JP3731152B2 - 筆記具被覆体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟質弾性物質からなり、軸孔を有してボールペン、シャープペンシル、電子ペンその他の筆記具の軸又は芯体のスリーブ(以下、ペン体。)に覆装される筆記具被覆体に係り、詳しくは、その筒体断面肉厚内に空気層を全周形成して、軸周りに均等な圧力分布を得るようにした筆記具被覆体に関する。なお、覆装は被覆装着の意である。
【0002】
【従来の技術】
従来、ボールペン、シャープペンシル、電子ペンその他の筆記具の軸径は概略7〜8mmで、その断面形状は円形又は多角形のものが多い。
【0003】
近年、これらのうち指が当たる握り部分に比較的軟質の材料(本発明に関し軟質弾性物質、例えば、ゴムを含む弾性樹脂等。)を被覆したものが普及している。
【0004】
この作用効果は以下の点にあるといえよう。
▲1▼筋ポンプの作用を促進する。
▲2▼握圧を吸収して手指の圧迫を緩和する。
▲3▼摩擦係数を大きくして筆圧の維持を補助する。
▲4▼全体として、手指の筋負担(疲労)を軽減する。
【0005】
こうしたなかで、握り径(把持径)を太くすることにより握圧を軽減することが健康障害の予防には効果的であるとの知見から、所謂太軸ペンが提案されており、文房具店で卑近に目にすることができる。ここでも、握り部には被覆体を装着(覆装)しているものが多い。ただし、従来的な被覆体では(体表面の)硬度を調節できないという問題がある。また、太軸ペンはやや重くなり、収納性がやや劣るという問題もある。
【0006】
本発明者のひとり(宇土博)は、先に筆記具被覆体について幾つかの提案をしてきた。例えば、特許第2141299号及び第2854084号参照。〔以下、先願被覆体。〕すでに、これらに基づく市販品〔株式会社パイロット製「Dr.GRIP」(登録商標)〕がある。
【0007】
ところで、長時間の筆記作業(書字作業を含む。)による健康障害として腱鞘炎や書痙がある。筆記作業の上肢負担を軽減し、腱鞘炎や書痙を予防するためには、握りの摩擦係数や手指の血流を増大させる筋ポンプ作用を促進するための適切な弾力性、及び個人の指の長さや握圧(握りの強さ)の特性にあった適切な握りの径が重要である。
【0008】
個々人にとって細すぎる握りや太すぎる握りは、何れも指に余分な負担をかけ、上記の健康障害を誘発する要因となる。
【0009】
一般に、指の長い個体では、短い個体に対してやや太い径が筋疲労からみて適切である。そして、握りの強い個体ほど太い握りの方が筋疲労が少ない。
【0010】
また、長時間にわたり比較的ゆっくりしたスピードで筆記する場合は握りの径はやや太い方が良く、短時間に素早く筆記する場合にはやや細い径が筋疲労からみて適切である。
【0011】
また、長時間の書字作業においては、途中で一定の範囲で握り径が変化する方が、手指の同一筋肉の緊張持続の中断や大脳運動野の同一部位への神経疲労の集中を避け、腱鞘炎や書痙を予防する効果がある。
【0012】
握りの弾力性(硬度)に関し、握圧の強い個体ではやや硬度の高いものを、握圧の弱い人ではやや硬度の低いものを使用するのが適切であり、早いスピードで書く場合には硬度の高いものを、遅いスピードで書く場合には硬度の低いものを使用するのが適切である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、市販されている筆記具の握り径は固定されており、個人の指の長さにより適切な径に調節したり、筆記の態様によって径を調節することはできない。また、握りの弾力性(硬度)に関しても、個人の握圧や筆記の態様にあわせて調節することはできない。
【0014】
そのため、指の長さや筆記条件に関わらず、既存の平均的な径を使用せざるを得ず、硬度も変更できないので上記の健康障害を誘発する一因となっている。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、上記課題を解消し、軟質弾性物質からなり、軸孔を有してペン体に覆装される筆記具被覆体を、筒体断面肉厚内に空気層を全周形成して軸周りに均等な圧力分布を得ることにより、市販の標準的な7〜8mm径のペン体に覆装するだけで、摩擦係数、体表面の弾性又は硬度の可変性(調節)、軸径(把持径)その他の使用条件を満たすとともに、太軸ペンの軽量化を実現し、収納性を改善した筆記具被覆体を提供するものである。ここで、収納性の改善は層内の空気を圧排(排気)して軸径を収縮可能とする点にある。かつまた、空気の弾性能と断熱性を利用して健康障害の予防に関し相乗的に機能改善した筆記具被覆体を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
