JP3735218B2 - 放射性ヨウ素を含む廃棄物の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射性廃棄物の処理方法に関し、特に原子力発電所、核燃料再処理設備等の原子力関連設備から排出される放射性ヨウ素含有廃棄物を処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
核分裂により放射性ヨウ素が発生する。従って、使用済核燃料の再処理工場や原子力発電所等で発生する廃棄物には、放射性ヨウ素が含まれる。その放射性ヨウ素の内のヨウ素129は発生量も多く、半減期も超長期である。この放射性ヨウ素は使用済燃料の被覆管の中に閉じ込められているから、一般には核燃料再処理工場のオフガス中及び溶液中に存在する。オフガス中の放射性ヨウ素の代表的除去方法は、銀添着ゼオライトによる吸着である。この吸着剤に固定された放射性ヨウ素は、短、中期間の貯蔵には適するが、半減期が長いので地中処分等を行う必要があり、このような超長期貯蔵における安定性に欠けるきらいがある。
前述の長期貯蔵のための固定化技術としては、セメント固化、低融点ガラス固化、プラスチック固化、アスファルト固化、水熱固化等が提案され、検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述の固化技術の内、セメント固化、プラスチック固化及びアスファルト固化は、吸着剤をそのまま低温度封入できるため、処理プロセスが簡単で二次廃棄物の発生が少ないという利点がある。しかしながら、セメント、プラスチック、アスファルトは、一般に数十年から数百年で材質が劣化し、且つヨウ素が不均一に封入されているため、材質劣化後にヨウ素が外側に浸出する虞れがある。これに対し、ガラス材は緻密な材料であり、又ヨウ素を固溶すればガラスの溶解分程度にヨウ素浸出を抑制できると期待されるため、長期保存に向いている。しかしながら、低融点ガラス固化は、吸着剤に固定されたヨウ素を加熱処理などで追い出して分離し、それを固化するため、プロセスが複雑になると共に二次廃棄物の発生が増加するという問題がある。更に、ガラス化法でもガラス封入法は、ガラスが物理的に粉砕された場合に内容物が表面に出てくる可能性がある。又、ガラス固溶法は、全ての成分を固溶させるため、廃棄物とガラス化材よりなる原料をガラス領域に組成を調整することが難しい。
従って、本発明の課題は、かなりの長期にわたって放射性ヨウ素を安定的に貯蔵できる形に固定化でき、且つ処理手順がシンプルで容易な放射性ヨウ素含有廃棄物の処理方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため、本発明の方法によれば、放射性ヨウ素を含有する廃棄物、例えば、放射性ヨウ素を吸着させたゼオライト等、にガラス化剤を添加して混合体とし、該混合体を加熱して放射性ヨウ素を均質なガラス固化体とすると共に非固溶の残部廃棄物を前記ガラス固化体中に閉じ込めることにより処理する。この処理方法の流れを図1に示す。放射性ヨウ素の代表的なヨウ素129は揮発性であるので、ゼオライトなどの吸着剤に吸着されている。このヨウ素吸着剤に図1に示すようにガラス化剤を添加し、これを加熱してヨウ素を固溶する。しかる後これを冷却すれば安定した固化体が得られる。この固化体の中には前述のように固溶されない廃棄物が封入されている。このような処理方法に用いられるガラス化剤は、ヨウ化銀と酸化銀の混合物と、三酸化二アンチモン、三酸化タングステン及び三酸化モリブデンの3化合物のうちの少なくとも1つとを同時に含む物質が好適である。又、前記ガラス化剤は、ヨウ化銅と酸化第一銅の混合物と、五酸化二燐、五酸化二バナジウム、三酸化モリブデン及び三酸化タングステンの4化合物の内の少なくとも1つとを同時に含む物質として形成しても良い。更に又、前記ガラス化剤がヨウ化物と1B族酸化物とその他酸化物の混合物であり、該ヨウ化物はヨウ化銀及びヨウ化銅の少なくとも一つを含み、該1B族酸化物は酸化銀及び酸化第一銅の少なくとも一つを含み、該その他酸化物は、三酸化タングステン、三酸化モリブデン、五酸化二燐、及び五酸化二バナジウムの少なくとも一つを含むものとして形成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
前述の発明の作用、効果を検証すべく次のように実験を行った。
ヨウ素を吸着した模擬体の準備
放射性ヨウ素を実験に使用するのは種々の問題があるので、化学的な性質が同じの通常のヨウ素を用いて次のように模擬体を作成した。即ち、ガラスフラスコ中に4N硝酸溶液を添加し、加熱しながら1.1%ヨウ化カリウム溶液を滴下し、更に窒素ガスを吹き込むことで、約300ppmのヨウ素ガスを連続的に発生させた。銀添着ゼオライトを吸着剤とした吸着コラムにヨウ素成分が破過するまで前記ヨウ素ガスを流し、この銀添着ゼオライトを放射性ヨウ素含有廃棄物の模擬体とした。
【0006】
処理実験
