JP3724402B2 - 糸条巻取機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば合成繊維のフィラメント糸を連続して巻き取る糸条巻取機であって、巻取中の糸条張力を制御するための張力検出器を備えたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
紡糸機から連続して溶融紡出される合成繊維のフィラメント糸を、トラバース装置で綾振りしながらボビンに巻き取る糸条巻取機における巻取制御方式には、主として糸速度に着目した糸速度制御と、糸張力に着目する糸張力制御との2種類が知られている。
【0003】
前者の糸速度制御方式は、巻取中にトラバース速度を変化させると糸張力も変化し、この張力変化を制御するのが困難であるという問題があった
【0004】
これに対し後者の糸張力制御方式は、バルジやサドルの無い良好な糸条パッケージを形成するため、巻取中にトラバース速度を変化させる巻取工程を実施する上で、きわめて有効な技術と考えられる。
【0005】
糸張力制御方式を採用した場合は、糸条に接触してその張力を検出する張力検出器を設ける必要があるが、高速で走行する糸条に対し張力検出器を接触させることは、原則として、糸品質を低下させる原因となる。そこで、糸条に対する悪影響を極力なくすため、綾振り支点ガイドのすぐ下流において、トラバース装置で振り子状に綾振りされる糸条の振幅の両端で張力検出器のセンサー部材が少し触れるだけの構成とした張力検出器を設け、糸張力を検出する方式が従来提案されている(例えば、特公昭51−44668号公報、特公昭60−47985号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
糸張力制御方式の糸条巻取機において、固定したフレームに綾振り支点ガイド及び張力検出器を取付けると共に、昇降ユニットにトラバース装置及びコンタクトローラを備えて構成し、綾振り支点ガイド及び張力検出器を通過してトラバース装置で綾振りされる糸条を、コンタクトローラに接触させつつ糸条パッケージに巻き上げる際に、糸条パッケージの糸層厚みが肥厚するのに伴い、コンタクトローラを上昇させて糸条パッケージに対する接圧を適切に保つようにすることが考えられる。しかし、上昇する昇降ユニットでトラバース装置を、固定した綾振り支点ガイドに接近させるのに伴い、振り子状に綾振りする糸条の長さが短くなって、振幅の両端で張力検出器のセンサー部材を強く押すことになり、正確な張力値を得られなくなる問題が生じることになる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特に前述の張力検出方式を採用する糸条巻取機において、正確な張力値を得る手段の提供を目的とする。本発明がかかる目的のため採用した請求項1に記載の糸条巻取機の特徴とするところは、糸条を巻取るボビンを装着したボビンホルダー、糸条パッケージと接触して回転するコンタクトローラ、その上流部に設置されて送出されてくる糸条を綾振るトラバース装置、その上流部で綾振りされる糸条の綾振り支点となる綾振り支点ガイド、および、トラバース装置と綾振り支点ガイドとの間に位置して、綾振りの振幅の両端に位置する糸条を接触子に触れさせて張力を検出する張力検出器を備えた糸条巻取機において、巻取工程中における綾振り支点ガイドと張力検出器とトラバース装置との間の各距離を、糸条パッケージの巻径に関係なく一定としたことにある。本発明にあっては、巻取工程中は、綾振り支点ガイドから張力検出器までの距離、綾振り支点ガイドからトラバース装置までの距離及び張力検出器からトラバース装置までの距離が各々一定であるため、振り子状に綾振りしながら走行する糸条を、その振幅の両端で張力検出器に触れさせて測定するときの条件を一定に維持して、正確な張力値を得ることができる。
