JP3726542B2 - 後2軸車のブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、従動軸である後後軸の軸重を駆動軸である後前軸に移動可能な軸重移動装置を備えた後2軸車のブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の後輪を2軸とした後2軸車が主にトラック等で用いられてきている。この種の後2軸車には、後前軸を駆動軸とし、後後軸を従動軸とした方式のものがある。この方式では、荷が積まれていない空車時や低μ路あるいは急坂における走行時に、後前軸の軸重が小さくなるため十分な駆動力が得られなくなることがある。
【0003】
そこで、駆動側の車軸となる後前軸に加わる軸重を可変可能に構成した軸重移動装置が提案されている。例えば特開平8−197928号公報には、トラニオン方式サスペンションにおける軸重移動装置の詳細が示されている。この装置は、車軸と車体フレームとの間に伸縮可能なゴム製のエアスプリング(空気袋)を介装し、空車時など駆動軸が空転するおそれのある場合に、エアスプリングへ圧縮エアを供給して、エアスプリングの作動により、従動軸である後後軸に加わっていた軸重を駆動軸である後前軸へ移動させて、後前軸の分担荷重を増加させようとするものである。
【0004】
また、別方式であるエアサスペンションでは、軸重移動装置は例えば図4に示すように構成される。すなわち本装置は、駆動軸としての後前軸41と従動軸としての後後軸42にエアスプリング43、44をそれぞれ配置し、このエアスプリング43、44にエア通路45を介してエアタンク47からエア圧を供給する。エアスプリング43側のエア通路にはエアプレッシャーセンサー48が設けられ、またエアスプリング44側のエア通路にはエアプレッシャーセンサー49及び軸重調製M/V50が設けられる。軸重の移動を行う場合は、軸重移動SW51をオンとする。これにより電子制御装置(ECU)52は、エアプレッシャーセンサー48、49を介してエアスプリング43側及び44側のエア通路のエア圧を検出し、軸重調製M/V50を制御してエアスプリング43と44のエア圧力バランスを変化させ、積載量に応じて軸重を後前軸41に移動させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような軸重移動装置を備えた後2軸車では、軸重移動により、後前軸の軸重が後後軸の軸重に比べて大きくなる。このため、アンチロックブレーキシステム(ABS)を装着した車両の場合、後2軸に等しい制動力をかけると、後後軸が低減速度でロックしやすくなり、制動時の車両安定性が損なわれるおそれがある。
【0006】
これを防止するためには、後後軸のみにロードセンシングバルブ(LSV)を設け、このLSVを作動して後後軸の制動力を抑制し、これによって後後軸における早期ロックの発生を回避することが考えられる。しかしながら、ABSにより後軸の左右輪の独立制御を行うには、左右輪用にそれぞれ1つずつの計2つの高価なLSVを設置する必要がある。さらに、発進時及び加速時等の車輪のスリップを制御するアンチスリップレギュレーション(ASR)の付加されたブレーキ装置では、上述の2つのLSVに加えてASR作動時に後後軸車輪への制動作動圧を遮断するASRカットオフバルブを各LSVに直列にそれぞれ1つずつ計2つ配置しなければならないという問題がある。
【0007】
従って本発明の目的は、上述のような問題点を解決し、低コストで制動時の車両安定性を確保できる後2軸車のブレーキ装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、ブレーキバルブからの信号圧に応じてエアタンクからのエア圧をホイルシリンダ側に出力するリレーバルブと、リレーバルブの出力側と後前軸右側車輪のホイルシリンダとの間、および上記リレーバルブの出力側と後前軸左側車輪のホイルシリンダとの間に各々介装され、車両の状態に応じて後軸側のホイルシリンダへの供給エア圧を制御するABSバルブと、リレーバルブの出力側の圧力を車両の積載状況に応じて制御し後後軸側に供給するロードセンシングバルブと、後後軸車輪の左右に各々設けられ、左右各々のABSバルブの出力側とロードセンシングバルブの出力側とが入力接続されて、入力されるエア圧の低い側を選択して後後軸車輪のホイルシリンダに供給する弁装置とから構成した後2軸車のブレーキ装置により、達成される。
【0009】
