JP3724672B2 - 給湯器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、給湯器の熱交換器に関し、詳しくは2つの熱交換器を燃焼排ガス流路中に離間して設け、燃焼排ガス中のドレン(凝縮水)を回収するドレン受けを備えた給湯器の熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、燃焼排ガス中の潜熱の回収を図ることを目的として、燃焼排ガス流路中に熱交換器を上下2段に離間して設けた給湯器が知られている。
例えば、特開昭54−64747号公報に示されるように、1次熱交換器と主熱交換器とを上下2段に離間して設け、1次熱交換器と下方の主熱交換器との離間したスペースにドレン受け皿を設けている。
そして、上方の1次熱交換器にて生じたドレン(潜熱回収後の凝縮水)は、ドレン受け皿に受けられ、下方に設けた主熱交換器やガスバーナに滴下しないように給湯器外へ排出している。
【0003】
一方、熱交換器部では、燃焼排ガス中に含まれる水蒸気の他、NOX、SOX、CO、CO2によって、腐食性の強いHNO3等の酸が生成されて凝縮され、熱交換器の銅母材や表面処理材である鉛材を腐食する。
その結果、炭酸鉛、硝酸鉛、塩基性炭酸鉛、硫酸銅(緑青)等の腐食生成物が多量に生じて、熱交換器のフィン間に堆積し、燃焼排ガス流路の排気抵抗が増大して不完全燃焼を引き起こしたり、熱交率を著しく低下すると共に、剥離して飛散したり、更に腐食が進むと熱交換器に穴があく等の問題を生じていた。
そこで、例えば、特開昭60−164168号公報に示されるように、熱交換器部材の表面に耐酸性、耐熱性、熱伝導性に優れたAl2O3、SiC等の無機質粉末のコーティング層を形成することによって、腐食を防止することが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の熱交換器を上下2段に離間して設けた給湯器においては、バーナから上段の熱交換器までの高さが大きくなるため、給湯器のコンパクト化が難しい問題があった。
また、上段の熱交換器と下段の熱交換器との間にドレン受け板を設けて、凝縮したドレンが下段の熱交換器へ滴下しないように、ドレン排水口へ導かれるものの、上段の熱交換器部では、凝縮されたドレンによって腐食生成物が多量に生じて耐久性が劣る問題があった。
また、この腐食対策として、熱交換器に無機質粉末のコーティング層を形成する場合には、そもそも熱交換器のフィン間隙が狭いために、吹き付けまたは侵積によるコーティングが難しく、その結果、給湯器を安価に製作できない問題が生じていた。
更に、高温時に軟化、溶融するガラスフリットをコーティング材に混ぜて母材金属との接着効果をある程度もたせることができるものの、熱交換器材である銅とコーティング層である無機質との熱膨張係数が異なるために、温度によっては加熱・冷却の繰り返しによって、コーティング層と母材金属との密着性が低下し、耐久性が劣る問題があった。
そこで、本発明の給湯器は上記課題を解決し、高効率で耐久性があり、かつ、コンパクトな給湯器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の請求項1に記載の給湯器は、
燃料ガスを燃焼するバーナと、
上記バーナによる燃焼熱により通水中の水を加熱する複数の伝熱フィンをもった高温側熱交換器と、
上記高温側熱交換器が設けられた燃焼排ガス流路の下流に設けられ、燃焼熱により通水中の水を加熱する複数の伝熱フィンをもった低温側熱交換器と、
上記低温側熱交換器から発生するドレンを受けて所要部へ排出するドレン受けを備えた給湯器において、
点火初期時には上記バーナへの燃料ガス量を絞り、燃焼炎が高温側熱交換器に達しないように燃焼制御を行う初期燃焼制御手段を設け、
上記高温側熱交換器、上記低温側熱交換器および上記ドレン受けをセラミックスで成形するとともに、
燃焼時における上記バーナの燃焼炎内に上記高温側熱交換器を配設することを特徴とするものである。
【0006】
上記第1発明において、上記バーナを含めて、セラミックスで成形されるのが好ましい(第2発明)。また、第2発明において、上記バーナ、高温側熱交換器、低温側熱交換器、ドレン受けは、セラミックスで一体形成されるのがより好ましい。
【0007】
