JP3731230B2 - 新規ジアミン化合物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性高分子、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリアミノビスマレイミド等の製造原料として使用し得る新規ジアミン化合物およびその製造方法並びに該新規ジアミン化合物の製造原料として用いられる中間体としての新規芳香族ジニトロ化合物および新規ビスフェノール化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンの重縮合により得られるポリイミドは、耐熱性および耐薬品性に優れている。このような性質から、ポリイミドは様々な用途に用いられており、特に電気、電子材料分野においては、保護材料、絶縁材料等として広く用いられている。
特に液晶表示素子の配向膜用途においては、塗膜の耐久性故にこれまでポリイミドがもっぱら用いられてきた。しかし、液晶表示素子の高密度化、高性能化等が図られる中で、ポリイミドの表面特性が特に重視され、従来のポリイミドにはない新たな特性の付与が必要となってきている。
【0003】
液晶表示素子は、電圧の印加による液晶の配向の変化を利用した表示素子であり、小型軽量、消費電力が小さい等の特性が注目され、近年各種ディスプレー用の表示素子としてめざましい発展を遂げている。なかでも正の誘導異方性を有するネマチック型液晶を、ポリイミド等からなる液晶配向膜を有する透明電極付き基板間にサンドイッチ構造にし、その液晶分子の長軸が前記基板間で連続的に90度捻れるようにしてなる Twisted Nematic(TN)型液晶表示素子(以下、「TN型表示素子」という。)はその代表的なものである。通常TN型表示素子の液晶の配向は、ラビング処理が施された液晶配向膜により規制される。
【0004】
しかしながら、TN型表示素子は、コントラストおよび視覚依存性が不充分であり、最近、よりコントラスト及び視覚依存性に優れるSTN(Super Twisted Nematic)型表示素子およびSH(Super Homeotropic)型表示素子等が開発されている。STN型表示素子は、液晶にネマチック型液晶と光学活性物質であるカイラル剤とをブレンドしたものを用い、液晶分子の長軸を基板間で連続的に180度以上捻るようにしてなる液晶表示素子である。また、SH型表示素子は液晶分子長軸方向の誘電異方性が負の液晶を基板に対し垂直に配向し、電圧印加により液晶分子を基板に水平に倒すことによって生じる屈折率の変化を利用して単純マトリックス駆動で動作させるものである。
【0005】
これらの液晶表示素子では、液晶分子の長軸方向を基板表面に対して一定の傾斜配向角(以下「プレチルト角」という。)を持って配向させることが重要である。液晶分子を配向させる代表的な方法としては、基板表面にポリイミド等の有機薄膜を形成し、その表面を綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一定方向にラビングして液晶配向膜とし、ラビング方向に液晶分子を配向させる方法がある。しかし、ポリイミドのラビングにより得られるプレチルト角は通常1〜3度であり、それ以上の高いプレチルト角を得ることは困難である。また、形成した液晶配向膜に、膜厚の面内バラツキ(以下、「膜厚ムラ」という。)、ラビングムラ等の欠陥があるとプレチルト角のばらつきが生じ、これが表示ムラとなる。従って、任意にプレチルト角の制御ができ、液晶配向膜の塗布膜厚のムラあるいはラビングムラによるプレチルト角の変化が小さい工業的に有用な液晶配向剤の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規なジアミン化合物を提供することである。
本発明の他の目的は、ポリイミドを各種液晶表示素子の液晶配向膜として用いたときに、優れた耐久性および耐熱性に加え、ラビング条件に依存せず、安定に高いプレチルト角を発現するようなポリイミドの製造原料となり得る新規なジアミン化合物を提供することである。
本発明の他の目的は、前記の新規ジアミン化合物の製造方法を提供することにある。
本発明のさらなる他の目的は、前記の新規ジアミン化合物の製造原料として用いられる中間体としての新規芳香族ジニトロ化合物および新規ビスフェノール化合物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第1に下記式(I)
【0008】
【化3】
【0009】
(式(I)中、R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基およびフェニル基から選択される1種の基であり、R2およびR3は、各々独立に、水素原子またはメチル基であり、R4およびR5は、各々独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であり、Xは単結合、−CO−又は−CH2−で示される二価の基である。)
