JP3732616B2 - 電力送信回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯型の送受信装置に対して非接触状態で電力を送信する電力送信回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、斯様な電力送信回路が、例えば自動車のキーレスエントリーシステムに使用される場合の例を概略的に示すものである。携帯型の送受信装置たるICカード1を用いて、使用者が自動車のドア2の解錠を行う場合には、ICカード1をドア2のドアハンドル2aに近接させる。すると、ICカード1の送受信回路1aが自動車側に設けられている電力送信回路3と磁気結合状態となって、電力送信回路3より非接触状態で電力が送信されるようになっている。
【0003】
ICカード1の制御回路1bは、その電力を送受信回路1aを介して受信することにより起動し、内部のメモリに記憶されているIDコードを読出して自動車側に返信する。すると、自動車側の制御回路は、ICカード1から返信されたIDコードを照合して照合結果が一致すると、ドアロック用のアクチュエータ(何れも図示せず)を駆動することによってドア2を解錠させるようになっている。
【0004】
電力送信回路3は、発振回路4,インバータIC5(図4参照)のインバータゲート5a,バッファIC6及び7,並びにコイル8とコンデンサ9とを直列に接続してなる共振回路10によって構成されている。発振回路4の出力端子は、バッファIC6を介して共振回路10の一方の端子10aに接続されていると共に、インバータゲート5b及びバッファIC7を介して共振回路10の他方の端子10bに接続されている。
【0005】
そして、発振回路4が出力する発振信号の正相信号と逆相信号とが共振回路10の両端子10a,10bに与えられることによって、共振回路10は発振信号の周波数に共振し、電力が磁気信号となりドア2を介してICカード1に送信されるようになっている。
【0006】
斯様な電力送信回路3の、より具体的な回路構成を図4に示す。この図4において、水晶発振器11の両端子11a,11bは、夫々、コンデンサ12,13を介してアースに接続されている。水晶発振器11の発振周波数は、例えば、4MHz程度である。
【0007】
インバータIC5は、6個のインバータゲート5a乃至5fを内蔵しており、水晶発振器11の端子11aは、インバータゲート5cの入力端子に接続されている。また、水晶発振器11の端子11bは、抵抗14を介してインバータゲート5cの出力端子及びインバータゲート5bの入力端子に接続されている。水晶発振器11の端子11a,11b間には、抵抗15が接続されている。以上が、水晶発振器11を用いる場合に標準的に構成される発振回路4である。
【0008】
発振回路4の出力端子、即ち、インバータゲート5bの出力端子は、インバータゲート5aの入力端子に接続されており、インバータゲート5bからデュ−テイ比略50%の矩形波として出力される発振信号の逆相信号が、インバータゲート5aから出力されるようになっている。尚、インバータIC5の電源入力端子は例えば5Vの電源VDDに接続されており、アース端子及び未使用のインバータゲート5d〜5fの入力端子はアースに接続されている。
【0009】
そして、発振回路4から出力される発振信号(正相信号)と、インバータゲート5aから出力される逆相信号とを、夫々バッファIC6,7を介して共振回路10の両端子10a,10bに夫々与えるようになっている。この場合、バッファIC6,7は、共振回路10における共振電流をより多く流すことによって、電力送信回路3の送信電力をある程度高めるために用いられるものである。
【0010】
3ステートのバッファIC6及び7は、夫々例えば8個のバッファ6a〜6h及び7a〜7hを有している。また、夫々に、出力イネーブルコントロール用のNANDゲート6i及び7iを有しているが、それらの入力端子はアースに接続されて、各バッファ6a〜6h及び7a〜7hは常に出力イネーブルの状態にある。尚、バッファIC6及び7の電源入力端子,アース端子も、電源VDD,アースに夫々接続されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来、発振回路4から出力される発振信号の正相信号及び逆相信号を、2つのバッファIC6及び7を介して共振回路10に与える場合には、一方のIC、例えば、バッファIC6を正相信号用のバッファとし、他方のICであるバッファIC7を逆相信号用のバッファとしていた。
【0012】
斯様な場合に対応させて、例えば、図4に示すように、発振回路4の出力端子をバッファIC6のバッファ6a〜6hの入力端子に一括して接続すると共に、それらのバッファ6a〜6hの出力端子を共振回路10の一方の端子10aに接続し、また、インバータゲート5aの出力端子をバッファIC7のバッファ7a〜7hの入力端子に一括して接続すると共に、それらのバッファ7a〜7hの出力端子を共振回路10の他方の端子10bに接続して実験を行った。
