JP3724253B2 - コンロッドの製造方法及びコンロッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の内燃機関におけるコンロッド(連接棒)の製造方法及びコンロッドに関し、特に、重量調整を容易に行うことができるコンロッドの製造方法及びコンロッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関におけるコンロッドは、高速運動時の振動を低減する目的から重量を調整する必要があり、とくにV型エンジンではその振動特性上きわめて厳密な調整が必要である。このため従来、図5に示すように、コンロッド3のキャップ2には直径8mm程度の円柱形や直方体形状の重量調整ボス4が設けられており、まず鍛造により得られたコンロッド3の重量を測定し、次に所定の目標値との差に応じた長さだけ、重量調整ボス4を数値制御工作機械により正確に削り取るという所謂バランスカット工程を行うことによって、コンロッド3の重量を目標値に合わせるように構成されている。
【0003】
そして、このバランスカット工程を行う従来のコンロッド製造方法では、図6に示すとおり、まず大端孔12に荒ボーリングを行い(S101)、次にバランスカット工程を行う(S102)。そして、バランスカット工程でコンロッド3全体に大きな応力が発生することから、この応力を開放すべく、コンロッド3のロッド1とキャップ2とを締結しているボルト5とナット6とをいったん緩めて締め直す緩め締め工程を行い(S103)、応力のない状態で仕上げボーリング及び仕上げホーニングを実施(S104,S105)して合わせ面11の段差を消したのち、洗浄(S106)及び重量・内径測定(S107)を行うことにより、製造工程を終了する。なお、これらS101ないしS107の各工程は、それぞれ1工程に1台ずつの個別の加工機によって行われる。
【0004】
この一連の製造工程のうち、S102のバランスカット工程では、図7に示すように、まず仕上げボーリングの取代分(1gないし2g)を予測するために大端孔12の径を測定し(S102−1)、次に個々のコンロッド3の寸法のばらつきを考慮するために重量調整ボス4の端面の高さを測定し(S102−2)、次にコンロッド3の重量を測定すると共に、測定された重量値と所定の目標値との差と、先に予測された仕上げボーリングの取代分とに基づいて加工量を演算し(S102−3)、算出された加工量に基づいて、必要な切削深さだけ重量調整ボス4の切削を行っている(S102−4)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、重量調整ボス4は重量の調整以外には全く不必要なものであり、エンジン全体の軽量化を考えた場合には、このような部材を設けないことが望ましい。
【0006】
他方、上述のバランスカット工程では、重量調整ボス4の削り量が個々のコンロッド3によって微妙に異なるため、この削り取りに高価で大掛かりな数値制御工作機械を用いる必要がある。さらに、重量調整ボス4の削り取りの際に大きな応力が生じることから、この応力を開放する緩め締め工程(S103)を行うための専用の装置が必要であった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の重量調整ボスを不要としてコンロッドの軽量化を図ると共に、大掛かりな数値制御工作機械を要せず、また緩め締め工程を省略して製造を簡略化できる手段を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明は、重量調整前のコンロッドの重量を測定する重量測定工程と、前記重量測定工程で得られた測定値と所定の目標値とに基づいて、コンロッド大端部の大端孔の近傍に設けられ当該大端孔のボーリングの際のクランプ用に用いられる複数のボーリング用基準座部材のうち所望の個数を除去する基準座部材除去工程とを含むことを特徴とするコンロッドの製造方法である。
【0009】
第1の本発明では、コンロッド大端部の大端孔の近傍に設けられ当該大端孔のボーリングの際のクランプ用に用いられ、製造工程上は必要だが製品上は特に必要ない複数のボーリング用基準座部材のうちから、所望の個数を除去することにより、重量を調整する。したがって従来のように重量調整ボスを設ける必要はなく、コンロッドの軽量化ひいてはエンジン全体の軽量化を図ることができる。
