JP3738998B2 - 時計用外装部品の製造方法、時計用外装部品および時計 - Google Patents

時計用外装部品の製造方法、時計用外装部品および時計 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、時計用外装部品の製造方法、時計用外装部品および時計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、時計用外装部品としては、時計ケース、ガラス縁、飾り縁、裏蓋、バンド駒などがある。この種の時計用外装部品の成形方法としては、金型を要する成形加工が主流である(たとえば特許文献1と特許文献2。)。
【0003】
特許文献1では、リロールされた平板材又は短尺材、もしくは単一部品を製造するのに適したサイズに切断した平板片は、そのまま常温又は加熱してプレス加工によって打抜き、1次ブランク材とする。この1次ブランク材は、さらにプレス加工、切削加工、研磨加工、表面処理加工などの後加工を施して完成品とする方法が採られていた。
【0004】
特許文献2では、丸棒、又は角棒などの棒材をスライスして成形して平板片が得られる。この平板片はそのまま常温又は加熱してプレス加工によって打抜くことで1次ブランク材とする。もしくは短く切断した棒材は、加熱してプレス加工によって成形することで1次ブランク材とする。この1次ブランク材は、さらにプレス加工、切削加工、研磨加工、表面処理加工などの後加工を施して完成品とする方法が採られていた。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−343471号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】
特開2001−343472号公報(第1頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の時計用外装部品の製造方法では次のような問題がある。
各種の時計用外装部品を製造するために、多数の種類の金型を用意する必要があるので、大きな初期投資費用が発生する。この金型の設計や金型の製作に関わる作業者や機械が必要となる。金型寿命に合わせた定期的なメンテナンス作業が必要となる。
特に、時計用外装部品の生産数量は、少量でかつ小ロット化の傾向にあることから、必要とされる金型の種類は多数に上り高価である。
本発明は、上記課題を解消し、金型を要する成形加工を用いずに時計用外装部品の完成形状を効率的に製造する時計用外装部品の製造方法、時計用外装部品および時計用外装部品を備える時計を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の時計用外装部品の製造方法は、金属材料からなる棒状の母材を加工して時計用外装部品を製造するための時計用外装部品の製造方法であって、前記母材を第1テーブルに設定して、前記第1テーブルの第1加工姿勢と、前記第1加工姿勢と垂直方向の加工姿勢である第2加工姿勢と、前記第1加工姿勢と前記第2加工姿勢との間において曲線軸に沿って加工可能な加工姿勢である第3加工姿勢とを使用して、機械加工により第1加工部分を切削するとともに、前記母材に対して半径方向に切削加工して前記母材に細径部分を形成することで対象部位を形成する第1加工ステップと、前記第1加工ステップにおいて切削加工された前記対象部位を第2テーブル側において保持して、前記細径部分を切削加工することで前記対象部位を前記母材から切削加工により分離する第2加工ステップと、前記母材から分離された前記対象部位に対して、前記第2テーブルの第1の加工姿勢と、前記第1の加工姿勢と垂直方向の加工姿勢である第2の加工姿勢と、前記第1の加工姿勢と前記第2の加工姿勢との間において曲線軸に沿って加工可能な加工姿勢である第3の加工姿勢とを使用して、さらに機械加工により切削することで前記対象部位に第2加工部分を形成する第3加工ステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1加工ステップにおいて、母材は第1テーブルに設定して機械加工により第1加工部分を切削することで対象部位を形成する。
続いて第2加工ステップにおいて、第1加工ステップにおいて切削加工された対象部位は第2テーブル側に保持して、対象部位は母材から切削加工することにより分離する。これによって、対象部位は母材から分離して第2テーブル側に保持されている。
