JP3734657B2 - 空燃比制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に供給する混合気の空燃比を制御する空燃比制御装置に係り、特に、内燃機関の排気中の空燃比を検出する空燃比検出センサの異常検出をも行う空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジンの排気系に設けられ、排気中の酸素濃度に略比例した信号を出力する空燃比センサ(以下、LAFセンサとする)の故障を検出する方法として、LAFセンサの出力特性の変化をモニタし、この空燃比の出力に基づいてLAFセンサの故障あるいは劣化を検出している(特開平8−338290号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のLAFセンサの劣化を判定するセンサ劣化判定処理は、内燃機関の運転状態が所定の条件(以下、モニタ条件とする)を満たしている際に行わなければならない。従って、センサ劣化判定処理が実施されている期間であっても、内燃機関の運転状態がモニタ条件から外れてしまうと、再度運転状態がモニタ条件を満たすまで、センサ劣化判定処理を一時中断しなければならない。
【0004】
特に、センサ劣化判定処理中は、理論空燃比近傍に制御する必要があり、判定処理が中断されリーン運転領域へ移行してしまった場合には、再度理論空燃に制御するまでに時間がかかるためセンサの劣化判定処理を行う頻度が減少してしまう。更に、リーンと理論空燃比の移行時に出力変動が生じ運転性が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、空燃比センサの劣化判定処理を効率よく実施する空燃比制御装置を提供することを目的とする。
具体的には、上記空燃比センサの劣化判定処理を実施している期間において、内燃機関の運転状態が上記劣化判定処理を実施できる条件から外れてしまった場合に、リーン領域への移行を禁止する空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明による空燃比制御装置においては、内燃機関の排気系(排気管16、三元触媒19、20等)に設けられ、排気中の酸素濃度に略比例した信号を出力する空燃比検出手段(LAFセンサ17)と、前記内燃機関の運転状態に基づいてリーン領域にあるか否かを判定するリーン領域判定手段(実施形態では、ECU5に具備される)と、前記リーン領域判定手段に よりリーン領域にあると判定された時に、前記空燃比検出手段の出力に基づいて前記内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリーンな空燃比に制御するリーン制御手段(実施形態では、ECU5に具備される)と、前記内燃機関が診断領域にあるか否かを判定する診断領域判定手段(実施形態では、ステップS572〜ステップS584)と、前記診断領域判定手段により診断領域にあると判断された時(実施形態では、モニタ条件フラグFLFMCHK=1の場合)に、前記空燃比検出手段の出力に基づいて空燃比検出手段の異常を診断する異常診断手段(実施形態では、ステップS521〜ステップS541)と、前記異常診断手段による異常診断中に、前記診断領域判定手段により診断領域に無いと判断された時に、前記異常診断を中断するとともに前記リーン制御を所定時間禁止する異常診断中断手段(実施形態では、ステップS11〜ステップS17)とを具備することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の実施の形態による空燃比制御装置を含むエンジン及びその制御装置の構成を示す図である。
【0008】
同図において、1は各気筒に吸気弁及び排気弁(図示せず)を設けたDOHC直列4気筒のエンジンである。エンジン1の吸気管2は分岐部(吸気マニホルド)11を介してエンジン1の各気筒の燃焼室に連通する。吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度(θTH)センサ4が連結されており、スロットル弁開度θTHに応じた電気信号を出力して電子コントロールユニット(以下、ECUという)5に供給する。
【0009】