【0010】
また、重量の調整量の増減は、削り取るボーリング用基準座部材の個数を変更することによって行われるから、個々のボーリング用基準座部材の削り量を微調整する必要がない。したがって、この削り取りに高価で大掛かりな数値制御工作機械を用いる必要はなく、例えば油圧で駆動されるバイトによってボーリング用基準座部材を押し切る等の簡易な加工装置で足りる。また、ボーリング用基準座部材は複数設けることとしたので、個々のボーリング用基準座の体積及び断面積は小さくて済み、これを削る際に生ずる応力が従来の重量調整ボスの削り取りの場合に比して小さくて済むから、従来のように応力を開放する緩め締め工程は不要となり、製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0011】
第2の本発明は、コンロッド大端部の大端孔の近傍に、当該大端孔のボーリングの際のクランプ用に用いられる複数のボーリング用基準座部材を備え、当該複数のボーリング用基準座部材は、当該複数のボーリング用基準座部材のうち所望の個数を除去することにより前記コンロッドの重量調整に用いられるべき所定の重量単位を構成していることを特徴とするコンロッドである。
【0012】
第2の本発明では、コンロッドの重量調整に用いられるべき所定の重量単位を構成している複数のボーリング用基準座部材のうち、所望の個数を除去することにより、コンロッドの重量調整を行うことができるので、上記第1の本発明と同様の効果を得ることができる。
【0013】
第3の本発明は、第2の本発明のコンロッドにおいて、前記複数のボーリング用基準座部材のうち、少なくとも一部のボーリング用基準座部材は重量が大であり、少なくとも他の一部のボーリング用基準座部材は重量が小であることを特徴とするコンロッドである。
【0014】
第3の本発明では、重量が大である一部のボーリング用基準座部材と、重量が小である他の一部のボーリング用基準座部材とを設けたので、これらを適宜に組み合わせて削り取ることにより、きめの細かい重量調整を行うことが可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)について図面に基づき詳細に説明する。図1において、本発明実施形態に係るコンロッド23は、ロッド21とキャップ22とをボルト25で結合した構成であり、ロッド21の図中上端には小端部27が、また図中下端にはロッド21とキャップ22からなる大端部29が形成されている。小端部27にはピストンピン(図示せず)を挿通するための小端孔26が、また大端部29にはクランクピン(図示せず)を挿通するための大端孔32が形成されている。本実施形態のコンロッド23における特徴的事項は、従来のコンロッド3における重量調整ボス4が存在しないことである。
【0016】
大端孔32の周囲の表面側及び裏面側には、切削加工により平滑に仕上げられた平坦面33がそれぞれ形成されており、平坦面33のキャップ22側の2個所には、大端孔32のボーリングの際のクランプ用(押さえ用)に用いられるボーリング用基準座部材35が、また平坦面33のロッド21側の2個所には、ボーリング用基準座部材37が、それぞれ形成されている。これらのボーリング用基準座部材35,37は、後述のバランスカット工程において所望の個数を除去することによりコンロッド23の重量調整に用いられるものであり、この重量調整の際に除去されるキャップ22側のボーリング用基準座部材35の重量は約1g、ロッド21側のボーリング用基準座部材37の重量は約0.5gとする。
【0017】
このようなコンロッド21を製造する工程を以下に説明する。図2のフローチャートのとおり、まず、大端孔32に荒ボーリングを行い(S201)、次に、仕上げボーリング及び仕上げホーニングを実施(S202,S203)して合わせ面31の段差を消す作業を行う。この荒ボーリング(S201)、仕上げボーリング(S202)及び仕上げホーニング(S203)の各工程では、ボーリング用基準座部材35,37が、コンロッド23のクランプ用(押さえ用)に利用される。次に、バランスカット及び重量・内径測定を行い(S204)、そして洗浄(S205)を行うことにより製造工程を終了する。なお、これらS201ないしS205の各工程は、それぞれ1工程に1台ずつの個別の加工機によって行われる。
【0018】