で示される新規ジアミン化合物が提供される。
【0010】
本発明によれば、第2に下記式(V)
【0011】
【化4】
【0012】
(式(V)中、R1、R2、R3、R4、R5およびXは前記式(I)の場合と同意である。)
で示される芳香族ジニトロ化合物を還元することを特徴とする前記式(I)で示される新規ジアミン化合物の製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
これらの発明により、前記の本発明の目的が達成される。以下、本発明を詳述する。
【0014】
[ジアミン化合物]
本発明の新規ジアミン化合物(以下、「ジアミン化合物(I)」という。)の構造を示す前記式(I)において、各符号の定義は下記のとおりである。
【0015】
(1)R1は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基およびフェニル基から選択される1種の基であり、好ましくは水素原子またはメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
(2)R2およびR3は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子またはメチル基である。
(3)R4およびR5は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。前記アルキル基としては、具体的にメチル基、エチル基、1,5−ジメチルヘキシル基、1,4,5−トリメチルヘキシル基、1,5−ジメチル−4−エチルヘキシル基等を挙げることができる。
(4)Xは単結合、−CO−又は−CH2−で示される二価の基である。
【0016】
前記ジアミン化合物(I)の具体例として、下記式(I−1)〜(I−7)
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
【化8】
【0021】
で示されるものを挙げることができる。特に前記式(I−1)で示されるジアミン化合物が好ましい。
【0022】
[ジアミン化合物(I)の製造方法]
次に、前記ジアミン化合物(I)の製造方法について説明する。
前記ジアミン化合物(I)は、該ジアミン化合物に対応する、前記式(V)で示されるジニトロ化合物(以下、「ジニトロ化合物(V)」という。)を還元することにより得ることができる。
前記ジニトロ化合物(V)としては、前記ジアミン化合物(I)に対応する新規なジニトロ化合物を挙げることができる。特に好ましいジニトロ化合物(V)としては下記式
【0023】
【化9】
【0024】
で示されるものを挙げることができる。
前記ジニトロ化合物(V)は、特に下記式(III)
【0025】
【化10】
【0026】
(式(III)中、R2、R3およびR4は式(I)の場合と同意である。)
で示されるビスフェノール化合物(以下、「ビスフェノール化合物(III)」という。)と下記式(IV)
【0027】
【化11】
【0028】
(式(IV)中、Yはハロゲン原子、ハロメチル基、カルボキシル基またはハロホルミル基であり、R1は式(I)の場合と同意である。)
で示されるニトロ化合物(以下、「ニトロ化合物(IV)」という。)とを反応させることにより好適に得ることができる。
【0029】
前記ビスフェノール化合物(III)としては、前記ジニトロ化合物(V)に対応する新規なビスフェノール化合物を挙げることができ、下記式(III−1)および(III−2)
【0030】
【化12】
【0031】
で示されるフェノール化合物を挙げることができる。中でも上記式(III−1)で示されるフェノール化合物が好ましい。
【0032】
さらに、前記ビスフェノール化合物(III)は下記式(II)
【0033】
【化13】
【0034】
(式(II)中、R2、R3およびR4は式(I)の場合と同意である。)
で示されるカルボニル基含有ステロイド化合物(以下、「カルボニル基含有ステロイド化合物(II)」という。)とフェノール類とを酸性触媒を用いて、必要に応じて溶媒の存在下に反応させることにより得ることができる。
【0035】
以上のとおり、ジアミン化合物(I)は下記第1工程〜第3工程により製造することができる。
(1)第1工程:カルボニル基含有ステロイド化合物(II)とフェノール類とを反応させてビスフェノール化合物(III)を生成する工程。
(2)第2工程:第1工程で生成したビスフェノール化合物(III)とニトロ化合物(IV)とを反応させてジニトロ化合物(V)を生成する工程。
(3)第3工程:第2工程で生成したジニトロ化合物(V)を還元してジアミン化合物(I)を生成する工程。
