JP3719088B2 - 単結晶育成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CZ法(チョクラルスキー法)により単結晶を育成する単結晶育成方法に関し、更に詳しくは、OSFリングが引き上げ単結晶の最外周部より内側に生じるか若しくは中心部で消滅する低速引き上げ条件で実施される単結晶育成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造に使用されるシリコンウエーハは、主にCZ法により育成された単結晶から採取される。CZ法とは、周知の如く、石英坩堝内に収容されたシリコンの原料融液に種結晶を漬け、種結晶及び石英坩堝を逆方向に回転させながら種結晶を引き上げることにより、その下にシリコンの単結晶を育成する方法である。
【0003】
このようなCZ法による育成プロセスを経て製造されたシリコンウエーハは、熱酸化処理を受けたときに、OSF(Oxidation induced Stacking Fault)リングと呼ばれるリング状の酸化誘起積層欠陥を生じることが知られている。OSFリングはそれ自体が半導体素子の特性を劣化させる原因になるだけではなく、リングの外側と内側では物性が異なり、OSFリングの外側には格子間シリコン原子の凝集が原因とされる転位クラスタが発生するが、OSFリングの内側は比較的健全とされている。一方、このOSFリングについては、引き上げ速度が速くなるに連れて単結晶の外周側へ移動することが知られている。
【0004】
このような事情から、これまでは、OSFリングが、デバイス形成の際に有効部から除外される単結晶の最外周部に分布するような高速引き上げ条件で単結晶の育成が行われている。
【0005】
最近、デバイス製造工程が低温化し、高温処理で発生しやすいOSFリングの悪影響が低減されてきたこと、および単結晶が低酸素化してきたこともあって、OSFリングは、デバイス特性を劣化させる因子として、それほど大きな問題にはならなくなってきている。しかし、OSFリングの内側にも問題がないわけではない。この部分には空孔の凝集が原因とされる空孔クラスタが発生している。この欠陥は、赤外線散乱体(COP、FPD)とも呼ばれ、ウエーハ表面をエッチングすると小さなピットとなって現れるが、非常にサイズが小さいため、これまでは特に問題視されることはなかった。しかし、近年の著しい集積度の増大に伴ってパターン幅が非常に微細化したため、高グレードの単結晶ではこの空孔クラスタさえも問題になり、酸化膜耐圧特性を低下させる因子としてその低減が望まれている。
【0006】
この空孔クラスタは、ウエーハ上にシリコン単結晶の薄膜を成長させた所謂エピタキシャルウエーハには殆ど発生しないが、このウエーハは非常に高価であるため、CZ法による単結晶の引き上げで空孔クラスタの少ない単結晶を育成することが要求されるようになり、この観点から、高グレードの単結晶育成では、これまでとは逆に引き上げ速度を遅くし、OSFリングを引き上げ単結晶の最外周部より内側に発生させて欠陥部分を中心部に集中させるか、若しくは中心部で消滅させて歩留まりの改善を図る低速引き上げ法が採用されつつある。
【0007】
しかしながら、この低速引き上げでは、OSFリングの外側に発生する転位クラスタを少なくすることが必要である。なぜなら、OSFリングを結晶中心部に発生させて空孔クラスタの発生領域を抑制しても、その外側の転位クラスタが放置されたままであると、デバイス特性を著しく劣化させてしまうため、高い品質は確保されないからである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題を解決する手段として、例えば、特開平8-330316号公報では、単結晶育成時の引き上げ速度と結晶内の温度勾配を制御することにより、転位クラスタを結晶外周部に発生させることなく、OSFリングの外側領域の無欠陥部分を全面に広げる方法の発明が提示されている。しかし、この方法は非常に限られた育成条件、すなわち極めて狭く限定された面内の温度勾配と引き上げ条件とを要求されるため、引き上げ炉内のホットゾーン構造に大きく支配され、同一の引き上げ炉を使用したとしても、操業過程でホットゾーンを構成する炭素部材が経時変化した場合、一定品質の単結晶を育成することが困難であり、大径化し大量生産を要求される製造現場では採用困難である。
【0009】
