JP3734428B2 - プレス成形性と耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、SUS304J1鋼が一般に用いられている、複雑形状の流し台 (シンク)において、より高耐食性が要求される用途に使用可能な、極めてプレス成形性に優れ、かつ高い耐食性を有するオーステナイト系ステンレス鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
SUS304鋼は高い耐食性と加工性を有することから、流し台や浴槽用の材料として長年使われてきた。但し、SUS304では加工出来ないような複雑形状のシンクには、SUS304J1鋼が用いられている。
SUS304J1鋼とは、SUS304をベース成分とし、Cuを1〜3%添加しNi,Crを若干低減した鋼種であり、ステンレス鋼板製造メーカー各社が各社独自の商品名を付けて販売している。例えば「ステンレス鋼板製造メーカー6社の推奨するステンレス鋼の新鋼種、その特徴と使い方」(ステンレス協会、昭和57年9月27日発行)に拠れば、YUS27A(新日本製鐵)、NSS304M2(日新製鋼)、NAR304LA(住友金属工業)、NAS86D(日本冶金工業)などがある。
【0003】
SUS304鋼は、常温の未加工時にはオーステナイト相(FCC構造)であり、積層欠陥エネルギーが低い鋼種である。従って、加工時に大きな加工硬化を生じる。加えて、このオーステナイト相は常温では不安定相であり、加工率に応じてマルテンサイト相に変態する。従って、SUS304鋼を常温でプレス加工すると、オーステナイト相の加工硬化に加えて、オーステナイト相の一部がマルテンサイト相へ変態し、オーステナイトとマルテンサイト複合相の加工硬化が更に進行する。
【0004】
SUS304J1鋼は、Cu添加によって積層欠陥エネルギーを上げ、加工初期のオーステナイト相の加工硬化を低減し、強加工域の加工硬化はマルテンサイト相によりSUS304並みに維持することによって、低歪域では低強度を、高歪域では高強度を示す、n値の大きな材料である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、下水道未敷設地域に於ける合併浄化槽の設置が増加している。合併浄化槽では、排水の殺菌・消毒のために薬剤が使用される。ここで使われている薬剤には、トリクロロイソシアヌル酸や次亜塩素酸カルシウムを主成分とするものがある。これらの薬剤は塩素を含み、水と反応して次亜塩素酸やクロラミン(モノクロロアミン、ジクロロアミン、トリクロロアミン)を生成する。次亜塩素酸や次亜塩素酸イオン、クロラミンなどは強い殺菌作用を有するため、従来から下水処理場などで使われている。
【0006】
新築住宅に於いて、流し台から合併浄化槽への配水管を接合した際には、流し台は未使用であるため、配水管のトラップ(臭気止め)には水が溜まっておらず、浄化槽で発生したガスが流し台まで直接進入してくることがある。浄化槽で発生する塩素系ガスは金属に対して強い腐食性を有するガスである。そのため、新築の住居に於いて入居前に流し台がさびるトラブルが多発している。この問題は、排水口トラップに水が溜まる入居後には発生しない。
【0007】
更に、近頃清潔志向の高まりから、流し台排水口・ゴミ受け・ゴミ籠(ストレイナー)のヌメリ取りと除菌のために、ヌメリ取り剤が使用されるようになってきた。ここで使われるヌメリ取り剤の種類はいくつか有るが、代表的な物は、トリクロロイソシアヌル酸やジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを主成分とするものである。従って、合併浄化槽で使われている薬剤と同様に、塩素ガスなどの腐食性ガスを発生する。
【0008】
ヌメリ取り剤は、ストレーナーに置いて使用する物であり、常時水に浸かる環境で使われる物ではないが、排水口の目詰まりや、ストレーナー用の目の細かいゴミ受けネットを使用した際には、薬剤が水に長時間接するため、発生する塩素ガスも無視できない量となる。これらの薬剤から発生するガスにステンレス鋼を長期間曝していると、SUS304J1やSUS304だけでなくSUS316でもサビが発生する。
【0009】
この様に、流し台を取り巻く環境は最近特に悪化しており、シンクの発銹トラブルが多発している。この問題の本質は、金属に対する腐食性の高い薬剤を上記のような環境に用いていること、また正しい使用法が流し台施工業者や主婦に浸透していないことである。
