JP3720512B2 - 画像処理方法および装置並びにx線ct装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像処理方法および装置並びにX線CT装置に関し、特に、断層撮影装置で撮影した断層像について画像の鮮鋭化を行う画像処理方法および装置の改良、並びにそのような画像処理装置を備えたX線CT装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、X線CT(computed tomography) 装置によって肺野の断層像を撮影した場合、細い血管等の像を見やすくするために、画像の鮮鋭化処理が行われる。画像の鮮鋭化処理には例えばラプラシアン・フィルター(Laplasian filter)等のイメージフィルタ(image filter)が用いられる。イメージフィルタは、そのエッジ(edge)強調作用によって画像の鮮鋭化を行う。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
肺野の断層像は、診断目的に応じて、例えば1〜10mmの範囲で種々のスライス(slice) 厚で撮影される。その場合、あるスライス厚の断層像に適合したイメージフィルタは、他のスライス厚の断層像に対しては必ずしも適合せず、画像の鮮鋭化に過不足が生じる。
【0004】
これは、同一太さの血管でも、スライス厚が変わるとパーシャルボリューム効果の相違により、画像を再構成したときのCT値が変わるためである。例えば、10mmスライスで撮影した血管像のCT値は、1mmスライスで撮影したものに較べてかなり低い値になり、周囲の組織とのコントラスト(contrast)が低下する。したがって、このような10mmスライスの画像の鮮鋭化すなわちエッジ強調に適したイメージフィルターは、1mmスライスの画像に対しては過剰な強調を行うものとなり、かえって画質を低下させる。
【0005】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、スライス厚に応じて適切な鮮鋭化を行う画像処理方法および装置、並びにスライス厚に応じて適切に鮮鋭化された断層画像を得るX線CT装置を実現することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
〔1〕上記の課題を解決する第1の発明は、断層撮影装置で撮影した被検体の断層画像についてイメージフィルターにより画像の鮮鋭化を行うにあたり、前記イメージフィルターのマスク定数を前記断層画像を撮影したときの前記被検体のスライス厚に応じて定めることを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、イメージフィルターのマスク定数を断層画像を撮影したときの被検体のスライス厚に応じて設定し、スライス厚に適合したマスク定数でフィルタリングを行う。このため、スライス厚に応じて適切な鮮鋭化を行う画像処理方法を実現することができる。
【0008】
〔2〕上記の課題を解決する第2の発明は、断層撮影装置で撮影した被検体の断層画像についてイメージフィルターにより画像の鮮鋭化を行う画像処理装置であって、前記イメージフィルターのマスク定数を前記断層画像を撮影したときの前記被検体のスライス厚に応じて定めるマスク定数設定手段を具備することを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、マスク定数設定手段により、イメージフィルターのマスク定数を断層画像を撮影したときの被検体のスライス厚に応じて設定し、スライス厚に適合したマスク定数でフィルタリングする。このため、スライス厚に応じて適切な鮮鋭化を行う画像処理装置を実現することができる。
【0010】
〔3〕上記の課題を解決する第3の発明は、被検体をX線ビームでスライスして得られる透過X線データに基づいて被検体の断層画像を撮影するX線CT装置であって、前記断層画像についてイメージフィルターにより画像の鮮鋭化を行う画像処理手段と、前記イメージフィルターのマスク定数を前記断層画像を撮影したときの前記被検体のスライス厚に応じて定めるマスク定数設定手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、マスク定数設定手段により、イメージフィルターのマスク定数を断層画像を撮影したときの被検体のスライス厚に応じて設定し、スライス厚に適合したマスク定数でフィルタリングする。このため、スライス厚に適合した画像の鮮鋭化が行える。すなわち、スライス厚に応じて適切に鮮鋭化された断層画像を得るX線CT装置を実現することができる。
【0012】
