JP3732775B2 - 液晶表示装置及び液晶表示装置の駆動方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置に係り、特に高画質な動画を表示することができる液晶表示装置とその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置の高性能化が進み、従来、陰極線管(以下、CRT)が主流であったテレビ分野に普及しはじめてきている。
【0003】
しかし、液晶表示装置は画像表示方法の時間軸特性がCRTとは異なるため、動画像を表示した場合に、以下に述べるような画像がぼける等の画質劣化を生じるという難点があった。
【0004】
画素毎に選択スイッチとしてトランジスタを用いた液晶表示装置は、表示した画像が1フレーム期間保持される表示方法(以下、ホールド型表示)であるのに対し、CRTでは、表示された画素は、その画素の選択期間の後、すぐに暗くなるような表示方法(以下、インパルス型表示)が用いられている。観察者が動画像の動体を追従して観察する場合(観察者の眼球運動が随従運動の場合)、画像が60Hzで書き換えられるようなとびとびの画像であっても、眼球はなめらかに動体を追従していく。インパルス型表示の場合、60Hzで書き換えられる動画のフレーム間は黒が表示されている。そのため、観察者の眼球がなめらかに動体を追従している場合でも、画像が表示されている瞬間以外は、観察者には画像が表示されておらず、動画の1フレームがそれぞれ独立した画像として観察者に提示されることから、観察者にやはっきりとした動画として認識される。
【0005】
一方、ホールド型表示の場合、表示された動画の1フレームは、1フレーム期間中保持された静止画として観察者に提示される。そのため、前フレームから次フレームにかけて観察者の眼球がなめらかに動体を追従しているにもかかわらず、表示されている画像は1フレーム期間静止していることなり、観察者の網膜上に動体の速度に応じた、ずれた画像が提示されることとなる。そして観察者は、それらのずれた画像が重ね合わされた二重画像を知覚するため、動画がぼけているような印象を受けることになる。このような二重画像は、動画の動きが高速になるほど、観察者の網膜上に提示される画像のずれが大きくなるため、観察者はよりぼけた印象を受けることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
こうした問題を解決するために、1フレーム期間中に画像表示を行った後に黒を表示する方法、バックライトを点滅させる方法等が提案されている。このうち、黒を表示する方法は特開平11−109921号公報等に開示されているが、黒表示によりコントラストが半減してしまい、また、黒表示期間中もバックライトが点灯しているため、消費電力が無駄になるという問題点がある。また、バックライトを点滅させる方法では、バックライトの発光タイミングは液晶の応答が完了してからが望ましく、そのため、応答速度が比較的遅い液晶材料を使用した場合は、走査時間を短くする、発光期間を短くする等の改良が必要となる。しかし、前者は回路にかかる負担が大きくなり、後者は十分な輝度が得られなくなるという問題点がある。
【0007】
上記バックライトを点滅させる方法は、液晶表示装置に黒を表示する方法に比較して、コントラスト、消費電力の点で有利である。しかし、応答速度が速い液晶材料を使用しないと、回路構成の大規模な変更や、十分な輝度が得られないという問題を生じることになる。
【0008】
本発明の目的は、バックライト点滅方式によりインパルス型表示を行う液晶表示装置において、応答速度が比較的遅い液晶材料を用いても、回路負担を増大させることなく、かつ十分な輝度が得られるようにした液晶表示装置及び液晶表示装置の駆動方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、画素毎に映像信号書き込み用のスイッチ素子を備えたアクティブマトリクス型の液晶パネルと、前記液晶パネルの駆動回路と、1フレーム期間において非発光期間と発光期間とを有し、前記液晶パネルの背面から光を照射するバックライト部と、映像信号を所定期間保持するフレームメモリと、nフレーム目の映像信号(nは整数)、前記フレームメモリにより1フレーム期間保持されたn−1フレーム目の映像信号、及び前記nフレーム目の映像信号の前記液晶パネルへの書き込みライン位置に基づいて、nフレーム目の液晶応答時刻が前記バックライト部の発光タイミングよりも遅くなる応答未達画素を抽出し、前記応答未達画素の1フレーム期間における表示輝度の合計が前記応答未達画素以外で同一階調レベルの画素の1フレーム期間における表示輝度の合計と