吸気管2には、スロットル弁3をバイパスする補助空気通路6が設けられており、この通路6の途中には補助空気量制御弁7が配されている。補助空気量制御弁7は、ECU5に接続されており、ECU5によりその開弁量が制御される。吸気管2のスロットル弁3の上流側には吸気温(TA)センサ8が装着されており、その検出信号がECU5に供給される。
【0010】
吸気管2のスロットル弁3と吸気マニホルド11の間には、チャンバ9が設けられており、チャンバ9には吸気管内絶対圧(PBA)センサ10が取り付けられている。PBAセンサ10の検出信号はECU5に供給される。
エンジン1の本体にはエンジン水温(TW)センサ13が装着されており、その検出信号がECU5に供給される。ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角を検出するクランク角度位置センサ14が接続されており、クランク軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。
【0011】
クランク角度位置センサ14は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置で信号パルス(以下、CYL信号パルスという)を出力する気筒判別センサ、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置で(4気筒エンジンではクランク角180度毎に)TDC信号パルスを出力するTDCセンサ及びTDC信号パルスより短い一定クランク角周期(例えば30度周期)で1パルス(以下、CRK信号パルスという)を発生するCRKセンサから成り、CYL信号パルス、TDC信号パルス、CRK信号パルスがECU5に供給される。これらの信号パルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御及びエンジン回転数NEの検出に使用される。
【0012】
吸気マニホルド11の吸気弁の少し上流側には、各気筒毎に燃料噴射弁12が設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されると共に、ECU5に接続されてECU5からの信号により燃料噴射時期及び燃料噴射時間(開弁時間)が制御される。エンジン1の点火プラグ(図示せず)もECU5に接続されており、ECU5により点火時期θIGが制御される。
【0013】
排気管16は分岐部(排気マニホルド)15を介してエンジン1の燃焼室に接続されている。排気管16には分岐部15が集合する直ぐ下流側に、広域空燃比センサ(以下、LAFセンサという)17が設けられている。さらにLAFセンサの下流側には直下三元触媒19及び床下三元触媒20が配されており、またこれらの三元触媒19及び20の間には酸素濃度センサ(以下、O2センサという)18が装着されている。三元触媒19、20は、排気ガス中のHC、CO、NOx等の浄化を行う。
【0014】
LAFセンサ17は、ECU5に接続されており、排気ガス中の酸素濃度(空燃比)に略比例した電気信号を出力し、その電気信号をECU5に供給する。O2センサ18は、その出力が理論空燃比の前後において、急激に変化する特性を有し、その出力は理論空燃比よりリッチ側で高レベルとなり、リーン側で低レベルとなる。O2センサ18は、ECU5に接続されており、その出力はECU5に供給される。
【0015】
排気還流機構30は、吸気管2のチャンバ9と排気管16とを接続する排気還流路31と排気還流路31の途中に設けられ、排気還流量を制御する排気還流弁(EGR弁)32とEGR弁32の弁開度を検出し、その検出信号をECU5に供給するリフトセンサ33とから成る。EGR弁32は、ソレノイドを有する電磁弁であり、ソレノイドはECU5に接続され、その弁開度がECU5からの制御信号によりリニアに変化させることができるように構成されている。
【0016】
蒸発燃料処理装置40では、燃料タンク41は通路42を介してキャニスタ45に接続し、キャニスタ45はパージ通路43を介して吸気管2のチャンバ9に接続している。キャニスタ45は、燃料タンク41内で発生する蒸発燃料を吸着する吸着剤を内蔵し、外気取込口を有する。通路42の途中には、正圧バルブ及び負圧バルブから成る2ウェイバルブ46が配設され、パージ通路43の途中にはデューディ制御型の電磁弁であるパージ制御弁44が設けられている。パージ制御弁44はECU5に接続されており、ECU5からの信号に応じて制御される。