続いて第3加工ステップでは、母材から分離された対象部位は、さらに機械加工により切削することで、対象部位に第2加工部分を形成して必要な時計用外装部品を切削加工により製造することができる。
このようにして、第1加工ステップにおいては母材の対象部位に対して予め第1加工部分を切削した後に、第2加工ステップに移る。第2加工ステップでは第1加工ステップにおいて切削加工された対象部位を母材から分離して第2テーブル側に保持する。第3加工ステップでは対象部位に対してさらに機械加工により切削することで必要とする時計用外装部品の形状を得ることができる。
金型を要する成形加工を用いずに、時計用外装部品の完成形状は効率的に製造することができるとともに、従来の金型による成形加工では造れなかった新造形の時計用外装部品が製造できる。
【0009】
上記構成において、前記第1加工ステップでは、輪郭形状を切削するとともに前記母材に対して半径方向に切削加工して前記母材に対して細径部分を形成することで前記対象部位を形成することが望ましい。
このような構成によれば、第1加工ステップでは、母材は輪郭形状を切削するとともに母材に対して半径方向に切削加工して、母材に対して細径部分を形成する。これによって母材と対象部位の間には溝を形成する。第2加工ステップにおいて対象部位を母材から切削加工することが容易になる。
【0010】
上記構成において、前記第1加工ステップでは、前記母材の外周部分は、前記第1テーブルの外径押さえチャックにより着脱自在に保持されることが望ましい。
このような構成によれば、第1加工ステップでは、母材の外周部分が第1テーブルの外径押さえチャックにより着脱自在に保持されていることから、この外径押さえチャックを緩めることにより、母材は移動することが可能になる。
【0011】
上記構成において、前記第2加工ステップでは、前記対象部位は前記第2テーブル側に対して内径押さえチャックないし外径押さえチャックにより着脱自在に保持されることが望ましい。
このような構成によれば、第2加工ステップでは、対象部位は第2テーブル側に対して内径押さえチャックないし外径押さえチャックにより着脱自在に保持されていることから、対象部位が母材から切削加工により分離された状態でも対象部位のみを第2テーブル側に確実に保持することができる。
【0014】
上記構成において、前記第3加工ステップでは、ブランクである前記対象部位に対して、さらに輪郭形状を切削により形成することが望ましい。
このような構成によれば、第3加工ステップでは、ブランクである対象部位は、さらに輪郭形状を切削により形成することで、時計用外装部品の完成形状を効率的に製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
第1の実施形態
図1は、本発明の時計用外装部品の製造方法の例を示している。
図1では、時計用外装部品の一例である時計ケースを製造する際の部品形状の変化を示している。図2は、図1の時計ケースを製造するための製造装置の一例を示している。
【0020】
図1に示すように、本発明の時計用外装部品の製造方法は、第1加工ステップS1、第2加工ステップS2および第3加工ステップS3を有している。
図1に示す時計ケースを製造するために、図1に示す棒状の母材10の材質は、製造しようとする時計ケースの材質に応じて採用される。母材10は、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、黄銅のいずれか1つからなるたとえば円形断面の棒材である。
この棒状の母材10としては、JIS(日本工業規格)の規格品を用いることが好ましい。母材10は、たとえば、ステンレス鋼としてはJISG4303、或いは4318、チタン、チタン合金としてはJISH4650、アルミニウム、アルミニウム合金としてはJISH4040、黄銅としてはJISH3250に規定されているものなどが挙げられる。
【0021】
棒状の母材10の端面の平面サイズは、時計ケース等の部品を1つだけ成形するのに適したサイズであることが好ましい。たとえば、時計ケースを製造する場合には、棒状の母材10は、通常100mm以下の円形、或いは一辺が100mm以下の正方形、もしくは長方形状の平面形状、または部品の平面形状に近似の形状に成形された棒材などである。これにより、棒状の母材10の無駄を最小限に抑えた加工ができるからである。