また、特開平11-199383号公報では、低速引き上げ条件において、結晶温度が1300℃以上の高温部分で、結晶外周部の温度勾配を結晶中心部の温度勾配の±0.3℃/mm以下に抑制することで、OSFリングの外側での転位クラスタの発生が抑制できることが開示されている。
【0010】
確かに、この方法によれば、単結晶外周部が加熱されることにより、外周部の引き上げ軸方向の温度勾配が小さくなることから、空孔クラスタの基となる空孔の外周部への拡散による消失が抑制され、この空孔と転位クラスタの基となる格子間シリコン原子の数がバランスし、互いに合体・消滅することで、OSFリングの外側での転位クラスタの発生を抑制することができる。
【0011】
しかし、この方法で具体的に採用される手段は、坩堝内の融液面の位置をヒータの上端位置よりも相当下方に位置させることにより、単結晶外周部にヒータの熱が多く当たるようにして外周部の温度勾配を小さくするものであることから、融液面位置や坩堝上端位置よりも上方に突出するヒータ部分が必然的に多くなってしまう。このため、1300℃以下の単結晶部分も積極的に加熱されてしまうため、単結晶が高温に曝される時間が長くなってチャンバーからの不純物汚染を招き、これから製造されるウエーハはライフタイムが低いという問題がある。また、坩堝上端よりも突出するヒータ部分が多くなることから、融液中へのヒータからの炭素汚染が懸念される。
【0012】
一方、本発明者の実験では単結晶の育成条件によっては、転位クラスタは単結晶の外周部に発生せず、単結晶の中心部に発生する場合があることを新たに知見した。詳細は後述するが、近年、単結晶径方向の面内不純物濃度の均一化を図るために、坩堝内の溶融液に水平磁場を印加した単結晶の育成方法が採用されている。この水平磁場を印加した単結晶の育成方法にあっては、融液に印加する磁場強度や単結晶外周部の温度勾配によっては、OSFリングの内側において転位クラスタが発生するという問題があることが判明した。
【0013】
本発明の目的は、低速引き上げにより空孔クラスタ発生領域を結晶中心部に集中あるいは消滅させたときに問題となる単結晶外周部での転位クラスタの発生、および、ある種の水平磁場を印可した場合に問題となる単結晶中心部での転位クラスタの発生を効果的に抑制することができる単結晶育成方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
ところで、特開平9-263484号では、坩堝を加熱するヒータが上下方向に複数設けられている装置を用いて、坩堝内の溶融液の表面高さを最上ヒータの加熱領域内に保持しながら単結晶を育成する方法が提案され、単結晶引き上げ中の全ヒータの出力に対する最上ヒータの出力比率を高めることで、単結晶中の酸素濃度を制御できることが報告されている。
【0015】
この方法によれば、坩堝底部からの酸素溶出量を制御でき、単結晶中の酸素濃度を低くすることができため、酸素濃度制御において有効な技術ではあるものの、単結晶内に発生する空孔や転位クラスタなどの欠陥を低減する対策については何も示されていない。
【0016】
本発明者は、前述したOSFリングが引き上げ結晶の最外周部より内側に生じるか若しくは中心部で消滅する低速引き上げ条件で単結晶を育成した場合に問題となる単結晶内に発生する転位クラスタは、坩堝内溶融液への加熱分布を上下方向で変化させることで、その発生を自由に抑制できることを知見した。
【0017】
本発明は、上記の知見に基づきなされたものであり、本発明の単結晶育成方法は、CZ法を用い、且つOSFリングが引き上げ結晶の最外周部より内側に生じるか若しくは中心部で消滅する低速引き上げ条件で単結晶を育成する単結晶育成方法において、坩堝の周囲を加熱する上下方向に複数分割されたヒータを配設し、これらヒータの出力を調整して単結晶温度が1300℃以上の高温部分における引き上げ軸方向の温度勾配を制御することを特徴とするものである。
【0018】
本発明の単結晶育成方法では、坩堝の周囲に、例えば、上下に2分割した上部ヒータと下部ヒータを設けてこれらの出力を調整することで、単結晶温度が1300℃以上の高温部分への局所的な加熱コントロールが実現できる。しかも、単結晶育成装置内に配置されるホットゾーン構造や採用される引き上げ速度が種々異なるものであっても、その単結晶育成条件に応じて、適正な上部ヒータおよび下部ヒータの出力比率を選択すれば、確実に転位クラスタの発生を防止することができる。さらに、上部ヒータは坩堝上端位置よりも上方に位置する部分が少ないことから、特開平11-199383号公報で問題となるようなライフタイムの低下あるいは炭素汚染などの問題は生じない。