【0017】
ECU5は、上述した各種センサからの入力信号波形を整形して電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変化する等の機能を有する入力回路と、中央処理回路(CPU)と、このCPUで実行される各種演算プログラムや後述する各種マップ及び演算結果を記憶するROM及びRAMから成る記憶回路と、燃料噴射弁12等の各種電磁弁や点火プラグに駆動信号を出力する出力回路とを備えている。
【0018】
ECU5は、上述の各種エンジン運転パラメータ信号に基づいて、LAFセンサ17及びO2センサ18の出力に応じたフィードバック制御運転領域やオープン制御運転領域等の種々のエンジン運転状態を判別すると共に、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁12の燃料噴射時間TOUTを演算し、この演算結果に基づいて燃料噴射弁12を駆動する信号を出力する。
【0019】
燃料噴射時間TOUTの演算には、LAFセンサ17の出力に応じて通常のPID制御により算出したPID補正係数KLAFが適用される。
TOUT=K1 ×KLAF×KCMD×Ti+K2
ここで、Tiは基本的にエンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定される基本燃料量である。K1 は運転状態に応じて求まる補正係数、K2は運転状態に応じて求まる補正量である。
【0020】
次に、上述した構成からなる装置において、LAFセンサ17の劣化判定処理が実施できる運転状態、即ちモニタ条件を満たしているか否かを判定する診断領域判定処理について図2を参照して説明する。なお、本処理はECU5によって実行され、また、優先度の高い処理が実行されていない、いわゆるバックグラウンドで実行される。
【0021】
まず、図2のステップS572において、O2センサ18が活性状態にあることを「1」で示す活性フラグnO2Rが「1」か否かを判別し、nO2R=1であるときは、エンジン1を搭載した車両の運転状態が所定の領域にあるか否か、即ち、LAFセンサのモニタ条件が満たされているか否かを判別する(ステップS573)。
【0022】
即ち、エンジン水温TWが所定上下限値TWLAFMH、TWLAFMLの範囲内にあるか否か、吸気温が所定上下限値TALAFMH、TALAFMLの範囲内にあるか否か、エンジン回転数NEが所定上下限値NELAFMH、NELAFMLの範囲内にあるか否か、吸気管内絶対圧PBAが所定上下限値PBLAFMH、PBLAFMLの範囲内にあるか否か、及び車速Vが所定上下限値VLAFMH、VLAFMLの範囲内にあるか否かを判別し、全ての答がYESのとき、運転状態が所定の領域にある、即ち、所定のモニタ条件を満たしているものと判定する。
【0023】
そして、ステップS573において全てのモニタ条件を満たしていると判定した場合には、ステップ574に移行し、当該車両が車速の変化率が小さいクルーズ状態にあることを「1」で示すフラグFCRSが「1」か否かを判別し、FCRS=1であるときはリセットフラグFKLAFRESETが「0」か否かを判別する(ステップS575)。
【0024】
以上の判別の結果、ステップS572〜S575のいずれかの答がNOの場合には、モニタ条件不成立と判定してステップS580に進み、フラグFLAFPGを「0」に設定し、続いてダウンカウントタイマtmLFMCHKに所定時間TLFMCHKをセットしてスタートさせ(ステップS581)、モニタ条件フラグFLFMCHKを「0」に設定し(ステップS583)、ダウンカウントタイマtmLFRPMSに所定時間TLFRPMSをセットしてスタートさせ(ステップS586)、応答劣化判定開始フラグFLFRPMSを「0」に設定して(ステップS588)、本処理を終了する。
【0025】
一方、ステップS572・S575において全ての条件を満たしていた場合には、モニタ条件成立と判定してステップS576に進み、モニタ条件フラグFLFMCHKが「1」か否かを判別し、FLFMCHK=1であるときは、ステップS577をスキップし、ステップS578へ移行し、一方、モニタ条件フラグFLFMCHKが「0」であった場合には、ステップS577に移行し、目標当量比KCMDが所定値KCMDZML(例えば理論空燃比に対応する値、即ち、1.0に設定される)以上か否かを判別する。
