JP3730812B2 - レンズ加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼鏡レンズ等の被加工レンズをレンズ枠に枠入れするため、該被加工レンズの周縁を所定形状に加工するレンズ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、眼鏡レンズをレンズ枠に枠入れするために所定の周縁形状に加工する場合、例えば砥石でレンズ周面を研削したり、カッタでレンズ周面を切削したりすることで、被加工レンズをレンズ枠形状データに従った所定の周縁形状に仕上げている。この場合、工具である砥石やカッタとしては、所定の公差で製作されたものが一般的には使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えば、前述のように周面加工したレンズの周面エッジ部に精密な糸面取りを施すような場合、前記の砥石やカッタで周面加工した後で、面取り工具をレンズの周面エッジ部に正確に位置合わせしなければならない。そのためには、周面加工した段階で、レンズの周面エッジ部の位置データを高精度で把握していなければならない。
【0004】
この点、従来では、公差の範囲で製作された工具の標準的な寸法データを用いて、前記の周面エッジ部の位置データを割り出している。
【0005】
しかし、実際の工具には公差の範囲のバラツキがあり、前述の標準的な寸法データを用いて周面エッジ部の座標を割り出しても、その座標データには公差レベルの誤差が含まれていることになる。従って、そのようにして求めたレンズ周面エッジ部の座標データに基づいて以降の面取り加工を行っても、精度の良い面取り加工を行うことはできない。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、工具の公差によらず、高精度の加工を行うことのできるレンズ加工方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、眼鏡用の被加工レンズの周縁をレンズ枠形状データに従って加工するレンズ加工方法において、前記被加工レンズの周面を加工する工具の寸法を実測して工具寸法実測データを取得する工程と、前記レンズ枠形状データに従って前記工具で被加工レンズの周面を加工する工程と、前記工具で被加工レンズの周面を加工した後のレンズ寸法を割り出す際に、該レンズ寸法を前記工具寸法実測データを用いて算出する工程と、該算出したレンズ寸法に基づいて以後の加工を行う工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記工具がカッタであり、前記被加工レンズの周面を加工する工程において、前記レンズ枠形状データに従ってカッタにより被加工レンズの周面を切削することを特徴とする。
【0009】
本発明のレンズ加工方法では、予め工具の寸法を実測することにより工具寸法データを正確に把握しておき、加工後のレンズ寸法を割り出す際に、実測した工具寸法実測データに基づいてレンズ寸法を算出するようにしている。従って、算出したレンズ寸法に公差レベルの誤差が含まれないようにすることができ、高精度のレンズ寸法割り出しが可能になり、この割り出したデータに基づいて以後の加工を行うことにより高精度の加工ができるようになる。
【0010】
工具は砥石でもカッタでもよく、例えば、ヤゲン溝があるカッタの場合には、ヤゲン溝の底部を基準点にして、各部の主要寸法(径や基準点からの距離など)を実測しておく。その場合の主要寸法は、加工後のレンズ寸法に影響を与える可能性のあるもの全てである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記以後の加工として、レンズ周面とレンズ面との交差エッジ部の面取り加工を行うことを特徴とする。
【0012】
工具寸法を正確に実測した場合、その実測データに基づいて、周面加工後のレンズ周面エッジ部の座標を精度良く割り出すことができる。従って、その座標データを利用することで、周面エッジ部への面取り加工を精度良く行うことができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3において、前記面取り加工をボールエンドミルの先端アール部で行うことを特徴とする。
【0014】
ボールエンドミルの先端でレンズの面取りを行う場合、周面加工したレンズの周面エッジ部に対するボールエンドミルの位置決めを極めて精度よく行わなければならないが、工具寸法実測データに基づいてエッジ部の座標を求めると、実際にその工具で加工した状態におけるレンズ寸法を高精度で求めることができるので、ボールエンドミルを精度良くエッジ部に対して位置決めすることができ、面取り加工を精度良く行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
ここではまず、本発明のレンズ加工方法を実施するためのレンズ加工装置を説明する。本発明の加工方法は、このレンズ加工装置でレンズ加工を行う際に実施される。図1はレンズ加工装置の全体構成を示す斜視図、図2は同全体構成を示す平面図、図3は同全体構成を装置手前側から見た正面図である。
【0016】
この加工装置10は、従来一般的に知られている、砥石でレンズ周面を研削する研削式のものではなく、回転切削工具でレンズ周面を強制切削する切削式レンズ加工装置である。この種の切削式レンズ加工装置は、プラスチックレンズの場合に有効であり、加工効率の向上を図ることができる。
【0017】
この加工装置10は、各機構部が基台11に取り付けられることにより構成されている。基台11の基板11aは水平に設けられており、この基板11a上には、レンズ保持ユニット12と、レンズの周面切削加工を行うカッタ回転機構部13と、溝加工並びに面取り加工を行うエンドミル回転機構部14とが設けられている。これらは、基板11a上のほぼ同じ平面内にレイアウトされ、カッタ回転機構部13とエンドミル回転機構部14とが、共に装置の手前側に配置され、レンズ保持ユニット12が装置に奥側に配置されている。
【0018】
また、基板11aには測定ユニット15が設けられている。測定ユニット15は、レンズ形状測定手段としての測定ヘッド16を有しており、該測定ユニット16は、カッタ回転機構部13とエンドミル回転機構部14との干渉を避けるために、カッタ回転機構部13とエンドミル回転機構部14の上方の空きスペースに配設されている。
【0019】
レンズ保持ユニット12は、被加工レンズ1を保持すると共に、レンズ周方向の加工位置を移動するために、被加工レンズ1をレンズ中心回りに周回させるものである。カッタ回転機構部13は、被加工レンズ1の周縁を強制切削するカッタ(周面加工手段)131を有しており、該カッタ131を水平な軸回りに回転させることで、被加工レンズ1の周面の平切削並びにヤゲン切削を行うものである。エンドミル回転機構部14は、溝彫り加工手段及び面取り加工手段としてボールエンドミル(以下、単に「エンドミル」という)141を有しており、該エンドミル141を水平な軸回りに回転させることで、レンズ1の周面に溝(この溝は、リムレスフレームにレンズを装着する際にナイロンなどの糸を通すためのもの)を形成したり、被加工レンズ1の周面とレンズ面との交差エッジ部に面取りを施したりするものである。
【0020】
測定ユニット15は、レンズ1のコバ厚及びコバ厚方向のレンズ位置を測定する測定ヘッド16を有しており、該測定ヘッド16を必要に応じて上下方向に旋回させることのできるものである。
【0021】
レンズ保持ユニット12は、後述する機構により、基板11aの面と平行で且つカッタ131の軸と垂直な方向(以後Y軸方向と呼ぶ)にスライド可能に設けられると共に、基板11aの面と平行で且つカッタ131の軸と平行な方向(以後Z軸方向と呼ぶ)にスライド可能に設けられている。
【0022】
カッタ回転機構部13は、基板11a上に固定されている。カッタ回転機構部13のカッタ131はスピンドル132に取り付けられており、カッタ回転用モータ133の回転をベルト134でスピンドル132に伝えることで、自身の軸芯回りに回転させられる。
【0023】
基板11aには切り込み動作機構部24が設けられている。切り込み動作機構部24は、レンズ保持ユニット12をY軸方向に移動させて、レンズ1をカッタ131やボールエンドミル141に対して切り込み動作させる機構である。
【0024】
