JP3729997B2 - インクジェット式記録ヘッド、及びこれに使用する圧電振動子ユニットの製造方法 - Google Patents

インクジェット式記録ヘッド、及びこれに使用する圧電振動子ユニットの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、圧電材料を介在させて複数の内部電極を交互に積層した縦振動モードの圧電振動子を圧力発生手段に使用するインクジェット式記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
縦振動モードの圧電振動子を使用したインクジェット記録ヘッドは、図9(イ)に示したように圧力発生室A、インク供給口B,リザーバCを備えた流路形成基板Dと、流路形成基板Dの一方の面を封止する弾性板Eと、圧力発生室Aに連通するノズル開口Fを備えたノズルプレートGとを積層した流路ユニットHと、圧電振動子ユニットJとの2つの部材を有し、圧電振動子ユニットJを構成している各圧電振動子Kにより圧力発生室Aを膨張、収縮させてインク滴をノズル開口Fから吐出させるもので、圧電振動子Kは、振動領域で2つの極の内部電極L,Mが圧電材料Nを介してラップするように積層され、各内部極に接続するように外部電極P,Qを作り付けて構成されている。
【0003】
このような圧電振動子Kは、複数個分の大判の圧電振動板を作成し、これを振動子ユニットのサイズ相当の小板に切分け、各小板に外部電極P,Qを作り付け、さらに各小板の圧電振動板をワイヤソウ等により一端部に連続部が残るように一定のピッチでスリットを形成することにより構成されている。
【0004】
しかしながら、大判の圧電振動板を製作する段階で、圧電材料の積層工程や、焼成工程で、角部に欠け等が生じ、この状態で蒸着やスパッタリング等により外部電極P、Qを形成すると、図9(ロ)に示したように欠損部Rにも導電材料層が形成されて内部電極L,Mが異極間で導通し、動作不良を生じるという問題がある。
【0005】
もとより、厳重な検査によりこのような動作不良の圧電振動子ユニットが記録ヘッドの構成部品として組み込まれることは皆無ではあるが、記録ヘッドの記録密度の向上を図るため、圧電振動子のサイズが小さくなるほど、製造の歩留まりを急速に低下させるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、圧電振動子のエッジ領域での欠損に因する圧電振動子の動作不良を最小限として、歩留まりの向上を図ることができるインクジェット式記録ヘッドを提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は同上インクジェット式記録ヘッドに使用する圧電振動子ユニットの製造方法を提案することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような問題を解消するために本発明においては、第1の内部電極、圧電材料、前記第1の内部電極と異なる極の第2の内部電極とが複数積層され、前記第1の内部電極及び前記第2の内部電極を軸方向におけるそれぞれ各端面で露出さ、かつ変位領域で前記第1の内部電極、前記第2の内部電極及び前記圧電材料が重なるように積層された圧電定数d31の圧電振動子と、前記圧電振動子の先端に当接して圧力発生室の容積を膨張、縮小させる弾性板を有する流路ユニットと、からなるインクジェット式記録ヘッドにおいて、最外層側に位置する前記第1の内部電極の先端と前記圧電振動子の変位領域側の前記弾性板に当接する先端面との距離L1が、他の全ての前記第1の内部電極の先端と前記圧電振動子の変位領域側の前記弾性板に当接する先端面との距離L2よりも大きく構成され、また前記圧電振動子の前記各端部に前記第2の内部電極を並列に接続する外部電極が蒸着、またはスパッタリングにより形成されている。
【0009】
【作用】
欠けが生じ易いエッジ部に位置する第1の内部電極と、第2の内部電極との距離が長いため、エッジ部に欠損部が生じたとしても最外層に位置する内部電極の先端側に圧電材料が残存し、外部電極による第1と第2の内部電極との短絡が防止される。
【0010】
【発明の実施の態様】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例を示すものであって、本発明が特徴とする圧電振動子ユニット1は、軸方向に平行に異なる極の内部電極2、3をそれぞれ一端で露出させ、かつ振動領域でラップするように圧電材料4を介装して積層した圧電振動子5を、図2に示したように固定基板6に一定ピッチで配置して構成されている。なお、図中符号7、7は、圧電振動子の列設方向の端部に設けた圧電振動子ユニット位置決め用のダミーの圧電振動子を示す。
【0011】
各圧電振動子5の先端、後端の内部電極2、3の露出面から固定基板6の表面側にかけては、駆動信号を供給するフレキシブルケーブル8との接続部を形成する外部電極9、10が蒸着やスパッタリングにより形成されている。
【0012】
