JP3721387B2 - 高炉出銑樋用内張り及びその形成方法 - Google Patents

高炉出銑樋用内張り及びその形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は局部溶損が抑制された高炉出銑樋用内張り及びその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉出銑樋は、高炉から出銑された溶銑とスラグ(高炉スラグ)を分離する役割を有する。溶銑とスラグは比重が異なるので、例えば図3に示すように高炉出銑樋の上部をスラグ1が流れ、下部を溶銑2が流れる。なお3は内張りを示し、4は裏張り煉瓦を示し、5は鉄皮を示す。
【0003】
そのため大気とスラグの界面が接触する内張りのスラグライン6では、スラグ溶損に加え熱スポールによる剥離等も起こり、スラグのみと接触している他の内張り部分と比べて溶損速度が著しく速い。またスラグと溶銑の界面が接触する内張りのメタルライン7でも、溶銑と内張材との反応に加え、スラグと溶銑と内張材との反応(マランゴニー効果によりスラグと溶銑から生成する反応性に富んだFeOと内張材とが反応して、低融点化合物を生成する)により、溶銑のみと接触している他の内張り部分と比べて溶損速度が著しく速い。
【0004】
スラグライン及びメタルラインで発生する局部溶損は、高炉出銑樋の内張りの側壁部のみならず内張り全体の寿命をも決定する。そこで、このような局部溶損を抑えることにより内張り全体の溶損速度を低下させ、もって内張りの長寿命化を図る技術が提案されている。
【0005】
例えば実開昭55-116994号には、局部溶損の激しい部分を中心に、側壁用内張り耐火物の全面或いは一部分を可撓性耐火断熱ボードで被覆することにより、内張り耐火物を保護し、溶損量を大幅に減少させる方法が開示されている。また特開平8-246013号には、メタルラインが形成される内張りの部位を周囲よりも傾斜が緩やかなスロープとすることにより、マランゴニー効果により形成されるスラグフィルムの運動を抑制し、もってメタルラインでの局部溶損を抑制する方法が開示されている。
【0006】
これらの先行技術はいずれも、局部溶損を抑え内張り全体の溶損速度の均一化を図る方法である。しかし実開昭55-116994号に開示の方法では、一旦築造された施工体の表面に耐火モルタル等の接着剤で耐火ボードを接着し、さらにセラミック製の釘等で固定するので、工程が繁雑である。また特開平8-246013号に開示の方法には、スロープの傾斜角度を75°以下に抑えるとともに、メタルラインがスロープに形成されるように操業しなければならないといった制約がある。
【0007】
そのため、内張りをスラグライン部とメタルライン部とに上下2分割するとともに、スラグライン部では耐スラグ性及び耐熱スポール性に優れた耐火物を流し込み施工し、メタルライン部では耐溶銑性及び耐FeO性に優れた耐火物を流し込み施工するゾーンライニング施工法が提案されている。ゾーンライニング施工法によれば、組成の異なる2種類の耐火物を上下に流し込むだけなので施工は容易であり、さらにそれぞれの局部溶損の要因に対して最適な組成の流し込み耐火物を選択できるので、溶損メカニズムの異なる局部溶損に対応しやすい。
【0008】
耐スラグ性及び耐熱スポール性が必要なスラグライン部用耐火物には、炭化珪素を多量に含有するアルミナ−炭化珪素−炭素質流し込み耐火物(特公平6-8223号及び特開2000-203953号参照)を使用するのが一般的である。また耐溶銑性及び耐FeO性が必要なメタルライン部用耐火物には、FeOとの反応性が小さいアルミナ・マグネシア系スピネル(以下特に断らない限り「スピネル」と称する)を主材としたアルミナ−スピネル−炭化珪素−炭素質の流し込み耐火物(特許2556416号及び特開2000-351674号参照)を使用するのが一般的である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしスラグライン部とメタルライン部との境界部付近ではメタルライン部用耐火物の溶損速度が上昇し、スラグライン部用耐火物中の炭化珪素の含有量が増える程この傾向は顕著となる。このような境界部付近におけるメタルライン部用耐火物の溶損の原因は、以下のように考えられる。
【0010】