基板11aの下側には、加工粉の吸引除去手段を構成する図示略のダクトが配されており、そのダクトが、基板11aに開口された掃除口993に接続されている。掃除口993の上方には、空気噴射手段としてのエアー噴射ノズル992が複数配されている。これらエアー噴射ノズル992は、カッタ131の近傍及びエンドミル141の近傍に配されており、レンズ保持ユニット12に装着された被加工レンズ1に対して周面切削加工や溝彫り加工あるいは面取り加工を行っているときの加工粉をエアー噴射ノズル992で吹き飛ばし、吹き飛ばした加工粉を掃除口993から吸引除去するようになっている。
【0025】
レンズ加工装置10の各機構部は、基板11a下側等に設けられた後述の制御装置(図示略)によって、電気的に制御される。
【0026】
基台11の基板11a上には、Y軸方向に移動するYテーブル20が設けられている。このYテーブル20は、Y軸方向に向くように基板11aに固定された平行な2本のレール21、21上に摺動可能に設けられると共に、前述の切り込み動作機構部24と連結されており、該切り込み動作機構部24によりY軸方向へ移動制御される。
【0027】
Yテーブル20の上面には、Z軸方向に向くように2本のレール31、31が固定されている。これらレール31、31には、Zテーブル30が摺動可能に設けられている。Zテーブル30は、Yテーブル20上に固定されたZテーブル移動機構部(レンズをその軸芯方向に移動させる軸芯方向移動機構部)33によって移動制御される。Zテーブル移動機構部33には、Z軸用モータ331が設けられている。Z軸用モータ331の回転軸には、ボールネジ332が連結されており、このボールネジ332には、Zテーブル30に固定されたスライドブロック333が螺合している。Z軸用モータ331は、後述の制御装置からの指令に応じて、正逆両方向に回転する。
【0028】
Z軸用モータ331が回転することにより、ボールネジ332が回転する。そして、このボールネジ332の回転によってスライドブロック333が移動し、スライドブロック333と一体にZテーブル30が、レール31,31に沿って移動する。Zテーブル30の上面には、レンズ保持ユニット12が固定されている。
【0029】
図4はレンズ保持ユニット12の詳細構成を示す平面図である。
レンズ保持ユニット12は、カッタ131(図2参照)の軸と平行なレンズ保持軸121を有している。レンズ保持軸121は、レンズ保持ユニット12内の回転機構部によって回転させられる。レンズ保持軸121の先端には、レンズホルダ受け121aが固定され、レンズホルダ受け121aには、被加工レンズ1が固定されたレンズホルダ19が着脱自在に取り付けられている。
【0030】
また、レンズ保持ユニット12には、前記レンズ保持軸121と同軸に、レンズ押さえ軸(これもレンズ保持軸と言える)122がアーム部122bを介してレンズ保持軸121方向にスライド可能に取り付けられている。レンズ押さえ軸122は、エアシリンダ123の圧力を受けてレンズ1側に移動し、その先端のレンズ押さえ122aによってレンズ1を押圧し、レンズ保持軸121との間でレンズ1を挟み込んで保持する。
【0031】
この場合、レンズホルダ19の端面(凹面状に形成されている)に、両面接着パッド191を介して、レンズ1の凸側レンズ面1Aが接着されており、レンズ押さえ122aは、レンズ1の凹側レンズ面1Bに圧接する。また、レンズ押さえ122aは、レンズ押さえ軸122の先端に全方向揺動自在に取り付けられており、レンズ1の凹側レンズ面1Bに片当たりせずに、バランスよく圧接するようになっている。
【0032】
レンズ保持ユニット12のケース12a内に設けられた前記エアーシリンダ123は、外部に設けられた図示されていないエアーポンプから送られるエアーの圧力によって、そのロッド123aをZ軸方向に移動させる。ロッド123aの先端には、アーム123bが固定され、ロッド123aと一体に移動するように設けられている。このアーム123bには、ガイドテーブル123c及びレンズ押さえ軸122のアーム部122bが固定されている。レンズ押さえ軸122は、ケース12aに形成されたZ軸方向に延びる長穴12bに沿って移動できるように設けられている。レンズ押さえ軸122の先端には、レンズ押さえ122aがZ軸周りに正逆自由回転できるよう設けられている。
【0033】
ガイドテーブル123cは、レール台124の側面にZ軸方向に平行となるように設けられたレール124aに摺動可能に嵌合している。これにより、エアーシリンダ123のロッド123aが移動すると、これと一体にアーム123b、ガイドテーブル123c、及びレンズ押さえ軸122がZ軸方向に移動して、レンズ押さえ122aがレンズ1に対して圧接したり、離間したりする。
【0034】
また、ケース12a内には、レンズ回転用モータ125が設けられている。このレンズ回転用モータ125の軸125aには、カップリング125bを介して小径のギア125cが連結されている。このギア125cは、大径のギア125dに連結されている。さらにギア125dの同軸にはプーリ125eが設けられており、このプーリ125eは、ベルト125fを介して、前記軸121上に固定されたプーリ121bに連結されている。
【0035】
これにより、レンズ回転用モータ125が駆動されると、軸125aの回転がカップリング125b、ギア125cに伝達され、さらに、ギア125dで減速され、この減速された回転がプーリ125e、ベルト125f、プーリ121bを介してレンズ保持軸121に伝達され、レンズ1が回転する。
【0036】
また、レンズ保持軸121にはスリット板121cが固定されており、このスリット板121cの回転位置を、ケース12a内に固定された光センサ126が検出することにより、レンズ保持軸121に保持されたレンズ1の原点位置が検出される。
【0037】
このような構成のレンズ保持ユニット12では、レンズホルダ受け121aにレンズ1が固定されると、エアシリンダ123が駆動して、レンズ押さえ軸122が図面左側に移動する。そして、レンズ1をレンズ押さえ122aによって押圧することにより、レンズ1が固定される。レンズ1の加工時及びレンズ測定時は、レンズ回転用モータ125が駆動して、レンズ保持軸121が回転し、それによりレンズ1が回転する。また、レンズ1が回転することにより、レンズ押さえ122aも一体に回転する。
【0038】
図5(a)はY軸方向移動機構としての切り込み動作機構部24の概略構成を示す平面図、図5(b)は(a)図のVb−Vb矢視図である。切り込み動作機構部24は、基板11aの開口下面に取り付けた凹形部材68の凹部上面に固定されている。凹形部材68の凹部上面には、間隔をおいて2つの軸受支持部材61、61が設けられ、これら支持部材61、61にY軸方向を向いたボールネジ62が回転自在に取り付けられている。ボールネジ62の一端は、凹形部材68に固定された切り込み用モータ63の軸と連結されている。
【0039】
切り込み用モータ63は、後述の制御装置からの指令に従って正逆両方向に回転し、この切り込み用モータ63の回転と連動してボールネジ62が回転する。ボールネジ62には、移動ブロック64が螺合されており、この移動ブロック64が、前述したYテーブル20に連結されている。よって、Yテーブル20及びレンズ保持ユニット12は、切り込み動作機構部24の移動ブロック64と一体にY軸方向に移動する。これにより、レンズ1のカッタ131への切り込み動作が行われる。
【0040】
移動ブロック64にはスイッチ片641が取り付けられている。このスイッチ片641は、移動ブロック64が切り込み量計測の基準となる原点位置にあるときに、凹形部材68に固定された光センサ642をオンにする。また、移動ブロック64が一方のリミット位置にあるときに、凹形部材68に固定された光センサ643をオンにする。また、移動ブロック64が他方のリミット位置にあるときに、凹形部材68に固定された光センサ644をオンにする。
【0041】
次に、エンドミル回転機構部14について説明する。エンドミル回転機構部14は、カッタ回転機構部13のカッタ131に隣接して配設されており、基板11aの上に、エンドミル141の軸線を、レンズ保持ユニット12のレンズ保持軸121及びレンズ押さえ軸122と垂直な方向で且つ基板11aと平行な方向に向けて固定されている。しかも、エンドミル141の軸線とカッタ131の軸線とレンズ保持軸121及びレンズ押さえ軸122の軸線は、同じ高さに位置している。エンドミル回転機構部14には、エンドミル141を回転駆動するスピンドルモータ142が設けられている。
【0042】
次に、図6〜図8を参照して測定ユニット15について説明する。
