JP3726764B2 - 衝撃検知装置の接点ギャップ調整方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の衝突を検知する衝撃検知装置に係わり、その衝撃検知装置の可動端子と固定端子との間に設定される接点ギャップの調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、衝撃検知装置の小型軽量化を図るために、図1に示す製品を開発した。この衝撃検知装置1は、カムを有するロータ3と、1枚の金属板から成る固定端子7、及び1枚の板バネ材から成る可動端子8等より構成され、車両の衝突時にロータ3が所定の回転角度以上回転した時に、可動端子8がカムに押圧されて弾性変形し、固定端子7に接触して電気信号を発生することにより、車両の衝突を検知するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の衝撃検知装置1は、ベース部に対するロータ3の組み付け位置によって可動端子8の静止位置が左右されるため、ロータ3の組み付け位置にバラツキが生じると、必然的に固定端子7と可動端子8との間の接点ギャップGPにもバラツキが生じる。つまり、ロータ3は、ベース部に設けられる軸受部にシャフトを介して回転可能に支持されているため、軸受部の位置、シャフトの組み付け高さ、シャフトとロータ3とのクリアランス等の製造公差により、製品毎にロータ3の組み付け位置にバラツキが生じることを回避できない。
【0004】
従って、ベース部にロータ3を組み付けた後、固定端子7と可動端子8との間の接点ギャップGPを調整する必要があった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、衝撃検知装置の接点ギャップを製品毎に精度良く調整できる接点ギャップの調整方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の発明)
本発明の衝撃検知装置は、ベース部に対し回転可能に支持された回転体と、ベース部に固定された1枚の金属板から成り、その金属板の先端側が略L字形に折り曲げられて接点片を形成する固定端子と、ベース部に一端側が支持された1枚の板バネ材から成り、その板バネ材の他端側に固定端子の接点片に対向して接点部を形成する可動端子とを有し、回転体が静止状態の時に、可動端子の接点部と固定端子の接点片との間に所定の接点ギャップが確保され、車両の衝突時に生じる減速度を受けて回転体が所定の回転角度以上回転した時に、可動端子が回転体に押圧されて弾性変形することにより、接点部が接点片に接触して車両の衝突を検知するものである。
【0006】
この衝撃検知装置の組立工程において、接点ギャップを以下の方法により調整することを特徴とする。
固定端子の接点片を目標の曲げ位置より曲げ角度の小さい初期位置まで予め曲げ加工する第1の工程と、回転体を静止位置から所定の回転角度だけ回転させて可動端子を撓ませながら接点部を初期位置の接点片に押圧させる第2の工程と、初期位置から接点片に荷重を加えて、接点部と接点片とが非接触となる第1の曲げ位置まで接点片を押圧する第3の工程と、接点片から荷重を取り除いた時に接点片が弾力により戻るスプリングバック位置を検出し、第1の曲げ位置からスプリングバック位置までのスプリングバック量を算出する第4の工程と、スプリングバック量に応じて、第1の曲げ位置より曲げ角度の大きい第2の曲げ位置を算出し、スプリングバック位置から再度接点片に荷重を加えて第2の曲げ位置まで接点片を押圧する第5の工程とを有し、第2の曲げ位置で接点片から荷重を取り除いた時に、接点片が弾力により戻った位置を目標の曲げ位置として接点ギャップを調整する。
【0007】
この方法によれば、回転体を静止位置から所定の回転角度だけ回転させてから接点ギャップの調整を行うので、ベース部に対するロータの組み付け位置のバラツキを吸収できる。
また、第1の曲げ位置まで押し曲げた接点片に対し、荷重を取り除いた時の接点片のスプリングバック量(第1の曲げ位置からスプリングバック位置までの戻り量)に応じて第2の曲げ位置を算出しているので、製品毎にロータの組み付け位置にバラツキが生じる場合でも精度良く接点ギャップの調整を行うことができ
