JP3737170B2 - 洗濯物の重さを自動的に測定する洗濯機 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯物の重さを自動的に測定する手段を改良した特に家庭用洗濯機に関する。
【０００２】
本発明は、特に、洗濯機の前から洗濯物を入れるタイプの洗濯機に関し、簡単のために、以下では実際にこうした前から洗濯物を入れるタイプの洗濯機を例にとって説明しているが、これ以外のタイプの洗濯機、特に洗濯機の上から洗濯物を入れるタイプの洗濯機または斜めの軸のまわりを回転するドラムを有した洗濯機にも本発明を有利に適用しうることが理解されよう。
【０００３】
以下の説明では、洗濯量または洗濯物という用語は、単に洗濯物の全体としての質量を意味するものとして用いられており、洗濯物の性質または特徴を意味するものではない。従来技術において、洗濯量を自動的に識別するようにしてある手段を備えた洗濯機が周知である。
【０００４】
洗濯のためにドラムに入れられた洗濯物を洗濯機がその都度自動的な態様で認識しうることは、洗濯機の自己プログラミング機能という観点から前提条件とされており、これによって、洗濯過程で用いられる洗剤の量や注水量、洗浄段階およびすすぎ段階の回数と種類等の全てのパラメータが自動的に確定されて、洗濯機の動作が毎回最適化されると同時に、洗濯の度に最適なプログラムを選択する手間が省かれ、したがってユーザが往々にして犯しがちなプログラミングの間違いにより洗濯機が最適な条件で動作できなくなるという事態が防がれるようになる。
【０００５】
【従来の技術】
さまざまな特許明細書に、洗濯機に入れられた洗濯物の量を自動的に認識する機能を洗濯機に具備させる方法が示されている。こうした方法として、洗濯物がすでに水に浸されている状態で測定を行なうという方法もあり、このために、初期の測定値が、もはや取り返しのつかない不正確なものになってしまうことになる。また、たとえばゼネラルエレクトリック社名義の米国特許第５，１６１，３９３号のように、洗濯物がまだ乾燥している状態、すなわち水に浸される前に洗濯物を測定しなければならないとしている方法もある。
【０００６】
しかし、前記特許に開示の方法では、乾燥状態の洗濯物の測定は、洗濯物が入れられているドラムを２つの異なった所定回転速度で連続的に駆動しながら、前記２つの回転速度の内の第１の回転速度に達するために要する時間とトルクの測定と、回転速度を前記第１の速度から、モータのトルクを変えて第２の所定速度に増加させるために要する時間とトルクの測定とをすることによって行なわれる。その後、こうして検出された全てのパラメータと装置に事前記憶させてあるパラメータとを処理することにより、洗濯物以外の回転質量の慣性モーメントとモータの特性とにかかわりなく、洗濯物を認識することが可能になるのである。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
このような方法は一見効果的と思われる。しかし、洗濯機がかなり複雑な予備運転段階を踏まえることが必要になり、実際の洗濯物の識別に至るまでに必要なその後の処理も同様に極めて複雑なものになってしまう。
【０００８】
したがって、安価な構成部材を追加するとともに現在利用可能な技術を用いることによって、より単純かつ信頼性の高い方法で乾燥状態の洗濯物の重さを自動的に測定する機能を有した洗濯機にすることが望ましく、実際に本発明の主目的もまた、このような洗濯機を提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、洗濯槽（１）と、前記洗濯槽内に回転可能に配置されるとともに洗濯物を収容するようにしてあるドラム（２）と、予め選択可能な異なる速度で前記ドラムを回転的に駆動するようにしてある電動機（４）とからなる、特に家庭用の洗濯機において：
− 定摩擦係数と、速度とともに直線的に変化する摩擦係数と；
− 洗濯機の付属物の質量および洗濯物の質量の両方を含めた回転質量の全体としての慣性モーメントと；
− 洗濯機の付属物の回転質量のみの慣性モーメントと
を含む複数のパラメータの測定値または計算値または事前記憶値に基づいて洗濯物の重さを計算するようにしてある手段を備えることを特徴とした。
【００１０】
ここで好適には、定速回転する装置の前記摩擦抵抗が、前記ドラムを第１の所定速度（Ｖ_S ）で回転させた後に所定の時間間隔（Ｔ₁ ）にわたって前記速度を維持させることによって測定されることと、前記所定の時間間隔（Ｔ₁ ）において前記電動機（４）によって供給されるトルクが測定または計算されることとの特徴を備える。
【００１１】
更に好適には、前記所定の時間間隔の終了時点において、前記電動機（４）が付勢解除され、前記ドラムがさらに惰性回転し、前記速度低下期間において、事前に記憶されている複数の連続的瞬間に対応する複数のドラム回転速度（Ｖａｎｇ（ｋ））が測定されることを特徴とする。
【００１２】
