JP3734123B2 - 微生物数測定装置及び微生物数測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は溶液中の微生物数を測定するための微生物数測定装置及び微生物数測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶液中の微生物数を測定する方法として特開昭57−50652に記載されたもの等の多数の技術が知られている。
【0003】
しかし、従来の技術による微生物数の測定方法は、試料液に専用の薬剤、例えば酵素や色素を投入して生化学反応を起こさせ、その反応経過または結果を蛍光や発光によって測定するものであり、測定感度は比較的高いが微生物分野及び生化学分野に関する専門知識が必要である。また専用で高価な大型の測定装置も必要となり、さらには専任者による作業が必要となる等、とても一般的かつ簡易に微生物数を測定することができるものではなかった。
【0004】
そこで、特開59−91900に記載されたものをはじめとする、物理的手段のみを使い、薬剤を一切用いない、小型で試料系に組み込んでの自動測定が可能な簡易な微生物数検出装置が提案されたが、微生物数が108cells/ml(1ml中に微生物数が1億個)以上にならないと検出できないため、その応用範囲に著しい制限が加えられていた。
【0005】
このように、従来技術による微生物数測定装置では測定感度を上げるためには、何らかの薬剤の使用や、専用の測定装置,専門知識を持った専任者による操作が必要であった。また薬剤を使用しない簡易型の装置では、専任者を必要とせず測定が可能になるが、微生物の数が非常に多くならないと測定が難しく、低感度の測定器しか得られないし、微生物を移動させて局部的に濃度を上げて感度を向上させたくても簡易でメンテナンスフリーな手段がないという問題があった。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】
そこでこれらの問題を解決するため本発明は、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置及び微生物数測定方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の微生物数測定装置は、微生物含有の液体を導入することができ、内部に複数の電極を備えたセルと、前記電極間に誘電泳動を発生させるための交流電流と微生物を破壊するための高電圧パルスを印加することができる電源回路と、前記電源回路を制御するための制御手段と、前記液体の物性を測定することができる測定手段とを備え、前記制御手段が前記交流電流を流して前記液体に含有される前記微生物を誘電泳動によって所定位置に移動させ、これに前記高電圧パルスを印加することにより前記微生物を破壊して前記微生物の細胞内物質を前記液体中に放出させ、前記測定手段が破壊後の前記液体の物性を測定して前記微生物の数を算出することを特徴とする。
【0008】
これにより、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載された発明は、微生物含有の液体を導入することができ、内部に複数の電極を備えたセルと、前記電極間に誘電泳動を発生させるための交流電流と微生物を破壊するための高電圧パルスを印加することができる電源回路と、前記電源回路を制御するための制御手段と、前記液体の物性を測定することができる測定手段とを備え、前記制御手段が前記交流電流を流して前記液体に含有される前記微生物を誘電泳動によって所定位置に移動させ、これに前記高電圧パルスを印加することにより前記微生物を破壊して前記微生物の細胞内物質を前記液体中に放出させ、前記測定手段が破壊後の前記液体の物性を測定して前記微生物の数を算出することを特徴とする微生物数測定装置であるから、微生物数の少ない試料においても微生物を電極付近に集中するように移動させることができ、かつ微生物の破壊による液体の物性変化を高濃度で測定することができるため、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載された発明は、前記セルには前記電極間に電界を集中させる電界集中部が設けられていることを特徴とするから、電界をセル内の広範な範囲に及ぼすことが出来ると同時に微生物を電極上最も電界が集中する電界集中部の位置に効率良く濃縮することができる為、簡易で高感度な測定ができる微生物数測定装置を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載された発明は