圧電振動子5の後端側に露出し、先端側では端部2aが圧電材料4に埋設される内部電極2’、2、2、‥‥の内、外側に位置するもの2’は、先端面からの距離L1が他の内部電極2、2、‥‥と先端面との距離L2よりも大きくなるように形成されている。
【0013】
流路形成ユニット11は、リザーバ12、インク供給口13、及び圧力発生室14を区画、形成する流路形成基板15と、圧電振動子5の先端に当接して圧力発生室14の容積を膨張、縮小させる弾性板16と、流路形成基板15の他方の面を封止して圧力発生室14のインクをインク滴として吐出させるノズル開口17を備えたノズルプレート18とを液密に積層して構成されている。
【0014】
流路形成ユニット11は、ヘッドホルダ19の開口面19aに固定され、また圧電振動子ユニット1は、圧電振動子5の先端に接着剤を塗布して弾性板16のアイランド部16aに当接させ、固定基板6とヘッドホルダ19とを接着剤で固定されてインクジェット式記録ヘッドが構成されている。
【0015】
この実施例において、インク滴を吐出させるべきノズル開口17に連通する圧力発生室14に対向する圧電振動子5に駆動信号を印加すると、圧電振動子5が収縮、膨張して、圧力発生室14を膨張、収縮させる。これによりリザーバ12のインクがインク供給口13を介して圧力発生室14に流れ込み、ついで圧力発生室14のインクが加圧されてノズル開口17からインク滴として吐出する。
【0016】
ところで、大判の圧電振動板を製造する過程で、エッジ部に欠け等が生じることがある。この欠けが存在する状態で導電材料の蒸着やスパッタリング等により外部電極9が作り付けられると、図3に示したように欠損部Rにも導電層9’が形成されることになるが、内部電極2、2、の内、外側に位置する内部電極2’は、内側に位置する内部電極よりも欠損部Rよりも後端に位置するから、若干の欠けでは導電層9’は、内部電極2と他の極の内部電極3とを跨いでは形成されず、したがって異なる極の内部電極が導通等の事態を引き起こすことにはならない。
【0017】
なお、上述の実施例のおいては、最外側の内部電極2’、2’だけを後退させるようにしているが、図4(イ)に示したように先端に露出しない内部電極の内、中心部に位置する内部電極2を最長として、中心部から離れる内部電極2”、2’ほど短くなるように形成すると、欠損部に形成される導電層による異極の内部電極間での導通をより確実に防止することができる。
【0018】
また、図4(ロ)に示したように先端に露出せず、かつ最外側に位置する内部電極2’と外部電極9との圧電材料4の層厚Gを、他の内部電極に挟まれる圧電材料4の層厚よりも厚くすると、図4(イ)と同様に欠損部に形成される導電層による異極の内部電極間での導通をより確実に防止することができる。
【0019】
図5乃至図7は、このような圧電振動子5の製造方法に一実施例を示すものであって、表面が平坦な定盤20に、複数枚分のサイズを有し、かつ各層厚みに予め成形された圧電材料のグリーンシート21を載置する(図5(I))。
【0020】
これの表面に一方の内部電極3の内、最外側に位置するパターン、つまりグリーシートの先端21aからL1だけ非形成領域とするパターンを備えたマスクを使用して導電材料の層22を形成し(図5(II))、前述と同サイズの圧電材料のグリーンシート21を重ねる(図5(III))。
【0021】
他方の極となる内部電極3を形成するパターンを備えたマスクを使用して、グリーンシートの端部21aから振動領域に相当する幅L3を形成領域とするように導電材料の層23を形成し(図6(I))、前述と同サイズの圧電材料のグリーンシート21を重ねる(図6(II))。
【0022】
グリーシートの先端21aからL2だけ非形成領域とするパターンを備えたマスクを使用して導電材料の層22’を形成する(図6(III))。
このような工程を繰り返し、一方の極となる内部電極の内、最外側となるもう一方の内部電極2’を形成する場合には、図5(II)の工程と同様に、グリーシートの先端21aからL1だけ非形成領域とするパターンを備えたマスクを使用して導電材料の層22を形成し、圧電材料のグリーンシート21を重ねる。所定の厚みまで積層が終了した段階で、グリーンシートを乾燥させてから焼成する。
【0023】
これにより、複数枚分の圧電振動板が完成するから、表面にフレキシブルケーブルとの接続用の電極となる外部電極33、36をスパッタリングや蒸着により形成し、これら電極33、36に電圧を印加して所定の分極処理を行った後、圧電振動子ユニットに相当するサイズの小板に切分ける。
【0024】
小板に切分けられた圧電材料板30を固定基板31に位置決めして(図7(I))接着剤で固定し(図7(II))、少なくとも先端側で外部電極33により導通された導電層23と、この外部電極層33とを共に分離できる程度の位置まで、先端からワイヤソウ等の切断手段34によりスリット35を形成して歯割りすることにより圧電振動子5が完成する。なお、スリット35は、その終端が図示したように圧電振動子の配列面に対して斜めとなるように形成したり、また垂直となるように形成されている。
【0025】
