JP3736074B2 - クランクシャフト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の出力軸であるクランクシャフトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車載用内燃機関は、その出力軸であるクランクシャフトがコンロッドを介してピストンに連結され、同コンロッドによってピストンの往復移動をクランクシャフトの回転へと変換している。こうしたクランクシャフトの一例として、実開昭59−58212号公報に記載されたものが知られている。同公報に記載のクランクシャフトを図6に示す。
【0003】
同図に示されるクランクシャフト71は、内燃機関に回転可能に支持されるクランクジャーナル72と、同ジャーナル72の長手方向端部に固定されたクランクアーム73と、同ジャーナル72に対して平行に延びてクランクアーム73に連結されるクランクピン74とから構成されている。そのクランクピン74は、コンロッドを介してピストンに連結されるようになる。
【0004】
そして、ピストンが往復移動する際には、コンロッドによってクランクピン74が例えば図中矢印A方向に押され、クランクシャフト71がクランクジャーナル72の軸線を中心に回転する。このとき、クランクピン74がコンロッドに押されることによって、同ピン74を挟むクランクアーム73には互いに拡開する方向(図中矢印B方向)への力が働く。そのため、同公報に記載のクランクシャフトは、クランクジャーナル72の軸線方向におけるクランクアーム73の端面に補強肉75を突出形成することで、上記矢印B方向への力に対する補強を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようにクランクアーム73に補強肉75を形成することで、上記矢印B方向について同アーム73の剛性を向上させることができるようにはなる。しかし、クランクピン74がコンロッドによって押されたとき、クランクアーム73には上記矢印B方向だけでなく同アーム73を捩じる方向(図中矢印C方向)にも力が働くこととなる。そして、クランクアーム73に矢印C方向への力が働くと、クランクジャーナル72の軸線を中心とする回転方向についての同アーム73の側面において、クランクジャーナル72とクランクピン74との両軸線L1,L2を結ぶ方向に延びる図中の二点鎖線Tに沿って応力が集中する。その結果、上記応力がわずかながらクランクアーム73の弾性変形を誘起して振動騒音が生じるようになる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、クランクアームの捩じり応力に起因する振動騒音の発生を好適に抑制することのできるクランクシャフトを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、互いに平行となるクランクジャーナルとクランクピンとの長手方向端部同士をクランクアームによって連結したクランクシャフトにおいて、前記クランクアームのクランクジャーナル回転方向に沿った側面に、該クランクアームの前記クランクジャーナルとの連結面が前記クランクジャーナルの軸線に交わる点と同クランクアームの前記クランクピンとの連結面が前記クランクピンの軸線に交わる点とを結ぶ方向に延設された補強突部が設けられ、前記補強突部は、その幅方向について同突部の外面が円弧状に湾曲する曲面のみで形成されるよう肉厚が変化するものとした。
【0008】
同構成によれば、補強突部を設けることによって、クランクアームにおける捩じり方向の剛性が向上する。また、同アームに捩じり方向の力が働いたとき、クランクアームのクランクジャーナル回転方向に沿った側面において、クランクアームのクランクジャーナルとの連結面がクランクジャーナルの軸線に交わる点と同クランクアームのクランクピンとの連結面がクランクピンの軸線に交わる点とを結ぶ線に沿って応力集中が生じるのを抑制することができるようになる。従って、クランクアームの捩じり応力に起因する振動騒音の発生が好適に抑制される。
【0011】
また、補強突部の幅方向について同突部の外面が円弧状に湾曲する曲面のみで形成されるよう、その補強突部の肉厚を変化させたため、クランクアームに捩じり方向の力が働いたとき、補強突部の外面に生じる応力を分散させて同応力の偏りを防止することができるようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4に従って説明する。
