JP3732457B2 - スポットピン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マクロアレイを製造する過程において、生体高分子を含むスポット溶液を、ナイロンメンブレン等の吸水性支持体へスポットするために用いられるマクロアレイ用スポットピンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、複数種類のDNA、RNA、たんぱく質等の生体高分子を含むスポット溶液を、ナイロンメンブレンなどの支持体にスポットして、マクロアレイを製造することが行われている。図13は、マクロアレイ作製の原理を説明する図である。マイクロプレート132にはスポットするための複数種類のスポット溶液、例えばDNA溶液131が入っている。マクロアレイの支持体としては、ナイロンメンブレン134を用意する。DNA溶液131をスポットピン133に保持させた後、ナイロンメンブレン134にスポットするという処理を繰り返し行うことで、複数種類のDNA溶液がスポットされたマクロアレイ135を複数作ることができる。マクロアレイの製造過程で用いられるスポットピンに関しては、万年筆のペン先のように毛細管現象を利用し、連続してスポットすることが可能なスプリット方式のピンや、ピン先に毎回スポット溶液を付着させ押印するソリッド方式のピンなど、様々な技術が開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
マクロアレイから得られる結果に信頼性を持たせるには、マクロアレイの各スポットにDNA、RNA、たんぱく質等の生体高分子を含むスポット溶液がどれだけの量固定されているのか、正確に把握する必要がある。しかし、ソリッド方式のピンでは定量的にスポットすることは難しい。また、スプリット方式のピンは、スポットのたびに毎回ピン先に溶液を付着させる必要がなく、乾燥などにも強いという点で優れているが、同様に連続して等量ずつスポットすることは難しい。
【0004】
本発明の目的は、生物実験で用いられている吸水性支持体に対し、多種類の生体高分子を含むスポット溶液を、連続して安定に等量ずつスポットすることのできるスポットピンを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、毛細管作用を利用して溶液を保持し、ピンの先端を分離できるスポットピンを開発し、前記目的を達成した。
【0006】
本発明によるスポットピンは、吸水性支持体に溶液をスポットするためのスポットピンにおいて、支持体に接触する先端部の表面及び裏面に開口した溶液保持部と、スライドガイド部とを備え、前記溶液保持部に毛細管作用によって所定量の溶液を保持する第1部材と、前記溶液保持部の裏面側開口に対向する端部に開口し毛細管作用によって溶液を保持する溶液供給部を備え、前記第1部材のスライドガイド部に沿ってスライドする第2部材と、前記第2部材の前記溶液供給部が前記第1部材の前記溶液保持部と接触するように前記第1部材に対して前記第2部材を付勢する付勢手段とを含むことを特徴とする。
【0007】
第2部材の溶液供給部を第1部材の溶液保持部に接触させ連通させると、毛細管作用によって溶液供給部内の溶液が第1部材の溶液保持部に充填される。次に、付勢手段の付勢力に抗して第1部材に対して第2部材をスライドさせ、第1部材の溶液保持部と第2部材の溶液供給部とを分離すると、毛細管作用によって第1部材の貫通穴に一定体積の溶液が保持される。次に、第1部材の先端部を吸収性の支持体に接触させると、第1部材の溶液保持部に保持されている一定体積の溶液が吸収性の支持体に染み込み、スポットが形成される。その後、付勢手段の付勢力によって第2部材の溶液供給部を第1部材の溶液保持部に接触させると、空になった第1部材の溶液保持部に毛細管作用によって溶液供給部から溶液が再充填される。この動作を反復することにより、吸収性の支持体へ溶液を連続して等量ずつスポットすることができる。
【0008】