また、ASRの付加されたブレーキ装置の場合は、入力側がエアタンクに接続され車両の状態に応じて開閉制御されるASRバルブと、リレーバルブの出力側とASRバルブの出力側とが入力接続されて、入力される圧力の高い側を選択してホイルシリンダ側に供給するダブルチェックバルブとを、上述の構成に付加する。この場合、ABSバルブは、このダブルチェックバルブの出力側と後前軸車輪のホイルシリンダとの間に介装される。
このように構成することにより、ABSによる後後軸の左右輪の独立制御を1つのLSVを用いて行うことができ、また、ASRの付加されたブレーキ装置では、従来のようなASRカットオフバルブも省略できるので、後2軸車のブレーキ装置における制動時の車両安定性を低コストで実現することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る後2軸車のブレーキ装置の一実施例を示す図である(尚、前輪のブレーキラインは省略)。本実施例では、図のように、後前軸車輪のホイルシリンダ1、2は、それぞれABSバルブ(ABS/V)3、4、リレーバルブ5を介してエアタンク7に接続され、後後軸車輪のホイルシリンダ8、9は、それぞれダブルカットオフバルブ(D.C.O/V)10、11、ABSバルブ3、4又はロードセンシングバルブ(LSV)12、リレーバルブ5を介してエアタンク7に接続される。
【0011】
本実施例の動作は次のとおりである。まず、ブレーキペダルが踏み込まれると、ブレーキバルブ6からの信号圧に応じてエアタンク7からのエア圧がリレーバルブ5を介してABSバルブ3、4に流入したのち、下流のホイルシリンダ1側に供給される。LSV12は、リレーバルブ5の出力側の圧力を車両の積載状況に応じて制御し後後軸側に供給する。D.C.O/V10、11は、後後軸車輪の左右にそれぞれ設けられる弁装置であって、一方の入力口がLSV12の出力側に接続され、もう一方の入力口が左右各々のABSバルブ3、4の出力側に接続されており、両入力口のエア圧の低い側を選択して後後軸車輪のホイルシリンダ8、9に供給する。
【0012】
図2は、D.C.O/V10、11の構成例を示す断面図である。このバルブは、図に示すように、2つの入力口21、22と1つの出力口23を有する。バルブ内部には、部材24、25が両者を連結する部材26とともに2つの入力口の左右方向に移動可能に配置されている。例えば、いま、入力口21側のエア圧が入力口22側のエア圧よりも高い場合、両者の圧力差によって、エア圧の高い入力口21側の部材24が図の右側に移動し、これに伴いエア圧の低い入力口22側の部材25が図の右側に移動する。これにより、部材25と入力口22の内壁との間に隙間が生じ、図中の破線で示すように、この隙間を介して入力口22側のエア圧が出力口23に供給される。このようにして、D.C.O/V10、11は、両入力口のエア圧の低い側を選択して出力する。
【0013】
このように構成することにより、ABS非作動時には、後前軸車輪のホイルシリンダ1、2にはブレーキバルブエア圧が直接流れるのに対して、後後軸車輪のホイルシリンダ8、9にはD.C.O/V10、11を通してLSV12により減圧したエア圧を流すことができる。したがって、ABSを装着した車両の場合でも、高価なLSVの設置は最小限の1つだけで、空車時や低μ路あるいは急坂における走行時に、後後軸のみエア圧を減少させることが可能となる。これにより、後後軸車輪が低減速度でロックされることがなくなり、制動時の安定性を確保することができる。また、ABS作動時においても、ABSバルブ3、4による減圧されたエア圧もしくはLSV12により減圧されたエア圧の圧力の低い方がD.C.O/V10、11により選択され常に低い側の圧力が後後軸車輪に作用するため、後後軸車輪の早期ロックが抑制される。尚、この場合には、ABSバルブ出口側の圧力がLSV12の出口側圧力よりも低い場合のみ、後後軸車輪がABSの機能を果すこととなる。本実施例では、D.C.O/Vが2つ設置されるが、LSVの設置数が半減するため全体として低コストとなる。
【0014】
図3は、本発明に係る後2軸車のブレーキ装置の他の実施例を示す図である。本実施例はアンチスリップレギュレーション(ASR)の付加されたブレーキ装置に関するものであり、図示のとおり、ASRバルブ(ASR/V)33と、ダブルチェックバルブ(D.C/V)31とが設けられる。ASRバルブ33は入力側がエアタンク7に接続されている。またD.C/V31は、リレーバルブ5の出力側とASRバルブ33の出力側とが入力されて圧力の高い方を選択してホイルシリンダ側に供給する。ABSバルブ3、4は、D.C/V31の出力側と後前軸車輪のホイルシリンダとの間に介装される。その他の構成は、図1の構成と同様である。
