JP3735981B2 - マシニングセンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動コラムの上方に支持ベースを固定的に配設し、その支持ベースに複数本の工具を旋回させて待機位置に割出す工具マガジンを設け、待機位置に割出された工具を移動コラムに設けた主軸上の工具と交換するマシニングセンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のマシニングセンタとして、従来実開平1−149232号公報や実公平7−30260号公報に開示された技術が知られている。前者のマシニングセンタにおいては、移動コラムの上方に前後、左右の4本の支柱によって支持した固定フレームを配設し、その固定フレーム(支持ベース)上に、工具を水平回動させるようにした工具マガジンが設置され、その工具マガジンによって割出された工具を下方の受渡位置に移送し、その受渡位置の工具と移動コラムに設けた主軸上の工具とを移動コラムに設けた交換アームによって交換するようになっている。後者のマシニングセンタでは、移動コラムの上方に前後、左右の4本の支柱によって支持した固定フレーム(支持ベース)を配設し、その固定フレーム上に、工具を垂直回動させるようにした工具マガジンが設置され、その工具マガジンによって割出された工具を下方の受渡位置に移送し、その受渡位置の工具と移動コラムに設けた主軸上の工具とを固定フレームに設けた交換アームによって交換するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のマシニングセンタによると、工具マガジンを支持する固定フレームを前後、左右の4本の支柱によって支持しているので、前側の左右の支柱が加工領域の側方又は前方に位置し、その加工領域に対する作業例えば加工物の交換作業や点検作業の邪魔になり、その作業領域が拘束される問題があった。
また、従来のマシニングセンタにおいては、工具マガジンの割出位置の工具を水平状態のまま下方へ移動させて工具交換の受渡位置に移動させているので、工具マガジンの割出位置の下方が加工作業空間に大きく開口された状態となり、その割出位置に切粉等が入ってトラブルを生じやすい問題があり、その問題を解消するためには開閉扉を設けたり清掃装置を付加する必要があり、コスト高になる問題があった。
なお、従来のマシニングセンタにおける前側の支柱を単に省くことも考えられるが、工具マガジンの工具の割出位置を工具交換のための受渡位置の上方に位置させているので、工具マガジンの設置位置が後側の支柱から大きく前方へ偏位した位置になり、工具マガジンを支えることができなくなる問題があったり、工具マガジンを支えるために後側の支柱の本数を増やすと共に固定フレームを大型にする必要があってコスト高となったり工具交換作動が不安定になる問題がある。
【0004】
そこで、本発明の課題は、工具マガジンを配設するための支持ベースを後側の支柱により片持状態で安定的に支持し、加工領域の側方又は前方から支持フレームの支柱を無くして加工領域に対する作業性を格段に良くし、また支持ベースを後側の支柱により片持状態で支持するものでも工具マガジンの支持を安定させて工具交換作動を確実にできると共にコストを低減できるマシニングセンタを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題の解決のため、本発明は、移動コラムの上方に支持ベースを固定的に配設し、その支持ベースに複数本の工具を水平姿勢で旋回させて前向きの待機位置に割出す工具マガジンを設け、待機位置に割出された水平な前向きの工具を移動コラムに設けた主軸上の工具と交換するマシニングセンタにおいて、支持ベースの後端部をベッドに立設した支柱により片持状態に支持し、その支持ベースに工具マガジンを設けると共に、その工具マガジンによって待機位置に割出された水平な前向きの工具を工具マガジンの前方へ水平に直線移動させて受渡位置に移送する移送機構を設け、工具マガジンの前方の受渡位置に移送された水平な前向きの工具を主軸上の工具と交換するようにしたものである。
【0006】
また、本発明は、支持ベースを移動コラムの移動領域の後方でベッドに立設した支柱により片持状態に支持するようにしたものである。
また、本発明は、工具マガジンの割出位置と受渡位置との途中の受渡位置付近に空間を前後に仕切る遮蔽板を設け、その遮蔽板に工具挿通窓を開口させ、移送機構により工具を前方に向けて水平に移送して工具挿通窓から工具を前方に臨ませるようにしたものである。
