JP3726590B2 - 遠心分離機 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠心分離機のロータ破壊時における安全性の向上に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来から高速回転で試料を遠心分離する遠心機では、高速回転する試料を入れたロータの破壊に対する配慮は十分なされている。例えば図４に示すように３０，０００ｒｐｍ以上の回転をする超遠心分離機の場合、ロータ１の回転エネルギーが大きいためロータ破壊時の本体に与えるダメージも大きい。そのため破壊時のロータ１等の破片の貫通による飛びだし防止のため、厚さ数十ミリの円筒状の合金鋼からできた防護壁となるプロテクタ３を設けている。破片はこのプロテクタ３に衝突し、プロテクタ３の変形によって衝突エネルギーを緩和するようにしている。合わせてプロテクタ３はスチールボール４等に載せて回転できるように設置し、変形とともに破片衝突による偶力をプロテクタ３を回転させることで受け、遠心分離機本体に回転力を極力伝えないよう配慮されている。更に超遠心分離機の場合、高速回転が可能なようにロータ回転による風損低減のため、厚さ数十ミリのチャンバーと呼ばれる真空容器５内にロータ室２ａおよびプロテクタ３を配置しており、チャンバー５は厚さ数十ミリの鋼材で挟み込みフレームに固定されている。
【０００３】
また、図５に示すように回転数が数千から２万ｒｐｍ程度の小形・冷却遠心機では、回転エネルギーが比較的小さいためロータ室２（厚さ１ミリ程度のステンレス製）の外周を２から５ミリ程度の鋼板を防護壁７として覆い、鋼板は遠心機フレーム１０に溶接等で固定し、ロータ破壊時の回転エネルギーをロータ室２および鋼板の防護壁７の変形で吸収してきた。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかし最近は遠心分離機の高速化が進んでいることと、遠心分離機の安全規格（ＩＥＣ規格）が全世界的に適用されつつあり、ロータ破壊による破片の飛び出しはもとより、破壊による本体の移動に対しても制限がつけられ、防護壁をフレームに固定する構造では、上記した超遠心分離機のように破片衝突による偶力を吸収できず、本体が大きく移動してしまうことから規格を満足させるのは非常に困難になってきた。そこで上記の超遠心分離機のように厚いプロテクタやチャンバーを設ければ安全性は十分確保可能であるが、低価格な小形・冷却遠心分離機にそのような大がかりでかつ高価な部品は搭載できないのが実情である。
【０００５】
本発明の目的は、上記問題を解消し、低価格な小形・冷却遠心分離機に搭載できる安価で且つ安全を確保することのできる防護壁を提供することである。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、駆動源であるモータと、モータによって回転されるロータと、ロータを収容するロータ室と、ロータ室の外周に配されるほぼ円筒状の防護壁と、防護壁を収容するフレームとを備えた遠心分離機において、防護壁を回転可能に収容する帯状の鋼板を防護壁の外周に配すると共に、鋼板をフレームに固定させることにより達成される。
【０００７】
また、ロータ破壊時の衝撃エネルギーで防護壁が回転する程度の固定方法に変更することにより達成される。
【０００８】
【発明の実施の形態】
以下、本実施例になる遠心分離機を図１乃至図３を用いて説明する。 図１は本実施例における小形・冷却遠心分離機の側面図、図２はロータ１破壊時における遠心分離機本体に加わる偶力をロータ室２ａの上面から見た状態で示す説明図、図３は防護壁７の外観図である。
【０００９】
図１に示すように試料を保持し高速回転するロータ１を収納するロータ室２の外周には、ロータ１破壊時の破片を防護する防護壁７と、防護壁７をフレーム１０に固定するための帯状の鋼板９とが配されている。ロータ１はまれであるが腐食等によって破壊する場合があり、特に使用する回転数が高いほどその危険性は拡大するため、その破壊によってロータ１等の破片が遠心分離機外に飛び出さないよう防護壁７を設けている。小形・冷却遠心機の場合、破壊した破片が防護壁７を貫通するほどの事故より、むしろ図２に示すようロータ１破壊時の偶力８によって遠心分離機本体が大きく回転移動してしまい付近の作業者に衝突してしまう問題が大きい。そこで、ロータ室２をとりまくように位置した防護壁７の外周を帯状の鋼板９により巻き付け、この帯状の鋼板９の一端をフレーム１０に係合し、ロータ１破壊時にロータ１の破片衝突で生じる偶力によって、帯状の鋼板９の内側でロータ室２及び防護壁７を回転させ、遠心分離機本体に偶力（回転力）を伝達しないようにして安全を確保している。
【００１０】
また、フレーム１０側の帯状の鋼板９の固定を、ロータ１破壊時の衝撃で外れる程度の固定にしておくことで、例えば小ネジの固定ネジ１１で数カ所で固定する或いは溶接ヶ所を減らすなどすることで、防護壁７及び帯状の鋼板９ごと回転させることができることから、やはり遠心分離機本体に偶力（回転力）を伝達させないことができる。
【００１１】
なお、本実施例では、帯状の鋼板９をフレーム１０に固定しているが、防護壁７自体を破壊による衝撃によってフレーム１０から離脱するよう構成しても良い。
【００１２】
【発明の効果】
ロータ破壊時の回転エネルギーを安価な構成で容易に緩和することができるので、破壊時に遠心分離機本体が大きく移動してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明になる小形・冷却遠心機の一実施例を示す側面図である。
【図２】 ロータ破壊時に遠心機本体に加わる偶力を示す説明図である。
【図３】 本発明になる防護壁を取付けるための帯状鋼板を示す外観図である。
【図４】 従来の超遠心分離機を示す側面図である。
【図５】 従来の小形・冷却遠心機を示す側面図である。
【符号の説明】
１、１ａはロータ、２、２ａはロータ室、３はプロテクタ、４はスチールボール、５はチャンバー、６は鋼材、７は防護壁、８は偶力、９は帯状の鋼板、１０はフレーム、１１は固定ネジ、１２は溶接部である。

Claims (4)

1. 駆動源であるモータと、該モータによって回転されるロータと、該ロータを収容するロータ室と、該ロータ室の外周に配されるほぼ円筒状の防護壁と、該防護壁を収容するフレームとを備えた遠心分離機において、前記ロータの破壊時には前記防護壁を回転可能に収容する帯状の鋼板を前記防護壁の外周に配すると共に、該鋼板を前記フレームに係合させることを特徴とした遠心分離機。
2. 前記フレームに係合された前記鋼板の一端は、前記ロータの破壊エネルギにより外れるよう構成されていることを特徴とした請求項１記載の遠心分離機。
3. 前記係合は、ネジ係合であることを特徴とした請求項２記載の遠心分離機。
4. 前記係合は、溶接による係合であることを特徴とした請求項２記載の遠心分離機。

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