【0036】
以下に各工程の詳細を説明する。
[第1工程]
第1工程で使用するカルボニル基含有ステロイド化合物(II)は、公知であり、周知の方法で合成して使用するか、市販品を使用することができる。
カルボニル基含有ステロイド化合物(II)と反応させるフェノール類としては、例えばフェノール、2,6−キシレノール、o−クレゾール、m−クレゾール等を挙げることができる。
カルボニル基含有ステロイド化合物(II)とフェノール類との反応において、通常、カルボニル基含有ステロイド化合物(II)1モルに対して、フェノール類を2〜50モル、好ましくは2〜10モル使用する。
反応は必要に応じて溶媒を用いて行うことができる。このような溶媒としては、前記化合物を溶解させることができ、かつ反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;その他ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。
【0037】
前記反応に用いられる酸性触媒としては周知の無機酸および有機酸より適宜選択することができ、具体的には塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸:ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸;さらに固体酸等を挙げることができる。酸性触媒は、通常、カルボニル基含有ステロイド化合物(II)1モルに対して2〜100モル、好ましくは2〜10モル用いられる。
【0038】
前記反応の反応温度は、通常、0〜250℃、好ましくは10〜100℃である。反応時間は、通常、3〜100時間、好ましくは3〜6時間である。
【0039】
前記反応後、得られたビスフェノール化合物(III)を単離せずに反応生成物をそのまま第2工程へ供することもでき、必要に応じて再結晶等の手段により単離精製した後、第2工程へ供することができる。単離精製における再結晶溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等を用いることができる。
【0040】
[第2工程]
第2工程は、目的のジニトロ化合物(V)におけるXの種類ごとに説明する。[1]Xが単結合である場合
第2工程は、前記式(IV)におけるYがハロゲン原子であるニトロ化合物(IV)とビスフェノール化合物(III)とを溶媒中、触媒の存在下で脱ハロゲン化水素反応させることにより行われる。
【0041】
ハロゲン原子を含むニトロ化合物(IV)としては、例えば1−クロロ−2−ニトロベンゼン、1−クロロ−3−ニトロベンゼン、1−クロロ−4−ニトロベンゼン、1−ブロモ−2−ニトロベンゼン、1−ブロモ−3−ニトロベンゼン、1−ブロモ−4−ニトロベンゼン、1−ヨード−2−ニトロベンゼン、1−ヨード−3−ニトロベンゼン、1−ヨード−4−ニトロベンゼン、1−フルオロ−2−ニトロベンゼン、1−フルオロ−3−ニトロベンゼン、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン、2−クロロ−3−ニトロトルエン、2−クロロ−4−ニトロトルエン、2−クロロ−5−ニトロトルエン、2−クロロ−6−ニトロトルエン、4−クロロ−2−ニトロトルエン、4−クロロ−3−ニトロトルエン、2−ブロモ−3−ニトロトルエン、2−ブロモ−4−ニトロトルエン、2−ブロモ−5−ニトロトルエン、2−ブロモ−6−ニトロトエルン、4−ブロモ−2−ニトロトルエン、4−ブロモ−3−ニトロトルエン、2−フルオロ−3−ニトロトルエン、2−フルオロ−4−ニトロトルエン、2−フルオロ−5−ニトロトルエン、2−フルオロ−6−ニトロトルエン、3−フルオロ−4−ニトロトルエン、4−フルオロ−2−ニトロトルエン、4−フルオロ−3−ニトロトルエン、5−フルオロ−2−ニトロトルエン、3−クロロ−4−ニトロトルエン、5−クロロ−2−ニトロトルエン、3−ブロモ−4−ニトロトルエン、5−ブロモ−2−ニトロトルエン、2−ヨード−3−ニトロトルエン、2−ヨード−4−ニトロトルエン、2−ヨード−5−ニトロトルエン、3−ヨード−4−ニトロトルエン、4−ヨード−2−ニトロトルエン、4−ヨード−3−ニトロトルエン、5−ヨード−2−ニトロトルエン等を挙げることができる。
【0042】
前記脱ハロゲン化水素反応に用いることのできる溶媒としては、ニトロ化合物(IV)、ビスフェノール化合物(III)および反応により生成したジニトロ化合物(V)を溶解させることができかつ反応により変質しないものが好ましい。
【0043】
このような溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、アニソール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。