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正する階調レベル補正部とを備えたことを特徴とする液晶表示装置である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記表示輝度の合計が、透過率の時間積分値であることを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するため、請求項3の発明は、画素毎に映像信号書き込み用のスイッチ素子を備えたアクティブマトリクス型の液晶パネルと、前記液晶パネルの駆動回路と、1フレーム期間において非発光期間と発光期間とを有し、水平ストライプ状に複数の領域に分割され、前記液晶パネルの背面から光を照射するバックライト部と、映像信号を所定期間保持するフレームメモリと、前記領域毎に、nフレーム目の映像信号(nは整数)と、n−1フレーム目の前記フレームメモリにより1フレーム期間保持された映像信号と、前記nフレーム目の映像信号の書き込みライン位置に基づいて、nフレーム目の液晶応答時刻が各前記領域の発光タイミングより遅くなる応答未達画素を抽出し、前記応答未達画素の前記発光期間における表示輝度の合計が、前記応答未達画素以外で同一階調レベルの画素の前記発光期間における表示輝度の合計と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正する階調レベル補正部とを備えたことを特徴とする液晶表示装置である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3において、前記表示輝度の合計が透過率の時間積分値であることを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、請求項5の発明は、画素毎に映像信号書き込み用のスイッチ素子を備えたアクティブマトリクス型の液晶パネルと、前記液晶パネルの駆動回路と、1フレーム期間において、非発光期間と発光期間とを有し、前記液晶パネルの背面から光を照射するバックライト部とを備え、nフレーム目の映像信号(nは整数)、1フレーム期間の遅延をもって入力されるn−1フレーム目の映像信号、及び前記nフレーム目の映像信号の前記液晶パネルへの書き込みライン位置に基づいて、nフレーム目に液晶応答時刻が前記バックライト部の発光タイミングよりも遅くなる応答未達画素を抽出し、前記応答未達画素の1フレーム期間における表示輝度の合計が、前記応答未達画素以外で同一階調レベルの画素の1フレーム期間における表示輝度の合計と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法である。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5において、前記表示輝度の合計が、透過率の時間積分値であることを特徴とする。
【0015】
さらに、上記目的を達成するため、請求項7の発明は、前記バックライト部は、水平ストライプ状に複数の領域に分割され、前記領域毎に非発光期間と発光期間とを有しており、前記領域毎に、nフレーム目の映像信号(nは整数)、1フレーム期間の遅延をもって入力されるn−1フレーム目の映像信号、及び前記nフレーム目の映像信号の書き込みライン位置に基づいて、各前記領域においてnフレーム目の液晶応答時刻が発光タイミングより遅くなる応答未達画素を抽出し、前記応答未達画素の前記発光期間における表示輝度の合計が、前記応答未達画素以外で同一の前記領域に含まれる同一階調レベルの画素の前記発光期間における表示輝度の合計と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法である。
【0016】
請求項8の発明は、請求項7において、前記表示輝度の合計が、透過率の時間積分値であることを特徴とする。
【0017】
好ましい形態として、前記バックライト部は、発光、非発光が制御可能な光源ランプと、前記光源ランプから照射された光を前記液晶パネルを背面に導く導光体とから構成される。
【0018】
好ましい形態として、前記バックライト部は、光源ランプと、前記光源ランプから照射された光を前記液晶パネルを背面に導く導光体と、前記液晶パネルと前記導光体との間に配置され、前記光源ランプで発生した光の前記液晶パネル側への透過、非透過を制御可能なシャッタ素子とから構成される。
【0019】
好ましい形態として、前記バックライト部は、水平ストライプ状に複数分割され、その分割された領域毎に非発光、発光が制御可能な光源ランプと、前記光源ランプの分割された領域毎に設けられ、前記分割された領域から照射された光を前記液晶パネルを背面に導く導光体とから構成される。