また、本発明は、支持ベースの後端部を左右一対の支柱のみにより片持状態に支持するようにしたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1及び図2に従ってマシニングセンタの全体的な構成について説明する。このマシニングセンタにおいては、ベッド1上に移動コラム2が前後左右に移動可能に載置され、コラム2の上方に固定的に配設されている支持ベース8に工具交換装置3が設置されている。移動コラム2は主軸ヘッド4を昇降可能に備え、主軸ヘッド4に主軸5がモータ6により水平軸線周りで回転可能に設けられている。移動コラム2の移動領域より後側でベッド2には左右一対の2本の支柱7が立設され、支柱7の上端に工具交換装置3の支持ベース8の後端部が水平に固定され、支持ベース8が支柱7によって片持状態で支持されている。支持ベース8と支柱7の連結部は補強片7Aによって補強されているが、この補強片7Aも移動コラム2と干渉しないように移動コラム2の移動領域外に位置されている。支持ベース8が移動コラム2より後方の支柱7によって片持状態で支持されているので、図2に示すように移動コラム8より前方の加工領域の側方や前方に支柱がなく、加工領域の後側を除く周囲が大きく開放されている。工具交換装置3は工具マガジン9、移送機構10、及び交換アーム11を備え、装置全体が支持ベース8によりコラム2の移動空間の上方で移動コラム2から切り離された状態で支持されている。また、工具交換装置3は、マシニングセンタの全高を低くするために、交換アーム11の下端とコラム2の上端との間隔が例えば10mmとなるように、コラム2に対し極めて近接する位置に設置されている。
【0008】
次に、図3〜図6に従い工具交換装置3の構成並びに作用について説明する。図3に示すように、支持ベース8に固定された支持台13には垂直軸14が立設され、その上端に締着部材15を介し工具マガジン9のマガジン本体12が固定されている。マガジン本体12には環状のレール16が下方に突設され、このレール16に複数のポット17が吊持され、各ポット17に工具18が水平に保持されている。ポット17には、工具18のシャンク部19を収容する孔20と、レール16の周面に対向する内外一対の吊下腕21と、複数の転動体22とが設けられている。レール16は内周面、外周面及び下面に転動体22が嵌合する水平な案内溝23を備え、ポット17を転動体22を介し水平姿勢に保持して水平な環状経路に沿って案内する案内部材を構成している。
【0009】
図5及び図6に示すように、この実施形態のポット17には転動体22が5個設けられている。ポット17の外側の吊下腕21に支持された2個の転動体22Aはレール16の外周側の案内溝23Aに嵌合し、内側の吊下腕21に支持された1個の転動体22Bは内周側の案内溝23Bに嵌合し、これら3個の転動体22A,22Bがポット17を上下方向の定位置に保持し、かつ両持ち状態で水平姿勢に確実に保持している。また,各吊下腕21の間でポット17の上面に支持された2個の転動体22Cはレール16の下面の案内溝23Cに嵌合し、ポット17をマガジン径方向の定位置に保持している。従って、工具18を水平姿勢で水平面内で割り出す際の偏荷重体策を万全にでき、摺動案内方式と比較しはるかに小さな摩擦力のもとポット17を転動案内して、工具18を円滑に割り出すことができる。
【0010】
図3及び図5に示すように、ポット17の駆動手段は、マガジン本体12の上部に設置されたモータ25と、前記環状経路と同一の軸線周りで回動する割出円板26と、モータ25の回転を割出円板26に伝える歯車機構27とから構成されている。割出円板26は垂直軸14の下端にベアリング28を介して回動可能に支持され、その外周にはポット17の下面に突設した係合ピン29が半径方向に係脱可能な切欠部30が設けられている。そして、工具マガジン9は複数本の工具18をポット17により水平姿勢に保持し、ポット17を割出円板26により転動体22を介し円滑に水平旋回させて、待機位置Aに順次割り出すようになっている。待機位置Aは工具マガジン9において、コラム2が工具交換位置に移動したとき(図1参照)の主軸5の真上に設定され、レール16には待機位置Aと対応する箇所にポット17の取出口31が切欠形成されている。なお、割出円板26による駆動方式は、チェーン方式と比較して駆動力が小さくて済み、しかもポット17が転動案内されるため、割出駆動源として小型のモータ25を使用でき、工具交換装置3の薄型化を図ることができる。
【0011】
待機位置Aの上方には移送機構10の支持フレーム33が工具マガジン9の前方へ突出するように配置され、基端の足部34にてボルト35で工具マガジン9の上面に固定されている。支持フレーム33の前後の垂直板32間には2本のロッド37が水平かつ平行状に取り付けられ、ロッド37にはポット17を移送するシフタ38が取出口31とそれより軸線方向前方の受渡位置Bとの間で直線移動可能に支持されている。シフタ38はレール16と略同一の断面形状で形成され、その前面、背面及び下面には保持溝39が刻設されている。シフタ38が取出口31に配置されたときには、各部の保持溝39がレール16の対応部位の各案内溝23と整合され(図4参照)、転動体22が案内溝23から保持溝39に移載され、ポット17が転動体22を介しシフタ38に水平に保持される。