【0044】
前記脱ハロゲン化水素反応に用いる触媒としては、例えば銅粉、塩化銅(I)、臭化銅(I)、よう化銅(I)等の銅類;テトラブチルアンモニウムフルオライド、テトラエチルアンモニウムフルオライド、アセチルコリンクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルコリンクロライド、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、クロロコリンクロライド、コリンクロライド、n−デシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジメチルベンジルフェニルアンモニウムクロライド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウロリルコリンクロライド、メタコリンクロライド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリエチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、スクシニルコリンクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラアルミニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、
【0045】
トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、アセチルコリンブロマイド、ベンゾイルコリンブロマイド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ブロモコリンブロマイド、セチルジメチルエチルアンモニウムブロマイド、コリンブロマイド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジミスチリルアンモニウムブロマイド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロマイド、ジメルチジステアリルアンモニウムブロマイド、ドデシルチリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラアルミニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、トリメチルビニルアンモニウムブロマイド、アセチルコリンヨーダイド、アセチルオチオコリンヨーダイド、ベンゾイルコリンヨーダイド、ベンゾイルチオコリンヨーダイド、ベンジルトリエチルアンモニウムヨーダイド、ブチルコリンヨーダイド、ブチルチオコリンヨーダイド、N,N−ジメチルメチレンアンモニウムヨーダイド、エチルトリメチルアンモニウムヨーダイド、エチルトリプロピルアンモニウムヨーダイド等の第四級アンモニウム化合物類;
【0046】
1−アザ−15−クラウン 5−エーテル、1−アザ−18−クラウン 6−エーテル、ベンゾ−12−クラウム 4−エーテル、ベンゾ−15−クラウン 5−エーテル、ベンゾ−18−クラウン 6−エーテル、12−クラウン 4−エーテル、15−クラウン 5−エーテル、18−クラウン 6−エーテル、4,13−ジアザ−18−クラウン 6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン 6−エーテル、ジベンゾ−24−クラウン 8−エーテル、N,N'−ジベンジル−4,13−ジアザ−18−クラウン 6−エーテル、ジシクロヘキサノ−18−クラウン 6−エーテル、4'−ニトロベンゾ−15−クラウン 5−エーテル、4'−ニトロベンゾ−18−クラウン 6−エーテル、N−フェニルアザ−15−クラウン 5−エーテル、1,4,7,10−テトラアザシクロドデセンテトラハイドロクロライド等のクラウンエーテル類が挙げられる。
【0047】
前記脱ハロゲン化水素反応に用いる触媒は、通常、ニトロ化合物(IV)に対して、0.001〜5.0倍モル、好ましくは0.1〜2.5倍モル使用される。
また、前記脱ハロゲン化水素反応の反応温度は、通常、−50〜250℃、好ましくは0〜200℃の温度で行われ、反応時間は、通常、0.1〜20時間、好ましくは0.5〜10時間である。
【0048】
次いで前記脱ハロゲン化水素反応終了後、ジニトロ化合物(V)を含有する反応生成物をそのまま第3工程へ供することができ、必要に応じて、該反応生成物からジニトロ化合物(IV)を精製・分離して第3工程へ供することもできる。前記反応生成物からジニトロ化合物(V)を精製・分離する方法としては、例えば再結晶、昇華等の方法を挙げることができる。ここで再結晶に用いられる溶媒としては、加温時に芳香族ジニトロ化合物(V)の良溶媒であり、冷却時にその貧溶媒となるもので、かつ再結晶操作で変質しないものが好ましく、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類を挙げることができる。