【0020】
好ましい形態として、前記バックライト部は、水平ストライプ状に複数分割され、その分割された領域毎に非発光、発光が制御可能な光源ランプと、前記光源ランプの分割された領域毎に設けられ、前記分割された領域から照射された光を前記液晶パネルの背面に導く導光体と、前記液晶パネルと前記導光体との間に配置され、前記光源ランプで発生した光の前記液晶パネル側への透過、非透過を前記分割された領域毎に制御可能なシャッタ素子とから構成される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をアクティブマトリクス型の液晶表示装置に適用した場合の実施形態について説明する。
【0022】
[実施形態1]
図2は、実施形態1に係わる液晶表示装置の回路構成図である。液晶表示装置100は、液晶パネル110と、これを駆動するための走査線駆動回路120及び信号線駆動回路130と、液晶パネル110の背面から光を照射するバックライト部140と、フレームメモリ150及び階調レベル補正部160とを備えている。
【0023】
液晶パネル110は、アクティブマトリクス型のものであり、図2の部分拡大図である図3に示すように、アレイ基板18上に複数本の信号線11及びこれと交差する複数本の走査線12が図示しない絶縁膜を介してマトリクス状に配置されており、両線の各交差部には画素10が形成されている。信号線11及び走査線12の端部は、図2の信号線駆動回路130及び走査線駆動回路120にそれぞれ接続されている。
【0024】
画素10において、画素スイッチ素子14は映像信号書き込み用のスイッチ素子であり、そのゲートは1水平ライン毎に共通に走査線12に接続され、ソースは1垂直ライン毎に信号線11に共通に接続されている。さらに、ドレインは画素電極13に接続されるとともに、この画素電極13と電気的に並列に配置された補助容量17に接続されている。
【0025】
画素電極13はアレイ基板18上に形成され、この画素電極13と電気的に相対する対向電極15は、図示しない対向基板上に形成されている。対向電極15には、図示しない対向電圧発生回路から所定の対向電圧が与えられている。また画素電極13と対向電極15との間には液晶層16が保持され、アレイ基板18と前記対向基板の周囲は図示しないシール材により封止されている。
【0026】
走査線駆動回路120は、図示しないシフトレジスタ、レベルシフタ及びバッファ回路等から構成されている。この走査線駆動回路120は、後述する階調レベル補正部160から走査線駆動信号として供給される垂直スタート信号や垂直クロック信号に基づいて、各走査線12に行選択信号を出力する。
【0027】
信号線駆動回路130は、図示しないアナログスイッチ、シフトレジスタ、サンプルホールド回路、ビデオバス等から構成されている。この信号線駆動回路130には、階調レベル補正部160から信号線駆動信号として水平スタート信号及び水平クロック信号が供給されるとともに、後述する強調映像信号を含む映像信号が供給されている。
【0028】
バックライト部140は、光源ランプ141と導光体150により構成されている。光源ランプ141は、液晶パネル110の背面に照射する光を発生するものであり、高速に点滅可能な、例えば発光ダイオード(LED)を用いることができる。光源ランプ141の発光タイミングは、階調レベル補正部160から与えられる光源点灯制御信号により制御されている。導光体142は、光源ランプ141から照射された光を液晶パネル110の背面側に導くためのものであり、例えばアクリル、ポリカーボネート等を用いることができる。
【0029】
本実施形態におけるバックライト部140は分割されておらず、全面一括点灯の光源として構成されている。なお、バックライト点滅方式では、バックライト部140は常時発光しておらず、1フレーム期間において、非発光期間と発光期間とを有している。
【0030】
ここで、液晶パネル110とバックライト部140の動作について説明する。図4は、液晶パネル110への映像信号の書き込みとバックライト部140の発光タイミングの基本的な関係を示すタイムチャートである。
【0031】
階調レベル補正部160から信号線駆動回路130に対しては、例えば1/60sec.を1フレーム期間とすると、その4倍のフレームレートである1/240sec.で映像信号が入力される。そして、信号線駆動回路130から液晶パネル110に対しては、1/240sec.の垂直走査期間(書き込み期間)で映像信号が書き込まれる。そして、液晶パネル110の最下ライン(解像度がVGAであれば、480本目)への映像信号の書き込み終了後、液晶応答期間を経て、バックライト部140が発光する。この発光期間において、先に書き込まれた映像信号が液晶パネル110上に表示される。