【0013】
図5は、図4に示す電力送信回路3を構成した場合に、本発明の発明者が行った一実験例を示すものである。尚、バッファIC6に流れる電源電流値を測定するため、電源VDDとバッファIC6の電源入力端子との間に、電流計16を挿入している。図5の横軸は時間であり、縦軸は、電流計16によって測定された電源電流値である。
【0014】
図4に示す回路では、バッファIC6には正相信号,バッファIC7には逆相信号が与えられているため、例えば、バッファIC6のバッファ6a〜6hの入力端子が全てハイレベルの時は、バッファIC7のバッファ7a〜7hの入力端子が全てロウレベルとなる。
【0015】
この時、バッファIC6の全てのバッファ6a〜6hの出力端子が全てハイレベルとなって、その出力端子からは一斉にソース電流が流出するので、電源電流は、バッファIC6の電源入力端子に接続されている電源VDDから、バッファ6a〜6h,共振回路10及びバッファ7a〜7hを介してバッファIC7のアース端子へと流れる。即ち、このときの電流計16において測定される共振回路10への電源電流は、正側に大きなピークを生ずる。
【0016】
逆に、バッファIC6のバッファ6a〜6hの入力端子が全てロウレベルの時は、バッファIC7のバッファ7a〜7hの入力端子が全てハイレベルとなり、バッファIC6の全てのバッファ6a〜6hの出力端子が全てロウレベルとなって、その出力端子には、バッファIC7が一斉に出力したソース電流が、共振回路10を逆方向に流れてシンク電流として流入する。
【0017】
この時、電流は、バッファIC7の電源入力端子に接続されている電源VDDから、バッファ7a〜7h,共振回路10及びバッファ6a〜6hを介してバッファIC6のアース端子へと流れる。即ち、このとき電流計16において測定される電源電流は、共振回路10への通電停止によるコイル8の誘起電圧によって逆向きに流れるため、負側に大きなピークを生ずる。
【0018】
また、バッファIC7の電源入力端子と電源VDDとの間にも電流計を挿入して、バッファIC7の電源電流の波形を観測したとすれば、図5に示す電流波形の位相が180度ずれたものが観測されるはずである。
【0019】
即ち、この場合、バッファIC6及び7には、発振回路4の発振信号の周波数4MHz(250ns周期)で、正,負側に著しいピークを有する波形の電流が流れることになり、そのピーク値は、正側で約1000mA,負側で約−780mAにも達してしまう。従って、斯様な回路構成では、一般的にはバッファIC6及び7の最大許容電流値を超えてしまうことが多く、実験レベルでは使用できても、実用的には採用することが難かしい。
【0020】
このため、実際には、例えば1つのバッファICが8個のバッファを内蔵していれば、その半分の4個のみを使用するようにして、全部で4個のバッファICを使用する構成を採用しており、各バッファICが内蔵する全てのバッファを有効に利用できず、回路面積が大きくなってしまうという問題があった。
【0021】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、バッファICの電源電流のピークを低下させてバッファICを効率良く利用する構成として、その使用個数を少なくして電力を送信することができる電力送信回路を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の電力送信回路は、携帯型の送受信装置に対して非接触状態で電力を送信するものにおいて、
発振回路と、
この発振回路が出力する発振信号から逆相信号を生成して出力する逆相信号出力回路と、
複数個のバッファを内蔵してなる複数個のバッファICと、
共振回路とを備え、
前記複数個のバッファICが夫々内蔵する複数個のバッファの内、各一部のバッファを正相バッファとし、その正相バッファの個数と同数のバッファを逆相バッファとして、
前記発振回路の出力端子を、前記正相バッファを介して前記共振回路の一端に接続すると共に、前記逆相信号出力回路の出力端子を、前記逆相バッファを介して前記共振回路の他端に接続することを特徴とする。
【0023】
斯様に構成すれば、1つのバッファICの中に正相バッファと逆相バッファとが混在するようになる。そして、携帯型の送受信装置に対して電力を送信する際に、正相バッファが出力端子をハイレベルにドライブしてソース電流を流出させている時は、逆相バッファは出力端子をロウレベルにドライブしてシンク電流を流入させているので、1つのバッファICが内蔵している全てのバッファから一斉にソース電流が流出したり、全てのバッファに一斉にシンク電流が流入することがない。
【0024】