上記第1発明によれば、燃焼排ガス流路の上流から高温側熱交換器と低温側熱交換器とが設けられて、バーナによる燃焼熱により通水中の水を加熱するので、高温側熱交換器で燃焼熱を熱交換することに加えて、低温側熱交換器で潜熱を回収でき、熱効率が向上する。また、高温側熱交換器、低温側熱交換器およびドレン受けをセラミックスで成形すると共に、高温側熱交換器をバーナの燃焼時における燃焼炎内に配設することにより、ドレンによる腐食生成物が発生しないので耐久性が向上する。更に、バーナから高温側熱交換器までの燃焼室の高さを低くでき、給湯器をコンパクトにすることができる。更にまた、初期燃焼制御手段により、バーナの点火初期時において、燃焼炎が高温側熱交換器に達しないように制御されるので、その燃焼炎が、高温になる前の高温側熱交換器およびその伝熱フィンに接触して冷却され不完全燃焼が生じるのを防止することができる。
【0008】
第2発明の構成を採用して、高温側熱交換器、低温側熱交換器、ドレン受けのほか、バーナをセラミックで成型することにより、ドレンが壁面をつたってバーナに流れる等の自体が生じたとしても、バーナでドレンによる腐食生成物が発生するのを防止することができ、耐久性を向上させることができる。さらに第3発明の構成を採用して、高温側熱交換器、低温側熱交換器、ドレン受け、バーナ等をセラミックで一体成型すれば、気密を保ち易くなり、燃焼排ガスが器体外に洩れる恐れがない。
【0009】
【発明の実施形態】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の給湯器の好適な実施例について説明する。
図1は一実施例としての給湯器の概略図である。
給湯器は、燃焼用空気を燃焼室9へ送り込むファン11、燃料ガスを燃焼するバーナ10、燃焼熱により通水路内の水に熱交換する高温側熱交換器8、この高温側熱交換器8とバーナ10間にはさまれ燃焼空間を形成する燃焼室9、高温側熱交換器8の上方で燃焼排ガス中の燃焼熱を熱交換する低温側熱交換器7、高温側熱交換器8と低温側熱交換器7間でドレン回収空間を形成するドレン回収室5、低温側熱交換器7の上方で排気を導き排出する排気筒1から燃焼・給排気経路が構成されている。
尚、バーナ10は、全一次空気式であって、燃焼面に燃料ガスと空気との混合ガスを噴出する多数の噴出孔が開けられる。
また、バーナ10へのガス供給経路27には、ガス量を制御するガス比例弁17、ガス通路を開閉するガス電磁弁15、16が設けられている。
また、給水経路は、給水路25から低温側熱交換器7、この下方の高温側熱交換器8を経て、給湯路26に設ける給湯カラン24へ通じている。
また、バーナ10には、図示しない点火用電極、燃焼炎を検知するフレームロッドを設け、ガス電磁弁15、16、ガス比例弁17と共にコントローラ18へ電気的に接続され、出湯・運転・停止等の所定の制御が行われている。
【0010】
高温側熱交換器8および低温側熱交換器7のそれぞれは、互いに間隙をもって向い合う複数の伝熱フィン20、21と、これらの伝熱フィン20、21を挿通する複数の伝熱管22、23とで形成されている。
そして、伝熱管22、23内の通水が配列された複数の伝熱フィン20、21を蛇行して流れるように、熱交換器壁の外でこれらの伝熱管22、23が連結され、流路が連通している。
【0011】
また、低温側熱交換器7が温度低下した燃焼排ガスから潜熱を効率よく熱交換できるようにするため、および、燃焼炎が高温側熱交換器8の各伝熱フィン間で高温を保って燃焼できるようにするため、通水は、まず低温側熱交換器7で熱交換され、次いで高温側熱交換器8で熱交換されるように、上下の熱交換器8、7が接続管3で接続される。
【0012】
低温側熱交換器7の下方に位置するドレン回収室5には、図2に示すように、低温側熱交換器7から滴下するドレンを受ける断面コの字形のドレン受け4が上に開口して設けられ、ドレン回収室5の一方の側壁には、ドレン受け4で受けたドレンを集合するドレン集合部6が設けられる。
ドレン受け4は、排気間隙を設けて複数個、上下2段に互い違いに設けられ、ドレン集合部6へ向けて水平方向に傾斜して配列される。
また、各々のドレン受け4とドレン受け4との間は、燃焼排ガスが各々のドレン受け4を迂回して通過するように燃焼排ガス流路を形成する。
また、ドレン受け4は、ドレンを受けてドレンを導くばかりでなく、燃焼排ガス流の分布を均等化する役目も果たす。
【0013】
