JP3729046B2 - メンバマウント - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のサスペンションにおいて、車輪を支持するメンバと車体との間に介装されて両者を防振連結するメンバマウントに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両のサスペンションにおいて使用されるメンバマウントとして、図4に示すものが知られている。このメンバマウントは、車体70に設けられた取付ピン71に嵌合される軸孔113と軸方向の一端に形成された径外方向に突出するリング状のフランジ部112とを有する内筒部材101と、内筒部材101のフランジ部112側端部の外側に同軸状に配置され、メンバカラー80に設けられた装着孔81に圧入される第1外筒部材102と、第1外筒部材102と内筒部材101との間に介在し両者を一体的に連結する略筒状に形成された第1ゴム弾性体103と、取付ピン71に嵌合される中央孔141を有し内筒部材101のフランジ部112と反対側の端面に接合されて同軸状に配置されるリング基板104と、リング基板104及び内筒部材101と距離を隔てて内筒部材101の他端部の外側に同軸状に配置され前記装着孔81に装着される第2外筒部材105と、第2外筒部材105とリング基板104との間に介在し両者を一体的に連結する略筒状に形成された第2ゴム弾性体106とから構成されている。
【0003】
このメンバマウントは、内筒部材101、第1外筒部材102及び第1ゴム弾性体103が一体的に結合された第1構成部品と、リング基板104、第2外筒部材105及び第2ゴム弾性体106が一体的に結合された第2構成部品とに分離された状態に形成されており、車体70とメンバカラー80との間に次のように組付けられて取付けられる。
【0004】
先ず、第1構成部品の第1外筒部材101をメンバカラー80に設けられた装着孔81の一端側に圧入するとともに、内筒部材101の軸孔113を車体70に設けられた取付ピン71に嵌合する。次に、第2構成部品のリング基板104の中央孔141を取付ピン71に嵌合するとともに、第2外筒部材106をメンバカラー80の装着孔81の他端側に圧入する。その状態で、取付ピン71の先端のねじ部にナット72を締結することにより、リング基板104が内筒部材101の端面に当接する状態に組付けられる。
【0005】
このように取付けられたメンバマウントに対して振動が入力すると、第1及び第2ゴム弾性体103、106が弾性変形することにより衝撃を吸収し、その振動が効果的に減衰される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようにメンバマウントが取付けられた場合、第1構成部品側の第1外筒部材102及び第1ゴム弾性体103と、第2構成部品側のリング基板104、第2外筒部材105及び第2ゴム弾性体106とが軸方向に距離を隔てた状態に配置されているため、その間には円筒状の空間部Sが形成される。この空間部Sは、密閉された空間ではあるものの、僅かな隙間から空間部S内に水が侵入などして溜まると、空間部Sに表面が露出する金属製の内筒部材101や第1及び第2外筒部材102、105、メンバカラー80等に錆が発生して腐蝕し易くなり、強度や耐久性に悪影響を及ぼす。
【0007】
なお、空間部S内に水が溜まる原因としては、第1及び第2ゴム弾性体103、106が弾性変形する際にピストン効果現象が発現して第1及び第2外筒部材102、105とメンバカラー80との間に形成された僅かな隙間から水を吸引したりすることや、環境温度の変化による結露などが考えられる。
【0008】
本発明は上記実状に鑑み案出されたものであり、空間部内に水が溜まらないようにし、腐蝕による強度や耐久性の低下を防止できるようにしたメンバマウントを提供することを解決すべき課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1記載の発明に係るメンバマウントは、筒状の本体部と該本体部の一端から径外方向に突出するリング状のフランジ部とからなり、車体及びメンバの一方に設けられた取付ピンに嵌合される内筒部材と、該内筒部材の前記フランジ部側の端部の外側に同軸状に配置され、前記車体及び前記メンバの他方に設けられた装着孔に装着される第1外筒部材と、該第1外筒部材と前記内筒部材との間に介在し両者を一体的に連結する筒状の第1ゴム弾性体と、前記取付ピンに嵌合される中央孔を有し、前記内筒部材の前記フランジ部と反対側の端面に接合されて配置されるリング基