【0032】
例えば、液晶パネル110に1/240sec.で映像信号を書き込み後、さらに1/240sec.の液晶応答期間後にバックライト部140を発光させた場合、バックライト部140の発光期間は1/60sec.の1フレーム期間に対し50%の期間となる。以後、これを表示デューティ50%という。
【0033】
フレームメモリ150は、1フレーム分の映像信号を保持するメモリ回路であり、図示しないコントローラICから送られてきた映像信号を1フレーム期間保持した後に階調レベル補正部160に出力する。このため、階調レベル補正部160には、nフレーム目(nは整数)の映像信号とn−1フレーム目の映像信号が同時に入力される。
【0034】
階調レベル補正部160は、nフレーム目の映像信号、フレームメモリ150により1フレーム期間保持されたn−1フレーム目の映像信号、及びnフレーム目の映像信号の液晶パネル110への書き込みライン位置に基づいて、nフレーム目の液晶応答時刻がバックライト部140の発光タイミングよりも遅くなる画素を応答未達画素として抽出し、この応答未達画素の1フレーム期間における表示輝度の合計が本来の表示輝度の合計と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正する。なお、階調レベル補正部160は、図示しないコントローラICから送られてくる信号線駆動信号に含まれる水平スタート信号をカウントすることで、現在の書き込みライン位置を知ることができる。また、階調レベルの補正された映像信号(以下、強調映像信号という)は、階調レベルの補正を行わない他の映像信号とともに信号線駆動回路130に出力される。
【0035】
図示しないコントローラICから階調レベル補正部160に送られてくる信号線駆動信号、走査線駆動信号及び光源点灯制御信号は、強調映像信号を含む映像信号と同期したタイミングで各部に出力される。なお、階調レベル補正部160は図示しないコントローラICに含まれていてもよい。
【0036】
上記のように構成された液晶表示装置100の動作を簡単に説明する。まず、走査線駆動回路120から走査線12に行選択信号を出力して、各走査線12を1水平走査期間毎に順にオンレベルとし、これと同期して信号線駆動回路130から信号線11へ映像信号を出力する。すると、オンレベルの走査線12に接続する画素スイッチ素子14により信号線11と画素電極13との間が導通して、信号線11に出力された映像信号は画素スイッチ素子14を通じて画素電極13に書き込まれる。この映像信号による信号電圧は液晶層16と補助容量17に電荷として蓄積される。その後、次のフレーム期間までの間は信号線11と画素電極13との間が非導通となるので、蓄積された電荷に応じた階調電圧がフレーム期間の間(例えば1/60sec.)、液晶層16に掛かることになる。
【0037】
次に、階調レベル補正部160において、映像信号の階調レベルを補正する場合の動作について説明する。ここでは、液晶パネル110の1フレーム期間を1/60sec.とし、n−1フレーム目からnフレーム目にかけて同一画素の階調レベルが20階調から200階調に変化する場合について説明する。
【0038】
図5は、20階調から200階調に変化する画素への映像信号の書き込みとバックライト部140の発光タイミングの関係を示すタイムチャートである。
【0039】
液晶パネルに1/240sec.で映像信号書き込み、表示デューティが50%の場合、液晶パネル110の最下ラインを書き込み後、バックライト部140が発光するまでの期間は、1/240sec.(約4.2ms)となる。一方、20階調から200階調に変化する画素の液晶応答に6msかかるとすると、20階調から200階調に変化する画素のn−1フレーム目とnフレーム目の表示輝度は、その画素の画面上での位置により異なったものとなる。すなわち、図5に示すように、画面上部約2/3の領域では液晶応答が完了した後にバックライト部140が発光するが、画面下部約1/3の領域(図中Aの範囲で示す領域)では、液晶応答が完了する前にバックライト部140が発光する。そのため、図6に示すように、20階調の背景に対して200階調の箱形画像が矢印方向に横スクロールしているような表示画像の場合、箱形画像の左側下部約1/3の領域Bでは、1フレームのスクロール分に相当する範囲Cにおいて、その他の200階調の領域に比べて表示輝度が低くなり、観察者には箱形画像の左側下部に二重像(ゴースト)として知覚されることになる。
【0040】
