JP3718409B2 - プリズムの蒸着方法および光学素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数個のプリズムに蒸着膜を同時に形成するための蒸着方法、および当該蒸着方法に蒸着膜が形成されたプリズムを貼り合わせることにより構成される光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ピックアップ装置等の光学機器においては偏光方向に応じて光を分離する偏光分離素子が使用されている。偏光分離素子としてはプリズム合成体からなるものが知られており、例えば、図3(a)に示す直角プリズム1の斜面2(図において斜線で示す面)に誘電体多層膜を蒸着し、図3(b)に示すように、このように構成した2個のプリズム1(1)、1(2)の誘電体多層膜2(1)、2(2)が形成されている面を接着剤層3を介して相互に貼り合わせることにより構成されている。
【0003】
プリズム1の斜面2すなわち蒸着膜形成面に誘電体膜を蒸着するための蒸着機としては、矩形のプリズム支持枠に多数個のプリズムを並べ、このプリズム支持枠を密閉されたチャンバ内に設置されている回転式ドームの表面に多数個取り付け、回転式ドームを回転させながら、1回の蒸着工程で多数個プリズムに対して同時に蒸着を行なうように構成したものがある。
【0004】
図4(a)には、かかる蒸着機におけるプリズム支持枠を示してある。プリズム支持枠4は、矩形の枠本体5と、その対向する枠部分6、7に形成した段面6a、7aを備えており、各プリズム1(n)(nは正の整数であり、図示の例ではn=1ないし5である。)は、その長手方向の両端がそれぞれ段面6a、7aに架け渡された状態で並べられる。一般に、各プリズム1(1)ないし1(5)に応力がかからないように、各プリズム1(1)ないし1(5)は自重で段面6a、7a上に乗っているのみであり、移動が自由となっている。
【0005】
並べられた各プリズム1(1)ないし1(5)は、図4(b)に示すように、その蒸着膜形成面2を下向きにした状態で、相互の角1a、1bが接するように(線接触状態となるように)配列される。段面6a、7aは同一平面上にあるので、プリズム支持枠4に並べた各プリズム1(1)ないし1(5)の蒸着膜形成面2(1)ないし2(5)も同一平面上に位置し、各蒸着膜形成面に対して同一の方向から蒸着が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、蒸着機の回転式ドームは蒸着中においては回転駆動されるので、回転運動に起因してドームに取り付けれているプリズム支持枠に振動が伝わり、当該プリズム支持枠に並べられているプリズム1(1)ないし1(5)にも振動が伝わる。各プリズム1(1)ないし1(5)は単にプリズム支持枠上に乗っているだけなので、上下の移動は自由となっている。この結果、プリズム支持枠に並べられている各プリズム1(1)ないし1(5)が上下に振動して、配列がばらけて、プリズムの角が相互に重なり合ってしまうおそれがある。
【0007】
例えば、図5(a)に示すように整列配置されていたプリズム1(3)、1(4)が、振動することにより、図5(b)に示すように、一方のプリズム1(3)の角1bの上に、他方のプリズム1(4)の角1aが乗り上げた状態になる場合がある。
【0008】
このような事態が発生すると、同一平面上に形成されていた各プリズムの蒸着膜形成面2(3)、2(4)のうち、蒸着膜形成面2(4)が傾斜した状態になる。この結果、蒸着方向が正規の角度からずれてしまい、形成された誘電体膜の特性が所期の特性と異なってしまう。
【0009】
本発明の課題は、この点に鑑みて、蒸着時に伝わる振動によって各プリズムが重なり合う等の弊害を回避可能なプリズムの蒸着方法を提案することにある。
【0010】
また、本発明の課題は、かかる蒸着方法により蒸着膜が形成されたプリズムから構成される光学素子を提案することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数個のプリズムをプリズム支持枠上に並べ、これら複数個のプリズムの蒸着膜形成面に対して同時に蒸着を行なうプリズムの蒸着方法において、各プリズムにおける蒸着膜形成面の両側の角に面取りを施し、形成された面取り部が相互に面接触し、かつ、各プリズムの蒸着膜形成面が同一面に位置するように、複数個のプリズムを前記プリズム支持枠上に並べることを特徴としている。
【0013】
本発明の蒸着方法では、各プリズムの角を面取りして、面取り部分が面接触するように各プリズムをプリズム支持枠上に並べるようにしている。従って、プリズム相互の面接触によって、各プリズムの振動を抑制でき、プリズムが相互に重なり合う等の弊害を防止あるいは抑制できる。
【0014】
次に、本発明は、蒸着膜が形成された面を相互に貼り合わせることにより構成した2個のプリズムからなる光学素子であって、前記プリズムは請求項2に記載の方法により蒸着膜が形成されたものであることを特徴としている。
【0015】
本発明の光学素子では、双方のプリズムの角が面取りされているので、2個のプリズムに多少の貼り合わせずれが生じても、光学素子の角が所定の外形寸法の範囲から飛び出してしまうことを防止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明を適用した蒸着方法の例および光学素子の例を説明する。
【0017】
図1(a)、(b)に示すように、本例の蒸着方法では、プリズム、例えば直角プリズム1の2つの角1a、1bに面取りを施こすことにより、プリズム11を形成している。すなわち、蒸着膜形成面2の幅方向の両側に位置している角1a、1bを、三角形状に切り取ることにより、蒸着膜形成面12に直交する面取り面11a、11bを備えたプリズム11を形成している。