図4に示すように、スラグライン部用耐火物とメタルライン部用耐火物によるゾーンライニング施工法では、スラグライン部8とメタルライン部9との境界部10がスラグライン6とメタルライン7のほぼ中間に位置するように施工されており、境界部10付近のメタルライン部9はスラグ1と接しているためスラグ溶損されやすい。さらにメタルライン部用耐火物のスピネル中に含まれるマグネシアが、境界部10付近のスラグライン部用耐火物中の炭化珪素を酸化することによりSiO2が生成し、SiO2がメタルライン部用耐火物中のスピネルとさらに反応することにより低融点化合物が生成するため、境界部10付近の溶損量が著しく大きくなる。
【0011】
また境界部10ではスラグライン部用耐火物とメタルライン部用耐火物の接着力が幾分弱く、他の部位と比べてスラグ1が内張り3の裏側まで回り込みやすい。そのため境界部10での局部溶損は、スラグライン6やメタルライン7での局部溶損と比べて漏銑事故等の大事故につながりやすい。
【0012】
従って本発明の目的は、スラグライン部及びメタルライン部での局部溶損に対して十分な耐用性を有するとともに、スラグライン部とメタルライン部との境界部での局部溶損も抑制できる高炉出銑樋用内張り及びその形成方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、ゾーンライニング施工された高炉出銑樋用内張りにおいて、炭化珪素を主材とする耐火物からなるスラグライン部とスピネルを主材とする耐火物からなるメタルライン部との間に中間部を設け、前記中間部を耐スラグ性を有するとともにスピネルに対する反応性が低い耐火物で形成することにより、スラグライン部及びメタルライン部での局部溶損に対して十分な耐用性を有するとともに、スラグライン部とメタルライン部との境界部での局部溶損も抑制できることを見出し、本発明に想到した。
【0014】
すなわち、本発明の高炉出銑樋用内張りは上から順にスラグライン部と、中間部と、メタルライン部とを有し、前記スラグライン部は炭化珪素含有量が75質量%以上のアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物からなり、前記中間部は炭化珪素含有量が10〜70質量%のアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物からなり、前記メタルライン部はアルミナ・マグネシア系スピネル含有量が10〜70質量%のアルミナ−スピネル−炭化珪素−炭素質不定形耐火物からなることを特徴とする。
【0015】
本発明の高炉出銑樋用内張りの形成方法は、下から順に、アルミナ・マグネシア系スピネル含有量が10〜70質量%のアルミナ−スピネル−炭化珪素−炭素質不定形耐火物の混練物を施工してメタルライン部を形成し、炭化珪素含有量が10〜70質量%のアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物の混練物を施工して中間部を形成し、次いで炭化珪素含有量が75質量%以上のアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物の混練物を施工してスラグライン部を形成することを特徴とする。
【0016】
本発明の高炉出銑樋用内張りの形成方法において、前記スラグライン部、前記中間部及び前記メタルライン部の施工を、各不定形耐火物の混練物を型枠に流し込み、養生及び乾燥することにより行うのが好ましい。
【0017】
また本発明の高炉出銑樋用内張りの形成方法において、前記スラグライン部、前記中間部及び前記メタルライン部の施工を、各不定形耐火物の混練物を圧送ポンプで吹付けノズルまで圧送し、出銑樋に吹付けノズルで圧搾空気及び急結剤とともに吹付け、養生及び乾燥することにより行うのが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の高炉出銑樋用内張りは、図1に示すように上から順にスラグライン部8、中間部11及びメタルライン部9の三層からなる。スラグライン部8、中間部11及びメタルライン部9の厚み(高さ方向の厚み)は、高炉出銑樋の使用時に各溶損メカニズムに対して最適な組成の不定形耐火物層が位置しているように、設定するのが好ましい。
【0019】
[A] 不定形耐火物
