JP3732360B2 - 凍結式ワーク加工法およびワーク固定装置 - Google Patents

凍結式ワーク加工法およびワーク固定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は凍結式ワーク加工法とりわけ同一ワークの複数面を逐次加工するのに好適な凍結式ワーク加工法とワーク固定装置に関する。
【0002】
機械部品、電子部品、セラミック製品など各種ワークの加工法として、冷却により凍結する性質の媒体(凍結媒体)を使用し、これを凍結することによりワークを固定面に接着固定して実施する方法が知られており、その凍結媒体として水類を利用する方法や、本発明者の提案にかかる特願平9−507480号や特願平9−48496号に所載の高分子系凝固剤を使用する方法が知られている。
後者は凝固点が水の凝固点よりも高い高分子系凝固剤を使用したもので、凍結温度を0℃以上にすることができるとともに、加工液を使用しても固定が解除されないなどの利点を有していることから汎用される傾向にある。
【0003】
前記いずれの方法も、ワークの材質、形状などの制限なくワークを固定して加工するには好適である。しかし、ワークの加工としては、一つのワークの複数の面の加工たとえば上面と下面とを順次切削したり、穴あけしたり、切断したり、研削あるいは研摩したり、ワークの異なる面に順次溝等を入れたりする態様などがある。
このような場合、従来では、いずれの方法においても、ワークのある一面を加工後、凍結をいったん解除してワークを治具から取外し、ワークを洗浄、乾燥し、ワークの方向および位置を変えて再度別の治具に凍結固定し直す作業が必要であった。
このため、加工に多くの手間と時間がかかり、作業能率や加工能率が低下するとともに加工コストが高くなるという問題があった。かかる問題は特にワークの大きさが小さくなったり、薄くなったりする傾向とともに増加し、小さいワークの場合には他面を加工するために治具に配列するのに多大な労力と時間を要していた。
しかも、ワークの表面性状等によっては加工済み面と未加工面とが判別し難くなることがある。このため、従来のようにワークを治具から分離すると、既加工面が不明になり、いちいち顕微鏡で観察しなければならなくなったり、既加工面が再度加工され、未加工面がそのままの状態で残されてしまい、良品歩留りが低下するという問題があり、実際上、加工不可能視されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような問題点を解消するために創案されたもので、その第1の目的は、ワークの複数面を凍結加工法により加工する場合に治具に凍結固定されているワークを解凍することなく他の治具に移し替えることができ、この作業の手間と時間を大幅に削減し、加工能率を大幅に向上することができる凍結式ワーク加工法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、ワークの複数面を凍結加工法により加工する場合に治具に凍結固定されているワークを解凍することなく他の治具に移し替えることができ、この作業の手間と時間を大幅に削減し、加工能率を大幅に向上することができるワーク固定装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記第1の目的を達成するための第1発明は、ワークの複数面を逐次加工するにあたり、ワークを凍結媒体により第1の治具上に固定して加工を行った後、ワークの非固定面に第2の治具を前記凍結媒体によるよりも接着強度を強くして凍結媒体により固定し、接着強度差により第1の治具とワークとの接着を解除して第1の治具をワークから離脱させることにより第2の治具へのワークの移し替えを行ない、第2の治具上のワークを加工することを基本的特徴としている。
かかる第1発明の第1態様としては、接着強度の異なる第1と第2の凍結媒体を使用し、ワークを相対的に接着強度の弱い第1の凍結媒体により第1の治具上に固定して加工を行った後、第1の接着媒体よりも相対的に接着強度の強い第2の接着媒体によりワークの非固定面に第2の治具を固定することが挙げられる。
「接着強度の異なる第1と第2の凍結媒体」としては、成分組成、材質が異種のもの、同種類の凍結媒体であるが粘度や添加物などが異なるものが例として挙げられる。
【0006】
また、第1発明の第2態様としては、ワーク固定面の面粗さの異なる2種の治具を使用し、ワークを面粗さが相対的に小さい第1の治具上に凍結媒体により固定して加工を行った後、面粗さが第1の治具よりも相対的に大きい第2の治具のワーク固定面に凍結媒体によりワークの非固定面を固定することが挙げられる。
この場合、面粗さの異なる2種の治具は、文字通り面の粗さが異なる場合のほか、無孔面を持つ治具と多孔面を持つ治具の場合がある。かかる態様の場合、凍結媒体として接着強度が同等の1種類のものを使用することができる。
【0007】
さらに第1発明の第3態様としては、凍結媒体を含浸させた多孔性補助材を使用し、第1の治具にワークを凍結媒体により固定して加工を行なった後、前記凍結媒体含浸多孔性補助材を第2の治具上に配し、冷却により第2の治具に貼り付けるとともにワークの非固定面を凍結固定することが挙げられる。
この場合の多孔性補助材としては、有機、無機、金属からなる繊維質のものたとえば紙、布ないしシート等があげられる。かかる態様の場合、凍結媒体として接着強度が同等の1種類のものを使用することができる。
【0008】
本発明における凍結媒体とはワーク固定用媒体を意味し、冷却により凝固してワークと治具とを接着して加工力に耐えられる接着強度が得られるものをすべて含むが、実用性の面からは、水、シリコーンオイルで代表される高分子系凝固剤、前記高分子系凝固剤に粉末状骨材を添加したものなどが代表的なものとして挙げられる。
これらのうち、一般的に接着強度は、シリコーンオイルで代表される高分子系凝固剤<水<前記高分子系凝固剤に粉末状骨材を添加したものの関係にある。
そこで、第1発明の第1態様において、第1の凍結媒体としてシリコーンオイルで代表される液状の高分子系凝固剤を使用した場合には、第2の凍結媒体としては、水または前記液状の高分子系凝固剤に粉末状骨材を添加したものが使用され、第1の凍結媒体として水が使用された場合には、第2の凍結媒体には高分子系液体に粉末状骨材を添加したものが使用される。
【0009】
なお、「同種類の凍結媒体であるが、粘度や添加物などにより接着強度が異なるもの」の典型的な例としては、シリコーンオイルで代表される液状の高分子系凝固剤に粉末状骨材を添加したものにおいて、第1の凍結媒体は粉末状骨材の添加率が相対的に少なく、第2凍結媒体は粉末状骨材の添加率が相対的に多いものが挙げられる。
また、同じく液状の高分子系凝固剤に粉末状骨材を添加したものにおいて、第1凍結媒体は粉末状骨材として相対的に強度が低い材質のものを添加し、第2凍結媒体は粉末状骨材として相対的に強度が高いものを添加したものが挙げられる。
【0010】
第2の目的を達成するため第2発明は、ワークのある面を接着固定すべき第1の治具と、ワークのある面と異なる他の面を固定すべき第2の治具と、第1の治具にワークを接着させるための第1の凍結媒体と、第2の治具にワークを固定するための第1の凍結媒体よりも相対的に接着強度の高い第2の凍結媒体とからなることを特徴としている。
また、第3発明は、ワークのある面を接着固定すべき第1の治具と、ワークの他の面を固定すべき第2の治具と、第1の治具にワークを接着させるための第1の凍結媒体と、第2の治具にワークを固定するための第2の凍結媒体とからなり、かつ前記第2の治具が第1の治具よりもワーク固定面の表面粗さが相対的に大であることを特徴としている。
また、第4発明は、ワークのある面を接着固定すべき第1の治具と、ワークのある面と異なる他の面を固定すべき第2の治具と、第1の治具にワークを接着させるための凍結媒体と、第2の治具にワークの他の面を固定するための凍結媒体を含浸させた多孔性補助材からなることを特徴としている。
【0011】
