JP3721087B2 - バイオセンサ型異常水質検出装置 - Google Patents
バイオセンサ型異常水質検出装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3721087B2 JP3721087B2 JP2001043458A JP2001043458A JP3721087B2 JP 3721087 B2 JP3721087 B2 JP 3721087B2 JP 2001043458 A JP2001043458 A JP 2001043458A JP 2001043458 A JP2001043458 A JP 2001043458A JP 3721087 B2 JP3721087 B2 JP 3721087B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- iron
- flow cell
- water
- line
- liquid
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Images
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は浄水場、下水処理場の取水口における有害物質の混入を検知し、警報を発するバイオセンサ型異常水質検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
浄水場では河川水を取水し、これを沈殿濾過層を通して飲料水を生成している。このような通常の処理では除去できない各種の重金属、農薬、環境ホルモン等の有害物質が河川水中に混入した場合は、取水停止という非常事態となる。一方、突発的事故により、工場あるいは化学プラントにおいて、各種の重金属イオン、有機溶媒、ヒ素シアン等が下水中に混入し、このような下水が下水処理場へ流入することがある。この場合は、下水処理プロセスにおける活性汚泥微生物が大きな阻害を受け、活性汚泥の活性が低下して処理能力の回復までに多大な時間を必要とする。従って、浄水場あるいは下水処理場において、各種の有害物質の混入した流入水を迅速かつ感度良く検出する装置が望まれている。
【0003】
このため浄水場では魚行動監視型の毒物検出装置を取出口に設置したり、各種の微生物膜を溶存酸素電極に取り付けその呼吸活性の測定から毒物を検出する装置を設置している。他方、下水処理場においては、特定化学物質の混入した排水を検知する各種のセンサを設置している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
浄水場に設置されている魚行動監視型の毒物検出装置は、魚類が毒物に反応するまで時間がかかるため、その検出にも長時間を要する。また、魚類の感度も飼育されている魚類の種類、個体差及び環境状態によりかなり異なる。さらにこれらの装置は、装置自体が大掛りであり、魚類の飼育、管理面においての必要経費が大きい。
【0005】
また、微生物膜を酸素電極に取り付けたバイオセンサ型の水質監視装置においては、付与されている微生物は通常中性近傍のpH状態にあるときに活性となる。このため流入する被検水中の有機物等により酸素電極表面が汚れると、洗浄操作を行ってもこの汚れがなかなか取れず、センサ自体の活性が低下してくる。またこれらの有機物が栄養源となるため、酸素電極に付与されているバクテリアの活性が変わるという問題点があった。
【0006】
一方、下水処理場流入水への水質異常を検出するための装置として、シアン、ヒ素、重金属、農薬等の特定の化学物質を対象とした装置が考案されているが、広範な有害物質を検出できる装置は開発されていないのが実情である。
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、有害物質の混入を確実に検出することができるバイオセンサ型異常水質検出装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸素電極と、この酸素電極の先端に取付けられ鉄酸化細菌を保持したメンブレムフィルターとからなり、有機物質の混入を検出するとともに、互いに並列に配置された少なくとも一対のフローセルと、洗浄液を収納する洗浄液タンクと、鉄液を収納する鉄液タンクと、被検水を収納する取水タンクと、洗浄液タンクから各フローセルへ洗浄液を供給する洗浄液ラインと、鉄液タンクから各フローセルへ鉄液を供給する鉄液ラインと、取水タンクから各フローセルへ被検水を供給する被検水ラインと、各フローセル、洗浄液ライン、鉄液ラインおよび被検水ラインを駆動制御する制御部とを備え、制御部は、一方のフローセルを測定状態とした場合に、他方のフローセルを洗浄状態とし、同時に一方のフローセル側へ鉄液ラインを介して鉄液を供給するとともに被検水ラインを介して被検水を供給し、他方のフローセル側へ洗浄液ラインを介して洗浄液を供給するとともに被検水ラインを介して被検水を供給することを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0009】