測定ユニット15は、一対のスタイラス161,162を備えた測定ヘッド16を有する。図8に示すように、測定ヘッド16は、基板11a上に間隔をおいて立設した2つの支持壁151,151に、旋回軸152を介して取り付けられている。旋回軸152は、カッタ131の軸と平行に配されており、支持壁151,151の上端近くの高さに、上下方向回動可能に支持されている。この旋回軸152には、測定ヘッド16の下方に突設した2本のアーム163,163が固定されており、これにより、旋回軸152を回すことで、測定ヘッド16が、図6(a)及び図7(a)に示すアンロード位置(測定に供しないときの待避位置)と、図6(b)及び図7(b)に示すロード位置(測定に供するときの位置)との間で回動するようになっている。
【0043】
旋回軸152は一端が片方の支持壁151から水平方向に突出しており、この突出端が、基板11a上に架台154を介して固定されたエア駆動式の測定ヘッド回転アクチュエータ155の回転軸155aに、カップリング152aを介して連結されている。測定ヘッド16は、エア駆動式の回転アクチュエータ155によってアンロード位置とロード位置とに移動させられるので、アンロード位置とロード位置には、測定ヘッド16が確実に止まるように、ストッパ156、157が設けられている(図6参照)。ストッパ156、157は、非旋回側の部材、つまり支持壁151に固定されたブラケット156a、157aに設けられており、これらのストッパ156、157に測定ヘッド16の特定箇所が当たることで、測定ヘッド16の位置決めが行われるようになっている。
【0044】
アンロード位置側のストッパ156は、特に正確な位置決め機能を発揮する必要のないものであるが、ロード位置側のストッパ157は、測定ヘッド16による計測精度に影響を及ぼすため、きわめて正確な位置決め機能を発揮する必要がある。そのため、ロード側のストッパ157としては、位置決め位置を精度よく調整できるマイクロヘッド(1/1000mm)が用いられている。このマイクロヘッド式のストッパ157で位置決めすることにより、ロード位置に移動させられた測定ヘッド16のスタイラス161、162は、レンズ保持軸121の回転中心やカッタ131の回転中心と同一の高さレベルに正確に保持される。
【0045】
また、回転アクチュエータ155で測定ヘッド16をアンロード位置またはロード位置に移動したとき、ストッパ156、157に測定ヘッド16の特定箇所が衝突すると衝撃が生じるおそれがあるので、測定ヘッド16のアーム163及び支持壁151に固定されたブラケット156aには、衝撃吸収作用を果たす緩衝器(ショックアブソーバー)158、159が設けられている。これらの緩衝器158、159は、測定ヘッド16がストッパ156、157に当たる直前に、相手側部材に当接して緩衝作用を発揮し、ストッパ156、157への測定ヘッド16の当たりを軟らかくする役目を果たす。
【0046】
また、測定ヘッド16をロード位置に移動したときには、ロード位置に測定ヘッド16が倒れていることを確認しておく必要があるので、図6、図7に示すように、ロード位置側には、支持壁151に固定されたブラケット160aに光学センサ160を設けて、測定ヘッド16の有無を検出するようにしている。
【0047】
このようにロード位置とアンロード位置間で旋回可能に構成されることで、測定ヘッド16は、必要なときに、上方から測定すべき位置(ロード位置)に供給され、不必要なときには、上方の待避位置(アンロード位置)へ待避することができようになっている。従って、こうしてカッタ131やエンドミル141による作業の邪魔にならないように測定ヘッド16が搭載されていることにより、いったんレンズ保持ユニット12によりレンズ1を保持したら、測定から加工までチャッキングを解かずに、ワンチャックで作業を進めることができる。また、特殊な場合として、レンズ1の加工途中で必要に応じて測定を実行する場合にも、レンズ1のチャッキングを解かずに、そのままレンズ1を保持した状態で、レンズ1のコバ厚等を測定することができる。
【0048】
測定ヘッド16の具体的な構成を述べると、図2や図7(a)に示すように、測定ヘッド16には、レンズ保持ユニット12に保持された被加工レンズ1の凸側レンズ面及び凹側レンズ面に接触する一対のスタイラス(測定子)161,162が設けられている。一対のスタイラス161、162は、レンズ厚み方向(旋回軸152と平行な方向)に平行な一直線上に位置しており、互いに球状の先端部を対向させて配されている。
【0049】
図9は測定ヘッド17の原理構成を示す図である。
各スタイラス161、162は、図示しない案内機構により平行移動するように配されたアーム164、165に取り付けられている。スタイラス161(もう一方のスタイラス162も同じ構成)は、図9(b)、(c)に詳細を示すように、棒状のスタイラス本体161aの先端に、真球状のスチールボール(摩耗や形状変形に強い超鋼製の2φ程度の鋼球)161bを取り付けた構造のものである。スタイラス本体161aの側面には平坦面が形成されており、スチールボール161bは、その平坦面側に寄せてスタイラス本体161aに偏心して溶接により取り付けられている。
【0050】
この場合、スタイラス本体の真ん中にスチールボールを取り付けることがまず考えられるが、そうすると取付誤差や加工誤差により実際は真ん中から外れた位置にスチールボールが付いてしまうおそれが大きく、そうするとスタイラスの中心座標のずれ補正が難しい。この点、前記のようにスタイラス本体161aの側面に平坦面を形成し、その平坦面の延長面上にスチールボール161bの外周が接するようにスチールボール161bを取り付けるようにすれば、スチールボール161bの中心位置は、スタイラス本体161aの平坦面からスチールボール161bの半径分の距離のところに配置されることになる。従って、正確にスチールボール161bの中心位置座標を把握することができるようになり、それを測定に反映させることができる。
【0051】
このようなスタイラス161、162を取り付けたアーム164、165は、平行移動することにより、相互の間隔を開いたり閉じたりする。アーム164、165は、バネ(図示例では圧縮バネ)166a,167aを内蔵したリニアエンコーダ166、167の可動子166b、167bに連結されおり、バネ166a,167aによって互いに閉じ方向に付勢されている。リニアエンコーダ166、167は、可動子166b、167bの移動位置を電気的に検出するもので、各リニアエンコーダ166、167によりスタイラス161,162の位置が検出される。
【0052】
上記のようにスタイラス161、162は、バネ166a,167aによって閉じ方向に付勢されていて自動的に閉じるが、開き方向には何らかの駆動機構で動かしてやらなければならない。そこで、アーム164、165の上方には、一対のプーリ171、172に巻回されたループ状のベルト173が配され、プーリ171をスタイラス開閉用DCモータ170で回転させてベルト173を周回動させることにより、ベルト173に設けた係合片173a、173bで、アーム164,165を引っ掛けて、開き方向に動かすようになっている。
【0053】
なお、この場合も、光センサ174、175で係合片173aの位置を検出することにより、スタイラス161、162が開いているか閉じているかを検出できるようになっている。また、光センサ176、177によって、各アーム164、165が原点位置にあるか否かを検出できるようになっている。
【0054】
図10、図11に測定ヘッド16のスタイラス161、162によるレンズ位置の測定の原理を示す。スタイラス161、162は、レンズ保持軸121と平行な同一直線上で対向している。ここで、図9のベルト173を駆動して、スタイラス161、162を開いた状態で、両スタイラス161、162の先端間にレンズ1を移動し、ベルト173を反対側に戻すと、リニアエンコーダ166、167内のバネ166a、167aの作用で、スタイラス161、162が閉じて、図10に示すように、一方のスタイラス161はレンズ1の凸側レンズ面1Aに先端が当接し、他方のスタイラス162はレンズ1の凹側レンズ面1Bに先端が当接する。
【0055】
今、レンズ枠形状データ(=形状データ)に基づいてレンズ1を移動制御すると、図11に示すように、スタイラス161、162は、形状データに沿った軌跡Sをトレースする。
【0056】