、前記測定手段が、前記電極間に高電圧パルスを印加して所定位置に移動した前記微生物を破壊する前と後でそれぞれ測定を行ない、その二つの測定値から試料液体内の前記微生物の数を算出することを特徴とするから、微生物濃度が低く、また不純物を含む液体であっても容易に高精度の測定を行なうことが出来、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができる微生物数測定装置を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載された発明は、前記測定部が前記電極間の電気伝導率を測定するものであることを特徴とするから、簡易な測定系でありながら高精度の測定をすることが出来、自動測定が可能な微生物数測定装置を提供することができる。
【0013】
請求項5に記載された発明は、前記セル内に陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を備えることを特徴とするから、電気伝導率測定を行なう前に試料液内に当初より溶解している電解質濃度を下げ、測定時のバックグラウンドの電解質濃度を低下させることができるため、簡易な測定系でありながら高精度の測定をすることができる微生物数測定装置を提供することができる。
【0014】
請求項6に記載された発明は、前記測定部が前記電極近傍の吸光度を測定するものであることを特徴とするから、簡易な測定系でありながら高精度の測定をすることができ、自動測定が可能な微生物数測定装置を提供することができる。
【0015】
請求項7に記載された発明は、前記電源回路が前記電極の洗浄のための直流電流を前記電極間に印加可能となっており、前記測定手段が破壊後の前記液体の物性を測定して微生物の数を算出した後に、前記制御手段が前記電極間に直流電流を印加して前記液体を電気分解し、ガスを発生させることにより前記電極の表面を洗浄することを特徴とするから、測定終了後に電極表面を正常な状態に復帰させることができ、次回の測定時への影響を残すことがないため、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供することができる。
【0016】
請求項8に記載された発明は、液体中の微生物を誘電泳動力によって所定位置に移動させ、所定位置に移動した前記微生物に高電圧パルスを印加することにより破壊して前記微生物の細胞内物質を前記液体中に放出させ、破壊した後に前記液体の物性を測定することにより前記微生物の数を算出することを特徴とする微生物数測定方法であるから、微生物破壊によって生じる液体の物性変化を測定することにより容易に微生物数を算出することができ、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができる微生物数測定方法を提供することができる。
【0017】
請求項9に記載された発明は、前記微生物に高電圧パルスを印加することにより破壊する前に前記液体の物性を測定することを特徴とする微生物数測定方法であるから、微生物破壊の前後で生じる、微生物のみに起因する液体の物性変化を測定することができ、不純物の影響を受けないため、簡易で高感度な測定ができる微生物数測定方法を提供することができる。
【0018】
請求項10に記載された発明は、測定される物性が液体の電気伝導率であることを特徴とする微生物数測定方法であるから、微生物濃度の低い試料であっても簡易な測定系でありながら高精度の測定を行なうことが出来、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能な微生物数測定方法を提供することができる。
【0019】
請求項11に記載された発明は、測定される物性が液体の250〜300nm間の吸光度であることを特徴とする微生物数測定方法であるから、微生物破壊によって液体中に放出される核酸の濃度を効率良く測定することにより、簡易で高感度な測定ができる微生物数測定方法を提供することができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。
(実施の形態1)
本発明の微生物数測定装置及び微生物数測定方法における実施の形態1について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態1における微生物数測定装置の全体構成図であり、図2は実施の形態1における電極の詳細説明図である。
【0021】