【0026】
ステップS577において、KCMD<KCMDZMLであると判定した場合は、モニタ条件不成立と判定して上記ステップS580へ移行し、続いて、上述したステップS581〜ステップS588のステップを経た後、本処理を終了する。
一方、ステップS577において、KCMD≧KCMDZMLであると判定した場合はステップS578に移行する。
【0027】
ステップS578では、LAFセンサ応答劣化判定終了フラグFLFRPENDが「1」か否かを判別し、FLFRPEND=1の場合、即ち、LAFセンサ応答劣化判定が終了していた場合は、ステップS580に進み、続くステップS581〜S588を経た後に本処理を終了する。
【0028】
一方、ステップS578において、LAFセンサ応答劣化判定終了フラグFLFRPEND=0であると判定した場合は、ステップS579へ移行し、パージカットフラグFLAFPGを「1」に設定してパージをカットし、即ち図1における蒸発燃料処理装置40のパージ制御弁を閉弁させることによってパージを0にし、診断中のパージガスの影響をなくす。
【0029】
続いて、ステップS582では、ステップS581でスタートさせたタイマtmLFMCHKの値が「1」か否かを判別する。tmLFMCHK>0であると判定した場合はステップS583に進み、ステップS386及びステップS588を経て処理を終了する。
一方、ステップS582において、tmLFMCHK=0であると判定した場合は、ステップS584へ移行し、モニタ条件成立と判定してモニタ条件フラグFLFMCHKを「1」に設定し、続くステップS585において、LAFセンサ劣化判定終了フラグFLFSTENDが「1」か否かを判別する。
【0030】
その結果、LAFセンサ劣化判定終了フラグFLFSTEND=0、即ち、LAFセンサ劣化判定が終了していない場合は、ステップS586に移行し、続くステップS588を経て本処理を終了する。
一方、ステップS585において、FLFSTEND=1であった場合、即ちLAFセンサ劣化判定が終了していた場合にはステップS587に進み、ステップS586でスタートしたタイマtmLFRPMSの値が「0」か否かを判別する。
【0031】
ステップS587において、タイマtmLFMRPMS>0である場合は、ステップS588を経て、本処理を終了する。
一方、タイマtmLFMRPMS=0であった場合は、ステップS589においてLAFセンサ応答劣化判定開始フラグFLFRPMSを「1」に設定し、応答劣化判定の開始を許可した後、本処理を終了する。
【0032】
次に、LAFセンサ17の劣化判定処理について図3、図4を参照して説明する。
まず図3におけるステップS521において、LAFセンサ劣化判定の終了を「1」で示すセンサ劣化判定終了フラグFLFSTENDが「1」か否かを判別し、FLFSTEND=0のとき、即ち、センサ劣化判定が終了していない時は、モニタ条件が成立していることを「1」で示すモニタ条件フラグFLFMCHKが「1」か否かを判別する(ステップS522)。ここで、モニタ条件フラグFLMCHKは、図2に示した診断領域判定処理において設定されるフラグである。
【0033】
ステップS522において、モニタ条件フラグFLMCHKが「1」に設定されていた場合は、吸気管内負圧の変動量「DPBA4」が所定変動量DPBLFM以下か否かを判別する(ステップS522B)。吸気管内負圧の変動量「DPBA4」が所定変動量DPBLFM以下であった場合は、LAFセンサ劣化判定実行フラグFLFSTMが「1」か否かを判別する(ステップS522C)。LAFセンサ劣化判定実行フラグFLFSTM=1の場合は、吸気管内最大負圧PBCTMAXと最小負圧PBCTMINとの差、つまり吸気管内負圧の最大が所定変動量DPBLAFG以下か否かを判別する(ステップS522D)。
【0034】
ステップS522Dにおいて、吸気管内負圧の最大が所定変動量DPBLAFG未満であった場合は、O2センサ出力(SVO2)監視フラグFSVO2LAFが「1」か否かを判別する。O2センサ出力(SVO2)監視フラグFSVO2LAFが「1」にセットされていなかった場合は、ステップS527に進む。
【0035】
