JP3718311B2 - 固体電解質および二酸化炭素センサ - Google Patents
固体電解質および二酸化炭素センサ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質と、室内外の環境制御、施設園芸等の農工業プロセス、防災、生体表面の代謝機能の測定などに使用される二酸化炭素センサとに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、空調の普及に伴う室内空気の汚染の検知、畜産における施設内空気の汚染の検知、園芸施設における植物の成長制御、各種工業プロセスなどを中心に、二酸化炭素センサに対するニーズが高まっており、種々の方式の二酸化炭素センサが提案されている。
【0003】
具体的には、例えば、赤外線吸収方式の二酸化炭素センサが実用化されている。しかし、この方式のセンサは、装置が大きいこと、高価であることなどから、普及するには至っていない。また、半導体を用いたセンサも提案されているが、このセンサは二酸化炭素の選択性に劣るため、二酸化炭素のみの濃度を測定することが困難である。
【0004】
これに対して、小型で安価なセンサとして、固体電解質を用いたものがいくつか提案されている。このうち最も簡単なものは、二酸化炭素と解離平衡を形成する炭酸カリウムなどの固体電解質に一対の電極を形成し、一方に濃度既知の基準ガスを接触させて、雰囲気ガスの濃度差による起電力を測定する濃淡分極型センサである。このセンサの問題点としては、必要な導電性を固体電解質が得るためには500〜700℃という高温が必要なこと、固体電解質材料の性質として湿度に強く影響を受けること、などが挙げられる。センサにヒータを内蔵することで上記高温は実現可能であるが、この場合、狭い場所での測定に際し雰囲気中に対流や温度変化などを生じさせて外部環境に影響を与えてしまうため、用途によっては好ましくない。また、消費電力が大きくなるという問題もある。
【0005】
このような濃淡分極型センサの他、NASICON(ナトリウムスーパーイオン伝導体:Na3 Zr2 Si2 PO12)などのアルカリ金属イオン伝導性の固体電解質に一対の電極を形成し、一方に炭酸ナトリウムなどの二酸化炭素と解離平衡を形成する金属炭酸塩層を設けて検知極とし、他方を二酸化炭素不感応性電極とした、いわゆる起電力検出型センサがある。このセンサは、一種の電池を利用して二酸化炭素検出を行うものであり、電池式は以下のとおりである。
【0006】
CO2,O2,Pt|Na2CO3||NASICON|Pt,O2
【0007】
この電池のCO2 検知極界面では、
【0008】
【化1】
【0009】
という平衡が成立しており、CO2 不感応性電極界面では、
【0010】
【化2】
【0011】
という平衡が成立している。したがって、全電池反応としては、
【0012】
【化3】
【0013】
となる。
【0014】
この電池の起電力Eは、
式 E=E0-(RT/2F)ln(aNa2O・PCO2)
で表される。ここで、E0 は定数、Rは気体定数、Tは絶対温度、Fはファラデー定数、aNa2 OはNa2 Oの活量、PCO2 は二酸化炭素ガスの分圧を表す。aNa2 Oが一定とみなせ、かつTが一定のときまたは一定とみなせれば、この電池の起電力から二酸化炭素の分圧を求めることができる。以上の説明は、丸山ら{第10回固体イオニクス討論会講演要旨集69(1983)}によって提案されたことである。
【0015】
しかし、実際にはaNa2 Oが一定とみなせない場合が多く、これが、起電力から求めた二酸化炭素分圧が変動する原因であると指摘されている。
【0016】
これに対し、アルカリイオン伝導体からなる固体電解質に、電子および酸素イオンの伝導体である固体基準極を圧着させた固体基準極型二酸化炭素センサが提案されている(特開平7−63726号公報)。同公報では、固体電解質としてLiイオン伝導体を用い、固体基準極にLiを添加することで、界面で生成するLiO2 の活量を一定としている。しかし、このセンサもアルカリイオン伝導体を用いることから、同公報実施例に示されるように作動温度が400〜500℃と高くなってしまう。
【0017】
起電力検出型センサの検知極には炭酸ナトリウムを用いている例が多く、その吸湿性から耐湿性が問題となっているが、湿度の影響を軽減する提案も多くなされている。例えば、検知極の被覆材料としてアルカリ土類金属炭酸塩とアルカリ金属炭酸塩との固溶体であってアルカリ金属炭酸塩の結晶を含まないものを用いたもの(特開平5−80021号公報、J.Electrochem.Soc.,Vol.139,No.5,1384,May 1992)などである。
【0018】