また更に好適には、実際の運転サイクルが開始される前に、
− 前記ドラムと前記電動機と、前記電動機および前記ドラムとともに回転するその他全ての可動部材との慣性モーメントと；
− 定常運転条件下での前記回転速度（Ｖ_S ）と
を記憶するようにしてある手段が配設されることを特徴とする。
【００１３】
また前記いずれかの洗濯機において好適には、前記サイクルの開始時点および前記洗濯物の投入前に、洗濯機の固有回転質量の慣性モーメントを自動的に測定するとともに、その後、前記慣性モーメントを記憶する能力を有する洗濯機とする。
【００１４】
【発明の実施の形態】
本発明の内容は、添付図面を参照しながら以下に示す詳細な説明から、より明確に理解されよう。ただし、以下の例は、本発明を制限するものではない。
【００１５】
以下の説明において、「水」という用語は、洗液またはすすぎ水を意味するものとして同様に用いられることとする。当業者には容易に理解されるように、こうした用語を用いて表現されている内容を見れば、以下の説明の明確さと明瞭さとが、このような単純化によって害なわれることはないはずである。
【００１６】
本発明の好適な実施例を示す図１を参照しながら、本発明にしたがった解決と、これに対応する動作原理とを併せて説明する。
【００１７】
ここに示す洗濯機は、洗濯槽１と、前記洗濯槽内に回転可能に配置されるとともに洗濯物３を収容するようにしてあるドラム２と、前記ドラムに関連あるとともに前記ドラムを予め選択可能な可変回転速度で駆動するようにしてある電動機４とからなる。
【００１８】
図には示されていないが、回転質量の全体としての慣性に寄与する他の全ての構成部材についても考慮する必要がある。ドラム自体と駆動用電動機の回転子との他に、こうした構成部材には主として、動力伝達ベルトと関連のプーリ、またはこうした目的に用いられる何らかの同等手段が含まれるが、これ以外にも構成部材が追加される可能性は否定しない。
【００１９】
洗濯機は、変速電動機と、ドラムの瞬間回転速度に関連ある情報を供給するようにしてある機構（典型的には回転速度計であるが、こうした情報を供給可能な他の何らかの装置を用いてもよい）とを備えている。また、電動機の出力トルクと同等な情報または前記トルクに対応する情報を収集可能かつ供給可能な適切な装置をしかるべく配設することとする。このような装置は、一般に周知であり、例えばピーク電圧検出器および位相遅れ型電動機または電動機の電流と同等な電流を積算する能力を持った回路等々、さまざまな既存の方法の中から当業者が適切に選択することができる。
【００２０】
さらに、
− 安定速度と；
− 前記速度が安定状態に保たれる時間の長さと；
− 装置が自然に速度低下していく時の速度観測周期を画定する上限速度および下限速度と
のデータを記憶するとともに、速度安定段階において電動機が供給するトルク値と装置が自然に速度低下していく時の回転速度の推移を表すパラメータとを計算および記憶するようにしてある処理部（図示せず）が配設される。
【００２１】
次に、図２を参照しながら、本発明にしたがった洗濯機の動作を説明する。
【００２２】
− 第１段階において、電動機が付勢されて、洗濯物だけが予め入れられているドラム、すなわち注水が全く行なわれていない状態のドラムの回転速度をゼロ値（Ｐ₁ ）からＰ₂ 時の所定の値Ｖ_S まで増加させる。
【００２３】
− 前記速度に達すると、続く第２段階において、前記速度が維持されるように電動機が一定時間Ｔ₁ にわたって自動的に制御され、この段階において、電動機が前記速度を一定に維持するために必要なトルクが測定される。
【００２４】
定常状態条件下では、このようなトルクは、定速時、さまざまな摩擦および抵抗による総トルクと一致する抵抗トルクに等しく、複合回転体の慣性による制動作用は定義上ゼロであることが容易に理解されよう。
【００２５】
− 次の第３段階において、ドラム駆動用電動機が付勢解除されて、初期回転速度を維持しようとする慣性と、回転質量全体の動きを抑制し、以て速度を低下させる摩擦力との相反作用により、電動機が徐々に速度低下するようになる。
【００２６】
前記段階において、電動機の回転速度、したがってドラムの回転速度が、規則的な短い周期での異なる角速度Ｖａｎｇ（０）、Ｖａｎｇ（ｋ）、Ｖａｎｇ（ｋ＋１）・・・で複数回にわたって測定される。
【００２７】
こうして最後の２段階で得られたデータを用いて、以下の式にしたがって回転装置全体の駆動軸に対する摩擦力と慣性とが一義的に算定される。
【００２８】
１） トルク＝Ａ＋Ｂ・（角速度）
２） 角速度（ｋ＋１）＝Ｐ₁ ・角速度（ｋ）＋Ｐ₂
Ｐ₁ ＝ｅ^-B・T/J、Ｐ₂ ＝−Ａ・（ｅ^-BT/J −１）／Ｂ
ここで、Ｐ₁ およびＰ₂ は、最小二乗法によりそれまでの一連の速度値に基づいて計算される値であって、その数学的正当性は当業者には周知であり、本発明の主題とは無関係なため、ここでは説明を省くこととする。また、Ａ、ＢおよびＪはそれぞれ、定摩擦係数、速度とともに直線的に変化する摩擦係数および駆動軸が受ける全体としての慣性である。
