ランス・炉孔地金付、生産性等、総合的に効率的な二次燃焼率の範囲である二次燃焼率20〜40%の範囲に制御すると共に、鉄ダスト発生を極めて低いレベルに抑制し、高溶鉄歩留まりで含鉄冷材を溶解する方法が、特開平4−136113号公報に提案されている。この提案法は、上吹きランスを有すると共に炉底にノズルを有する転炉を用い、種湯となる溶鉄の存在する上記転炉内に含鉄冷材を供給し、炉底ノズルから酸素、LPG、N2 と共に微粉炭を吹き込み溶鉄を加炭すると共に、上吹きランスから酸素を供給し浴発生ガスを二次燃焼させて効率的に含鉄冷材を溶解し高炭素溶鉄を得る含鉄冷材の溶解方法において、上吹ランスよりN2 と共に微粉炭を吹き込み二次燃焼率を20〜40%に制御することを特徴とするものである。この提案法によれば、総合的に効率的な二次燃焼率の範囲である二次燃焼率20〜40%の範囲に制御すると共に、鉄ダスト発生を極めて低いレベルに抑制し高溶鉄歩留まりで含鉄冷材を溶解することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平4−136113号公報に提案されている方法では、底吹きノズルから酸素を供給すると、長期間の稼動状態においては底吹きノズル周辺の耐火物溶損を助長することから望ましくなく、底吹きノズルからの酸素供給を止めても、この提案法への本質的な影響はないことが判明した。
【0007】
また、この提案法で示されている総合的に効率的な二次燃焼率の範囲は、炉容積が10t以下の小型炉での間欠運転時の範囲であり、炉容積が100t以上で連続稼動する実炉においては炉耐火物の損耗の観点から、総合的に効率的な二次燃焼率の範囲は20〜30%であることも判った。
【0008】
そして、特開平4−136113号公報に提案されている方法では、実炉での効率的な二次燃焼率の範囲である20〜30%に制御するためには、底吹きおよび上吹きランスより吹き込む微粉炭は、炉内で加炭もしくは燃焼により消費される量よりも過剰に供給する必要があり、炉内で消費されなかった微粉炭は排ガスと共に炉外へ排出され、ダスト中C(Cダストロス)が増加するため、エネルギーコストが悪化するという問題があることが判った。
【0009】
また、上吹きランスからの微粉炭吹き込み設備は配管、ランス先端の摩耗対策が必要であり、消耗品のコストアップに繋がること、搬送N2 ガスの使用量増等のランニングコストもかかることからコストメリットが減少することも問題点として挙げられる。
【0010】
本発明は、上吹きランスから微粉炭を吹き込む代りに、炉口上部より安価な廃タイヤおよび/または廃プラスチックを炉内に自然落下により供給することで、高価な微粉炭の供給量を削減し、ランニングコストをほとんどかけずに、また、Cダストロスを発生させずに、効率的な二次燃焼率の範囲である二次燃焼率20〜30%の範囲に制御すると共に、鉄ダスト発生を極めて低いレベルに抑制し高溶鉄歩留まりで含鉄冷材を溶解する含鉄冷材溶解法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
特開平4−136113号公報に提案されているように、上吹ランスよりN2 と共に微粉炭を吹き込み、二次燃焼率20〜40%の範囲に制御すると共に、鉄ダスト発生を極めて低いレベルに抑制し高溶鉄歩留まりで含鉄冷材を溶解する含鉄冷材溶解法において、上吹ランスよりN2 と共に微粉炭を吹き込む代りに揮発分の高い石炭を炉口上部より炉内に自然落下により供給した結果、非常に効率よく二次燃焼率の制御が可能であることが判明した。
【0012】
しかしながら、揮発分の高い石炭は、炉内で加熱されると崩壊し微細になるためロスが多く、コストメリットが殆ど無くなってしまう。そこで、揮発分が高く、熱分解による崩壊がない物質としてプラスチック類を適用する研究を重ねた結果、特許請求の範囲に示す以下の溶解法が極めて有効であることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