【0010】
しかし同時に、従来中性水溶液に於ける塩や醤油に対する耐食性があれば十分と考えられていた流し台シンクが、より厳しい環境に曝されているという現実に対して、上記環境に於ける材料の耐食性を向上させたいというニーズが高まっている。
【0011】
シンクの多くには、高いプレス加工性を有するFe−16Cr−7Ni−2CuをベースとするSUS304J1鋼が使用されているが、Fe−16Cr−7Ni−2Cu鋼はSUS304に較べて低クロムであるため、従来の中性環境では問題ない耐食性を有するが、近年の厳しい環境に於ける耐食性はSUS304より劣っている。
そこで本発明者らは、SUS304J1鋼の長所である加工性を維持し、かつSUS304並みの耐食性を有する新鋼種を鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨とするところは下記の通りである。
質量%(以下単に%と略)で、
C :0.035%以下、 Si:0.6%以下、
Mn:0.8〜1.8%、 Ni:7.5〜8.3%、
Cr:16.3〜17.1%、 Cu:1.7〜2.3%、
Mo:0.7〜1.1%、 N :0.025%以下、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、且つ下式に示すA〜E値が、
0<A値<6、 40≦B値≦55、 48≦C値、 40≦D値≦44、
0.02≦E値≦0.05
を満足する化学組成を有し、0.3%ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液から発生するガスに対して48時間以上の耐食性を有し、圧延方向における0.2%耐力が260MPa以下、全伸びが56%以上を有することを特徴とする、プレス成形性と耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
A値=3(Cr+1.5Si+Mo)−2.8(Ni+0.5Cu+0.5Mn)
−84(C+N)−19.8
B値=413−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−
9.5(Ni+Cu)−18.5Mo
C値=2+23(Cr+3Mo+16N−17)
D値=16.7+2.1(Ni+3Cu)−0.9Cr+3.2Mn+9.3Mo
E値=C+N
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、トリクロロイソシアヌル酸やジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液からの発生ガスに対するステンレス鋼の耐食性と化学成分の関係を調べると共に、薄板の機械的性質とプレス成形性を調べて、以下の新しい知見を得た。
【0014】
トリクロロイソシアヌル酸やジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液から発生するガスに対するステンレス鋼の耐食性を調べた結果、0.3%のジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液から発生するガスにステンレス鋼を曝して、サビ発生までの時間を評価することにより、材料の耐食性を評価することが出来ることが判った。この評価結果と、一般消費者から寄せられる流し台の腐食クレームの傾向とは良く一致している。
【0015】
すなわち、SUS304J1鋼が使われている複雑形状の流し台シンクでサビのクレームが多いのに対し、SUS304が用いられている単純形状のシンクではサビのクレームが極めて少ない。SUS304は0.3%ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液から発生するガスに対して48時間サビが発生しない程度の耐食性を有している。本発明者等の調査の結果、サビ発生までの時間はC値=2+47(Cr+3Mo+16N−17)で表されることが判った。
【0016】
SUS304並みの48時間の耐食性を得るためには、C値を48以上にすることが必要である。流し台に使われているSUS304J1鋼はC値が2程度のものであり、48を超える鋼種は見られない。しかし、SUS304J1鋼のCr,Mo,N量を単純に増加させると、熱間加工性を低下させ、熱延板にへげ疵が発生しやすくなると共に、製品のプレス加工性も低下する。SUS304を用いれば耐食性は目標を満たすが、プレス成形性がSUS304J1より劣るため、液圧対向プレス等を使ってシンクをプレス成形すると、破断や形状不良などの問題が発生する。