第3の発明において、前記マスク定数にリコン関数に基づく補正を加味することが、さらに適切な鮮鋭化を行う点で好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
図1にX線CT装置のブロック図を示す。本装置は本発明の実施の形態の一例である。なお、本装置の構成によって本発明の装置に関する実施の形態の一例が示される。また、本装置の動作によって本発明の方法に関する実施の形態の一例が示される。
【0015】
〔構成〕
本装置の構成を説明する。図1に示すように、X線CT装置100は、操作コンソール(console) 1と、撮影テーブル(table) 10と、走査ガントリ(gantry)20とを具備している。
【0016】
操作コンソール1は、操作者の指示や情報等を入力する入力装置2と、スキャン(scan)や画像再構成および鮮鋭化のための画像処理等を実行する中央処理装置3と、制御信号等を撮影テーブル10や走査ガントリ20へ出力する制御インタフェース(interface) 4と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像等を表示するCRT(cathod-ray tube) 6と、各種のデータや再構成画像およびプログラム等を記憶する記憶装置7とを具備している。中央処理装置3は、例えばコンピュータ等によって構成される。
【0017】
撮影テーブル10は、図示しない被検体を走査ガントリ20のX線照射空間に搬入および搬出するようになっている。撮影テーブル10の進退は制御インタフェース4によって制御される。
【0018】
走査ガントリ20は、X線管30と、X線ビーム(beam)を形成するコリメータ(collimater)50と、検出器アレイ(array) 60と、X線照射のタイミングや照射量を調整するX線コントローラ(controller)21と、コリメータ50のX線通過開口(アパーチャ(aperture))を調整するコリメータコントローラ22と、検出器アレイ60が検出したデータを収集するデータ収集部23と、被検体の体軸の周りにX線管30や検出器アレイ60等を回転させる回転コントローラ24とを具備している。
【0019】
図2に、X線管30およびコリメータ50と検出器アレイ60の相互関係を示す。図2の(a)は正面図、(b)は側面図である。X線管30から放射されたX線は、コリメータ50により偏平な扇状のX線ビームXrに成形され、検出器アレイ60に照射される。
【0020】
X線ビームXrの扇面に体軸を交叉させて被検体が搬入される。この状態を図3に示す。同図に示すように、扇状のX線ビームXrによってスライス(slice)された被検体OBの投影像が検出器アレイ60に投射される。被検体OBのアイソセンタ(isocenter) におけるX線ビームXrの厚みが、スライス厚thを与える。スライス厚thはコリメータ50のアパーチャによって調節される。
【0021】
X線管30、コリメータ50および検出器アレイ60はこの関係を保ったまま被検体OBの周りを回転(スキャン)する。スキャンの1回転当たり複数(例えば1000)のビュー(view)角度で被検体の投影データが収集される。投影データの収集は、検出器アレイ60−データ収集部23−データ収集バッファ5の系統によって行われる。
【0022】
データ収集バッファ5に収集された投影データに基づいて、中央処理装置3により画像再構成が行われる。画像再構成は、1回転のスキャンで得られた例えば1000ビューの投影データを、例えばフィルタード・バックプロジェクション(filtered back-projection)処理すること等により行われる。
【0023】
再構成された画像すなわち被検体OBの断層画像は記憶装置7に記憶される。記憶装置7に記憶された断層画像は、入力装置2を通じて操作者から与えられる指令に応じて読み出され、CRT6に可視像として表示される。
【0024】
中央処理装置3は、例えばラプラシアン・フィルター等で実現される図示しないイメージフィルターを備えている。このイメージフィルターによって、断層画像を鮮鋭化するための画像処理(フィルタリング)が行われる。
【0025】
具体的には、2次元のマスク(mask)と画像データとのコンボリューション(convolution) が行われる。イメージフィルターは中央処理装置3のデータ処理機能によって実現される。中央処理装置3は、本発明における画像処理手段の実施の形態の一例である。
【0026】
中央処理装置3は、イメージフィルターのマスク定数を断層画像のスライス厚に応じて設定する機能を備えている。中央処理装置3は本発明におけるマスク定数設定手段の実施の形態の一例である。
【0027】
例えばマトリクスサイズ(matrix size) が3×3のラプラシアン・フィルターを用いる場合、次式で与えられるマスクが用いられる。