課題を解決するため本発明は、軟質弾性物質からなり、軸孔を有してペン体に覆装される筆記具被覆体の改善であって、筒体断面肉厚内に空気層を全周形成してなり、軸周りに均等な圧力分布を得るようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は、上記構成において、空気の圧縮率を考慮して、空気層を含む断面肉厚が1〜14mmで、装着時の把持径が8.2〜32.0mmとなるように一体成形したものとする。
【0018】
ここで、空気層は、空気を圧入して樹脂封止(成形)することにより正圧保持される場合がある。
【0019】
また、層内圧力及び体表面の硬度を調整可能とするために、空気層に外部から給排気する圧力調整手段を設ける場合がある。
【0020】
圧力調整手段の構成は、空気層と外部(系外)との間でおこなう給排気機構を具備するものであればよい。例えば、少なくとも1箇所に通気路又は空気注入口を形成し、かつ、開閉可能に栓封又は弁封し、該通気路又は空気注入口を介して外部から強制的に給排気をおこなうものとする。この場合、簡単操作で給排気可能な携帯用エアーポンプ又はエアーボンベを附属することになる。
【0021】
また、書字作業中に簡便・迅速に空気層の圧力及び体表面の硬度の調節を行なえるように、ペン体内部軸端側に強制的に給排気をおこなうための小型の電動エアーポンプ又はエアーボンベを具備(搭載)したものであってもよい。
【0022】
さらに、排気に関しては、収納時に層内空気の圧排を容易に行なえるような排気機構を設けるのが好ましい。
【0023】
なお、筆記具の軸長全体を被覆するものとしたフルボディ被覆(体)と、把持部を部分的に被覆するものとしたグリップ被覆(体)が考慮されることになる。〔実施例において後述。)
【0024】
【実施例】
本発明の一実施例を添付図面を参照して説明する。
【0025】
(実施例1)
図1は筆記具被覆体の縦断面視説明図である。
【0026】
図2は同じく横断面視(図1中AA視)拡大説明図である。
【0027】
図示するように、本実施例の筆記具被覆体Xは、フルボディ被覆体であって、筒体断面肉厚内に空気を圧入して樹脂封止した空気層1を有し、該空気層1を含む断面肉厚が1〜14mmで、装着時の把持径が8.2〜32.0mmであるような樹脂封止成形品である。ここで、空気層1は軸周りに均等な圧力分布を得るために全周形成される。なお、軸孔3は市販の標準的なペン体2に着脱自在に軸装(覆装)可能な7〜8mm径としている。
【0028】
(実施例2)
図3は他の実施例である筆記具被覆体の縦断面視説明図である。
【0029】
図示するように、本実施例の筆記具被覆体Yは把持部を部分的に被覆するものとしたグリップ被覆体であって、上記実施例1同様の断面構造を有する。この場合も、市販の標準的なペン体2に着脱自在に覆装可能な軸孔3を有する。
【0030】
上記実施例1及び2において、空気層1は区画形成されたものであってもよい。(図示省略)
【0031】
また、摩擦係数、弾性又は硬度に係る材料選定は、先願被覆体に準じて採用されてよい。
【0032】
(実施例3)
図4は筆記具被覆体の縦断面視説明図である。
【0033】
図示するように、本実施例の筆記具被覆体XXは、上記実施例1同様のフルボディ被覆体であるが、体表面の硬度を調整する目的で、空気層1を樹脂封止することなく、外部から給排気することにより層内圧力及び体表面の硬度を調整可能な圧力調整手段4(又は給排気機構)を有している。
【0034】
ここでは、被覆体XXの少なくとも1箇所に通気路41(又は空気注入口)を形成して、該通気路41(又は空気注入口)を開閉可能に栓封(又は弁封)している。栓封要素42(又は弁封要素)はとくに限定されない。給排気は携帯用エアーポンプ43(又はエアーボンベ)によりおこなう。
【0035】
なお、圧力調整手段4の構成は特に構成を限定されない。つまり、層内圧力の調整(体表面の硬度調整)と収納性を考慮するとき、手段構成として空気層1と外部(系外)との間でおこなう給排気機構を具備するものであればよい。例えば、被覆体XXの基端(軸端)から軸孔3をシリンダーとしてプランジャー44を挿抜することにより給排気をおこなう構成を採用してもよいであろう。この場合、通気路41(又は空気注入口)は弁封42する。この概要説明図を図5に示す。