【0015】
本実施例の動作は次のとおりである。まず、ブレーキペダルが踏み込まれると、ブレーキバルブ6からの信号圧に応じてエアタンク7からのエア圧がリレーバルブ5を介して出力される。ここでD.C/V31は、リレーバルブ5の出力とASRバルブ33の出力を入力し、両者のうち圧力の高い方を選択してABSバルブ3、4を介してホイルシリンダ1、2に供給する。一方、LSV12はリレーバルブ5の出力側の圧力を車両の積載状況に応じて制御し後後軸側に供給する。D.C.O/V10、11は、LSV12の出力とABSバルブ3、4の出力を入力し、両入力口のエア圧の低い側を選択して後後軸車輪のホイルシリンダ8、9に供給する。
本実施例では、このように構成することにより、ASR機能が付加された場合においても、図1の実施例と同様な効果を得ることができるとともに、ASRの付加に伴い左右にそれぞれ設けられるASRカットオフバルブを省略することができる。ここでは、D.C.O/Vが2つとD.C/Vが1つ設置されるが、LSVの設置数が半減し且つASRカットオフバルブの設置が不要となるため、全体として低コストとなる。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、低コストでかつ制動時の車両安定性を確保できる後2軸車のブレーキ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る後2軸車のブレーキ装置の一実施例を示す図である。
【図2】ダブルカットオフバルブの構成例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る後2軸車のブレーキ装置の他の実施例を示す図である。
【図4】軸重移動装置を備えたエアサスペンションの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1、2、8、9 ホイルシリンダ
3、4 ABSバルブ
5 リレーバルブ
6 ブレーキバルブ
7 エアタンク
10、11 ダブルカットオフバルブ
12ロードセンシングバルブ

Claims (2)

  1. 従動軸である後後軸の軸重を駆動軸である後前軸に移動可能な軸重移動装置を備えた後2軸車のブレーキ装置であって、
    ブレーキバルブからの信号圧に応じてエアタンクからのエア圧をホイルシリンダ側に出力するリレーバルブと、
    リレーバルブの出力側と後前軸右側車輪のホイルシリンダとの間、および上記リレーバルブの出力側と後前軸左側車輪のホイルシリンダとの間に各々介装され、車両の状態に応じて後軸側のホイルシリンダへの供給エア圧を制御するABSバルブと、
    リレーバルブの出力側の圧力を車両の積載状況に応じて制御し後後軸側に供給するロードセンシングバルブと、
    後後軸車輪の左右に各々設けられ、左右各々のABSバルブの出力側とロードセンシングバルブの出力側とが入力接続されて、入力されるエア圧の低い側を選択して後後軸車輪のホイルシリンダに供給する弁装置と、
    から構成したことを特徴とするブレーキ装置。
  2. 従動軸である後後軸の軸重を駆動軸である後前軸に移動可能な軸重移動装置を備えた後2軸車のブレーキ装置であって、
    ブレーキバルブからの信号圧に応じてエアタンクからのエア圧をホイルシリンダ側に出力するリレーバルブと、
    入力側がエアタンクに接続され車両の状態に応じて開閉制御されるASRバルブと、
    リレーバルブの出力側とASRバルブの出力側とが入力接続されて、入力されるエア圧力の高い側を選択してホイルシリンダ側に供給するダブルチェックバルブと、
    ダブルチェックバルブの出力側と後前軸右側車輪のホイルシリンダとの間、および上記ダブルチェックバルブの出力側と後前軸左側車輪のホイルシリンダとの間に各々介装され、車両の状態に応じて後軸側のホイルシリンダへの供給エア圧を制御するABSバルブと、
    リレーバルブの出力側の圧力を車両の積載状況に応じて制御し後後軸側に供給するロードセンシングバルブと、
    後後軸車輪の左右に各々設けられ、左右各々のABSバルブの出力側とロードセンシングバルブの出力側とが入力接続されて、入力されるエア圧の低い側を選択して後後軸車輪のホイルシリンダに供給する弁装置と、
    から構成したことを特徴とするブレーキ装置。
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