【0028】
【数1】
【0029】
マスクを一般的に、
【0030】
【数2】
【0031】
と表したとき、
【0032】
【数3】
【0033】
の関係を満足するようにマスク定数A,Bが設定される。これによって、Aを定めることによりBが一義的に定まる。
Aを大きく選ぶほどBとの差が拡大してエッジ強調度が増し、画像の鮮鋭化作用が強まる。画像の鮮鋭化のためには、コントラストが低い画像ほどエッジ強調度を高める必要がある。例えば細い血管の像等は、パーシャル・ボリューム効果により、スライス厚が厚いほどコントラストが低下する。そこで、本装置では、スライスが厚い画像ほどエッジ強調度を高めるようにしている。
【0034】
そのために、マスク定数Aの値をスライス厚の増加に応じて増加させるようにしている。すなわち、例えば、図4に示すようにスライス厚thとマスク定数Aの関係が定められる。同図に示すように、マスク定数Aはスライス厚thの関数となり、
【0035】
【数4】
【0036】
で表される。
関数の形は例えば実験的手法によって決定される。具体的には、例えば、同一の元画像についてマスク定数A(およびB)の異なる鮮鋭化処理をそれぞれ施し、得られた各画像の画質を評価することによりAの最適値を決定し、このようにして得られた各スライス厚毎のAの最適値に対して関数フィッティング(fitting) を行うことにより関数が求められる。
【0037】
関数化する代わりに、スライス厚毎のA(およびB)の値をテーブル(table) 化して記憶装置7に記憶するようにしてもよい。これはマスク定数を簡便に求める点で好ましい。それに対して、関数化は任意のスライス厚に対するマスク定数を自在に算出する点で好ましい。
【0038】
〔動作〕
本装置の動作を説明する。スキャンすべきスライス位置、リコン(reconstruction)関数、スライス厚th等のパラメータ(parameter) が入力装置2を通じて操作者により設定される。この設定に基づいて中央処理装置3から制御インタフェース4に指令が与えられる。この指令に基づいて制御インタフェース4は操作ガントリ20および撮影テーブル10を制御してスキャンを実行する。スキャンによって収集された投影データに基づいて断層画像が再構成され、それがCRT6に表示されて診断に供される。
【0039】
表示画像について鮮鋭化が必要なときは、操作者は入力装置2を通じて鮮鋭化処理を指令する。これによって、中央処理装置3により例えばラプラシアン・フィルターを用いた画像鮮鋭化処理が行われる。
【0040】
図5に、鮮鋭化処理のフロー図を示す。以下、同図によって画像鮮鋭化動作を説明する。
動作を開始すると、ステップST1において、スライス厚と再構成関数(リコン関数)に関する情報の取得が行われる。これによって、鮮鋭化処理すべき画像のスライス厚thを示すデータとリコン関数に関する情報が取得される。これらのデータおよび情報は、再構成画像データのいわゆるヘッダー(header)情報として記憶装置7に記憶されており、それらが読み出される。
【0041】
次に、ステップST2において、マスクの作成またはマスクの選択が行われる。マスクの作成は、(4)式に基づいてスライス厚thに対応したマスク定数Aを求め、このAを用いて(3)式によりマスク定数Bを求めてマスクMを決定する。マスクの選択は、記憶装置7に記憶されているテーブルからスライス厚thに対応するマスク定数AおよびBを選んで、マスクMを決定する。
【0042】
このとき、必要に応じてリコン関数に対応したマスクMの補正が行われる。リコン関数は例えばフィルタード・バックプロジェクション用のカーネル(kernel)であり、再構成された元画像の鮮鋭度に影響をおよぼす。そこで、マスクMの決定にリコン関数の特性を反映させる。具体的には、例えば、リコン関数が元画像の鮮鋭度を高める傾向を持つものであるときは、Aの値を減じる方向に補正し、元画像の鮮鋭度を甘くする傾向を持つときは、Aの値を増す方向に補正する。鮮鋭度が中庸な画像を再構成するリコン関数であるときは、とくに補正を行わない。
【0043】
次に、ステップST3において鮮鋭化処理が行われる。すなわち、上記のように作成または選択されたマスクを持つラプラシアン・フィルターにより、画像データのフィルタリングが行われる。
【0044】
次に、ステップST4において、鮮鋭化された画像の表示が行われる。これによって、鮮鋭化された断層像がCRT6に表示される。表示画像は、必要に応じて、図示しないフィルミング(filming) 装置等により写真フィルム等への記録が行われる。
【0045】
以上は、画像の鮮鋭化をX線CT装置の中央処理装置3によって行うようにした例であるが、画像の鮮鋭化は専用の画像処理装置によって行うようにしても良い。