第2部材は、本体と本体から第1部材の先端部とは反対側に延びる枝部とを備える構造とすることができる。この場合、枝部は、スポットピンをスポット装置のピンヘッドに固定するための固定部となる。第1部材はスポット装置のピンヘッドから突出するピン等によって第2部材に対して駆動されることになる。
【0009】
第2部材は、また、本体と本体から第1部材の先端部側に延びる枝部とを備え、枝部の先端は、第2部材の溶液供給部が第1部材の溶液保持部と接触しているとき、第1部材の先端部より前方に突出している構造とすることもできる。この場合、枝部は、支持体に接触して第1部材の溶液保持部と第2部材の溶液供給部を分離させるストッパとして機能する。スポットピンは、第1部材の後端部をピンヘッドに固定することにより、スポット装置に固定される。
【0010】
第2部材に、溶液供給部に連通した大径の溶液貯留部を設置すると、スポットピンに生体高分子の溶液を大量に充填することができ、一度の溶液充填でより多くのスポットを形成することが可能となる。このとき、第1部材の先端部と溶液貯留部の中心とを結ぶ直線は第2部材のスライド方向と平行となるような構造とすることも、非平行となるような構造とすることもできる。
【0011】
第1部材の先端部表面は支持体との接触面積が小さくなるように周縁部がカットするのが好ましく、第1部材の先端部の裏面に対向する第2部材の端部は第1部材の先端部の裏面との接触面積が小さくなるように周縁部がカットされているのが好ましい。第1部材の先端部及び第2部材の溶液供給端の周縁部をカットすることにより、毛細管作用での溶液の移動が容易になり、吸水性の高いナイロンメンブレン等の支持体へ、連続して安定に同形状の溶液スポットを形成することが可能となる。
【0012】
付勢手段は、第1部材の後端部内壁と第2部材の間に配置された圧縮バネとすることができる。この圧縮バネは、第1部材に対して第2部材を第1部材の先端部側に押圧するように作用する。
【0013】
第1部材及び第2部材はオーステナイト系ステンレス製とすることができる。スポットピンの材料としてオーステナイト系ステンレスを用いることにより、強度、耐酸性、耐薬品性を高めることができる。
【0014】
スポットピンの滑らかな動きを実現し、ピン自体の寿命を延ばすためには、第1部材及び第2部材の摺動部分はダイヤモンドコートされているのが好ましい。
【0015】
本発明によるスポットピンは、また、吸水性支持体に溶液をスポットするためのスポットピンにおいて、支持体に接触する先端部の表面及び裏面にそれぞれ開口した複数の溶液保持部と、スライドガイド部とを備え、溶液保持部に毛細管作用によってそれぞれ所定量の溶液を保持する第1部材と、溶液保持部の裏面側開口に対向する端部にそれぞれ開口し毛細管作用によって溶液を保持する複数の溶液供給部を備え、第1部材のスライドガイド部に沿ってスライドする第2部材と、第2部材の複数の溶液供給部が第1部材の複数の溶液保持部とそれぞれ接触するように第1部材に対して第2部材を付勢する付勢手段とを含むことを特徴とする。このスポットピンは、前述のスポットピンの原理を応用し、複数の溶液供給部と複数のピン先端部をそれぞれ連結させたものに相当し、吸水性支持体上に複数のスポットを同時に形成することができる。第1部材及び第2部材をプラスチック製とすると、低コストで使い捨て可能なスポットピンを提供でき、再利用する場合に問題となる溶液の混入(コンタミネーション)を回避することができる。
【0016】
本発明によるスポットピンは、DNA、RNAあるいはたんぱく質、もしくはその混合物など、あらゆる生体高分子をスポットするのに用いることができる。吸水性支持体としては、ナイロンメンブレンを初めとして、マクロアレイに用いられる吸水性を有する膜状支持体一般を用いることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明によるスポットピンの一例を示す分解組立図である。