このように一対あるいはそれ以上の複数対のフローセルを並列して配置しておき、一方のフローセルが測定状態にある時、他方のフローセルは洗浄状態にあるように相補的に運転される。フローセルが測定状態にある時、常時鉄液がフローセルに供給されるので、鉄液ラインは鉄酸化物により徐々に汚れてくる。この汚れはフローセル内でFe2+が鉄細菌により酸化されてFe3+を生じるため、フローセル出口側でより顕著となる。
【0010】
さらに、酸素電極面に鉄酸化物が蓄積すると、メンブレムフィルターに到達する酸素濃度が低下するため、酸素電極のスパン電流が低下してくる。このためフローセルを定期的に酸洗浄して汚れを除去する必要がある。このため、一方のフローセルを測定状態にしておき、この間他方のフローセルを洗浄状態として洗浄する。
【0011】
以上は一対のフローセル間で交互に測定、洗浄を繰り返すように構成したものであるが、並列して運転するフローセルの台数を3台、4台と増していけば洗浄、測定の周期を自在に変更でき、複数個のセルで測定状態とすることも可能となるので測定精度が向上する。
【0012】
このような構成で配置したフローセルにおいて、鉄液が流通している測定状態にあるセルに対して、水溶性の有害物質が被検水に混入した場合、酸素電極の出力電流が上昇することにより有害物質の混入を検知し、この値が一定値以上となった時警報を発する。
【0013】
また本発明において、酸素電極へ微生物膜を装着する際、例えばセルロース混合エステル型のメンブレムフィルター(孔径0.5μm以下)を微生物保持体として用い、このメンブレムフィルターをガラスフィルターベース付きフィルターホルダーに載せ、ここにガラスファネルを置いてクランプにて保持し、所定量の鉄酸化細菌を含んだ液をファネルに入れ、これを真空ポンプにて吸引濾過することによりメンブレムフィルターへの鉄細菌を付与する。
【0014】
また本発明は、鉄液は硫酸酸性の硫酸第一鉄溶液からなり、この硫酸第一鉄溶液は、無機金属イオンとして、K,Mg,Caの塩を含み、同時に一定量の硫酸アンモニウムを含んでいることを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0015】
鉄酸化細菌はエネルギー源であるFe2+が酸性条件下において比較的安定に存在できることから一般にpH3以下の酸性環境下に生育している。代表的な鉄酸化細菌であるThiobacillus ferrooxidans は米国東部の炭鉱の酸性坑内水から分離・同定されたグラム陰性細菌であり、CO2を炭素源とし、Fe2+を酸化することによりエネルギーを獲得する独立栄養細菌であることが知られている。T.ferrooxidansはK,Mg,Caの塩を含み、その他一定量の硫酸アンモニウムを含んだ培地(pH3)で30℃で培養される。従って鉄細菌が生育していくにはこれら数種の無機金属を含んだ鉄液が供給されねばならない。
【0016】
本装置では測定状態にあるフローセルに対して、それぞれ一定の流量で吸い上げられる被検水と鉄液が混合された液が送液される。それぞれの流量は被検水がおよそ100〜200ml/min.、鉄液が3〜6ml/min.であるので混合されてフローセルの酸素電極部に到達した時、混合された液のpHが鉄細菌の至適pH(最適pH)である3近傍の値になるには鉄液のpHは通常2以下(1.6〜1.9)にあることが望ましい。
【0017】
本発明は、取水タンクに濾過装置を設けたことを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0018】
浄水場の取水口においては、枯葉、木片、砂(泥)、小石、糸くず、ガラス片、微生物等が流入水に混入してくる可能性がある。これらが直接被検水ラインに送り込まれると、この被検水ラインは内径1mm前後の細いものであるので入口部の目詰まりをおこして送液ができなくなる。そのため被検水が装置に入る前にこれらの異物を完全に除去しておく必要がある。このため被検水が装置に入る前に濾過装置を通す。
【0019】
本発明は、濾過装置は内蔵された中空糸膜を有することを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0020】
取水した被検水をこの濾過装置を通すことによりフローセルが順調に運転でき、可溶性の有害物質が存在する場合これを検出できる。
【0021】
本発明は、濾過装置は定期的に自動洗浄して用いることを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0022】