上吹きランスを有すると共に炉底にノズルを有する転炉を用い、種湯となる溶鉄の存在する上記転炉内に含鉄冷材を供給し、炉底ノズルからキャリアーガスと共に微粉炭を吹き込み溶鉄を加炭すると共に上吹きランスから酸素を供給し浴発生ガスを二次燃焼させて効率的に含鉄冷材を溶解し高炭素溶鉄を得る含鉄冷材の溶解方法において、炉口上部より廃タイヤおよび/または廃プラスチックを炉内に自然落下により供給することにより、Cダストロスを発生させることなく二次燃焼率を20〜30%に制御することを特徴とするものである。
【0014】
ここで廃タイヤおよび/または廃プラスチックの形状を
W≧0.3S
W:投入する廃タイヤまたは廃プラスチック片の重量(g)
S:投入する廃タイヤまたは廃プラスチック片の表面積(cm2 )
の範囲に限定することが好ましい。この理由は、炉内より発生する排ガスに抗して飛散することなく炉内に自然落下により供給され、二次燃焼率の制御効果が高くなり、また微粉炭削減効果も高くなるためである。なぜならば、投入する廃タイヤおよび/または廃プラスチックの表面積Sが大きくなるほど、炉内より発生する排ガスの流れに対して抵抗が大きく、この力に抗して炉内へ落下する重力が必要となるため、重量Wが大きいことが好ましいためであり、W≧0.3Sなる関係は経験的に求められた関係である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
特開平4−136113号公報に説明されているように、鉄ダストを減少させるために種々の方法で溶融鉄浴面に到達する上吹き酸素噴流の運動エネルギーを減少させると、二次燃焼率が増大し、操業上有利な二次燃焼率の範囲20〜30%に制御できなくなる。そこで、上吹きランスより、N2 と共に微粉炭を適量噴射する事により、同一の上吹き酸素の供給条件、即ち上吹き酸素供給速度が一定で且つランス高さが同一である条件下においても、微粉炭を噴射することにより溶融鉄浴面に到達する上吹き酸素噴流の運動エネルギーを殆ど変化させる事なく、即ち鉄ダスト発生量を変化させる事なく、独立に二次燃焼率を変更できることを見出した。これは、上吹きランスより噴射した微粉炭がスラグに到達するまでに、周りの酸素と反応し、浴面に供給する酸素の濃度を低下させるため、浴から発生するCOガスをCO2 にまで反応させる過剰な酸素を低下させるためである。しかしながら、この方法では、二次燃焼率を効率的な20〜30%に制御するために上吹きランスより吹き込む微粉炭量を増加して行くと、上吹き酸素噴流と反応しきれなかった未反応の微粉炭が生じ、排ガスと共に炉外へ排出されダスト中C(Cダストロス)が増加する。
【0016】
鉄ダスト発生量を減少できるスラグ量および上吹き酸素供給速度が一定の条件下で上吹きランスよりN2 ガスと共に微粉炭を噴射し、二次燃焼率を制御した場合の微粉炭供給量とCダストロスの関係を図1に示す。二次燃焼率を低く制御するため上吹きランスから噴射する微粉炭量を増加すると、Cダストロスが増加することが解る。Cダストロスが増加すると、微粉炭コストはもとより、微粉炭による顕熱ロスが増加し、トータルのエネルギーコストの増大を招く。
【0017】
然るに本発明者らは、Cダストロスを削減し効率的に二次燃焼率の制御が可能な方法を見出し本発明を完成した。
即ち、本発明者らは炉口上部より廃タイヤおよび/または廃プラスチックを炉内に供給することにより、同一の上吹き酸素の供給条件、即ち上吹き酸素供給速度が一定で且つランス高さが同一である条件下でも図2に示すように、廃タイヤおよび/または廃プラスチックの供給速度に応じて二次燃焼率を変更できることを見出した。また、Cダストロスが殆ど発生していないことも図2より解る。この時、鉄ダスト濃度は図3に示すように、廃タイヤおよび/または廃プラスチックの供給速度に依らずほぼ一定であり、安定的に鉄ダストの低減が可能であることが解る。