【0022】
図1に示す本発明の時計用外装部品の製造方法の第1加工ステップS1は、棒状の母材10を第1テーブルに設定して機械加工により第1加工部分11を切削することで、対象部位13を形成するステップである。
図1に示す第2加工ステップS2は、第1加工ステップS1において切削加工された対象部位13を、第2テーブル側に保持して、対象部位13を棒状の母材10から切削加工により分離するステップである。
図1に示す第3加工ステップS3は、棒状の母材10から分離された対象部位13に対して、さらに機械加工により切削することで対象部位に第2加工部分14を形成するステップである。
これによって、時計ケースのブランク15が、機械による切削加工のみで製造するようになっている。
【0023】
図1に示す第1加工ステップS1ないし第3加工ステップS3を詳しく説明する前に、各ステップが実現できるようにするための製造装置の一例について説明する。
図2は、時計用外装部品の製造装置100を示している。この製造装置100は、ミーリング主軸101、第1旋回テーブル102、第2旋回テーブル103、バーフィーダ104および制御部105を有している。
ミーリング主軸101は、工具ホルダ106を有している。工具ホルダ106は、チャック125、旋削工具128、ミーリング工具129、穴明工具130のいずれか1つを、着脱可能に取り付けることができる。
ミーリング主軸101は、モータ107,108,109,110を有している。モータ107は、工具ホルダ106を連続回転させる。X軸用モータ108は、ミーリング主軸101をX方向に移動して位置決めする。Y軸用モータ109は、ミーリング主軸101をY方向に沿って移動して位置決めする。Z軸用モータ110は、ミーリング主軸101をZ方向に沿って移動して位置決めする。X,Y,Zの方向はそれぞれ直交する方向である。
【0024】
図2の第1旋回テーブル102は、外径押さえチャック140、モータ141,142を有している。外径押さえチャック140は、棒状の母材10の外周部分を機械的に着脱可能に押さえて保持するためのチャックである。モータ141は、この外径押さえチャック140を第2軸L2に沿って回転させる。モータ142は、第1旋回テーブル102を第4軸L4に沿って所定角度旋回させる。バーフィーダ104は、棒状の母材10を、第1旋回テーブル102において第1軸L1に沿って送り込む装置である。
【0025】
第2旋回テーブル103は、内径押さえチャックないし外径押さえチャック150、モータ151,152,153を有している。
内径押さえチャックないし外径押さえチャック150は、図1に示す対象部位の内径部分155を半径方向外側に押し付けることでもしくは外径部分155aを半径方向内側に押し付けることで着脱可能に対象部位13を保持することができる。モータ151は、内径押さえチャックないし外径押さえチャック150を第3軸L3に沿って回転させる。モータ152は、第2旋回テーブル103を第5軸L5に沿って所定角度旋回させる。モータ153は、第2旋回テーブル103をU軸(第3軸L3)に沿って直線移動させる。
【0026】
このように、この製造装置100は、一例として第1軸L1から第5軸L5までを有する同時制御機能を有しており、図1に示す母材10の対象部位13および第2加工部分14に対して3次元の切削加工が可能である。第1旋回テーブル102は第1テーブルに相当し、第2旋回テーブル103は第2テーブルに相当する。図2に示す制御部105は、各モータ107,108,109,110,141,142,151,152,153、バーフィーダ104などの動作を制御する。
【0027】
図3ないし図8は、図2に示す製造装置100を用いて、後に示す時計ケースであるブランク15が製造される製造工程の一例を示している。
そこで、図1の時計用外装部品の製造方法の各ステップS1〜S3を参照しながら、図2ないし図8に従って時計ケースであるブランク15の製造例について説明する。
まず図1に示す第1加工ステップS1では、棒状の母材10が用意される。この棒状の母材10は、時計ケースのブランク15を製造するのに適したサイズを有し、適した材質のものである。図1では母材10は丸棒である。
【0028】