【0008】
なお本発明は、請求項2に記載するように、糸条巻取機が、トラバース装置を備えて糸条パッケージの巻径の増大に伴って上昇する昇降ユニットに、綾振り支点ガイド及び張力検出器を取付ける場合に適用することが望ましい。
【0009】
さらに本発明は、請求項3に記載するように、ボビンホルダが糸パッケージの巻径の増大に伴って降下して、コンタクトローラに対する糸条パッケージの接圧を適切に維持させる糸条巻取機に適用することもある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明を、紡糸機から連続して溶融紡出される合成繊維のフィラメント糸を、トラバース装置で綾振りしながら巻き取って糸条パッケージを形成する糸条巻取機に適用した実施形態について述べる。図1は、本発明に係る糸条巻取機Mの概略構成を示す側面図であり、一つのボビンホルダHに複数のボビンBを装着して同時に複数の糸条パッケージPを同時に巻き上げることができるよう構成されたものである。図面にはボビン数が4個のものを例示したが、ボビン数が6個、8個、12個等のものも採用される。同糸条巻取機Mは、機台Kに、複数のボビンBを保持するボビンホルダHと、トラバース装置T及びコンタクトローラCを備える昇降ユニットUとが設けられ、該昇降ユニットUは機台Kに対し昇降可能であり、ボビンBに巻き取られて形成されるパッケージPの糸層厚みが肥厚するのに伴い、コンタクトローラCが上昇して接圧を適切に保つよう設定されている。
【0011】
コンタクトローラCは、棒状で、ボビンホルダHと平行に配置され、昇降ユニットUのケーシングに回転可能に支持されている。ボビンホルダHは、棒状で、機台Kに片持ち支持され、図示しないモータによって回転駆動されるようになっている。一般的に、糸条巻取機Mでは、機台Kに回転可能に取り付けたターレット盤に、2本のボビンホルダHが180°間隔で設けられ、一方のボビンホルダHが巻取位置に、他方のボビンホルダHが待機位置に配される。図1の糸条巻取機Mでは、上記ターレット盤と待機位置のボビンホルダHとを省略してある。
【0012】
図2に示す如く、昇降ユニットUには、トラバース装置TとコンタクトローラCが備えられる。トラバース装置Tは、例えば羽根トラバース装置やカムトラバース装置等が用いられ、糸条Sをトラバース方向に案内するためのトラバースガイド12が備えられる。
【0013】
昇降ユニットUの上方には、糸道の上流側から下流側に向かって、綾振り支点ガイド1と張力検出器3とがこの順に配設されている。これら綾振り支点ガイド1及び張力検出器3は、昇降ユニットUのケーシングに接合した支持具9に取付けられて、ボビンBに糸条Sを巻き取る巻取工程中におけるこれらの間の距離が、糸条パッケージPの巻径に関係なく一定となるようにしてある。すなわち、綾振り支点ガイド1,張力検出器3及びトラバース装置Tは、昇降ユニットUに接合されて一体となることにより、糸条パッケージPが小径の場合を示す図5(A)及び糸条パッケージPが大径の場合を示す同図(B)に示す如く、糸条パッケージPの巻径に関係なく、巻取工程中の綾振り支点ガイド1から張力検出器3までの距離L1、張力検出器3からトラバース装置Tまでの距離L2及び綾振り支点ガイド1からトラバース装置Tまでの距離L3の各々が不変であるようにしてある。
【0014】
トラバース装置Tに対し糸条走行方向の上流側に設けられる綾振り支点ガイド1は、糸条Sをトラバース装置Tで左右に綾振りする際の基準位置を定めるためのものであり、巻取工程時の基本位置が、トラバース装置Tのトラバース幅のほぼ二等分線N上に設定されている。また、綾振り支点ガイド1は、支持具9に取着した案内具14に案内され、図1に示す上記基本位置からボビンホルダHの先端(自由端)へ向かって、ボビンホルダHの軸方向に沿って図4に示す初期糸掛け作業位置まで移動可能になっている。綾振り支点ガイド1の構造は、例えば図3に拡大して示すように、糸条Sを挿通させるリング状のガイド部1aと、このガイド部1aを支持する基部1cとから成り、ガイド部1aの適所に、糸条Sをリング部1a内へ挿入し易くするため切欠1bを形成してある。