【0046】
その例を図6に示す。本装置は、本発明における画像処理装置の実施の形態の一例である。なお、本装置の構成によって本発明の装置に関する実施の形態の一例が示される。また、本装置の動作によって本発明の方法に関する実施の形態の一例が示される。
【0047】
本装置では、例えばX線CT装置100等の断層撮影装置で撮影した断層画像を画像記憶部201に記憶し、その画像を画像処理部202で鮮鋭化処理するように構成されている。画像処理部202は、例えばコンピュータ等によって構成される。
【0048】
画像処理部202は上述と同様なイメージフィルターを備えている。すなわち、画像処理部202はイメージフィルターの実施の形態の一例である。画像処理部202は、また、上述と同様なマスク定数設定手段を備えている。すなわち、画像処理部202はマスク定数設定手段の実施の形態の一例である。
【0049】
画像処理部202での鮮鋭化処理は、図5に示したフロー図に従って上述と同様にして行われる。鮮鋭化処理された画像は画像記憶部201に記憶され、また、表示部203で表示される。
【0050】
このように専用装置とするのは、異なる断層撮影装置で撮影した断層像を一括して処理する点で好ましい。それに対して、前述のようにX線CT装置に内蔵するのは、装置の物量を削減する点で好ましい。
【0051】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、第1の発明では、イメージフィルターのマスク定数を断層画像を撮影したときの被検体のスライス厚に応じて設定し、スライス厚に適合したマスク定数でフィルタリングを行うようにしたので、スライス厚に応じて適切な鮮鋭化を行う画像処理方法を実現することができる。
【0052】
また、第2の発明では、マスク定数設定手段により、イメージフィルターのマスク定数を断層画像を撮影したときの被検体のスライス厚に応じて設定し、スライス厚に適合したマスク定数でフィルタリングするようにしたので、スライス厚に応じて適切な鮮鋭化を行う画像処理装置を実現することができる。
【0053】
また、第3の発明では、マスク定数設定手段により、イメージフィルターのマスク定数を断層画像を撮影したときの被検体のスライス厚に応じて設定し、スライス厚に適合したマスク定数でフィルタリングするようにしたので、スライス厚に適合した画像の鮮鋭化が行える。すなわち、スライス厚に応じて適切に鮮鋭化された断層画像を得るX線CT装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の一例の装置のブロック図である。
【図2】 本発明の実施の形態の一例の装置におけるX線照射・検出系の模式的構成図である。
【図3】 本発明の実施の形態の一例の装置におけるX線照射・検出系の模式的構成図である。
【図4】 本発明の実施の形態の一例の装置におけるスライス厚とマスク定数との関係を示す図である。
【図5】 本発明の実施の形態の一例の装置の動作を示すフロー図である。
【図6】 本発明の実施の形態の一例の装置のブロック図である。
【符号の説明】
100 X線CT装置
1 操作コンソール
2 入力装置
3 中央処理装置
4 制御インタフェース
5 データ収集バッファ
6 CRT
7 記憶装置
10 撮影テーブル
20 走査ガントリ
21 X線コントローラ
22 コリメータコントローラ
23 データ収集部
24 回転コントローラ
30 X線管
50 コリメータ
60 検出器アレイ
OB 被検体
201 画像記憶部
202 画像処理部
203 表示部
Claims (3)
- 断層撮影装置で撮影した被検体の断層画像についてイメージフィルターにより画像の鮮鋭化を行うにあたり、
前記イメージフィルターのマスク定数を前記断層画像を撮影したときの前記被検体のスライス厚に応じて定める、
ことを特徴とする画像処理方法。 - 断層撮影装置で撮影した被検体の断層画像についてイメージフィルターにより画像の鮮鋭化を行う画像処理装置であって、
前記イメージフィルターのマスク定数を前記断層画像を撮影したときの前記被検体のスライス厚に応じて定めるマスク定数設定手段、
を具備することを特徴とする画像処理装置。 - 被検体をX線ビームでスライスして得られる透過X線データに基づいて被検体の断層画像を撮影するX線CT装置であって、
前記断層画像についてイメージフィルターにより画像の鮮鋭化を行う画像処理手段と、
前記イメージフィルターのマスク定数を前記断層画像を撮影したときの前記被検体のスライス厚に応じて定めるマスク定数設定手段と、
を具備することを特徴とするX線CT装置。
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