この棒状の母材10は、バーフィーダ104によりX1方向に沿って第1軸L1上を送られる。棒状の母材10の第1加工部分11は、外径押さえチャック140から外側に突出して保持される。第1旋回テーブル102は図3に示す加工姿勢P1により設定されている。第2旋回テーブル103は加工姿勢P2に設定されている。従って外径押さえチャック140と内径押さえチャックないし外径押さえチャック150は対面した状態にある。
尚、ミーリング主軸101の工具ホルダ106には予め、図2に示すチャック125が装着されることにより、バーフィーダ104と図2に示すチャック125を用いて棒状の母材10の第1軸L1に沿った位置を自動的に変えることにより、外径押さえチャック140が棒状の母材10をクランプする位置を自動的に連続的に変えることができる。
図3では、工具ホルダ106にはチャック125に代えて旋削工具128が装着されている。この旋削工具128は棒状の母材10の第1加工部分11に対面した位置にある。
【0029】
図1に示す第1加工ステップS1では、棒状の母材10の第1加工部分11は、図3に示す旋削工具128もしくはミーリング工具129を用い、第1旋回テーブル102を加工姿勢P1と図3の破線で示す加工姿勢P3にする。これにより、図1(A)の母材10の状態から図1(B)に示す対象部位13が加工されるとともに、細径部分90が形成される。すなわち、図3に示すように第1旋回テーブル102は加工姿勢P1と加工姿勢P3を適宜選択し、旋削工具128またはミーリング工具129を選択して使用する。
これによって、棒状の母材10の第1加工部分11は、端面部分、内径部分、外径部分の輪郭形状を切削加工により形成する。しかも細径部分90は、棒状の母材10の半径方向に沿って溝加工することで形成する。これによって、図4に示すように図1の対象部位13および細径部分90が切削加工のみにより形成される。この場合の対象部位13の軸方向の厚みは、たとえば2mm〜30mmである。
そして、図4と図5に示すように第1旋回テーブル102は、第4軸L4に沿ってコンタリング加工ができる加工姿勢P5を併用することにより、図1(B)に示す対象部位13は図1(C)に示すように3次元切削加工を行い、傾斜した輪郭部分160を形成することができる。このような輪郭部分160は、図5にも示している。
【0030】
次に、図1の第2加工ステップS2に移る。
第2加工ステップS2では、図6に示すように穴明け工具130が工具ホルダ106に装着される。そして、たとえば図6に示すように第1旋回テーブル102は、加工姿勢P1において、棒状の母材10を保持している。穴明け工具130を回転してミーリング主軸101を下げていくことにより、対象部位13の側面に対して穴13Hを形成する。この穴13Hは図1(D)に示している。
このような切削による穴明け加工が終了すると、第2加工ステップS2では、図7に示すように第2旋回テーブル103がU軸に沿って第1旋回テーブル102側に移動する。そして内径押さえチャックないし外径押さえチャック150が対象部位13の加工側正面13E側のたとえば図1(D)に示す内径部分155もしくは外径部分155aを内径押さえチャックないし外径押さえチャック150によりクランプして保持される。
これによって、図1(D)において点線部で示す棒状の母材10と細径部分90は、外径押さえチャック140と内径押さえチャックないし外径押さえチャック150の間に位置されることになる。
【0031】
図7に示すミーリング主軸工具101のホルダ106には、たとえば旋削工具128が装着されている。そして図7において第1旋回テーブル102と第2旋回テーブル103はそれぞれ加工姿勢P1,P2に保持されたままである。外径押さえチャック140と内径押さえチャックないし外径押さえチャック150は、同期して棒状の母材10を回転させることにより、旋削工具128は細径部分90にはまり込んで、半径方向に沿って突っ切り切削加工を行う。これによって、棒状の母材10と対象部位13は完全に分離される。この状態において対象部位13は、内径押さえチャックないし外径押さえチャック150側にたとえば内径部分155、もしくは外径部分155aを押さえた状態で確実に保持されているので、内径押さえチャックないし外径押さえチャック150から対象部位13は落下してしまうことがない。
このようにして対象部位13は、図1(D)から図1(E)に示すように、点線部で示す棒状の母材10から機械的に完全に分離することができる。これによって、時計ケースであるブランク15が図1(E)のように得られる。