スラグライン部8には、耐スラグ性及び耐熱スポール性に優れた炭化珪素を主材とするアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物を使用し、中間部11には耐スラグ性を有するとともにスピネルに対する反応性が低くなるように炭化珪素含有量を調整したアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物を使用し、メタルライン部9には耐溶銑性及び耐FeO性を有するスピネルを主材としたアルミナ−スピネル−炭化珪素−炭素質不定形耐火物を使用する。各不定形耐火物は、上記主成分の他に耐火性骨材、耐火性超微粉及びアルミナセメント等の耐火材と、分散剤等の添加剤を含有する。
【0020】
まず各不定形耐火物の主成分について説明し、次いでその他の耐火材及び添加剤について説明する。
【0021】
(1) スラグライン部用不定形耐火物
この不定形耐火物は、アルミナと炭化珪素と炭素とを主成分とし、炭化珪素含有量は75質量%以上である。この不定形耐火物における炭化珪素の含有量は(炭化珪素/耐火組成物)×100質量%であり、この耐火組成物は主成分の他に、その他の耐火性骨材及び耐火性超微粉並びにアルミナセメントを含む。炭化珪素含有量を75質量%以上とすることにより、耐スラグ性及び耐スポーリング性に優れた不定形耐火物とすることができる。
【0022】
(イ) 炭化珪素
本発明に使用する炭化珪素は純度(SiC 含有量)が85%以上、好ましくは90%以上のものである。炭化珪素の含有量は、耐火組成物全体を100質量%として75質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。炭化珪素の含有量が75質量%未満では耐スポーリング性や耐スラグ性の向上効果が十分でない。炭化珪素の粒径は10 mm以下が好ましい。粒径が10 mm超になると、流し込み施工を行う場合の流動性が悪化したり、形成されたスラグライン部の緻密性が悪化したりする恐れがある。炭化珪素の粒径の下限は限定的ではなく、10μm以下の超微粉状であっても良い。また1〜10 mmの粒径の炭化珪素粒子と1mm 以下の粒径の炭化珪素粉末とを混合して使用しても良い。
【0023】
(ロ) アルミナ
アルミナとしては電融アルミナ、焼結アルミナ及び仮焼アルミナを使用するのが好ましい。アルミナの含有量は耐火組成物全体を100質量%として2.5 〜15質量%が好ましい。アルミナの粒径は10 mm以下が好ましい。アルミナの粒径の下限は限定的ではなく、10μm以下の超微粉状であっても良い。また1〜10 mmの粒径のアルミナ粒子と1mm 以下の粒径のアルミナ粉末とを混合して使用しても良い。
【0024】
(ハ) 炭素
炭素としてはカーボンブラック、ピッチ、黒鉛及びコークスを使用するのが好ましい。炭素の含有量は耐火組成物全体を100質量%として0.5 〜5質量%が好ましい。炭素の粒径は10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0025】
(2) 中間部用不定形耐火物
この不定形耐火物は、アルミナと炭化珪素と炭素とを主成分とし、炭化珪素の含有量は10〜70質量%であり、好ましくは30〜68質量%である。炭化珪素の含有量の算出方法は、スラグライン部用不定形耐火物の場合と同じく(炭化珪素/耐火組成物)×100質量%である。この耐火組成物は主成分の他に、その他の耐火性骨材及び耐火性超微粉並びにアルミナセメントを含む。炭化珪素の含有量が10質量%未満だと耐スラグ性が低く、70質量%を超えるとメタルライン部用耐火物中のスピネルと反応して低融点化合物を多量に生成させ、メタルライン部用耐火物の溶損量が著しく増える。炭化珪素含有量を10〜70質量%とすることにより、耐スラグ性とスピネルに対する低反応性とを両立させることができる。なお炭化珪素の純度及び粒径についてはスラグライン部用不定形耐火物と同じである。
【0026】
その他の主成分のうちアルミナの種類及び粒径についてはスラグライン部用不定形耐火物と同様である。但しアルミナの含有量は耐火組成物全体を100質量%として15 〜35質量%が好ましい。またその他の主成分のうち炭素の種類、粒径及び含有量についてはスラグライン部用不定形耐火物と同様である。主成分以外の成分についてはスラグライン部用不定形耐火物と同様である。
【0027】
(3) メタルライン部用不定形耐火物