【0019】
本発明の単結晶育成方法では、坩堝の周囲を加熱するヒータは少なくとも2分割以上され、その出力をそれぞれ制御できるものでなければならないが、制御コントロール操作性の観点からは、上下方向に4分割されたヒータ使用までに留めることが望ましい。
【0020】
本発明の単結晶育成方法にあっては、坩堝底部を加熱する底部ヒータを設けて、その出力を調整することが望ましい。これにより、より木目細やかな温度分布を形成することができるとともに、OSFリング内側での転位クラスタの発生を抑制することができる。また、原料溶解時においても底部ヒータの使用により原料を短時間で溶解できるという効果も奏する。
【0021】
本発明の単結晶育成方法にあっては、単結晶温度が1300℃以上の高温部分における、単結晶外周部の引き上げ軸方向の温度勾配をGeとし、単結晶中心部の引き上げ軸方向の温度勾配をGcとしたとき、Gc−Ge=±0.4℃/mm以下になるように、上部ヒータおよび下部ヒータの出力を制御する必要がある。温度差が±0.4℃/mmを超えると、OSFリングの外側あるいは内側に転位クラスタが発生してしまう。
【0022】
本発明の単結晶育成方法では、使用する単結晶育成装置や採用される引き上げ速度が、Gc−Ge=±0.4℃/mm以下を満足しない育成条件であって、OSFリングの外側に転位クラスタが発生する育成条件の場合に、最上部ヒータの出力を増大させることでGc−Ge=±0.4℃/mm以下の育成条件を満足させ、転位クラスタの発生を回避し、OSFリングの内側に転位クラスタが発生する場合に、下部ヒータの出力を増大させることで同育成条件を満足させ、転位クラスタの発生を回避することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係わる単結晶育成方法の説明図である。
【0024】
単結晶育成装置は、メインチャンバ1と、その上面中心部に連結されたブルチャンバ2とを備えている。これらは、軸方向を垂直とした略円筒状の真空容器からなり、図示されない水冷機構を有している。メインチャンバ1の内部には、略中央に位置して坩堝3が配置されると共に、坩堝3の外側に位置してヒータ4および断熱材5が配置されている。このヒータ4は、坩堝3の周囲を加熱する上下2段に分割された円筒状の上部ヒータ4a、下部ヒータ4bと、坩堝3底部を加熱するドーナッツ状の底部ヒータ4cから構成され、これらヒータ4a,4b,4cはそれぞれ独立にヒータ出力を調整できるように構成されている。
【0025】
坩堝3は石英製の内層容器と黒鉛製の外層容器とからなり、回転式かつ昇降式の引き上げ軸7がプルチャンバ2を通して吊り下げられている。
【0026】
単結晶育成を行うには先ず、チャンバを解体した状態で、坩堝3内にシリコンの多結晶原料を装填する。次いでチャンバを組み立て、その内部を真空排気した状態でヒータ4を作動させて、坩堝3内の原料を溶解し、シリコンの原料融液8を得る。その後、坩堝3を上昇させてその上端が上部ヒータ4aの上端位置を超えない高さに位置させて、原料融液8に引き上げ軸7の下端に装着された種結晶を浸漬し、この状態から坩堝3と引き上げ軸7を逆方向に回転させながら引き上げ軸7を上昇させる。これにより種結晶の下端にシリコンの単結晶9が育成される。
【0027】
単結晶9の引き上げに伴って原料融液8の量が減少し融液面レベルが低下するため、坩堝3を上昇させて上部ヒータ4aの設置位置に対して原料融液8の融液面レベルを一定に維持しながら単結晶9を育成する。引き上げられた単結晶9は、その外周囲を囲繞するように設けられた逆円錐台形状の輻射スクリーン10により、引き上げ軸方向に適度な温度勾配が付与されている。ここにおける引き上げ速度は、OSFリングが単結晶の最外周部より内側に生じるか若しくは中心部で消滅する低速度とされる。
【0028】
この装置を使用して、上部ヒータ4aの出力を大きくすることにより、単結晶温度が1300℃以上の高温部分を局所的に加熱することができ、高温部分での単結晶外周部の温度勾配Geが小さくなり、中心部の温度勾配Gcに対して、Gc−Ge=±0.4℃/mm以下に制御され、OSFリングの外側での転位クラスタの発生が抑制される。OSFリングの内側に転位クラスタが発生する育成条件においては、下部ヒータ4bあるいは底部ヒータ4cの出力を大きくすることで、OSFリングの内側での転位クラスタの発生が抑制される。
【0029】
【実施例】