図4に示すように、エンジン11の下部には出力軸であるクランクシャフト15が回転可能に支持されている。クランクシャフト15にはコンロッド16を介してピストン12が連結され、そのコンロッド16によってピストン12の往復移動がクランクシャフト15の回転へと変換される。また、ピストン12の上側には燃焼室17が設けられ、同燃焼室17には空気と燃料とからなる混合ガスが充填されるようになる。そして、燃焼室17内の混合ガスが点火されて燃焼すると、同ガスの燃焼エネルギーによりピストン12が往復移動してクランクシャフト15が回転する。
【0013】
ここで、上記クランクシャフト15の詳細構造について図1〜図3を参照して説明する。
図1に示すように、クランクシャフト15は、同一軸線L1上に所定間隔をおいて設けられた複数のクランクジャーナル21と、各ジャーナル21の長手方向端部にそれぞれ固定されたクランクアーム22と、各アーム22間に固定されて上記ジャーナル21に対し平行となるクランクピン23とから構成されている。このクランクシャフト15は、クランクジャーナル21がエンジン11(図4)に回転可能に支持されるとともに、クランクピン23にコンロッド16(図4)が回動可能な状態で連結される。そして、クランクシャフト15は、ピストン12(図4)の往復移動によってクランクピン23がコンロッド16により押されることで、クランクジャーナル21の軸線L1を中心に回転するようになる。
【0014】
このようなクランクシャフト15を矢印II−II方向から見た断面図を図2に示す。同図に示されるように、クランクジャーナル21とクランクピン23とは、それぞれの軸線L1,L2が平行になるとともに、クランクアーム22によって互いに連結されている。クランクアーム22における軸線L1を中心とする回転方向についての側部22a,22b、即ち図中上下両側の側部22a,22bは、クランクジャーナル21とクランクピン23との外周面をつなぐように延びている。これら側部22a,22bにはそれぞれ補強突部24a,24bが設けられている。
【0015】
補強突部24a,24bは、クランクアーム22の側部22a,22bに沿って、クランクジャーナル21とクランクピン23との両軸線L1,L2を結ぶ方向(図1に二点鎖線で示す方向)に延びている。更に、補強突部24a,24bは、その延設方向において外面25が両軸線L1,L2から離れる側へ膨らむよう円弧状に湾曲している。即ち、補強突部24a,24bは、外面25が上記のうに湾曲するよう同突部24a,24bの延設方向について肉厚が変化している。従って、補強突部24a,24b間の距離は、軸線L1と軸線L2との中間付近で最も大きくなり、それら軸線L1,L2側へ向かうほど小さくなる。
【0016】
このようなクランクアーム22の補強突部24a,24bを、矢印IIIa−IIIa方向、矢印IIIb−IIIb方向、及び矢印IIIc−IIIc方向から見た断面図をそれぞれ図3(a)〜(c)に示す。なお、補強突部24a,24bは、軸線L1,L2について線対称となっている。そのため、上記各図には補強突部24aのみを図示し、補強突部24bについては図示を省略する。これらの図に示されるように、補強突部24a(24b)は、その外面25がクランクジャーナル21及びクランクピン23から離れる方向に膨らむとともに、同突部24aの延設方向と直交する方向(幅方向)において滑らかな円弧状に湾曲している。即ち、補強突部24aは、外面25が上記のように湾曲するよう同突部24aの幅方向について肉厚が変化している。なお、補強突部24aの外面25は、その曲率半径が同突部24aの延設方向及び幅方向について一定ではなく適宜に異なった値となるよう形成されている。
【0017】
ここで、クランクアーム22の各寸法について説明する。
クランクアーム22において、図2の左端部及び右端部の曲率半径R1,R2、及び補強突部24a,24bの延設方向についての曲率半径R3は、それぞれ下記の式(1)〜(3)によって表される関係を有する。
【0018】
【数1】
R1>RJ+α …式(1)
R2>RP+β …式(2)
R3>(Y1+R1+R2)γ …式(3)