図1および図2において、1はセル、2は電磁弁、3は電極、8は電源回路、10は測定手段、11は制御手段、12は試料系、14はメモリ、21は電極底部、22は針状突起、23はギャップ、30はイオン交換樹脂である。図1および図2に示すように、電極3は、誘電泳動によって試料液体中の微生物を所定位置(この場合ギャップ23近傍)に移動させるために、微小なギャップ23を介して対向して設けられている。実施の形態1においては、電極3はいずれも円錐状の電極底部21と円錐先端から鋭く突き出した針状突起22とから構成されている。この針状突起22は白金で構成されており、一直線上で対向するように設けられている。ここではギャップ23の間隔は100μmに設定されているが、ギャップ23の間隔は測定対象となる微生物の大きさ等の影響を受けるため必要に応じて調節されるものである。例えば、酵母のような大きなものでは広く、リケッチアのように小さなものについては狭くする必要がある。また、ギャップ23の間隔は、広いほど大量の微生物を濃縮することができ、測定のダイナミックレンジも広くなるが、測定までの時間が長くなり、誘電泳動のために必要な電力も大きくなる。逆にギャップ23を狭くすると、電力と測定のために必要となる時間は少なくなるが、測定のダイナミックレンジは狭くなってしまうものである。以上の理由から本実施の形態1においては、ギャップ23の間隔を100μmとしているが、この値は微生物の大きさ等を考慮して10〜300μmの範囲で適宜調節されることが望ましい。さらに図示されてはいないが、電極底部21には絶縁性でかつ疎水性のフッソ系薄膜コーティングが施されている。
【0022】
電源回路8は、電極3に誘電泳動の為の交流電流と、微生物細胞破壊の為の高電圧パルス、電極洗浄のための直流電流を供給する為のものであり、試料系12を遮断するための電磁弁2等と共に制御手段11によって制御されている。制御手段11は、図示しないマイクロプロセッサと、予め設定されたプログラムを保存するためのメモリ、タイマー、さらに測定手段10との信号の伝送路から構成され、前記プログラムにしたがって電磁弁2の開閉、電源回路8を制御し、電極3への特定の周波数と電圧を持った交流電流の印加、同じく電極3への高電圧パルスの印加、測定手段11との信号の送受信等を行なう。
【0023】
測定手段10は、図示しないマイクロプロセッサ、電極3間の電気伝導率を検出する検出回路、制御手段11との間の信号を伝える伝送路から構成され、誘電泳動で捕捉され、その後高電圧パルスで破壊された微生物から放出される電解質に起因する電気伝導率変化を測定し、演算結果をメモリ14に格納したり、予め保存されているデータを読み出して比較を行なったりして、試料系12に含まれている微生物数を算出する。なお、このマイクロプロセッサは制御手段11と測定手段10とで共用することができる。また測定手段10と制御手段11は、互いに通信することにより、予め設定されたプログラムに従って一連の測定動作を連携して円滑に進めることができる。
【0024】
イオン交換樹脂30は陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂からなる。イオン交換樹脂30は導入される試料液体の陰イオンを水酸化物イオンに、陽イオンを水素イオンにそれぞれ交換することにより試料液体の電気伝導率を低下させる働きをする。
【0025】
次に実施の形態1において、試料の導入からセル内の微生物所定位置への移動、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明する。初期状態では試料系12とセル1を遮断するための電磁弁2は開放状態にあり、試料系12の液体はセル1内を自由に通過している。所定のタイミングで、予めプログラムによって設定された測定動作に入ると、制御手段11は電磁弁2を閉状態にしてセル1を試料系から遮断し、セル1内のみの閉鎖系を構成する。セル1内に保持された液体中の電解質すなわち陽イオンおよび陰イオンはイオン交換樹脂30の作用によって陰イオンは水酸化物イオンに、陽イオンは水素イオンにそれぞれ交換され、過剰な水酸化物イオンと水素イオンは結合して水となる。その結果、測定初期の試料液体の電気伝導率はきわめて低下する。
【0026】
この後測定手段10は試料導入時から電極3間の電気伝導率の測定を開始するが、イオン交換樹脂30の作用によって液体中のイオンが除去されるに従い電気伝導率は低下し、やがて一定の値に落ち着く。電気伝導率が一定値になったところで測定手段10は制御手段11に信号を送り、測定準備が整ったことを知らせる。制御手段11は測定手段10から信号を受けると、電源回路8を制御して電極3に周波数1MHz、電圧100Vの正弦波の交流電流を連続的に印加する。なお、ここで交流というは、正弦波に限らず、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電流のことであり、しかも両方向の電流の平均値が等しいもののことである。