本発明において加工される「ワーク」は、鉄系、銅系、アルミニウム系、チタン系、シリコン系、ゲルマニウム系、コバルト系などで代表される金属、プラスチック系、ガラス系、カーボン系、セラミック系、フェライト系、木質系、あるいはこれらの2種以上の複合材、水晶、ダイヤモンド、CBN、ルビー、サファイヤなど材質を問わず、また形状、寸法も問わない。
本発明において、ワークの複数の面とは加工目的、ワークの形状等によって選定された任意の面を意味し、必ずしも上面と下面に限らず、上面と側面など任意である。
ワークの加工方法も、平面研削、円筒研削、内面研削、成形研削、クリープ研削などの各種研削加工、切削加工、旋削加工、研摩加工、切断加工、スライス加工、ダイシング加工、ミーリング加工、溝加工、穴明け加工、彫刻など態様を問わない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例を添付図面に基いて説明する。
図1ないし図8は凍結式ワーク加工法の第1発明の第1態様および第2発明によるワーク固定装置を示している。
図示するものは、ワーク1の第1面(この例では上面)1aと第2面(この例では下面)1bを加工する例を示しており、ワーク固定装置は、第1の治具2と、第2の治具3と、第1の治具2の固定用面2aにワーク1の第2面1bを凍結固定するための第1の凍結媒体4と、第2の治具3の固定用面3aにワーク1の第1面(加工が済んだ状態)1aを凍結固定するための第2の凍結媒体5とを備えている。
【0013】
治具2,3はパレット、トレイなどを含んでいる。少なくともワーク固定面2a,3aは熱伝導性のよい材質たとえば鋼、銅、アルミニウム、炭素などから構成されていることが好ましい。
第1の凍結媒体4と第2の凍結媒体5は、基本的特性としていずれも冷却により凍結ないし凝固する性質のものであることが条件であるが、本発明は、接着強度が相対的に異なるものを使用する。
その例としては、水、液状の高分子系凝固剤(骨材を含有しないもの)、骨材を含有した高分子系凝固剤が挙げられる。
前記高分子系凝固剤としては、水の凝固点よりも高い温度で凝固し、かつ水と親和性が乏しい(撥水性)性質を備え、しかも化学的に安定していることが適当である。その好適で代表的なものとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、すなわち、低分子シリコーンオイルないし4量体の環状シリコーンオイル、環状メチルポリシロキサン、環状ジメチルシリコーンオイルなどと称されるシリコーンオイルあるいはこれを主成分とするものが挙げられる。以下本発明において「シリコーンオイル」とはかかるものを指すものとする。
【0014】
後者の骨材を含有した高分子系凝固剤とは、シリコーンオイルに固体粒子を配合することで得られたもので、液状、ケチャップソース状、マヨネーズ状、水あめ状、クリーム状(バター状)ペースト状などの性状のものが含まれる。
固体粒子としては、各種材質の粉末好ましくは微粉末を用いることができ、平均粒径が50μm以下のもの、より好適には平均粒径1μm以下さらに好適には平均粒径0.5μm以下といったものが用いられる。
固体粒子の材料は限定はないが、一般には、珪藻土で代表される土類の粉、米や小麦などの穀物粉、でんぷん類、サンゴの粉、木灰、紙や繊維を燃焼した灰、ホワイトカーボン、ゼオライト、フライアッシュなどが好ましい例として挙げられる。そのほか、セラミック、シリコン、フェライト、カーボン、グラファイト、ガラス、石、石膏、プラスチック、木綿、木、パルプ、紙、鉄、銅、アルミニウムなどの金属やその酸化物などを粉末にしたものも用いることができる。
たとえば、珪藻土や米や小麦などの粉、でんぷん類は微粒子でかつ比重が軽いため主成分のシリコーンオイルに均一に分散混合することができ、分離が起こりにくいこと、しかも安価であることから推奨される。前記固体粒子はいくつかの種類のものを混合して使用してもよい。
【0015】
固体粒子の添加量は、接着強度や要求される加工精度等から選択すればよく、固体粒子の添加は粘度を増加するとともに、凝固時にモルタルやコンクリートの場合と同じように骨材として機能し、添加量にほぼ比例して凝固時の接着強度が増す。
したがって、固体粒子は前記主成分としてのシリコーンオイルに少なくとも5wt%程度添加することが好ましい。しかしあまり添加量が多いと凝固時の強度は高いものの凝固前の流動性が悪くなるため、塗布しにくくなるとともに膜厚にバラツキが生ずる。そこで、上限は70wt%以下とすることが好ましい。一般的には、シリコーンオイルと固体粒子(粉末)の比を(9:1)〜(1:9)の範囲から選択すればよく、この固体粒子の配合比率により粘度が変化する。
【0016】
本発明は、まず、第1の治具2の固定用面2aに、第1の凍結媒体4を介してワーク1の第2面1bを固定する。これは、まず、図1のように、第1の治具2の固定用面2aに第1の凍結媒体4を塗布するか、又は/及びワーク1の第2面1bに第1の凍結媒体4を塗布し、次いで、ワーク1を固定用面2aに載せ、適宜位置決め、配向の調整などを行ったのち、図2(a)のように第1の治具2を冷却手段Cにより第1の凍結媒体4の凝固点よりも低い温度に冷却する。
塗布は、刷毛、ローラ、噴霧など任意の方法で行なえばよい。「凝固点よりも低い温度」とは、第1の凍結媒体4の凝固分子が緻密に結合し、治具の固定用面2aとワーク1との接着による固定力(保持力)が機械加工による負荷荷重に十分耐えられるまでになる温度を意味し、通常の場合、凍結媒体の凝固点よりも少なくとも3℃好ましくは5℃以上低い温度である。
【0017】
この場合の冷却手段Cは、使用する凍結媒体に適したものを選択して行なえばよく、凍結媒体が骨材を含まない高分子系凝固剤である場合には、凝固温度が0℃を越えて高いので、冷水などの冷媒を循環する形式のものなどを使用することができる。あるいはまた、冷えた液又は冷却気体をワーク1又は/及び治具に注いで、治具の固定用面の温度を凍結媒体の凝固点よりも低い温度にするだけでもよい。
第1の凍結媒体4が水である場合には、たとえば、真空チャック機能などを付加した熱電素子を利用した公知の冷凍チャック、液体窒素などの冷媒を利用した冷媒循環式冷凍器やなどを使用すればよい。
なお、治具にワークを凍結固定する場合に、治具のある部分を基準として位置決めする必要がある場合は、治具に位置決め用の基準ピンを設けるか、あるいは治具の基準用の彫り込みを施しておけばよい。
【0018】
前記のような冷却により第1の凍結媒体4は液相から凝固により固相へと変化し、図2(b)のようにワーク1は第1の治具2の固定用面2aに接着固定される。
第1の凍結媒体4が骨材を含まない高分子系凝固剤である場合、凝固点が水のそれよりも高い。このため、固定用面2aが0℃を越える温度であっても機械加工力に十分耐えうる固定力が得られる。また、凍結に要する時間は瞬間的であって安定しているため、ワーク固定作業の著しい簡易化と能率化を図ることができる。
【0019】
次いで、ワーク1を固定した第1の治具2を所望の加工装置Wのテーブルあるいはこれに搭載した冷却手段a上に載せ、ワーク1を機械加工する。
この状態が図3であり、第1の凍結媒体4が水である場合には、凍結維持のために前記冷凍チャックなどの冷却手段aをテーブル上に固定して行なうことが必要である。しかし、第1の凍結媒体4が骨材を含まない高分子系凝固剤である場合には、前述のように凝固温度が高いため、特に冷却機能を有していなくてもよく、凍結媒体4の凝固温度以下の温度の流体(たとえば加工液)sをワークの加工時にワーク1及び/又は第1の治具2に注いだり、噴射したり、吹付けたりすることにより、ワークの凍結固定を安定させることができ、安全確実に精度のよい加工を行うことができる。
【0020】
加工は乾式でも湿式でもよく、第1の凍結媒体4が高分子系凝固剤である場合には、加工液(クーラント液を含む)やミストあるいは冷却気体を加工領域に吹付けることにより接着固定状態をさらによく維持することができる。
第1の凍結媒体4が水である場合、加工中に加工液やミストを使用すると溶解する恐れあるが、この場合には、加工開始前に凍結した氷の表面に前記した骨材を含まない高分子系凝固剤を塗布し凍結させて氷を被う膜を形成することが効果的であり、これにより加工中に加工液と氷との接触を阻止し、氷の解凍による固定力の低下を防止できる。