例えば、形状データとして動径情報(ρi,θi)が与えられている場合、動径長ρiに基づく量だけ切り込み動作機構部24を制御することで、レンズ1がスタイラス161、162に対してレンズ半径方向に移動し、スタイラス161、162が、レンズ保持軸121の中心軸線から動径長ρiの位置に位置付けられる。また、動径角θiに基づく量だけレンズ保持ユニット12のレンズ回転機構部を制御することで、レンズ1がスタイラス161、162に対して動径角θiだけ回転させられる。スタイラス161、162の先端は、レンズ1の凸側レンズ面1A及び凹側レンズ面1B上をトレースするので、スタイラス161、162の移動量をリニアエンコーダ166、167で検出することにより、動径情報に対応したコバ厚方向(Z軸方向)のレンズ位置データ(Zi)を得ることができる。そして、この検出動作を動径情報(ρi,θi)の全てについて実行することで、レンズ動径形状軌跡(ρi,θi)上における凸側レンズ面1Aの位置データ及び凹側レンズ面1Bの位置データ(ρi,θi,Zi)を得ることができる。そして、これら凸側レンズ面1Aの位置データ及び凹側レンズ面1Bの位置データにより、レンズ動径形状軌跡(ρi,θi)上におけるレンズ厚さ(コバ厚)を算出することができる。
【0057】
次にカッタ回転機構部13のカッタ131について説明する。
図12はカッタ131の構成を示している。このカッタ131は、図12(b)に示すように、外周面に突出した形の2枚の切削刃131aを有しており、切削刃131aは円周方向に180度間隔で設けられている。カッタ131は、図12(a)に示すように、小ヤゲン溝Y1aを有する小ヤゲンカッタY1(例:メタルフレーム用)と、大ヤゲン溝Y2aを有する大ヤゲンカッタY2(例:プラスチックセルフレーム用)と、ヤゲン溝のない平削り用カッタH1(例:縁無しフレーム用)との3つのカッタを同一軸線上に並べて一体に連結したものであり、加工種目に応じて各カッタ部分を使い分けられるようになっている。
【0058】
ヤゲン溝Y1a、Y2aは、図12(c)に示すようになっている。ヤゲン角度は例えば110〜125度、ヤゲン高さは、小ヤゲンの場合は例えば0.4〜0.68mm、大ヤゲンの場合は例えば0.7〜0.9mmになっている。また、ヤゲン溝Y1a、Y2aの隣りの平面部は、片側のみ例えば3.5〜5度のテーパ面となっている。これは、ヤゲンの隣りにフレームに対する逃げを作るためである。
【0059】
図13にカッタ131によるレンズ1の周縁切削の原理を示す。
カッタ131とレンズ1の干渉部位で見ると、カッタ131は上から下に回転し、レンズ1は下から上に回転する。そして、干渉部位でカッタ131の切削刃131aがレンズ1を、設定された切り込み量だけ強制切削する。今、レンズ枠形状データ(=形状データ)に基づいて加工プログラムを作成し、その加工プログラムに従ってレンズ1を移動制御すると、カッタ131はレンズ1の移動内容に応じてレンズ1の周面を削っていく。
【0060】
平削りの場合は、平削り用カッタH1の前の適正位置にレンズ1を位置決めして、カッタ131を回転させながら、切り込み動作機構部24を駆動することにより加工を行う。また、ヤゲン加工の場合は、図14に示すように、ヤゲンカッタY1、Y2の前の適正位置にレンズ1を位置決めして、Zテーブル移動機構部33のZ軸方向の移動と合わせて、カッタ131を回転させながら、切り込み動作機構部24を駆動することにより加工を行う。図において、1aはヤゲンを示す。
【0061】
図15、図16、図17(a)、(b)に、エンドミル141による溝彫りとコバ(レンズ周面)の両端エッジ部の面取りの原理を示す。形状加工されたレンズ1の端面(周面)に溝1bを彫る場合は、図15、図16に示すように、レンズ1を移動制御することで、回転するエンドミル141の先端に対するレンズ端面のアプローチを行う。
【0062】
アプローチが完了したら、レンズ1を回転させながら、切り込み量を切り込み動作機構部24により適当に設定する。そうすると、レンズ1の回転にともなって、レンズ端面に、予め設定された深さ(切り込み量)の溝1bが連続形成される。加工中は、レンズ1の形状データに基づいて、エンドミル141が現在接触している端面位置とレンズ中心との距離を計算し、この距離に応じてレンズ1のY軸方向の位置を移動制御する。また、加工中は、形状データに基づいて、端面の特定の位置、例えば端面の幅方向(コバ厚方向)の中心位置、あるいは、レンズ前面(凸側レンズ面1A)から一定距離の位置にエンドミル141の先端が常に位置するように、レンズ1をZ軸方向に移動制御する。
【0063】
このような制御を継続してレンズ1が1回転することにより、レンズ端面には溝1bがレンズ全周にわたって形成される。エンドミル141は、元の開始点に戻ると、アプローチのときとは逆方向に移動してレンズ1から離れる。
【0064】
また、コバの両端エッジ部(レンズ周面とレンズ面との交差エッジ部)に割れや欠け防止のための糸面取りを施す場合は、図17に示すように、エンドミル141の先端のR部を利用する。図(a)はレンズ周面に溝1bを加工したものについて面取りを行う場合、図(b)はレンズ周面にヤゲン1aを加工したものについて面取りを行う場合をそれぞれ示している。凸面側のエッジ部1cや凹面側のエッジ部1dをエンドミル141の先端で落とす場合、エンドミル141の先端R部の肩部分を利用する。
【0065】
このとき、エッジ部1c、1dの位置座標データを利用して、エンドミル141に対するレンズ1の位置出し(面取りのための)を行う。つまり、エッジ部1c、1dの形状等により面取り寸法(ΔZ,ΔY)がほぼ決まるから、面取りを行うエンドミル141の中心位置及びR部の半径とエッジ部1c,1dの位置データとを計算に入れることで、レンズ1のエッジ部1c、1dとエンドミル141の先端間の相互位置関係である、取り代Q11、Q12、Q21、Q22が決まる。よって、エンドミル141の中心の座標と、前記取り代Q11、Q12、Q21、Q22のデータにより、制御すべきレンズ1のエッジ部1c、1dの位置座標データを決定することができ、その位置座標データに基づいて、レンズ1をY軸方向及びZ軸方向に位置制御すると共に周回動作させることにより、適正な面取りのためのレンズ1とエンドミル141の相互位置出しが行われる。つまり、レンズ1をY軸方向及びZ軸方向に移動し且つ周回動作させることにより、加工すべきエッジ部1c、1dを、固定位置で回転駆動されているエンドミル141の先端R部に対して正確に位置出しすることができる。これは、エンドミル141の形状及び位置情報とレンズ1の位置情報とを正確に把握していることからできることである。なお、凸面側の面取りと凹面側の面取りは、それぞれエンドミル141に対するレンズ1のアプローチを含めて独立して行われる。
【0066】
図18は、この加工装置10において使用しているレンズホルダ19の構成を示す。図18(a)に示すように、レンズホルダ19は、図4に示した筒状のレンズホルダ受け121aの内周に嵌まる嵌合軸部193と、レンズホルダ受け121aの端面に当たる嵌合軸部フランジ194と、図10に示すように、レンズ1の凸側レンズ面1Aに両面接着パッド191を介して圧接するレンズ保持用フランジ196とを有したパイプ状のものである。嵌合軸部フランジ194には、レンズホルダ受け121a側の突起(図示略)に嵌まる回り止め用切欠195が形成されている。
【0067】
また、レンズ保持用フランジ196の環状端面はレンズ保持面197とされ、レンズ1の凸側レンズ面1Aに対応した凹球面状に形成されている。図18(b)に示すように、この凹球面よりなるレンズ保持面197には、両面接着パッド191との密着結合力を増すための微小凹凸198が周方向に放射状に形成されており、微小凹凸198の各山と谷は、環状のレンズ保持面197の半径方向にほぼ一定の角度で延びている。
【0068】
図18(c)、(d)は、本レンズホルダ19のレンズ保持面197に形成した微小凹凸198の断面形状と、該微小凹凸198に対してパッド191を密着させた状態をそれぞれ示す図、図18(e)、(f)は、比較例として、従来のレンズホルダにおける微小凹凸199の断面形状と、該微小凹凸199に対してパッド191を密着させた状態をそれぞれ示す図である。いずれも、レンズ保持面197の周方向に微小凹凸198、199の山が連なった断面形状をなしている。
【0069】
従来のレンズホルダでは、図18(e)、(f)に示すように微小凹凸199の断面形状を、回転方向を考慮した片斜面形にし、回転で生じるパッド191への食い込み作用により、パッド191との結合力を維持するようになっていた。即ち、微小凹凸199の山の頂点199aを境に、その回転方向前側の壁面199bが垂直面で構成され、反対側の壁面199cが斜面で構成されていた。
【0070】
しかし、このような片斜面形の微小凹凸199をレンズ保持面197に形成した場合、パッド191に対する食い込み作用でパッド191との結合力が得られるものの、図18(f)に示すようにパッド191との密着度が低くなるので、必ずしも高いレンズ保持力を発揮できないという問題があった。また、片斜面形であるため、パッド191との間に圧接力が作用した際に、パッド厚が厚い場合などはアンバランスな回転力を与えてしまい、パッド191が僅かに回転方向へずれることで、高精度のレンズ保持に影響が出るおそれがある。