【0049】
[2]Xが−CO−である場合
前記第2工程は、前記式(IV)におけるYがカルボキシル基またはハロホルミル基であるニトロ化合物(IV)とビスフェノール化合物(III)とを溶媒および触媒の存在下にエステル化反応させることにより行われる。
【0050】
カルボキシル基またはハロホルミル基を含むニトロ化合物(IV)としては、例えば2−ニトロ安息香酸、3−ニトロ安息香酸、4−ニトロ安息香酸、2−メチル−3−ニトロ安息香酸、2−メチル−6−ニトロ安息香酸、3−メチル−2−ニトロ安息香酸、3−メチル−4−ニトロ安息香酸、4−メチル−3−ニトロ安息香酸、5−メチル−2−ニトロ安息香酸、2−ニトロ安息香酸クロライド、3−ニトロ安息香酸クロライド、4−ニトロ安息香酸クロライド、2−ニトロ安息香酸ブロマイド、3−ニトロ安息香酸ブロマイド、4−ニトロ安息香酸ブロマイド、2−ニトロ安息香酸ヨーダイド、3−ニトロ安息香酸ヨーダイド、4−ニトロ安息香酸ヨーダイド、2−ニトロ安息香酸フルオライド、3−ニトロ安息香酸フルオライド、4−ニトロ安息香酸フルオライド等を挙げることができる。
【0051】
前記溶媒としては、ビスフェノール化合物(III)、ニトロ化合物(IV)およびエステル化反応によって生成したジニトロ化合物(V)を溶解することができ、かつ反応中に溶媒自体が変質しない溶媒を好ましく用いることができる。前記溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;水等を挙げることができる。
【0052】
また、前記触媒としては、通常、エステル反応に用いられる酸触媒あるいは塩基触媒を挙げることができ、ニトロ化合物(IV)の種類により適宜選択することができる。酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸無水物、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジブチルエーテル錯体等を挙げることができる。また、塩基触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ジメチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、テトラメチル尿素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を挙げることができる。触媒の使用量は、適宜、任意の割合で使用でき、例えばニトロ化合物(IV)に対して0.001〜5.0倍モル、好ましくは0.1〜2.5倍モルの範囲で用いられる。
【0053】
前記エステル化反応温度は、通常、−50〜250℃、好ましくは0〜200℃であり、反応時間は、通常0.1〜20時間、好ましくは0.5〜10時間である。
【0054】
[3]Xが−CH2−である場合
前記第2工程は、前記式(IV)におけるYがハロメチル基であるニトロ化合物(IV)とビスフェノール化合物(III)とを溶媒中、塩基性化合物の存在下に脱ハロゲン化水素反応を行うことにより行われる。
【0055】
ハロメチル基を含有するニトロ化合物(IV)として、例えばα−クロロ−2−ニトロトルエン、α−クロロ−3−ニトロトルエン、α−クロロ−4−ニトロトルエン、α−ブロモ−2−ニトロトルエン、α−ブロモ−3−ニトロトルエン、α−ブロモ−4−ニトロトルエン、α−ヨード−2−ニトロトルエン、α−ヨード−3−ニトロトルエン、α−ヨード−4−ニトロトルエン等を挙げることができる。
【0056】
前記溶媒としては、ハロメチル基を含有するニトロ化合物(IV)、ビスフェノール化合物(III)およびジニトロ化合物(V)を溶解し、かつ反応により変質しないものが好ましく、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、アニソール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げることができる。
【0057】
また、前記塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、テトラメチル尿素等を挙げることができる。塩基性化合物の量は、適宜任意の割合で使用でき、例えばニトロ化合物(IV)1重量部に対して、通常、0.001〜5.0重量部、好ましくは0.1〜2.5重量部用いることができる。
【0058】
前記脱ハロゲン化水素反応の反応温度は、通常、−50〜250℃、好ましくは0〜200℃であり、反応時間は、通常、0.1〜20時間、好ましくは0.5〜10時間である。
【0059】
