JP3739743B2 - 汚染土壌の浄化処理方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚染土壌の浄化処理方法および浄化処理装置に関し、特にトリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等に代表されるような揮発性有機塩素系化合物で汚染された土壌をいわゆる現位置撹拌混合方式にて浄化処理する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等の揮発性有機塩素系化合物で汚染された土壌を浄化する方法として、現位置にてその汚染土壌と中和剤である生石灰とを撹拌混合機にて混合する方法がある。これは、汚染土壌に含まれる水分と生石灰との水和反応熱によって、汚染土壌中に含まれる揮発性有機塩素系化合物を蒸発(揮発)させて、その浄化を図ろうとするものである。
【0003】
しかしながら、このような処理方法では水和反応熱による蒸発作用に5〜24時間程度の時間を要するために、例えば降雨時等に備えて混合後の養生設備を必要とすることとなって好ましくない。また、混合後の土壌の自重による再圧密のために通気性が阻害され、汚染土壌中からの揮発性有機塩素系化合物の蒸発が必ずしも十分ではなく、浄化品質にばらつきが生じたり、混合時における生石灰の粉塵によって二次的不具合の発生が危惧される。
【0004】
このようなことから、特許文献1および特許文献2に記載されているように、ロータリーキルン等を用いて汚染土壌中に含まれる揮発性有機塩素系化合物を燃焼分解もしくは蒸発させるようにしたいわゆるバッチ処理方式のシステムが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−308879号公報 (図1)
【0006】
【特許文献1】
特開2001−25757号公報 (図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1,2に記載されたような従来の技術では、処理対象領域の近くに大規模な処理設備を構築し、掘り起こした汚染土壌をその都度処理施設まで搬送して処理した上で、処理後の土壌を再度元の位置まで搬送して埋め戻す必要があるため、処理設備だけでなく掘り起こし、運搬および埋め戻し等のために多くの建設機械やオペレータを必要とし、著しいコストアップを招くこととなって好ましくない。
【0008】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけ処理対象領域において現位置処理方式にて効率よく汚染土壌の浄化処理を行えるようにした方法と装置を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、揮発性有機塩素系化合物を含む汚染土壌を現位置にて浄化処理するにあたり、地中に貫入した撹拌混合手段から熱風を吐出しながら汚染土壌とその熱風とを撹拌混合し、汚染土壌中に含まれる揮発性有機塩素系化合物をガス状化させて、土壌と揮発性有機塩素系化合物とに分離させる方法であって、上記撹拌混合手段は、上下方向に周回駆動されるエンドレスなチェーンに多数の撹拌翼が装着されているとともに先端部に熱風吐出口が設けられていて、チェーンの上端部が地表に露出した状態で、熱風吐出口からの熱風の吐出と並行して、撹拌翼の周回移動により土壌の掘削と撹拌混合とを行うことを特徴とする。すなわち、揮発性有機塩素系化合物の沸点が40℃〜120℃程度と比較的低く揮発しやすい性質を利用して、電熱送風機あるいはガスや石油等を燃料とするバーナー付き送風機等で得た熱風を吹き付けながら汚染土壌を撹拌混合することにより、土壌中の水分とともに揮発性有機塩素系化合物を蒸発させて分離回収するものである。
【0010】
この場合、請求項2に記載のように、汚染土壌と熱風とを撹拌混合するのと並行して、ガス状化した揮発性有機塩素系化合物を外部に吸引回収することが望ましい。揮発性有機塩素系化合物の回収は活性炭や木炭等による吸着方式もしくはスクラバーによる分離回収方式とし、あるいは直接燃焼方式もしくは触媒燃焼方式にて燃焼させて分解させるようにしてもよい。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の技術を浄化処理装置として捉えたものであって、揮発性有機塩素系化合物を含む汚染土壌を現位置にて浄化処理するにあたり、地中に貫入した撹拌混合手段から熱風を吐出しながら汚染土壌とその熱風とを撹拌混合し、汚染土壌中に含まれる揮発性有機塩素系化合物をガス状化させて、土壌と揮発性有機塩素系化合物とに分離させる装置であることを前提としている。その上で、この装置は撹拌混合手段と熱風発生装置とを備えていて、上記撹拌混合手段は、上下方向に周回駆動されるエンドレスなチェーンに多数の撹拌翼が装着されているとともに先端部に熱風吐出口が設けられていて、チェーンの上端部が地表に露出した状態で、熱風吐出口からの熱風の吐出と並行して、撹拌翼の周回移動により土壌の掘削と撹拌混合とを行うようになっていることを特徴とする。