【0036】
(実施例4)
図6は他の実施例である筆記具被覆体の縦断面視説明図である。
【0037】
図示するように、本発明の筆記具被覆体YYは上記実施例2同様のグリップ被覆体である。ここでは、上記実施例3同様に簡単操作可能な圧力調整手段を設けている。ここでは、通気路41(又は空気注入口)を弁封42するものとし、エアーポンプ43として手動式血圧計の送気ポンプを用いている。
【0038】
さらに、圧力調整手段4の構成に関し、ペン体内部軸端側に強制的に給排気をおこなうための小型の電動エアーポンプ又はエアーボンベを具備(搭載)することも考慮されてよい。〔図示省略〕
【0039】
上記実施例3及び4において、空気層1は区画形成されたものであってもよいが、圧力調整(硬度調整を含む)という点で、例えば隔壁に細孔を設ける等により連通していることを要する。〔図示省略〕
【0040】
なお、摩擦係数、弾性又は硬度に係る材料選定は、先願被覆体に準じて採用されてよい。
【0041】
【発明の効果】
本発明は以上の構成よりなるものであり、これによれば標準的な軸径のペン体を軸孔に押し込んで装着(覆装)し、軽量の太軸ペンとして使用できる。軽量で太軸であることの特性は、把持力の弱い人や把持力が低下する高齢者などに最適である。
【0042】
また、空気の弾性能と断熱性を相乗的に利用するものとなっており、握圧を広い面で受けて分散して手指の圧迫を緩和するとともに、手指の筋ポンプ作用を促進し、あわせて手指の保温効果により血流を促進する。
【0043】
特に、圧力調整手段を有したものでは、被覆体表面の弾性(硬度)を可変調整容易であり、握り具合いを調節できる。また、層内空気を排気(圧排)することにより軸径を収縮し収納性を改善することもできる。
【0044】
したがって、筆記作業の態様や個人差に応じて硬度調整を含む使い分けが可能であり、空気の断熱性による手指の保温効果が高く、しかも圧力調整を含む空気の弾性能によりより手指の血流循環を促進して手指の疲労軽減、ひいては腱鞘炎や書痙などの健康障害の予防に寄与することができる。
【0045】
さらに、ペン体は標準的な軸径のものであれば色違い(透明又は半透明を含む)、他社製その他好みのものと交換可能であり、経済効果も高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例である筆記具被覆体の縦断面視説明図である。
【図2】同じく横断面視(図1中AA視)拡大説明図である。
【図3】他の実施例である筆記具被覆体の縦断面視説明図である。
【図4】他の実施例である筆記具被覆体の縦断面視説明図である。
【図5】圧力調整手段の改変例を示す概要説明図である。
【図6】他の実施例である筆記具被覆体の縦断面視説明図である。
【符号の説明】
1 空気層
2 ペン体
3 軸孔
4 圧力調整手段
41 通気路(又は空気注入口)
42 栓封又は弁封(要素)
43 エアーポンプ(又はエアーボンベ)
44 プランジャー
X 筆記具被覆体(フルボディ被覆体)
XX 筆記具被覆体(フルボディ被覆体)
Y 筆記具被覆体(グリップ被覆体)
YY 筆記具被覆体(グリップ被覆体)
Claims (4)
- 軟質弾性物質からなり、軸孔を有して筆記具の軸又は芯体のスリーブに覆装される筆記具被覆体において、
筆記具の軸長全体を被覆するか、又は把持部を部分的に被覆する筒体として一体成形され、その筒体断面肉厚内に空気層を全周形成して、軸周りに均等な圧力分布を得るとともに、層内圧力及び体表面の硬度を調整可能とするために、空気層に外部から給排気する圧力調整手段を設けてなることを特徴とする筆記具被覆体。 - 圧力調整手段が、少なくとも1箇所に通気路又は空気注入口を形成し、かつ、開閉可能に栓封又は弁封し、該通気路又は空気注入口を介して外部から強制的に給排気をおこなうようにしたものである請求項1記載の筆記具被覆体。
- 外部から強制的に給排気をおこなうための携帯用エアーポンプ又はエアーボンベを付属した請求項2記載の筆記具被覆体。
- 少なくとも把持部について、圧力調整手段を介して空気を圧入し正圧保持した状態で、空気層を含む筒体断面肉厚が1〜14mm範囲にあり、かつ、装着時の把持径が8.2〜32.0mm範囲にあるものとした請求項1又は2記載の筆記具被覆体。
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