JP3727186B2 - ダンパーディスク組立体およびそのプレート部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のクラッチ等に用いられるダンパーディスク組立体およびそのプレート部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等のクラッチに用いられるダンパーディスク組立体は、一般に、エンジン側のフライホイールに連結され得る入力側部材と、トランスミッションから延びる入力シャフトに連結され得るスプラインハブを含む出力側部材と、入力側部材の内周部に固定されたプレート部材と、プレート部材と出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するコイルスプリングとを備えている。入力側部材は、フライホイールに押圧される摩擦フェーシングを備えている。出力側部材は、スプラインハブと入力側部材との間に配置された摩擦抵抗発生機構を有している。スプラインハブは、トランスミッションの入力シャフトがスプライン嵌合するボス部と、ボス部の外周に延びるフランジとを有している。フランジには、窓孔が形成されている。窓孔内にはコイルスプリングが配置されている。
【0003】
プレート部材は円板状で、円周方向に延びる窓孔を有する。出力側部材は、プレート部材の窓孔に対応する位置に出力側窓孔を有する。コイルスプリングは、プレート部材の窓孔と出力側部材の出力側窓孔とに嵌め込まれて、プレート部材と出力側部材とを円周方向に弾性的に連結する。ここでは、プレート部材の窓孔の円周方向両端がコイルスプリングの両端に当接している。
【0004】
プレート部材の窓孔の径方向外側端には、外側覆い部が切り起こされている。プレート部材の窓孔の径方向内側端には、内側覆い部が切り起こされている。さらに外側覆い部の円周方向両端からは、窓孔の円周方向両端に沿って内側覆い部側に一体に延びる外側補強部が形成されている。内側覆い部の根元には、切欠きが形成されている。
【0005】
ここでプレート部材とフランジとは、コイルスプリングによって円周方向に弾性的に連結されている。エンジン側で発生する振動は、プレート部材とフランジとが相対回転し(すなわち捩じれ)その際に作動する摩擦抵抗発生機構によって吸収される。この最大捩じり角度の設定値は、プレート部材に設けられた窓孔の円周方向角度によって左右され、窓孔の円周方向角度が大きければ大きいほどクラッチディスク組立体の最大捩じり角度を大きくできる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のダンパーディスク組立体のプレート部材では、窓孔の円周方向角度を増やすと吸収され得る振動の変位角度の範囲が広がるが、一方で、プレートにおける窓孔と窓孔との間の円周方向距離が縮まるため、トルク伝達の際に応力が集中する窓孔の円周方向両端の回転方向強度が低下するという問題が生じる。
【0007】
特に、前記従来のダンパーディスク組立体のプレート部材では、窓孔の内周側外周側とに切り起こし部が形成されており、特に内側の切り起こし部の根元には切欠きが設けられている。この場合、窓孔と窓孔との間のプレートの幅は、この切欠きの円周方向長さ分だけ減るため、プレート全体の剛性がさらに低下する。しかも、トルク伝達の際の応力が集中する円周方向端面の面積が小さいため、窓孔が摩耗しやすい。
【0008】
補強案として、窓孔の全周を覆いで囲うなどしてコイルスプリングと窓孔との当たり面積を大きくしたプレート部材も知られている。しかしこの場合、覆い部の面をプレート部材の面から直角に切り起こすことは困難である。その結果、窓孔の内部に収納されるコイルスプリングと窓孔の円周方向端面との接触面積が少なくなり、コイルスプリングが安定しにくくなる。特にコイルスプリングが親ばねと子ばねとの組み合わせからなる場合、子ばねの軸方向位置が不安定になる。
【0009】
本発明の目的は、プレート部材の窓孔の強度を良好に維持しつつ、ダンパーディスク組立体の最大捩り角度を大きくしやすくすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のプレート部材は、コイルスプリングを介してトルク伝達を行うダンパーディスク組立体に設けられ、入力側の部材からのトルクを弾性部材に伝達するためのプレート部材である。このプレート部材は、円周方向に延びる窓孔を有する円板状のプレート本体と、窓孔の径方向外側端にプレート本体から一体に切り起こされた外側覆い部と、窓孔の径方向内側端にプレート本体から一体に切り起こされた内側覆い部と、外側覆い部の円周方向両端から窓孔の円周方向両端に沿って内側覆い部側に一体に延び、かつプレート本体からほぼ直交する方向に一体に突出する外側補強部と、内側覆い部の円周方向両端から窓孔の円周方向両端に沿って外側覆い部側に一体に延び、かつプレート本体からほぼ直交する方向に一体に突出する内側補強部とを有している。