このスポットピン10は、外側の円筒状の第1部材11と第1部材の内部にスライド可能に収容される第2部材12を備える。第1部材は先端部に直径0.05mm〜0.5mm程度、長さ0.5mm〜2mm程度の毛細管からなる溶液保持部13を備える。溶液保持部の容積は4nl〜1600nl程度とすることができる。第2部材12は、中心軸上に直径0.05mm〜0.5mm程度の比較的長い毛細管からなる溶液供給部14を備える円柱状の本体18と、本体の後端部から側方に突出した後、本体の中心軸に平行に後方に延びるL字状の枝部15を備える。
【0019】
スポットピン10の組立に当たっては、図1(a)に示すように、先端に毛細管からなる溶液保持部13を備える円筒状の第1部材11の側壁に軸方向のスリット17を形成する。次に、図1(b)に示すように第2部材と圧縮バネ16を用意し、第1部材11中に第2部材12及び圧縮バネ16を挿入する。このとき、第2部材の本体18から延びるL字状の枝部15をスリット17に挿入する。最後に、図1(c)に示すように、円筒状第1部材11の末端を塞ぐ。こうしてスポットピン10が完成する。このスポットピン10は、第2部材12から延びているL字状の枝部15の先端を図示しないスポット装置のピンヘッドに固定することによりスポット装置に装着される。
【0020】
第1部材11の後部空間に挿入された圧縮バネ16は、第2部材12の本体18を第1部材の先端部の方向に付勢する。第1部材11及び第2部材12の材質は、機械強度、耐酸性、耐薬品性に優れるオーステナイト系ステンレスである。第1部材11の内壁及びスリット17は第2部材12がスライドするためのスライドガイドとして作用し、第2部材12はその本体表面を摺動面として第1部材11の内壁に沿って軸方向にスライドすることができる。外力がかかっていないとき、第2部材の本体は圧縮バネ16の作用によって第1部材11の先端部の方向に付勢され、第2部材12の溶液保持部14を構成する毛細管と第1部材11の先端部に設けられた溶液保持部13を構成する毛細管とは接触連通して、スポットピンの中心に1本の長い連続する管が形成される。第2部材12が第1部材11に対して圧縮バネ16が縮む方向にスライドすると、第1部材の溶液保持部13と第2部材の溶液供給部14の間に空隙が発生する。第1部材11のスリット17は、第1部材11中で第2部材がスライドするとき、第1部材の内部に封入された空気を逃がしたり、第1部材の内部に周囲から空気を導入するための空気通路としても作用する。
【0021】
円筒状の第1部材11の先端部は周縁部がカットされ、支持体に接触したとき接触面積が小さくなるように設計されている。第1部材の溶液保持部13に対向する第2部材12の端部も周縁部がカットされ、第2部材の端部が第1部材の先端部裏面に接触したときの背色面積が小さくなるように設計されている。
【0022】
図2は、図1に示したスポットピンによってナイロンメンブレン等の吸水性支持体にDNA等の溶液をスポットする動作を説明する図である。
【0023】
圧縮バネの作用によって第2部材12の溶液供給部14が第1部材11の溶液保持部13と接触しているとき、第1部材の溶液保持部を構成する毛細管と第2部材の溶液供給部を構成する毛細管とは連通して1本の毛細管のように作用する。この状態で、例えば第1部材11の先端部をDNA溶液中に浸すと、図2(a)に示すように、毛細管作用により第1部材11の溶液保持部13を介して第2部材12の溶液供給部14にDNA溶液を充填することができる。
【0024】
第1部材の溶液保持部13と第2部材の溶液供給部14に連続的にDNA溶液が充填されているとき、図2(b)に示すように、第2部材12を圧縮バネの力に抗して第1部材11内でスライドさせると、第1部材の溶液保持部13を構成する毛細管は第2部材の溶液供給部14を構成する毛細管から切り離され、そこで毛細管作用が分断されることになる。このとき、第1部材の溶液保持部13には毛細管作用によってDNA溶液が保持されたまま残る。溶液保持部13に保持されるDNA溶液の量は溶液保持部を構成する毛細管の寸法によって決まる一定量である。