板と、該リング基板と距離を隔てて前記内筒部材の前記フランジ部と反対側の端部の外側に同軸状に配置され前記装着孔に装着される第2外筒部材と、該第2外筒部材と前記リング基板との間に介在し両者を一体的に連結するとともに、前記内筒部材の前記本体部の外径よりも大きい内径を有する筒状に形成されて前記内筒部材の外周面との間に隙間が形成されるように配置される第2ゴム弾性体と、からなり、前記リング基板は、前記第2ゴム弾性体の内周面と前記内筒部材の外周面との間に形成される前記隙間を含んで前記リング基板と前記第1外筒部材及び前記第1ゴム弾性体との間に形成される空間部と外部とを連通する水抜き通路を有し、該水抜き通路は前記リング基板の前記中央孔と繋がって形成されているという手段を採用している。
【0010】
本発明のメンバマウントは、リング基板に水抜き通路が設けられていることにより、リング基板と第1外筒部材及び第1ゴム弾性体との間に形成される空間部が水抜き通路により外部と連通されている。これにより、空間部内に侵入した水は、水抜き通路を通じて空間部から外部へ排出され、空間部内に溜まることがない。
【0011】
したがって、本発明のメンバマウントによれば、リング基板に水抜き通路が設けられていることにより、空間部内に水が溜まるのを防止することができるため、空間部に表面が露出する金属製部材に錆が発生するのを防止し、腐蝕による強度や耐久性の低下を防止することができる。
【0012】
また、本発明においては、水抜き通路が、リング基板の中央孔と繋がるようにして形成されていることから、リング基板をプレス加工により作製する場合に、1回のプレス作業で水抜き通路を中央孔とともに同時に形成することができるため、作業工数やコストの増加を伴うことなく、水抜き通路を容易に形成することができる。
【0013】
本発明において、リング基板に設けられる水抜き通路は、リング基板と第1外筒部材及び第1ゴム弾性体との間に形成される空間部に露出する部分であれば、リング基板のどの部分に設けてもよい。また、水抜き通路の数は、1個であっても2以上の複数個であってもよいが、空間部内の水を効率良く排出させるためには水抜き通路を複数個設ける方が好ましい。また、水抜き通路の形状は、自由に選択することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1は本実施形態に係るメンバマウントを車体とメンバカラーとの間に取付けた状態を示す断面図であり、図2は本実施形態に係るメンバマウントの第2構成部品の平面図であり、図3は図2のIII −III 線矢視断面図である。
【0016】
本実施形態のメンバマウントは、図1に示すように、車体70とメンバカラー80との間に取付けられるものであって、一体的に形成された内筒部材1、第1外筒部材2及び第1ゴム弾性体3からなる第1構成部品と、一体的に形成されたリング基板4、第2外筒部材5及び第2ゴム弾性体6からなる第2構成部品とから構成されている。この場合、車体70の所定部位には、内筒部材1及びリング基板4が嵌合される取付ピン71が下方に向かって突設されているとともに、メンバカラー80には、第1及び第2外筒部材2、5が圧入される装着孔81が設けられている。
【0017】
第1構成部品の内筒部材1は、略一定の径及び肉厚を有する長い円筒状に形成された本体部11と、本体部11の一端から径外方向に突出するリング状のフランジ部12とからなる。本体部11には、軸方向に貫通し、車体70に設けられた取付ピン71に嵌合される軸孔13が形成されている。
【0018】
第1外筒部材2は、短い円筒状に形成された第1筒部21と、第1筒部21の一端から径外方向に突出するリング状の第1フランジ22とからなる。第1筒部21の内径は、内筒部材1の本体部11の外径よりも大きい。この第1外筒部材2は、内筒部材1の本体部11及びフランジ部12と所定距離を隔てて対向する状態で、本体部11のフランジ部12側端部の外側に同軸状に配置されている。この第1外筒部材2は、メンバカラー80に設けられた装着孔81に第1筒部21が圧入される。
【0019】
第1ゴム弾性体3は、内筒部材1及び第1外筒部材2とともにゴム材料を一体加硫成形することにより略円筒状に形成されており、これにより内筒部材1、第1外筒部材2及び第1ゴム弾性体3が一体となった第1構成部品が形成される。この第1ゴム弾性体3は、内筒部材1の本体部11の外周面及びフランジ部12の内側面と、第1外筒部材2の第1筒部21の内周面及び第1フランジ22の外側面とに加硫接着されて内筒部材1と第1外筒部材2との間に介装されており、両者を一体的に連結している。