【0027】
さて、印加される電界の作用でセル内の微生物はその誘電的な性質によって最も電場が強くかつ不均一な部分、即ち電界集中部としての電極3のギャップ23近傍に誘電泳動される。なお、この電解集中部は強い電場を不均一にするものであれば壁面等どのような構成のものでもよい。当初からギャップ23近傍に浮遊していた微生物は直ちにギャップ23部分へ泳動され、ギャップ23から離れたところに浮遊していた微生物は距離に応じて所定時間経過後にギャップ23部に至るため、一定時間後にギャップ23近傍の所定領域に集まった微生物の数はセル1内の微生物数に比例する。これは当然のことながら試料系12に存在する微生物数に比例するものである。
【0028】
予めプログラムされた所定時間経過後に、制御手段11は測定手段10に信号を送り測定開始を指令する。この時点には試料系12内の微生物数に比例した数の微生物が電極3のギャップ23近傍に移動されてきている。制御手段11からの測定開始の信号を受けると、測定手段10は電極3間の電気伝導率を測定を開始し、この値を初期値としてメモリ14に格納する。格納が終了すると測定手段10は、制御手段11に初期値の取得が終了したことを通知する。これを受けると、制御手段11は電源回路8を制御して電極3間にピーク電圧10kVの高電圧パルスを印加する。高電圧パルスの印加によって、ギャップ23近傍に移動していた微生物は破壊され、細胞内物質である蛋白質、糖、核酸等を液体中に放出する。細胞内物質はそのほとんどが電解質であるためギャップ23近傍では一時的に電解質濃度が上昇する。またこのとき放出される電界質量はギャップ23近傍に移動してきた微生物の数に比例し、更に電気伝導率は電解質の濃度に比例する。
【0029】
微生物が破壊された直後に、制御手段11は電気伝導率を測定するよう測定手段10に信号を送る。これを受けると、測定手段10は直ちに電極3間の電気伝導率を測定する。このようにして測定手段10は微生物破壊前後の電気伝導率変化を算出した後、予めメモリ14に記憶されている変換式を用いて試料系12に存在する微生物数を換算、算出する。この変換式は微生物数が明らかな校正用試料を用意して、これを本実施の形態1で説明した微生物数測定装置の測定系を用いて測定し、その時の微生物数と電気伝導率の相関関係からバラツキを回帰分析して得られる曲線を示す関数に従って算出して求めたものである。この変換式をメモリ14に記憶させ、微生物数が未知の試料からの電気伝導率変化の値を代入することにより試料系の微生物数を算出する。
【0030】
ここで実施の形態1の試料系としては、例えば酵母の培養液等の単一微生物系を想定しているが、混合微生物系であっても、微生物の種類とその構成比が大きく変化しない限り、前もって同様の変換式を算出しておくことが可能である。
【0031】
測定が終了すると、制御手段11は電磁弁2を開放して洗浄に入る。ギャップ23近傍に局在する微生物は、電磁弁2の開放により流入する液体によって洗い流され、一連の動作が終了する。しかしながら、微生物が強く濃縮されていたため針状突起22には微生物の破壊後の付着物が残留する。この残留物を除去するために制御手段11は電源回路8を制御して電極3間に電圧20Vで直流電流を印加する。直流電圧の印加によって一対の針状突起22では強い電気分解を生じ、例えば水溶液系では主に水の電気分解反応が生じて、酸素と水素のガスが発生する。針状突起22に付着した微生物破壊の際の残留物は、発生するガスの気泡によって電極3表面から剥ぎとられ、試料系12から流入する液体とともに洗い流され洗浄作業が進行する。なお、電極底部21には図示されない絶縁性でかつ疎水性のフッソ系薄膜コーティングが施されているため電気分解反応が生じることはない。このようにして予めプログラムされた所定の時間が経過すると、制御手段11は通電を停止し、すべての動作が終了する。
【0032】
実施の形態1においては、セル1内に保持される試料液体は測定開始前にイオン交換樹脂30によって電気伝導率を低下させられるので、試料系12の液体の電解質濃度の濃淡にかかわらずバックグラウンドの電解質の電気伝導率を小さく安定化でき、高精度の測定が可能となる。
【0033】
また、本実施の形態1において、セル1は円錐状の電極底部21と円錐先端から鋭く突き出した針状突起22からなる一対の電極3を備えているため、微生物を効率良くギャップ23に集中させることができる。そしてこれにより検出感度を向上させることができる。