この場合、中空糸膜内の異物を除去し、長期に亘って濾過装置が正常に作動するようにすることができる。自動洗浄の方法としては、一定時間サンプル水を取水後、濾過水出口部方向より一定圧の空気をコンプレッサーにより供給するという方法、あるいは一定圧の水流を供給する等の方法がある。
【0023】
本発明は、各フローセル内のpHが鉄酸化細菌棲息の最適pH値となるよう、鉄液および洗浄液のpHが一定の値に設定され、制御部により洗浄液ライン中の洗浄液、鉄液ライン中の鉄液および被検液中の被検液の量が調整されることを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0024】
本発明によれば、鉄液と被検水、洗浄液と被検水の混合された後のpHが鉄細菌の至適pHである2.5〜3.5に保たれるように、双方の液の流量が調節される。鉄液および洗浄液の消費量をできる限り小さく抑え、かつ鉄液ラインおよび洗浄液ラインを順調に作動させるためには鉄液、洗浄液の流量はおよそ3〜6ml/min.確保しなければならない。鉄液のpHは2以下であり、被検水のpHは中性付近の値であるので、混合された状態でpH3近傍の値になるには被検水をおよそ100〜200ml/min.で流通する。これらの流量の値は鉄液ラインおよび洗浄液ラインの性能、被検水のpH等の条件に作用されるので適宜調整する必要がある。
【0025】
本発明は、各フローセル内の温度は鉄酸化細菌棲息の至適温度である30±5℃に保たれていることを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0026】
本発明は、各フローセルに、水を供給する水供給ラインを接続し、制御部は鉄液が流れている時及び洗浄液が流れている時の初期において、フローセル内に水を流してゼロ電流およびスパン電流の校正を行うようにしたことを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0027】
ここでゼロ電流とは鉄液が流通した測定状態での電流値をいい、スパン電流とは洗浄液を流通した洗浄状態での電流値をいい、有害物質が混入していない正常な状態での溶存酸素電極の出力電流を被検水の測定に先立って計測しておき、この値を基準値として被検水の状態を測定する。
【0028】
本発明は、鉄液タンクは密閉型のポリエチレン製あるいはテフロン製のバッグからなり、鉄液はこのバックから鉄液ラインに設けられたチューブポンプにより外気にふれることなく一定流量ずつフローセルに送液されることを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0029】
鉄液はpH2以下の硫酸酸性の硫酸鉄溶液であることが好ましい。溶解している鉄は2価のイオン(Fe2+)であり、これは空気にふれると容易に3価のイオン(Fe3+)に酸化されてしまう。このような酸化された状態では鉄細菌の栄養源にならないだけでなく、沈殿析出して鉄液ラインを詰まらせる原因となる。このため上記のような密閉型容器に入れ、ここからチューブポンプにより外気にふれることなく吸引してフローセルに送液する。このことにより長期運転を安定して継続することができる。
【0030】
本発明は、各フローセルには排出液ラインが接続され、この排出液ラインに希釈ラインが取付けられ、各フローセルからの排出液は希釈ラインからの希釈液により希釈されてそのpHが6以上となるようにして排出されることを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置である。
【0031】
フローセルから排出される排出液はそのpHが3近傍という酸性水であるので、これを希釈液、例えば取水時の水の分岐水により希釈して中性付近のpHに戻して排出する。このことにより、排出液は浄水場の取水口、あるいは河川を汚染することがなくなる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本発明によるバイオセンサ型異常水質検出装置の一実施の形態を示す図である。
【0033】
図1に示すように、バイオセンサ型異常水質検出装置は、有害物質の混入を検出する一対のフローセル33,34と、循環タンク37とを備え、循環タンク37はフローセル33に循環ライン38,39を介して接続されるとともに、フローセル34に循環ライン40,41を介して接続されている。
【0034】
各フローセル33,34は、いずれもタンク33a,34aと、タンク33a,34a内に収納された酸素電極35,36と、酸素電極35,36に取付けられたメンブレムフィルター35a,36aとを有している。このうちメンブレムフィルター35a,36aは鉄酸化細菌を保持するものである。
【0035】
また各フローセル33,34の酸素電極35,36には、イオンメーター42,43が各々接続され、これらのイオンメーター42,43は制御部44に接続されている。
【0036】