【0025】
次に、第1部11材の溶液保持部13にDNA溶液を保持し、第1部材の溶液保持部13と第2部材の溶液供給部14を隔離した状態のまま、第1部材11の先端部を吸水性支持体21、例えばナイロンメンブレンに接触させると、図2(c)に示すように、第1部材の溶液保持部13に保持されたDNA溶液は吸水性支持体21に染み込んでスポット22を形成する。
【0026】
吸水性支持体21にスポット22を形成した後、第1部材11の溶液保持部13と第2部材12の溶液供給部14を離したまま、第1部材11の先端部を吸水性支持体21から引き上げる。このとき、第1部材11の溶液保持部13に溶液はなく空である。次に、圧縮バネの作用によって、図2(d)に示すように、第1部材11の溶液保持部13と第2部材12の溶液供給部14を接触させる。すると、再び第1部材11の溶液保持部を構成する毛細管と第2部材12の溶液供給部14を構成する毛細管が連通して1本の毛細管を形成し、第2部材12の溶液供給部14に保持されていた溶液は毛細管作用によって第1部材11の溶液保持部13に移動し、溶液保持部13を満たす。
【0027】
こうして図2(a)の状態に戻る。従って、図2(a)から図2(d)までの操作を反復することで、一定量の溶液を連続して複数のナイロンメンブレンにスポットすることが可能になる。
【0028】
図3は、スポット動作中のスポットピンの典型的な状態を示す模式図である。スポットピン10の第2部材12の枝部15は図示しないスポット装置のピンヘッドに固定されており、ピンヘッドの上下動とともにスポットピン10の全体が上下動する。図3(a)は待機状態を示し、図2(a)に対応する。図3(b)はスポット動作時の状態を示す図であり、図2(c)に対応する。このとき、スポットピン10の第2部材12は、スポット装置のピンヘッドに固定されて不動である。一方、第1部材11はピンヘッドから図中の矢印31で示すように下方に押されて、先端部が吸水性支持体21に接触する。その結果、第1部材11の先端部の溶液保持部13に保持されていた一定量の溶液が吸水性支持体21に染み込んでスポット22が形成される。
【0029】
スポットピン10の内部に圧縮バネ16を配置することで、押圧力を制御することが可能になり、スポット形状を安定化させ、スポットピン自体の寿命を延ばすことも可能になる。
【0030】
図4は本発明によるスポットピンの他の例を示す概略図であり、図4(a)は側面図、図4(b)は断面図である。図4に示したスポットピンは、構造的には第2部材の本体から延びる枝部45の構造において図1に示したスポットピンと異なるが、他の部分は図1に示したスポットピンとほぼ同様である。従って、ここでは本実施例のスポットピンが図1に示したスポットピンと異なる点について主として説明する。なお、図には、構造を分かり易くするため、第2部材42を圧縮バネ46を圧縮する方向に付勢した状態を示してある。
【0031】
本実施例において、第2部材42の本体から延びるL字状の枝部45は、図1の実施例とは異なり、第2部材42の軸に沿って前方に延びる。圧縮バネ46によって第2部材42の溶液供給部44を第1部材41の溶液保持部43に接触させ連通させたとき、L字状の枝部45の先端は、第1部材41の先端部より前方に突出している。L字状の枝部45は図1に示した実施例のようにスポットピンをスポット装置のピンヘッドに装着するための固定部として作用するのではなく、後述のようにストッパとして作用する。本実施例のスポットピン40は、第1部材41の後端をスポット装置のピンヘッドに固定することによってスポット装置に装着される。
【0032】
図5は、図4に示したスポットピン40によるスポット動作を説明する模式図である。第1部材41の後端はスポット装置のピンヘッドに固定されており、ピンヘッドを上下させるとスポットピン40の全体が上下方向に移動する。このスポットピン40を用いるピンヘッドはスポットピン40を固定する機構を備えるだけでよく、図1に示したスポットピンを固定するピンヘッドのように、ピンヘッド固定機構の他にピンヘッドを押し下げる機構を備える必要はない。