【0017】
尚、ここで目標とする耐食性をSUS304並みとした理由であるが、上記環境ではSUS316の様な高耐食性ステンレスでも耐えられない。SUS304より、サビ発生までの時間が長くなる程度である。しかし、SUS304J1鋼では上記環境に曝されて短時間でサビが発生し、SUS304との差が際だつため、例えば流し台天板や排水口のゴミ取りネットに使われるSUS304に対して、サビの差が顕著に目立つことを問題にしているためである。
【0018】
プレス成形の省工程化により、液圧対向プレスが流し台のプレス方法として普及してきた。このため、近年シンク用素材として望まれる材料の機械的性質は、低耐力でかつ高い破断時全伸びを有することが望まれるようになってきた。耐力を下げることでプレス加工時の形状凍結性が向上し、リストライクによる形状修正量を小さくする事が出来る。また破断時全伸びを上げることで、張り出し加工性と深絞り加工性が向上する。
【0019】
上記知見に基づき、本発明においては下式に示すB〜E値を、40≦B値≦55、48≦C値、40≦D値≦44、0.02≦E値≦0.05、とする化学組成に調整することにより、0.2%耐力を260MPa以下とし、破断時全伸びを56%以上とし、更に、単純な耐力や引張強さで表せない、耐力から均一伸び区間における加工硬化挙動を最適化することが可能となって良好なプレス成形性が得られる。
B値=413−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr
−9.5(Ni+Cu)−18.5Mo
C値=2+23(Cr+3Mo+16N−17)
D値=16.7+2.1(Ni+3Cu)−0.9Cr+3.2Mn+9.3Mo
E値=C+N
【0020】
SUS304鋼やSUS316鋼ではC値が19以上になるが、B値、D値、E値が目標とする範囲とならないので、上記のプレス成形性は得られない。また、SUS304J1鋼には0.2%耐力が260Mpa以下で、破断時全伸びが56%を超えるものもあるが、B値、D値、E値が所定の範囲にないので、十分なプレス成形性が得られない上に、C値が48以上にならず、十分な耐食性が得られない。すなわち、これまで製造されてきたステンレス鋼では、プレス成形性と近年の流し台環境に於ける耐食性との両立が不可能である。
【0021】
前記の本発明鋼で、0<A値<6、40≦B値≦55、48≦C値、40≦D値≦44、0.02≦E値≦0.05、を満足する化学組成を有する鋼種では、従来のオーステナイト系ステンレス鋼では得られなかった、極めて高いプレス加工性、例えば0.2%耐力が260N/mm2以下で破断時全伸びが56%以上であり、しかも近年の厨房環境に於 いても高い耐食性を有するオーステナイト系ステンレス鋼を得ることが出来る。
【0022】
本発明鋼における各成分の作用と含有量限定の理由はおよそ次の通りである。Cは、耐力を増加させる元素であり、その添加量を減少させると耐力を下げることが出来る。そこで0.035%以下とした。
【0023】
Siは、δフェライトの安定化元素であり、過剰な添加は製造性を損ねるため0.6%以下とする。
【0024】
Mnは、オーステナイト安定化元素であり、添加量を増すと熱間加工性は向上するが、過剰な添加はオーステナイトを過度に安定化させ、加工時のマルテンサイト変態量を低下させて加工性を損ねるため、0.8〜1.8%とする。
【0025】
Niは、オーステナイト系ステンレス鋼には不可欠の元素であり、Crとバランスする量の添加により、オーステナイト相を安定化させて製造性を確保するため、7.5%以上とする。但し、過度な添加はMnと同様に加工性を損ねるため、8.3%以下とする。
【0026】
Crは、Niと同様にオーステナイト系ステンレス鋼には不可欠な元素である。耐食性確保の点では多いほど望ましいが、δフェライト安定化元素であるため、過度な添加は熱間加工性を損ねることになるので、16.3〜17.1%とする。
【0027】
Cuは、積層欠陥エネルギーを上げ、低歪み域におけるオーステナイトの加工硬化を小さくし、加工性を向上させるが、過度の添加は室温におけるオーステナイト相の安定度を高め、マルテンサイト変態量を小さくし、高歪み域における加工硬化を抑制して加工性を低下させるため、1.7〜2.3%とする。