【0015】
図1に示す如く、綾振り支点ガイド1とトラバース装置Tとの間に設けられ、綾振り支点ガイド1を通りトラバース装置Tで綾振りされる糸条Sの張力を検出する張力検出器3は、張力検出信号を適宜設けたコントローラーへ電送するためのケーブルを接続するため、支持具9に固定されると共に、それぞれに対応するトラバース装置Tにおけるトラバース幅のほぼ二等分線N上で、巻取工程時における綾振り支点ガイド1の基本位置の直下に配置される。張力検出器3の構造は、図3に示すように、糸条Sを張力検出位置に保持する接触子4,接触子4に連結した軸部5,軸部5における基部7近くの左右両側面に装着した感圧センサー6、軸部5を支持する基部7から成っている。接触子4は、軸方向中央部の先端から適当長さを切り欠いて糸条Sの収納部4aを形成し、該収納部4aを挟む左右先端縁に傾斜辺からなる導入案内部4bを設けてある。上記収納部4aが、糸条Sを張力検出位置に保持する部分である。また導入案内部4bは、初期糸掛けの際に糸条Sの綾振り動作により当該糸条Sを張力検出位置である収納部4a内へ案内するためのものである。
【0016】
前記張力検出器3は、次のようにして巻取工程中の糸条Sの張力を測定する。図3に示す如く、綾振り支点ガイド1を通した糸条Sを接触子4の収納部4aに挿通させて巻取を実施すると、トラバース装置Tで糸条Sが同図中二点鎖線で示すように左右に綾振りされることにより、当該糸条Sが収納部4aの左右内縁に圧接するため、接触子4を通じて軸部5が綾振り方向へ振動するように変形する。軸部5に装着した感圧センサー6は、糸条Sが接触子4と接触する際に軸部5に及ぼす力の大きさを検出し、それに基づいて糸条Sの張力を算出する。このように本例で採用する張力検出方式は、張力検出器3と糸条Sとの接触時間が短く、張力検出器3との接触時における糸条Sの屈曲が小さいから、糸条Sに及ぼす悪影響をきわめて少なくできる。
【0017】
なお、張力検出器3の接触子4及び軸部5は、張力の鋭敏な検出のため、なるべく軽量に製作することが望ましい。この意味で、接触子4の左右先端部を、傾斜辺からなる導入案内部4bにより先細りに形成することが望ましい。すなわち導入案内部4bは、接触子4を先細り形状として軽量化することにも貢献している。
【0018】
本例の糸条巻取機Mは、一つのボビンホルダHに装着した複数のボビンBそれぞれに同時に糸条Sを巻き取るため、各ボビンBごとに、綾振り支点ガイド1,張力検出器3及びトラバース装置Tを配設してある。
【0019】
巻取工程中の糸条巻取機Mは、糸条パッケージPの糸層厚みが肥厚するのに伴い、糸条パッケージPに対するコンタクトローラCの接圧を適切に保つように昇降ユニットUが上昇するが、上昇する昇降ユニットUと一体となってトラバース装置T、綾振り支点ガイド1及び張力検出器3も上昇するため、図5に示す如く、綾振り支点ガイド1から張力検出器3までの距離L1、張力検出器3からトラバース装置Tまでの距離L2及び綾振り支点ガイド1からトラバース装置Tまでの距離L3の各々も一定値を維持することになる。これにより、走行しながら振り子状に綾振りされる糸条Sの振幅の両端で張力検出器3のセンサー部材である接触子4を押圧して糸条Sの張力を測定するとき、綾振り支点ガイド1と張力検出器3との間におけるトラバース装置Tのトラバース幅の二等分線Nと糸条Sとの交差する角度θ1と、張力検出器3とトラバース装置Tとの間における二等分線Nと糸条Sとが交差する角度θ2とが一定値を維持することになり、正確な張力値を得ることができる。
【0020】