一方、洗浄液(H2SO4)溶液を収納する洗浄液タンク1と、鉄液(FeSO4溶液)を収納する鉄液タンク2と、水(H2O)を収納する水タンク3と、取水された被検液を収納する取水タンク4とが設けられている。このうち取水タンク4内には、中空糸膜からなる濾過装置4aが設置されている。
【0037】
また、洗浄液タンク1は、配管7,9、ピンチバルブ15,17、配管チューブ23,24、チューブポンプ27,28および配管31,32を介して、フローセル33,34に接続されている。この場合、洗浄液タンク1からフローセル33,34までのラインにより洗浄液ラインが構成される。
【0038】
また鉄液タンク2は、配管8,10、ピンチバルブ16,18、配管チューブ23,24、チューブポンプ27,28および配管31,32を介してフローセル33,34に接続されている。この場合、鉄液タンク2からフローセル33,34までのラインにより鉄液ラインが構成される。
【0039】
また水タンク3は、配管11,13、ピンチバルブ19,21、配管チューブ25,26、チューブポンプ29,30および配管31,32を介してフローセル33,34に接続されている。この場合、水タンク3からフローセル33,34までのラインにより水供給ラインが構成されている。
【0040】
さらに、取水タンク4は、配管12,14、ピンチバルブ20,22、配管チューブ25,26、チューブポンプ29,30および配管31,32を介してフローセル33,34に接続されている。この場合、取水タンク4からフローセル33,34までのラインにより、被検水ラインが構成されている。
【0041】
また、取水タンク4には、取水配管6および取水ポンプ5を介して被検水が流入するようになっている。さらにフローセル33,34には、排出液ライン45,46が接続され、この排出液ライン45,46には取水配管6から分岐した分岐配管47,48が接続されている。
【0042】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0043】
2台のフローセル33,34は、図2に示した運転パターンにより運転される。即ち一方のフローセル33が測定状態にある時、他方のフローセル34は洗浄状態にある。すなわち一方のフローセル33が測定状態にある時、鉄液タンク2より配管8、ピンチバルブ16、配管チューブ23、チューブポンプ27、および配管31を経て鉄液が一方のフローセル33へ供給される。この場合、ピンチバルブ16は、閉じた状態にある。
【0044】
一方、被検水は取水配管6および取水ポンプ5により取水タンク4へ濾過装置4aを経て送られる。取水タンク4内の被検水は、配管12、ピンチバルブ20、配管チューブ25、チューブポンプ29および配管31を経てフローセル33に供給され鉄液と混合する。
【0045】
この場合、他方のフローセル34へは、洗浄液タンク1より配管9、ピンチバルブ17、配管チューブ24、チューブポンプ28および配管32を経て洗浄液が供給される。同時に取水タンク4から、配管14、ピンチバルブ22、チューブポンプ30および配管32を経て被検水がフローセル34へ供給され、フローセル34内で洗浄液と混合する。
【0046】
それぞれのフローセル33,34の排出液は、排出液ライン45,46を通して排出される。このとき排出液ライン45,46内の排出液は、取水配管6から分岐した分岐配管47,48中の水により希釈されてpHを中性付近の水に戻してから最終的に排出される。
【0047】
このように2台のフローセル33,34を並列配置し、それらに対して交互に測定、洗浄操作を繰り返す。このことにより周期的にフローセル33,34及び配管ラインを洗浄しながら測定を行うことができるので、フローセル33,34の酸素電極35,36および配管ラインにおいて、鉄酸化物による目詰まりを生じることがなく、長期に亘り連続的に安定してフローセル33,34を運転することが可能となる。
【0048】
この間、フローセル33,34全体は循環タンク37から循環される恒温水により鉄細菌の至適温度である30±0.5℃に保持されている。
【0049】
なお、一対のフローセル33,34を並列配置して運転する例について説明したが、用いるフローセルの台数を増すことにより、配管系は多少複雑になるが、図3に示したように、各フローセル33,34の測定操作の周期を短縮することができるのでより信頼性の高い測定が可能となる。このような構成のバイオセンサ型の異常水質監視装置の有害物質検知原理は、特願平9−198768に記載されたものと略同一である。
【0050】
すなわち、測定状態にあるフローセル33に健全な被検水が流れている場合、メンブレムフィルター35aに付与された鉄細菌はFe2+イオンと水中の溶存酸素を消費して呼吸作用を行う。このためメンブレムフィルター35aを通過して酸素電極35に到達する酸素濃度が低く、イオンメーター42により測定される電流値はほとんどゼロとなる。このとき対極に対して−0.7Vの電圧がイオンメーター42により印加されている。
