JP3733576B2 - 二重ライナの端部構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ジェットエンジンやガスタービンの燃焼室や排気部に設けられた二重ライナの端部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジェットエンジンやガスタービンの燃焼室や排気部の燃焼ガスが接する壁は高温となるため二重とし、その内部に冷却空気を通して冷却する構造が採用されている。図5はジェットエンジンのテスト機の一例を示す。ジェットエンジン1は通常、ファン、圧縮機2、燃焼室3、高圧タービン4、低圧タービン等を備えているが、基本的性能を確認する段階ではファンや低圧タービンを設けないでテストを行う場合がある。しかし低圧タービンは高温の排気を整流する働きを有しており、これに代わるガイドベーン5を設けている。
【0003】
図6は排気部の二重壁の一例としてガイドベーン近傍の二重壁の構造を示す。二重ライナは円筒状の外側ライナ7と内側ライナ8よりなり後部はピン9で固定され、前部は前部支持ケース10に設けられた支持リング11により軸方向に摺動可能に支持されている。外側ライナ7と内側ライナ8の先端はリング状の取付金物12と接合しており、この取付金物12と支持リング11が摺動可能に嵌合している。ガイドベーンは二重ライナを貫通しており、ピン9とともに支持ケース13に取付けられている。ピン9は中空になっており頭部より冷却空気を供給し矢印で示すように流し取付金物12に設けられた開口から燃焼排ガス内へ放出して内側ライナ8を冷却する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
二重ライナが支持構造と摺動可能に取り合う場合、従来は図6で示したように取付金物12を用いていた。取付金物12は鍛造で製作されるためコストが高かった。また取付金物12とライナとの取付け部は熱膨張が拘束され、割れが発生することがあった。
【0005】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので、取付金物を板材で構成した二重ライナの端部構造を提供することを目的とする。さらに、熱膨張による割れの発生を少なくした二重ライナの端部構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明では、内側円筒ライナと、該内側円筒ライナの端部より所定長さ軸方向に設けられ内側円筒ライナの外周と内径で接合し所定の外径を有する端部ライナと、一方の端部が内側円筒ライナの端部とほぼ同じ位置にあり前記端部ライナの外周と接合し前記一方の端部より軸方向で内側円筒ライナの存在する側へ所定距離離れて他方の端部を有する短円筒ライナと、該短円筒ライナの他方の端部側で外周が軸方向に所定長さ短円筒ライナの内周と嵌合して配置された外側円筒ライナと、前記短円筒ライナの外周と嵌合し一方の端部が内側円筒ライナの端部とほぼ同じ位置で他方の端部が前記外側円筒ライナに固着され外側円筒ライナと共に短円筒ライナの他方の端部側を軸方向に摺動自在に挟んでいる覆い円筒ライナとを備える。
【0007】
請求項2の発明では、前記内側円筒ライナの端部近傍と前記端部ライナと前記短円筒ライナの一方の端部近傍で構成されるリング状溝に二重ライナ支持用のリングが嵌合する。
【0008】
請求項3の発明では、前記内側円筒ライナの端部には軸方向にスリットが複数条設けられ該スリットの一部を覆うシールプレートが内側円筒ライナの外面に取付けられている。
【0009】
請求項4の発明では、前記外側円筒ライナの端部には軸方向にスリットが設けられ、該スリットは前記短円筒ライナで覆われている。
【0010】
請求項5の発明では、前記覆い円筒ライナは軸方向にスリットが複数条設けられ、前記短円筒ライナは円周方向で複数に分割されており、この分割位置と覆い円筒ライナのスリット位置は互いにずれている。
【0011】
請求項6の発明では、前記端部ライナは前記内側円筒ライナの外径とほぼ同一の内径の第1円筒と前記外側円筒ライナの外径とほぼ同一の外径の第2円筒と該第1円筒および第2円筒をつなぐ端板により段付円筒状に構成され、円周方向で複数に分割されて構成されている。
【0012】
【作用】
請求項1の発明によれば、内側円筒ライナの端部から所定長さ軸方向に端部ライナが設けられ、端部ライナの外周に短円筒ライナが設けられている。この短円筒ライナの内面に嵌合して外側円筒ライナが設けられ、さらに短円筒ライナの外面に嵌合して覆いライナが設けられ、覆いライナと外側円筒ライナで短円筒ライナを摺動可能に挟んだ構造としている。これにより内側円筒ライナと外側円筒ライナとは軸方向に独立に移動可能な構造となっている。
【0013】