【0034】
さらに、ギャップ23近傍に誘電泳動によって移動した微生物は、高電圧パルスによって破壊される前と後に電気伝導度を測定されるため、簡易な測定系でありながら検出の精度が高い微生物数測定装置にすることができる。
【0035】
ところで誘電泳動は液体内に浮遊する誘電性の物質を泳動させるものであるため、試料液体中に浮遊する微生物を含めた全ての微粒子をギャップ23近傍に移動させることができるものである。しかしながら、高電圧パルスの印加によって破壊され、液体の物性を変化させることができるのは微生物のみであり、ギャップ23近傍にある無機粒子等は影響を受けないため、これらは測定値に何等影響を与えることはない。そして測定時には高電圧パルスの印加前後の値を調べているため、演算によって微生物に起因する影響のみを抽出することが容易である。
【0036】
さらに本実施の形態1においては測定終了後に電極3に直流電流を印加する。この時、針状突起22部で発生する電気分解に伴うガスの気泡により、針状突起22に付着した微生物破壊後の残留物は、電極表面から剥ぎとられ試料系12から流入する液体とともに洗い流されるため、残留物が次回の測定時に影響を及ぼすことがない。また、電極底部21については絶縁性かつ疎水性のフッソ系薄膜がコーティングされている為、微生物やその破壊物も電極表面とほとんど相互作用することがなく、洗浄がきわめて容易である。
【0037】
(実施の形態2)
本発明の微生物数測定装置における実施の形態2ついて図面を参照しながら詳細に説明する。図3は本発明の実施の形態2における微生物数測定装置の全体構成図である。電極の詳細は実施の形態1と同じく図2が示す。実施の形態2において実施の形態1と重複する説明は、その説明を実施の形態1に譲って省略する。
【0038】
図3において1はセル、4は光源、5は受光部、6は光源光学系、7は受光部光学系、13は測定窓である。
【0039】
図3において、セル1は測定用に光束を導入するためと検出光取り出しのための2つの測定窓13を備えている。光源4としては250nm〜280nmの波長領域を含む紫外域に発光波長を持つ重水素ランプが用いられている。受光部5は光源4からの光を捉えるために設けられており、実施の形態2ではフォトダイオードが使用されている。6,7は複数のレンズや偏向板等で構成された光学系である。光源4と受光部5は光学系6,7、更にはセル1両端に備えられた測定窓13を介して光学的に向き合っており、これによって光源4からの光束が電極3のギャップ23近傍を通過するように配置されている。実施の形態2においては光学系6,7、更に測定窓13等は250nm〜300nmの波長領域を効率良く透過するシリカガラスによって構成されている。
【0040】
次に実施の形態2において、試料の導入からセル内の微生物の所定位置への移動、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明する。実施の形態1と重複する部分の説明は省略する。セル1内に保持された液体中の微生物は、実施の形態1と同様に電極3のギャップ23近傍に誘電泳動される。予めプログラムされた所定時間経過後に、測定手段10は光源4を点灯させ、受光部5から得られる測定値を初期値としてメモリ14に格納する。次いで、制御手段11は電源回路8を制御して電極3間にピーク電圧10kVの高電圧パルスを印加する。高電圧パルスの印加によって、電界集中部としてのギャップ23近傍に集中するように移動していた微生物は破壊され、細胞内物質を液体中に放出する。細胞内物質には微生物活動に起因する蛋白質、糖類等とともに核酸、すなわちDNAとRNAが含まれている。核酸は250nm〜300nm間に特異的な吸収を持ち、またこの吸収は核酸濃度に比例する。
【0041】
測定手段10は高電圧パルス印加によりギャップ23近傍の微生物が破壊された後に再び測定を行い、メモリ14に格納されている初期値との比較を行って、ギャップ23近傍の所定領域の核酸濃度を算出する。核酸濃度は微生物の数と相関を持ち、また予めプログラムされた所定時間内にギャップ23近傍に移動してくる微生物数が試料系12に存在する微生物数に比例するため、測定手段10は実施の形態1同様、予めメモリ14に記憶されている変換式を読み出して試料系12に含まれている微生物数を算出することができる。測定終了後の洗浄動作は実施の形態1と同じである。
【0042】