これを解決するには、応答速度が速い液晶材料を使用すればよいが、このような液晶材料は開発段階にあり、また高価であることから、製品レベルでは未だ使用できない状況にある。したがって、これまでのバックライト点滅方式においては、応答速度が比較的遅い液晶材料を使用しなければならず、走査時間を短くしたり、発光期間を短くする等の対策をとらないと、先の例に挙げたように階調が大きく変化する画素では、液晶応答が遅いことにより部分的に二重像が発生するという問題が生じることになる。しかしながら、走査時間を短くするために走査線駆動回路の駆動周波数を上げると回路負担が増大し、また発光期間を短くすると表示輝度が低下することになる。
【0041】
次に、階調レベル補正部160により映像信号の階調レベルを補正した場合の実施形態について説明する。
【0042】
階調レベル補正部160では、nフレーム目の映像信号の画像と、フレームメモリ150により1フレーム期間保持されたn−1フレーム目の映像信号の画像を1画素毎に比較して、階調レベルの差を求めるとともに、その画素の液晶パネル110への書き込みライン位置から、前記画素に書き込まれる映像信号について階調レベルの補正が必要かどうかを判別する。この作業により、nフレーム目の映像信号において、液晶応答時刻がバックライト部140の発光タイミングより遅くなる画素が抽出される(以下、応答未達画素という)。そして、この応答未達画素の1フレーム期間における表示輝度の合計が本来の表示輝度の合計と等しくなるように階調レベルを補正する。以下、階調レベルの補正について、図1を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0043】
図1(a)〜(c)は、図6に示すような画像を表示した際の液晶応答とバックライト部140の発光タイミングの関係を示すタイムチャートである。ただし、図1(a)は、図6に示す箱形画像の最上ラインでの液晶応答を示し、図1(b)及び(c)は、図6に示す箱形画像の最下ラインでの液晶応答を示している。
【0044】
図1(a)に示すように、画面上部約2/3の領域では、すべての液晶応答が完了した後にバックライト部140が発光するため、本来の200階調の画像が表示される。一方、図1(b)に示すように、画面下部約1/3の領域において、20階調から200階調に変化する画素では、液晶応答が完了する前にバックライト部140が発光するため、本来の200階調に比べて表示される画像の表示輝度は低くなる。
【0045】
階調レベル補正部160では、図1(b)のような補正が必要な応答未達画素について、その発光期間における透過率の時間積分値が、他の200階調の画素の発光期間における透過率の時間積分値と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正する。すなわち、図1(c)に太線で示すように、画面下部約1/3の液晶応答と発光期間で囲まれる範囲の面積(透過率の時間積分値)が、図1(a)に太線で示す、画面上部約2/3の液晶応答と発光期間で囲まれる範囲の面積(透過率の時間積分値)と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを例えば200から220に補正する。このような補正を書き込みライン位置に対応して行うことにより、画面下部約1/3の領域にある前記応答未達画素では、バックライト部140の発光期間における表示輝度の合計を、画面上部約2/3の領域にある同一階調レベルの画素における表示輝度の合計と等しくすることができる。このように、応答未達画素の1フレーム期間における表示輝度の合計が本来の表示輝度の合計と等しくなるように階調レベルを補正することにより、応答速度が比較的遅い液晶材料を使用した場合でも、走査時間を短くたり、発光期間を短くすることなしに、液晶応答が遅いことによる二重像の発生を防止することができる。
【0046】
上記実施形態では、20階調から200階調に変化する画素の階調レベルを補正する例について説明したが、200階調から20階調に変化する画素において、液晶応答が遅れることにより二重像が発生することもある。この場合は、図1(c)とは逆に映像信号の階調レベルを低くするような補正を行う。ただし、液晶の応答速度やその階調毎の分布は、液晶材料やセル構造等によって異なるため、どの領域の画素に、どの程度の補正を行うかは個々に設定する必要がある。
【0047】