【0018】
なお、図3の縦軸の鉄ダストロス指標とは、底吹き微粉炭のみで二次燃焼率25%にて操業した場合の鉄ダスト発生量を1としたときの各条件の鉄ダスト発生量の比率である。
【0019】
このように本発明によれば、上吹きランスからN2 で微粉炭を吹き込み、二次燃焼率を制御する方法に比べて、Cダストロスを発生する事無く、鉄ダスト発生レベルを同等に保ちながら、二次燃焼率を操業上好ましい20〜30%に制御できる。
【0020】
上記のように廃タイヤおよび/または廃プラスチックを炉口上部より供給することにより効率的に二次燃焼率が低下するのは、炉内に供給された廃タイヤおよび/または廃プラスチックが浴中で熱分解して炭化水素系のガスを発生し、炉内空間ですでに二次燃焼を起こしたCO2 ガスを非常に効率的に還元するためであり、このため未反応で炉外へロスする部分は非常に少ない。また、廃タイヤおよび/または廃プラスチックが浴中で熱分解し、ガスにならなかった部分は、燃料として微粉炭の代りに燃焼するため、その分の底吹き微粉炭の削減効果も得られる。
【0021】
このように本発明によると、廃タイヤおよび/または廃プラスチックが炉内で非常に効率的に二次燃焼率の低減、微粉炭代替としての役割をするため、特開平4−136113号公報に提示されている上吹きランスからN2 と共に微粉炭を吹き込む方法に比べ、Cダストロスを低減し、同様の鉄ダスト低減の効果を得ながら二次燃焼率を同様の20〜30%の範囲に制御し、さらに微粉炭削減効果も得られる。また、廃タイヤおよび/または廃プラスチックには燃焼後スラグとなる灰分が少ないため、灰分を含む微粉炭を削減することによりスラグ発生量低減、および副原料削減効果も得られる。さらに、廃タイヤにはスチールワイヤーが含まれたものが多く、含鉄冷材の代替としての効果も得られる。
【0022】
【実施例】
図4は本発明を適用した転炉型含鉄冷材溶解炉および煙道における二次燃焼率、ダスト測定系の構成を示す。図4において、1は炉体、2はランス、3は投射石炭インジェクションタンク、4は底吹きノズル、5は底吹き石炭インジェクションタンク、6は炉体上部に設けた廃タイヤおよび/または廃プラスチック供給設備、7は炉体内に発生する排ガスの通る煙道、8は排ガス成分分析計、9は排ガス風量測定器、10はダストサンプリング装置、11はこれら測定値の演算器、12は炉体内底部の溶融鉄、13は鉄スクラップを示す。
なお同図では、上吹きランス、底吹きノズルへのガス供給系統、煙道吸引ファン、集塵機等の本発明には直接関係しない機器は省略してある。
以下の各実施例および各比較例における共通操業条件を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
(比較例1)
図4の炉において、表1に示す操業条件下において、底吹き石炭量を表2に示す比較例1の条件とし、ランス高さを操作して、二次燃焼率を25%に制御して溶解を実施した。その結果、溶解中の平均二次燃焼率が25%となった。その際、鉄ダストロス指標は1.00、Cダストロスは0kg/tonであり、上吹き酸素によるスラグキャビティー深さLsとスラグ厚みLsoの比Ls/Lsoは4.0であった。
【0025】
(比較例2)
図4の炉において、表1に示す操業条件下において、底吹き石炭量、上吹きランスからの微粉炭供給量を表2に示す比較例2の条件とし、ランス高さを操作して、二次燃焼率を25%に制御して溶解を実施した。その結果、溶解中の平均二次燃焼率が25%となった。その際、鉄ダストロス指標は0.54、Cダストロスは18kg/tonであり、上吹き酸素によるスラグキャビティー深さLsとスラグ厚みLsoの比Ls/Lsoは0.8であった。
【0026】
(実施例1)