次に、本発明の実施例を示し、従来例と比較することにより、本発明の効果を明らかにする。
【0030】
〔実施例1〕
上記の単結晶育成装置を使用し、上部ヒータと下部ヒータとの出力比率を1:1に設定(従来の長尺な単体ヒータの使用条件に相当)して、8インチのシリコン単結晶の育成をおこなった。22インチの石英坩堝内に原料として多結晶シリコン100kgを充填し、P型ドーパントとしてボロンを添加した。装置内をアルゴン減圧の雰囲気とし、ヒータにより坩堝内の多結晶シリコンを溶融した後、種結晶を溶融液に接触させて引き上げ、所定のネック部、ショルダー部の形成に移行して、所定のボディ直径に達した後、引き上げ速度を連続的に徐々に低下させて、シリコン単結晶を育成した。
【0031】
次に、得られた単結晶を縦割り加工し、引き上げ中心軸を含む断面に平行に厚さ約1.4mmのスライス片を採取し、引き上げ中心軸を含む断面に垂直に厚さ約1.4mmのウエーハを切り出し、これらの試料を16重量%の硝酸銅水溶液に浸漬して銅を付着させ、900℃にて20分間加熱し冷却後、X線トポグラフ法により欠陥分布を調査した。
【0032】
図2は上記した欠陥分布の調査結果を模式的に示したものである。図中(a)は、単結晶を縦割りしたときの引き上げ軸方向の欠陥分布を模式的に示すもので、引き上げ速度の低下に伴いOSFリング11の径が収縮し、OSFリング11の内側に発生する空孔クラスタ12の領域が抑制され、OSFリング11のすぐ外側には無欠陥領域13が形成された欠陥分布を示したものの、単結晶外周部において転位クラスタ14の発生領域が上方に隆起した欠陥分布を示した。また、図中(b)は、単結晶をA−A′で切断したときの単結晶面内の欠陥分布を模式的に示すもので、OSFリング11の内側に発生する空孔クラスタ12の領域が抑制された単結晶部分において、単結晶外周部に転位クラスタ14が顕著に発生した分布を示した。
【0033】
このように、上部ヒータと下部ヒータとの出力比率を1:1に設定して単結晶を育成した場合には、引き上げ速度を低下させて、空孔クラスタ12の領域を縮小させた場合、その単結晶外周部において転位クラスタ14が顕著に発生してしまうことがわかる。
【0034】
〔実施例2〕
上部ヒータと下部ヒータとの出力比率を5:1に変更した以外は、全て実施例1で行った育成条件と同一の条件で単結晶を育成した。得られた単結晶について実施例1で行った評価手段と同一の手段により欠陥分布を調査した。
【0035】
図3は実施例2で育成された単結晶中の欠陥分布を模式的に示したものである。図中(a)は単結晶を縦割りしたときの引き上げ軸方向の欠陥分布を示すもので、引き上げ速度の低下に伴いOSFリング11の径が収縮し、OSFリング11の内側に発生する空孔クラスタ12の領域が抑制され、OSFリング11の外側には無欠陥領域13が形成された欠陥分布を示し、単結晶外周部において転位クラスタ14が発生しない欠陥分布を示した。図中(b)は単結晶をA−A′で切断したときの単結晶面内の欠陥分布を示すもので、OSFリング11の内側に発生する空孔クラスタ12の領域が抑制された単結晶部分において、単結晶外周部に転位クラスタ14が発生しない分布を示した。
【0036】
これから明らかなように、上部ヒータの出力を増大させ、単結晶温度が1300℃以上の高温部分を局所的に加熱することにより、引き上げ速度の低下に伴いOSFリング11の径が収縮し、OSFリング11の内側に発生する空孔クラスタ12の領域が抑制された場合でも、OSFリング11の外側に転位クラスタ14が発生せず、無欠陥領域13を形成できることがわかる。
【0037】
なお、実施例1の育成条件において、上部ヒータの上端部が坩堝の上端部を超える高さ位置に上部ヒータ位置を変更して単結晶を育成した場合、実施例2の図3とほぼ同様な欠陥分布を示し、単結晶外周部での転位クラスタの発生が抑制されていることが確認されたが、得られた単結晶の再結合ライフタイム(比抵抗値10Ωcm、単結晶外周部より内側5mm)を測定したところ、育成初期の単結晶部分において150μsecと非常に低い値を示した。これに対し、実施例2で得られた単結晶のライフタイムは400μsecであり、ライフタイムの低下は全く見られなかった。
【0038】
〔実施例3〕
ボディ形成中に溶融液に0.5テスラの水平磁場を印加した以外は、全て実施例2と同一の育成条件(上部、下部ヒータ出力比率5:1)により、シリコン単結晶の育成を行った。得られた単結晶について実施例1で行った評価手段と同一の手段により欠陥分布を調査した。
