JP3732890B2 - フエーズドアレイ型ドップラー風速計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気汚染の防止や、航空機の航行の障害となる乱気流の検出などを目的として、上空の風速や風向を測定するのに利用されるドップラー風速計に関するものであり、特に、音波や電波の送受信方向を高速で変更できるフエーズドアレイ型のドップラー風速計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スモッグなどの大気汚染の発生を予測したり防止したりするには、まず、上空の風速・風向などのデータが必要になる。このようなデータを収集することなどを目的として、ドップラー風速計が開発されている。このドップラー風速計は、音波や電波を上空に向けて放射し、水蒸気や汚染物質の含有率の差に起因する大気の組成の揺らぎや、温度差などに起因する大気の密度の揺らぎなど大気の不均一な箇所で発生する微弱な反射波を受信し、この受信した反射波に含まれる周波数のドップラーシフト量からこの反射波を生じさせた媒体の不均一箇所の移動速度、すなわちその箇所の風速・風向を検出するように構成されている。
【0003】
音波を利用する最新式のドップラー測定装置(ソーダー)として、フエーズドアレイ式のビーム走査型の送受波器を使用してものが知られている。このフエーズドアレイ式の送受波器では多数の電気音響変換素子(トランスデューサ)が二次元的に配列され、これらの中から特定の方向に配列されている一群のものが選択される。そして、選択された一群の素子に対してその配列方向に一定量ずつ位相のずれた信号が順次供給される。各素子から放射されたビームは、それぞれの位相が揃う等位相面と直交する方向、すなわち、真上(天頂方向)から任意の角度だけ傾いた方向に放射される。このフエーズドアレイ式の送受波器を使用するドップラーソーダーでは、通常、天頂方向と、天頂方向から傾いた水平面内の直交二方向(各正負方向計四方向)にビームを放射する5ビーム法が採用される。
【0004】
すなわち、図3に示すように、送受波器の位置を原点Oとし、鉛直線Zと水平面XーYとから成る直交座標(x,y,z)を想定する。高度Hにおける上下方向の風速(風速のz軸成分)Vz(H)を計測するために、周波数foの音波が真上に放射される。この放射された音波の一部は高さHの上空において散乱に近いような状態で多くの方向に反射され、これらの反射波のうち真下に向けて反射された音波が送受波器で受信される。
【0005】
この受信された反射波の周波数foからのシフト量δfzが検出され、この検出値から高度Hにおける風速のZ成分が次式に従って算定される。
Vz(H)=(c/2)(δfz/fo)
ここで、cは空気中の音波の伝播速度である。高度Hにおける風速のx成分Vx(H)を計測するために、周波数foの音波がX軸方向にZ軸からαxだけ傾けて放射される。この放射された音波の一部は高さHの上空において種々の方向に反射され、これらの反射波のうち原点Oに向けて伝播してきた音波が送受波器で受信され、時間軸上で抽出される。
【0006】
この受信された反射波の周波数foからのシフト量δfxが検出され、この検出値から高度Hにおける風速のX成分が次式に従って算定される。
Vx(H) =−(c/2 sinαx)(δfx/fo)
風速のY成分についてもX軸の場合と同様にして算定される。
Vy(H) =−(c/2 sinαy )(δfy/fo)
さらに、同一高さの水平面内の風速の分布を検出するために、天頂角からの傾きが等しくかつ水平面に投影した送受信方向が正反対の2方向x軸の正負それぞれの方向やy軸の正負それぞれの方向について音波の送受信とドップラー周波数の検出が行われる。
【0007】
風速が同一の場合、ドップラー周波数は音波の周波数に比例して高くなるので検出精度の点からは、音波の周波数をなるべく高くすること、例えば、超音波の帯域まで高くすることが望ましい。しかしながら、音波の周波数が高くなるにつれてその伝播損失が増加するため、遠方からの反射波の検出が困難になり測定範囲が狭まってしまう。この測定範囲の点から、従来は、2KHz 程度の周波数の音波が利用されてきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、送受信対象の音波の周波数が2KHz の可聴周波数帯に存在するため、装置周辺で発せられる様々の騒音に含まれる2KHz 近辺の成分が反射波の受信信号中に雑音として混入し、測定精度を低下させるという問題がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決する本発明のフエーズドアレイ型ドップラー風速計は、天頂方向となす角度がほぼ等しくかつ水平面に投影した送受信方向がほぼ正反対の2方向について前記受信信号を得る送受波手段と、各受信信号どうしの減算を行って雑音成分を除去したのちドップラーシフト量の検出を行うドップラーシフト量検出手段とを備えている。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例のドップラー風速計の構成を示す機能ブロック図であり1はフエーズドアレイ型の送受波器、2は送信部、3はタイミング制御部、4は前置増幅部、5はA/D変換部、6は標本区間設定部、7は高速フーリエ変換(FFT)部、8はディジタルプロセッサ、9は表示部、10はキー入力部である。
【0011】
送信部2は、タイミング制御部3から送信指令パルスに同期して、2KHz の周波数のバースト状の送信信号を送受波器1に出力する。このバースト状の送信信号は、フエーズドアレイ型の送受波器1においてバースト状の2KHz の超音波に変換され、上空に放射される。この音波の送信方向は、ディジタル・プロセッサ8からタイミング制御部3を介して送受波器1に指定される。
【0012】