この一連の製造工程のうち、S204のバランスカット及び重量・内径測定工程は、図3に示す手順で行われる。すなわち、まずコンロッド23の重量を測定すると共に、測定された重量値と、目標値としての最適値との差に基づいて、ボーリング用基準座部材35,37のうちどれを何個除去するか、すなわち加工箇所を決定する(S204−1)。この決定は、S204のバランスカット及び重量・内径測定工程を行う加工機に内蔵された演算部において、以下のとおり行われる。
【0019】
例えば、図4においてAで示すように、測定された重量値と最適値との差が0.5gから1.0gの範囲内にある場合には、0.5gに相当するボーリング用基準座部材37を1個除去する旨を決定する。
【0020】
またBで示すように、最適値との差が1.5gから2.5gの範囲内にある場合には、1.0gに相当するボーリング用基準座部材35を2個除去する旨を決定する。
【0021】
またCで示すように、最適値との差が2.5gから3.5gの範囲内にある場合には、1.0gに相当するボーリング用基準座部材35を2個と、0.5gに相当するボーリング用基準座部材37を1個除去する旨を決定する。
【0022】
また、図示しないが、最適値との差が、許容上限値である最適値プラス1.5gと、調整可能範囲(全てのボーリング用基準座部材35,37の重量の合計)である6.0gとの和である最適値プラス7.5gを超えている場合には、そのようなコンロッド23を不良品として適宜の手段により製造工程から排除する。他方、図示しないが、重量値が許容下限値である最適値マイナス1.5gを下回っている場合にも、同様に不良品として製造工程から排除する。
【0023】
なお、要求される調整精度によっては、許容値(最適値プラス1.5g)以内であればそれ以上の厳密な調整を要しない場合がある。そのような場合には、例えばAで示すように最適値との差が許容値である1.5g以内の場合には調整を行わない旨を決定し、また例えばBで示すように最適値との差が1.5gから2.5gの範囲内にある場合には、1.0gに相当するボーリング用基準座部材35を1個だけ除去する旨を決定してもよい。これにより、後に続く重量調整工程を簡略化することができる。また、ロッド21側のボーリング用基準座部材37は比較的加工しにくい部位にあることから、これらボーリング用基準座部材37は調整に用いず、ボーリング用基準座部材35のみを用いて調整を行う構成としてもよい。
【0024】
このようにして決定された加工箇所の情報に基づき、最後に重量調整工程として、決定された箇所のボーリング用基準座部材35又は37を、図1中おおむね点線で示す位置から切削し除去する(S204−2)。この切削には、切削深さを微調整できる数値制御工作機械ではなく、例えば油圧で駆動されるバイトによってボーリング用基準座部材35又は37を押し切る等の簡易な加工装置を用いる。
【0025】
最後に上述のとおり、重量調整後のコンロッド23の重量及び内径を測定し(S204−3)、製品としての許容値以内であれば、上述の洗浄工程(S205)を経て出荷に移行する。
【0026】
このように、本実施形態では、コンロッド23の大端部29の大端孔32のボーリングの際のクランプ用(押さえ用)に用いられる複数のボーリング用基準座部材35,37のうちから、所望の個数を除去することにより、重量を調整する。したがって従来のように重量調整ボス4を設ける必要はなく、コンロッド23の軽量化ひいてはエンジン全体の軽量化を図ることができる。
【0027】
また、重量の調整量の増減は、削り取るボーリング用基準座部材35,37の個数を変更することによって行われるから、個々のボーリング用基準座部材35,37の削り量を微調整する必要がない。したがって、この削り取りに高価で大掛かりな数値制御工作機械を用いる必要はなく、例えば油圧で駆動されるバイトによってボーリング用基準座部材35,37を押し切る等の簡易な加工装置で足りる。
【0028】
また、ボーリング用基準座部材35,37は複数設けることとしたので、個々のボーリング用基準座部材35,37の体積及び断面積は小さくて済み、これを削る際に生ずる応力が従来の単一の重量調整ボス4の削り取りの場合に比して小さくて済むから、従来のように応力を開放するための緩め締め工程(図7におけるS103)は不要となり、製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0029】