【0032】
次に図1の第3加工ステップS3に移る。第3加工ステップS3では、図8に示すように第2旋回テーブル103の加工姿勢P2,P4およびP5を用いて、図1(E)のブランク15に対して突っ切り切削した側の端面部分、内径部分、外径部分に対して2次元および3次元切削加工を行う。この場合に用いる工具は、たとえば旋削工具128、ミーリング工具129、穴明け工具130である。このように第3加工ステップにおいて、ブランク15に対してさらに加工する部分は、図1(F)に示す第2加工部分14である。
【0033】
これによって、図1(F)に示すような完成形状の時計ケースであるブランク15を切削加工により得ることができる。その後このブランク15は、研磨加工、表面処理加工が施される。上述の第1加工ステップS1〜第3加工ステップS3をくり返すことで、複数のブランク15が切削加工で形成できる。
なお、上述したような時計ケースの切削による製造工程においては、単に時計ケースの部品が輪郭部品を形成するだけでなく、たとえば文字や模様なども対象部位に対して切削加工することは可能である。
このブランク15の表面粗さは、たとえば(最大高さRmaxは、)10μm以下、好ましくは5μm以下である。特に、表面粗さが0.5〜3.5μmの範囲であることが、その後の工程にあまり配慮することなく、部品の表面状態を良好にする上で望ましい。そのために、旋削加工においては旋回主軸は50〜5000min−1、ミーリング主軸は35〜50000min−1の回転範囲を装備していることが望ましい。
【0034】
図9は、図1のブランク15を切削により加工するための加工プログラムの例を示している。この加工プログラムは、図2に示す制御部105に与えられるプログラムであり、製品の3次元加工データを活用することが望ましい。こうすることにより、製品設計段階の3次元加工データがCAM(コンピュータ支援加工)活用でき、効率的に加工プログラムを作成することができるからである。図9のステップST1では、製品の3次元加工データに基づいて、旋削ツールパスが生成される。ステップST2では、旋削ツールパスの検証が行われ、ステップST6においてNC(数値制御)データを出力する。
【0035】
ステップST2において旋削ツールパスの検証を行った後に、ステップST3ではファセット(旋削加工からミーリング加工への移行)が行われる。ステップST4では、ミーリングツールパス生成が行われ、ステップST4aでは、ミーリングツールパスの検証が行われ、ステップST5ではこれにより、NCデータが出力される。
ステップST7では、ステップST6におけるNCデータ出力とステップST5におけるNCデータが1つのデータにファイル化される。ステップST8では、NCデータが、1データファイルに基づいて出力されて、ステップST9においてNCデータ入力が図2の制御部105に供給される。
【0036】
本発明の実施形態においては、棒材をそのまま原料素材として、切削加工だけでブランクを形成しているので金型を必要としない。また材質が異なっても製造方法が同じで、工程の複合化が可能であることから、製造コストの低減、生産設備を最小限に抑えることができ、特に少量で小ロットの生産には製造効率の向上を図ることができる。また、金型による成形加工を想定したデザイン制約がなくなり、時計用外装部品の新造形を容易に形成することが可能になる。このブランク15は、その後研磨加工、表面処理加工が施され時計ケースが完成される。
【0037】
次に、本発明の別の実施の形態について説明する。
図10ないし図12は、それぞれ本発明の別の実施の形態を示している。
第2の実施形態
図10に示す第2の実施形態は、時計用外装部品の別の例であるガラス縁もしくは飾り縁などの縁部材を加工する場合の例を示している。ガラス縁や飾り縁に適したサイズの棒状の母材10Aが図10(A)のようにして用意される。図10(B)に示すように、棒状の母材10Aに対して細径部分90が形成されるとともに対象部位13が形成される。この場合に、棒状の母材10Aの端面部分、内径部分、外径部分に対して形成する。細径部分90を形成することにより、対象部位13の軸方向の厚さはたとえば1ないし5mm程度の厚さである。
【0038】
図10(C)に示すように、対象部位13に対して3次元加工するとともに、図10(D)に示すようにその後、文字200,201が形成される。この文字は、数字の「12」と「30」である。
