JP3729292B2 - 難燃性感光性樹脂組成物及びこれを用いた耐熱性保護皮膜の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性感光性樹脂組成物及びこれを用いた耐熱性保護皮膜の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板の製造には、従来より液状又はフィルム状の感光性樹脂組成物が用いられている。例えば、銅箔を絶縁基板上に積層した銅張積層板の銅箔をエッチングする時のレジスト、配線の形成されたプリント配線板のはんだ付け位置限定及び保護の目的で使用するソルダレジスト等として用いられている。
【0003】
プリント配線板には、カメラなどの小型機器に折り曲げて組み込むことができるフィルム上のプリント配線板、一般にフレキシブルプリント配線板があり、FPCと略称されるものがある。このFPCも部品搭載のためにはんだ付けがあり、ソルダレジストが必要である。この目的のためにポリイミドフィルムを所定の型に打ち抜いたものを積層したり、耐熱性の材料で構成された印刷インクを印刷して用いられてきた。前者をカバーレイ、後者をカバーコートと呼んでいる。
【0004】
このカバーレイ、カバーコートははんだ付け後の配線の保護膜も兼ねており、はんだ付け時の耐熱性、絶縁性、基板の組み込み時の折り曲げでクラックが入らない可撓性が必要である。また、この可撓性ははんだ付け後も保持していなければならない。さらに、電池駆動の機器以外に用いられるFPCに用いるには難燃性も必要である。
現在、ポリイミドフィルムを打ち抜いて形成されるカバーレイはこれらの特性を満足しており最も多く使用されているが、型抜きに高価な金型が必要で、打ち抜いたフィルムを人手で位置合わせ、貼り合わせするため高コストになり、また、微細パターンの形成が困難であるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
請求項1記載の発明は、良好なはんだ上がり性、はんだ付け後の可撓性、はんだ耐熱性、耐金めっき性等に優れ、写真法を用いて微細パターン形成可能で且つ難燃性を有する感光性樹脂組成物を提供するものである。
請求項2記載の発明は、良好なはんだ上がり性、はんだ付け後の可撓性、はんだ耐熱性、耐金めっき性、難燃性等を有する微細パターンを形成可能な耐熱性保護皮膜の製造法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)エポキシ当量2,000〜3,000、臭素含有率50〜60重量%の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
(B)ペンタメチレンカーボネートとヘキサメチレンカーボネートを5:5の比率で繰返し単位とするコポリカーボネートジオール、イソホロンジイソシアネート及びヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレートの反応物、
(C)下記構造式(I)
【化2】
で表される光重合性化合物、
(D)2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、
(E)活性光により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤並びに
(F)三酸化アンチモン
を含有してなる難燃性感光性樹脂組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、基板上に上記の難燃性感光性樹脂組成物の皮膜を形成した後、像的露光し、次いで3−メチル−3−メトキシブチルアセテートを含有する水溶液を用いて、現像を行うことを特徴とする耐熱保護皮膜の形成方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の難燃性感光性樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の難燃性感光性樹脂組成物において(A)成分はエポキシ当量2,000〜3,000、臭素含有率50〜60重量%の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。ここで、この臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量が2,000未満では十分な可撓性が得られず、またエポキシ当量3,000を超えると現像性が低下すると共に入手が困難になり、また、臭素含有率が50重量%未満では十分な難燃性が得られず、60重量%以上のものは入手が困難である。市販の(A)臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が2,200〜2,300、臭素含有率が51〜53重量%の油化シェルエポキシ(株)製のE5057が挙げられる。
【0009】
(B)成分であるペンタメチレンカーボネートとヘキサメチレンカーボネートを5:5の比率で繰返し単位とするコポリカーボネートジオール(a)、イソホロンジイソシアネート(b)及びヒドロキシエチルアクリレート(c)又はヒドロキシエチルメタクリレート(d)の反応物としては、市販品として入手可能なもので、共栄社化学製のウレタンアクリレートオリゴマUF−8001((a):(b):(c)=1:2:2(モル比))、UF−8002((a):(b):(c)=2:3:2(モル比))、UF−8003((a):(b):(c)=3:4:2(モル比))等があり、UF−8003が好ましい(いずれもメチルエチルケトン溶液)。
(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して20〜100重量部とすることが好ましい。(B)成分は20重量部以下では可撓性が不充分となる傾向があり、100重量部を超えると現像性が低下する傾向がある。(B)成分の数平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレン換算値)は、500〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。
【0010】
(C)成分である下記構造式(I)
【化3】
で表される光重合性化合物は、市販品として日立化成工業(株)製のFA−321Mや新中村化学(株)製のBPE−500がある。
(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して10〜100重量部とすることが好ましい。(C)成分は10重量部未満でははんだ付け後の可撓性が不充分となる傾向があり、100重量部を超えると可撓性が低下する傾向がある。
【0011】
(D)成分である2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールは、アルドリッチ製や和光純薬工業製の試薬として入手できる。(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して0.1〜20重量部とすることが好ましい。(D)成分は0.1重量未満では耐金めっき性が不充分となる傾向があり、20重量部を超えると現像残りが生ずる傾向がある。
【0012】
(E)成分である活性光により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられこれらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
(E)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して0.5〜20重量部とすることが好ましい。(E)成分は0.5重量部未満では感度が不充分となる傾向があり、20重量部を超えるとパターン形状が悪くなる傾向がある。
【0013】
(F)成分である三酸化アンチモンの配合量は、(A)成分100重量部に対して1〜20重量部であることが好ましい。(F)成分は1重量部未満では難燃性が不充分となる傾向があり、20重量部を超えるとパターン形状や可撓性が低下する傾向がある。
【0014】
本発明の難燃性感光性樹脂組成物には、さらに(B)成分や(C)成分以外の光重合性不飽和基含有化合物、高分子結合剤、熱重合防止剤、染料、顔料、塗工性向上剤、消泡剤、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤等を含有させることができる。
【0015】
本発明の難燃性感光性樹脂組成物は、デップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等の常法により、加工保護すべき基板上に直接塗工し、厚さ10〜150μmの感光性樹脂組成物の皮膜(感光層)を容易に形成することができる。塗工にあたり、必要ならば組成物を溶剤に溶解させて行うこともできる。この溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0016】
また、本発明の難燃性感光性樹脂組成物を、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のフィルム上に、ナイフコート法、ロールコート法等によって塗布、乾燥して感光性エレメントを作成し、この感光性エレメントを熱ロールを用いて基板(カプトンフィルムの上に銅回路が形成された基板、ガラエポ板上に銅回路が形成された基板等)上に加熱加圧積層して感光層を形成することもできる。この際、圧着温度は60〜130℃とすることが好ましく、さらに基板が凹凸を有する場合には、空気の巻き込みを防ぐため、圧着圧力は、2.94×105Pa(3kgf/cm2)とすることが好ましく、圧着雰囲気は、4000Pa(30mmHg)以下とすることが好ましい。
【0017】
こうして形成された感光層は、次ぎにネガマスクを介して像的に露光される。光源としては超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノン灯、メタルハライド灯などが用いられる。露光後、支持体フィルム等が残っている場合には、これを除去した後、有機溶剤を含有する水溶液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により未露光部を除去して現像する。
現像液に用いられる有機溶剤は、水とよく混合して均一な現像液となるものでもよく、また、水とほとんど混合せず不均一な現像液となるものでもよい。このような現像液に用いられる有機溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等が用いられ、特に3−メチル−3−メトキシブチルアセテートが好ましい。有機溶剤の配合量は、通常、有機溶剤含有水溶液の有機溶剤濃度が1〜90容量%となるような量である。
現像に用いられる際の現像液の温度は、感光層の現像性によって調整される。また、この有機溶剤を含有する水溶液中には界面活性剤、消泡剤等を混入させてもよい。
【0018】
更に、現像後、はんだ耐熱性、耐薬品性を向上させる目的で、高圧水銀灯による紫外線照射や加熱を行うことができる。
紫外線照射時の紫外線量は、0.2〜10J/cm2とすることが好ましく、照射の際の温度は60〜150℃とすることが好ましい。加熱温度は、100〜170℃とすることが好ましく、加熱時間は、10〜90分とすることが好ましい。これら紫外線照射と加熱の順はどちらが先でもよい。
【0019】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳しく説明する。
実施例1
表1及び表2に示す材料を配合した組成の溶液Aを、25μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で5分間乾燥して溶剤を除去して、乾燥後の膜厚が50μmの感光層を得た。
【0020】
溶液Aの組成
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
次いで、感光層の上にポリエチレンフィルムを保護フィルムとして貼り合わせて得た。感光性フィルムを、35μm銅箔をポリイミドフィルムに接着剤を介して積層した積層フィルム(ニッカン工業(株)製、商品名F−30VC1)に回路パターンが形成されたFPC基板上に、真空ラミネータ(日立化成工業(株)製、商品名VLM−1型)を用いて、ヒートシュー温度120℃、気圧4000Pa (30mmHg)以下、積層圧力2.94×105Pa(3kgf/cm2)で積層した。
【0023】
次いで、得られた積層体にネガマスクを介して超高圧水銀灯露光機((株)オーク製作所製、商品名HMW−201B)で、200mJ/cm2で露光し、常温で30分放置した後、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートの30重量%水溶液を用いて30℃で100秒間スプレー現像した。その後、150℃で60分間加熱処理し、ネガマスクに相応する寸法精度の優れた保護膜の形成された評価基板を得た。
【0024】
この保護膜の形成された評価基板をロジン系フラックス(タムラ化研(株)製、商品名MH−820V)を用いて260℃で10秒間はんだ付けを行ったが膨れ等の異常はなかった。また、はんだ付け後、可撓性評価のため180°折り曲げを行ったがクラック等の異常は全くなかた。さらに、この基板に表3に示す電解ニッケル及び金めっき処理を行ったがめっき液のもぐりや保護膜の剥がれ等の異常はなかった。
【0025】
【表3】
【0026】
次ぎに、35μm銅箔をポリイミドフィルムの両面に接着剤を介して積層した積層フィルム(ニッカン工業株式会社製、商品名F−30VC2)の銅箔をエッチング剥離したフィルムの両面に、上記の感光性フィルムを同様の条件で積層した後、全面を露光、次いで現像、紫外線照射、加熱処理を上記と同一条件で行い難燃性評価の基板を作成した。
この評価基板を米国のUnderwriters Laboratories Inc.(ULと略す)の高分子材料の難燃性試験規格UL94に準拠した装置、方法で難燃性を評価したところUL94V−0相当の難燃性を示した。
【0027】
実施例2
実施例1で用いた表1及び表2の材料を、表4及び表5の材料に変えた以外は実施例1と同様にして評価基板を得た。
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
この評価基板をロジン系フラックス(タムラ化研株式会社製、商品名MH−820V)を用いて260℃で10秒間はんだ付けを行ったが膨れ等の異常はなかった。さらに、はんだ付け後、可撓性評価のため180°折り曲げを行ったがクラック等の異常は全くなかった。次いで、難燃性を評価したところUL94V−0相当の難燃性を示した。さらに、この基板に表2に示す電解ニッケル及び金めっき処理を行ったがめっき液のもぐりや保護膜の剥がれ等の異常はなかった。
【0031】
比較例1
実施例1で用いた表1及び表2の材料を、表6及び表7の材料に変えた以外は実施例1と同様にして評価基板を得た。
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
この評価基板を可撓性評価のためロジン系フラックス(タムラ化研株式会社製、商品名MH−820V)を用いて260℃で10秒間はんだ付けを行ったが膨れ等の異常はなかった。さらに、はんだ付け後、可撓性評価のため180°折り曲げを行ったがクラック等の異常は全くなかった。次いで、難燃性を評価したところ標線越えしてしまい十分な難燃性を示さなかった。
【0035】
比較例2
実施例1で用いた表1及び表2の材料を、表8及び表9の材料に変えた以外は実施例1と同様にして評価基板を得た。
【0036】
【表8】
【0037】
【表9】
【0038】
この評価基板を可撓性評価のため180°折り曲げを行ったところクラックが発生した。
【0039】
比較例3
実施例1で用いた表1及び表2の材料を、表10及び表11の材料に変えた以外は実施例1と同様にして評価基板を得た。
【0040】
【表10】
【0041】
【表11】
【0042】
この評価基板を可撓性評価のためロジン系フラックス(タムラ化研(株)製、商品名MH−820V)を用いて260℃で10秒間はんだ付けを行ったが膨れ等の異常はなかったが、さらに、はんだ付け後の可撓性評価のため180°折り曲げを行ったところクラックが発生した。
【0043】
比較例4
実施例1で用いた表1及び表2の材料を、表12及び表13の材料に変えた以外は実施例1と同様にして評価基板を得た。
【0044】
【表12】
【0045】
【表13】
【0046】
この評価基板を可撓性評価のためロジン系フラックス(タムラ化研(株)製、商品名MH−820V)を用いて260℃で10秒間はんだ付けを行ったが膨れ等の異常はなかったが、ニッケルめっき及び金めっき処理をしたところめっき液のもぐりが生じた。
【0047】
比較例5
実施例1で用いた表2の材料のうち三酸化アンチモンを除いた以外は実施例1と同様にして評価基板を得た。
この評価基板をロジン系フラックス(タムラ化研(株)製、商品名MH−820V)を用いて260℃で10秒間はんだ付けを行ったが膨れ等の異常はなかった。さらに、はんだ付け後、可撓性評価のため180°折り曲げを行ったがクラック等の異常は全くなかったが、難燃性を評価したところ燃焼してしまい難燃性を示さなかった。
【0048】
【発明の効果】
請求項1記載の難燃性感光性樹脂組成物は、優れたはんだ耐熱性、はんだ付け後の可撓性、耐金めっき性、難燃性を有する保護膜の形成ができ、FPC用カバーレイ、ソルダーレジストに好適である。
請求項2の耐熱保護皮膜の製造法は前記難燃性感光性樹脂組成物をFPC基板に容易に適用でき、高品位のFPCを得ることができる。
Claims (2)
- 基板上に請求項1記載の難燃性感光性樹脂組成物の皮膜を形成した後、像的露光し、次いで3−メチル−3−メトキシブチルアセテートを含有する水溶液を用いて、現像を行うことを特徴とする耐熱保護皮膜の製造法。
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