【0033】
図5(a)は、スポットピン40が吸水性支持体21のスポット予定位置の上方に位置づけられた状態を示している。スポット装置は、図5(a)の状態からピンヘッドを吸水性支持体21に向けて降下させてゆく。すると、図5(b)に示すように、最初に第2部材42のL字状の枝部45の先端が支持体21に接触する。図5(c)に示すように、その状態から更にピンヘッドを降下させ、矢印51で示すように第1部材41を押し込むと、第2部材42はL字状の枝部45によって下方への動きが阻止されているため、第1部材41のみ圧縮バネ46の力に抗して下方へスライドする。そのため、第1部材41の溶液保持部43が第2部材42の溶液供給部44から切り離され、毛細管作用によって溶液保持部43を構成する毛細管に所定量の溶液が分離保持される。溶液保持部43に保持される溶液の量は溶液保持部43を構成する毛細管の寸法によって決まる一定量である。図5(d)に示すように、更にスポットピン40を降下させ、矢印52で示すように第1部材41を押し下げると、第1部材41の先端部が支持体21に接触し、溶液保持部43に保持された溶液が吸水性支持体21に移動し、スポット22が形成される。
【0034】
吸水性支持体21にスポット22を形成した後、ピンヘッドを上昇させると、圧縮バネ46の作用によって、第1部材41の溶液保持部43と第2部材42の溶液供給部44が接触する。すると、第2部材の溶液供給部44に保持されていた溶液は一部が毛細管作用によって第1部材41の溶液保持部43に移動し、溶液保持部43を満たす。こうして図5(a)に示すような状態に戻る。従って、図5(a)から図5(d)までの操作を反復することで、一定量の溶液を連続して複数の吸水性支持体21にスポットすることが可能になる。
【0035】
図6は、本発明によるスポットピンの他の例を示す断面図である。このスポットピン60は、図1に示したスポットピンに溶液貯留部を設けたものに相当する。第1部材61は、先端部に溶液保持部63を構成する毛細管を備える。第2部材62には、後端部の方向に延び、ピンヘッドへの固定部として機能するL字状の枝部65に溶液貯留部67を設け、その溶液貯留部67と第2部材本体の溶液供給部64を構成する毛細管との間を屈折した流路68で連絡した。上下動のために加える力69の作用点の真下にピン先端部が位置する。溶液貯留部67には大量の溶液を充填することができるため、このスポットピン60によると一度の溶液充填によって等量のスポットを多数の支持体に連続して形成することができる。
【0036】
図7は、本発明によるスポットピンの他の例を示す断面図である。このスポットピンは、図4に示したスポットピンに溶液貯留部を設けたものに相当する。第1部材71は、先端部に溶液保持部73を構成する毛細管を備える。第2部材72には、先端部の方向に延び、ストッパとして機能する枝部75の上方に溶液貯留部77を設け、その溶液貯留部77と第2部材本体の溶液供給部74を構成する毛細管とを屈折した流路78で連絡した。上下動のためにピンヘッドから加えられる力79の作用点の真下にピン先端部がある。溶液貯留部77には大量の溶液を充填することができるため、このスポットピン70によると一度の溶液充填によって等量のスポットを多数の支持体に連続して形成することができる。
【0037】
図8(a)(b)は、本発明によるスポットピンの更に他の例を示す断面図である。図示したスポットピン80,80′は、図1〜3にて説明したスポットピンの変形例であり、第2部材82に溶液貯留部87を設けたものである。円筒状の第1部材81は、先端部に溶液保持部83を構成する毛細管を備える。第2部材82は、第1部材の溶液保持部83に溶液を供給する溶液供給部84を構成する毛細管の上方に溶液貯留部87を有する。第1部材81の軸方向に沿って設けられたスリットは一部が周方向に拡大されて窓状になっており、その部分が溶液貯留部87に溶液を注入するための溶液注入口88となる。溶液貯留部87には大量の溶液を充填することができ、一度の溶液充填によって等量のスポットを多数の支持体に連続して形成することができる。