即ち、1つのバッファICに対する電流の入出力が平均化されるので、バッファICの電源電流の消費状態も平均化され、その電流波形が正,負に著しく大きなピークを生ずることがない。従って、各バッファICが内蔵しているバッファをより多く有効に利用することができて、必要なバッファICの個数を削減することが可能となる。
【0025】
この場合、請求項2に記載したように、前記正相バッファの個数と前記逆相バッファの個数とが、各バッファICにおいて夫々等しくなるように設定するのが好適である。斯様に構成すれば、各バッファICにおいて、出力端子をハイレベルにドライブしているバッファの個数と出力端子をロウレベルにドライブしているバッファの個数とが等しくなるので、各バッファICの電源電流の消費状態がより一層平均化され、内蔵しているバッファを更に多く有効に利用することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例について、図1及び図2を参照して説明する。尚、図4と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。電気的構成を示す図1において、電力送信回路21の各構成要素(回路素子)自体は、図4に示す電力送信回路3のものと同一であるが、電力送信回路21においては、発振回路4,インバータゲート(逆相信号出力回路)5a,バッファIC6及び7,共振回路10間における接続状態が異なっている。
【0027】
即ち、インバータゲート5aの出力端子は、バッファIC6が内蔵している4個のバッファ(以下、逆相バッファと称す)6a〜6d及びバッファIC7が内蔵している4個のバッファ(以下、逆相バッファと称す)7a〜7dの入力端子に接続されている。また、発振回路4の出力端子であるインバータゲート5bの出力端子は、バッファIC6が内蔵している4個のバッファ(以下、正相バッファと称す)6e〜6h及びバッファIC7が内蔵している4個のバッファ(以下、正相バッファと称す)7e〜7hの入力端子に接続されている。
【0028】
そして、逆相バッファ6a〜6d及び7a〜7dの出力端子は、共振回路10の一方の端子10aに接続されており、正相バッファ6e〜6h及び7e〜7hの出力端子は、共振回路10の他方の端子10bに接続されている。以上のように、各バッファIC6及び7において、正相バッファと逆相バッファとが夫々4個ずつとなるように接続が行われている。
【0029】
尚、ICカード1側から返信されたIDコードの照合を行う図示しない自動車側の制御回路は、共振回路10に並列に接続されているか、或いは、電力送信回路21とは別個独立に設けられているものとする。
【0030】
次に、本実施例の作用について図2をも参照して説明する。図2は、図1に示す電力送信回路21を構成した場合に、本発明の発明者が行った一実験例を示すものであり、図5に対応するものである。この図2において、バッファIC6の電源電流波形のピーク値は、最大値で約170mA,最小値で約80mAである。図5の波形と比較すると、最大値で80%以上,最小値で90%以上ピーク値を減少させており、顕著な効果が現れている。
【0031】
これは、例えばバッファIC6において、正相バッファ6e〜6hが出力端子をハイレベルにドライブしてソース電流を流出させている時は、逆相バッファ6a〜6dは出力端子をロウレベルにドライブしてシンク電流を流入させているので、図4に示した電力送信回路3のように、全てのバッファ6a〜6hから一斉にソース電流が流出したり、全てのバッファ6a〜6hに一斉にシンク電流が流入することがないからである。
【0032】
即ち、バッファIC6及び7に対する電流の入出力が平均化されることにより、バッファIC6及び7の電源電流の消費状態も平均化されて、その電流波形が正,負に著しく大きなピークを生ずることがなくなるのである。
【0033】
以上のように本実施例によれば、発振回路4の出力端子を、バッファIC6の正相バッファ6e〜6h及びバッファIC7の正相バッファ7e〜7hを介して共振回路10の端子10bに接続し、発振回路4からの発振信号の逆相信号を出力するインバータゲート5aの出力端子を、バッファIC6の逆相バッファ6a〜6d及びバッファIC7の逆相バッファ7a〜7dを介して共振回路10の10aに接続して、共振回路10と磁気結合したICカード1の送受信回路1bを介して、磁気信号により制御回路1aに電力を送信するようにした。
【0034】
従って、各バッファIC6及び7の電源電流の消費状態を平均化させることができ、各バッファIC6及び7が内蔵しているバッファをより多く有効に利用することができる。そして、例えば、従来はバッファICが4個必要であったものが2個で構成できるようになり、必要なバッファICの個数を削減することが可能となるので、電力送信回路21を小形且つ低価格に構成することができる。