本実施の形態2は実施の形態1と同様に基本的には単一微生物系を想定しているが、同じく実施の形態1と同様に、混合系にも適用できることは言うまでもない。実施の形態2において、ギャップ23近傍に誘電泳動によって移動させられた微生物は、高電圧パルスによって破壊され核酸の濃度として測定されるため、簡易な測定系でありながら検出の精度を向上させられる。すなわち、誘電泳動は液体内に浮遊する誘電性の物質を泳動させるものであるため、試料液体中に浮遊する微生物を含めた全ての微粒子をギャップ23近傍に移動させる。しかしながら、高電圧パルスの印加によって破壊され液体の物性を変化させるのは微生物のみであり、高電圧パルス印加前からギャップ23近傍にある無機粒子や250nm〜300nm間に吸収を持つ有機分子等は何等影響を与えることはない。測定時には高電圧パルス印加前後の値を調べるため、演算によって微生物に起因する影響のみを抽出することは容易である。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供することができる。
【0044】
また、簡易で高感度な微生物数測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における微生物数測定装置の全体構成図
【図2】本発明の実施の形態1における電極の詳細説明図
【図3】本発明の実施の形態2における微生物数測定装置の全体構成図
【符号の説明】
1 セル
2 電磁弁
3 電極
4 光源
5 受光部
6 光源光学系
7 受光光学系
8 電源回路
10 測定手段
11 制御手段
12 試料系
13 測定窓
14 メモリ
21 電極底部
22 針状突起
23 ギャップ
30 イオン交換樹脂
Claims (11)
- 微生物含有の液体を導入することができ、内部に複数の電極を備えたセルと、前記電極間に誘電泳動を発生させるための交流電流と微生物を破壊するための高電圧パルスを印加することができる電源回路と、前記電源回路を制御するための制御手段と、前記液体の物性を測定することができる測定手段とを備え、前記制御手段が前記交流電流を流して前記液体に含有される前記微生物を誘電泳動によって所定位置に移動させ、これに前記高電圧パルスを印加することにより前記微生物を破壊して前記微生物の細胞内物質を前記液体中に放出させ、前記測定手段が破壊後の前記液体の物性を測定して前記微生物の数を算出することを特徴とする微生物数測定装置。
- 前記セルには前記電極間に電界を集中させる電界集中部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の微生物数測定装置。
- 前記測定手段が、前記電極間に高電圧パルスを印加して所定位置に移動した前記微生物を破壊する前と後でそれぞれ測定を行ない、その二つの測定値から試料液体内の前記微生物の数を算出することを特徴とする請求項1記載の微生物数測定装置。
- 前記測定手段が前記電極間の電気伝導率を測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物数測定装置。
- 前記セル内に陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を備えたことを特徴とする請求項4記載の微生物数測定装置。
- 前記測定手段が前記電極近傍の吸光度を測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物数測定装置。
- 前記電源回路が前記電極の洗浄のための直流電流を前記電極間に印加可能となっており、前記測定手段が破壊後の前記液体の物性を測定して微生物の数を算出した後に、前記制御手段が前記電極間に直流電流を印加して前記液体を電気分解し、ガスを発生させることにより前記電極の表面を洗浄することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微生物数測定装置。
- 液体中の微生物を誘電泳動力によって所定位置に移動させ、所定位置に移動した前記微生物に高電圧パルスを印加することにより破壊して前記微生物の細胞内物質を前記液体中に放出させ、破壊した後に前記液体の物性を測定することにより前記微生物の数を算出することを特徴とする微生物数測定方法。
- 前記微生物に高電圧パルスを印加することにより破壊する前に前記液体の物性を測定することを特徴とする請求項8記載の微生物数測定方法。
- 測定される物性が液体の電気伝導率であることを特徴とする請求項8または9記載の微生物数測定方法。
- 測定される物性が液体の250〜300nm間の吸光度であることを特徴とする請求項8または9記載の微生物数測定方法。
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