【0038】
図8(a)に示したスポットピン80は、第2部材82の本体後端部から側方に突出した後、本体の中心軸に平行に後方に延びるL字状の枝部85を備える。図8(b)に示したスポットピン80′は、第2部材82の本体後端部から、本体の中心軸に沿って延び、第1部材81′の後端部に設けられた開口を通って突出する直線状の枝部85′を備える。
【0039】
第1部材81,81′の内壁及び軸方向のスリットはスライドガイドとして作用し、第2部材82は、圧縮バネ86の力に抗し、第1部材81,81′の内壁に沿ってスライドすることができる。第2部材から上方に延びる枝部85,85′の上端はスポット装置のピンヘッドへの固定部となり、第1部材81の上端部はピンヘッドからの力89を受ける。
【0040】
図9は、本発明によるスポットピンの更に別の例を示す断面図である。このスポットピン90は、図4に示したスポットピンに溶液貯留部を設けたものに相当し、図7に示したスポットピン70と類似のものであるが、溶液貯留部の設置場所が図7のピンとは異なる。
【0041】
第1部材91は、先端部に溶液保持部93を構成する毛細管を備え、その上端部はスポット装置のピンヘッドに固定される。第2部材92は、溶液保持部93に溶液を供給する溶液供給部94を構成する毛細管と、溶液供給部94の上部に設けられた溶液貯留部97を備える。また、第2部材92からは、ストッパとして機能するL字状の枝部95が第1部材91のスリットを通って側方に突出し、前方に延びている。第1部材91の軸方向に沿って設けられたスリットは一部が周方向に拡大されて窓状になっており、その部分が第2部材92の溶液貯留部97に溶液を注入するための溶液注入口98となる。溶液貯留部97には大量の溶液を充填することができるため、一度の溶液充填によって等量のスポットを多数の支持体に連続して形成することができる。第1部材91の内壁及びスリットはスライドガイドとして作用し、第2部材92は表面を第1部材91の内壁に摺動させて、圧縮バネ96の力に抗してスライドすることができる。
【0042】
図10は、本発明による別のスポットピンの例を説明する模式図である。このスポットピンは、複数の溶液貯留部付き溶液供給部を備える部材104と複数の溶液保持部(毛細管)を備える部材103をそれぞれ連結させたものであり、複数のスポットを一度に形成することができる性能を有する。複数の溶液貯留部付き溶液供給部を備える部材104と複数の溶液保持部を備える部材103は、図10(a)に模式的に示すように接触した状態と、図10(b)に模式的に示すように分離した状態をとることができる。溶液貯留部は96穴や384穴のマイクロプレートと規格をあわせると実験が容易になる。複数の溶液保持部を備える部材103のみを用い、同時に多種類のDNA溶液を吸水性支持体に定量的にスポットすることが可能である。
【0043】
更に104と複数の溶液保持部を備える部材103を用いることで、多種類のDNA溶液1を連続して定量的にスポットすることが可能となる。2枚の板103,104はスポット装置に着脱される。この場合、生体高分子を入れておくマイクロプレートも必要なく、また複数の溶液貯留部付き溶液供給部を備える部材104をプラスチックにすると安価に製造することで使い捨てを可能とし、溶液の混入を防ぐことも可能とする。
【0044】
図11は、多数の定量的スポットを一度に形成するスポットピンの構造の他の例を示す断面図模式である。図11(a)は図10(a)に対応し、図11(b)は図10(b)に対応する図である。
【0045】
複数の溶液貯留部付き溶液供給部を備える部材104は、溶液供給部114を構成する複数の毛細管と、それに連結された大径の溶液貯留部117の組を複数備える。複数の溶液保持部を備える部材103は、溶液保持部113を構成する毛細管を複数備える。部材103の側壁111の内面はガイドとして機能し、部材104はそのガイドに沿って部材103に対してスライドすることができる。溶液保持部113、溶液供給部114、溶液貯留部117はそれぞれ一つずつが組になって、それぞれの組が上述したような独立したスポットピンとして機能する。