上空の空気の密度や組成の揺らぎなどに起因して生じた2KHz の音波の反射波が、送波器と受波器とを兼ねた送受波器1で受信され、前置増幅部4で増幅されたのちA/D変換部5に供給される。A/D変換部5では、受信信号が一定周波数、例えば、10KHz のサンプリング周波数でサンプリングされ、ディジタル信号に変換される。
【0013】
標本区間設定部6は、A/D変換部5から出力されたディジタル信号に検出対象の高度と周波数分解能とに応じた標本区間を設定し、高速フーリエ変換部7に供給する。高速フーリエ変換部7は、上記設定された標本区間内のサンプリング点群を対象に高速フーリエ変換を行って、周波数スペクトルに変換し、この変換スペクトルをディジタルプロセッサ8に転送する。
【0014】
ディジタルプロセッサ11は、タイミング制御部3を介して送受波器1に指令を発することにより、天頂方向となす角度が等しくかつ水平面に投影した送受信方向が正反対の2方向、すなわち±x軸方向や±y軸方向について、連続してデータを収集させる。ディジタルプロセッサ11は、x軸やy軸の正負それぞれの方向に音波を送受信して得られた反射波の周波数スペクトルを高速フーリエ変換部7から受け取ると、それぞれについて直ちにドップラーシフト量の検出を行うのではなく、正負それぞれの方向について得られた周波数スペクトルどうしの減算を行って雑音成分を除去したのち、これについてドップラーシフト量の検出を行う。
【0015】
すなわち、図2の(A)に例示するように、ある高度についてx軸、あるいはy軸の正方向に音波を放射して得た反射波の周波数スペクトルの包絡線をα+ とし、同一の高度について負方向に音波を放射した得た反射波の周波数スペクトルの包絡線α- とする。同一高度において風速が空間的にも時間的にも不変であれば、α+ とα- とは、送受信音波の周波数foの周りに対称に分布することになる。これは、ある方向、例えば正方向で逆風が吹いていればドップラー周波数は周波数foよりも風速に比例したぶんだけ高くなり、その逆の負方向には同一速度の追い風が吹くことになるので、ドップラー周波数は周波数foよりも同一量だけ低くなるからである。
【0016】
しかしながら、実際には、同一高度であっても風速は空間的にも時間的にも変動するため、包絡線α+ とα- とは、送受信音波の周波数foの周りに対称な分布とはならない。さらに、図2の例では、正負両方向について得られた反射波の周波数スペクトルの包絡線α+ とα- に周波数f+ ’の雑音が含まれている。ディジタルプロセッサ8は、包絡線α+ から包絡線α- を減算することにより、図2の(B)に実線で示すような雑音が除去された包絡線(α+ −α- )を得、この包絡線の正負それぞれのピーク位置の周波数f+ 、f- を正負それぞれの方向について得られたドップラーシフトを受けた周波数として検出する。あるいは、点線で示すように、負極性の部分については極性を反転させてからピーク位置の周波数を検出してもよい。
【0017】
ディジタルプロセッサ8は、検出したドップラーシフト量(f+ −fo)、(f- −fo)から風速を算定し、表示部12に表示する。フエーズドアレイ型の送受波器では、音波の放射方向の反転を極めて短時間で行えるため、持続時間が比較的短い雑音であっても、正負それぞれの方向について得られた反射波の双方に含まれる確率が高まる。ディジタルプロセッサ11は、上記一連の制御とデータの処理をキー入力部13からキー入力される指令に従って実行する。
【0018】
以上詳細に説明したように、本発明のフエーズドアレイ型ドップラー風速計によれば、天頂角からの傾きが等しくかつ水平面に投影した送受信方向が正反対の2方向について受信信号を得、各受信信号どうしの減算を行って雑音成分を除去したのちドップラーシフト量の検出を行う構成であるから、装置周辺で発せられれ反射波の受信信号中に混入してきた信号帯域内の雑音を除去し、測定精度の低下を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のフエーズドアレイ型ドップラー風速計の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の原理を説明するための特性図である。
【図3】本発明の動作を説明するための概念図である。
【符号の説明】
1 送受波器
2 送信部
3 タイミング制御部
5 A/D変換部
7 高速フーリエ変換部
8 ディジタルプロセッサ
Claims (3)
- フエーズドアレイ型の送受波器から空中に音波を送信し、その反射波を受信し、この受信信号の周波数のドップラーシフト量からこの反射波を生じさせた物質又は媒体の速度を検出するドップラー風速計であって、
天頂方向となす角度がほぼ等しくかつ水平面に投影した送受波方向がほぼ正反対の2方向について前記受信信号を得る送受波手段と、
各受信信号どうしの減算を行って雑音成分を除去したのちドップラーシフト量の検出を行うドップラーシフト量検出手段とを備えたことを特徴とするフエーズドアレイ型のドップラー風速計。 - 請求項1において、
前記ドップラーシフト量検出手段は、前記各受信信号のそれぞれを周波数スペクトルに変換し、これら周波数スペクトルどうしの減算を行って雑音を除去したのち、この周波数スペクトルの包絡線のピーク位置の周波数から前記ドップラーシフト量の検出を行う手段を備えたことを特徴とするフエーズドアレイ型のドップラー風速計。 - 請求項1乃至2のいずれかにおいて、
前記空中に送信される音波は可聴周波数帯の音波であることを特徴とするフエーズドアレイ型のドップラー風速計。
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- 1996-04-08 JP JP11123996A patent/JP3732890B2/ja not_active Expired - Fee Related
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