この不定形耐火物は、アルミナとアルミナ・マグネシア系スピネルと炭化珪素と炭素とを主成分とし、アルミナ・マグネシア系スピネル含有量は10〜70質量%であり、好ましくは30〜60質量%である。この不定形耐火物におけるスピネルの含有量は(スピネル/耐火組成物)×100質量%である。この耐火組成物は主成分の他に、その他の耐火性骨材及び耐火性超微粉並びにアルミナセメントを含む。
【0028】
スピネルとしては電融スピネル及び焼結スピネルを使用するのが好ましい。スピネルの含有量が10質量%未満では耐溶銑性及び耐FeO性が低下し、70質量%を超えると耐熱スポール性が低下する。スピネル含有量を10〜70質量%とすることにより、耐溶銑性及び耐FeO性に優れた不定形耐火物とすることができる。
【0029】
スピネルの粒径は10 mm以下が好ましい。スピネルの粒径の下限は限定的ではなく、10μm以下の超微粉状であっても良い。また1〜10 mmの粒径のスピネル粒子と1mm 以下の粒径のスピネル粉末とを混合して使用しても良い。
【0030】
その他の主成分のうち炭化珪素及びアルミナに関して、炭化珪素の純度及び粒径、並びにアルミナの種類及び粒径についてはスラグライン部用不定形耐火物と同様である。但し炭化珪素の含有量は耐火組成物全体を100質量%として10 〜20質量%が好ましく、アルミナの含有量は耐火組成物全体を100質量%として15 〜25質量%が好ましい。またその他の主成分のうち炭素の種類、粒径及び含有量についてはスラグライン部用不定形耐火物と同様である。主成分以外の成分についてはスラグライン部用不定形耐火物と同様である。
【0031】
(4) その他の耐火材
(イ) 主成分以外の耐火性骨材
主成分以外の耐火性骨材としてはムライト、シャモット、ジルコン、ジルコニア、珪石、ろう石等を挙げることができる。耐火性骨材の粒径は10 mm以下であるのが好ましい。
【0032】
(ロ) 主成分以外の耐火性超微粉
主成分以外の耐火性超微粉としては、シリカ、チタニア、ムライト、ジルコニア、粘土、珪石、ろう石等が挙げられる。耐火性超微粉の粒径は10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0033】
(ハ) アルミナセメント
必要に応じて添加するアルミナセメントとしては、JIS の1種、2種及び3種クラスが適している。各不定形耐火物において、アルミナセメントの含有量は耐火組成物全体を100質量%として0.5〜8質量%が好ましく、1〜6質量%がより好ましい。0.5 質量%未満では強度発現が十分ではなく、8 質量%を超えると耐蝕性が低下する恐れがある。
【0034】
(5) 添加剤
(イ) 分散剤
分散剤としては、ヘキサメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ等の縮合リン酸塩、β−ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アミノスルホン酸及びその塩、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリカルボン酸及びその塩、オキシカルボン酸及びその塩等が好ましく、これらを1種又は2種以上配合して使用することができる。分散剤の添加量は、不定形耐火物全体を100質量%として0.01〜1質量%(外掛け)であるのが好ましい。分散剤の添加量が0.01質量%未満では耐火組成物に対する充分な分散効果が得られず、また1質量%超では最適な分散状態とならない。
【0035】
(ロ) その他の添加剤
その他の添加剤としては、可使時間及び硬化時間調整のための硼酸、リン酸、オキシカルボン酸、炭酸アルカリ塩等の各種添加剤、靭性向上のための無機あるいは金属などの繊維、乾燥爆裂防止のための金属アルミニウム粉末、オキシカルボン酸塩あるいは有機繊維などを添加することができる。さらに金属シリコン、フェロシリコン等の粉末状焼結助材、炭化ホウ素等の酸化防止材も使用できる。
【0036】
[B] 各部の厚み
図2は高炉出銑樋用内張りの中間部11及びメタルライン部9の厚み(高さ方向の厚み)と、スラグライン6及びメタルライン7の高さ等との関係を示す。なお12は排滓口を示し、13はダンパーを示す。矢印の方向に進行するスラグ1はダンパー13により進行を妨げられて、排滓口12より排出され、熔銑2のみ立ち上り部14を進行する。
【0037】