【0012】
この場合、請求項4に記載のように、汚染土壌と熱風とを撹拌混合するのと並行して、ガス状化した揮発性有機塩素系化合物を外部に吸引回収する吸引回収手段を備えていることが望ましい。
【0013】
同様に、請求項5に記載のように、熱風発生装置と熱風吐出口を結ぶ熱風供給系のうち熱風吐出口に近い位置に圧縮空気を導入して、それに伴う負圧吸引力をもって熱風吐出口から熱風を吸引,吐出させるようになっているのが望ましい。
【0014】
したがって、これらの請求項1〜5に記載の発明では、処理対象領域そのものである現位置にていわゆる地盤改良工法と同様の手法により処理を行うべく、地中に貫入した撹拌混合手段から熱風を吐出しながら汚染土壌とその熱風とを撹拌混合すれば、汚染土壌中に含まれる揮発性有機塩素系化合物がガス状化されて、土壌と揮発性有機塩素系化合物とに分離されることになる。すなわち、土壌から揮発性有機塩素系化合物が除去されてその土壌の浄化もしくは無公害化が可能となる。
【0015】
【発明の効果】
請求項1,3に記載の発明によれば、処理対象領域そのものである現位置にて撹拌混合手段から熱風を吐出しながら汚染土壌と撹拌混合することで浄化処理を行うようにしたので、小規模な設備で効率よく浄化処理を行うことができ、経済性に優れたものとなる。
【0016】
また、請求項2,4に記載の発明によれば、ガス状化した揮発性有機塩素系化合物を外部に回収するようにしたので、その揮発性有機塩素系化合物による二次的不具合をも未然に防止できる利点がある。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、熱風発生装置と熱風吐出口を結ぶ熱風供給系のうち熱風吐出口に近い位置に圧縮空気を導入して、それに伴う負圧吸引力をもって熱風吐出口から熱風を吸引,吐出させるようにしたので、熱風の吐出効率が一段と向上するとともに、土壌の逆流による熱風吐出口での閉塞を未然に防止できる利点がある。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1〜4は本発明の好ましい実施の形態を示す図であり、処理対象となる汚染土壌領域において現位置撹拌混合方式にてその汚染土壌の浄化処理を行う場合の例を示している。
【0019】
図1に示すように、施工のための浄化処理装置は建設機械であるバックホウ1をベースマシン(母機)として構成されていて、そのアーム2の先端にはアタッチメントとして撹拌混合手段たる撹拌混合ヘッド3が装着されている。
【0020】
撹拌混合ヘッド3は、図2,3に示すように上下方向に延びる略角柱状のフレーム4の上部に設けられたチェーンスプロケット等の駆動輪5と下部に設けられた従動輪6との間にエンドレスなドライブチェーン7を巻き掛けるとともに、そのドライブチェーン7の外周に複数の幅広の撹拌翼8を所定のピッチで装着したものである。そして、駆動輪5と同一軸線上に設けた油圧モータ9によって駆動輪5を回転駆動させることにより各撹拌翼8,8…がドライブチェーン7とともに周回移動するようになっている。なお、ドライブチェーン7にはフレーム4側に設けたチェーンテンショナー10によって所定の張力が付与される。
【0021】
フレーム4の下端には熱風圧送管11の先端に設定した左右一対の熱風吐出口12が設けられているとともに、熱風圧送管11のうち熱風吐出口12よりも上流側部分では空気圧送管13が合流している。より詳しくは、熱風圧送管11および空気圧送管13は先端部において分岐配管11aもしくは13aをもってそれぞれ二股状に分岐していて、熱風圧送管11側の分岐配管11aに対して空気圧送管13側の分岐配管13aが合流している。そして、熱風圧送管11は図1に示すように熱風発生装置としての電熱送風機14に接続されているとともに、空気圧送管13は図示しないコンプレッサ等の圧縮空気供給源に接続されている。なお、電熱送風機14は電熱線と送風用ファンとを組み合わせてユニット化したものであり、その送風温度は送風量とともに例えば60〜140℃の範囲内で任意に調整可能となっている。もちろん、上記電熱送風機14に代えて、ガスや石油、重油、軽油、廃油等を燃料とするバーナー付き送風機を用いてもよい。