第1の凍結媒体4がシリコーンオイルの場合、凝固点が水のそれよりも高いうえに、撥水性を持っている。このため、加工液やミストを使用しても凍結媒体は溶解せず凝固状態が維持され、ワーク1はしっかりと固定状態に保たれる。したがって、加工液による機能(加工熱の冷却、加工屑や脱落砥粒の除去、防錆、ワークと工具間の潤滑)を十分に発揮させ、良好な加工面性状と精度を得ることができる。
また、加工が切断加工やダイシング加工、スリット加工などである場合にも、ワークの表面に加工液や空気中の水が凍結し積層してそれが刃先の直上の工具フランジや主軸に接触するといった現象が全く生じない。このため、工具の動きが常に円滑に保たれ、スムーズに精度のよい加工を行うことができる。
【0021】
以上のようにしてワーク1の第1面1aの加工が終わったならば、加工機械Mから第1の治具2を外部へ移し、第1の凍結媒体4の凝固が解けないような環境でワーク1の加工済みの第1面1aに付着した加工液、切粉、水分などを除去して清浄な表面にする。加工済みの第1面1aが非固定面となる。
そして、次にワーク1の第1面1aに第2の凍結媒体5を介して第2の治具3を載せ、凍結により定着させる。
第2の凍結媒体5は第1の凍結媒体4よりも接着強度が相対的に高いものを使用する。例としては、第1の凍結媒体4が骨材を含まない高分子系凝固剤である場合には、第2の凍結媒体5は水または骨材を含む高分子系凝固剤であり、第1の凍結媒体3が水の場合、第2の凍結媒体5は骨材を含む高分子系凝固剤である。 この工程は、まず、図4(a)のようにワーク1の第1面1aに第2の凍結媒体5を塗布し、あるいは図4(b)のように第2の治具3の固定用面3aに第2の凍結媒体5を塗布し、あるいは前2者を併用し、その状態で第2の治具5の前記固定用面3aをワーク1の第1面1aに被せるように載せる。
この状態が図4(c)(d)であり、ワーク1が第1の治具2と第2の治具3によってサンドイッチ状にされたアッセンブリとなる。
【0022】
ついで、前記第2の治具3を冷却手段によって冷却し、第2の凍結媒体5を凝固させる。
この冷却は、冷却手段が冷却面の天地を逆にして使用できる場合には、図4(c)の状態のまま上側にある第2の治具3に冷却面を接触させて行なえばよいが、そうでない場合には、前記アッセンブリを天地が逆になるように反転して第2の治具3が下側になるようにし、図5のように第2の治具3を冷却手段Cの冷却面に載置して冷却する。
この冷却の温度は、第2の凍結媒体5の凝固以下の温度であり、水である場合、前述した公知の冷凍チャック、液体窒素などの冷媒を利用した冷凍器などを用いて行い、骨材を含む高分子系凝固剤の場合には、前記冷凍チャックや冷凍器などのほか、冷却した加工液などを単独または併用して行なえばよい。
このようにすることによりワーク1は加工済みと未加工の2面1a,1bが治具2,3に接合された状態となる。
【0023】
次の工程で第1の治具2をワーク1から離脱させる。この離脱は第1の凍結媒体4と第2の凍結媒体5の凝固温度が異なる場合(たとえば水と骨材を含む高分子系凝固剤)には、前記第2の凍結媒体5の冷却温度を水の溶解温度にすることもできるので、その場合は第1の治具2を持ち上げるだけでワーク1から除去することができる。
このような場合のほかは、機械的手法により離脱を行なえばよい。その例としては、図6(a)のように、棒状、レバー状などの剥がし手段bを第1の治具2と第2の治具3のすき間に挿入して、てこ作用によりはがす方法や、第1の治具2の隅部等に衝撃を与える方法が挙げられる。
こうすれば、第2の凍結媒体5による接着強度が第1の凍結媒体4による接着強度よりも勝っており、第1の治具2と第2の治具3のワーク1に対する接着強度に差があるため、前記作用力により比較的容易に第1の治具2はワーク1の第1面1aから離脱され、図6(b)のように未加工の第2面1bが表出する。これによりワーク1を治具に移し替えたことになる。
【0024】
そこで後は、表出した第2面1bの汚れ等を払拭し、第2の治具3を予定している加工のための加工装置Mのテーブルあるいはこれに搭載した冷却手段上に載せ、ワーク1の第2面1bを機械加工する。
この状態が図7(a)であり、これにより未加工であった第2面1bが加工され、製品(この例では両面が研削ないし研摩された製品)1’となる。
あとは第2の治具3を加工装置Mから取出し、凝固点上の温度に上昇させて製品1’を第2の治具3から取り外せばよく、この取外しは温水などを収容した液槽に漬けたりすることによっても簡単に行なうことができる。
第2の凍結媒体5が骨材を含む高分子系凝固剤である場合には、同時に高分子系凝固剤の回収も行なえる。
【0025】
以上の工程により、ワーク1を治具からいったん外し、再度ワークを反転して治具に固定するという作業を完全になくすことができるので、きわめて作業性、能率が向上し、コストの大幅な低下を図ることができる。また、ワーク1の治具からの取外しがないので、未加工面を間違いなく加工することができる。
【0026】
なお、第2の凍結媒体5が主成分のシリコーンオイルに固体粒子からなる骨材を添加混合した骨材添加タイプの物である場合には、添加している骨材が強度向上材として働く。このためワークの接着固定力が非常に強くなり、ワークに対する加工力が強大であっても安定的な固定状態を保つことができる。
第2の凍結媒体5として骨材を含有したものである場合、図8(a)のように、ワーク1の第2面1bと治具3の固定面3aの対向面だけに使用してしてもよいし、(b)のように第2面1bだけでなくワーク1の第2面1bに隣接する面1cに塗布してもよい。この状態で第2の凍結媒体5を凝固させた場合には、ワーク1は第2面(下面)だけでなく周囲もがっちりと剛体により保持固定されるため、強加工たとえば溝切りなどした場合にも固定用面3aから剥がれたりしなくなる。また、もちろん第1の凍結媒体4と併用し、ワーク1の第2面1bと固定用面3aの対向面に骨材を含まない高分子系凝固剤を使用し、ワーク1の他の面(側面)1cと固定用面3aを骨材を含有している高分子系凝固剤で接着してもよい。本発明はこの形態を含んでいる。
【0027】
次に、第1発明の他の例を説明する。この例は第1の凍結媒体4と第2の凍結媒体5として、同一種類ないし性状のものを使用するが、相互に粘度や添加物の材質の相違等により接着強度が異なる性質を利用したものである。
これは特に骨材を含有している高分子系凝固剤の場合に効果的な方法である。骨材を含有している高分子系凝固剤の場合、同じ材質と粒度の骨材を使用しても、高分子系凝固剤に対する骨材の添加量によって接着強度が異なる。骨材の添加量が多い方が接着強度は強くなる。また、添加量が同じであっても、骨材の材質が異なる場合、とくに骨材それ自体の硬さなど機械的強度が異なる場合にも、接着強度は骨材の機械的強度が高い方が接着強度は高くなる。
【0028】
ワーク移し替えの手法は前述した第1態様と同じであるから、詳細は第1態様の説明を援用することとし、簡単に説明する。
第1工程としては、図9(a)に示すような骨材添加量の少ないあるいは材質的に機械的強度の低い骨材を用いた第1の凍結媒体4を使用して、第1の治具2に対してワーク1の第1面1aを凍結固定する。この固定の方法は前記した第1態様の場合と同じである。そして、第1の治具2を加工機械Mに搭載し、図3のように第1面1aを加工する。
この加工後、第1の治具2上の加工済みのワーク1の第1面1aを清浄化し、この第1面1aに図4のように骨材添加量の相対的に多いあるいは材質的に機械的強度の高い骨材を用いた第2の凍結媒体5を介して第2の治具3を装着し、このアッセンブリの第2の治具3を冷却し、第2の凍結媒体5を凝固してワーク1の第1面1aと凍結接合させる。
ついで、図6のように接着強度の差を利用して第1の治具2を前記した任意の方法により取り外せば、未加工面である第2面1bが自由面として存するワーク1が第2の治具3にしっかりと固定された状態となる。
そこで、あとは、ワーク1を固定している第2の治具3を加工機械Mに取り付けて加工を施せばよい。
この例の場合も前述した第1態様と同じ効果が得られる。
【0029】
図10ないし図13は第1発明の第2態様と第3発明を示している。