【0051】
一方、被検水中に有害物質が混入すると鉄細菌の呼吸作用が阻害されたり、死滅するので酸素及びFe2+イオンの消費が抑制され、メンブレムフィルター35aを通過して酸素電極35に到達する酸素濃度が高くなり(溶存酸素濃度と同一レベル)、イオンメーター42により測定される電流値が大きくなる。制御部44はこの測定状態における電流値の上昇をもって異常水質が流入したことを検知し、警報を発する。
【0052】
酸素電極35,36に取り付ける微生物膜の保持体としてのメンブレムフィルター35a,36aの材質は、PTFE(四フッ化エチレン)、疎水性、親水性ポリビニリデン、ポリカーボネート等種々のものがあるが、検討の結果、酸素電極35,36とのなじみの点からセルロース混合エステルタイプが最も適している。メンブレムフィルター35a,36aの孔径は鉄細菌の大きさが〜0.2μmであることから、0.2μm以下となっている。
【0053】
メンブレムフィルター35a,36aへの微生物の取り付け方法は、図示しないガラスフィルターベース付きフィルターホルダーにフィルターを載せ、ここにガラスファネルを置いてクランプにて保持し、所定量の鉄酸化細菌を含んだ液をファネルに入れ、これを真空ポンプにて吸引濾過するものである。このことによりメンブレムフィルター35a,36aへの鉄酸化細菌の保持が行なわれる。
【0054】
鉄酸化細菌の付与量は単位容積当りの菌体数を顕微鏡計測により測定することにより一定量とすることができ、通常108個/cm2程度付与されていれば十分な活性を維持することができる。鉄酸化細菌の生育条件は前記の如く生育可能pH1.3〜4.5、生育温度10〜37℃となっており、培地成分として鉄、アンモニウム塩、リン酸塩、硫酸塩、カリウム、マグネシウムを含む。
【0055】
鉄液として、標準的には純水中にリン酸水素2カリウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硝酸カルシウムをそれぞれ所定量含有した硫酸酸性のpH3近傍の溶液が用いられる。このような鉄液を鉄液タンク2に入れ、チューブポンプ27,28にてフローセル33,34に送液することにより運転が開始される。
【0056】
ところで取水タンク4には濾過装置4aが設けられ、この濾過装置4aにより廃水中の各種の異物、固形成分が除去され、被検水が流通する配管の目詰まりを防止することができる。この濾過装置4aは中空糸膜を内蔵したものを用いており、一定期間使用後は、コンプレッサー(図示せず)により加圧する等の操作により洗浄して用いることにより、常に濾過能力を正常に維持できるようにしてある。この洗浄の条件は本機の設置状態により異なる。
【0057】
図1において、フローセル33,34が鉄酸化細菌の最適な状態を保つよう、鉄液、洗浄液および被検水のpH及び流量が調節される。このため鉄液、洗浄液のpHはそれぞれ1.6〜1.9、0.1〜0.3に調節されており、鉄液の流量はポンプを稼働させるのに最低限の流量を確保した値である3〜6ml/min.となっている。また、被検水の流量はこれに対応して100〜150ml/minの流量となっているが、各液の流量はチューブポンプ27−30の性能により随時変更可能である。
【0058】
鉄液が流れている時及び洗浄液が流れている時の初期において、希釈水として水タンク3からの純水を用いることによりゼロ電流およびスパン電流の校正を行う。ここでゼロ電流とは鉄液が流通した測定状態での酸素電極35,36からの電流値をいい、スパン電流とは洗浄液を流通した洗浄状態での酸素電極35,36からの電流値をいう。有害物質が混入していない正常な状態での酸素電極35,36の出力電流を被検水の測定に先立って計測しておき、この値を基準値として被検水の状態を測定する。
【0059】
洗浄状態においても、長期間運転中には電極35,36表面に徐々に鉄酸化物が蓄積し、溶存酸素の酸素電極35,36への透過が減少してくるため、洗浄時の電流値が徐々に減少してくる。従って測定に入る前に常にこれらの測定を実施しておくことにより微生物膜の経時的変化を補正した形での測定が可能となる。このような自動校正機能を含めた本装置の運転パターンを図2に示す。図2に示すような運転パターンに従って検出装置が稼働し、被検水中に有害物質が混入した場合、制御部44はゼロ電流、スパン電流の値を用いて被検水の汚れの程度(有害物質混入の程度)を次のように定義される水質指数により判定する。
【0060】
水質指数=現在の電流値/(スパン電流−ゼロ電流)
この場合、水質指数が10%以上の値となった時、制御部44が警報を発する。
【0061】
またこのゼロ電流、スパン電流の値を用いて酸化電極35,36自体の劣化度を推定することができ、制御部44はスパン電流−ゼロ電流の値を何段階かに分けて劣化度の指標として用い、酸素電極35,36の交換の目安とする。