請求項2の発明によれば、内側円筒ライナの端部近傍と端部ライナと短円筒ライナの一方の端部近傍でリング状溝を構成しているので、従来構造の取付金物を構成しており、二重ライナ支持用のリングと嵌合することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、内側円筒ライナの端部には軸方向にスリットが複数条設けられ、このスリットの一部を覆うシールプレートが内側円筒ライナの外面に取付けられている。これにより内側円筒ライナの半径方向の伸びに対する拘束を緩和することができる。またシールプレートによりスリットからの冷却空気の漏れを防止する。
【0015】
請求項4の発明によれば、外側円筒ライナの端部には軸方向にスリットが設けられ、該スリットは短円筒ライナで覆われているので、外側円筒ライナの半径方向の伸びに対する拘束を緩和することができる。このスリットが短円筒ライナで覆われているので、冷却空気の漏れを防止する。
【0016】
請求項5の発明によれば、覆い円筒ライナは軸方向にスリットが複数条設けられ、短円筒ライナは円周方向で複数に分割されているので、覆い円筒ライナと短円筒ライナの半径方向の伸びに対する拘束は緩和され、また、この分割位置と覆い円筒ライナのスリット位置は互いにずれているので、冷却空気の漏れを防止する。
【0017】
請求項6の発明によれば、端部ライナは段付円筒状に構成されているので、内側円筒ライナおよび短円筒ライナとの接触面積が大きくとれ、スポット溶接などでの接合が容易になる。また、円周方向で複数に分割されているので、端部ライナの半径方向の伸びに対し拘束を緩和する。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。なお各図面において共通する部分には同一の符号を用いる。
図1は本実施例の二重ライナ端部構造を示す断面図である。本図は二重ライナ端部構造以外は図6と同一である。すなわち、タービン排気部の二重ライナの一例としてガイドベーン近傍の二重ライナの構造を示す。二重ライナは内側円筒ライナ15と外側円筒ライナ20から構成され、後部はピン9で固定され、前部は前部支持ケース10に設けられた支持リング11により軸方向に摺動可能に支持されている。
【0019】
シールプレート16は内側円筒ライナ15のスリットの一部を覆うために設けられている。端部ライナ17は段付円筒を円周方向に複数に分割した構造となっており外側ライナ20と同じ外径を有している。短円筒ライナ18は端部ライナ17の外周に円周方向に分割して取付けられている。端部ライナ17と短円筒ライナ18はリング状の溝を構成し前部支持ケース10に設けられた支持リング11と軸方向に摺動可能に嵌合する。覆い円筒ライナ19は短円筒ライナ18を覆い、外側円筒ライナ20と共に短円筒ライナ18を摺動可能に挟んだ構造となっている。
【0020】
図2は内側円筒ライナ15とシールプレート16を示し、(A)は円周方向の展開図、(B)は断面図を示す。内側円筒ライナ15には軸方向にスリット15aが設けられ、半径方向の熱膨張に対する拘束を緩和する。スリットの終端は円形とし応力集中を緩和する。内側円筒ライナ15の端部には多数の排気穴21が設けられ冷却空気を排出する。シールプレート16は2本のスリット15aにまたがりそれらの約半分の長さをシールする。シールされないスリット15aの部分は排気穴21と共に冷却空気を排出する。シールプレート16はその中央にスリット16aを有し内側円筒ライナ15の半径方向の伸びを拘束しないようにしている。シールプレート16は内側円筒ライナ15に+で示す位置でスポット溶接されている。
【0021】
図3は端部ライナ17と外側円筒ライナ20を示し、(A)は円周方向の展開図、(B)は断面図を示す。端部ライナ17は段付円筒を円周方向に分割した構造で、内側円筒ライナ15の端部の外周に沿って設けられ、分割位置は内側円筒ライナのスリット15aの位置と同じくしている。+で示す位置で内側円筒ライナ15にスポット溶接されている。端部ライナ17の外径は外側円筒ライナ20の外径と同じとなっており、外側円筒ライナ20の端部にはスリット20aを有し外側円筒ライナ20の半径方向の伸びを拘束しないようにしている。
【0022】
図4は覆い円筒ライナ19と短円筒ライナ18を示し、(A)は円周方向の展開図、(B)は断面図を示す。短円筒ライナ18は円周方向に分割され、端部ライナ17の外周部とスポット溶接で接合されている。覆い円筒ライナ19は外側円筒ライナ20と共に短円筒ライナ18を挟んで摺動可能な構造としている。覆い円筒ライナ19は軸方向にスリット19a有し、その位置は短円筒ライナ18の分割位置18aの中間位置としており、外側円筒ライナ20に+で示す位置でスポット溶接されている。また、端部ライナ17と短円筒ライナ18とはリング状溝22を構成し、支持リング11と軸方向に摺動可能に嵌合する。
【0023】
本実施例はタービン排気部にガイドベーンを設けた場合の二重ライナの端部構造について説明したが、ガスタービンおよびジェットエンジンをはじめ各種高温燃焼装置で、二重ライナを用いるところには適用可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は二重ライナの端部構造の鍛造製取付金物を板材で構成し、さらに、内側ライナと外側ライナの温度差によって生じる熱応力を大幅に軽減する構造としている。また熱応力を大幅に軽減すると共に冷却空気のシール性にも優れ、製作容易な構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の二重ライナ端部構造を示す断面図である。