る。
【0008】
(請求項2の発明)
請求項1に記載した衝撃検知装置の接点ギャップ調整方法において、
可動端子と固定端子とを第1のスイッチとして形成する第1の電気回路と、第3の工程及び第5の工程で接点片に荷重を加えるための調整治具を有し、この調整治具と固定端子とを第2のスイッチとして形成する第2の電気回路と、調整治具を駆動するアクチュエータと、第1のスイッチ及び第2のスイッチのON/OFF信号に基づいてアクチュエータを制御する制御装置とを使用している。
【0009】
この構成では、可動端子と固定端子との接触状態を第1のスイッチのON/OFF信号によって確実に検出でき、且つ調整治具と固定端子との接触状態を第2のスイッチのON/OFF信号によって確実に検出できるので、接点ギャップの調整を精度良く行うことができる。
【0010】
(請求項3の発明)
請求項1または2に記載した衝撃検知装置の接点ギャップ調整方法において、回転体の静止位置を視覚装置により非接触な状態で検出し、その検出位置を基準として回転体を所定の回転角度だけ回転させるために必要な押し込み量を決定する。
この場合、回転体に接触することなく回転体の静止位置を検出できるので、回転体を所定の回転角度だけ精度良く回転させることができる。その結果、製品毎に回転体の組み付け位置にバラツキが生じても、精度良く接点ギャップの調整を行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は衝撃検知装置1の構成を示す側面図である。
この衝撃検知装置1は、車両の衝突を検知するものであり、図1に示す様に、樹脂製のベース部2と、このベース部2に組み付けられるロータ3と接点手段(下述する)、及びカバー4等より構成される。
【0012】
ロータ3は、ベース部2と一体に設けられた一対の支持部(図示しない)に対し、シャフト5を介して回転可能に支持され、このロータ3の重力中心がシャフト5から偏心した位置に設けられている。従って、ロータ3は、車両の衝突時に減速度が生じると、慣性の法則によりロータ3の重力中心にモーメントが働くことにより、シャフト5を中心として図1の矢印方向へ回転する。
このロータ3には、車両の衝突時に接点手段を閉成させるためのカム6が一体に設けられている。また、ロータ3には、係止手段(図示しない)が設けられ、この係止手段が上記の支持部に係止されることにより、図1に示す静止位置から時計回転方向への回転が阻止されている。
【0013】
接点手段は、1枚の金属板から成る固定端子7と、1枚の板バネ材から成る可動端子8とで構成される。
固定端子7は、金属板の一端側がベース部2に埋設されてベース部2上に略直立した状態で固定され、金属板の他端側が略L字形に折り曲げられて接点片7aを形成している。
【0014】
可動端子8は、板バネ材の一端側がベース部2に埋設されてベース部2上にて固定端子7側へ折り曲げられ、その先端部に固定端子7の接点片7aに対向する接点部8aを形成している。この可動端子8は、カム6に弾力を有して当接しており、ロータ3を図2の反時計回転方向に付勢している。従って、ロータ3は、走行中の振動や急ブレーキ等により低レベルの減速度が生じても回転することはない。
【0015】
本実施例の衝撃検知装置1は、ロータ3が静止状態の時に、固定端子7の接点片7aと可動端子8の接点部8aとの間に所定の接点ギャップGPが確保されており、車両の衝突時にロータ3が所定の回転角度以上回転すると、可動端子8がカム6に押圧されて弾性変形することにより、接点部8aが接点片7aに接触して、その接触状態を示す電気信号をECU(図示しない)に出力する。
【0016】
上記の構成によれば、ベース部2に対するロータ3の組み付け位置にバラツキが生じると、固定端子7の接点片7aと可動端子8の接点部8aとの間の接点ギャップGPにもバラツキが生じるため、製品の組立工程において接点ギャップGP(ON角度)を調整する必要がある。なお、ON角度とは、静止位置から可動端子8の接点部8aが固定端子7の接点片7aに当接するまでのロータ3の回転角度であり、本実施例では16±2°の範囲内に設定される。また、このON角度に相当する接点ギャップGPは、0.6±0.074mmに設定されている。