これら起電力検出型のセンサでは、基準ガスは必要ではなく、参照極側も測定雰囲気中にある。このため、測定値は酸素分圧の変化にも影響を受けてしまう。そこで、アルカリイオン伝導体の参照極側に、酸化物イオン伝導体を密着積層することにより、酸素分圧変化の影響を排除する提案もなされている(特開平7−94013号公報)。また、検知極だけが測定雰囲気に接触するように、検知極以外を気体不透過性材料で密閉した構造をとる例が増えている。これらの改善の結果、湿度や酸素分圧の変化にほとんど影響されず、安定した測定が行えるようになってきている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、起電力検出型センサにおいてNASICONやβ−アルミナ(Na2 O・11Al2 O3 )などの固体電解質を用いて高い導電性を得るためには、前記した濃淡分極型のセンサと同様に、ヒータを内蔵させて500℃程度以上の高温を確保することが必要である。また、検知極材料として用いられるアルカリ金属炭酸塩やこれとアルカリ土類金属炭酸塩との固溶体は、室温では電子伝導性は無論のことイオン伝導性も低いため、応答速度を確保するためにも高温が必要となっている。数百度の熱は、たとえ小さなヒータからであってもセンサ周辺を加温し、空気の対流を発生するなど、測定環境に微妙な影響を与えてしまう。また、消費電力も大きくなるので、電池駆動などは困難となってしまう。
【0020】
なお、起電力検出型センサにおいて、NASICONのNaイオンをAgイオンに置換した固体電解質を用いて室温動作を得た報告{新居浜工業高等専門学校紀要(理工学編)、26、98(1990)}があるが、本来、Naイオンでも数百度の加熱が必要であるため、Agイオンに置換しただけでは室温でのイオン伝導性がそれほど向上するとは考えられない。具体的には、室温での起電力が十分とはいえない。また、応答速度にも問題があると考えられる。
【0021】
室温で高いイオン伝導性をもつ固体電解質としては、Cuイオン伝導体またはAgイオン伝導体が知られている。これらには、例えば、RbAg4 I5 (2.7×10-1Scm-1 ,25℃)、75AgI・25Ag2 SeO4 (2.2×10-2Scm-1 ,20℃)、Ag3 SI(1×10-2Scm-1 ,25℃)などの固体セラミックス材料があり、これらを用いても室温動作型のセンサを構成することができる。しかし、これらの固体セラミックス材料は、1000℃前後での焼結が必要であり、また、一般に耐湿性に乏しく、特にRb系材料は耐湿性に乏しく脆いことから、センサの作製方法が限られてしまう。
【0022】
また、近年、Liイオン電池用に、ポリエチレングリコールなどのポリマに過塩素酸リチウムなどを溶解させた電解質や、架橋ポリマと溶剤に溶解させたリチウム塩とからなるゲルタイプの電解質が検討されている。特に後者は盛んに研究が行われ、室温で比較的高い導電性が得られている。このようなゲル電解質と電極とを組み合わせても室温動作型センサが得られるわけであるが、このようなゲル電解質は吸湿性が大きい。電解質が密閉される電池と異なりセンサでは電解質が外気に触れるために、金属塩もポリマも水分を吸収しやすくなり、一定した起電力を安定に得ることはできない。
【0023】
本発明はこのような事情からなされたものである。本発明の目的は、室温で十分な感度が得られると共に応答性が良好であり、かつ耐湿性の良好な二酸化炭素センサを提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
(1) 主鎖中に第4級アンモニウム基を有しハロゲンイオンを対イオンとする、ジアミン化合物とジハロゲン化合物との重合体と、金属ハロゲン化物とを熱処理することにより生成されたものである固体電解質。
(2) 前記金属ハロゲン化物が、AgまたはCuのハロゲン化物である上記(1)の固体電解質。
(3) 検知極と参照極とがそれぞれ固体電解質に接して設けられており、検知極が二酸化炭素と解離平衡を形成する金属炭酸塩を含み、固体電解質が、アンモニウムイオン部分を有する化合物と金属ハロゲン化物とを熱処理することにより生成されたものである二酸化炭素センサ。
(4) 前記アンモニウムイオン部分を有する化合物が、アルキルアンモニウムハロゲン化物、アリールアンモニウムハロゲン化物または含窒素環状アンモニウムハロゲン化物である上記(3)の二酸化炭素センサ。
(5) 前記固体電解質が、上記(1)の固体電解質である上記(3)の二酸化炭素センサ。
(6) 前記金属ハロゲン化物が、AgまたはCuのハロゲン化物である上記(3)〜(5)のいずれかの二酸化炭素センサ。
【0025】
【作用および効果】