【0039】
図4は実施例3で育成された単結晶中の欠陥分布を模式的に示したものである。図中(a)は、単結晶を縦割りしたときの引き上げ軸方向の欠陥分布を示すもので、単結晶外周部が積極的に加熱されていることから、転位クラスタ14はOSFリング11の外側の領域には発生しない欠陥分布を示したものの、転位クラスタ14の発生領域が単結晶中心部において上方に隆起した分布状態を示した。図中(b)は単結晶をA−A′で切断したときの単結晶面内の欠陥分布を示すもので、通常は発生しないとされているOSFリング11の内側領域に転位クラスタ14が発生することが確認された。
【0040】
これは、水平磁場を印加した単結晶の育成方法においては、もともと、単結晶と溶融液との固液界面の形状が上凸形状となる傾向が非常に強いために、単結晶中心部での温度勾配Gcを大きくする作用がある。従って、印加する磁場強度および単結晶外周部への加熱によっては、外周部の温度勾配Geよりも中心部の温度勾配Gcが大きくなり過ぎて、転位クラスタが単結晶中心部で発生したものと考えられる。
【0041】
〔実施例4〕
上部ヒータと下部ヒータとの出力比率を1:2に変更した以外は、全て実施例3で行った育成条件と同一の条件で単結晶を育成した。得られた単結晶について実施例1で行った評価手段と同一の手段により欠陥分布を調査したところ、図3とほぼ同様な欠陥分布を示し、結晶中心部での転位クラスタの発生を抑制できることが確認された。これは下部ヒータの出力を増加させて坩堝下方を加熱することにより、単結晶と溶融液との固液界面の形状が上凸形状となる傾向が抑制されたことによるものと推測される。
【0042】
このように、本発明によれば、上部ヒータおよび下部ヒータの出力を調整することにより、単結晶中に発生する転位クラスタの発生領域を自由に抑制することができ、温度環境が異なる様々な単結晶育成装置であっても、確実に転位クラスタのない単結晶を育成することができる。なお、直径が8インチの単結晶についてのみ、ここでは説明したが、本発明は原理的にはより径の大きい結晶(例えば、直径12インチ以上)についても有効である。
【0043】
【本発明の効果】
本発明の単結晶育成方法は、空孔クラスタの発生領域を狭めるために低速引き上げを行った場合に問題となる転位クラスタの発生を抑え、これにより欠陥の少ない高品質ウエーハの製造を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る単結晶育成装置を模式的に示した断面図である。
【図2】上部ヒータと下部ヒータの出力比率を一定にして育成された単結晶中の欠陥分布を示すものであり、図中(a)は単結晶育成時における引き上げ速度と欠陥の発生位置との関係を示した模式図であり、図中(b)は単結晶面内の欠陥分布を示した模式図である。
【図3】上部ヒータの出力を大きくして育成された単結晶中の欠陥分布を示すものであり、図中(a)は単結晶育成時における引き上げ速度と欠陥の発生位置との関係を示した模式図であり、図中(b)は単結晶面内の欠陥分布を示した模式図である。
【図4】水平磁場を融液に印加して育成された単結晶中の欠陥分布を示すものであり、図中(a)は単結晶育成時における引き上げ速度と欠陥の発生位置との関係を示した模式図であり、図中(b)は単結晶面内の欠陥分布を示した模式図である。
【符号の説明】
1 メインチャンバ
2 プルチャンバ
3 坩堝
4 ヒータ
4a 上部ヒータ
4b 下部ヒータ
4c 底部ヒータ
5 断熱材
6 坩堝昇降軸
7 引き上げ軸
8 溶融液
9 単結晶
10 輻射スクリーン
11 OSFリング
12 空孔クラスタ
13 無欠陥領域
14 転位クラスタ
Claims (1)
- CZ法を用い、且つOSFリングが引き上げ結晶の最外周部より内側に生じるか若しくは中心部で消滅する低速引き上げ条件で単結晶を育成する単結晶育成方法において、
坩堝の周囲を加熱する上下方向に複数分割されたヒータを配設し、
OSFリングの外側に転位クラスタが発生する場合に上部ヒータの出力を増大させ、OSFリングの内側に転位クラスタが発生する場合に下部ヒータの出力を増大させることにより、単結晶温度が1300℃以上の高温部分における、単結晶外周部の引き上げ軸方向の温度勾配をGeとし、単結晶中心部の引き上げ軸方向の温度勾配をGcとしたとき、Gc−Ge=±0.4℃/mm以下に制御することを特徴とする単結晶育成方法。
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