【0012】
支持フレーム33の上板33aにはロッドレスシリンダ36が水平に取り付けられている。シフタ38の上面には連結片40が突設され、この連結片40はピン41を介してロッドレスシリンダ36のスライダ42に連結されている。そして、移送機構10は、ロッドレスシリンダ36によりシフタ38を前後に駆動し、シフタ38の前進時に、待機位置Aのポット17を工具マガジン9の外側へ水平に取り出して、受渡位置Bに移送し、シフタ38の後退時には、ポット17を受渡位置Bから待機位置Aに移送するように構成されている。なお、支持フレーム33の基端側の垂直板32には、シフタ38を取出口31の定位置に停止させるストッパ43が設けられている。
【0013】
図4に示すように、シフタ38の背面には係止部材45がブラケット46を介し軸47により回動可能に取り付けられ、その下端には一対の係止片48が突設されている。シフタ38によるポット17の移送中には、係止部材45がねじりバネ49により作用位置(図3の鎖線位置)に配置され、係止片48がポット17の内側の吊下腕21に幅方向両側から係止され、ポット17がシフタ38の定位置に保持され、転動体22の保持溝39からの脱落が防止される。また、ストッパ43の下側で垂直板32には解除ボルト50が前方へ突設され、シフタ38が取出口31に復帰したときに、解除ボルト50が係止部材45をねじりバネ49に抗して非作用位置(図3の鎖線位置)に回動し、係止片48を吊下腕21から解除して、待機位置Aにおいてポット17をマガジン9の割出方向に移動できるようになっている。この場合、係止部材45はシフタ38の移動を利用してねじりバネ49及びボルト50によって係脱されるので、別途電動アクチュエータ等の高価な駆動手段が不要となる。
【0014】
一方、ポット17の外側の吊下腕21には位置決めピン52が突設され、支持フレーム33の先端側の垂直板32には位置決めピン52が挿入可能なブッシュ53が取着され、支持ベース8の前端部上面にはポット17の係合ピン29が嵌合可能な位置決めブロック54が固着されている。そして、これらの部材52〜54によりポット17をシフタ38の移動に伴って自動的に受渡位置Bに位置決めする手段が構成されている。図1に示すように、交換アーム11は支持ベース8の下側に固定された支持体56に水平軸線の周りで旋回可能でかつ軸方向移動可能に支持され、周知の旋回及び抜差動作により受渡位置Bの工具18を主軸5上の工具と交換できるようになっている。55は交換アーム11の旋回用モータである。
【0015】
工具マガジン9の待機位置Aと受渡位置Bとの途中の受渡位置B付近には、空間を前後に仕切る遮蔽板60が支持ベース8や支持フレーム33に固定的に取着されている。遮蔽板60は工具マガジン9や移送機構10の設置空間を加工領域の上方空間から遮蔽し、それらが前方から見えないようにして外観を良くすると共に、それらに切粉等が入り込まないように覆い隠している。遮蔽板60には、移送機構10による工具18の移動軌跡部分に工具挿通窓62が開口されている。工具挿通窓62は遮蔽板60に設けた丸孔や多角形孔等の挿通孔によって構成され、その大きさは工具18を前方に向けて前後方向へ挿通できる範囲内で可能な限り小さく形成され、その工具挿通窓62への切粉の侵入を防止すると共に外観の悪化を防止している。この工具挿通窓62には複数のゴム片等を押し開き自在に垂設して工具挿通窓62を塞ぐようにしても良い。工具挿通窓62は、受渡位置Bに位置された工具18のアーム把持部の直ぐ後方に位置され、遮蔽板60を交換アーム11と干渉しない範囲で可能な限り前方に位置させ、前方に移動されたポット17を覆い隠すと共にそのポット17の孔20に切粉等が侵入しないようにしてある。
【0016】
なお、上記実施形態では、ポットを割出円板により水平旋回させるようにした工具マガジンを示しているが、ポットを割出円板により垂直旋回させるようにした工具マガジンに変更しても良い。また、工具マガジンは、割出回転する回動体に工具を保持させるようにしたものでも良く、その場合、割出位置の工具を抜き取って前方へ移動させるようにする。また、工具マガジンを工具割出位置が工具受渡位置よりも後方に位置するように配設した場合、工具割出位置の工具が前方を向いていないときは刃先が前方に向くように方向変換して工具を受渡位置に前方移動させるようにする。また、支柱は後側に左右一対設けることが好ましいが、後側に3本以上設けても良いし、幅広い板状の支柱を1本設けるようにしても良い。
また、本願発明にあっては、以下に例示するように各部の構成を変更して実施するようにしても技術的範囲を逸脱するものではない。