一方、ステップS521もしくはステップS523の答がYESのとき、又はステップS522、S522B、S522Dのいずれかの答がNOのときは、LAFセンサ劣化判定を実行するに適さないとし、SVO2監視フラグFSVO2LAFを「0」に設定し(ステップS524)、LAFセンサ劣化判定実行フラグFLFSTMを「0」に設定する(ステップS525)と共に、ダウンカウントタイマtmLFSTMに所定時間TLFSTMを設定して(図4のステップS526)、本処理を終了する。
【0036】
一方、ステップS527では、フィードバックの目標となる目標当量比KCMDの算出を行い、具体的にはO2センサ18の出力に基づいて目標当量比KCMDを算出し、続くステップS528では、LAFセンサ劣化判定実行フラグFLFSTMを「1」に設定し、ステップS529(図4参照のステップS529)に進む。
【0037】
続くステップS529では、O2センサ18の出力がリッチからリーン又はリーンからリッチに反転後、所定時間経過したことを「1」で示す反転フラグFKACTTが「1」か否かを判別し、FKACTT=0のとき、即ち、O2センサ18の出力が反転しないときには、上記ステップS526又は後述するステップS532でセットしたタイマtmLFSTMの値が「0」か否かを判別する(ステップS530)。その結果、tmLFSTM>0であって所定時間TLFSTMが経過していないときは、直ちに本処理を終了し、tmLFSTM=0であるときは、SVO2監視フラグFSVO2LAFを「1」に設定して(ステップS531)、本処理を終了する。
【0038】
一方、ステップS529でFKACTT=1であって、O2センサ出力がリッチからリーンへ又はリーンからリッチへ反転したときは、上記ダウンカウントタイマtmLFSTMに所定時間TLFSTMをセットしてスタートさせ(ステップS532)、カウンタNKACTの値が「0」か否かを判別する(ステップS533)。最初はNKACT=0であるので、ステップS535に進んで、このカウンタNKACTを「1」だけインクリメントして(ステップS535)、その値が所定値NKACTC(例えば5)より小さいか否かを判別する(ステップS536)。ステップS536において、NKACT<NKACTCであった場合は、直ちに本処理を終了する。
【0039】
次に、O2センサ出力が反転したとき、ステップS533において、カウンタNKACTの値が「1」となるので、ステップS534へ移行し、LAFセンサ17の出力に基づいて検出当量比KACTの積算値KACTTを下記(1)式により算出して、ステップS535に進む。
KACTT=KACTT+KACT…(1)
【0040】
そして、上述のステップS535を経て、ステップS536において反転回数が所定値に達すると、即ちステップS536でNKACT=NKACTCとなると、ステップS537に進んで下記(2)式により平均検出当量比KACTAVを算出する。
KACTAV=KACTT/(NKACT−1)…(2)
【0041】
これにより、モニタ中における複数個所の反転時のKACT値の平均値として、KACTAV値が算出される。
【0042】
このようにして検出開始後、最初の反転を除いて反転時のKACTの値の平均を算出するので、検出の精度を向上することができる。尚、最初の反転時は制御が安定していないおそれがあり、この点を平均値算出に用いると誤差が大きくなるおそれがあるので用いない。
【0043】
続くステップS538、S539では、平均値KACTAVが所定下限値KACTAVLより大きいか否か、及び所定上限値KACTAVHより小さいか否かを判別し、その結果KACTAVL<KACTAV<KACTAVHであるときは、LAFセンサ17は劣化していないと判定し、フラグFLFSTNGを「0」のままとする。
【0044】
続くステップS539Aでは、VLFSTテーブルを参照して平均値KACTAVに対するずれ量VLFSTを算出する。この算出されたずれ量に基づいてテーブル等を用いてLAFセンサ17の出力を補正することができる。
【0045】
この後、ステップS541に進み、LAFセンサ劣化判定終了フラグFLFSTENDを「1」に設定し、ステップS541AでLAFセンサ劣化実行終了フラグFLFSTMを「0」に設定して本処理を終了する。
【0046】
また、ステップS538及びステップS539において、KACTAV≦KACTAVL又はKACTAV≧KACTAVHであるときは、LAFセンサ17の劣化であると判定してフラグFLFSTNGを「1」に設定して(ステップS540)、上記ステップS539Aに進む。以上のようにしてLAFセンサ17の劣化判定、及び出力ずれの劣化の判定を行う。