メタルライン7での局部溶損は主として樋先の立ち上り部14とほぼ同じ高さ(ライン17の高さ)で起こるので、図2に示すように、メタルライン部9の高さ(メタルライン部9と中間部11との境界16)を立ち上り部14の高さ(ライン17の高さ)より僅かな距離D1だけ上にするのが好ましく、距離D1は50 mm以下であるのが好ましい。距離D1が50 mm超であると、スラグライン部8の下限(スラグライン部8と中間部11との境界15)の位置は決まっているので、中間部11に十分な厚みを確保できない。
【0038】
中間部11の厚みD2は樋の大きさによって異なるが、一般的に30〜200 mmとするのが好ましい。中間部11の厚みD2を30 mm未満にすると、スラグライン部8とメタルライン部9が近くなり過ぎ、中間部11とメタルライン部9との境界16付近でメタルライン部9の溶損が増加する恐れがある。一方厚みD2を200 mm超にすると、スラグライン部8と中間部11との境界15がスラグライン6に近くなり過ぎ、スラグライン6での局部溶損を抑制することができなくなる。
【0039】
[C] 施工方法
本発明の高炉出銑樋用内張りにおいては、下から順にメタルライン部9、中間部11及びスラグライン部8を施工する。各部の施工方法には特に限定はなく、施工する樋の性状に応じて、流し込み施工、湿式吹付け施工、ラミング施工等の施工方法を実施することができる。但し施工の容易性、得られる施工体の緻密さ等の面から流し込み法及び湿式吹付け法が好ましい。湿式吹付け法の場合、例えば特許2,831,976号に開示の方法を用いれば良い。
【0040】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1
敷部からの高さが1,000 mmの高炉出銑樋に対して、表1に示す不定形耐火物(I)〜(III)を用いて、流し込み施工方法により内張りを形成した。表1に示す各不定形耐火物(I)〜(III)に表2に示す量の混練水を添加し、ボルテックスミキサーで3分間混練した。得られた各不定形耐火物 (III)、(II)及び(I)の混練物を、樋に設置した型枠内に下から順に流し込み、24時間養生後脱枠した。各部の厚みは表2に示す通りであった。
【0042】
実施例2
実施例1と同じ高炉出銑樋に対して、表1に示す不定形耐火物(I)〜(III)を用いて、湿式吹付け施工方法により内張りを形成した。表1に示す不定形耐火物(I)〜(III)に表2に示す量の混練水を添加し、ミキサーで混練した。得られた各不定形耐火物(III)、(II)及び(I)の混練物を圧送ポンプで吹付けノズルまで圧送し、吹付けノズルで圧搾空気及び水ガラス水溶液(急結剤、添加量:0.6質量%(外掛け)、濃度:40質量%)を混入し、高炉出銑樋の内面に下から順に吹付け、24時間養生した。各部の厚みは表2に示す通りであった。
【0043】
比較例1
実施例1と同じ高炉出銑樋に対して、表1に示す不定形耐火物(I)及び(III)を用いて、流し込み施工方法により内張りを形成した。表1に示す不定形耐火物(I)及び(III)に表2に示す量の混練水を添加し、ミキサーで混練した。得られた各不定形耐火物(III)、(I)の混練物を樋に設置した型枠内に下から順に流し込み、24時間養生後脱枠した。各部の厚みは表2に示す通りであった。
【0044】
【表1】
Figure 0003721387
【0045】
【表2】
Figure 0003721387
【0046】
実施例1,2及び比較例1で得られた各出銑樋に対して、以下の測定を行った。
(1) 溶損速度:各出銑樋で60,000 トンの通銑を行い、それぞれ樋の敷部から400 mmの位置A、敷部から500 mmの位置B、及び敷部から700 mmの位置Cで溶損厚を計測し、溶損速度(通銑量1,000 t当りの溶損厚)を求めた。結果を表3に示す。
(2) 最大通銑量:各出銑樋の内張りにおいて、いずれかの溶損部位で残厚が100 mmとなった時の通銑量を最大通銑量とした。
【0047】
【表3】
Figure 0003721387
【0048】
表3に示すように、実施例1及び2の三層構造の内張りでは、位置A〜Cにおける溶損速度が小さく、最大通銑量も大きかった。従って実施例1及び2の内張りでは、ほぼスラグライン6に相当する位置C及びメタルライン7に相当する位置Aのみならず、ほぼメタルライン部9と中間部11との境界16に相当する位置Bでも局部溶損が少なく、優れた耐用性を有することが分かった。
【0049】