ワーク固定装置は、第1の治具2と、第2の治具3と、第1の治具2の固定用面2aにワーク1の第2面1bを凍結固定するための凍結媒体6と、第2の治具3の固定用面3aにワーク1の第1面(加工が済んだ状態)1aを凍結固定するための凍結媒体6とを備えている。
そして、この第2態様は、第1の治具2と第2の治具3として、固定用面2a,3aの面粗度により第1の治具2に対するワーク1の接着強度と第2の治具3に対するワーク1の接着強度に差を与え、ワーク1の移し替えを行なうようにしたものである。
【0030】
前記面粗度を相違させる方法は任意であり、たとえば、固定用面をサンドブラストなどにより傷を付けたりするほか、機械加工により縦方向又は/及び横方向に細かい溝を多数形成する方法、エッチング加工による方法などが挙げられる。さらには、もともとの固定用面3aに粗状の同材質あるいは他の材質の表面材をコーティングや貼り付けなどにより層着してもよい。表面材には多孔質のものたとえば繊維状物、鋳物、焼結体を含んでいる。
この第2態様においては、凍結媒体6は1種類のものを使用することができる。その例としては水、液状の高分子系凝固剤(骨材を含有しないもの)、骨材を含有した高分子系凝固剤などが挙げられる。しかし、もちろん第1態様と同じように接着強度の異なる2種のものを使用することもできる。
【0031】
ワーク移し替えの手法は基本的には前述した第1態様と同じであるから、詳細は第1態様の説明を援用することとし、簡単に説明する。
まず、固定用面2aの表面粗さが相対的に滑らかな第1の治具2を使用し、図11(a)のように凍結媒体6を介してワーク1の第2面1bを載せ、冷却により凍結媒体6を凝固させてワーク1を凍結固定する。そして、図11(b)のように、第1の治具2を加工装置Mに搭載して第1面1aに対して所望の加工を行なう。
次いで、第1の治具2を加工装置Mから外し、外部にてワーク1の第1面1aを清浄にする。そして、図12(a)のように固定用面3aの表面粗さが粗い第2の治具3の固定用面3aに凍結媒体6を塗布するか、またはワーク1の第1面1aに凍結媒体6を塗布するか、あるいは前双方に凍結媒体6を塗布し、第2の治具3の固定用面3aをワーク1の第1面1aに重ねる。
いずれにしても、凍結媒体6は固定用面3aの凹凸を埋めさらにその上に所要の厚さの膜が形成されるような塗布状態とすることが好ましい。
【0032】
そして、図12(b)(c)のように第1の治具2とワーク1と第2の治具3が重合したアッセンブリを、冷却手段により冷却して凍結媒体6を凝固させ、それにより第2の治具3に凍結媒体6を介してワーク1の第1面1aを凍結固定させる。
次いで、図13(a)のように第1の治具2の凍結媒体6による接着を強制的に除去し、第1の治具2をワーク1から離脱させる。これによりワーク1は第2の治具3に凍結固定される形で残り、したがって、ワーク移し替えが行われる。
あとは、第2の治具3を加工機械Mに搭載して、図13(b)のように未加工であった第2面1bを加工する。
【0033】
この態様においては、第1の治具2と第2の治具3の固定用面2a,3aの粗さが相違し、第2の治具3の固定用面3aは微小な凹凸を有している。このため、固定用面3aに塗布されている凍結媒体6は前記微小な凹凸に侵入し、それが冷却により凍結するため、投錨効果により強い接着強度が実現される。したがって、この第2態様は、同じ凍結媒体6を使用してワーク1の移し替えを行なえるので、簡便でコストを低下することができる。
【0034】
図14ないし図17は第1発明の第3態様と第4発明を示している。
ワーク固定装置は、第1の治具2と、第2の治具3と、第1の治具2の固定用面2aにワーク1の第2面1bを凍結固定するための凍結媒体6と、第2の治具3の固定用面3aにワーク1の第1面(加工が済んだ状態)1aを凍結固定するための凍結媒体6を含浸する粗状の多孔性補助材7とを備えている。
この第2態様は、凍結媒体6を含浸した多孔性補助材7を使用し、これを第2の治具3の固定用面3aに凍結媒体6の凍結接着力で貼り付け、多孔性補助材7にワーク1を凍結固定するため、投錨効果により第1の治具2に対するワーク1の接着強度と第2の治具3に対するワーク1の接着強度に差が与えられ、ワーク1の移し替えを行なうことができる。
【0035】
この第3態様において、多孔性補助材7は凍結媒体6を含浸できればよいので、種々のものを適用することができる。例としては、有機、無機、金属からなる繊維質のものたとえば、紙、布ないしシート等が挙げられるが、柔軟であっても柔軟でなくてもよいので、焼結板類も使用できる。
この第2態様も、凍結媒体6として接着強度が同等の1種類のものを使用することができる。その例としては水、液状の高分子系凝固剤(骨材を含有しないもの)、骨材を含有した高分子系凝固剤などが挙げられる。もちろん第1態様と同じように接着強度の異なる2種のものを使用することもできる。
【0036】
ワーク移し替えの手法は多孔性補助材7の使用を除いて基本的には前述した第1態様と同じであるから、詳細は第1態様の説明を援用することとし、簡単に説明する。
まず、図15のように第1の治具2の固定用面2aに凍結媒体6を介してワーク1の第2面1bを載せ、冷却により凍結媒体6を凝固させてワーク1を凍結固定する。そして、図12のように、第1の治具2を加工装置Mに搭載して第1面1aに対して所望の加工を行なう。次いで、第1の治具2を加工装置Mから外し、外部にてワーク1の第1面1aを清浄にする。ここまでは、第1態様と同じである。
【0037】
一方では、図16(a)のように、多孔性補助材7に凍結媒体6を含浸させておく。この含浸は多孔性補助材7の厚さ方向両面に十分に凍結媒体6が付着している状態にすることが好ましい。
含浸の方法は任意であり、塗布でもよいし、容器類に収容した凍結媒体6に多孔性補助材7を浸漬させる方法などを取ればよい。
次いで、図16(b)のように凍結媒体6を含浸させた多孔性補助材7を第2の治具3の固定用面3aに緊張状態で載せる。これは界面吸引力を利用してもよいし、多孔性補助材7を治具よりも少し大きめにして第2の治具3の固定用面3aを覆うように被せ、弾性バンド等により第2の治具3の側面に軽固定すればよい。
【0038】
次に、図16(c)のように、凍結媒体6を含浸させた多孔性補助材7を貼った第2の治具3をワーク1の第1面1aに重ね、このアッセンブリ状態のものを図16(d)のように冷却手段Cに載せて、第2の治具3を冷却する。
こうすれば、多孔性補助材7に含浸されている凍結媒体6が凝固することにより、治具3の固定用面3aと多孔性補助材7とが凍結接着されるとともに、多孔性補助材7とワーク1の第1面1aとが凍結固定される。
次いで、図17(a)のように第1の治具2の凍結媒体6による接着を強制的に除去し、第1の治具2をワーク1から離脱させる。これによりワーク1は図17(b)のように第2の治具3に凍結固定される形で残り、したがって、ワーク移し替えが行われる。
あとは、第2の治具3を加工機械Mに搭載して、未加工であった第2面1bを加工する。加工後は第2の治具3を凍結媒体6の凝固温度より高い温度にすることでワーク1から取り外すことができる。
【0039】
この態様においては、凍結媒体6を含浸させた多孔性補助材7を使用するため、第1の治具2と第2の治具3の固定用面2a,3aの粗さが相違したことと同じになり、多孔性補助材7の繊維状組織に侵入している凍結媒体6は冷却により凍結するため、投錨効果により多孔性補助材7とワーク1の第1面1aとの接触面および多孔性補助材7と第2の治具3の固定用面3aとの接触面において強い接着強度が実現される。したがって、この第2態様は、同じ凍結媒体6を使用してワーク1の移し替えを行なえるので、簡便でコストを低下することができる。
また、加工後、製品を取外せば、多孔性補助材7が独立した部材となるので取り扱いが容易であり、多孔性補助材7が溶解しない材質である場合、凍結媒体6として液状の高分子系凝固剤(骨材を含有しないもの)や骨材を含有した高分子系凝固剤を使用したときには、多孔性補助材7を温水に漬けるなどすることにより簡単に凍結媒体6を回収することができるとともに、多孔性補助材7を再使用することができるので、コストが安くなる。
【0040】