【0046】
図12は、スポット装置の一例を説明する図である。このスポット装置は、下部にスポットピン121を装着したピンヘッド122、ピンヘッド122をX軸方向に駆動するXモータ123X、Z軸方向に駆動するZモータ123Z、ベース124、ベース124をY方向に駆動するYモータ123Yを備える。ベース124上には、ナイロンメンブレン等の吸水性支持体125を複数保持したステージ126及び複数種類のDNA等の生体高分子溶液が入ったマイクロプレート128が載置されている。スポットピン121としては、これまで説明した本発明のピンヘッドが用いられる。
【0047】
ピンヘッド122のX方向位置及びZ方向位置をXモータ123X及びZモータ123Zにより正確に制御し、ベース124のY方向位置をYモータ123Yにより正確に制御することで、複数種類の生体高分子溶液を複数枚の吸水性支持体125に連続して等量ずつスポットすることを可能にする。マイクロプレート128に入っている別種類の生体高分子溶液を同じスポットピンを用いて連続してスポットする場合には、スポットピンに次の生体高分子溶液を装填する前にピン洗浄装置129で洗浄し、溶液の混入を防ぐ。ピン洗浄は超音波洗浄と真空乾燥を組み合わせて行う。すなわち、使用後に一度真空乾燥し、そののち超音波洗浄し、さらにもう一度真空乾燥を行うことによって、溶液の混入を防ぎ、連続して複数種類の生体高分子溶液をナイロンメンブレン等へスポットすることが可能である。
【0048】
生体高分子溶液を本発明のスポットピンに充填する方法としては、以下のような方法がある。まず連続してスポットする必要がない場合は、毎回第1部材の先端部の溶液保持部のみに生体高分子溶液を充填してスポットすることで、毎回定量的なスポットが可能となる。次に、第2部材の溶液供給部にも生体高分子溶液を充填することで、さらに連続したスポットも可能となる。第1部材の溶液保持部と第2部材の溶液供給部が繋がった状態で先端部を直接生体高分子溶液に浸すことにより、毛細管作用によって第2部材の溶液供給部にも溶液が充填される。また大量の生体高分子溶液を多数の支持体にスポットする必要がある場合には、スポットピンとして大容量の溶液貯留部を有するピンを用い、溶液貯留部に上方から生体高分子溶液を充填する方法をとればよい。
【0049】
【発明の効果】
本発明によると、複数種類のDNA、RNA、たんぱく質等の生体高分子を含むスポット溶液を、吸水性支持体に対して連続して安定に等量ずつスポットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスポットピンの一例を示す分解組立図。
【図2】本発明のスポットピンによるスポット動作を説明する図。
【図3】スポット動作中のスポットピンの典型的な状態を示す模式図。
【図4】本発明によるスポットピンの他の例を示す説明図。
【図5】スポット動作の説明図。
【図6】本発明によるスポットピンの他の例を示す断面図。
【図7】本発明によるスポットピンの他の例を示す断面図。
【図8】本発明によるスポットピンの更に他の例を示す断面図。
【図9】本発明によるスポットピンの更に別の例を示す断面図。
【図10】本発明による別のスポットピンの例を説明する模式図。
【図11】図10に示した複数連結型スポットピンの詳細を示す断面模式図。
【図12】スポット装置の一例を説明する図。
【図13】マクロアレイ作製方法の一例を説明する図。
【符号の説明】
10,40,60,70,80,80′,90…スポットピン
11,41,61,71,81,81′,91…第1部材
12,42,62,72,82,92…第2部材
13,43,63,73,83,93,113…溶液保持部
14,44,64,74,84,94,114…溶液供給部