【0028】
Moは、耐食性を向上させる元素であり、本発明鋼の特徴となる添加元素である。一般のSUS304やSUS304J1鋼でも、原料から混入する不可避的不純物として0.2%程度含有されるが、トリクロロイソシアヌル酸水溶液から発生するガスに対する耐食性という点では不十分であり、多く添加するほど耐食性の観点からは望ましい。しかし、MoはCrと同様に高温ではフェライト安定化元素であり、過度の添加は熱間加工性すなわち製造性を損ね疵の原因となる。更に、常温に於いてはオーステナイト相を安定化し、マルテンサイト変態量を少なくし、高歪み域に於ける加工硬化を抑制して伸びを低下させるため、0.7〜1.1%とする。
【0029】
Nについては、Cと同様に耐力を増加させる元素であり、その添加量を減少させると耐力を下げることが出来る。そこで0.025%以下の範囲とした。
【0030】
A値は、材料の熱間加工性を表す指標である。本発明鋼の様にCuとMoを複合添加する鋼種において、熱間加工性を確保して疵のない製品を製造するためには、0<A値<6とすることが必要である。特にA値が6を超えると、製品にδフェライトが残存するようになり、耐食性を下げることにもなるため望ましくない。
A値の適性範囲は実験により求めた。すなわち、Fe−16〜18Cr−7〜8Ni−0〜2Mo−0〜3Cu−0.2〜0.8Si−0.5〜1.5Mn−0.010〜0.035C−0.010〜0.035N鋼をラボ溶製し、熱間圧延−熱延板焼鈍−酸洗−冷間圧延−BA焼鈍−調質圧延後の表面疵と耐食性を評価した。その結果を図1に示すが、0<A値<6の範囲で、疵発生が無く良好な耐食性を有する製品が得られることが判った。
【0031】
B値、D値は加工硬化挙動を示す指標である。B値は低歪み域における加工硬化を示す指標であり、D値は高歪み域における加工硬化を表す指標である。B値が40より低いと高歪み域における加工硬化が小さくなり、加工硬化指数n値が小さくなって伸びが低下する。またB値が55より大きくなると、高歪み域における加工硬化が極めて大きくなり、伸びを低下させる。
一方、D値は低歪み域における加工硬化を支配する因子であり、40未満になると、低歪み域における強度が高くなって張り出し加工性が低下する。また44より大きくなると、低歪み域における強度が小さすぎて張り出し加工性を低下させる。
【0032】
B値、D値の最適範囲は実験により求めた。すなわち、Fe−16〜18Cr−7〜8Ni−0〜2Mo−0〜3Cu−0.2〜0.8Si−0.5〜1.5Mn−0.010〜0.035C−0.010〜0.035N鋼を溶製し、熱間圧延、熱延板焼鈍酸洗−冷間圧延−BA焼鈍−調質圧延後にシンクをプレス成形し、プレス成形性を評価した。その結果を図2に示す。40≦B値≦55、40≦D値≦44の範囲で、破断のない良品が得られることが判った。
【0033】
次にC値であるが、C値は浄化槽用殺菌・消毒剤や流し台排水口のヌメリ取り剤に対する耐食性を表す指標であり、0.3%ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液から発生するガスに材料を曝した際に、サビが発生するまでの時間とほぼ一致する。C値が48未満だと、SUS304より耐食性が低くなるため、シンクの耐食性の低さが目立ち問題になる。
【0034】
C値の適正範囲は次に述べる実験により求めた。すなわち、Fe−16〜18Cr−7〜8Ni−0〜2Mo−0〜3Cu−0.2〜0.8Si−0.5〜1.5Mn−0.010〜0.035C−0.010〜0.035N鋼を溶製し、熱間圧延、熱延板焼鈍酸洗−冷間圧延−BA焼鈍−調質圧延後にシンクをプレス成形し、シンクを0.3%ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液から発生するガスに曝してサビ発生までの時間を測定した。C値が48以上であればSUS304並みの耐食性が得られている。
【0035】
E値は、液圧対向プレス成型における形状凍結性を示す指標である。E値を0.02〜0.05にすることによって、プレス後のシンク側壁にベコ付きのない良品が得られる。E値の適正範囲は次に述べる実験により求めた。すなわち、Fe−16.7Cr−7.8Ni−0.8Mo−1.9Cu−0.4Si−1.2Mn−0.010〜0.035C−0.010〜0.035N鋼を溶製し、熱間圧延、熱延板焼鈍酸洗−冷間圧延−BA焼鈍−調質圧延後にシンクを液圧対向プレスによって成形し、シンクの形状が設計通りの良品が得られたかを評価した。その結果、E値で0.05以下で良品が得られることが判った。