【図2】内側円筒ライナ15とシールプレート16を示し、(A)は円周方向の展開図、(B)は断面図を示す。
【図3】端部ライナ17と外側円筒ライナ20を示し、(A)は円周方向の展開図、(B)は断面図を示す。
【図4】覆い円筒ライナ19と短円筒ライナ18を示し、(A)は円周方向の展開図、(B)は断面図を示す。
【図5】ジェットエンジンのテスト機の断面の一例を示す図である。
【図6】鍛造製取付金物を用いた二重ライナの構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 ジェットエンジン
2 圧縮機
3 燃焼室
4 高圧タービン
5 ガイドベーン
9 ピン
10 前部支持ケース
11 支持リング
12 取付金物
13 支持ケース
15 内側円筒ライナ
16 シールプレート
17 端部ライナ
18 短円筒ライナ
19 覆い円筒ライナ
20 外側円筒ライナ
21 排気穴
22 リング状溝
15a,16a,18a,20a スリット
17a,19a 分割位置
Claims (6)
- 内側円筒ライナと、該内側円筒ライナの端部より所定長さ軸方向に設けられ内側円筒ライナの外周と内径で接合し所定の外径を有する端部ライナと、一方の端部が内側円筒ライナの端部とほぼ同じ位置にあり前記端部ライナの外周と接合し前記一方の端部より軸方向で内側円筒ライナの存在する側へ所定距離離れて他方の端部を有する短円筒ライナと、該短円筒ライナの他方の端部側で外周が軸方向に所定長さ短円筒ライナの内周と嵌合して配置された外側円筒ライナと、前記短円筒ライナの外周と嵌合し一方の端部が内側円筒ライナの端部とほぼ同じ位置で他方の端部が前記外側円筒ライナに固着され外側円筒ライナと共に短円筒ライナの他方の端部側を軸方向に摺動自在に挟んでいる覆い円筒ライナとを備えたことを特徴とする二重ライナの端部構造。
- 前記内側円筒ライナの端部近傍と前記端部ライナと前記短円筒ライナの一方の端部近傍で構成されるリング状溝に二重ライナ支持用のリングが嵌合することを特徴とする請求項1記載の二重ライナの端部構造。
- 前記内側円筒ライナの端部には軸方向にスリットが複数条設けられ該スリットの一部を覆うシールプレートが内側円筒ライナの外面に取付けられていることを特徴とする請求項1記載の二重ライナの端部構造。
- 前記外側円筒ライナの端部には軸方向にスリットが設けられ、該スリットは前記短円筒ライナで覆われていることを特徴とする請求項1記載の二重ライナの端部構造。
- 前記覆い円筒ライナは軸方向にスリットが複数条設けられ、前記短円筒ライナは円周方向で複数に分割されており、この分割位置と覆い円筒ライナのスリット位置は互いにずれていることを特徴とする請求項1記載の二重ライナの端部構造。
- 前記端部ライナは前記内側円筒ライナの外径とほぼ同一の内径の第1円筒と前記外側円筒ライナの外径とほぼ同一の外径の第2円筒と該第1円筒および第2円筒をつなぐ端板により段付円筒状に構成され、円周方向で複数に分割されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の二重ライナの端部構造。
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JP15311795A JP3733576B2 (ja) | 1995-06-20 | 1995-06-20 | 二重ライナの端部構造 |
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JPH094846A JPH094846A (ja) | 1997-01-10 |
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JP15311795A Expired - Lifetime JP3733576B2 (ja) | 1995-06-20 | 1995-06-20 | 二重ライナの端部構造 |
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Families Citing this family (1)
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FR2897143B1 (fr) * | 2006-02-08 | 2012-10-05 | Snecma | Chambre de combustion d'une turbomachine |
-
1995
- 1995-06-20 JP JP15311795A patent/JP3733576B2/ja not_active Expired - Lifetime
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