図4の炉において、表1に示す操業条件下において、底吹き石炭量、廃タイヤ供給量を表2に示す実施例1の条件とし、ランス高さを操作して、二次燃焼率を25%に制御して溶解を実施した。その結果、溶解中の平均二次燃焼率が25%となった。その際、鉄ダストロス指標は0.54、Cダストロスは2.2kg/tonであり、上吹き酸素によるスラグキャビティー深さLsとスラグ厚みLsoの比Ls/Lsoは0.8であった。
【0027】
(実施例2)
図4の炉において、表1に示す操業条件下において、底吹き石炭量、廃プラスチック供給量を表2に示す実施例2の条件とし、ランス高さを操作して、二次燃焼率を25%に制御して溶解を実施した。その結果、溶解中の平均二次燃焼率が25%となった。その際、鉄ダストロス指標は0.54、Cダストロスは3kg/tonであり、上吹き酸素によるスラグキャビティー深さLsとスラグ厚みLsoの比Ls/Lsoは0.8であった。
【0028】
上記実施例1,2と比較例1,2の実施条件と実施結果を表2に示す。
本発明による実施例では、比較例に比べ、飛躍的にCダストロスが低減されており、鉄ダストロスも同程度に低減し、二次燃焼率は操業上効率的な20〜30%の範囲に同様に制御されている。また、鉄ダストロスを抑制しながら二次燃焼率を25%に制御した比較例2および実施例1,2において、微粉炭量はそれぞれ425,152,212kg/tであり、本発明により、微粉炭供給量削減が可能であることが解る。
【0029】
【表2】
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、Cダストロスを多量に発生させずに操業上好ましい20〜30%の範囲に二次燃焼率を制御しつつ鉄ダストロスを大幅に低減し、さらに微粉炭削減効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表1の操業条件において、上吹きランスからN2 ガスにより微粉炭吹き込みを行った場合の微粉炭吹き込み量と二次燃焼率、Cダストロスの関係を示す図。
【図2】表1の操業条件において、炉口上部から廃タイヤおよび/または廃プラスチックを供給した場合の投入速度と二次燃焼率、Cダストロスの関係を示す図。
【図3】表1の操業条件において、炉口上部から廃タイヤおよび/または廃プラスチックを供給した場合および上吹きランスから微粉炭を吹き込み、二次燃焼率を制御した場合の二次燃焼率と鉄ダストロスの関係を示す図。
【図4】実施例における転炉型含鉄冷材溶解炉および煙道における二次燃焼率、ダスト測定系の構成を示す図。
【符号の説明】
1:炉体
2:ランス
3:投射石炭インジェクションタンク
4:底吹きノズル
5:底吹き石炭インジェクションタンク
6:炉口上部の廃タイヤおよび/または廃プラスチック供給設備
7:煙道
8:排ガス成分分析計
9:排ガス風量測定器
10:ダストサンプリング装置
11:演算器
12:溶融鉄
13:鉄スクラップ
Claims (2)
- 上吹きランスを有すると共に炉底にノズルを有する転炉を用い、種湯となる溶鉄の存在する上記転炉内に含鉄冷材を供給し、炉底ノズルからキャリアーガスと共に微粉炭を吹き込み溶鉄を加炭すると共に上吹きランスから酸素を供給し浴発生ガスを二次燃焼させて効率的に含鉄冷材を溶解し高炭素溶鉄を得る含鉄冷材の溶解方法において、炉口上部より廃タイヤおよび/または廃プラスチックを炉内に自然落下により供給して二次燃焼率を20〜30%に制御することを特徴とする含鉄冷材の溶解方法。
- 廃タイヤおよび/または廃プラスチックの形状を、
W≧0.3S
W:投入する廃タイヤまたは廃プラスチック片の重量(g)
S:投入する廃タイヤまたは廃プラスチック片の表面積(cm2 )
の範囲に限定し、炉口上部より炉内に自然落下により供給することを特徴とする請求項1に記載の含鉄冷材の溶解方法。
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