(1) 図5において、レール16の内周側の転動体22Bを2個に増やしたり、外周側の転動体22Aを1個に減らしたりするなど、転動体22の個数を適宜変更すること。
(2) シフタ38をロッド付のエアシリンダやモータで駆動すること。
(3) 交換アームをコラムの頂部に設けること。
【0017】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明によれば、工具マガジンを支持する支持ベースの後端部をベッドに立設した支柱により片持状態に支持し、加工領域の側方又は前方から支持ベースを支持するための支柱を無くしたので、加工領域に対する作業をするときに支柱に邪魔されることなく側方又は前方の任意の方向から容易に作業でき、作業性を格段に良くして作業効率を良くできる。また、工具マガジンで待機位置に割出した工具を工具マガジンの前方へ水平に直線移動させて受渡位置に移動させているので、工具マガジンを支持ベースの後端部近くに配設することができ、その結果工具マガジンの重量により支持ベースに作用するモーメントを小さくできて工具マガジンを安定的に支持でき、支持ベースを片持状態で支持するものでも、工具交換作動を確実にできると共に支持構造を簡易にできて製造コストを低くできる。
【0018】
また、請求項2の発明によれば、支持ベースを移動コラムの移動領域の後方でベッドに立設した支柱により片持状態に支持しているので、移動コラムを支柱に邪魔されることなく左右に移動でき、支持ベースを片持状態で支持するものでも、移動コラムの左右移動領域を大きくすることができる。
また、請求項3の発明によれば、工具の受渡位置付近に空間を前後に仕切る遮蔽板を設け、その遮蔽板に開口した工具挿通窓から移送機構により前方に向けて水平に移送した工具を臨ませるようにしたので、工具を受渡位置に移動ための工具具挿通窓を小さくでき、工具の移送機構や工具マガジンに切粉等が入るのを簡易な構成により防止でき、しかも工具マガジンの前方を遮蔽板で覆うことができて外観を良くできると共に安全にできる。
また、請求項4の発明によれば、支持ベースの後端部を左右一対の支柱のみにより片持状態に支持したので、支持ベースの支持構造を簡易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すマシニングセンタの正面図である。
【図2】同マシニングセンタの右側面図である。
【図3】同マシニングセンタの工具交換装置を示す図1のX−X線断面図である。
【図4】図3のY−Y線断面図である。
【図5】図3の工具交換装置においてポットの配列形態を示す平面図である。
【図6】転動体の機能を説明する図1の要部拡大図である。
【符号の説明】
1・・ベット、2・・コラム、3・・工具交換装置、4・・主軸ヘッド、5・・主軸、7・・支柱、8・・支持ベース、9・・工具マガジン、10・・移送機構、11・・交換アーム、12・・マガジン本体、16・・レール、17・・ポット、18・・工具、22・・転動体、23・・案内溝、26・・割出円板、29・・係合ピン、30・・切欠部、31・・取出口、36・・ロッドレスシリンダ、37・・ロッド、38・・シフタ、39・・保持溝、45・・係止部材、50・・解除ボルト、52・・位置決めピン、53・・ブッジュ、54・・位置決めブロック、60・・遮蔽板、62・・工具挿通窓、A・・待機位置、B・・受渡位置。
Claims (4)
- 移動コラムの上方に支持ベースを固定的に配設し、 その支持ベースに複数本の工具を水平姿勢で旋回させて前向きの待機位置に割出す工具マガジンを設け、待機位置に割出された水平な前向きの工具を移動コラムに設けた主軸上の工具と交換するようにしたマシニングセンタにおいて、支持ベースの後端部をベッドに立設した支柱により片持状態に支持し、その支持ベースに工具マガジンを設けると共に、その工具マガジンによって待機位置に割出された水平な前向きの工具を工具マガジンの前方へ水平に直線移動させて受渡位置に移送する移送機構を設け、工具マガジンの前方の受渡位置に移送された水平な前向きの工具を主軸上の工具と交換するようにして成るマシニングセンタ。
- 支持ベースを移動コラムの移動領域の後方でベッドに立設した支柱により片持状態に支持して成ることを特徴とする請求項1記載のマシニングセンタ。
- 工具マガジンの割出位置と受渡位置との途中の受渡位置付近に空間を前後に仕切る遮蔽板を設け、その遮蔽板に工具挿通窓を開口させ、移送機構により工具を前方に向けて水平に移送して工具挿通窓から工具を前方に臨ませることを特徴とする請求項1または2記載のマシニングセンタ。
- 支持ベースの後端部を左右一対の支柱のみにより片持状態に支持して成ることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のマシニングセンタ。
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