【0071】
それに対し、本レンズホルダ19(φ20)では、厚めの接着パッドを使用すると共にレンズ保持面197の凹凸198の断面形状を、図18(c)、(d)に示すように両斜面形に形成している。即ち、凹凸198の山の頂点198aを境に、その回転方向前側の壁面198bと、反対側の壁面198cとを、同じ傾斜角度(45度)の斜面で構成している。
【0072】
従って、図18(d)に示すように、パッド191を微小凹凸198に圧接させた際に、両方の斜面に均等にパッド191が密着することになり、接触面積の増大により、パッドの適度な可撓性や変形性が生かされ、レンズ保持力の増大が図れる。また、同じ傾斜角度の両斜面に均等にパッド191が圧接するので、アンバランスな回転力が相殺されて発生しなくなり、従ってパッド191が回転ずれして、レンズの保持精度が低下するようなこともなくなる。
【0073】
また、レンズ保持力の増大が図れることにより、レンズ保持用フランジ196の小径化を図ることもできる。このことは、以下に述べる利点を生む。
【0074】
まず、径の小さいレンズの加工が可能になる。この他に、レンズカーブに応じて用意していたレンズホルダの種類を少なくする(弱度と強度、もしくはその中間に1種か2種を加える程度にする)ことができる。つまり、一般的には、レンズカーブに応じて使い分けができるように、レンズ保持面197の曲率を段階的に変えた複数種のレンズホルダ19を用意している。その場合、全てのレンズカーブに応じてレンズホルダを用意するのは現実的ではないため、1種のレンズホルダで、何種類か(弱度、強度、もしくはその中間の度数用)のレンズカーブの範囲をカバーするようにしている。
【0075】
図19は、ある曲率のレンズ保持面197と、レンズ面1Aの関係を示している。レンズ保持面197の曲率よりレンズ面1Aの曲率が大きい場合、レンズ保持面197の外周縁がレンズ面1Aに当たり、レンズ保持面197のカーブとレンズ面1Aのカーブとの間に深さの差Fができる。この深さの差Fが大きいと、レンズ保持面197とレンズ面1Aの密着度が低くなるため、その差が大きくならないように、レンズ面1Aに対応したレンズホルダを用意して選択できるようにしている。
【0076】
ところが、同じカーブの場合でも、レンズ保持面197(レンズ保持用フランジ196)の外径の小径化を図ると、前述の深さの差Fを減らすことができ、多くのカーブのレンズに対応できるようになる。従って、小径化したレンズホルダによれば、カバーできるレンズカーブ範囲を広げることができ、結果として、レンズホルダの種類を減らすことができる。
【0077】
なお、上記の例では、レンズ保持面197に形成した微小凹凸198の断面形状を山形にしているが、山の頂点や谷の底をR形状にして滑らかな波形状としてもよい。また、上記の例では、微小凹凸198の山と谷を環状のレンズ保持面197の半径方向に連続的に延ばしているが、微小凹凸をレンズ保持面197全体に分散的に配置してもよい。
【0078】
図20はレンズ加工装置10における制御装置を中心とした電気的な接続関係を示すブロック図である。ただし、ここでは、主要な構成のみを示す。制御装置は、サーボモータ制御部1001とI/O制御部1002とからなる。両制御部1001、1002は互いにデータのやりとりを行い、且つ、図示略のホストコンピュータともデータのやりとりを行う。加工システム全体を管理するホストコンピュータからは、レンズの形状データ(動径情報、レンズ厚、外径等を含む)や加工情報等が送られ、制御部1001、1002は、この送られた形状データや加工情報に基づいて、レンズに対し必要な加工を施す。
【0079】
サーボモータ制御部1001は、X軸サーボモータ(レンズ回転用モータ125)、Y軸サーボモータ(切り込み動作用モータ63)、Z軸サーボモータ(Z方向移動用モータ331)の駆動制御を行う。また、I/O制御部1002は、カッタ回転機構部13のカッタ回転用モータ(TOOL用モータ)133、面取りモータ(エンドミル回転機構部14のスピンドルモータ142)、レンズチャックエアーシリンダ123、測定ヘッド用回転アクチュエータ155、冷却用エアブロー1010、スタイラス開閉用DCモータ170を、制御部や電磁弁1021〜1026を介して駆動制御し、必要な動作を行わせる。その際、各種センサの信号を制御に利用する。
【0080】
また、I/O制御部1002は、測定用リニアエンコーダ166、167の検出信号をカウンタユニット1030でカウントして取り込む。更に、表示操作部1100に対して必要な表示を行うと共に、操作信号を取り込む。また、集塵機インターフェースや搬送ロボットインターフェースに必要な信号を送る。
【0081】
次に図21のフローチャートに従って、制御部1001及び1002で行われる制御の流れを説明する。
被加工レンズ1をレンズ保持ユニット12にセットしてスタートの操作を行うと、最初に、ホストコンピュータより送られて来る測定軌跡データを入力する(ステップS1)。次いで、測定ヘッド16を下降させてロード位置に位置決めし(ステップS2)、スタイラス161,162をレンズ1に対してローディングし(ステップS3)、レンズ位置を測定して(ステップS4)、その測定データをホストコンピュータへ送る(ステップS5)。
【0082】
レンズの全周について測定が完了すると、スタイラス161、162をレンズ1からアンローディングし(ステップS6)、測定ヘッド16をアンロード位置に上昇させる(ステップS7)。次に、ホストコンピュータより加工軌跡データを入力し(ステップS8)、カッタ回転機構部13のモータ(TOOLモータ)133を回転させると共に、エアーブローを開始し(ステップS9)、集塵機を運転する(ステップS10)。
【0083】
そして、所定回転数でカッタ131を回すことで荒加工を強制切削により実施し(ステップS11)、次にカッタ用のモータ133の回転速度を変更して(ステップS12)、仕上げ加工を同じくカッタ131による強制切削で行う(ステップS13)。このとき、ヤゲン加工が必要な場合は、ヤゲンカッタY1、Y2を選択して加工を行う。
【0084】
仕上げ加工が終了すると、カッタ131を停止し(ステップS14)、面取りモータ142を回転して(ステップS15)、エンドミル141により凸側レンズ面及び凹側レンズ面のエッジ部に対する面取りを行う(ステップS17)。その前に、ヤゲン加工の代わりに、レンズ周面に対する溝彫り加工が必要な場合には、面取り加工に先立って、面取りモータ142でエンドミル141を回して、レンズ端面の溝彫りを実行する(ステップS16)。面取りが全周にわたり完了したら、面取りモータ142及びエアーブローを停止し(ステップS18)、集塵機も停止して(ステップS19)、1個のレンズの加工を終了する。
【0085】
上記の荒加工及び仕上げ加工は同じカッタで行う。即ち、平削りの場合は平削りカッタH1、小ヤゲンの場合は小ヤゲンカッタY1、大ヤゲンの場合は大ヤゲンカッタY2を選択し、同一カッタで荒加工から仕上げ加工まで行う。従って、工程移動を行わずにワンチャックで連続的な加工が可能であり、加工時間の短縮や装置の小型化を実現することができる。また、荒加工用と仕上げ加工用の工具を別に用意しなくてよいので、工具の配置スペースを小さくできる上、工具の管理も楽になる。
【0086】
また、カッタ131でレンズ1を強制切削するので、切り込み量を適当に設定しながら切削を進めることができる。従って、仕上げ形状に至るまでの過程を、形状データに最適な加工条件で決めることができる。例えば、何回の回転で切削を完了するかとか、何秒で切削を完了するかとかの目標設定が任意にできるようになるので、加工時間の短縮と加工精度の向上を図ることができる。
【0087】
また、面取り加工を溝彫り用の小径のエンドミル141の先端のR部(アール部)で行うので、砥石に比べて、他の箇所との干渉が少なく、小さな面取りを正確に仕上げることができる。特に、1個のエンドミル141を溝彫り加工と面取り加工に兼用するので、工具数を減らすことができてコスト削減に寄与することができるし、溝彫り加工と面取り加工を、ワンチャックのままほぼ連続して行うことができるため、加工時間の短縮も図れる。また、工具の兼用により駆動系が1つで済むため、装置の小型化及びコストの削減を図ることができる。また、工具の数を増やさないため、工具の管理も楽になる。
【0088】
また、本レンズ加工装置10の場合、加工手段としてのカッタ131やエンドミル141の上方に、レンズ測定を行う測定ヘッド16を配置し、必要なときにだけ、測定ヘッド16を前に倒して、レンズ保持ユニット12に保持されたレンズ1の測定が行えるようにしているので、測定ヘッド16を無理なレイアウトをせずに加工装置10上に搭載することができる。また、カッタ131やエンドミル141の上方の空きスペースを有効利用して測定ヘッド16を加工装置10上に搭載しているので、加工装置10の平面面積を拡大せずに済み、加工装置10の小型化を図ることができる。また、レンズ保持ユニット12にレンズを保持した状態で、測定から加工までの一連の工程を全てこなすことができるので、工程移動のためのレンズの持ち替えが全くなくなり、レンズの持ち替えによる加工精度の低下の心配もなくなって、レンズ形状を正確に仕上げることができる。
【0089】
次に、加工精度の向上や加工効率等の向上を図るために、本レンズ加工装置10において実行される各種方法について説明する。
【0090】
まず、このレンズ加工装置10では、カッタ131の回転速度、カッタ131による周面切削時のレンズ保持軸121の回転速度(送りスピード)、周面切削加工のためのレンズ1の周回数、溝彫り時や面取り時のエンドミル141の回転速度、そのときのレンズ保持軸121の回転速度(送りスピード)等を変更可能なパラメータとして持っており、レンズ1の材種(硝種=ここではプラスチックの種類)や度数(コバ厚)、仕上げ加工と荒加工の加工工程の別などに応じて、それらパラメータの設定を行うことにより、最適な加工条件を選べるようになっている。
【0091】
例えば、レンズ1の材種(硝種)や度数(コバ厚)に応じてパラメータ(カッタ回転速度、レンズ保持軸回転速度、加工周回数)を変えることにより、レンズ1の材種や度数によらず、加工負荷を揃えることができるようになって、レンズサイズやレンズ形状(ヤゲン位置を含む)を正確に均一に仕上げることができるし、加工箇所をきれいに仕上げることができる。また、適正な加工条件の選択により、加工応力の低減を図ってレンズ軸のずれを少なくできるし、工具寿命を延ばしたり、加工時間を短縮したりすることもできる。
【0092】
また、仕上げ加工と荒加工の加工工程の別に応じて、パラメータ(カッタ回転速度、レンズ保持軸回転速度)を変えることにより、同じカッタで加工しながらも、仕上げ面を良好にすることができるし、レンズサイズやレンズ形状(ヤゲン位置を含む)を正確に仕上げることができる。また、適正な加工条件の選択により、加工応力の低減を図ってレンズ軸のずれを少なくできるし、工具寿命を延ばすこともできる。
【0093】
また、同じ加工工程において、カッタ131の回転速度やレンズの回転角速度を変えることで、切削速度の均一化を図ることができるので、加工面を均質な状態に仕上げることができる。
【0094】
また、エンドミル141による溝彫り加工時あるいは面取り加工時にも、レンズ1の材種(硝種=ここではプラスチックの種類)に応じて、パラメータ(エンドミル回転速度、レンズ保持軸回転速度)を変えることにより、レンズ1の材種によらず、精度良く溝や面取り部を形成することができる。また、適正な加工条件の選択により、工具寿命を延ばしたり、加工時間を短縮したりすることもできる。
【0095】
また、このレンズ加工装置10では、ヤゲン加工の際に必要なレンズ位置データを正確に得るために、次に述べるような演算機能を備えている。図22を用いて説明する。
【0096】
通常、レンズ面1A、1Bの位置データを得るためには、測定ヘッドのスタイラス161、162を、レンズ形状データに従ってレンズ面1A、1B上でトレースさせ、その軌跡の各点において各スタイラス161、162の位置を検出することにより、レンズ面の位置1e、1fを計測している。この場合のスタイラス161、162のトレース位置は、レンズ1がヤゲン加工されたときに形成されるヤゲン1aの頂点のレンズ保持軸方向の延長線ST上である。
【0097】
しかし、そのようにして求めた位置データ(1e、1fの座標データ)に基づいて、そのままヤゲン加工をすると、ヤゲン1aの位置を正確に仕上げることができないという問題がある。即ち、加工した状態でのレンズ周面におけるヤゲン1aの位置を、レンズ周面の両端エッジ部1c、1dを基準にして精度良く出したいのに、実際のヤゲン加工は、両端エッジ部1c、1dの位置よりヤゲン高さSH分だけ外周側の位置1e、1fで測定したデータに基づいて行っている。従って、ヤゲン1aが高精度に仕上がらない。
【0098】
そこで、予めレンズ形状データで規定される位置からヤゲン高さSHを引いた位置で、スタイラス161、162をトレースさせることにより、加工後の状態におけるレンズ周面の両端エッジ部1c、1dの位置を予め計測して、その位置データに基づいてヤゲン加工することが考えられている。
【0099】
しかし、そうすると、スタイラス161、162を、レンズ形状データで規定される位置よりもレンズ中心側でトレースさせなくてはならないため、スタイラス161、162をトレースさせるためのデータを、予めレンズ形状データとは別に作成しなくてはならない。また、レンズ中心側でトレースさせるため、最終的に利用可能性のあるレンズ面1A、1Bの範囲に、スタイラス161、162の接触痕が残るおそれもある。
【0100】
そこで、本レンズ加工装置10では、点1e、1fの座標測定データと、別途与えられるレンズ1の設計データ(動径データ、凸側レンズ面形状データ、凹側レンズ面形状データ、レンズ厚データ、外径データ)に基づいて、点1c、1dの座標値を算出するようにしている。この場合のレンズ1の設計データには、凸側レンズ面1A及び凹側レンズ面1Bの形状を規定する有限数の座標データ(ρi,θi,Zi)が含まれており、非球面レンズの場合にも、凸側レンズ面1A及び凹側レンズ面1Bの任意の点の座標を取り出すことができる。従って、ヤゲン頂点のレンズ保持軸方向の延長線SH上のトレース点において測定した実測データと、この設計データを利用することにより、点1c、1dの位置を精度良く算出することができ、これらの点1c、1dの座標データを用いることで、ヤゲン1aを精度良く加工することができる。なお、設計データは、ホストコンピュータのレンズ設計プログラムデータから与えられるようになっている。
【0101】
また、本レンズ加工装置10では、レンズ形状やレンズ位置を測定する測定ヘッド16を、必要に応じて、レンズ保持ユニット12に保持されたレンズ1に対して、待避場所からアプローチすることができるようになっているので、加工前の計測の他に、特別な場合には、加工途中で、レンズ形状やレンズ位置を計測することもできる。次に、そのような加工途中で測定を実施する場合の例について説明する。
【0102】
図23は加工工程の例を示す。(a)は通常の場合の加工工程、(b)は特別な場合(本発明の加工方法を実施する場合)の加工工程を示す。(a)の加工工程は、未加工レンズの段階でレンズ測定を行うもの、(b)の加工工程は、荒加工の途中の段階でレンズ測定を行うものである。本レンズ加工装置10では、レンズの材種(硝種)や度数(コバ厚)に応じて、(a)の加工工程か、(b)の加工工程か、を選択して加工を実施するようにしている。このように(b)の特別な加工工程を選択肢に設けている理由は、レンズにより、未加工レンズの段階と荒加工の途中の段階でのレンズ測定値に差が出る場合があり、全ての場合を(a)の通常の加工工程で統一すると、最終仕上げ加工でヤゲン位置が正確に仕上がらないことがあるためである。
【0103】
(a)に示す通常の加工工程の場合は、最初にレンズの測定を行う。次に荒加工を実施し、その後、仕上げ加工を実施し、最後に面取り加工を実施して、最終形状のレンズを得る。荒加工は、仕上げ用の削り代(例えば0.25〜0.35mm)を残したところまで行い、仕上げ加工で最後の削り代を取り除いて最終寸法に仕上げる。
【0104】
一方、(b)に示す特別な加工工程の場合は、最初に1次荒加工を実施し、その後でレンズの測定を実施する。図24(a)、(b)に示すように、1次荒加工は、仕上げ寸法に対して測定可能幅SKを残した寸法まで行う。通常の加工工程における荒加工では、残りの仕上げ用の削り代を残すが、この程度の削り代の範囲にスタイラス161、162をトレースさせるのは難しい。そこで、この加工工程では、敢えて1次荒加工により、測定できる範囲の幅(例えば1.5〜1.8mm程度)を残したところまで加工するのである。
【0105】
何故そうするかというと、前述したように、未加工レンズから一気に仕上げ用の削り代を残したところまで荒加工すると、特殊レンズの場合など、レンズの保持状態が変化する場合がある。即ち、レンズの保持状態によっては、未加工レンズの段階では、これから荒加工で取り除こうとする部分が補強効果を発揮して保持バランスをとり、変形を表に現れないように留めていたものが、荒加工でその部分が取り除かれることにより、補強効果がなくなって、保持変形が表に現れる場合がある。従って、そのような場合、未加工レンズの段階でレンズ測定値を求めても、実際に荒加工した後の段階ではその当初のレンズの位置データが変わってしまい信頼性が低下してしまうからである。
【0106】
このように、1次荒加工を行った段階でレンズ測定を実施し、レンズ保持の変形を受けない状態でコバ厚を含むレンズ情報を得たら、その後で2次荒加工により、仕上げ用の削り代を残した段階まで取り除き、後は通常の場合の加工工程と同様に、仕上げ加工を実施し、最後に面取り加工を実施して、最終形状のレンズを得る。
【0107】
このように荒加工の途中の段階でレンズ測定を実施することにより、信頼性の高いレンズ測定値を得ることができるので、その後の仕上げ加工をそのレンズ測定値を用いて行うことにより、レンズ形状及びヤゲン形状を正確に仕上げることができる。
【0108】
次に、各種の公差や誤差を補正する方法について説明する。
【0109】
まず、カッタ131の公差や誤差を補正する方法について説明する。
本レンズ加工装置10においては、カッタ131による周面切削加工の後に、レンズ周面の両端エッジ部1c、1dの面取りを行う。ここで、面取りを正確に行うには、カッタ131で周面切削した段階でのエッジ部1c、1dの位置が正確に把握されている必要がある。つまり、ヤゲン加工後のレンズ形状が正確に把握されていなければならない。
【0110】
そのために、本レンズ加工装置10では、製作されたカッタ131を実測し、カッタ131の形状データを、その加工公差レベルを超えた高精度の単位での実測値による位置データとして持ち、加工時の計算に反映させるようにしているのである。
【0111】
図25は必要な実測データの例を示している。これらのデータは、ヤゲンカッタY1、Y2のヤゲン溝Y1a、Y1bの底部を基準にして実測した値であり、TD1〜TD5は径変化する各ポイントの直径、TW1〜TD4は各ポイント間の距離である。これらのデータにより、ヤゲンカッタY1、Y2の形状が、カッタ毎に個別に特定される。このようなデータを予めレンズ加工装置10の制御部に入力しておくことにより、レンズの周面切削段階で、カッタ131の公差や誤差による加工誤差までを含めてレンズ形状を把握することができる。従って、ヤゲン位置を含めて、レンズ形状の精度を高めることができ、周面切削後のエンドミル141による面取り加工を精度良く行うことができる。
【0112】
次に、測定ヘッド16のスタイラス161、162の誤差を補正する方法を説明する。
一対のスタイラス161、162は、レンズ面に当接する先端の位置が互いに正確に一致している、つまり、正確に同芯であることが理想であるが、現実には必ずしも一致していない場合が想定される。そこで、レンズの加工に先立って、予め測定原器を用いることで、2つのスタイラス161、162の「芯ずれ」量を測定する。
【0113】
図26は測定原器50の構成を示す。
測定原器50は、図26(a)に示すように、レンズホルダに相当する部分59と、レンズに相当する矩形状の平板部(厚み4.00mm)57とを一体に形成したものである。レンズホルダに相当する部分59は、レンズホルダ受け121aの内周に嵌まる嵌合軸部53と、回り止め用切欠55を有した嵌合軸部フランジ54と、平板部57につながるフランジ56とを有している。
【0114】
平板部57は、嵌合軸部53の中心軸線に対して精度良く直交するように形成されている。平板部57の表裏面には、図26(b)に示すような、円環形のV溝58Aと、十字形のV溝58Bがけがかれている。円環形のV溝58Aは、その中心を嵌合軸部53の中心軸線に置いて所定径(通常加工する未加工レンズより小さい径)でけがかれている。また、十字形のV溝58Bは、その交差点を前記中心軸線に置いてけがかれている。ここで重要なことは、十字形のV溝58Bの一方が嵌合軸部53の回り止め用切欠55の位置と一致し、他方が回り止め用切欠55に直交する位置と一致していることで、さらに、図26(c)に示すように、表面と裏面のV溝58A、58Bの位置が精度良く一致していることである。また、V溝58A、58Bの開き角度が、精度良く所定角度(90度)に設定されていることである。
【0115】
次にこの測定原器50を用いて両スタイラス161、162の「ずれ」を計測する手順を説明する。計測にあたり、まず、測定原器50を、レンズ保持ユニット12のレンズホルダ受け121aに、通常のレンズを固定したレンズホルダと同様にセットする。そして、スタイラス161、162の「ずれ」を、レンズ径方向(Y軸方向)と、上下方向に分けて計測する。
【0116】
図27はY軸方向の「ずれ」を計測する場合を示している。
この場合は、円環形のV溝58Aを利用するため、平板部57をある角度だけ回して、円環形のV溝58Aがスタイラス161、162の位置に来るようにする。その状態で、スタイラス161、162の各先端を、測定原器50の平板部57の表裏面のV溝58A以外の場所に当接させる。
【0117】
次に、測定原器50をY軸方向に移動して、スタイラス161、162の先端が円環形のV溝58Aを横断するように操作する。すると、図27(b)に示すように、スタイラス161、162の先端が、V溝58Aのある平板部57の表裏面をY軸方向にトレースする。その際、V溝58Aを通過する過程で、スタイラス161、162は、V溝58Aの深さ方向に変位する。そこで、V溝58Aの一番深いところにスタイラス161、162の先端が当接したときのY軸方向の測定原器50の位置を読みとる。これを各スタイラス161、162ごとに行うと、それぞれに読みとったY軸方向の値の差が、スタイラス161、162のY軸方向の「ずれ」として検出されることになる。
【0118】
図28は上下方向(Y軸方向と直交する方向)の「ずれ」を計測する場合を示している。
この場合は、十字形のV溝58Aのうち1本を利用するため、平板部57をある角度だけ回して、十字形のV溝58Aの1本がスタイラス161、162の高さと同じ水平位置に来るようにする。その状態で、スタイラス161、162の各先端を、測定原器50の平板部57の表裏面のV溝58B以外の場所に当接させる。
【0119】
次に、測定原器50を僅かに回して(矢印X方向に移動して)、スタイラス161、162の先端が、水平に位置させた十字のV溝58Aを上下方向に横断するように操作する。すると、図28(b)に示すように、スタイラス161、162の先端がV溝58Bのある平板部57の表裏面を上下方向にトレースする。その際、V溝58Bを通過する過程で、スタイラス161、162は、前述したのと同様に、V溝58Bの深さ方向に変位する。そこで、V溝58Bの一番深いところにスタイラス161、162の先端が当接したときの回転方向の測定原器50の位置(角度)を読みとる。これを各スタイラス161、162ごとに行うと、それぞれに読みとった回転方向の値の差が、スタイラス161、162の上下(回動)方向の「ずれ」として検出されることになる。
【0120】
このようにスタイラス161、162の「ずれ」を検出したら、その「ずれ」に関するデータをレンズ加工装置10の制御部に入力しておく。そうすると、スタイラス161、162を用いてレンズ測定して得たデータを、前記の「ずれ」を考慮して補正することができ、より精度のよい測定値を得ることができる。つまり、両方のスタイラス161、162の芯ずれ量を補正値として持たせることで、スタイラス161、162で測定した測定値に反映させるのである。
【0121】
補正の例としては次のような態様が考えられる。
即ち、片方のスタイラス161(162側でもよい)を基準側として決めておき、基準側として決めておいたスタイラス161を、正しく指令したポイントに沿ってトレースさせる。そうすると、それと反対の非基準側のスタイラス162は、本来と違うポイント、つまり、指令したポイントから前記「ずれ」量だけずれたポイントをトレースすることになるが、その位置での測定データは、前記「ずれ」量が分かっているので、レンズ設計データがあれば、演算して本来のポイントにおける測定値に補正することができる。従って、このようにレンズ設計データを利用して補正することにより、精度の良い測定値を得ることができる。また、Z軸方向の補正は、平板部57の厚み(4.00mm)を基準値として、両スタイラス161、162を接近・離間して平板部57の厚みを測定することにより、ずれ量を把握し補正する。
【0122】
次に、カッタ131とエンドミル141の高さのずれを補正する方法を説明する。