本発明では、上記固体電解質を用いるので、常温で十分なイオン伝導性が得られ、応答性も良好である。そして、上記固体電解質は耐湿性が良好なので、測定に際して環境湿度の影響が小さい。特に、固体電解質の原料として上記重合体を用いた場合には、耐湿性がより良好となり、また、固体電解質の機械的強度が高くなる。上記重合体自体は吸湿性が高いが、ヨウ化銀などの金属ハロゲン化物と反応させて有機無機複合固体電解質とすることによって、吸湿性は格段と減少する。
【0026】
なお、特公平2−24465号公報には、主鎖中に第4級アンモニウム基を有する重合体(いわゆるアイオネンポリマ)、すなわち、本発明で用いる固体電解質の原料となる重合体を、感湿高分子として用いた湿度センサ素子が記載されている。また、本出願人による特願平7−96065号にも湿度センサ素子が記載されている。後者の湿度センサ素子の感湿薄膜には、前者の重合体の末端にエチレン性不飽和反応性基を導入し、これを架橋した高分子化合物が用いられている。しかし、これらの湿度センサ素子は、感湿薄膜の吸湿によるイオン伝導性変化を利用するものであり、湿度による固体電解質のイオン伝導性変化を防ぐ必要のある本発明とは、全く異なるものである。そして、上記各公報には、当然、上記重合体または上記高分子化合物と金属ハロゲン化物とを熱処理して反応させる旨の記載はない。
【0027】
また、J.Electrochem.Soc.:SOLID STATE SCIENCE,1536-1539,December 1970および同誌1144-1147,July 1971には、置換アンモニウムヨウ化物とヨウ化銀との複塩からなる固体電解質が記載されている。また、J.Electrochem.Soc.:ELECTROCHEMICAL SCIENCE AND TECHNOLOGY,1291-1296,October 1975、J.Electrochem.Soc.:SOLID STATE SCIENCE,1431-1434,October 1973および同誌83-86,January 1975には、置換有機アンモニウムハロゲン化物とハロゲン化銅との複塩からなる高導電率固体電解質が記載されている。これらの固体電解質は、いずれも本発明で用いる固体電解質の一部と同一であるが、これらの文献には、この固体電解質を二酸化炭素センサに適用する旨の記載はない。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の二酸化炭素センサでは、検知極と参照極とがそれぞれ固体電解質に接して設けられている。
【0029】
本発明では、固体電解質として、アンモニウムイオン部分を有する化合物と金属ハロゲン化物とを熱処理することにより生成されたものを用いる。
【0030】
固体電解質原料(重合体)
上記アンモニウムイオン部分を有する化合物としては、主鎖中に第4級アンモニウム基を有しハロゲンイオンを対イオンとする重合体を用いることが好ましい。
【0031】
前記重合体としては、下記式(1)で表されるものが好ましい。
【0032】
【化4】
【0033】
式(1)で示される重合体中における第4級アンモニウム塩基は、重合体単位質量当りのカチオン当量で換算して、1.2〜30meq/g 、さらには1.5〜25meq/g で存在することが好ましい
【0034】
式(1)において、AおよびBは各々二価基を表わす。
【0035】
Aで表わされる二価基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基またはこれらの組合せが好ましく、これらはヒドロキシ基やメチル基等のアルキル基、あるいはカルバモイル基などが置換していてもよい。
【0036】
アルキレン基の総炭素数は1〜20が好ましく、ヒドロキシ基が置換するときの置換基数は1〜5が好ましい。
【0037】
アルケニレン基の総炭素数は2〜10が好ましい。
【0038】
アリーレン基の総炭素数は6〜20が好ましい。
【0039】
また、これらの組合せであるときの総炭素数は3〜20が好ましい。
【0040】
具体的には、−(CH2 )m −(m=1〜20の整数)、
−CH2 CH=CH−CH2 −、−CH2 −CH(OH)−CH2 −
−CH(CH3 )−CH2 −CH2 −、−C6 H4 −C6 H4 −、
−C6 H4 −CH(OH)−C6 H4 −等が好ましいものとして挙げられる。
【0041】
Bで表わされる二価基としては、アルキレン基、オキシ基(−O−)およびカルボニル基(−CO−)のうちの1種以上が介在したアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基またはこれらの組合せが好ましく、これらはヒドロキシ基やビニル基等のアルケニル基などが置換していてもよい。
【0042】
アルキレン基の総炭素数は1〜20が好ましく、ヒドロキシ基が置換するときの置換基数は1〜5が好ましい。また、アルキレン基に−O−、−CO−が介在するときの介在数は合計で1〜5が好ましい。