【0062】
すなわち、前述のように酸素電極35,36に鉄酸化物が付着した場合、スパン電流が低下する。また、鉄細菌の活性が低下した場合、ゼロ電流が上昇する。これによりスパン電流とゼロ電流の差は経時的に減少してくる。酸素電極の劣化度の目安は、この原理に基づいている。
【0063】
ところで図1において、鉄液タンク2として、密閉型のポリエチレン製あるいはテフロン製のバックを用いてもよい。このとき、バック内の鉄液を配管8,10および配管チューブ23,24を介して配管31,32から外気にふれることなく一定流量ずつフローセル33,34へ供給することができ、鉄液が酸化されて劣化するのが防止できる。5リットルのテドラバッグを2個並列に用いることにより、約3ヶ月の無保守運転が可能となる。pH0.4の洗浄液については洗浄液タンク1に入れた状態でも酸化による劣化は生じないので、密閉バッグに入れる必要は無く、10リットルの容量で約6ヶ月の無保守運転が可能となる。
【0064】
運転中、フローセル33,34からの排出液は、pHが3近傍の酸性水となっているため、この排出液を取水時の原水からの分岐水により希釈して中性付近のpHに戻して排出する。このことにより排出液が浄水場取水口、あるいは河川を汚染することがない。
【0065】
なお、図1に示す構成において、フローセル33,34の運転の切替、ピンチバルブ15−22の運転の切替およびチューブポンプ27−30の運転の切替は、いずれも制御部44によって行なわれる。
【0066】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、浄水場、あるいは下水処理場の取水口からの被検水中に各種の有害物質が混入した場合、迅速かつ高感度にこれらの有害物質の混入を検出することができる。また、従来型の魚行動監視型の有害物質検知システムに比べて、装置それ自体の価格及びその保守・管理コストを大幅に低く抑えることができ、かつ信頼性の高い有害物質検知システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるバイオセンサ型異常水質検出装置の一実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明によるバイオセンサ型異常水質検出装置の運転パターンを示す図。
【図3】本発明によるバイオセンサ型異常水質検出装置の別の運転パターンを示す図。
【符号の説明】
1 洗浄液タンク
2 鉄液タンク
3 水タンク
4 取水タンク
4a 濾過装置
15,16,17,18,19,20,21,22 ピンチバルブ
27,28,29,30 チューブポンプ
33,34 フローセル
35,36 酸素電極
35a,36a メンブレムフィルター
42,43 イオンメーター
44 制御部
Claims (11)
- 酸素電極と、この酸素電極の先端に取付けられ鉄酸化細菌を保持したメンブレムフィルターとからなり、有機物質の混入を検出するとともに、互いに並列に配置された少なくとも一対のフローセルと、
各フローセルへ洗浄液を供給する洗浄液ラインと、
各フローセルへ鉄液を供給する鉄液ラインと、
各フローセルへ被検水を供給する被検水ラインと、
各フローセル、洗浄液ライン、鉄液ラインおよび被検水ラインを駆動制御する制御部とを備え、
制御部は、一方のフローセルを測定状態とした場合に、他方のフローセルを洗浄状態とし、同時に一方のフローセル側へ鉄液ラインを介して鉄液を供給するとともに被検水ラインを介して被検水を供給し、他方のフローセル側へ洗浄液ラインを介して洗浄液を供給するとともに被検水ラインを介して被検水を供給することを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置。 - メンブレムフィルターへ吸引濾過法により鉄酸化細菌を付与したことを特徴とするバイオセンサ型異常水質検出装置。
- 鉄液は硫酸酸性の硫酸第一鉄溶液からなり、この硫酸第一鉄溶液は、無機金属イオンとして、K,Mg,Caの塩を含み、同時に一定量の硫酸アンモニウムを含んでいることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサ型異常水質検出装置。
- 濾過装置を有し、各フローセルへ被検水を供給する取水タンクを更に備えたことを特徴とする請求項1記載のバイオセンサ型異常水質検出装置。
- 濾過装置は内蔵された中空糸膜を有することを特徴とする請求項4記載のバイオセンサ型異常水質検出装置。
- 濾過装置は定期的に自動洗浄して用いることを特徴とする請求項4または5記載のバイオセンサ型異常水質検出装置。
- 各フローセル内のpHが鉄酸化細菌棲息の最適pH値となるよう、鉄液および洗浄液のpHが一定の値に設定され、