【0047】
次に、図5は、LAFセンサ17の劣化判定中に空燃比制御装置が行うリーンバーン禁止処理を示すフローチャートである。
同図において、まずステップS11では、モニタ条件フラグFLFMCHKが「1」であるか否かを判定する。モニタ条件フラグFLFMCHKが「0」であった場合、即ち、エンジンの運転状態がモニタ条件から外れていた場合は、ステップS12へ移行し、モニタ条件抜けが発生する前のモニタ条件フラグFLFMCHKが「1」か否かを判別する。
【0048】
ステップS12において前回のモニタ条件フラグが「1」であれば、ステップS13に移行し、LAFセンサ劣化判定終了時に「1」に設定されるLAFセンサ劣化判定終了フラグFLFSTENDが「1」か否かを判別する。LAFセンサ劣化判定終了フラグFLFSTENDが「0」の場合、即ちLAFセンサの劣化判定が終了せずに中断した場合は、ステップS14に移行し、タイマtmOBD2LBに所定時間DTMLFSTLB(例えば7秒間)をセットした後、ステップS15においてリーンバーン禁止フラグFOBD2LBを「1」に設定し、リーンバーンを禁止する。
【0049】
一方、ステップS11において、モニタ条件フラグFLFMCHKが「1」であった場合は、ステップS18に移行し、タイマtmOBD2LBにDTMLFSTLBよりも短い設定値であるDTMOBD2LB(例えば2秒間)をセットした後、ステップS15においてリーンバーン禁止フラグFOBD2LBを「1」に設定し、リーンバーンを禁止する。
【0050】
一方、ステップS12において前回のモニタ条件フラグFLFMCHKが「1」でなかった場合、あるいは、ステップS13においてLAFセンサ劣化判定終了フラグFLFSTENDが「1」であった場合には、ステップS16に移行し、タイマtmOBD2LBが「0」であるか、即ち2秒あるいは7秒に設定されたタイマがタイムアップしているか否かを判定し、タイマがタイムアップしていた場合には、ステップS17へ移行して、リーンバーン禁止フラグFOBD2LBに「0」をセットするとともに、リーンバーン禁止を解除し、処理を終了する。
一方、ステップS16において、タイマtmOBD2LBが「0」でなければ、ステップS15へ移行し、リンバーン禁止を継続する。
【0051】
次に、LAFセンサ17の劣化判定処理中におけるリーンバーン禁止の制御について図6を参照して説明する。
同図において、タイミングチャート(a)は、LAFセンサ17の劣化判定処理が実施できる状態である場合に「1」にセットされるモニタ条件フラグFLFMCHKを示している。また、タイミングチャート(b)は、LAFセンサ17の劣化判定処理終了時に「1」にセットされるLAFセンサ劣化判定終了フラグFLFSTENDを示している。
【0052】
また、タイミングチャート(c)は、処理状態に応じて任意の値(本実施形態では、2秒あるいは7秒)設定される減算タイマtmOBD2LBのカウント値を示している。また、タイミングチャート(d)は、リーンバーンを禁止する際に「1」に設定されるリーンバーン禁止フラグFOBD2LBを示している。
【0053】
同図において、時刻t0においてLAFセンサのモニタ条件が満たされLAFセンサ17の出力モニタが実施される。これと同時に、タイマtmOBD2LBは、DTMOBD2LB(例えば2秒)にセットされ、またリーンバーン禁止フラグFOBD2LBが「1」に設定され、リーンバーンが禁止される。
続いて、時刻t1においてエンジンの運転状態が移行し、モニタ条件から外れてしまうと、タイマtmOBD2LBの値がDTMLFSTLB(例えば、7秒)にセットされる。なお、リーンバーン禁止は継続される。
【0054】
次に、時刻t2において、タイマtmOBD2LBがタイムアップしない内に、エンジンの運転状態がモニタ条件を満たし、再びLAFセンサ17の出力モニタが行われても、タイマtmOBD2LBがタイムアップするまでは、リーンバーン禁止フラグFOBD2LBはセットされたままであるので、リーンバーン禁止制御は継続されて行われる。
【0055】