図18は第5態様を示しており、(a)のように、凍結媒体6を含浸させて凍結させたときの接着強度が異なる2種の多孔性補助材7a,7bを使用する。
この例としては、多孔性補助材7a,7bそとして、機械的強度、材質、面粗さなどが相違したものを使用すればよい。もちろん、同じものを使用して、凍結媒体として接着強度の相違するものを含浸させてもよい。
【0041】
この場合には、相対的に接着強度の弱い多孔性補助材7aを第1の治具2に貼り、前述したように凍結によりワーク1の第2面1bを接着固定し、この状態で図18(b)のように第1の治具2を加工機械Mに搭載して第1面1aを加工する。
ついで、相対的に接着強度の強い多孔性補助材7aを第2の治具3に貼り、前述した第3態様と同じようにワーク1の第1面1aに重ね、図18(c)のように冷却により接着固定して2枚の治具2,3がワーク1に接着されたアッセンブリ状態にする。
そして、前述した第3態様と同じように接着強度の差を利用して第1の治具2をワーク1から離脱させ、それによりワーク1を第2の治具3に移し替える。
【0042】
以上の説明はあくまでも例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
ワーク1の形状、治具2,3の形状、構造はいずれも任意である。治具2,3は必ずしも平坦である場合に限らず、溝や凹部などを有している場合を含んでいる。
ワーク1の第1面1aと第2面1bは異なった面であればよく、必ずしも180度変位した面の関係であることを要しない。たとえば、90度変位した面の関係であってもよい。
【0043】
ワーク1に対する加工も任意であり、ワークが平坦な場合の加工の例としては、たとえば、第1面1aと第2面1bにそれぞれ所要深さの溝や孔などを形成する加工、いずれかの面を研摩あるいは研削し、他の面には溝や孔を形成する加工などがある。
本発明で好適な方法の例としては、平板状のワーク1からたとえば0.1〜0.3mmといった厚みの薄い多数の帯片1’を切断加工することが挙げられる。図19はその方法を模式的に示しており、凍結媒体として前記いずれの態様のものを使用してもよいが、ここでは接着強度の異なる第1と第2の凍結媒体を使用する場合を例にとって説明する。まず、第1の治具2に第1の凍結媒体4によりワーク1の第2面1bを凍結固定し、この状態で(a)のように加工機械(スライシングマシン)Mのテーブルに搭載し、溝底とワーク第2面間に適度の肉厚t1を残すようにワーク全面に溝kを切り込む。この加工後、第1の治具2を加工機械から取外し、ワーク1の第1面(溝加工を行なった面)1aを清浄化し、第2の治具3の固定用面又は/及びワーク1の第1面1aに第2の凍結媒体5を塗布し、第2の治具3をワーク1の第1面1aに重ね、この状態で全体を反転しあるいは反転しないで冷却手段の冷却面を第2の治具3に接触させ、(b)のように第2の治具3にワーク1の第1面1aを凍結固定する。この場合、第2の凍結媒体5は溝k内にも塗布することが好ましく、溝内での第2の凍結媒体5の凍結によりワーク全体が剛化される。
【0044】
そして次に、第1の治具2と第3の治具3のワークに対する接着強度差を利用して(c)のように第1の治具2を離脱させる。これでワーク1は第2の治具3に移し替えられたことになるので、(d)のように第2の治具3を平面研削盤などの加工機械M’に搭載し、ワーク1の第2面1bを研削して前記肉厚t1を除去する。あとは第2の治具3を加工機械から取外し、第2の凍結媒体5を溶解すればよく、これにより(e)のようにワーク1から多数のスライス切断片1’が製作される。
【0045】
また、本発明よる加工例としては、異形状のワークのある面と他面とを加工する場合が挙げられる。
図20はその具体例としてフェライト材のE型コアの上端面のギャップと底面加工を行なう場合を示しており、ワーク1の加工箇所は、(a)のように両側と中央の足fa,fbの端面(第2面)1bと、足の付け根を連結している梁部分fcの底面(第1面)1aである。こうしたE型コアは通常第2面だけを加工しているが、小型化の要求に応ずるべく第1面の梁部分の肉厚tを薄くすることが必要となった。しかし、E型コアは焼結体で構成されているため、焼結時に梁部分fcはその肉厚tを仕様寸法まで薄くすることは困難である。そこで、第1面を研削して対応することが必要になったのである。(b)は製品1’を示しており、中足fbが両側の足fa,faよりも高さが低く、梁部分fcの肉厚がt'(t−x)となっている。
【0046】
本発明においては、まず、第1の治具2として、(c)のようにワーク1の両側と中央の足fa,fbを受け入れ得る寸法形状の溝(固定用面)2a’を有するものを使用し、この溝2a’を含む領域に第1の凍結媒体4たとえばシリコーンオイルを塗布し、両側と中央の足fa,fbを溝2a’に挿入する。このときには、足fa,fbの付け根面すなわち梁部分fcの上面fdを位置決め基準とすることが好ましく、この状態で冷却手段により第1の凍結媒体4を凝固させ、これを介してワーク1を第1の治具2に固定する。
そして、その第1の治具2を加工機械たとえばクリープ研削盤Mのテーブルに搭載し、(d)のようにワーク1の梁部分fcの底面すなわち第1面1aを研削し、肉厚tをt’に加工する。
【0047】
この加工後、第1の治具2を加工機械から外し、加工済の面(第1面)1aを清浄化する。そして、この加工面又は/及び第2の治具3の固定用面3aに第2の凍結媒体5たとえばシリコーンオイルに骨材を添加混合したものを塗布し、第2の治具3をワーク1の第1面1aに重ねてアッセンブリとし、この状態で全体を反転しあるいは反転しないで冷却手段の冷却面を第2の治具3に接触させ、冷却して(e)のように第2の治具3にワーク1の第1面1aを凍結固定する。
【0048】
そして次に、第1の治具2と第3の治具3のワークに対する接着強度差を利用して第1の治具2を離脱させる。この離脱は、偏荷重がかからないように、第1の治具2の両側をクランプして振動を与えながら水平に持ち上げたり、第1の治具2または第2の治具3の固定用面縁部にたとえばジャッキ用ボルトを螺合しておいてそのボルトを回転して突出させて相手方治具を離間方向に押圧したり、さらには第1の治具2に瞬間的に熱を加えるなど任意の方法で行なえばよい。
第1の治具2を離脱を確実にするには、第1の凍結媒体4と第2の凍結媒体5の接着強度差が3倍以上と大きいものを使用し、さらに要すれば第2の治具3として前述したような固定用面3aの面粗度の粗いものあるいは多孔性補助材7を使用したり、あるいは(g)に示すようなワーク1の梁部分fcを受け入れるような溝付きの固定用面3a’としたりすればよい。
【0049】
前記作業でワーク1は第2の治具3に反転固定状態で移し替えられたことになるので、(f)のように第2の治具3を再び加工機械Mのテーブルに搭載し、ワーク1の第2面すなわち両側と中央の足fa,fbの端面1bを平らに研削し、かつギャップ加工を行なう。
この加工は任意であり、成形砥石でなく、平面研削砥石を使用しNCプログララムによって平面研削モードとクリープ溝研削モードを組み合わせてもよい。
あとは第2の治具3を加工機械から取外し、第2の凍結媒体5を溶解すればよく、これにより(b)のようにギャップを有ししかも梁部分の肉厚が薄い目的製品1’が得られる。
なお、前記ワーク1の第2面の加工に際して、両側と中央の足fa,fbの間のすき間を凍結媒体4または5で埋めることも好適であり、これによる補強効果で精度のよいギャップ加工を行なえる。
【0050】
前記E型コアの加工は、必ずしも図20の態様に限定されず、先にギャップ加工を行い、次いで梁部分の肉厚減少加工を行なってもよい。
図21はこの例を示しており、(a)のように第1の治具2に第1の凍結媒体4を介してワーク1の梁部分fcの底面(第2面)1bを凍結固定して、加工機械Mに搭載し、両側と中央の足fa,fbの端面(第1面)1aを平らに研削し、かつギャップ加工を行なう。
次いで、第1の治具2を機外に取出し、第1面1aを清浄化し、第2の凍結媒体5たとえばシリコーンオイルに骨材を添加混合したものを塗布し、第2の治具3をワーク1の第1面1aに重ねてアッセンブリとし、この状態で全体を反転しあるいは反転しないで冷却手段の冷却面を第2の治具3に接触させ、冷却して(b)のように第2の治具3にワーク1の第1面1aを凍結固定する。