ドレンが導かれるドレン集合部6には、ドレンを排出するドレン排水管13がU字形またはZ形に設けられ、屈曲した溜部に溜まったドレンによって、ドレン回収室5と外気とを遮断し、排気通路内の燃焼排ガスがドレン排水管13から器外へ洩れるのを防止している。
尚、ドレンが溜まる溜部の高さhは、ファン11の最高静圧より若干大きく設定されている。
【0014】
低温側熱交換器7、ドレン回収室5、複数のドレン受4、高温側熱交換器8、燃焼室9、バーナ10、およびこれら周囲壁面の材料は、比較的、熱伝導効率の高いSiC(炭化珪素)(またはセラミックスと読み代えても良い)で形成され、これら全体は一体に焼成して作製される。
【0015】
従来、銅製のフィンチューブ型熱交換器では、高温時の酸化による腐食を防止して耐久性を確保するために、伝熱フィンの温度を150〜250℃に低くしなければならず、また、燃焼炎が熱交換器の伝熱フィンに接触し、燃焼炎が冷却されて不完全燃焼を起こさないように、バーナ10から高温熱交換器8までの燃焼室9高さが大きく設けられていた。
一方、本実施例では、バーナ10および高温熱交換器8をSiC材料で形成するために、耐熱性をもたせることができると共に、銅材のように高温酸化が起こらない。
従って、燃焼室9および高温側熱交換器8を高温化(500〜600℃)することができるため、燃焼炎を積極的に伝熱フィン21へ接触させ、伝熱フィン21と伝熱フィン21との間隙で燃焼するように、燃焼室9高さを低く設ける。
【0016】
次に、給湯器の燃焼動作について、以下に説明する。
まず、給湯カラン24を開いて給水路25へ給水されると、コントローラ18からファン11へ指令信号が送られ、ファン11が回転する。
次にコントローラ18からの指令信号によりガス電磁弁15、16を開弁してバーナ10に燃料ガスが供給され、図示しないイグナイタの放電によって燃料ガスに点火され、燃焼が開始される。
【0017】
この点火初期には、高温側熱交換器8が高温になる前に、燃焼炎が伝熱フィン21に接触して冷却されると、不完全燃焼を起こす場合がある。
そこで、点火初期には、高温側熱交換器8が冷えた状態となっているために、コントローラ18が、ガス比例弁17の開度を小さくして燃料ガス量を絞り、燃焼炎が高温熱交換器8に達しないように、燃焼を制御する。
そして、点火後から所定時間経過後に、高温側熱交換器8が赤熱し、燃焼炎が伝熱フィン21に接触しても不完全燃焼を起こさない状態になり、コントローラ18は、ガス比例弁17の開度を大きくして燃料ガス量を増す。
この際の燃焼炎は、高温側熱交換器8の各伝熱フィン21の間隙に入り込んで燃焼する。
図2は、伝熱フィン21間で燃焼するこの燃焼炎33を示している。
【0018】
バーナ10から噴出する燃料ガスは、高温側熱交換器8の各伝熱フィン21の間隙での燃焼後、この燃焼排ガスが上方のドレン受4間の間隙を通過し、上方の低温側熱交換器7の伝熱フィン20を接触通過する。
従って、高温側熱交換器8の伝熱フィン21は燃焼炎に接触して伝熱されると共に、上方の低温側熱交換器7は燃焼排ガスの残余熱を効率良く吸収して、これらの伝熱管22内を通過する通水を加熱昇温する。
【0019】
一方、燃焼排ガスは、下方の高温側熱交換器8で熱交換されて排気温度が低下し、更に上方の低温側熱交換器7で潜熱が回収されて排気温度が低下する。
そして、低温側熱交換器7を通過する際に、低温となった燃焼排ガスから凝縮するドレンは、ドレン受4に滴下し、ドレン受4に沿ってドレン集合部6へ導かれる。
従って、ドレンは、下方の高温側熱交換器8およびバーナ10上への滴下が妨げられる。
【0020】
以上のことから、高温側熱交換器8で燃焼熱を熱交換し、更に、上方の低温側熱交換器7で燃焼排ガス中の潜熱を回収するので熱効率が著しく向上する。
また、高温側熱交換器8が、バーナ10の燃焼炎内に配設できるため、バーナ10上端から高温側熱交換器8下端までの燃焼室9高さを低くすることができ、給湯器をコンパクトにすることができる。
また、ドレン回収は確実に行われると共に、高温側熱交換器8、ドレン受け4、低温側熱交換器7、およびバーナ10は腐食しない材料であるSiCで作製され、ドレンによる腐食生成物が発生しないので耐久性が向上する。
また、これらの四方を囲む壁面がSiCで作製され、壁面に沿ってドレンが流れても壁面が腐食して孔ができ、燃焼排ガスが洩れるという問題を生じない。