15,45,65,75,85,85′,95…枝部
16,46,86,96…圧縮バネ
67,77,87,97,117…溶液貯留部
88,98…溶液注入口
21…吸水性支持体
22…スポット
103…複数の溶液保持部を備える部材
104…複数の溶液貯留部付き溶液供給部を備える部材
111…側壁
121…スポットピン
122…ピンヘッド
125…吸水性支持体
128…マイクロプレート
129…ピン洗浄装置

Claims (11)

  1. 吸水性支持体に溶液をスポットするためのスポットピンにおいて、
    支持体に接触する先端部の表面及び裏面に開口した溶液保持部と、スライドガイド部とを備え、前記溶液保持部に毛細管作用によって所定量の溶液を保持する第1部材と、
    前記溶液保持部の裏面側開口に対向する端部に開口し毛細管作用によって溶液を保持する溶液供給部を備え、前記第1部材のスライドガイド部に沿ってスライドする第2部材と、
    前記第2部材の前記溶液供給部が前記第1部材の前記溶液保持部と接触するように前記第1部材に対して前記第2部材を付勢する付勢手段とを含むことを特徴とするスポットピン。
  2. 請求項1記載のスポットピンにおいて、前記第2部材は本体と該本体から前記第1部材の先端部とは反対側に延びる枝部とを備えることを特徴とするスポットピン。
  3. 請求項1記載のスポットピンにおいて、前記第2部材は本体と該本体から前記第1部材の先端部側に延びる枝部とを備え、前記枝部の先端は、前記第2部材の前記溶液供給部が前記第1部材の前記溶液保持部と接触しているとき、前記第1部材の先端部より前方に突出していることを特徴とするスポットピン。
  4. 請求項1記載のスポットピンにおいて、前記第2部材は、前記溶液供給部に連通した大径の溶液貯留部を有することを特徴とするスポットピン。
  5. 請求項4記載のスポットピンにおいて、前記第1部材の前記先端部と前記大径の溶液貯留部の中心とを結ぶ直線は前記第2部材のスライド方向と平行であることを特徴とするスポットピン。
  6. 請求項4記載のスポットピンにおいて、前記第1部材の前記先端部と前記大径の溶液貯留部の中心とを結ぶ直線は前記第2部材のスライド方向と非平行であることを特徴とするスポットピン。
  7. 請求項1記載のスポットピンにおいて、前記第1部材の先端部表面は支持体との接触面積が小さくなるように周縁部がカットされており、前記第1部材の先端部の裏面に対向する前記第2部材の端部は前記第1部材の先端部の裏面との接触面積が小さくなるように周縁部がカットされていることを特徴とするスポットピン。
  8. 請求項1記載のスポットピンにおいて、前記付勢手段は、前記第1部材の後端部内壁と前記第2部材の間に配置され、前記第1部材に対して前記第2部材を前記第1部材の先端部側に押圧するように作用する圧縮バネであることを特徴とするスポットピン。
  9. 請求項1記載のスポットピンにおいて、前記第1部材及び前記第2部材はオーステナイト系ステンレス製であることを特徴とするスポットピン。
  10. 吸水性支持体に溶液をスポットするためのスポットピンにおいて、
    支持体に接触する先端部の表面及び裏面にそれぞれ開口した複数の溶液保持部と、スライドガイド部とを備え、前記溶液保持部に毛細管作用によってそれぞれ所定量の溶液を保持する第1部材と、
    前記溶液保持部の裏面側開口に対向する端部にそれぞれ開口し毛細管作用によって溶液を保持する複数の溶液供給部を備え、前記第1部材のスライドガイド部に沿ってスライドする第2部材と、
    前記第2部材の前記複数の溶液供給部が前記第1部材の前記複数の溶液保持部とそれぞれ接触するように前記第1部材に対して前記第2部材を付勢する付勢手段とを含むことを特徴とするスポットピン。
  11. 請求項10記載のスポットピンにおいて、前記第1部材及び第2部材はプラスチック製であることを特徴とするスポットピン。
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