これに対し、従来の二層構造を有する比較例1の内張りでは、ほぼメタルライン7に相当する位置A及びほぼスラグライン6に相当する位置Cにおける溶損速度は小さいものの、ほぼスラグライン部8とメタルライン部9との境界に相当する位置Bでの溶損速度が大きく、実施例1及び2に比べて最大通銑量が著しく劣っていた。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、高炉出銑樋用内張りを、耐スラグ性及び耐熱スポール性に優れた炭化珪素を主材とするアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物からなるスラグライン部、耐スラグ性を有するとともにスピネルに対する反応性が低くなるように炭化珪素含有量を調整したアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物からなる中間部、及び耐溶銑性及び耐FeO性を有するスピネルを主材としたアルミナ−スピネル−炭化珪素−炭素質不定形耐火物からなるメタルライン部の三層構造とすることによって、スラグライン部とメタルライン部との境界部での局部溶損を大幅に低下することができる。その結果、樋材を高寿命化できるとともに漏銑による不測の事故を減少させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の内張りを有する高炉出銑樋を示す幅方向の横断面図及びその部分拡大図である。
【図2】 図1のA−A断面図であって、高炉出銑樋の長さ方向の横断面を示す。
【図3】 従来の内張りを有する高炉出銑樋を示す幅方向の横断面図及びその部分拡大図である。
【図4】 従来の二層内張り構造を有する高炉出銑樋を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・・スラグ
2・・・溶銑
3・・・内張り
4・・・裏張煉瓦
5・・・鉄皮
6・・・スラグライン
7・・・メタルライン
8・・・スラグライン部
9・・・メタルライン部
10・・・局部溶損
11・・・中間部
12・・・排滓口
13・・・ダンパー
14・・・樋先の立ち上り部
15・・・スラグライン部と中間部との境界
16・・・中間部とメタルライン部との境界
17・・・樋先の立ち上がり部の高さを示すライン

Claims (4)

  1. 上から順にスラグライン部、中間部及びメタルライン部を有する高炉出銑樋用内張りであって、前記スラグライン部は炭化珪素含有量が75質量%以上のアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物からなり、前記中間部は炭化珪素含有量が10〜70質量%のアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物からなり、前記メタルライン部はアルミナ・マグネシア系スピネル含有量が10〜70質量%のアルミナ−スピネル−炭化珪素−炭素質不定形耐火物からなることを特徴とする高炉出銑樋用内張り。
  2. 上から順にスラグライン部、中間部及びメタルライン部を有する高炉出銑樋用内張りを形成する方法であって、下から順に、アルミナ・マグネシア系スピネル含有量が10〜70質量%のアルミナ−スピネル−炭化珪素−炭素質不定形耐火物の混練物を施工して前記メタルライン部を形成し、炭化珪素含有量が10〜70質量%のアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物の混練物を施工して前記中間部を形成し、次いで炭化珪素含有量が75質量%以上のアルミナ−炭化珪素−炭素質不定形耐火物の混練物を施工して前記スラグライン部を形成することを特徴とする高炉出銑樋用内張りの形成方法。
  3. 請求項2に記載の高炉出銑樋用内張りの形成方法において、前記スラグライン部、前記中間部及び前記メタルライン部の施工を、各不定形耐火物の混練物を型枠に流し込み、養生及び乾燥することにより行うことを特徴とする高炉出銑樋の内張り形成方法。
  4. 請求項2に記載の高炉出銑樋用内張りの形成方法において、前記スラグライン部、前記中間部及び前記メタルライン部の施工を、各不定形耐火物の混練物を圧送ポンプで吹付けノズルまで圧送し、出銑樋に吹付けノズルで圧搾空気及び急結剤とともに吹付け、養生及び乾燥することにより行うことを特徴とする高炉出銑樋の内張り形成方法。
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