【0011】
請求項2に記載のプレート部材は、請求項1に記載のプレート部材であって、外側補強部と内側補強部とが窓孔の径方向中央部において離れている。
【0012】
請求項3に記載のプレート部材は、請求項1または2に記載のプレート部材であって、外側補強部と内側補強部とが、窓孔の円周方向両端において互いに近づくにしたがってプレート本体からの突出量が小さくなっている。
【0013】
請求項4に記載のプレート本体は、請求項2または3に記載のプレート部材であり、外側補強部と内側補強部との間に、円周方向内側を向くせん断面を有している。
【0014】
請求項5に記載のダンパーディスク組立体は、前記請求項1から4のいずれかに記載のプレート部材と、プレートの外周部に固定された入力側部材と、プレートの窓孔に対応する位置に出力側窓孔を有する出力側部材と、プレート部材の窓孔と出力側部材の出力側窓孔とに嵌め込まれてプレート部材と出力部材とを円周方向に弾性的に連結するコイルスプリングとを備えている。
【0015】
請求項6に記載のダンパーディスク組立体は、請求項5に記載のダンパーディスク組立体であって、コイルスプリングは内部に弾性部材を備え、弾性部材はせん断面によって支持されている。
【0016】
ここでは、弾性部材の軸方向位置が安定する。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明にかかるプレート部材を含むダンパーディスク組立体の一例としてのクラッチディスク組立体1を示す。クラッチディスク組立体1は、図1の左方に配置されたフライホイール(図示せず)から図1の右方に配置されたトランスミッション(図示せず)にトルク伝達を行うための装置である。図1R>1のO−Oがクラッチディスク組立体1の回転軸線である。また、図2の矢印R1がクラッチディスク組立体1の回転方向であり、矢印R2がその反対回転方向である。
【0018】
クラッチディスク組立体1は、プレート部材の例としてのクラッチプレート2及びリテーニングプレート3と、クラッチプレート2の外周部に固定されたクラッチ連結部11を含む入力側部材と、ハブフランジ4,スプラインハブ5等を含む出力側部材と、コイルスプリング連結機構7とから主に構成されている。ハブフランジ4とスプラインハブ5は小コイルスプリング8により回転方向に連結されている。
【0019】
クラッチプレート2及びリテーニングプレート3は、中心に孔が形成された円板状部材である。クラッチプレート2とリテーニングプレート3とは、互いに対してリテーニングプレート3から延びる板状連結部17によって相対回転不能に固定されており、トルクをコイルスプリング連結機構7に伝達する。
【0020】
各プレート2,3は、図2に示すように円周方向等間隔に4個所の窓孔2a(3a)が形成されたプレート本体2b(3b)を有する。プレート本体2b(3b)の径方向中間部には、環状に隆起部20が形成されている。窓孔2a(3a)はこの隆起部20から外周側に連続して形成されている。窓孔2a(3a)は、図4に詳細に示すように、径方向より円周方向に幾分長い。また、各窓孔2a(3a)は円周方向角度が長くなっているため、各窓孔2a(3a)の円周方向間、特に窓孔2a(3a)の内周側部同士の円周方向間50が狭くなっている。具体的には、円周方向間50は円周方向距離Sが従来より短く、又は円周方向角度が従来より小さくなっている。
【0021】
窓孔2a(3a)は、径方向外側端にプレート本体2b(3b)から一体に切り起こされた外側覆い部21bと、径方向内側端に前記プレート本体2b(3b)から一体に切り起こされた内側覆い部21aと、外側覆い部21bの円周方向両端から窓孔2a(3a)の円周方向両端に沿って内側覆い部21a側に一体に延び、かつプレート本体2b(3b)からほぼ直交する方向に一体に突出する外側補強部21eと、内側覆い部21aの円周方向両端から窓孔2a(3a)の円周方向両端に沿って外側覆い部21b側に一体に延び、かつ前記プレート本体2b(3b)からほぼ直交する方向に一体に突出する内側補強部21dとをそれぞれ有する。
【0022】
ここで、外側補強部21eと内側補強部21dとは、窓孔2a(3a)の半径方向中央部において離れている。また、外側補強部21eと内側補強部21dとは、窓孔2a(3a)の円周方向両端において互いに近づくにしたがって、プレート本体2b(3b)からの突出量が小さくなる。さらにプレート本体2b(3b)は、外側補強部21eと内側補強部21dとの間に、窓孔2a(3a)に向かって開く切欠き21cを有している。また、窓孔2a(3a)の円周方向両側端において、切欠き21cの径方向両側にはせん断面21fが形成されている。せん断面21fは、プレート2,3の両覆い部21a,21bをプレス加工で形成する前にあらかじめ打ち抜きにより形成した孔の一部である。