【0035】
また、各バッファIC6及び7において、正相バッファの個数と逆相バッファの個数とが夫々4個ずつとなるようにしたので、電源電流の消費状態をより一層平均化させることができる。
【0036】
本発明は上記しかつ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形または拡張が可能である。
各バッファIC6及び7における正相バッファの個数と逆相バッファの個数とは、必ずしも等しく設定する必要はなく、例えば、バッファIC6においては、正相バッファを3個とし、逆相バッファを5個として、バッファIC7においては、正相バッファを5個とし、逆相バッファを3個としてもよい。斯様な場合でも、電源電流の消費状態を平均化させる効果は生じる。
また、各バッファIC6及び7が内蔵しているバッファ6a〜6h及び7a〜7hを全て使用する必要はなく、必要な送信電力量に応じて、例えば、各バッファIC6及び7において、正相,逆相バッファの数が夫々3個ずつとなるように使用しても良い。
【0037】
バッファICの数は2個に限らず、必要な送信電力量に応じて3個以上であっても良い。
また、1つのバッファICが内蔵しているバッファの数は8個に限らず、それより多くても、或いは少なくても良い。
バッファICは3ステート出力のものでなくても良い。
電源電圧や水晶発振器11の発振周波数などは一例であり、適宜変更して実施して良い。
【0038】
電流計16は実験データを得るために挿入されているものであり、実際に使用する回路には必要ない。
送受信回路21からICカード1に対して電力を送信する場合は、磁気信号に限ることなく電波信号で送信しても良い。
自動車に使用されるICカードに限ることなく、各種証明書の発行機や、現金自動支払機などに使用されるものなどでも良い。また、ICカードのに限ることなく、非接触状態で電力が送信されて起動される携帯型の送受信装置であれば適用が可能である。
【0039】
【発明の効果】
本発明は以上説明した通りであるので、以下の効果を奏する。
請求項1記載の電力送信回路によれば、1つのバッファICの中に正相バッファと逆相バッファとが混在するようになり、携帯型の送受信装置に対して電力を送信する際に、1つのバッファICが内蔵している全てのバッファから一斉にソース電流が流出したり、全てのバッファに一斉にシンク電流が流入することがない。そして、1つのバッファICに対する電流の入出力が平均化されて、バッファICの電源電流の消費状態も平均化され、その電流波形が正,負に著しく大きなピークを生ずることがなく、各バッファICが内蔵しているバッファをより多く有効に利用することができて、必要なバッファICの個数を削減することが可能となる。従って、全体を小形且つ低価格で構成することができる。
【0040】
請求項2記載の電力送信回路によれば、各バッファICにおいて、出力端子をハイレベルにドライブしているバッファの個数と出力端子をロウレベルにドライブしているバッファの個数とが等しくなるので、各バッファICの電源電流の消費状態がより一層平均化され、内蔵しているバッファを更に多く有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す電気的構成図
【図2】バッファICの電源電流波形図
【図3】従来技術を示す電力送信回路の全体構成図
【図4】図1相当図
【図5】図2相当図
【符号の説明】
1はICカード(送受信装置)、4は発振回路、5aはインバータゲート(逆相信号出力回路)、6及び7はバッファIC、6a〜6dはバッファ(逆相バッファ)、6e〜6hはバッファ(正相バッファ)、7a〜7dはバッファ(逆相バッファ)、7e〜7hはバッファ(正相バッファ)、10は共振回路、21は電力送信回路を示す。
Claims (2)
- 携帯型の送受信装置に対して非接触状態で電力を送信する電力送信回路において、
発振回路と、
この発振回路が出力する発振信号から逆相信号を生成して出力する逆相信号出力回路と、
複数個のバッファを内蔵してなる複数個のバッファICと、
共振回路とを備え、
前記複数個のバッファICが夫々内蔵する複数個のバッファの内、各一部のバッファを正相バッファとし、その正相バッファの個数と同数のバッファを逆相バッファとして、
前記発振回路の出力端子を、前記正相バッファを介して前記共振回路の一端に接続すると共に、前記逆相信号出力回路の出力端子を、前記逆相バッファを介して前記共振回路の他端に接続することを特徴とする電力送信回路。 - 前記正相バッファの個数と前記逆相バッファの個数とが、各バッファICにおいて夫々等しくなるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の電力送信回路。
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