階調レベル補正部160は、内部に図示しないROMを備えており、nフレーム目の映像信号、n−1フレーム目の映像信号及び書き込みライン位置に対して、適正な補正量が参照されるような3次元の配列データを保存している。この配列データは、nフレーム目の映像信号の階調及びn−1フレーム目の映像信号の階調が1階調毎に、また書き込みライン位置が1ライン毎に保存されていることが望ましいが、そのためには相当な容量のROMが必要となるため、コスト的に大きな負担となる。ROMの容量を小さくするためには、例えば参照する階調や書き込みライン位置を非線形量子化する方法がある。これは、補正量の変化が少ない階調やライン位置では、階調やライン位置を大きく間引きして保存し、補正量の変化が大きい階調やライン位置では、階調やライン位置の間引きを小さくして保存し、間引きされた間は、線形補間を行う方法である。このような方法を用いることにより、ROMデータを小さくすることができる。また、上記のようなROMを使わず、液晶応答を関数で近似することにより、この近似関数より補正量を決定する方法も考えられる。これは、例えば液晶応答をExponential近似し、書き込みライン位置に応じたバックライト部の発光期間に対して積分を行うことにより、液晶の透過率を予測し、補正量を算出する方法である。この方法を行うことによりROMデータは不要となる。
【0048】
また、バックライトの点滅方法として、本実施形態では、光源そのものを点滅する方法について示したが、液晶パネルと全面一括常灯の光源との間に配置したシャッタ素子により、前記光源からの光を間欠的に透過させるようにしてもよい。例えば、図2と同等部分を同一符号で示す図7のように、液晶パネル110と導光体142との間にシャッタ素子としての液晶シャッタ143を設置し、階調レベル補正部160から供給される液晶シャッタ駆動信号により、液晶シャッタ143からの光の透過、非透過を制御することによっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
以上のように実施形態1では、バックライト点滅方式によりインパルス型表示を行う液晶表示装置において、応答速度が比較的遅い液晶材料を用いた場合でも、走査時間を短くしたり、発光期間を短くすることなしに、液晶応答が遅いことによる二重像の発生を防止することができる。したがって、本実施形態を適用したバックライト点滅方式による画像表示では、走査時間を短くするために走査線駆動回路の駆動周波数を上げて回路負担を増大させたり、また発光期間を短くするために表示輝度を低下させたりすることなしに、二重画像による画質劣化のない切れのある動画表示を行うことができる。
【0050】
[実施形態2]
次に、実施形態2として、バックライト部を分割発光可能な構成とした場合について説明する。
【0051】
図8は、実施形態2に係わる液晶表示装置の回路構成図である。この液晶表示装置200では、バックライト部が4分割されている。それ以外の構成は図2と同じであり、図2と同等部分を同一符号で表している。以下、共通部分の説明を省略し、相違点についてのみ説明する。なお、以下の説明では、バックライト部210の分割された発光領域を分割発光領域といい、この分割発光領域に対応する液晶パネル110の表示領域を分割画面領域という。
【0052】
バックライト部210は、水平ストライプ状に4つの領域に分割されており、各分割発光領域は、光源ランプ221,222,223,224と、導光体231,232,233,234により構成されている。各分割発光領域は、液晶パネル110への書き込み順に発光するように制御されている。例えば、解像度がVGAの画面では走査線数が480本となり、液晶パネル110の各分割画面領域に対応する最下ラインはそれぞれ120×n(nは1〜4の整数)目となるため、各分割画面領域は120×n目の最下ラインへの書き込みが終了した後、液晶応答時間を経て発光する。図9は、液晶パネル110への映像信号の書き込みとバックライト部210の発光タイミングの関係を示すタイムチャートである。実施形態1のような全面で発光するバックライト部140では、図4に示したように表示デューティ50%の場合、1/240sec.で映像信号を書き込み後、さらに1/240sec.の液晶応答期間後にバックライト部140が発光する。これに対して実施形態2のように分割発光するバックライト部210を用いた場合は、液晶パネル110への映像信号の書き込みを1フレーム期間とることができるため、走査時間を短くする必要がなく、走査線駆動回路の駆動周波数を下げることができる。また、液晶応答時間も図4に比べて長くすることができる。
【0053】