【0051】
この場合、第2の治具3として、ワーク1の両側と中央の足fa,fbを受け入れられる溝付き固定用面3a’を有するものを使用する。梁部分fcの上面fdが位置決め基準となる。そして、第1の治具2と第3の治具3のワークに対する接着強度差を利用して仮想線で示すように第1の治具2を梁部分fcの底面(第2面)1bから離脱させる。
これで移し替えが終わるので、あとは(c)のように第2の治具3を再び加工機械Mのテーブルに搭載し、梁部分fcの底面(第2面)1bを所要厚さt’になるまで研削加工すればよい。
他の詳細な点は、図20の説明を援用する。いずれにしても本発明を適用することで従来不可能視されていた小型なE型コアをすぐれた作業性と高い能率で製作することができる大きなメリットが得られる。
【0052】
なお、第1の凍結媒体と第2の凍結媒体の接着強度が異なるケースとして、精製度合いの相違に起因する場合があり、これも本発明に含まれる。
本発明はまた、第1発明の各態様を併用する場合を含んでいることはもとよりである。たとえば治具として図10のような面粗度の異なるものを使用し、さらに多孔性補助材を使用することも含まれる。
また、本発明は第1の治具と第2の治具のワーク固定用面の面粗度を利用して接着強度に差を持たせるが、その態様として、ワーク固定用面の面粗度を同等にし、治具の材質たとえば鋼、アルミニウム、銅などを代える場合も含まれる。
また、本発明の応用として、面粗度の粗い治具の使用や凍結媒体を含浸させた多孔性補助材の使用は、逐次加工でない場合のワーク強力固定法ないし固定手段として有効である。
【0053】
なお、凍結媒体としてシリコーンオイルあるいはこれを主成分とするものを使用したときには数々の利点がある。すなわち、氷の凍結方式では、実際上は−10℃以下にしないと十分な固定力が発揮されないため、装置的に−10℃以下の冷凍能力のある装置を必要とするが、シリコーンオイルは、水の凝固点よりも凝固点が高く、0℃以上の温度でもワークを固定用面に安定的に固定化しておくことができるので、加工液で代表される流体による冷却作用でも凍結固定を維持することができる。
このことから、特別な冷却装置は不要となるので装置コストが極めて安価となり、ワーク1を治具2,3に固定させるための冷却手段としては、水で代表される流体による通水方式のもの、冷却エアなどの低温流体でワークおよび治具を直接あるいは間接的に冷却する方式などでよいことになる。
【0054】
さらにまた、加工機械Mに治具2,3を固定する手段として、ボルト式や爪式などの機械的なチャック、真空チャック、マグネットチャックで代表される汎用のチャックを使用できるため、装置を極めて単純で安価なものとすることができる。また、加工後の製品の治具3からの脱離も極めて簡単で、能率よく行うことができる。
また、凍結媒体としてシリコーンオイルあるいはこれを主成分の凝固温度が高いため、第1の治具2から第2の治具3への移し替え作業(ワークの加工済み面のクリーニング、凍結媒体の塗布、アッセンブリ化)が数分間でできることとあいまって、作業室温が通常28℃以下であれば凍結媒体が溶解する心配はほとんどないので、冷却手段を特に要しない利点がある。
【0055】
【実施例】
次に本発明の実施例を示す。
実施例1
第1発明の第1態様によりワークの2面加工を行なった。
ワークは10mm×10mm×2mmのフェライト板であり、この両面を研削加工して10mm×10mm×0.8mmの製品とする加工である。
この加工に際して、第1と第2の治具として材質が焼入れ鋼、固定用面の寸法が150×150mmのものを用いた。
第1の接着媒体としては、環状メチルポリシロキサンの低分子シリコーンオイルを使用した。この接着媒体の特性は、無色透明の液体で、粘度(25℃)が2.4cSt(m2/S)、凝固点17℃、屈折率(25℃)が1.394、表面張力19.0{1.90}dyn/cm{MN/cm}、比重0.95(25℃)である。
【0056】
この第1の接着媒体を第1の治具の固定用面に約2μmの厚さに塗布し、この上にワークを150枚配列し、この状態で治具を冷却水循環式の冷却盤に搭載して、固定用面を2℃に冷却した。前記温度に到達した瞬間、第1の接着媒体は凝固し、ワークの第2面が接着固定された。その接着強度(せん断方向)を測定したところ、8kg/cm2であった。
加工機械としては回転マグネットテーブルを備えたロータリ研削盤を使用した。工具としてはレジノイドボンドダイヤモンド研削砥石(粒度#400)、400mmφを使用し、加工条件は、砥石回転速度:1500rpm、テーブル回転速度:20rpm、切込み速度0.08mm/rev、加工モード:プランジ加工、ダウンカットとした。
前記テーブルに第1の治具5枚を載せてチャッキングし、界面活性剤と鉱油と水とを配合したエマルジョンタイプの加工液を約3℃に冷却したクーラント液を、砥石ヘッドの中心軸に沿って砥石に通じる給水路を通して砥石内側に約200cc/min供給した。クーラント液は砥石の回転による遠心力で悲惨噴霧され、ワークと砥石の接触部位、ワーク、治具に供給された。なお、作業環境温度は25℃であった。
【0057】
この結果、ワークは第1の治具固定用面に固定され状態に保持され、厚さ1.5mmまで研削された。加工後、加工液の供給を停止し、第1の治具を加工機械から離脱し、第1の接着媒体の凍結を維持させながら第1面の汚れをクリーニングし、水分を完全に除去した。
そして、ワークの第1面に第2の凍結媒体を塗布した。第2の凍結媒体は前記第1の凍結媒体に骨材として、平均粒径が30μmの小麦粉を50wt%添加し、均一に混合したクリーム状のものを使用した。
この状態で第2の治具を前記ワークの第1面に重ね、全体を反転して第2の治具を冷却盤の冷却面に接触させ、2℃に冷却した。これにより第2の凍結媒体は凝固し、ワークの第1面は第2の治具に強固に接着固定された。この段階で接着強度を測定したところ28kg/cm2であった。
【0058】
次いで、積層固定状態にあるアッセンブリの第1の治具と第2の治具との間に棒状の工具を挿入し、加力した。その結果、接着強度の差異により、第1の治具とワーク第2面を接着している第1の凍結媒体の接合が破壊され、第1の治具が分離され、ワークの第1面は第2の凍結媒体の接着力によりしっかりと第2の治具に固定されたままだった。
ついで、第2の治具を前記加工機械に搭載し、同条件により第2面の研削を行なった。これにより、ワークは厚さが0.8mmに研削された。
加工後は、第2の治具を加工機械から取外し、25℃の水に漬けることにより第2の凍結媒体は溶解して凍結が解除され、製品が得られた。同時に凍結媒体は溶解して温水表面に浮上し、回収された。
比較のため、第1の治具に第1の凍結媒体でワークを固定して前記条件で研削を行ったのち、第1の凍結媒体を解凍してワークと治具を分離、洗浄、乾燥し、再度ワークを第1の凍結媒体を塗布した第2の治具に載せ、整列させて凍結させ、ワーク第2面を研削し、製品を得た。その結果、この方法に比べ、本発明はトータル時間が約1/20、コストが約1/5に削減されることがわかった。
【0059】
なお、第1凍結媒体として、粘度(25℃)が2.5cSt(m2/S)、凝固点が10℃の他の特性が第1実施例と同じ低分子シリコーンオイルを使用し、第2凍結媒体としてこのシリコーンオイルに第1実施例と同じ骨材を同じ添加量で添加したものを使用し、治具の冷却温度を1℃とするほか前記条件と同一にして加工を行なってみた。
その結果、やはりワークの移し替えを簡単かつ短時間で行なえ、厚さが0.8mmの精度のよい製品を得ることができた。
【0060】
実施例2
第1の凍結媒体として水を使用し、第2の凍結媒体として実施例1と同じものを使用し、実施例1と同じワークの両面研削加工を行なった。
第1媒体(水)を治具に塗布し、冷却手段として熱電素子を利用した凍結チャック装置を使用し、ワークを配列した治具を−10℃に冷却し、水を凍結してワークを固定させた。この状態の接着強度は18kg/cm2であった。