なお、巻取工程中におけるトラバース装置Tと綾振り支点ガイド1と張力検出器3との間の各距離を一定とする本発明は、糸条パッケージの巻径の増大に伴いコンタクトローラCと共に昇降ユニットUを上昇させる前記糸条巻取機Mに適応する以外に、図6に示すように、糸条パッケージPの巻径の増大に伴いボビンホルダHを矢符D方向へ降下させつつ、コンタクトローラCに対する糸条パッケージPの接圧を適切に維持させる糸条巻取機に適応することも勿論可能である。
【0021】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明は、巻取工程中は振り子状に綾振りされる糸条の振幅の両端で張力検出器に触れさせて張力測定する条件を一定に維持して、糸条パッケージの巻径に関係なく正確な張力値が得られることから、目標値に張力制御された品質の良好な糸条パッケージを得ることができる。
【0022】
特に本発明は、請求項2に記載する如く、糸条パッケージの糸層厚みが肥厚するのに伴い、昇降ユニットを上昇させて糸条パッケージに対するコンタクトローラの接圧を適切に保つようにする場合に適用するのが好ましく、これにより、巻取工程中の糸条の正確な張力値が得られる。
【0023】
また請求項3に記載の本発明によれば、糸条の巻取の進行に伴いボビンホルダを降下させてコンタクトローラに対する糸条パッケージの接圧を適切に維持させる場合にも、糸条パッケージの巻径に関係なく糸条の正確な張力値が得られることから、目標値に張力制御された品質の良好な糸条パッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る糸条巻取機の一実施形態に係るものであって、概略構成を示す側面図である。
【図2】 本発明に係る糸条巻取機の一実施形態に係るものであって、主要構成部材を取り出して示す正面図である。
【図3】 本発明に係る糸条巻取機の一実施形態に係るものであって、綾振り支点ガイド、張力検出器を取り出して示す斜視図である。
【図4】 本発明の一実施形態に係るものであって、糸掛け作業を開始した状態の糸条巻取機を示す側面図である。
【図5】 本発明の一実施形態に係るものであって、正規の糸条巻取工程中の糸条巻取機のボビン一個分を取り出して示す側面図であり、(A)は糸条パッケージが小径の場合を示し、(B)は糸条パッケージが大径の場合を示す。
【図6】 本発明に係る糸条巻取機の別の実施形態に係るものであって、主要構成部材を取り出して示す正面図である。
【符号の説明】
M…糸条巻取機 B…ボビン C…コンタクトローラ H…ボビンホルダ P…糸条パッケージ S…糸条 T…トラバース装置 U…昇降ユニット 1…綾振り支点ガイド 3…張力検出器 4…接触子
Claims (3)
- 糸条を巻取るボビンを装着したボビンホルダー、糸条パッケージと接触して回転するコンタクトローラ、その上流部に設置されて送出されてくる糸条を綾振るトラバース装置、その上流部で綾振りされる糸条の綾振り支点となる綾振り支点ガイド、および、トラバース装置と綾振り支点ガイドとの間に位置して、綾振りの振幅の両端に位置する糸条を接触子に触れさせて張力を検出する張力検出器を備えた糸条巻取機において、巻取工程中における綾振り支点ガイドと張力検出器とトラバース装置との間の各距離を、糸条パッケージの巻径に関係なく一定としたことを特徴とする糸条巻取機。
- トラバース装置を備え、糸条パッケージの巻径の増大に伴って上昇する昇降ユニットに、綾振り支点ガイド及び張力検出器を取付けた請求項1に記載の糸条巻取機。
- ボビンホルダは糸パッケージの巻径の増大に伴って降下して、コンタクトローラに対する糸条パッケージの接圧を適切に維持させるものである請求項1に記載の糸条巻取機。
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