次いで、前記脱ハロゲン化水素反応終了後、ジニトロ化合物(V)を含有する反応生成物をそのまま第3工程へ供することができ、必要に応じて該反応生成物からジニトロ化合物(V)を前記Xが単結合である場合に記載した方法により精製・分離して第3工程へ供することもできる。
【0060】
[第3工程]
第3工程において、ジニトロ化合物(V)のニトロ基の還元が行われる。還元反応は、例えば水素ガス、ヒドラジン、塩酸等の周知の触媒の存在下に行うことができる。
前記触媒としては、例えばVIII族の金属すなわち鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の金属を活性主体とする金属触媒、具体的には担体に上記金属が担持された触媒、前記金属の錯体触媒を挙げることができ、前記還元反応において均一系でも不均一系であってもよい。
前記触媒の使用量は、適宜、任意の割合で使用でき、例えば触媒が前記のVIII族の金属を活性主体とする触媒の場合、ジニトロ化合物(V)に対して0.0001〜100重量%、特には0.001〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0061】
また、前記還元反応として、亜鉛、スズ、炭化スズ(II)、硫化ナトリウム、ナトリウムヒドロスルフィド、亜二チオン酸ナトリウム、硫化アンモニウム等の還元剤を用いる方法も使用できる。この場合、還元剤は、ジニトロ化合物(V)に対して0.001〜5倍モル、特には0.1〜2.5倍モル使用することが好ましい。
【0062】
前記還元反応における溶媒としては、ジニトロ化合物(V)と、ジアミン化合物(I)とを共に溶解し、かつ還元反応により変質しないものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類を挙げることができる。
【0063】
前記還元反応の反応温度は、通常、−50〜250℃、好ましくは0〜200℃で行われる。還元に水素を用いる場合、通常、0〜300kg/cm2G、好ましくは0〜200kg/cm2Gに加圧し、0.5〜200時間、好ましくは1〜50時間還元反応を行う。この場合、用いる水素は、必ずしも純粋である必要はなく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含むもの、あるいは一酸化炭素、メタン、水等の不純物を含むものでも使用することができる。
【0064】
第3工程の反応生成物から、ジアミン化合物(I)を単離するには、例えば再結晶法により行うことができる。再結晶溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類を挙げることができる。
【0065】
[ポリアミック酸またはポリイミド]
前記ジアミン化合物(I)は、単独であるいは他のジアミン化合物と組合わせてテトラカルボン酸二無水物と反応させ、必要に応じてさらにイミド化反応を進めることによりポリアミック酸またはポリイミド(以下、「ポリイミド等」という。)を製造するためのジアミン成分とすることができる。
【0066】
前記ポリイミド等を液晶表示素子の配向膜の素材として使用する場合、ジアミン化合物(I)と、必要に応じて使用される他のジアミン化合物、例えばパラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ウンデカン−1,12−ジオールビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−ブタンジオールビス(4−アミノベンゾエート)、5−(6−)アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4−メチル−1,3−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、メタキシリレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、イソホロンジアミンおよび下記式
【0067】
【化14】
【0068】
(式中、R6、R7、R8およびR9は、各々独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基またはフェニル基等のアリール基の如き炭素数1〜12の炭化水素基を示し、pは1〜4、qは1〜20、rは1〜4の整数を示す。)
で示されるジアミン等(以下、「他のジアミン化合物」という。)と組合せて用いることができる。ジアミン化合物(I)と他のジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物の総計において、ジアミン化合物(I)が好ましくは0.01〜100モル%、より好ましくはTN型液晶セル用として用いるときは1〜20モル%、STN型液晶セル用として用いるときは5〜30モル%、SH型液晶セル用として用いるときは50〜100モル%である。