【0017】
この接点ギャップGP(ON角度)の調整方法について以下に説明する。
なお、この調整方法では、ロータ3の静止位置を検出するための視覚装置(図示しない)、ロータ3を所定の回転角度だけ回転させるための回転治具9、この回転治具9を駆動する第1のアクチュエータ(例えばサーボモータ/図示しない)、固定端子7の接点片7aに荷重を加えて接点片7aの曲げ位置を調整するための調整治具10、この調整治具10を駆動する第2のアクチュエータ(例えばサーボモータ/図示しない)、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータを制御する制御装置(図示しない)、固定端子7と可動端子8とを第1のスイッチとして形成する第1の電気回路A、及び調整治具10と固定端子7とを第2のスイッチとして形成する第2の電気回路Bが使用される(図2参照)。
【0018】
第1の工程…固定端子7の接点片7aを目標の曲げ位置より曲げ角度の小さい初期位置(図4のA点)まで予め曲げ加工する。なお、この固定端子7は、接点片7aが予め初期位置まで曲げ加工された状態でベース部2に組み付けられる。第2の工程…回転治具9を所定量だけ押し込んでロータ3を静止位置から所定の回転角度(16°)だけ回転させる。これにより、可動端子8がカム6に押圧されて弾性変形し、可動端子8の接点部8aが固定端子7の接点片7aに当接して第1のスイッチがONする。なお、回転治具9の押し込み量は、視覚装置によりロータ3の静止位置(回転治具9とロータ3との距離H)を検出し、その静止位置を基準として算出している(図3参照)。
【0019】
第3の工程…調整治具10を初期位置の接点片7aに押し当てて、可動端子8の接点部8aと固定端子7の接点片7aとが非接触となる第1の曲げ位置(図4のB点)まで接点片7aを押圧する。ここでは、調整治具10が接点片7aに接触した時点で第2のスイッチがONし、可動端子8の接点部8aと固定端子7の接点片7aとが非接触となることで第1のスイッチがOFF する。つまり、制御装置は、第1のスイッチのOFF 信号をトリガとして第2のアクチュエータの作動を停止させる。
【0020】
第4の工程…調整治具10を引き上げて接点片7aから荷重を取り除き、金属板の弾力により接点片7aが戻るスプリングバック位置(図4のC点)を検出し、第1の曲げ位置からスプリングバック位置までのスプリングバック量、及び初期位置からスプリングバック位置までの塑性変形量を算出する。ここで、調整治具10が接点片7aから離れると第2のスイッチがOFF するので、制御装置は、第2のスイッチのOFF 信号をトリガとして第2のアクチュエータの作動を停止させる。
【0021】
第5の工程…接点片7aのスプリングバック量に応じて、第1の曲げ位置より曲げ角度の大きい第2の曲げ位置を算出し、スプリングバック位置から再度調整治具10を接点片7aに押し当てて第2の曲げ位置(図4のD点)まで接点片7aを押圧する。
ここで、第2の曲げ位置は、次式にて算出される。
第2の曲げ位置=第1の曲げ位置+(スプリングバック量×G)
なお、上記のGは、塑性変形量に応じて設定される係数であり、図5に示す様に、塑性変形量が大きくなる(スプリングバック量が小さくなる)程、Gの値が小さく設定される。
【0022】
第6の工程…調整治具10を引き上げて接点片7aから荷重を取り除き、金属板の弾力により接点片7aが戻った位置を目標の曲げ位置(第1の曲げ位置と略等しい)として接点ギャップGPを測定する。
上記の方法により接点ギャップGPの調整を行った結果、図6に示すように、全て規格内(ON角度:16±2°)に調整することができた。
【0023】
(本実施例の効果)
本実施例では、ロータ3を静止位置から所定の回転角度(要求されるON角度)だけ回転させてから接点ギャップGPの調整を行うので、ベース部2に対するロータ3の組み付け位置のバラツキを吸収できる。
また、初期位置から第1の曲げ位置まで押し曲げた接点片7aに対し、荷重を取り除いた時の接点片7aのスプリングバック量に応じて第2の曲げ位置を算出しているので、製品毎にロータ3の組み付け位置にバラツキが生じる場合でも精度良く接点ギャップGPの調整を行うことができる。