前述の模擬体を使用して、図1に示す手順に倣って処理実験を行った。即ち、その模擬体に、重量で10倍に当たるガラス化材を添加し、15分加熱した。ガラス化材としては、後述の表1に示す組成のものを使用した。実験は合計15回行い、その都度ガラス化剤の組成及び成分比を変更した。加熱温度は、ガラス化剤に銅を含まない場合は400℃とし、銅を含む場合は600℃とした。融液は十分に撹拌した後、ステンレス容器に注入し、冷却固化させた。
【表1】
Figure 0003735218
なお、表1において、実験1〜4、実験5〜12、実験13〜15のガラス化剤の組成は、それぞれ請求項2、請求項3、請求項4に対応している。
【0007】
前述のような実験により得られた物体のガラス化は、粉末X線回折によって確認した。五酸化二燐を添加しない場合は、銀添着ゼオライトのシリカ骨格は結晶として封入され、その他の成分はアモルファス状態にあり、ガラス化されていることが確認された。即ち、図2及び図3は、前記実験結果の元素の分布を示す電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)による分析結果を示すものであるが、図2はヨウ素の固溶分散状態を示し、図3は担体ゼオライトシリカの封入状態を示している。図2及び図3に明らかなように、添着されたヨウ素はガラス中に均一に分散し、ゼオライトのシリカ成分は分散せず、点在し、ガラス中に封入、即ち閉じ込められていることが確認された。
【0008】
又、前記実験により得られたガラス体を表面積10cmの試験体に切断加工し、70℃、不活性ガス雰囲気下の温水中でヨウ素浸出率を測定した。測定は、ICP−MS(誘導結合高周波プラズマ−質量分析計)を用いて1週間後のヨウ素濃度を計測して行った。これによるヨウ素の浸出率は、全て6×10 −5 /cm/日以下であった。
【0009】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、揮発性である放射性ヨウ素を吸着剤に固定したまま、処理が行えるので処理のプロセスが簡単であり、二次廃棄物の発生を抑制することができる。又、放射性ヨウ素はガラス体の中に固溶された状態で固定するので、長期にわたり安定して貯蔵することができる。更に又、ガラス化剤として、銀系の材料の代替として,銅系の材料を用いることにより、材料コストを低減でき、又、ガラス化剤中には、固定するヨウ素に比べて多量のヨウ素が存在するため、生成したガラス固化体中の放射性ヨウ素の存在比は低くなり、全ヨウ素の浸出率に対し、放射性ヨウ素の浸出率を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の手順を示す流れ図である。
【図2】本発明の実験例による固化体の成分分布を示すEPMAの出力図である。
【図3】本発明の実施例による固化体の成分分布を示すEPMAの出力図である。

Claims (3)

  1. 放射性ヨウ素を含有する廃棄物にガラス化剤を添加して混合体とし、該混合体を加熱して該放射性ヨウ素を該ガラス化剤に固溶させ、均質なガラス固化体とすると共に非固溶の残部廃棄物を前記ガラス固化体中に閉じ込める放射性ヨウ素を含む廃棄物の処理方法において、
    前記ガラス化剤が、ヨウ化銀と酸化銀の混合物と、三酸化二アンチモン、三酸化タングステン及び三酸化モリブデンの3化合物の内の少なくとも1つとを同時に含む物質であることを特徴とする放射性ヨウ素を含む廃棄物の処理方法。
  2. 放射性ヨウ素を含有する廃棄物にガラス化剤を添加して混合体とし、該混合体を加熱して該放射性ヨウ素を該ガラス化剤に固溶させ、均質なガラス固化体とすると共に非固溶の残部廃棄物を前記ガラス固化体中に閉じ込める放射性ヨウ素を含む廃棄物の処理方法において、
    前記ガラス化剤が、ヨウ化銅と酸化第一銅の混合物と、五酸化二燐、五酸化二バナジウム、三酸化モリブデン及び三酸化タングステンの4化合物の内の少なくとも1つとを同時に含む物質であることを特徴とする放射性ヨウ素を含む廃棄物の処理方法。
  3. 放射性ヨウ素を含有する廃棄物にガラス化剤を添加して混合体とし、該混合体を加熱して該放射性ヨウ素を該ガラス化剤に固溶させ、均質なガラス固化体とすると共に非固溶の残部廃棄物を前記ガラス固化体中に閉じ込める放射性ヨウ素を含む廃棄物の処理方法において、
    前記ガラス化剤が、ヨウ化物と1B族酸化物とその他酸化物の混合物であり、該ヨウ化物はヨウ化銀及びヨウ化銅の少なくとも一つを含み、該1B族酸化物は酸化銀及び酸化第一銅の少なくとも一つを含み、該その他酸化物は、三酸化タングステン、三酸化モリブデン、五酸化二燐及び五酸化二バナジウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする放射性ヨウ素を含む廃棄物の処理方法。
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