また、バーナ10から低温側熱交換器7までが一体に成形されるので、気密を保ち易くなり、燃焼排ガスが器体外に洩れるおそれがない。
【0021】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
例えば、本実施例では、バーナ10、燃焼室9、高温側熱交換器8、ドレン回収室5、ドレン受け4、及び低温側熱交換器7の全体をSiCで一体に焼成して形成する構成として説明したが、図3に示すように各々のブロックに分けてSiCで作製し、各ブロックの上下端部が互いにかみ合う段差部28a、28bを形成し、これらを一体的に組合わせる構成であっても良い。
この場合には、SiCの溶接ができる特性を利用し、燃焼排ガスが洩れないように、各ブロックを溶接によって一体的に構成しても良い。
あるいは、各ブロックにおける嵌合の接合面に、耐熱性のある接着剤等を塗布しても良く、または、耐熱性のあるバッキンを装着することによって気密を保っても良い。
尚、各部をブロックに分けた場合には、成形が容易で安価に作製できるメリットを生じる。
【0022】
また、SiCで一体または一体的に形成するのは、これら各部の構成に限定されず、ドレン集合部6、および燃料ガスの混合室等を加える構成であっても良い。
また、SiCは、「炭化珪素」、または「セラミックス」と呼び代えても良い。
【0023】
また、高温側熱交換器8の上方に低温側熱交換器7を設ける構成として説明したが、燃焼排ガスが通過する流路において、高温側熱交換器8の下流流路を直角方向に曲げたり、流路を逆U字形に下方方向に曲げて、この下流に低温側熱交換器7を設定する構成であっても良い。
また、この構成によって、ドレンを導くドレン受け4は、低温側熱交換器7と高温側熱交換器8との間に設けられる構成に限定されず、低温側熱交換器7で発生して流れる落ちるドレンの方向に応じて、燃焼排ガス流路の下流に設ける構成であっても良い。
この場合に、高温側熱交換器8からの下流の燃焼排ガス流路が直角方向に曲げられ、燃焼排ガス流路下面壁がドレン受け4を兼ねて下り勾配に設けられ、ドレンを流路に沿って器体外に排出する構成となっても良い。
【0024】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の請求項1記載の給湯器によれば、ドレンによる腐食生成物が発生しないので耐久性が向上すると共に、潜熱を回収できるので熱効率が向上する。
また、燃焼室高さを低くできるので給湯器をコンパクトにすることができるという優れた効果を奏する。
また、請求項2記載の給湯器によれば、請求項1による効果に加え、バーナがセラミックスで作製されるので、バーナの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る給湯器の概略図(正面図)である。
【図2】本発明の実施例に係る給湯器の概略図(側面図)である。
【図3】本発明の他の実施例に係る概略図である。
【符号の説明】
4 ドレン受け
5 ドレン回収室
6 ドレン集合部
7 低温側熱交換器
8 高温側熱交換器
9 燃焼室
10 バーナ
11 ファン
13 ドレン排水管
18 コントローラ
24 給湯カラン
25 給水路
26 給湯路
27 ガス通路
Claims (3)
- 燃料ガスを燃焼するバーナと、
上記バーナによる燃焼熱により通水中の水を加熱する複数の伝熱フィンをもった高温側熱交換器と、
上記高温側熱交換器が設けられた燃焼排ガス流路の下流に設けられ、燃焼熱により通水中の水を加熱する複数の伝熱フィンをもった低温側熱交換器と、
上記低温側熱交換器から発生するドレンを受けて所要部へ排出するドレン受けを備えた給湯器において、
点火初期時には上記バーナへの燃料ガス量を絞り、燃焼炎が高温側熱交換器に達しないように燃焼制御を行う初期燃焼制御手段を設け、
上記高温側熱交換器、上記低温側熱交換器および上記ドレン受けをセラミックスで成形するとともに、
燃焼時における上記バーナの燃焼炎内に上記高温側熱交換器を配設することを特徴とする給湯器。 - 上記バーナを含めて、セラミックスで成形される請求項1に記載の給湯器。
- 上記バーナ、高温側熱交換器、低温側熱交換器、ドレン受けは、セラミックスで一体形成される請求項2に記載の給湯器。
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