なお、上記式(1)〜(3)において、RJはクランクジャーナル21の半径、RPはクランクピン23の半径、α〜γは所定値を表す。本実施形態では、所定値αと所定値βとは等しい値となっており、所定値α〜γの一例としてα=3mm、β=3mm、γ=0.5という値が用いられる。
【0019】
一方、図3(a)〜(c)に示される補強突部24a,24bの幅方向についての外面25の曲率半径R4と、図3(b)で示されるように外面25の頂部が平らな場合における同外面25頂部の幅方向中央から湾曲部分までの距離Y2とは、下記の式(4)〜(6)によって表される関係を有する。
【0020】
【数2】
0≦Y2≦x …式(4)
R4≦y …式(5)
Y2+R4≦z …式(6)
なお、上記式(4)〜(6)において、x〜zは所定値を表す。本実施形態では、所定値x,y,zは順次大きい値となっており、所定値x〜zの一例としてx=10mm,y=15mm,z=20mmという値が用いられる。
【0021】
次に、上記のように構成されたクランクシャフト15の作用を説明する。
ピストン12(図4)の往復移動がコンロッド16(図4)を介してクランクシャフト15に伝達されるとき、そのコンロッド16によって同シャフト15のクランクピン23が径方向(図2中の矢印D方向)に押される。この状態にあっては、クランクアーム22に図2中の矢印E方向へ捩じろうとする力が働くことになる。こうしたねじり方向への力に基づく応力は、クランクアーム22の側部22a,22bにおいて、特にクランクジャーナル21及びクランクピン23の軸線L1,L2を結ぶ方向(図1の二点鎖線で示す方向)に沿って集中し易くなる。
【0022】
しかし、本実施形態では、クランクアーム22の側部22a,22bに沿って軸線L1,L2と交差する方向へ延びる補強突部24a,24bを設けたため、その補強突部24a,24bによってクランクアーム22における上記捩じり方向の剛性が向上する。また、クランクピン23がコンロッド16に押されることに基づきクランクアーム22に捩じり方向への力が働いたとき、クランクアーム22の側部22a,22bへの応力集中も抑制されるようになる。
【0023】
また一般に、クランクアーム22は、クランクジャーナル21とクランクピン23との中間に位置する部分の捩じり剛性が低下し易い。この点、本実施形態では、図2に示すように、補強突部24a,24bを軸線L1,L2から離れる方向へ膨らむように自身の延設方向について円弧状に湾曲させた。そのため、上記捩じり剛性が低下し易く補強が必要とされる部分のみ、補強突部24a,24bによるクランクアーム22の肉付けが行われる。従って、クランクアーム22の過大な重量増加を抑制しつつ、同アーム22の捩じり剛性を高めることができるようになる。
【0024】
また、補強突部24a,24bの外面25は、同突部24,24bの延設方向と直交する方向(幅方向)において、軸線L1,L2から離れる方向へ膨らむよう滑らかな円弧状に形成されている。そのため、クランクアーム22に上記捩じり方向の力が働いたとき、外面25に生じる応力を分散させて同応力の偏りを防止することができるようにもなる。更に、外面25の曲率半径は、補強突部24a,24bの延設方向及び幅方向に対して異なるようにしたため、その曲率半径の値を適宜に調整することで、上記応力の偏りを防止し得る最適な形状とすることもできる。
【0025】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
・クランクアーム22に捩じり方向(図2中の矢印E方向)へのが働くと、その力に基づき同アーム22の側部22a,22bにて応力集中が生じ易くなる。しかし、本実施形態では、クランクアーム22の側部22a,22bに軸線L1,L2と交差する方向に延びる補強突部24a,24bを設けたため、その補強突部24a,24bによって同アーム22における上記捩じり方向の剛性を向上させることができる。また、クランクアーム22に上記捩じり方向への力が働いたとき、上記補強突部24a,24bによって同アーム22の側部22a,22bでの応力集中を抑制することができる。従って、クランクアーム22の捩じり剛性低下及び応力集中に起因する振動騒音の発生を抑制することができる。
【0026】