また、仕上げボーリング工程及び仕上げホーニング工程を行うボーリング機及びホーニング機は、いずれも特殊な構造の装置であって、他の加工機の機能(例えば緩め締め工程や重量・内径測定工程を行う機能)を統合することが構造上困難であるが、本実施形態では、緩め締め工程が不要となるため、仕上げボーリング工程及び仕上げホーニング工程(S202,S203)を行った後にバランスカット工程(S204)を行うことができ、その結果、バランスカット工程と重量・内径測定工程とを実施する機能を統合することができ(S204)、両工程を1台の加工機で実施できる。したがって、製造工程に要する加工機の数を少なくでき、搬送時間及び搬送装置を節約できるという利点がある。
【0030】
また、本実施形態では従来の重量調整ボス4をなくした結果、従来のバランスカット工程(図7)において行われていた大端孔径測定工程(S102−1)及びボス端面高さ測定(S102−2)はいずれも不要である。
【0031】
また本実施形態では、複数のボーリング用基準座部材35,37のうち、一部のボーリング用基準座部材35は重量が大であり、他の一部のボーリング用基準座部材37は重量が小であるような構成としたので、これらを上述のとおり適宜に組み合わせて削り取ることにより、きめの細かい重量調整を行うことが可能である。
【0032】
なお、本実施形態では、ボーリング用基準座部材35,37をコンロッド23の両面に設ける構成としたが、片面のみに設ける構成としてもよい。また、ボーリング用基準座部材35,37の重量は後者が前者の半分になるように構成したが、例えば後者が前者の3分の2になる等の様々な変形を考えることも可能である。さらに、3種類以上の重量の異なるボーリング用基準座部材を設けてもよい。また、コンロッド23の幅方向や厚さ方向のバランスを保つように考慮して、除去すべきボーリング用基準座部材35,37を決定する構成としてもよく、このような構成も本発明の範疇に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明実施形態に係るコンロッドの側面図及び平面図である。
【図2】 本発明実施形態に係るコンロッドの製造工程を示すフローチャートである。
【図3】 本発明実施形態に係るバランスカット・測定工程の詳細を示すフローチャートである。
【図4】 本発明実施形態におけるコンロッドの重量分布と重量調整量との関係を示すグラフである。
【図5】 従来のコンロッドを示す平面図である。
【図6】 従来のコンロッドの製造工程を示すフローチャートである。
【図7】 従来におけるバランスカット工程の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1,21 ロッド、2,22 キャップ、3,23 コンロッド、4 重量調整ボス、12,32 大端孔、29 大端部、35,37 ボーリング用基準座部材。
Claims (3)
- 重量調整前のコンロッドの重量を測定する重量測定工程と、
前記重量測定工程で得られた測定値と所定の目標値とに基づいて、コンロッド大端部の大端孔の近傍に設けられ当該大端孔のボーリングの際のクランプ用に用いられる複数のボーリング用基準座部材のうち所望の個数を除去する基準座部材除去工程とを含むことを特徴とするコンロッドの製造方法。 - コンロッド大端部の大端孔の近傍に、当該大端孔のボーリングの際のクランプ用に用いられる複数のボーリング用基準座部材を備え、当該複数のボーリング用基準座部材は、当該複数のボーリング用基準座部材のうち所望の個数を除去することにより前記コンロッドの重量調整に用いられるべき所定の重量単位を構成していることを特徴とするコンロッド。
- 請求項2に記載のコンロッドにおいて、
前記複数のボーリング用基準座部材のうち、少なくとも一部のボーリング用基準座部材は重量が大であり、少なくとも他の一部のボーリング用基準座部材は重量が小であることを特徴とする請求項2に記載のコンロッド。
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JP11302199A JP3724253B2 (ja) | 1999-04-21 | 1999-04-21 | コンロッドの製造方法及びコンロッド |
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