【0024】
更に、本実施例では、ロータ3の静止位置を視覚装置により非接触な状態で検出し、その検出位置を基準としてロータ3を所定の回転角度だけ回転させるために必要な押し込み量を算出しているので、ロータ3を所定の回転角度だけ精度良く回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】衝撃検知装置の内部構成を示す側面図である。
【図2】接点ギャップの調整方法を示す側面図である。
【図3】ロータの静止位置を検出する方法を示す側面図である。
【図4】接点ギャップ調整の要点を模式化した図面である。
【図5】係数Gの設定表である。
【図6】接点ギャップ(ON角度)の調整結果を示す図面である。
【符号の説明】
1 衝撃検知装置
2 ベース部
3 ロータ(回転体)
7 固定端子
7a 接点片
8 可動端子
8a 接点部
GP 接点ギャップ
Claims (3)
- ベース部に対し回転可能に支持された回転体と、
前記ベース部に固定された1枚の金属板から成り、その金属板の先端側が略L字形に折り曲げられて接点片を形成する固定端子と、
前記ベース部に一端側が支持された1枚の板バネ材から成り、その板バネ材の他端側に前記固定端子の接点片に対向して接点部を形成する可動端子とを有し、
前記回転体が静止状態の時に、前記可動端子の接点部と前記固定端子の接点片との間に所定の接点ギャップが確保され、
車両の衝突時に生じる減速度を受けて前記回転体が所定の回転角度以上回転した時に、前記可動端子が前記回転体に押圧されて弾性変形することにより、前記接点部が前記接点片に接触して車両の衝突を検知する衝撃検知装置の組立工程において、前記接点ギャップを調整する方法であって、
前記固定端子の接点片を目標の曲げ位置より曲げ角度の小さい初期位置まで予め曲げ加工する第1の工程と、
前記回転体を静止位置から所定の回転角度だけ回転させて前記可動端子を撓ませながら前記接点部を前記初期位置の接点片に押圧させる第2の工程と、
前記初期位置から前記接点片に荷重を加えて、前記接点部と前記接点片とが非接触となる第1の曲げ位置まで前記接点片を押圧する第3の工程と、
前記接点片から荷重を取り除いた時に前記接点片が弾力により戻るスプリングバック位置を検出し、前記第1の曲げ位置から前記スプリングバック位置までのスプリングバック量を算出する第4の工程と、
前記スプリングバック量に応じて、前記第1の曲げ位置より曲げ角度の大きい第2の曲げ位置を算出し、前記スプリングバック位置から再度前記接点片に荷重を加えて前記第2の曲げ位置まで前記接点片を押圧する第5の工程とを有し、
前記第2の曲げ位置で前記接点片から荷重を取り除いた時に、前記接点片が弾力により戻った位置を前記目標の曲げ位置として前記接点ギャップを調整する衝撃検知装置の接点ギャップ調整方法。 - 請求項1に記載した衝撃検知装置の接点ギャップ調整方法において、
前記可動端子と前記固定端子とを第1のスイッチとして形成する第1の電気回路と、
前記第3の工程及び前記第5の工程で前記接点片に荷重を加えるための調整治具を有し、この調整治具と前記固定端子とを第2のスイッチとして形成する第2の電気回路と、
前記調整治具を駆動するアクチュエータと、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのON/OFF信号に基づいて前記アクチュエータを制御する制御装置とを使用することを特徴とする衝撃検知装置の接点ギャップ調整方法。 - 請求項1または2に記載した衝撃検知装置の接点ギャップ調整方法において、
前記回転体の静止位置を視覚装置により非接触な状態で検出し、その検出位置を基準として前記回転体を所定の回転角度だけ回転させるために必要な押し込み量を決定することを特徴とする衝撃検知装置の接点ギャップ調整方法。
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JP2002076000A JP3726764B2 (ja) | 2002-03-19 | 2002-03-19 | 衝撃検知装置の接点ギャップ調整方法 |
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