図9は、20階調から200階調に変化する画素への映像信号の書き込みとバックライト部210の発光タイミングの関係を示している。液晶パネルに1/60sec.で映像信号を書き込み、表示デューティが50%の場合、液晶パネル110の各分割画面領域に対応する最下ラインを書き込み後、バックライト部210の分割発光領域が発光するまでの期間は1/240sec.(約4.2ms)となる。一方、図10に示すように、20階調から200階調へ変化する画素の液晶応答に約6msかかるとすると、液晶パネル110の各分割画面領域の画面上部約2/3の領域では液晶応答が完了した後にバックライト部210の分割発光領域が発光するが、画面下部約1/3の画面領域(図中Dの範囲で示す領域)では、液晶応答が完了する前にバックライト部210の分割発光領域が発光することになる。そのため、図11に示すように、20階調の背景に対して200階調の箱形画像が矢印方向に横スクロールしているような表示画像の場合、液晶パネル110の各分割画面領域における左側下部約1/3の領域Eでは、1フレームのストロール分に相当する範囲Cにおいて、その他の200階調の領域に比べて表示輝度が低くなり、観察者には箱形画像の左側に二重像が縞状に知覚されることになる。これを防止するために、実施形態1と同様に、nフレーム目の映像信号の画像、フレームメモリ150により1フレーム期間保持されたn−1フレーム目の映像信号の画像、及び液晶パネル110への書き込みライン位置に基づいて、nフレーム目の映像信号のうち、液晶応答時刻がバックライト部210の各分割発光領域の発光タイミングより遅くなる画素を抽出し、この応答未達画素の1フレーム期間における表示輝度の合計が本来の表示輝度の合計と等しくなるように階調レベルを補正する。階調レベルを補正する手法は実施形態1と同じである。
【0054】
このように、応答未達画素の1フレーム期間における表示輝度の合計が本来の表示輝度の合計となるように階調レベルを補正することにより、応答速度が比較的遅い液晶材料を使用した場合であっても、走査時間を短くたり、発光期間を短くすることなしに、液晶応答が遅いことによる二重像の発生を防止することができる。また、本実施形態においても、図7のように液晶パネル110と導光体142との間に液晶シャッタ143を設置し、液晶シャッタ143の透過、非透過を分割画面領域毎に制御するようにしてもよい。このような構成とすることによっても、同様の効果を得ることができる。その他、階調レベルを補正する際に用いるデータやその保存形式などは実施形態1と同様の手法を適用することができる。
【0055】
以上、本発明に係わる液晶表示装置及び液晶表示装置の駆動方法に関する実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示された構成要件を適宜組み合わせることによって種々の発明が抽出され得る。例えば、開示された構成要件からいくつかの構成要素が削除されても、所定の効果が得られるものであれば発明として抽出され得る。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、バックライト点滅方式によりインパルス型表示を行う液晶表示装置において、応答速度が比較的遅い液晶材料を用いた場合においても、発光期間を短くするために表示輝度を低下させたり、走査時間を短くするために走査線駆動回路の駆動周波数を大幅に上げて回路負担を増大させたりすることなく、二重像等の画質劣化の無い切れのある動画を観察者に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液晶応答とバックライト部の発光タイミングの関係を示すタイムチャート。(a)は最上ライン。(b)は従来の最下ライン。(c)は実施形態1の最下ライン。
【図2】実施形態1に係わる液晶表示装置の回路構成図。
【図3】図2の部分拡大図。
【図4】液晶パネルへの映像信号の書き込みとバックライト部の発光タイミングの基本的な関係を示す実施形態1のタイムチャート。
【図5】20階調から200階調に変化する画素への映像信号の書き込みとバックライト部の発光タイミングの関係を示すタイムチャート。
【図6】20階調の背景に対して200階調の箱形画像が矢印方向に横スクロールしている表示画像を示す模式図。
【図7】液晶パネルと導光体との間に液晶シャッタを設置した液晶表示装置の回路構成図。
【図8】実施形態2に係わる液晶表示装置の回路構成図。
【図9】液晶パネルへの映像信号の書き込みとバックライト部の発光タイミングの関係を示す実施形態2のタイムチャート。
【図10】20階調から200階調に変化する画素への映像信号の書き込みとバックライト部の発光タイミングの関係を示す実施形態2のタイムチャート。
【図11】20階調の背景に対して200階調の箱形画像が矢印方向に横スクロールしている表示画像を示す実施形態2の模式図。
【符号の説明】
110…液晶パネル、120…走査線駆動回路、130…信号線駆動回路、140,210…バックライト部、141,221〜224…光源ランプ、142,231〜234…導光体、143…液晶シャッタ、150…フレームメモリ、160…階調レベル補正部
Claims (8)
- 画素毎に映像信号書き込み用のスイッチ素子を備えたアクティブマトリクス型の液晶パネルと、