【0043】
アルケニレン基の総炭素数は2〜10が好ましい。アリーレン基の総炭素数は6〜20が好ましい。また、これらの組合せであるときの総炭素数は3〜20が好ましい。
【0044】
具体的には、
−(CH2 )m −(m=1〜20の整数)、
−(CH2 )2 −CH(OH)−CH2 −、−CH2 −CH(OH)−CH2 −、
−CH2 −CH=CH−CH2 −、−CH2 −CH(CH=CH2 )−、
−(CH2 −CH2 −O)2 −(CH2 )2 −、
−CH2 −(CO)−CH2 −、−CH2 −C6 H4 −CH2 −
等が好ましいものとして挙げられる。
【0045】
R1 、R2 、R3 およびR4 は各々アルキル基またはアルケニル基を表わす。
【0046】
R1 〜R4 で表わされるアルキル基としては、炭素数の1〜10のものが好ましく、置換基を有していてもよいが、無置換のものが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましいものとして挙げられる。
【0047】
R1 〜R4 で表わされるアルケニル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、置換基を有していてもよいが、無置換のものが好ましい。具体的にはビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等が好ましいものとして挙げられる。
【0048】
R1 とR2 、R1 とAもしくはAの一部、R2 とAもしくはAの一部、R3 とR4 、R3 とAもしくはAの一部、R4 とAもしくはAの一部、R1 とR3 もしくはR4 、またはR2 とR3 もしくはR4 が互いに結合して窒素原子(N)とともに環を形成してもよい。このような環としては、5員または6員、特に6員の含窒素複素環が好ましく挙げられ、さらには橋かけ環であってもよい。このような含窒素複素環としては、ピリジン環、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピラジン環等が好ましく、場合によってはカルバモイル基等が置換していてもよい。
【0049】
式(1)において、Xはハロゲン原子を表わし、具体的には塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等であってよいが、ヨウ素原子、臭素原子が好ましく、特にヨウ素原子が好ましい。各重合体中において、すべてのXは、通常、同一であるが、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0050】
nは、通常、2〜5000であることが好ましい。
【0051】
式(1)で表される重合体の数平均分子量Mn は、1000〜100万程度であることが好ましい。
【0052】
式(1)で表される重合体は、ジアミン化合物とジハロゲン化合物とを反応させることにより合成することが好ましい。この合成反応のスキームを、式(2)として示す。
【0053】
【化5】
【0054】
この合成反応は、ジアミン化合物に対しジハロゲン化合物が1.1倍モル量〜2.0倍モル量となる条件下で行うことが好ましい。
【0055】
上記合成反応は、メタノール、イソプロパノール、メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の非水溶媒中で還流温度あるいは100℃程度の温度にて5〜100時間程度行う。
【0056】
その後、反応溶液をアセトン、酢酸エチル等の溶媒に滴下して沈澱物を生成させ、これを濾取することにより沈澱精製し、目的物を得る。
【0057】
なお、式(1)で表される重合体は、通常、重合度nが2〜20程度のオリゴマーと重合度nが20をこえるポリマーとの混合物として得られる。
【0058】
ジアミン化合物およびジハロゲン化合物は、式(2)で表されるスキームに従う反応が可能なものであればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、ジアミン化合物としては下記A−1〜A−18が、ジハロゲン化合物としては下記B−1〜B−17が好ましい。
【0059】
【化6】
【0060】
【化7】
【0061】
【化8】
【0062】
【化9】
【0063】
【化10】
【0064】
B−1〜B−17においてXは前記と同義であるが、ヨウ素原子、臭素原子が特に好ましい。
【0065】
上記したジアミン化合物のうちでは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(トリエチレンジアミン)のような環状アミンが、固体電解質の機械的強度の向上と耐湿性の向上とのためには好ましい。