【0022】
ここで、熱風圧送管11の分岐配管11aに対して空気圧送管13の分岐配管13aを合流させて熱風流れのなかに圧縮空気を導入しているのは、図4に示すように圧縮空気の合流をもって負圧を発生させながら熱風吐出口12から熱風を吸引,吐出し、熱風吐出口12からの熱風の吐出効率を高めるためである。
【0023】
図1に示すように、撹拌混合ヘッド3のフレーム4にはその撹拌混合ヘッド3を囲繞するような形態で底部のみが開口した略ベローズ状の防護カバー15が配置されている。そして、この防護カバー15はダクト16を介して吸引回収装置としての直接燃焼方式もしくは触媒燃焼方式の焼却炉17に接続されている。
【0024】
このように構成された汚染土壌の浄化処理装置によれば、図1〜3に示すように撹拌混合ヘッド3の各撹拌翼8,8…をドライブチェーン7とともに周回移動させる一方、熱風吐出口12から熱風を吐出させる。この状態で、撹拌混合ヘッド3自体を浄化対象領域の汚染土壌中に鉛直姿勢にて所定深度まで貫入して、貫入と引き抜きとを繰り返すか、もしくはその貫入深度を維持したまま撹拌翼8,8…の幅寸法を処理幅としてバックホウ1のリーチを使って撹拌混合ヘッド3を横行させて、汚染土壌と熱風との撹拌混合を繰り返す。この時、図1に示すように撹拌混合ヘッド3のうち周回移動するドライブチェーン7が地中に完全に埋没することなくその上端部が常に地表に露出した状態で処理を行うものとする。同時に、図4に示したように熱風をそれに合流する圧縮空気の負圧吸引力をもって熱風吐出口12吸引,吐出することにより、熱風吐出口12からの熱風の吐出効率が高められる。
【0025】
このような撹拌混合の過程では、汚染土壌に含まれるトリクロロエチレン等の揮発性有機塩素系化合物が土壌中の水分とともに熱風によって蒸発し、いわゆるガス状化して防護カバー15内に滞留する。そして、上記のようにドライブチェーン7の上端部が常に地表に露出した状態で処理を行うことにより、特に下方から上方に向かう撹拌翼8,8…の動きによって、ガス状化した揮発性有機塩素系化合物の地表側への蒸発発散効率が一段と高められる。さらに防護カバー15内に滞留した揮発性有機塩素系化合物のガス状化成分は焼却炉17側に吸引回収されて、この焼却炉17で燃焼されて熱分解されることになる。
【0026】
このように本実施の形態によれば、汚染土壌処理対象領域でのいわゆる現位置撹拌混合方式としたことにより、作業効率の改善と処理品質の均一化が図れるようになる。
【0027】
ここで、ガス状化した揮発性有機塩素系化合物の吸引回収装置としては、図1に示した焼却炉17に代えて、例えば図5に示すように活性炭、木炭、竹炭等を吸着剤として用いて吸着方式によりタンク18内に蓄積する方法のほか、スクラバー等による分離回収方式にてタンク19内に蓄積するようにしてもよい。
【0032】
ここで、本発明は、先に例示したバックホウをベースマシンとしたタイプのもの以外に、地中連続壁用掘削装置に適用することも可能である。この地中連続壁用掘削装置としては、例えば特許第2554451号公報等に記載されているように、チェーンソー式のカッターを地中深く貫入した上でそのカッターをベースマシンとともに横行させることで溝を掘削し、その溝に固化材等を注入することで地中に連続壁を構築するためのものを流用する。
【0033】
その上で、カッターの先端のうち非可動部分に熱風吐出口を設定しておき、その熱風吐出口から熱風を吐出しながらカッターを周回移動させることで、汚染土壌を掘削撹拌しながらその土壌に含まれる水分とともに揮発性有機塩素系化合物をガス状化させて吸引回収する。こうすることにより、図1に示した第1の実施の形態のものと同様に、カッターが上方に向かって周回移動する際にガス状化した揮発性有機塩素系化合物を積極的に地表側に浮上させる効果が得られ、これをもって揮発性有機塩素系化合物の蒸発発散効率が一段と高められるようになる。
【0036】
図6〜8はいずれも熱風吐出のための熱風吐出口の他の実施の形態を示す。
【0037】
図6に記載の熱風吐出口30は、円形パイプ状の熱風圧送管11の先端開口面11bに所定距離隔てて断面矩形状もしくは菱形状の邪魔部材31を溶接等により装着して、先端開口面11bから吐出される熱風を邪魔部材31に衝突させることによりその拡散効果を高め、同時に土壌中への貫入時に土壌の逆流によってその先端開口面11bが閉塞されることがないように考慮したものである。