【0018】
この形状のプリズム11に対して、従来と同様な蒸着機を用いて蒸着を行なう。すなわち、図1(c)に示すように、従来と同様なプリズム支持枠14に多数個、例えば5個のプリズム11(1)ないし11(5)を並べる。プリズム11(1)ないし11(5)を並べるに当っては、両端に位置しているプリズム11(1)、11(5)の垂直な面取り面11a、11bがそれぞれプリズム支持枠14の枠内側面14a、14bに面接触するように配置する。また、これらの間に配置されている各プリズムにおいては、図1(d)に示すように、両端の垂直な面取り面11a、11bが相互に密着状態で面接触するように並べる。換言すると、このように面接触状態で丁度プリズム11(1)ないし11(5)を配列できるように、プリズム支持枠14の内側面14a、14b間の寸法を設定しておく。
【0019】
このように各プリズム支持枠14に5個ずつのプリズム11を並べた後は、蒸着機の回転式ドーム(図示せず)の表面にプリズム支持枠14を取り付けて、回転式ドームを回転させながら各プリズムの蒸着膜形成面12に対して同時に蒸着を行なう。
【0020】
このように各プリズム支持枠に配列されているプリズム11は、相互に面接触状態にあるので、振動が伝わっても、従来のような線接触状態の場合とは異なり、各プリズムの振動が抑制あるいは防止される。よって、プリズムが相互に重なり合う等の弊害を回避できる。この結果、各プリズムの蒸着面形成面に対して適正な角度で蒸着を行なうことができ、希望する特性の蒸着膜を得ることができる。
【0021】
次に、このようにして蒸着膜が形成された2個のプリズム11を相互に貼り合わせることにより、偏光分離素子等の光学素子を作ることができる。例えば、図2(a)に示すように、直角プリズム11の斜面に誘電体多層膜を蒸着し、図2(b)に示すように、このように構成した2個のプリズム11(1)、11(2)を誘電体多層膜12(1)、12(2)を接着剤層13を介して相互に貼り合わせることにより、偏光分離素子20を構成できる。
【0022】
この場合、各プリズム11(1)、11(2)における貼り合わせ面側の両角には面取りが施されている。従って、図2(b)に示すように、双方のプリズム11(1)、11(2)の貼り合わせが僅かにずれたとしても、予め設定されている外形寸法Wの範囲内に偏光分離素子20の幅寸法を納めることが可能になる。
【0023】
これに対して、従来の直角プリズムを貼り合わせる場合には、図3(c)に示すように、ずれた状態で2個のプリズム1(1)、1(2)が貼り合わされた状態になると、その角部分が規定寸法Wから突出した状態になりやすい。よって、本例のプリズム11を使用すれば、貼り合わせ精度が多少悪くてもよいので、貼り合わせ作業が簡単になる。
【0024】
なお、上記の例では、蒸着膜として誘電体膜の場合を説明したが、蒸着膜はそれ以外のものであってもよいことは勿論である。また、2個のプリズムを貼り合わせることにより構成される光学素子も偏光分離素子以外のものであってもよいことは勿論である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のプリズムの蒸着方法では、プリズムの角を面取りし、蒸着機のプリズム支持枠にプリズムを並べる際に、面接触状態でプリズムを配列できる。よって、蒸着時に伝わる振動に起因してプリズムが相互に重なり合い、各プリズムの蒸着膜形成面に対する蒸着方向が変動してしてしまうという弊害を回避あるいは抑制できる。
【0026】
また、本発明の光学素子では、貼り合わせた2個のプリズムにおける角を面取りしてあるので、多少の貼り合わせずれが生じても、光学素子を規定の外形寸法内に納めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は一般的なプリズムを示す斜視図、(b)は本発明を適用した蒸着方法に使用するプリズムの形状を示す斜視図、(c)はプリズム支持枠にプリズムを並べた状態を示す断面図、(d)はプリズムの面接触状態を示す部分拡大断面図である。
【図2】(a)は2枚のプリズムを貼り合わせることにより構成された偏光分離素子を示す断面図であり、(b)は貼り合わせずれが生じている状態を示す断面図である。
【図3】(a)は一般的なプリズムを示す斜視図、(b)は2枚のプリズムを貼り合わせることにより構成した光学素子を示す断面図、(c)は貼り合わせずれが生じている光学素子を示す断面図である。
【図4】(a)はプリズムが並べられたプリズム支持枠を示す斜視図、(b)はその断面図である。
【図5】従来の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
1 プリズム
1a、1b プリズムの角
11、11(1)ないし11(5) プリズム
11a、11b 面取り面
12、12(1)ないし12(5) 蒸着膜形成面
14 プリズム支持枠
14a、14b プリズム支持枠の内側面
13 接着層
20 偏光分離素子
W 規定の外形寸法

Claims (2)

  1. 複数個のプリズムをプリズム支持枠上に並べ、これら複数個のプリズムの蒸着膜形成面に対して同時に蒸着を行なうプリズムの蒸着方法において、
    各プリズムにおける蒸着膜形成面の両側の角に面取りを施し、形成された面取り部が相互に面接触し、かつ、各プリズムの蒸着膜形成面が同一面に位置するように、複数個のプリズムを前記プリズム支持枠上に並べることを特徴とするプリズムの蒸着方法。
  2. 蒸着膜が形成された面を相互に貼り合わせることにより構成した2個のプリズムからなる光学素子であって、
    前記プリズムは請求項1に記載の方法により蒸着膜が形成されたものであることを特徴とする光学素子。
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