次に、棒状の母材10Aの点線部分に相当する細径部分90と棒状の母材10Aは、細径部分90を突っ切りによる切削加工をすることで、対象部位13から分離する。これによって、対象部位13は図10(E)に示すようにブランク45になる。このブランク45は、図10(F)に示すように第2加工部分14を3次元加工することで完成することができる。
図10に示す第2の実施形態の時計用外装部品の製造方法は、図1の時計用外装部品の製造方法とほぼ同じ要領で切削加工のみでブランク45が作れる。図10(A)ないし図10(C)は第1加工ステップS1である。図10(D)および図10(E)は第2加工ステップS2である。図10(F)は第3加工ステップS3である。その後ブランク45は、研磨加工、表面処理加工が施されて、ガラス縁もしくは飾り縁を得る。
【0039】
第3の実施形態
図11は、時計用外装部品の第3の実施形態である裏蓋の加工例を示している。
図11に示す第3の実施形態では、裏蓋の加工に適したサイズの棒状の母材10Bを用意する。この棒状の母材10Bは、図10(B)に示すように細径部分90を形成する。対象部位13の軸方向の厚みは0.2ないし5mmである。棒状の母材10Bに対して端面部分、内径部分、外径部分を切削加工することにより、図11(B)の対象部位13が得られる。
【0040】
図11(C)において、対象部位13に対して3次元の切削加工を行う。
図11(D)に示すように、対象部位13の正面部分に対して文字300あるいは模様のようなものを加工する。そして点線で示す細径部分90に対して突っ切りによる切削加工を行うことにより、棒状の母材10Bと対象部位13は分離されて、図11(E)に示すブランク215が得られる。このブランク215に対して突っ切った側の部分に第2加工部分220を加工することにより完成したブランク215が得られる。その後ブランク215は、研磨加工、表面処理加工が施されて、裏蓋が完成される。
【0041】
第4の実施形態
図12に示す第4の実施形態は、時計用外装部品であるバンド駒を加工する例である。
棒状の母材10Cは、バンド駒を加工するのに適したサイズのものを用いる。棒状の母材10Cの端面部分、内径部分、外径部分に対して加工を施すことで、細径部分90と軸方向の厚みは1ないし5mm程度の対象部位13が得られる。図12(C)に示すように、対象部位13に対して3次元による切削加工を行う。図12(D)に示すように、点線で示す細径部分90に対して突っ切りによる切削加工を行うことにより、棒状の母材10Cと対象部位13は分離されて図12(E)に示すブランク315が得られる。
このブランク315の突っ切り側320に対して図12(F)に示すように第2加工部分14を加工することで、完成したブランク315が得られる。このブランク315は、その後研磨加工、表面処理加工が施されてバンド駒が完成される。
【0042】
本発明によれば、金属材料からなる棒材、たとえば丸棒、角棒など、をそのまま原料素材として用いて、該棒材に対して、切削加工を施すことにより、時計用外装部品を成形するようにしたことにより、金型を要する成形加工に頼らずに部品の完成形状を成形することができるため、金型代などの初期投資費用、長期間の金型維持管理費用などが不要になることから、製造コストの低減が可能になる。特に、生涯生産数量が少ない少量生産には効率的である。
本発明によれは、金型の製作が不要なことから、新モデルの製造期間(受注から納品)を短縮することができ、リピートモデルの製造期間と同じにすることが可能になる。
【0043】
本発明によれば、切削加工だけで部品を成形するようにしているので、金型の構造上不可能とされていた複雑な形状、デザインなどの制約がなくなり、従来製法では造れなかった、新造形を容易に成形することが可能になる。
本発明によれば、前記の軸構成と機能を有する機械(複合加工機)にて成形加工を行うことによって、棒材を原料素材として部品の完成形状までを一貫加工できることから、工程の複合化が可能となり、生産設備を最小限に減らすことが可能になる。また、加工時の危険性、騒音の低減、排煙の抑制等による作業環境の向上を図ることができる。
【0044】
尚、本発明は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明の時計用外装部品の製造方法は、前記いずれかの金属材料を母材として形成された時計用外装部品の製造方法である。前記金属材料からなる棒状の母材を原料素材として、棒状の母材が切削加工されて、時計用外装部品の完成形状を形成する。
本発明によれば、金属材料からなる棒状の母材、たとえば丸棒、角棒などに対して切削加工を実施するようにしたことで、金型を要する成形加工に頼らずに部品形状を成形することが可能になる。また、本発明では、従来生じたオレンジピール(梨地肌)、切断目、スケール(酸化被膜)、ピンホールなどの表面の肌荒れ状態が存在しない。このため本発明では、1次ブランク材の肌荒れを向上させるための表面処理工程を省略することが可能になる。
【0045】
本発明において、前記棒状の母材は、旋削加工、ミーリング加工、穴明加工、を施すことにより部品形状を成形することが好ましい。これにより、平面形状、3次元形状を備えた複雑な部品形状を容易に成形することが可能になる。この成形部品は、その後、研磨加工、表面処理加工を施して完成品とすることが望ましい。
本発明において、前記棒状の母材は、単一部品を成形するのに適合した平面サイズの断面形状を備えたものとすることが好ましい。こうすることが、材料の無駄を最小限に抑えられ、加工効率の観点からみて望ましい。
【0046】
前記棒状の母材はコストの面を除けば、部品の平面形状に成形されたもの、たとえば部品の平面形状に近似の引き抜き材などを用いることが好ましい。こうすることで、加工工程において平面形状の加工(2次元加工)を簡略化できる。
本発明では、前記棒状の母材は、たとえばJIS規格品を用いることが望ましい。こうすることで、棒材を安価で容易に入手することができる。この棒材の形状、サイズなどの種類が豊富である。
【0047】
本発明は、0.2〜30mmの厚さの時計用外装部品を加工する場合に特に有効である。たとえば、腕時計のケースは2〜30mmの厚さであることが好ましく、縁部材(ガラス縁、飾り縁など)としては1〜5mmの厚さであることが好ましい。バンド部品(駒部材など)としては1〜5mmの厚さであることが好ましく、裏蓋としては0.2〜5mmの厚さであることが好ましい。
本発明において、図2のバーフィーダ104とチャック125を用いて、加工領域の棒状の母材長が自動的に変えられることが望ましい。これにより、複数の時計用外装部品を製造する場合において、部品の生産効率の良い、連続加工が可能である。
【0048】
本発明において、原料素材に対して直接、切削加工だけで、部品の完成形状までを一貫加工することが望ましい。これにより、従来の金型を要する成形加工に比べて、作られた部品の表面加工硬化が少なく、硬度も均一されていることから研磨工程での負荷が軽減できる。鍛造等は場所によって金属密度、表面硬度が異なる。
また、本発明では、デザイン上の制約がなくなり、従来製法では造れない新造形が成形可能になる。たとえば、側面に凹部分を有する溝形状などである。さらに、プレス加工、鍛造加工、転造加工、鋳造加工、射出成形加工、圧粉成形加工などの作業を行わないため、作業環境の改善が図られる。
【0049】
本発明において、製造装置は、切削加工には、3次元加工が可能なたとえば同時5軸制御機能を有する。そして、この製造装置は、部品の表裏および側面加工が可能な外径、もしくは内径をクランプ可能な2チャック、前記棒材長を自動的に可変できる機能、さらに旋削加工およびミーリング加工、および穴明け加工などが可能な軸構成と機能を有していることが望ましい。この製造装置は、たとえば、ターニングセンタのような複合加工機である。これにより、時計用外装部品の完成形状が、効率的に1台の機械で成形することが可能になる。また、工程の複合化が可能であるとともに、生産設備を最小台数に抑えることができる。
【0050】
本発明において、上述の軸構成と機能を有した製造装置は、旋削機能を主体とした機械よりも、マシニング機能を主体とした機械の方が望ましい。具体的には、旋削主軸の回転数は50〜5000min−1、ミーリング主軸は35〜50000min−1の回転領域を装備していることが望ましい。こうすることが、加工効率(加工時間)の観点、製品の品位を高める上で望ましい。また、前記金属材料に適した加工条件範囲で、効率的な加工が可能である。
本発明において、旋削加工、ミーリング加工、穴明け加工における、部品の加工姿勢は、縦、横、傾斜いずれの方向からも加工できることが望ましい。こうすることで、加工方法の選択範囲が広くなり、(たとえば、切粉のはけを考慮した加工方法など)工具寿命、製品の品位を高める上で望ましい。