加工液との接触による氷の溶解を防止するため、第1の凍結媒体の上に第1の凍結媒体を塗って保護膜を作り、この処理後、治具を加工機械のテーブル上に搭載した前記冷却手段(凍結チャック装置)に取り付け、治具固定用面温度を−10℃を維持しつつ第1面の研削を行なった後、外部に治具ごと取り出して第1面を清浄化し、実施例1と同じように第2の凍結媒体を塗布した第2の治具を重ね、前記凍結チャック装置にて−5℃に冷却し、第2の治具をワークに凍結固定した。この冷却温度は第1媒体として水を使用したことによる。
【0061】
ついで、積層固定状態にあるアッセンブリの第1の治具と第2の治具との間に棒状の工具を挿入し、加力した。それにより第1の治具はきれいにワークから離脱され、第2の治具はワークをしっかりと不動に固定した状態のまま残された。
第2の治具を加工機械のテーブル上に搭載した前記冷却手段(凍結チャック装置)に取り付け、治具固定用面温度を2℃に維持して第2面の研削加工を行なった。その結果、ワークは厚さ0.8mmに精度よく研削された。
【0062】
実施例3
第1の凍結媒体として、第1実施例のシリコーンオイルと小麦粉を重量比で6:4となるように添加混合したものを使用し、第2凍結媒体として第1実施例のシリコーンオイルと小麦粉を重量比で4:6となるように添加混合したものを使用した。第1凍結媒体の性状はクリーム状、第2凍結媒体の性状はペースト状であった。
ワーク、治具、加工法、加工条件等は第1実施例と同じにして行なった。
第1凍結媒体による接着強度は22kg/cm2、第2凍結媒体による接着強度は35kg/cm2であった。
その結果、ワークの凍結を解除して治具から取り外す要なく、容易な移し替えと0.8mmへの高精度な両面研削加工を行なうことができた。
【0063】
実施例4
第1の凍結媒体として、第1実施例のシリコーンオイルと小麦粉を重量比で5:5となるように添加混合したものを使用し、第2凍結媒体として第1実施例のシリコーンオイルと粒径10μm以内のアルミナ粉を重量比5:5となるように添加混合したものを使用した。
第1凍結媒体と第2凍結媒体の性状はいずれもクリーム状であった。
ワーク、治具、加工法、加工条件等は第1実施例と同じにして行なった。
第1凍結媒体による接着強度は28kg/cm2、第2凍結媒体による接着強度は43kg/cm2であった。
この結果、ワークの凍結を解除して治具から取り外す要なく、容易な移し替えと0.8mmへの高精度な両面研削加工を行なうことができた。
【0064】
実施例5
第1の治具として材質焼入れ鋼、固定用面の面粗度0.05Sのものを使用し、第2の治具として、材質焼入れ鋼で固定用面をサンドブラストにより面粗度0.1Sにしたものを使用し、共通の凍結媒体として第1実施例の第1凍結媒体と同じものを使用し、第1実施例とワーク、加工法、加工条件等を同じにして両面研削加工を行なった。
第1の治具による接着強度は12kg/cm2、第2の治具による接着強度は17kg/cm2であった。この相違は、同一の凍結媒体を用いていることから、治具の表面粗さによる投錨効果によるものであることが確認された。
この実施例においても、ワークの凍結を解除して治具から取り外す要なく、容易な移し替えと0.8mmへの高精度な両面研削加工を行なうことができた。
【0065】
実施例6
多孔性補助材として市販のテッシュペーパーと同じ材質で、寸法が200×200×0.04mmの紙を使用した。凍結媒体としては第1実施例の第1凍結媒体と同じものを使用し、第1実施例とワーク、治具、加工法、加工条件等を同じにして厚さ0.5mmへの両面研削加工を行なった。
前記多孔性補助材に凍結媒体を8cc噴霧し、全体を湿潤させた。この状態で20℃に保持しておき、ワークの第1面の加工完了を見計らって第2の治具の固定用面上に載せ、清浄化したワーク第1面を前記凍結媒体含浸済みの多孔性補助材の上に載せ、実施例1と同じように第2の治具を冷却し、凍結媒体を凍結した。それにより多孔性補助材は第2の治具の固定用面およびワーク第1面に強固に接合された。
【0066】
第1の治具の凍結媒体によるワーク接着強度は8kg/cm2、多孔性補助材を用いたワーク接着強度は、表面粗さと投錨効果により12kg/cm2と高かった。
この実施例においても、ワークの凍結を解除して治具から取り外す要なく、容易な移し替えと0.5mmへの両面研削加工を行なうことができた。
さらに、多孔性補助材として手ぬぐいに使用されている木綿布を使用したところ、そのワーク接着強度は、17kg/cm2とさらに高かった。
【0067】
実施例6
本発明を適用してアルチック材の磁気ヘッド用素材(200mmφ、厚さ1.7mm)から多数のヘッド部品を切断加工した。
第1の治具に第1の凍結媒体として実施例1のシリコーンオイルを塗布し、ワークを載せて0℃に冷却することにより凍結固定し、ついで、スライシンクマシンのテーブルに第1の治具を載せ、ワークの下面に0.1mmの肉厚を残すように切断砥石でワーク上面より1.6mmの溝を切込んだ。
ワーク全面に溝加工を行なった後、第1の治具をテーブルから取外し、ワークの加工済み面を圧縮エアでブローして汚れと水分を除去し、第2の治具の固定用面に第1実施例のシリコーンオイルと小麦粉を5:5の比率で混合した第2の凍結媒体を塗布し、第2の治具を加工済み面に重ね、反転して第1実施例と同じく冷却手段により第2の凍結媒体を凍結させた後、第1の治具と第2の治具間に棒状工具を差し込んでこじることにより第1の治具をワークから剥脱させた。
ワークを固定している第2の治具を平面研削盤のテーブルに搭載し、平面トラバース研削によりワークの未加工面を0.1mm研削除去した。
この加工後、25℃の水をワークにかけると第2の凍結媒体は溶解し、ワークは溝ごとにバラバラとなって厚さ0.2mm、高さ1.6mmの多数の製品が同時に得られた。
【0068】
実施例7
本発明によりE型フェライトコアの中足ギャップ加工と梁部分薄肉化加工を行なった。
ワークは全高が7mm、全幅が15mmであり、このワークの中足を両側足に対し0.5mm削ってギャップを形成し、また梁部分の厚さt2mmを厚さt’0.8mmにする。
第1の治具として両側足と中足とをゆとりを持ってはめうる形状の溝を形成したものを使用し、第1の凍結媒体として第1実施例のシリコーンオイルを使用し、両側足と中足を溝に挿入して、ワークを載せて2℃に冷却することにより凍結固定した。各ワークは紙面に対し前後方向で相互に密接するように30枚並べた。
この第1の治具を平面研削盤のテーブルに固定し、レジノイドボンドダイヤモンド研削砥石(粒度#400)を使用し、砥石回転速度2700rpm、テーブル送り速度9000mm/minで梁部分の底面を研削した。
【0069】
加工後、第1の治具を機外に取出し、エアブローにて水分、切粉などを除去した。第2の治具として梁部分の底面と側面をはめうる凹部を形成したものを使用し、第2の凍結媒体として第1実施例のシリコーンオイルと小麦粉を5:5の比率で混合したものを第2の治具に塗布し、第2の治具を加工済みの梁部分の底面に重ね、全体を反転して第1実施例と同じく冷却手段により第2の凍結媒体を凍結させた後、第1の治具全体を4方向から同時に加力して第1の治具をワークから剥脱させた。その後、両側足と中足との間に第2の凍結媒体を充填し冷却して凍結させた。
第2の治具を平面研削盤のテーブルに固定し、成形砥石を使用し、テーブル送り速度900mmにして、両側足と中足の端面を0.1mm研削し、次いで中足をクリープ研削した。
この結果、仕様通りのギャップと薄肉梁部分を有する精度のよいE型コアが得られた。
また、図22に示す逆の加工順による手法も実験したが、この方法でも仕様通りのギャップと薄肉梁部分を有する精度のよいE型コアを製造できることが確認された。
【0070】
【発明の効果】
以上説明した本発明の請求項1によるときには、ワークの複数面を凍結加工法により加工する場合に治具に凍結固定されているワークを解凍することなく他の治具に移し替えることができ、この作業の手間と時間を大幅に削減し、加工能率を大幅に向上することができるというすぐれた効果が得られる。
請求項2によれば、接着強度の異なる第1と第2の凍結媒体を使用するので、治具へのワーク移し替えを簡単確実に行なえるとともに、治具としては同じものを使用できるので経済的であるというすぐれた効果が得られる。