【0023】
図1及び図2に示す通りクラッチプレート2の外周には、複数のリベットによりクラッチ連結部11が固定されている。クラッチ連結部11は、クラッチプレート2の外周部に固定された複数のクッショニングプレート46と、クッショニングプレートの両面に固定された1対の摩擦フェーシング47,48とから構成されている。
【0024】
スプラインハブ5にはプレート2,3の中心孔が嵌合している。スプラインハブ5の中心には、トランスミッション側から延びる入力シャフト(図示せず)にスプライン係合するスプライン孔が形成されている。
【0025】
ハブフランジ4には、プレート2,3の窓孔2a,3aに対応する位置に円周方向に延びる4つの窓孔27が形成されている。フランジ4bの外周部分には、板状連結部17が貫通する切欠き32が形成されている。この切欠き32と板状連結部17との円周方向間には所定の隙間が確保されており、その隙間内でプレート2,3とハブフランジ4とが相対回転可能となっている。
【0026】
コイルスプリング連結機構7は、プレート2,3の窓孔2a,3aとハブフランジ4の窓孔27とに嵌め込まれて、プレート2,3とフランジ4bとを円周方向に弾性的に連結する。コイルスプリング連結機構7は、主に4組のコイルスプリング36から構成されている。各コイルスプリング36は親ばね36aと子ばね36bとを有する。コイルスプリング36は、プレート2,3の窓孔2a,3a及びフランジ4bの窓孔27内に収納されて、プレート2,3とフランジ4bとを円周方向に弾性的に連結している。コイルスプリング36の円周方向両端には、プレート2,3の窓孔2a(3a)とフランジ4bの窓孔27とが当接している。
【0027】
より詳細に説明すると、コイルスプリング36の親ばね36aの円周方向両端は、図3及び図4に示すように、プレート2,3の両補強部21d、21eに当接または当接可能になっている。コイルスプリング36の子ばね36bの円周方向両端は、その軸方向両側部分のみがプレート2,3に当接または当接可能となっている。より正確には、図3及び図6に示すように、子ばね36bはせん断面21fに当接または当接可能となっており、両補強部21d,21eには当接しないようになっている。
【0028】
このような構造のクラッチディスク組立体1では、エンジン側から捩り振動が1対のプレート2,3に伝達されると、プレート2,3がハブフランジ4に対して相対回転する。このとき窓孔2a,3aの円周方向端がコイルスプリング36を捩り方向に押すことにより、コイルスプリング36が回転方向に圧縮される。このとき、摩擦抵抗発生機構は摩擦抵抗を生じる。これによって捩り振動が減衰される。
【0029】
クラッチディスク組立体1が捩り振動を吸収するとき、コイルスプリング36を回転方向に押すのはプレート2,3の窓孔2a,3aの円周方向端である。このため窓孔2a,3aの円周方向端に応力が集中する。
【0030】
窓孔2a(3a)は、図3に示すように円周方向両端にそれぞれ内側補強部21d及び外側補強部21eを備えている。また図4に示すように、内側補強部21dはプレート2,3のプレート本体2b,3bにほぼ直交している。従って、トルク伝達の際に力を受ける面積が広がり、面圧が低くなるため、プレート2,3の回転方向の耐久性が向上する。従って、窓孔2a,3aを円周方向に長くとることが可能になり、ダンパーディスク組立体1の最大捩り角を大きく設定しやすくなる。特に従来であれば親ばね36aの半径方向内側部分は内側補強部でなくプレートの断面で支持されており、両者の接触面が十分に大きくなかった。
【0031】
また、子ばね36bの円周方向端が孔2a,3aのせん端面21fに支持されているため(絞り加工により形成された補強部21d,21eに支持されるのではなく)、両者の接触面積を十分に大きく確保できる。これにより、子ばね36bの軸方向位置が安定し、クラッチディスク組立体1の捩り特性が安定する。
【0032】
さらに、この実施形態では、内側補強部21dによって、窓孔2a(3a)の内周側部分同士の円周方向間50が短くても十分な強度を確保でき、破損等の不都合が生じにくい。
【0033】
窓孔の全周が覆いで覆われる形態の窓孔を有する従来のプレートを成形するには、窓孔の角付近での亀裂を避けるため、工程を2つに分けることが必要である。さらに、窓孔の外周部への応力集中を緩和するために覆いの根元に切欠きを形成する必要があり、余分なプレス成形工程が必要となる。さらに、この切欠きからの破損を防止するためにショットピーニング処理を行う必要があり、この結果、製造コストが上昇する。これに対し、この実施形態によるプレート2,3では、内側補強部21d及び外側補強部21eは、窓孔27の型を抜いた時にできるせん断面を一部残しておくだけでつくることができるため、1回の成形工程で成形することができ、ショットピーニング処理の必要もない。従って、プレート2,3の製造は容易である。
(他の実施形態)本発明は、コイルスプリング36が子ばね36bを持たない場合でも実施可能である。また、上記実施例で窓孔2a,3aの円周方向両端の内側補強部21dと外側補強部21eとの間に形成されている切欠き21cは、なくてもよい。
【0034】
本発明が採用されるダンパーディスク組立体は、クラッチディスク組立体のみならず、フライホイール組立体のダンパーやトルクコンバータロックアップクラッチのダンパーにも採用可能である。
【0035】
【発明の効果】
本発明によるダンパーディスク組立体用のプレート部材は、内側覆い部の円周方向両端から窓孔の円周方向両端に沿って外側覆い部側に一体に延び、かつプレート本体からほぼ直交する方向に一体に突出する内側補強部を備えているため、プレート部材の窓孔の強度を良好に維持しつつ、ダンパーディスク組立体の最大捩り角度を大きくしやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかるクラッチディスク組立体の縦断面概略図であり、図2のI−I断面図。
【図2】図1のクラッチディスク組立体の一部切欠きII矢視図。
【図3】図1の部分拡大図。
【図4】図2の部分拡大図。
【図5】プレートの部分斜視図。
【図6】プレートの窓孔に子ばねだけを取り付けた状態を示す部分斜視図。
【符号の説明】
1 クラッチディスク組立体
2 クラッチプレート
2a 窓孔
3 リテーニングプレート
3a 窓孔
4 ハブフランジ
5 スプラインハブ
27 窓孔
32 切欠き
36 コイルスプリング
36a 親ばね
36b 子ばね
21 切欠き
21a,21b 覆い部
21d,21e 補強部
21c 切欠き
21f せん断面
Claims (6)
- コイルスプリングを介してトルク伝達を行うダンパーディスク組立体に設けられ、入力側のトルクを前記コイルスプリングに伝達するためのプレート部材であって、
円周方向に延びる窓孔を有する円板状のプレート本体と、
前記窓孔の径方向外側端に前記プレート本体から一体に切り起こされた外側覆い部と、
前記窓孔の径方向内側端に前記プレート本体から一体に切り起こされた内側覆い部と、
前記外側覆い部の円周方向両端から前記窓孔の円周方向両端に沿って前記内側覆い部側に一体に延び、かつ前記プレート本体からほぼ直交する方向に一体に突出する外側補強部と、
前記内側覆い部の円周方向両端から前記窓孔の円周方向両端に沿って前記外側覆い部側に一体に延び、かつ前記プレート本体からほぼ直交する方向に一体に突出する内側補強部と、
を備えたプレート部材。 - 前記外側補強部と内側補強部とは、前記窓孔の半径方向中央部において離れている、請求項1に記載のダンパーディスク組立体のプレート部材。
- 前記外側補強部と内側補強部とは、前記窓孔の円周方向両端において互いに近づくにしたがって、前記プレート本体からの突出量が小さくなる、請求項1または2に記載のプレート部材。
- 前記プレート本体は、前記外側補強部と内側補強部との間に、円周方向内側を向くせん断面を有している、請求項2または3に記載のプレート部材。
- 請求項1から4のいずれかに記載のプレート部材と、前記プレート部材の外周部に固定された入力側部材と、前記プレート部材の窓孔に対応する位置に出力側窓孔を有し、前記入力側部材との間に摩擦抵抗発生機構を有する出力側部材と、前記プレート部材の窓孔と前記出力側部材の出力側窓孔とに嵌め込まれて、前記プレート部材と前記出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するコイルスプリングと、を備えたダンパーディスク組立体。
- 前記コイルスプリングは内部に弾性部材を備え、
前記弾性部材は前記せん断面によって支持されている、
請求項5に記載のダンパーディスク組立体。
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JP35575098A Expired - Lifetime JP3727186B2 (ja) | 1998-12-15 | 1998-12-15 | ダンパーディスク組立体およびそのプレート部材 |
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- 1998-12-15 JP JP35575098A patent/JP3727186B2/ja not_active Expired - Lifetime
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