【0038】
また、図7に記載の熱風吐出口32は、凹凸形状とした熱風圧送管11の先端開口面11cに所定の開度を確保しつつ円錐形状の栓体33を溶接等により固定して、図6と同様の効果を狙ったものである。
【0039】
さらに、図8,9に示した熱風吐出口34は、熱風圧送管11の先端に所定距離隔てて二枚の仕切板35,36を配設するとともに、双方の仕切板35,36間に弁体としてスチールボール37をわずかな自由度を持たせて介装したもので、一方の仕切板335には円形穴38を、他方の仕切板36には放射状に多数のスリット39,39…をそれぞれ開口形成して、実質的に逆止弁と同等の構造としてある。
【0040】
したがって、この実施の形態では、熱風吐出時には図8の(A)に示すように円形穴38が押し開かれて放射状のスリット39,39…から熱風が吐出され、それによって熱風の拡散放出効果が発揮される。また、熱風吐出圧以上の圧力をもって土壌圧が作用した場合には、図9に示すようにスチールボール37が円形穴38を閉塞し、それ以上の土壌の逆流を防止する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態として汚染土壌浄化装置の概略構成を示す説明図。
【図2】図1における撹拌混合ヘッドの要部拡大説明図。
【図3】図2の側面説明図。
【図4】図3のA部拡大説明図。
【図5】図1の吸引回収装置の変形例を示す説明図。
【図6】 図4の熱風吐出口の変形例を示す構成説明図。
【図7】 図4の熱風吐出口の別の変形例を示す構成説明図。
【図8】 図4の熱風吐出口のさらなる変形例を示す図で、(A)はその構成説明図、(B)は同図(A)のb−b線に沿う断面図、(C)は同図(A)のc−c線に沿う断面図。
【図9】 図8の熱風吐出口の作動説明図。
【符号の説明】
3…撹拌混合ヘッド(撹拌混合手段)
7…ドライブチェーン
8…撹拌翼
12…熱風吐出口
14…電熱送風機(熱風発生装置)
17…焼却炉(吸引回収手段)
Claims (5)
- 揮発性有機塩素系化合物を含む汚染土壌を現位置にて浄化処理するにあたり、地中に貫入した撹拌混合手段から熱風を吐出しながら汚染土壌とその熱風とを撹拌混合し、汚染土壌中に含まれる揮発性有機塩素系化合物をガス状化させて、土壌と揮発性有機塩素系化合物とに分離させる方法であって、
上記撹拌混合手段は、上下方向に周回駆動されるエンドレスなチェーンに多数の撹拌翼が装着されているとともに先端部に熱風吐出口が設けられていて、
チェーンの上端部が地表に露出した状態で、熱風吐出口からの熱風の吐出と並行して、撹拌翼の周回移動により土壌の掘削と撹拌混合とを行うことを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法。 - 汚染土壌と熱風とを撹拌混合するのと並行して、ガス状化した揮発性有機塩素系化合物を外部に吸引回収することを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化処理方法。
- 揮発性有機塩素系化合物を含む汚染土壌を現位置にて浄化処理するにあたり、地中に貫入した撹拌混合手段から熱風を吐出しながら汚染土壌とその熱風とを撹拌混合し、汚染土壌中に含まれる揮発性有機塩素系化合物をガス状化させて、土壌と揮発性有機塩素系化合物とに分離させる装置であって、
撹拌混合手段と熱風発生装置とを備えていて、
上記撹拌混合手段は、
上下方向に周回駆動されるエンドレスなチェーンに多数の撹拌翼が装着されているとともに先端部に熱風吐出口が設けられていて、
チェーンの上端部が地表に露出した状態で、熱風吐出口からの熱風の吐出と並行して、撹拌翼の周回移動により土壌の掘削と撹拌混合とを行うようになっていることを特徴とする汚染土壌の浄化処理装置。 - 汚染土壌と熱風とを撹拌混合するのと並行して、ガス状化した揮発性有機塩素系化合物を外部に吸引回収する吸引回収手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載の汚染土壌の浄化処理装置。
- 熱風発生装置と熱風吐出口を結ぶ熱風供給系のうち熱風吐出口に近い位置に圧縮空気を導入して、それに伴う負圧吸引力をもって熱風吐出口から熱風を吸引,吐出させるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の汚染土壌の浄化処理装置。
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