このように先端側の外部電極層33を分離し、また後端側の外部電極36を連続させることができる状態でスリット35を形成することにより、外部電極33をセレクト電極に形成することができ、また外部電極36を可及的に電気抵抗が小さな共通電極として使用することができる。
【0026】
なお、上述の実施例においては、圧電振動子の不活性領域を固定基板に固定するようにしているが、図8に示したように非振動領域側の端面を固定基板37の表面に固定するようにしても同様の作用を奏することは明らかである。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、最外層側に位置する第1の内部電極の先端と圧電素子の弾性板に当接する先端との距離が最も長くなるように形成されているため、圧電素子の先端部の損傷が存在しても蒸着、またはスパッタリングによって外部電極を形成する際にも第1の内部電極と第2の内部電極との短絡を防止でき、また最外層よりも内側に位置する他の内部電極の先端と圧電素子の先端との距離は短いので、変位効率を高めることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図(イ)、(ロ)は、本発明のインクジェット式記録ヘッドの一実施例を示す断面図、及び圧電振動子の先端を拡大して示す図である。
【図2】同上記録ヘッドに使用する圧電振動子ユニットの一実施例を示す斜視図である。
【図3】同上圧電振動子ユニットの圧電振動子の先端を拡大して示す図である。
【図4】図(イ)、(ロ)は、それぞれ本発明のインクジェット式記録ヘッドの他の実施例を圧電振動子の形態で示す図である。
【図5】図(I)乃至(III)は、同上圧電振動子ユニットの製造方法の内、圧電振動板の製造方法の前半の工程を示す図である。
【図6】図(I)乃至(III)は、同上圧電振動子ユニットの製造方法の内、圧電振動板の製造方法の後半の工程を示す図である。
【図7】図(I)乃至(III)は、同上圧電振動子ユニットの製造方法の内、圧電振動板を用いて圧電振動子を形成する工程を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例を示す斜視図である。
【図9】図(イ)、(ロ)は、それぞれ従来のインクジェット式記録ヘッド、及びこれの圧電振動子の先端を拡大して示す図である。
【符号の説明】
1 圧電振動子ユニット
2、2’ 一方の極の内部電極
3 他方の極の内部電極
4 圧電材料
5 圧電振動子
6 固定基板
11 流路形成ユニット
12 リザーバ
13 インク供給口
14 圧力発生室
17 ノズル開口
R 欠損部

Claims (4)

  1. 第1の内部電極、圧電材料、前記第1の内部電極と異なる極の第2の内部電極とが複数積層され、前記第1の内部電極及び前記第2の内部電極を軸方向におけるそれぞれ各端面で露出さ、かつ変位領域で前記第1の内部電極、前記第2の内部電極及び前記圧電材料が重なるように積層された圧電定数d31の圧電振動子と、前記圧電振動子の先端に当接して圧力発生室の容積を膨張、縮小させる弾性板を有する流路ユニットと、からなるインクジェット式記録ヘッドにおいて、
    最外層側に位置する前記第1の内部電極の先端と前記圧電振動子の変位領域側の前記弾性板に当接する先端面との距離L1が、他の全ての前記第1の内部電極の先端と前記圧電振動子の変位領域側の前記弾性板に当接する先端面との距離L2よりも大きく構成され、また前記圧電振動子の前記各端部に前記第2の内部電極を並列に接続する外部電極が蒸着、またはスパッタリングにより形成されているインクジェット式記録ヘッド。
  2. 前記第1の内部電極と前記圧電振動子の前記弾性板に当接する先端面との距離が、中央領域を頂点とするようにして徐々に長く設定されている請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッド。
  3. 最外層に位置する前記第1の内部電極の外側の前記圧電材料の層が、他の領域の前記内部電極の前記圧電材料層よりも厚く形成されている請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッド。
  4. 第1の内部電極、圧電材料、前記第1の内部電極と異なる極の第2の内部電極とが複数積層され、前記第1の内部電極及び前記第2の内部電極を軸方向におけるそれぞれ各端面で露出され、かつ変位領域で前記第1の内部電極、前記第2の内部電極及び前記圧電材料が重なるように積層された圧電定数d31の圧電振動子と、該圧電振動子を固定基板に固定した圧電振動子ユニットの製造方法において、
    最外層側に位置する前記第1の内部電極の先端と圧電振動子の変位領域側の前記弾性板に当接する先端面との距離L1が、他の全ての前記第1の内部電極の先端と前記圧電振動子の変位領域側の前記弾性板に当接する先端面との距離L2よりも大きくなるように構成する工程と、前記圧電振動子の前記各端部に前記第2の内部電極を並列に接続する外部電極を形成する工程とからなる圧電振動子ユニットの製造方法。
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