エンドミル141は、カッタ131で周面研削したレンズ1の周面エッジ部1c、1dに対し面取りを施す。そのため、カッタ131とエンドミル141は、その中心高さが正確に合っているのが、精度の良い面取り加工を行う上で望ましい。しかし、カッタ131とエンドミル141の高さを正確に揃えるには、高さ合わせのための特別な調整機構を新たに設けなくてはならず、装置が複雑化するという問題がある。
【0123】
そこで、カッタ131とエンドミル141の高さの微妙な「ずれ」を機械的に合わせるのではなく、予めその「ずれ」量を測定し、その「ずれ」量を補正値としてレンズ加工装置10に持たせることにより、容易に正確な面取り加工ができるようにしている。
【0124】
図29はカッタ131とエンドミル141の高さの「ずれ」を計測する方法の説明図である。
まず、図29(a)に示すように、カッタ131に対するレンズ1のY軸方向の位置と回転角度位置を制御しながら、カッタ131で周面を削ることにより、矩形体101を形成する。次に、エンドミル141がカッタ131と同じ高さにあるものと仮定して、削り深さを一定に設定する以外、カッタ131による切削時と同じ駆動条件で矩形体101を動かすことにより、矩形体101の周面にエンドミル141で溝を彫る。
【0125】
そうすると、カッタ131とエンドミル141が現実に同じ高さにあれば、図29(b)に示すように、溝102の深さSFは一定になるが、カッタ131とエンドミル141の高さが異なる場合には、図29(c)に示すように、溝102の深さが一定にならなくなる。これは、図29(a)に示すように、エンドミル141がカッタ131の中心高さよりずれている場合、エンドミル141がカッタ131と同じ高さにあるものと仮定して行った加工ポイントよりも、実際の加工ポイントがずれてしまうことにより起こる。ここで、溝102の深さの違いは、エンドミル141の高さの「ずれ」に比例する。従って、矩形体101の辺の中心から一定距離だけ両端方向(角部の方向)に隔たったポイントにおける溝102の深さSF1、SF2の差(SF2−SF1)を求めることで、エンドミル141のカッタ131に対する高さの「ずれ」を換算することができる。
【0126】
このようにして求めた高さの「ずれ」を補正値として持ち、エンドミル141による溝彫り加工や面取り加工の際の制御値に反映させることにより、溝彫り加工や面取り加工の精度を上げることができる。また、単に補正値を持たせるだけでよいので、高さ合わせの機構が不要になり、装置コストの削減も図れる。
【0127】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態のような切削式レンズ加工装置に限らず、砥石でレンズ周面を研削する方式のレンズ加工装置にも適用することができる。
【0128】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、工具(例えばカッタ)の実測データを利用して、加工後のレンズ寸法を算出するようにしたので、算出したレンズ寸法に公差レベルの誤差が含まれないようにすることができる。従って、高精度のレンズ寸法割り出しが可能になり、割り出したデータに基づいて以後の加工を行うことにより、高精度の加工(例えばボールエンドミルによる面取り加工)ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のレンズ加工方法を実施するためのレンズ加工装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】同加工装置の全体構成を示す平面図である。
【図3】同加工装置の全体構成を示す正面図である。
【図4】同加工装置におけるレンズ保持ユニットの詳細構成を示す平面図である。
【図5】(a)は同加工装置における切り込み動作機構部の詳細構成を示す平面図、(b)は(a)図のVb−Vb矢視図である。
【図6】同加工装置における測定ユニットの側面図であり、(a)は測定ヘッドがアンロード位置にある状態を示し、(b)はロード位置にある状態を示す。
【図7】同加工装置における測定ユニットの平面図であり、(a)は測定ヘッドがアンロード位置にある状態を示し、(b)はロード位置にある状態を示す。
【図8】同加工装置における測定ユニットの正面図である。
【図9】(a)は前記測定ヘッドの原理構成図、(b)はスタイラスの先端部の詳細を示す側面図、(c)は同正面図である。
【図10】前記測定ヘッドのスタイラスをレンズにローディングした状態を示す平面図である。
【図11】前記測定ヘッドのスタイラスをレンズにローディングした状態を示す側面図である。
【図12】同加工装置におけるカッタ回転機構部のカッタの構成を示し、(a)は半断面図、(b)は側面図、(c)はヤゲンカッタの要部拡大図である。
【図13】前記カッタでレンズを加工している状態を示す側面図である。
【図14】前記ヤゲンカッタでレンズを加工している状態を示す平面図である。
【図15】前記加工装置におけるエンドミル回転機構部のエンドミルでレンズ端面に溝彫りを行っている状態及びレンズ端面のエッジ部に面取りを行っている状態を示す平面図である。
【図16】前記エンドミルで溝彫りまたは面取りを行っている状態を示す側面図である。
【図17】(a)は同エンドミルで溝彫り及び面取りを行う場合の説明に用いる拡大図、(b)はヤゲンのある場合の面取りの説明図である。
【図18】前記加工装置におけるレンズホルダの説明図で、(a)はレンズホルダの側面図、(b)は同レンズホルダのレンズ保持面の平面図、(c)は前記レンズ保持面に形成されている微小凹凸の断面図、(d)はその微小凹凸にパッドを圧接させた状態を示す断面図、(e)は従来のレンズホルダのレンズ保持面に形成されている微小凹凸の断面図、(f)はその微小凹凸にパッドを圧接させた状態を示す断面図である。
【図19】同レンズホルダとレンズの曲率の関係による密着度の説明に用いる断面図である。
【図20】前記加工装置の電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図21】同加工装置で行われる加工プロセスを示すフローチャートである。
【図22】同加工装置で行われるレンズ測定の補正方法の説明図である。
【図23】同加工装置で選択可能な加工工程(a)、(b)の流れ図であり、(b)の加工工程が本発明の加工方法に相当する。
【図24】図23の(b)の加工工程の説明図で、(a)はレンズの正面図、(b)はレンズの断面図である。
【図25】同加工装置で行われるカッタ形状の補正データを示す図である。
【図26】前記測定ヘッドに設けられたスタイラスの芯ずれ補正に用いる測定原器の構成図であり、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は(b)のC1−C1矢視及びC2−C2矢視部の断面図である。
【図27】測定原器によるスタイラスの芯ずれ量の求め方の説明図で、(a)は正面図、(b)は(a)のB1−B1矢視断面図である。
【図28】図27の場合と別の方向の芯ずれ量の求め方の説明図で、(a)は正面図、(b)は(a)のB2−B2矢視断面図である。
【図29】同加工装置のカッタとエンドミルの高さのずれ量の求め方の説明図で、(a)は正面図、(b)はずれがない場合の矩形体の正面図、(c)はずれがある場合の矩形体の正面図である。
【符号の説明】
1 レンズ
12 レンズ保持ユニット
16 測定ヘッド(レンズ形状測定手段)
131 カッタ(周面加工手段)
141 エンドミル(溝彫り加工手段、面取り加工手段)

Claims (4)

  1. 眼鏡用の被加工レンズの周縁をレンズ枠形状データに従って加工するレンズ加工方法において、
    前記被加工レンズの周面を加工する工具の寸法を実測して工具寸法実測データを取得する工程と、
    前記レンズ枠形状データに従って前記工具で被加工レンズの周面を加工する工程と、
    前記工具で被加工レンズの周面を加工した後のレンズ寸法を割り出す際に、該レンズ寸法を前記工具寸法実測データを用いて算出する工程と、
    該算出したレンズ寸法に基づいて以後の加工を行う工程と、
    を有することを特徴とするレンズ加工方法。
  2. 前記工具がカッタであり、前記被加工レンズの周面を加工する工程において、前記レンズ枠形状データに従ってカッタにより被加工レンズの周面を切削することを特徴とする請求項1記載のレンズ加工方法。
  3. 前記以後の加工として、レンズ周面とレンズ面との交差エッジ部の面取り加工を行うことを特徴とする請求項1または2記載のレンズ加工方法。
  4. 前記面取り加工をボールエンドミルの先端アール部で行うことを特徴とする請求項3記載のレンズ加工方法。
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