そして、時刻t3において、LAFセンサ17の劣化判定処理が終了し、LAFセンサ劣化判定終了フラグFLFSTENDが「0」にセットされると、これと同時にモニタ条件フラグFLFMCHKは「0」にセットされ、また、タイマtmOBD2LBには、LAFセンサ17の劣化判定中にエンジンの運転状態がモニタ条件を外れた場合に設定される値DTMLFSTLBよりも小さい値であるDTMOBD2LBが設定される。そして、このタイマtmOBD2LBがタイムアップするまで、リーンバーン禁止フラグは「1」に設定され、タイマtmOBD2LBがタイムアップした時点で、「0」にセットされて、リーンバーンが許可される。
【0056】
このように、センサの劣化判定中に所定のモニタ条件が不成立となった時には、タイマtmOBD2LBを動作させて所定の時間(例えば7秒)リーンバーンになるのを禁止するように制御し、この所定の時間内に劣化判定条件が再び満たされたときは、リーンバーン禁止を続け、また、LAFセンサ17の劣化判定が終了した場合には、上述の所定の時間よりも短い時間(例えば2秒)リーンバーンの許可を遅延させている。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、内燃機関の排気系に設けられ、排気中の酸素濃度に略比例した信号を出力する空燃比検出手段と、内燃機関の運転状態に基づいてリーン領域にあるか否かを判定するリーン領域判定手段と、リーン領域判定手段によりリーン領域にあると判定された時に、空燃比検出手段の出力に基づいて内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリーンな空燃比に制御するリーン制御手段と、内燃機関が診断領域にあるか否かを判定する診断領域判定手段と、診断領域判定手段により診断領域にあると判断された時に、空燃比検出手段の出力に基づいて空燃比検出手段の異常を診断する異常診断手段と、異常診断手段による異常診断中に、診断領域判定手段により診断領域に無いと判断された時に、異常診断を中断するとともにリーン制御を所定時間禁止する異常診断中断手段とが設けられている。
【0058】
このように、LAFセンサの故障診断を行うモニタ途中でエンジンの運転状態がモニタ条件を外れた場合においても、所定時間リーンバーンへの移行を禁止するようにしたので、従来のようにリーンと理論空燃比の移行が頻繁に発生することがなく、LAFセンサによるモニタ実行頻度を向上させることが可能となり、LAFセンサの劣化判定処理に係る時間を短縮することができるとともに、ドライバビリティの向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態による空燃比制御装置を含むエンジン及び制御装置の構成図である。
【図2】 モニタ条件を判定する処理を示すフローチャートである。
【図3】 LAFセンサ劣化処理を示すフローチャートである。
【図4】 LAFセンサ劣化処理の続きを示すフローチャートである。
【図5】 リーンバーン禁止処理を示すフローチャートである。
【図6】 リーンバーン禁止処理を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
5 ECU(電子コントロールユニット)
8 吸気温(TA)センサ
10 吸気管内絶対圧(PBA)センサ
12 燃料噴射弁
13 エンジン水温(TW)センサ
14 クランク角度位置センサ
16 排気管
17 LAFセンサ
18 O2センサ
Claims (1)
- 内燃機関の排気系に設けられ、排気中の酸素濃度に略比例した信号を出力する空燃比検出手段と、
前記内燃機関の運転状態に基づいてリーン領域にあるか否かを判定するリーン領域判定手段と、
前記リーン領域判定手段によりリーン領域にあると判定された時に、前記空燃比検出手段の出力に基づいて前記内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリーンな空燃比に制御するリーン制御手段と、
前記内燃機関が診断領域にあるか否かを判定する診断領域判定手段と、
前記診断領域判定手段により診断領域にあると判断された時に、前記空燃比検出手段の出力に基づいて空燃比検出手段の異常を診断する異常診断手段と、
前記異常診断手段による異常診断中に、前記診断領域判定手段により診断領域に無いと判断された時に、前記異常診断を中断するとともに前記リーン制御を所定時間禁止する異常診断中断手段と、
を具備することを特徴とする空燃比制御装置。
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