【0069】
使用されるテトラカルボン酸二無水としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0070】
これらのうちでは1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物が好ましく、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が特に好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0071】
【実施例】
以下、実施例を以って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
実施例1
ビスフェノール化合物(III)の合成
2リットルフラスコにβ−コレスタノン387g(1.00モル)、フェノール376g(4.00モル)、塩化カルシウム222g(2.00モル)を加え、70℃に加温した。これに濃塩酸168mlを加え3時間攪拌を行った後、12時間室温で放置した。この反応生成物を水3リットル、トルエン4.5リットルに加温溶解させ、その後12時間静置して結晶化させた。生成した結晶を濾別し、水、トルエンの順で洗浄した後、乾燥してビスフェノール化合物(III)505g(91%)を得た。
【0073】
ジニトロ化合物(V)の合成
1リットルフラスコに得られたビスフェノール化合物(III)90.2g(0.162モル)、4−クロロニトロベンゼン63.8g(0.405モル)、水酸化カリウム36.4g(0.648モル)を加え、最後にジメチルホルムアミド500mlを加えた。これを70℃に加温しながら3時間攪拌した。反応終了後、反応液を約100mlまで濃縮し、大量の水を注いだ。析出した淡黄色固体を濾別し、水でよく洗浄した。この固体をメチルエチルケトンを用いて再結晶し、ジニトロ化合物(V)98.7g(76%)を得た。
【0074】
ジアミン化合物(I)の合成
得られたジニトロ化合物(V)32.0g(0.04モル)をイソプロピルアルコール400mlに溶解させ、5%パラジウムカーボン(エヌ・イー・ケムキャット社製)320mgとヒドラジン一水和物8.0g(0.16モル)を加えた後、6時間加熱還流させた。反応終了後、熱時濾過を行いパラジウムカーボンを除去した後、濾液を約100mlまで濃縮した。この溶液を水6リットルにあけ、析出した白色固体を濾別した。この固体を水でよく洗浄した後、メタノーール−水から再結晶し、ジアミン化合物(I)24.7g(80%)を得た。このジアミン化合物は前記式(I−1)で示される化合物である。
【0075】
ジアミン化合物の赤外吸収スペクトル、マススペクトルおよび1H−NMRスペクトルを図1〜3に示す。
【0076】
実施例2
実施例1の芳香族ジニトロ化合物(V)の合成で4−クロロニトロベンゼンの代わりに3−クロロニトロベンゼンを用いて実施例1と同様の操作を行い、ジアミン化合物11.8g(38%)を得た。
【0077】
実施例3
実施例1と同様な操作で得たジニトロ化合物(V)32.0gをイソプロピルアルコール400mlに溶解し、1リットルグラススライニング製オートクレーブに加えた。さらに5%パラジウムカーボン320mgを入れた後、気相を水素置換し、10時間攪拌を続けた。その後、反応溶液を取り出し、濾別によりパラジウムカーボンを除去した後、濾液を約100mlまで濃縮した。この溶液を水6リットルにあけ、析出した白色固体を濾別した。この固体を水でよく洗浄した後、メタノール−水から再結晶して、ジアミン化合物15.0g(49%)を得た。得られたジアミノ化合物が実施例1で合成したものと同じであることを赤外吸収スペクトル、マススペクトルおよび1H−NMRスペクトルにより確認した。
【0078】
実施例4
ジニトロ化合物(V)の合成
3リットルフラスコに実施例1と同様な操作で合成したビスフェノール化合物(III)90.2g(0.162モル)と4−ニトロベンゾイルクロリド75.2g(0.405モル)を入れ、テトラヒドロフラン1000mlに溶解した。氷冷下攪拌を行いながらピリジン38.4g(0.486モル)を滴下した。滴下終了後、5時間室温で攪拌した。反応液を大量の水にあけ、析出物を濾別し水でよく洗浄した。メチルエチルケトンから再結晶を行い、ジニトロ化合物(V)84.1g(65%)を得た。
【0079】
ジアミン化合物(I)の合成
実施例1のジアミン化合物の合成と同様の操作を行い、ジアミン化合物23.1g(75%)を得た。このジアミン化合物は前記式(I−2)で示される化合物である。
【0080】
実施例5
ジニトロ化合物(V)の合成