【0020】
第2構成部品のリング基板4は、図2及び図3に示すように、金属板にプレス加工を施すことによりリング状に形成されており、内筒部材1の本体部11の外径よりも大きくフランジ部12の外径よりも少し小さい外径を有する。リング基板4の中央部には、厚さ方向に貫通する円形の中央孔41が形成されている。この中央孔41は、車体70の取付ピン71に嵌合される部位であり、内筒部材1の軸孔13と略同じ大きさに形成されている。
【0021】
このリング基板4の内周端部の軸対称となる位置には、厚さ方向に貫通する2個の水抜き通路42、42が設けられている。この水抜き通路42、42は、リング基板4の内周面から遠心方向に延び、内周面と外周面間の略中央に至る長さに形成されている。この水抜き通路42、42は、リング基板4をプレス加工により形成する際に、1回のプレス作業により中央孔41と繋がった状態で同時に形成されている。
【0022】
このリング基板4は、図1に示すように、取付ピン71に嵌合されて第1構成部品と一体に組付けられたときには、内筒部材1のフランジ部12と反対側の端面に接合して内筒部材1と同軸状に配置される。このとき、リング基板4に設けられている水抜き通路42、42は、遠心方向外側の約半分の部分が内筒部材1の本体部11外周面よりも外側に位置するようになっている。
【0023】
第2外筒部材5は、短い円筒状に形成された第2筒部51と、第2筒部51の一端から径外方向に突出するリング状の第2フランジ52とからなる。第2筒部51の内径は、内筒部材1の本体部11の外径よりも大きく、第1外筒部材1の第1筒部21の内径と略同じ大きさである。この第2外筒部材5は、第2フランジ52がリング基板4と軸方向に所定距離を隔てて対向する状態に配置され、第1構成部品と一体に組付けられたときには本体部11のフランジ部12と反対側端部の外側に同軸状に配置される。この第2外筒部材5は、メンバカラー80に設けられた装着孔81に第2筒部51が圧入される。
【0024】
第2ゴム弾性体6は、リング基板4及び第2外筒部材5とともにゴム材料を一体加硫成形することにより略円筒状に形成されており、これによりリング基板4、第2外筒部材5及び第2ゴム弾性体6が一体となった第2構成部品が形成される。この第2ゴム弾性体6は、リング基板4の一面外周端部と、第2外筒部材5の第2筒部51の内周面及び第2フランジ52の外側面とに加硫接着されてリング基板4と第2外筒部材5との間に介装されており、両者を一体的に連結している。なお、この第2ゴム弾性体6は、内筒部材1の本体部11の外径よりも大きい内径を有するように形成されており、第1構成部品と第2構成部品が組付けられたときには、第2ゴム弾性体6の内周面と内筒部材1の外周面との間に所定の大きさの隙間が形成される。
【0025】
以上のように構成される本実施形態のメンバマウントは、第1構成部品と第2構成部品とを次のようにして組付けて車体70とメンバカラー80との間に取付けられる。
【0026】
先ず、第1構成部品の第1外筒部材2の第1筒部21をメンバカラー80の装着孔81の一端側(上方側)に圧入するとともに、内筒部材1の軸孔13を車体70の取付ピン71に嵌合する。次に、第2構成部品のリング基板4の中央孔41を取付ピン71に嵌合するとともに、第2外筒部材5の第2筒部51をメンバカラー80の装着孔81の他端側(下方側)に圧入する。その状態で、取付ピン71の先端のねじ部にナット72を締結することにより、リング基板4が内筒部材1の下方側端面に当接する状態に組付けられる。
【0027】
これにより、第1構成部品側の第1外筒部材2及び第1ゴム弾性体3と、第2構成部品側のリング基板4、第2外筒部材5及び第2ゴム弾性体6との間には、内筒部材1の外周面と装着孔81の周面とによって画成される略円筒状の空間部Sが形成される。この空間部Sは、リング基板4に設けられた水抜き通路42、42によりリング基板4の背面側(下面側)の外部と連通されている。
【0028】
以上のようにして取付けられて使用される本実施形態のメンバマウントは、リング基板4に水抜き通路42、42が設けられていることにより、リング基板4と第1外筒部材2及び第1ゴム弾性体3との間に形成される空間部Sが外部と連通されている。そのため、僅かな隙間や水抜き通路42、42から空間部S内に侵入した水や、環境温度の変化により空間部S内で結露した水滴などは、水抜き通路42、42を通じて外部へ効果的に排出され、空間部S内に溜まらない。
【0029】