【００２９】
前記２つの式は、考慮すべき２つの動作条件に含まれる力のモーメントのバランスを表している。
【００３０】
前記式をさらに展開すると、次の式が得られる。
【００３１】
Ｊ＝＋Ｔ・Ｃ／［｛Ｐ₂ ／（１−Ｐ₁ ）−Ｗ₁ ｝ｌｎ_e （Ｐ₁ ）］
ここで、Ｔは、段階２）において速度値が測定される秒単位の時間間隔であり、Ｗ₁ は、段階１）における維持速度である。
【００３２】
洗濯物が入れられていない時の洗濯機の回転部材の慣性Ｊ_(machine) が既知であるとすると、洗濯物の慣性Ｊ_(washload)は、全慣性との差から次のように求められる。
【００３３】
Ｊ_(washload)＝Ｊ−Ｊ_(machine)
回転ドラムの寸法および形状は、速度Ｗ₁ において洗濯物が形成する環状体の厚さとともに既知であるので、Ｊ_(washload)と洗濯物の重さＭ_loadとの関係は、たとえば次のように表される。
【００３４】
Ｊ_(washload)＝Ｍ_load（ｒ₁ ² ＋ｒ_２ ² ）
ｒ₁ ＝ｒ₂ −ＫＭ_load、Ｋ＝ｒ₂ ／１８
洗濯物が入れられていない時の洗濯機の慣性は、無負荷条件、すなわちドラム内に全く洗濯物が入れられていない条件下で前記手順を実行することによって自動的に測定される。こうして、洗濯物の重さの計算からあらゆる製造変量が排除されるように、各洗濯機の一種の自己較正を行なわせることができる。
【００３５】
前記構造は、当業者に自明かつ可能な全ての技術的改変および構成と両立可能であり、かつこうした技術的改変および構成に適用可能であることは言うまでもない。
【００３６】
従来技術において容易に利用可能な一般的な技術と知識とを利用することにより、ここに開示した内容をさらに技術的に改善および最適化しうることが、当業者には理解されよう。したがって、本発明について一般的な用語を用いて説明したが、本発明は前記例により制限されるとはみなされないものとする。
【００３７】
【発明の効果】
上述の様に、本発明によれば、複雑な処理を必要とせずより単純かつ信頼性の高い方法で乾燥状態の洗濯物の重さを自動的に測定する機能を有した洗濯機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の目的を達成する上で根本的に重要な、たとえば回転ドラムや駆動モータ、その他の付属部材等の数々の構成部材の組立順序を示す分解図である。
【図２】本発明にしたがった洗濯機の初期動作順序を示すグラフである。
【符号の説明】
１ 洗濯槽
２ ドラム
４ 電動機

Claims (3)

1. 洗濯槽と、前記洗濯槽内に回転可能に配置されるとともに洗濯物を収容するようにしてあるドラムと、予め選択可能な異なる速度で前記ドラムを回転的に駆動するようにしてある電動機とを備え、複数のパラメータに基づいて洗濯物の重さを計算するように構成された手段が設けられている、特に家庭用の洗濯機であって、
   前記パラメータにあっては、
   定摩擦係数と、速度とともに直線的に変化する摩擦係数との両方を測定し、
   洗濯機に属する質量と、洗濯物に属する質量の両方を含めた回転質量の全体としての慣性モーメントを計算し、
   あらかじめ洗濯機に記憶されている、洗濯機のみに属する回転質量の慣性モーメントを含み、洗濯機および洗濯物の両方に属している回転質量の前記定摩擦係数と前記直線的に変化する摩擦係数は、前記ドラムを第１の所定速度（Ｖ _Ｓ ）で回転させた後に、所定の期間にわたって前記回転速度を維持させることができる手段によって決定され、前記所定の期間において前記電動機によって供給されるトルクが測定または計算され、
   前記洗濯機は、
   前記所定の期間の終了時点において、前記電動機を付勢解除し、
   前記ドラムをさらに惰性回転させ、
   その速度が低下する期間において、あらかじめ記憶されている複数の連続的瞬間に対応するドラムの複数の回転速度（Ｖ ang （ｋ））を測定する
   ことができる手段を備えることを特徴とする、特に家庭用の洗濯機。
2. 前記ドラムに洗濯物を投入する前に、
   前記ドラム、前記電動機、前記電動機および前記ドラムとともに回転するその他全ての可動部材の慣性モーメントと、
   定常運転条件下での前記回転速度（Ｖ _Ｓ ）と
   を記憶するように構成された手段が設けられていることを特徴とする請求項１に記載の洗濯機。
3. 前記手段は、所定速度にて前記ドラムを回転させ、所定の期間において前記定常運転条件で前記ドラムの回転速度を維持し、そして電動機電源を切り、その後二つの所定速度間における時間間隔を測定することによって、前記慣性モーメントを計算し、前記計算は定摩擦係数と速度とともに直線的に変化する摩擦係数とを含むことを特徴とする請求項２に記載の洗濯機。

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