3リットルフラスコに実施例1と同様な操作で合成したビスフェノール化合物(II)90.2g(0.162モル)、α−ブロモ−4−ニトロトルエン87.4g(0.405モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド12.9g(0.04モル)および炭酸カリウム56.0g(0.405モル)を加え、テトラヒドロフラン1500gに溶解した。5時間室温で攪拌し、反応液を大量の水にあけ、析出物を濾別した。得られた固体を水でよく洗浄し、メチルエチルケトンから再結晶を行い、ジニトロ化合物(V)90.6g(70%)を得た。
【0081】
ジアミン化合物(I)の合成
得られたジニトロ化合物(V)を実施例1のジアミン化合物の合成と同様の操作を行い、ジアミン化合物20.0g(65%)を得た。得られたジアミン化合物は前記式(I−3)で示される化合物である。
【0082】
応用例
[1]ポリアミック酸およびそのイミド化重合体の合成例
合成例1
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.42g(100.0ミリモル)と合成した前記式(I−1)で示されるジアミン化合物0.74g(1.0ミリモル)およびp−フェニレンジアミン10.71g(99.0ミリモル)をN−メチル−2−ピロリドン304.83gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、ポリアミック酸Ia25.25gを得た。
【0083】
合成例2
合成例1で得られたポリアミック酸Ia10.00gを190gのN−メチル−2−ピロリドン、4.75gのピリジンと6.13gの無水酢酸を添加し、120℃で4時間イミド化反応をさせた。
次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈澱させ、イミド化重合体IIa6.55gを得た。
【0084】
[2]液晶配向剤の調製およびその評価
合成例2で得られた重合体(IIa)をγ−ブチロラクトンに溶解させて、固形分濃度4重量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過し、液晶配向剤溶液を調製した。
この溶液を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の上に透明電極面に、膜厚が800mμmになるようにスピンナーを用いて塗布し、180℃で1時間乾燥し塗膜を形成した。
この塗膜にナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール毛足押し込み長0.6mm、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒でラビング処理を行った。このとき、配向膜と基板との接着性は良好であり、ラビングによる剥がれは観察されなかった。
【0085】
次に、一対のラビング処理された基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径17μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように、しかもラビング方向が逆平行になるように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。
次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマティック型液晶(メルク社製、MLC−2001)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を、偏光板の偏光方向がそれぞれの基板の液晶配向膜のラビング方向と一致するように張り合わせ、液晶表示素子を作製した。
得られた液晶表示素子の配向性は良好であり、プレチルト角を測定したところ、3.0゜であった。
【0086】
【発明の効果】
本発明の新規ジアミン化合物を用いて製造されたポリイミドは、液晶表示素子の液晶配向膜として好適である。すなわち、該ポリイミドからなる液晶配向膜は高いプレチルト角を発現すると共に、液晶表示素子の製造条件の不可避的な変動に対して安定したプレチルト角を発現する。
【0087】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたジアミン化合物(I)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】実施例1で得られたジアミン化合物(I)のIRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得られたジアミン化合物(I)のマススペクトルを示す図である。
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