前記液晶パネルの駆動回路と、
1フレーム期間において非発光期間及び発光期間を有し、前記液晶パネルの背面から光を照射するバックライト部と、
映像信号を所定期間保持するフレームメモリと、
nフレーム目の映像信号(nは整数)、前記フレームメモリにより1フレーム期間保持されたn−1フレーム目の映像信号、及び、前記nフレーム目の映像信号の前記液晶パネルへの書き込みライン位置に基づいて、nフレーム目の液晶応答時刻が前記バックライト部の発光タイミングよりも遅くなる応答未達画素を抽出し、前記応答未達画素の1フレーム期間における表示輝度の合計が前記応答未達画素以外で同一階調レベルの画素の1フレーム期間における表示輝度の合計と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正する階調レベル補正部と、
を備えたことを特徴とする液晶表示装置。 - 前記表示輝度の合計は、透過率の時間積分値であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
- 画素毎に映像信号書き込み用のスイッチ素子を備えたアクティブマトリクス型の液晶パネルと、
前記液晶パネルの駆動回路と、
1フレーム期間において非発光期間と発光期間とを有し、水平ストライプ状に複数の領域に分割され、前記液晶パネルの背面から光を照射するバックライト部と、
映像信号を所定期間保持するフレームメモリと、
前記領域毎に、nフレーム目の映像信号(nは整数)、前記フレームメモリにより1フレーム期間保持されたn−1フレーム目の映像信号、及び、前記nフレーム目の映像信号の書き込みライン位置に基づいて、nフレーム目の液晶応答時刻が各前記領域の発光タイミングより遅くなる応答未達画素を抽出し、前記応答未達画素の前記発光期間における表示輝度の合計が、前記応答未達画素以外で同一階調レベルの画素の前記発光期間における表示輝度の合計と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正する階調レベル補正部と、
を備えたことを特徴とする液晶表示装置。 - 前記表示輝度の合計は、透過率の時間積分値であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
- 画素毎に映像信号書き込み用のスイッチ素子を備えたアクティブマトリクス型の液晶パネルと、
前記液晶パネルの駆動回路と、
1フレーム期間において非発光期間及び発光期間を有し、前記液晶パネルの背面から光を照射するバックライト部と、
を備える液晶表示装置の駆動方法であって、
nフレーム目の映像信号(nは整数)、n−1フレーム目の映像信号、及び、前記nフレーム目の映像信号の前記液晶パネルへの書き込みライン位置に基づいて、nフレーム目に液晶応答時刻が前記バックライト部の発光タイミングよりも遅くなる応答未達画素を抽出し、
前記応答未達画素の1フレーム期間における表示輝度の合計が、前記応答未達画素以外で同一階調レベルの画素の1フレーム期間における表示輝度の合計と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。 - 前記表示輝度の合計は、透過率の時間積分値であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置の駆動方法。
- 画素毎に映像信号書き込み用のスイッチ素子を備えたアクティブマトリ クス型の液晶パネルと、
前記液晶パネルの駆動回路と、
水平ストライプ状に複数の領域に分割され、1フレーム期間において前記領域毎に非発光期間及び発光期間を有し、前記液晶パネルの背面から光を照射するバックライト部とを備える液晶表示装置の駆動方法であって、
前記領域毎に、nフレーム目の映像信号(nは整数)、n−1フレーム目の映像信号、及び、前記nフレーム目の映像信号の書き込みライン位置に基づいて、各前記領域においてnフレーム目の液晶応答時刻が発光タイミングより遅くなる応答未達画素を抽出し、
前記領域毎に、前記応答未達画素の前記発光期間における表示輝度の合計が、前記応答未達画素以外で同一の前記領域に含まれる同一階調レベルの画素の前記発光期間における表示輝度の合計と等しくなるように、前記応答未達画素に書き込まれる映像信号の階調レベルを補正することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。 - 前記表示輝度の合計は、透過率の時間積分値であることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置の駆動方法。
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