【0036】
本発明鋼に於ける特性は、以上に述べた各成分の効果の最適バランスを各特性とリンクする成分指標(A値、B値、C値、D値、E値)とプレス成形性、上記環境における耐食性との関係から発明者が見いだだし、極めて狭レンジの成分制御に於いて初めて可能になったものである。
【0037】
【実施例】
表1に、本発明鋼( No.1〜 No.24)、比較鋼( No.25〜45)の化学成分を示す。本発明鋼に於いては、C,Si,Mn,Ni,Cr,Mo,Cu,Nの下限上限範囲内のものを用いた。比較鋼にはSUS304、SUS316、SUS304J1鋼も用いた。
【0038】
これらの成分を有するオーステナイト系ステンレス鋼を溶製し、これらの鋼片に熱間圧延を施して3.5mm厚の熱延鋼帯を得た。この熱延鋼帯に1100℃で20秒の熱延板焼鈍および酸洗を施したうえ、0.8mmまで冷間圧延し、1100℃で約20秒の光輝焼鈍および調質圧延を施したものを調査した。
表1に、成分から計算される製造性指標A値、プレス成形性指標B、C、E値、耐食性指標C値、JIS引張試験によって測定したL方向(圧延方法)における0.2%耐力と全伸び、表面疵の有無、プレス成形性、0.3%ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液から発生するガスに対する耐食性の実測結果を併記した。
【0039】
表1から判るように、本発明鋼では低耐力で高延性を示し、流し台シンクの成型が問題なく出来た。更に耐食性も良好である。
それに対して比較鋼は、流し台シンクの成型に於いて側壁にベコつきが出るといった形状凍結性で劣るものであったり、プレス時に破断が生じるといったプレス成形性の悪いもの、または耐食性が劣っていた。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、化学成分を限定することにより、通常のオーステナイト系ステンレス鋼よりも高い加工性と耐食性を有するオーステナイト系ステンレス鋼を得ることが出来る。本発明鋼によって、プレス工程の簡略化が進むと共に、流し台のサビ問題の発生を減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】A値と表面疵ランクとの関係を示す図。
【図2】プレス成形性に及ぼすB値とD値との関係を示す図。
【図3】C値と0.3%ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液から発生するガスに対するサビ発生までの時間の関係を示す図。
【図4】シンク加工後の形状に及ぼすE値の関係を示す図。
Claims (1)
- 質量%で、
C :0.035%以下、
Si:0.6%以下、
Mn:0.8〜1.8%、
Ni:7.5〜8.3%、
Cr:16.3〜17.1%、
Cu:1.7〜2.3%、
Mo:0.7〜1.1%、
N :0.025%以下、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、且つ下式に示すA〜E値が、
0<A値<6、 40≦B値≦55、 48≦C値、 40≦D値≦44、
0.02≦E値≦0.05
を満足する化学組成を有し、0.3%ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム水溶液から発生するガスに対して48時間以上の耐食性を有し、圧延方向における0.2%耐力が260MPa以下、全伸びが56%以上を有することを特徴とする、プレス成形性と耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
A値=3(Cr+1.5Si+Mo)−2.8(Ni+0.5Cu+0.5Mn)
−84(C+N)−19.8
B値=413−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−
9.5(Ni+Cu)−18.5Mo
C値=2+23(Cr+3Mo+16N−17)
D値=16.7+2.1(Ni+3Cu)−0.9Cr+3.2Mn+9.3Mo
E値=C+N
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