制御部により洗浄液ライン中の洗浄液、鉄液ライン中の鉄液および被検液中の被検液の量が調整されることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサ型異常水質検出装置。 - 各フローセル内の温度は鉄酸化細菌棲息の最適温度である30±5℃に保たれていることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサ型異常水質検出装置。
- 各フローセルに水を供給する水供給ラインを接続し、
制御部は鉄液が流れている時及び洗浄液が流れている時の初期において、フローセル内に水を流してゼロ電流およびスパン電流の校正を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオセンサ型異常水質検出装置。 - 密閉型のポリエチレン製あるいはテフロン製のバッグからなる鉄液タンクを更に備え、鉄液はこのバックから鉄液ラインに設けられたチューブポンプにより外気にふれることなく一定流量ずつフローセルに送液されることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサ型異常水質検出装置。
- 各フローセルには排出液ラインが接続され、この排出液ラインに希釈ラインが取付けられ、各フローセルからの排出液は希釈ラインからの希釈液により希釈されてそのpHが6以上となるようにして排出されることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサ型異常水質検出装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001043458A JP3721087B2 (ja) | 2001-02-20 | 2001-02-20 | バイオセンサ型異常水質検出装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001043458A JP3721087B2 (ja) | 2001-02-20 | 2001-02-20 | バイオセンサ型異常水質検出装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002243698A JP2002243698A (ja) | 2002-08-28 |
JP3721087B2 true JP3721087B2 (ja) | 2005-11-30 |
Family
ID=18905616
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001043458A Expired - Lifetime JP3721087B2 (ja) | 2001-02-20 | 2001-02-20 | バイオセンサ型異常水質検出装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3721087B2 (ja) |
Families Citing this family (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4594764B2 (ja) * | 2005-03-03 | 2010-12-08 | 株式会社東芝 | 水質計測用の前処理装置 |
JP4521319B2 (ja) * | 2005-06-17 | 2010-08-11 | 株式会社東芝 | バイオセンサ型異常水質監視装置 |
JP4982106B2 (ja) * | 2006-04-27 | 2012-07-25 | 株式会社東芝 | 水質検査システム |
JP2008032691A (ja) * | 2006-06-29 | 2008-02-14 | Fuji Electric Systems Co Ltd | 水質監視システムおよび水質監視方法 |
JP4999742B2 (ja) * | 2008-03-18 | 2012-08-15 | メタウォーター株式会社 | 毒性物質検出方法及び毒性物質検出装置 |
WO2009123645A1 (en) * | 2008-04-04 | 2009-10-08 | Arizona Board Of Regents, Acting For And On Behalf Of Arizona State University | Simultaneous electrochemical detection of multiple heavy metal ions in liquid |
JP5230508B2 (ja) * | 2009-03-31 | 2013-07-10 | アズビル株式会社 | 湿度センサの劣化診断方法 |
JP2013002913A (ja) * | 2011-06-15 | 2013-01-07 | Yokogawa Electric Corp | 液体分析装置 |