この水抜き通路42、42は、空間部Sの下方に位置するリング基板4に設けられているので、空間部S内の水は重力により円滑に水抜き通路42、42から排出されやすい。なお、車両の走行中には、メンバマウントに入力する振動や第1及び第2ゴム弾性体3、6の弾性変形に伴って発現するピストン効果現象により、水抜き通路42、42を通じて空間部Sから外部へ排出される水の排出促進が更に期待できる。
【0030】
以上のように、本実施形態のメンバマウントによれば、リング基板4に空間部Sと外部とを連通する水抜き通路42、42が設けられているため、空間部S内の水を外部に効果的に排出させ、空間部S内に水が溜まるのを防止することができる。これにより、空間部Sに表面が露出する金属製部材に錆が発生するのを防止し、腐蝕による強度や耐久性の低下を防止することができる。
【0031】
また、本実施形態のメンバマウントは、水抜き通路42、42が空間部Sの下方に位置するリング基板4に設けられているため、空間部S内の水を重力の作用を利用して効果的に外部に排出させることができる。
【0032】
また、本実施形態の水抜き通路42、42は、リング基板4の中央孔41と繋がるようにして形成されていることから、リング基板4をプレス加工により作製する際に、1回のプレス作業で中央孔41とともに同時に形成することができるため、作業工数やコストの増加を伴うことなく、水抜き通路42、42を容易に形成することができる。
【0033】
なお、水抜き通路42、42は、本実施形態のものに限られず、その形状や個数を種々変更することが可能である。例えば、リング基板4の空間部Sに露出する部分に、中央孔41とは繋がらないようにして形成された貫通孔を水抜き通路として採用することができる。
【0034】
なお、上記実施形態では、内筒部材1及びリング基板4が嵌合される取付ピン71が車体70に設けられ、第1及び第2外筒部材2、5が圧入装着される装着孔81がメンバカラー80に設けられているが、取付ピン71と装着孔81を逆の部材に設けるようにすることも可能である。
【0035】
また、上記実施形態のメンバマウントの各構成部材は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るメンバマウントを車体とメンバカラーとの間に取付けた状態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るメンバマウントの第2構成部品の平面図である。
【図3】図2のIII −III 線矢視断面図である。
【図4】従来のメンバマウントを車体とメンバカラーとの間に取付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1、101…内筒部材 2、102…第1外筒部材
3、103…第1ゴム弾性体 4、104…リング基板
5、105…第2外筒部材 6、106…第2ゴム弾性体
11…本体部 12、112…フランジ部 13、113…軸孔
21…第1筒部 22…第1フランジ 41、141…中央孔
42…水抜き通路 51…第2筒部 52…第2フランジ
70…車体 71…取付ピン 72…ナット
80…メンバカラー 81…装着孔 S…空間部
Claims (1)
- 筒状の本体部と該本体部の一端から径外方向に突出するリング状のフランジ部とからなり、車体及びメンバの一方に設けられた取付ピンに嵌合される内筒部材と、
該内筒部材の前記フランジ部側の端部の外側に同軸状に配置され、前記車体及び前記メンバの他方に設けられた装着孔に装着される第1外筒部材と、
該第1外筒部材と前記内筒部材との間に介在し両者を一体的に連結する筒状の第1ゴム弾性体と、
前記取付ピンに嵌合される中央孔を有し、前記内筒部材の前記フランジ部と反対側の端面に接合されて配置されるリング基板と、
該リング基板と距離を隔てて前記内筒部材の前記フランジ部と反対側の端部の外側に同軸状に配置され前記装着孔に装着される第2外筒部材と、
該第2外筒部材と前記リング基板との間に介在し両者を一体的に連結するとともに、前記内筒部材の前記本体部の外径よりも大きい内径を有する筒状に形成されて前記内筒部材の外周面との間に隙間が形成されるように配置される第2ゴム弾性体と、からなり、
前記リング基板は、前記第2ゴム弾性体の内周面と前記内筒部材の外周面との間に形成される前記隙間を含んで前記リング基板と前記第1外筒部材及び前記第1ゴム弾性体との間に形成される空間部と外部とを連通する水抜き通路を有し、該水抜き通路は前記リング基板の前記中央孔と繋がって形成されていることを特徴とするメンバマウント。
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