請求項3によれば、ワーク固定面の面粗さの異なる2種の治具を使用するので、投錨効果により固定が確実で、治具へのワーク移し替えを簡単確実に行なえるとともに、凍結媒体は共通のものを使用できるので経済的であるというすぐれた効果が得られる。
【0071】
請求項4によれば、凍結媒体を含浸させた多孔性補助材を使用するので、投錨効果により固定が確実で、治具へのワーク移し替えを簡単確実に行なえるとともに、治具および凍結媒体は共通のものを使用できるので経済的であるというすぐれた効果が得られる。
請求項5ないし7によれば、簡単な構造によりワークの複数面を凍結加工法により加工する場合に治具に凍結固定されているワークを解凍することなく他の治具に移し替えることができ、この作業の手間と時間を大幅に削減し、加工能率を大幅に向上することができるというすぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1発明の第1態様に用いる手段と第2発明を示す斜視図である。
【図2】(a)は第1発明の第1態様における第1の治具へワークを凍結固定する工程を示す側面図、(b)は同じくその部分拡大図である。
【図3】第1発明の第1態様におけるワーク加工状態を模式的に示す正面図である。
【図4】(a)と(b)はワークの第1面の加工後、ワークの第2面へ第2の治具を凍結固定するための準備段階を示す斜視図、(c)はワークの第2面へ第2の治具を配置した状態の側面図、(d)はその部分的拡大図である。
【図5】ワークの第2面へ第2の治具を凍結固定している状態を示す側面図である。
【図6】(a)は第1の治具をワークから分離させる工程の例を示す側面図、(b)はワーク移し替え完了状態の側面図である。
【図7】(a)はワーク移し替えた第2の治具による加工状態を模式的に示す側面図、(b)は2面加工された製品の斜視図である。
【図8】(a)と(b)は本発明における凍結媒体の使用状態例を示す部分的断面図である。
【図9】(a)と(b)は本発明のおける接着強度の異なる凍結媒体の他の例を示す説明図である。
【図10】本発明の第1発明の第2態様と第3発明の装置を示す斜視図である。
【図11】(a)は第1発明の第2態様において、第1の治具にワークの第1面を凍結固定している状態を示す側面図、(b)は第1面を加工している状態を示す側面図である。
【図12】(a)は第1面を加工後、ワークの第2面へ第2の治具を凍結固定するための準備段階を示す斜視図、(b)はワークの第2面へ第2の治具を配置した状態の側面図、(c)はその部分的拡大図である。
【図13】(a)は第1の治具をワークから分離させる工程の例を示す側面図、(b)はワーク移し替えた第2の治具による加工状態を模式的に示す側面図である。
【図14】第1発明の第3態様と第4発明の固定装置を示す斜視図である。
【図15】(a)は第1の治具にワークの第1面を固定した状態の斜視図、(b)は加工状態を示す正面図である。
【図16】(a)は多孔性補助材の模式的断面図、(b)は多孔性補助材を第2の治具に取り付ける状態を示す斜視図、(c)はワークの第2面に第2の治具を配置する段階を示す斜視図、(d)は第2の治具をワークの第2面に凍結固定させた状態を示す側面図である。
【図17】(a)は第1の治具をワークから分離させる工程の例を示す側面図、(b)はワーク移し替えた第2の治具による加工状態を模式的に示す側面図である。
【図18】(a)は第1発明の第4態様と第4発明の固定装置を示す斜視図、(b)はワークの第1面を加工している状態の側面図、(c)はワークの第2面に第2の治具を配置し、凍結固定させた状態を示す側面図である。
【図19】本発明による加工例を示すもので、(a)は第1の治具を使用した第1の加工状態を模式的に示す側面図、(b)はワークの第2面に第2の治具を重ねて凍結固定させた状態を模式的に示す側面図、(c)は第1の治具をワークから分離させた状態を模式的に示す側面図、(d)は第2の治具を使用して第2の加工を行なっている状態を模式的に示す側面図、(e)は得られた製品の斜視図である。
【図20】本発明による別の加工例を示すもので、(a)はワークの状態を示す正面図、(b)は製品の状態を示す正面図、(c)は第1の治具と第1凍結媒体を使用してワークを凍結固定している状態を模式的に示す断面図、(d)は加工状態を模式的に示す断面図、(e)はワークの第2面へ第2の凍結媒体を介して第2の治具を配したアッセンブリを冷却により凍結固定している状態を示す模式的断面図、(f)は第1の治具をワークから分離させた後、第2の治具により第2の加工を行なっている状態を模式的に示す断面図、(g)は第2の治具の別の例を示す要部断面図である。
【図21】本発明による別の加工例の別態様を示すもので、(a)は第1の治具と第1凍結媒体を使用してワークを凍結固定したものを加工している状態の模式的断面図、(b)はワークの第2面へ第2の凍結媒体を介して第2の治具を配したアッセンブリを冷却により凍結固定している状態を示す模式的断面図、(c)は第1の治具をワークから分離させた後、第2の治具により第2の加工を行なっている状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 ワーク
1a 第1面
1b 第2面
2 第1の治具
3 第2の治具
4 第1の凍結媒体
5 第2の凍結媒体
6 凍結媒体
7 多孔性補助材

Claims (8)

  1. ワークの複数面を逐次加工するにあたり、ワークを凍結媒体により第1の治具上に固定して加工を行った後、ワークの非固定面に第2の治具を前記凍結媒体によるよりも接着強度を強くして凍結媒体により固定し、接着強度差により第1の治具とワークとの接着を解除して第1の治具をワークから離脱させることにより第2の治具へのワークの移し替えを行ない、第2の治具上のワークを加工することを特徴とする凍結式ワーク加工法。
  2. 接着強度の異なる第1と第2の凍結媒体を使用し、ワークを相対的に接着強度の弱い第1の凍結媒体により第1の治具上に固定して加工を行った後、第1の接着媒体よりも相対的に接着強度の強い第2の接着媒体によりワークの非固定面に第2の治具を固定する請求項1に記載の凍結式ワーク加工法。
  3. ワーク固定面の面粗さの異なる2種の治具を使用し、ワークを面粗さが相対的に小さい第1の治具上に凍結媒体により固定して加工を行った後、面粗さが第1の治具よりも相対的に大きい第2の治具に凍結媒体によりワークの非固定面を固定する請求項1に記載の凍結式ワーク加工法。
  4. 凍結媒体を含浸させた多孔性補助材を使用し、第1の治具にワークを凍結媒体により固定して加工を行なった後、前記凍結媒体含浸多孔性補助材を第2の治具上に配し、冷却により第2の治具に貼り付けるとともにワークの非固定面を凍結固定する請求項1に記載の凍結式ワーク加工法。
  5. ワークのある面を接着固定すべき第1の治具と、ワークのある面と異なる他の面を固定すべき第2の治具と、第1の治具にワークを接着させるための第1の凍結媒体と、第2の治具にワークを固定するための第1の凍結媒体よりも相対的に接着強度の高い第2の凍結媒体とからなることを特徴とするワークの複数面を逐次加工のためのワーク固定装置。
  6. ワークのある面を接着固定すべき第1の治具と、ワークの他の面を固定すべき第2の治具と、第1の治具にワークを接着させるための凍結媒体と、第2の治具にワークを固定するための凍結媒体とからなり、かつ前記第2の治具が第1の治具よりもワーク固定面の表面粗さが相対的に大であることを特徴とするワークの複数面を逐次加工のためのワーク固定装置。
  7. ワークのある面を接着固定すべき第1の治具と、ワークの他の面を固定すべき第2の治具と、第1の治具にワークを接着させるための凍結媒体と、第2の治具にワークの他の面を固定するための凍結媒体を含浸させた多孔性補助材とからなることを特徴とするワークの複数面を逐次加工のためのワーク固定装置。
  8. 凍結媒体が水、シリコーンオイルで代表される高分子系凝固剤、前記高分子系凝固剤に粉末状骨材を添加したもののいずれかである請求項1ないし7のいずれかに記載の凍結式ワーク加工法またはワーク固定装置。
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