JP6208036B2 (ja) * | 2014-02-10 | 2017-10-04 | メタウォーター株式会社 | バイオ水質監視装置、水質監視システムおよび水質監視方法 |
-
2001
- 2001-02-20 JP JP2001043458A patent/JP3721087B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002243698A (ja) | 2002-08-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101370689B1 (ko) | 역삼투막 여과 플랜트의 운전 방법, 및 역삼투막 여과 플랜트 | |
JP2008032691A (ja) | 水質監視システムおよび水質監視方法 | |
US9856160B2 (en) | Biological two-stage contaminated water treatment system | |
JP3721087B2 (ja) | バイオセンサ型異常水質検出装置 | |
CN212198868U (zh) | 一种节能水处理设备 | |
JP5129463B2 (ja) | 水質異常検出法 | |
CN108773945A (zh) | 基于edr膜堆的净化系统及净水机 | |
WO2011010902A2 (ko) | 수소수 공급장치 및 수소수를 이용한 수경재배용 양액 공급 및 회수장치 | |
JP2008286534A (ja) | バイオセンサ型異常水質検出装置 | |
CN213895296U (zh) | 一种便于tds调控的净水系统和净水设备 | |
WO2013129111A1 (ja) | 造水方法 | |
JP4982106B2 (ja) | 水質検査システム | |
CN210953907U (zh) | 一种污水处理厂进水毒性在线检测装置 | |
JP2014193452A (ja) | 有機性汚水の処理方法 | |
CN113003775A (zh) | 一种hmf废水处理回用系统 | |
JPH11179173A (ja) | 膜分離装置の運転方法及び膜分離装置 | |
JP3672455B2 (ja) | 異常水質検出装置 | |
JP2004037273A (ja) | 水分析方法及び装置 | |
EP3981746A1 (en) | Water treatment method and equipment for performing this method | |
JPH0735741A (ja) | Bod測定装置 | |
JP2010071749A (ja) | 水質監視装置 | |
JP3514828B2 (ja) | 水浄化システムの運転方法および水浄化装置 | |
JP2010204043A (ja) | 水質監視装置 | |
JPH10290983A (ja) | 膜処理装置の運転方法 | |
JP2014188385A (ja) | 造水方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050822 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050902 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050909 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 3721087 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080916 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090916 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090916 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100916 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110916 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110916 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120916 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120916 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130916 Year of fee payment: 8 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |