JP3726908B2 - 多心光コネクタフェルール成形用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信において、光ファイバを位置決め保持して結合を実現する多心光コネクタフェルールの成形に用いる樹脂組成物と、その組成物を用いた多心光コネクタフェルールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1は樹脂成形により得られた光コネクタフェルールの一例の斜視図である。図面において、1は光コネクタフェルール本体、2は嵌合ピン挿入用穴、3は光ファイバ挿入用穴、4は光ファイバ挿入用開口部である。
【0003】
このような光コネクタフェルールの成形は、嵌合ピン挿入用穴及び光ファイバ挿入用穴を形成するための成形ピンを金型内に装備し、該金型内にトランスファ成形により熱硬化性樹脂を主体とする樹脂組成物を注入し、硬化することにより成形させる(類似の技術として例えば特許文献1)。
【0004】
上記樹脂組成物は硬化前は固体粉末で、これをタブレット状に固めたものを使用しており、成形機のポット内で溶融した後、プランジャで加圧し、金型内のランナを通ってゲートからキャビティ内に注入した後硬化させる。
【0005】
上記樹脂組成物は熱硬化性のエポキシ樹脂に多量のシリカ粉を充填剤として配合したものであり、このような充填剤を高充填することにより、樹脂の線膨張係数、成形収縮率が小さく、非常に寸法精度の高い成形品が得られる。
【0006】
【特許文献1】
特公昭61-55647号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、光コネクタフェルールに用いられる樹脂は、線膨張係数、成形収縮率をできるだけ小さくし、寸法精度を良くするために多量のシリカからなる充填剤が含まれている。そのために、金型内での流動性が良くなく、ゲートからキャビティに樹脂が注入される際の圧力によって金型内に装備された嵌合ピン挿入用穴及び光ファイバ挿入用穴を形成するための成形ピンを動かし易いという問題があった。
【0008】
又キャビティ内での樹脂の流動性が悪いために、金型への転写性が良くなく、平坦な形状になり難く、さらに成形時の残留歪により、成形後放置することにより経時的に変形し易いという問題点があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の問題点を解決するために、種々検討の結果、シリカ粉末の形状と含有量および滑材の含有量を特定することにより、樹脂の流動性が良くなることがわかった。
【0010】
即ち、本発明多芯光コネクタフェル―ル成形用樹脂組成物の特徴は、形状が粒状、球状、破砕状の角を丸めたもののいずれかであるシリカ粉末からなる充填剤を75重量%以上、90重量%以下の充填率で含有し、かつ該シリカ粉末の粒径が最大粒径100μm以下、中心粒径20μm以下の粒度分布を有し、さらに上記滑剤を0.3重量%以上、1.0重量%以下の充填率で含有していることにある。好ましくは、エポキシ樹脂、球状のシリカ粉末、シランカップリング剤及び滑剤を必須成分とする。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、シリカ粉末からなる充填剤が75〜90重量%と高充填であるため、線膨張係数、成形収縮率が小さく、寸法精度にすぐれた成形品が得られる。
【0012】
しかも、シリカ粉末充填剤の最大粒径を100μm以下、中心粒径を20μmとして粒径を小さくし、形状も粒状もしくは破砕状の角をおとして丸くしたものを用いるため、流動性が良くなり、金型転写性が良くなって平坦な形状となる。又流動性が良くなるので成形時の残留歪が生じにくくなり、長期にわたって変形がおこりにくく、寸法安定性にすぐれる。
【0013】
さらに滑剤を加えることにより、金型と樹脂の間の滑りが良くなり、流動性が改善される。滑剤としては、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩やワックス類が好適である。又その含有量は0.3%以下では効果はなく、1.0%を越えると滑剤が成形後金型表面に残って金型が汚れやすく、またシリカ粉末と樹脂の密着性を害うおそれがある。
【0014】
本発明に用いられる樹脂としては、エポキシ樹脂が最も一般的であるが、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。又シリカ粉末、シランカップリング剤、滑剤の他に必要に応じて、添加剤として硬化促進剤、難燃剤、離型剤、カーボン、低応力化剤等を添加することができる。
【0015】
又シランカップリング剤の配合により、シリカ粉末充填剤とベースレジンの接着力をより強固にし、高強度化が達成され、コネクタ同士を着脱する際にも破損しにくくなる。
【0016】
上記の樹脂組成物は、金型内に注入してトランスファ成形により光コネクタフェルールを成形することができる。その際、金型のゲートを通過する時の樹脂の溶融粘度が50poise以上、500poise以下であることが好ましい。さらに好ましい条件としては、金型温度が160℃以上、190℃以下、樹脂の注入速度が0.03cc/sec以上、5.00cc/sec以下、ゲート断面積が0.3mm2以上、2.0mm2以下が挙げられる。
【0017】
上記の光コネクタフェルールの成形方法においては、金型のゲートを通過する時の樹脂の溶融粘度が50poise以上、500poise以下と低粘度であるため、低圧で樹脂を注入することができ、金型内に装備した成形ピンを動かすおそれがない。又樹脂の流動性が良くなるので、金型への転写性が良く平坦な形状に成形でき、さらに成形時に残留歪が発生し難いので長時間放置しても変形し難い。ゲート通過時の樹脂の溶融粘度が50poise未満の低粘度で形成した場合には、樹脂の流れが良くなりすぎて金型内の隙間に樹脂が流れ込み、多量のバリが発生してしまう。
【0018】
また、本発明多心光コネクタフェルールは上記の樹脂組成物を用いて製造されたことを特徴とする。本発明樹脂は流動性が良いので、金型内に装備した成形ピンが動き難く、しかも金型転写性にすぐれ、長期放置後の変形量が少ない光コネクタフェルールが得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
その1:成形ピンを装備した金型をトランスファ成形機にセットし、エポキシ樹脂からなる成形樹脂材料を、金型温度180℃、注入速度0.5cc/sec、注入圧力100kg/cm2の条件で5分間加圧し、硬化させて図1に示す多心光コネクタフェルールを得た。なお、ゲート断面積は1mm2とし、ゲート通過時の樹脂の溶融粘度は表1に示す5条件に調整した。
【0020】
各光コネクタフェルールに外径125μmφのシングルモード光ファイバを挿入固定し、基準となるマスタコネクタと結合した際の波長1.3μmにおける接続損失をそれぞれについて各20コ測定し、各心の平均値を比較した。又各光コネクタフェルールについて、金型転写性を評価するために、光コネクタフェルール下面中央部の反り量を表面粗さ計で測定し、さらに1年間常温で放置した後の変形量を同様に表面粗さ計で測定し、評価した。評価の結果は表1の通りである。
【0021】
【表1】
【0022】
上記の成形方法により成形された光コネクタフェルールは、平均接続損失0.35dB以下、反り量0.4μm以下、1年後の変形量を0.2μm以下に抑えることができると共に、バリの発生もみられなかった。
【0023】
その2:フェノールノボラック型エポキシ樹脂に、表2に示した含有率、形状、粒径分布を有する7種類のシリカ粉末充填剤と、微量のシランカップリング剤、滑剤、硬化促進剤、カーボンを配合し熱ロールにかけて混練した後、冷却粉砕して、本発明ならびに比較例の成形用樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をトランスファ成形機内にセットされた金型内に注入し、温度150℃で5分、注入圧力100kg/cm2の条件でトランスファ成形して図1に示す多心光コネクタフェルールを得た。
【0024】
各光コネクタフェルールについて、金型転写性を評価するために、コネクタフェルール下面中央部の反り量を表面粗さ計で測定、さらに、1年間常温で放置した後の変形量を同様に表面粗さ計で測定した。又嵌合ピン挿入用穴の強度を評価するために、挿入用穴にステンレス製嵌合ピンを5.5mm挿入し、コネクタフェルール端面から5mm突き出たピン部分を5mm/minの加圧速度でフェルール外側の肉厚の最も薄い方向へ加圧した時の破断強度を測定した。評価結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2より分るように、本発明の樹脂組成物を用いた光コネクタフェルールは、反り量は0.4μm以下、1年後の変形量0.2μm以下、ガイド穴強度1.0kg以上と十分な値を示し、同時に成形収縮率も0.4%以下と、寸法精度も良好であった。
これに対して、シリカ粉末の含有量が70重量%の比較例1は線膨張係数が大きく、破砕状シリカを用いた比較例2、及びシリカ最大粒径110μm、中心粒径25μmの比較例3はいずれも反り量、1年放置後の変形量ともに大きかった。
【0027】
又上記試作した光コネクタフェルールに、外径125μmφのシングルモード光ファイバを挿入固定し、1.3μm波長における接続損失を測定したところ、4心の平均接続損失はいずれも0.3dB以下と良好であった。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光コネクタフェルール成形用樹脂組成物によれば、樹脂の流動性が良いので、金型内に装備した成形ピンが動き難く、しかも金型転写性にすぐれ、長期放置後の変形量が少ない光コネクタフェルールが得られる。
【0029】
本発明の成形用樹脂組成物により得られた光コネクタフェルールは線膨張係数、成形収縮率が小さく、寸法精度にすぐれ、又樹脂の流動性が良く、金型転写性が良好なことから、平坦な形状となり、残留歪が生じにくく、長期にわたって変形しにくく、寸法安定性にすぐれている。
【0030】
さらに、シランカップリング剤の配合により、シリカ粉末充填剤とベースレジンとの接着力が強固で、コネクタ同士の着脱の際にも損傷しにくい。さらに又、滑剤を加えることにより、金型と樹脂の間の滑りが良くなり、流動性が一層改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】光コネクタフェルールの一例の斜視図である。
【符号の説明】
1 光コネクタフェルール
2 嵌合ピン挿入用穴
3 光ファイバ挿入用穴
4 光ファイバ挿入用開口部
Claims (4)
- 形状が粒状、球状、破砕状の角を丸めたもののいずれかであるシリカ粉末からなる充填剤を75重量%以上、90重量%以下の充填率で含有し、かつ該シリカ粉末の粒径が最大粒径100μm以下、中心粒径が20μm以下の粒度分布を有し、
滑剤を0.3重量%以上、1.0重量%以下の充填率で含有しており、
金型のゲートを通過する時の樹脂組成物の溶融粘度が50poise以上、500poise以下の樹脂組成物であり、
前記金型温度を 160 ℃以上、 190 ℃以下、樹脂の金型への注入速度を 0.03cc/sec 以上、 5.00cc/sec 以下、前記ゲートの断面積を 0.3mm 2 以上、 2.0mm 2 以下として多心光コネクタフェルールに成形されることを特徴とする多心光コネクタフェルール成形用樹脂組成物。 - エポキシ樹脂、球状のシリカ粉末、シランカップリング剤及び滑剤を必須成分とすることを特徴とする請求項1記載の多心光コネクタフェルール成形用樹脂組成物。
- 形状が粒状、球状、破砕状の角を丸めたもののいずれかであるシリカ粉末からなる充填剤を 75 重量%以上、 90 重量%以下の充填率で含有し、かつ該シリカ粉末の粒径が最大粒径 100 μ m 以下、中心粒径が 20 μ m 以下の粒度分布を有し、滑剤を 0.3 重量%以上、 1.0 重量%以下の充填率で含有しており、金型のゲートを通過する時の樹脂組成物の溶融粘度が 50poise 以上、 500poise 以下である樹脂組成物を用いて、
前記金型温度を 160 ℃以上、 190 ℃以下、樹脂の金型への注入速度を 0.03cc/sec 以上、 5.00cc/sec 以下、前記ゲートの断面積を 0.3mm 2 以上、 2.0mm 2 以下として製造されたことを特徴とする多心光コネクタフェルール。 - 樹脂組成物は、エポキシ樹脂、球状のシリカ粉末、シランカップリング剤及び滑剤を必須成分とすることを特徴とする請求項 3 記載の多心光コネクタフェルール。
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