【0051】
本発明において、切削加工データは3次元の部品形状データを活用することが好ましい。こうすることが、製品設計時の3次元データをCAMデータとして活用することができ、加工プログラムを容易に作成できる。
本発明において、前記の製造方法によって成形された部品に対して、さらに好ましくは研磨加工、表面処理などの仕上げ加工を施すことによって、通常の時計用外装部品を完成させることができる。
【0052】
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。たとえば上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の時計用外装部品の製造方法の第1の実施形態を示す図。
【図2】 本発明の製造方法を実現する製造装置を示す図。
【図3】 第1加工ステップS1を示す図。
【図4】 第1加工ステップS1を示す図。
【図5】 第1加工ステップS1を示す図。
【図6】 第2加工ステップS2を示す図。
【図7】 第2加工ステップS2を示す図。
【図8】 第3加工ステップS3を示す図。
【図9】 NCデータの作成手順の例を示す図。
【図10】本発明の第2の実施の形態を示す図。
【図11】本発明の第3の実施の形態を示す図。
【図12】本発明の第4の実施の形態を示す図。
【符号の説明】
10・・・棒状の母材、11・・・第1加工部分、13・・・対象部位、14・・・第2加工部分、102・・・第1旋回テーブル、103・・・第2旋回テーブル、S1・・・第1加工ステップ、S2・・・第2加工ステップ、S3・・・第3加工ステップ

Claims (7)

  1. 金属材料からなる棒状の母材を加工して時計用外装部品を製造するための時計用外装部品の製造方法であって、
    前記母材を第1テーブルに設定して、前記第1テーブルの第1加工姿勢と、前記第1加工姿勢と垂直方向の加工姿勢である第2加工姿勢と、前記第1加工姿勢と前記第2加工姿勢との間において曲線軸に沿って加工可能な加工姿勢である第3加工姿勢とを使用して、機械加工により第1加工部分を切削するとともに、前記母材に対して半径方向に切削加工して前記母材に細径部分を形成することで対象部位を形成する第1加工ステップと、
    前記第1加工ステップにおいて切削加工された前記対象部位を第2テーブル側において保持して、前記細径部分を切削加工することで前記対象部位を前記母材から切削加工により分離する第2加工ステップと、
    前記母材から分離された前記対象部位に対して、前記第2テーブルの第1の加工姿勢と、前記第1の加工姿勢と垂直方向の加工姿勢である第2の加工姿勢と、前記第1の加工姿勢と前記第2の加工姿勢との間において曲線軸に沿って加工可能な加工姿勢である第3の加工姿勢とを使用して、さらに機械加工により切削することで前記対象部位に第2加工部分を形成する第3加工ステップと、
    を有することを特徴とする時計用外装部品の製造方法。
  2. 前記第1加工ステップでは、輪郭形状を切削するとともに前記母材に対して半径方向に切削加工して前記母材に対して細径部分を形成することで前記対象部位を形成することを特徴とする請求項1に記載の時計用外装部品の製造方法。
  3. 前記第1加工ステップでは、前記母材の外周部分は、前記第1テーブルの外径押さえチャックにより着脱自在に保持されることを特徴とする請求項2に記載の時計用外装部品の製造方法。
  4. 前記第2加工ステップでは、前記対象部位は前記第2テーブル側に対して内径押さえチャックないし外径押さえチャックにより着脱自在に保持されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の時計用外装部品の製造方法。
  5. 前記第3加工ステップでは、ブランクである前記対象部位に対して、さらに輪郭形状を切削により形成することを特徴とする請求項4に記載の時計用外装部品の製造方法。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかの製造方法によって製造された時計用外装部品。
  7. 請求項6に記載の時計用外装部品を搭載した時計。
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