・クランクアーム22は、クランクジャーナル21とクランクピン23との中間に位置する部分の捩じり剛性が低下し易いが、補強突部24a,24bを自身の延設方向について湾曲させることで、上記捩じり剛性が低下し易い部分についてのみ補強を行うことができるようになる。従って、クランクアーム22の過大な重量増加を抑制しつつ、同アーム22の捩じり剛性を高めることができる。
【0027】
・補強突部24a,24bの外面25は、同突部24,24bの延設方向と直交する方向(幅方向)について滑らかな円弧状となるよう形成されている。そのため、クランクアーム22に捩じり方向の力が働いたとき、外面25に生じる応力を分散させて同応力の偏りを防止することができる。
【0028】
・また、本実施形態では、補強突部24a,24bにおける外面25の曲率半径を、同突部24a,24bの延設方向及び幅方向について異なる値をとるようにした。そのため、上記外面25の曲率半径を適宜に調整することで、上記応力の偏りを防止し得る最適な形状とすることができる。
【0029】
なお、本実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・本実施形態では、補強突部24a,24bの外面25を円弧状に形成し、その外面25の曲率半径が補強突部24a,24bの延設方向及び幅方向について異なる値をとるようにしたが、本発明はこれに限定されない。即ち、図5に示すように、外面25の曲率半径を補強突部24a(24b)の延設方向及び幅方向について一定としてもよい。
【0032】
・補強突部24a,24bを必ずしもクランクアーム22の側部22a,22bの全長分形成する必要はなく、その側部22a、22bにおける長さ方向の一部のみに補強突部24a,24bが形成されていてもよい。
【0033】
・本実施形態における所定値α,β,γ,x,y,zは、上記実施形態中の値に限定されるものではなく、クランクシャフト15の大きさ等に応じて適宜に変更してもよい。
【0034】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、補強突部を設けることによって、クランクアームにおける捩じり方向の剛性が向上する。また、同アームに捩じり方向の力が働いたとき、クランクアームのクランクジャーナル回転方向に沿った側面において、クランクアームのクランクジャーナルとの連結面がクランクジャーナルの軸線に交わる点と同クランクアームのクランクピンとの連結面がクランクピンの軸線に交わる点とを結ぶ線に沿って応力集中が生じるのを抑制することができるようになる。従って、クランクアームの捩じり応力に起因する振動騒音の発生を好適に抑制することができる。
【0037】
また、補強突部の幅方向について同突部の外面が円弧状に湾曲する曲面のみで形成されるよう、その補強突部の肉厚を変化させたため、クランクアームに捩じり方向の力が働いたとき、補強突部の外面に生じる応力を分散させて同応力の偏りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のクランクシャフトを示す側面図。
【図2】図1のクランクシャフトを矢印II−II方向から見た断面図。
【図3】図2のクランクアームを矢印IIIa−IIIa方向、矢印IIIb−IIIb方向、及び矢印IIIc−IIIc方向から断面図。
【図4】本実施形態のクランクシャフトが設けられたエンジン全体を示す斜視図。
【図5】クランクアームに設けられた補強突部の他の例を示す概略図。
【図6】従来のクランクシャフトの一部を示す斜視図。
【符号の説明】
15…クランクシャフト、21…クランクシャーナル、22…クランクアーム、22a,22b…側部、23…クランクピン、24a,24b…補強突部、25…外面。
Claims (1)
- 互いに平行となるクランクジャーナルとクランクピンとの長手方向端部同士をクランクアームによって連結したクランクシャフトにおいて、
前記クランクアームのクランクジャーナル回転方向に沿った側面に、該クランクアームの前記クランクジャーナルとの連結面が前記クランクジャーナルの軸線に交わる点と同クランクアームの前記クランクピンとの連結面が前記クランクピンの軸線に交わる点とを結ぶ方向に延設された補強突部が設けられ、
前記補強突部は、その幅方向について同突部の外面が円弧状に湾曲する曲面のみで形成されるよう肉厚が変化するものである
ことを特徴とするクランクシャフト。
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