【0066】
式(1)で表される重合体の例を、上記したジアミン化合物とジハロゲン化合物との組合わせから得られる重合体として以下に示す。なお、カッコ内の数値はモル比を表す。
【0067】
(1)A-16/B-10(50/50)の組合わせから得られる重合体
(2)A-8/B-12/B-10(50/48/2)の組合わせから得られる重合体
(3)A-8/B-13/B-10(50/48/2)の組合わせから得られる重合体
(4)A-8/B-15/B-10(50/48/2)の組合わせから得られる重合体
(5)A-16/B-2(50/50) の組合わせから得られる重合体
(6)A-7/B-10(50/50) の組合わせから得られる重合体
(7)A-2/B-10(50/50) の組合わせから得られる重合体
(8)A-9/B-10(50/50) の組合わせから得られる重合体
(9)A-16/B-9(50/50) の組合わせから得られる重合体
(10)A-3/A-8/B-10(2/48/50) の組合わせから得られる重合体
(11)A-14/A-16/B-17(49/1/50) の組合わせから得られる重合体
(12)A-11/B-16(50/50)の組合わせから得られる重合体
(13)A-6/B-4/B-15(50/47/3) の組合わせから得られる重合体
(14)A-11/B-6(50/50) の組合わせから得られる重合体
(15)A-13/B-3(50/50) の組合わせから得られる重合体
(16)A-10/B-15(50/50)の組合わせから得られる重合体
(17)A-15/B-16(50/50)の組合わせから得られる重合体
(18)A-4/B-10(50/50) の組合わせから得られる重合体
(19)A-10/B-12/B-10(50/48/2) の組合わせから得られる重合体
(20)A-8/B-2(50/50)の組合わせから得られる重合体
(21)A-7/A-16/B-10(15/35/50) の組合わせから得られる重合体
(22)A-8/A-16/B-10(15/35/50) の組合わせから得られる重合体
(23)A-9/A-16/B-10(15/35/50) の組合わせから得られる重合体
(24)A-10/A-16/B-10(15/35/50)の組合わせから得られる重合体
(25)A-8/B-13(50/50) の組合わせから得られる重合体
(26)A-8/A-10/B-13(15/35/50) の組合わせから得られる重合体
(27)A-8/B-13/B-10(50/40/10) の組合わせから得られる重合体
(28)A-8/B-13/B-2(50/40/10)の組合わせから得られる重合体
(29)A-9/B-13(50/50) の組合わせから得られる重合体
(30)A-8/A-9/B-13(25/25/50)の組合わせから得られる重合体
(31)A-9/A-10/B-13(25/25/50) の組合わせから得られる重合体
【0068】
本発明において、式(1)で表される重合体は、通常、1種だけを用いるが、2種以上を併用してもよい。
【0069】
固体電解質原料(単量体)
前記固体電解質に用いるアンモニウムイオン部分を有する化合物としては、上記重合体の他にも、アルキルアンモニウムハロゲン化物、アリールアンモニウムハロゲン化物または含窒素環状アンモニウムハロゲン化物を好ましく用いることができる。例えば、前記したジアミン化合物とモノハロゲン化物との反応によるジアンモニウムジハロゲン化物およびモノアンモニウムハロゲン化物などを含む化合物群である。
【0070】
アンモニウムイオン部分を有する単量体化合物のアンモニウムイオン部分としては、以下に挙げるものが好ましい。
【0071】
1.アルキルアンモニウム
1−1 メチルアンモニウム
1−2 エチルアンモニウム
1−3 トリメチルアンモニウム
1−4 ジエチルアンモニウム
1−5 ジエチルメチルアンモニウム
1−6 トリエチルアンモニウム
1−7 エチルトリメチルアンモニウム
1−8 ジエチルジメチルアンモニウム
1−9 トリメチルイソプロピルアンモニウム
1−10 トリメチルプロピルアンモニウム
1−11 トリエチルメチルアンモニウム
1−12 テトラエチルアンモニウム
1−13 ジエチルメチルイソプロピルアンモニウム
1−14 トリエチルプロピルアンモニウム
1−15 ブチルジエチルメチルアンモニウム
1−16 ブチルトリエチルアンモニウム
1−17 メチルトリプロピルアンモニウム
1−18 テトラプロピルアンモニウム
1−19 トリブチルメチルアンモニウム
1−20 ブチルトリプロピルアンモニウム
1−21 トリブチルエチルアンモニウム
1−22 テトラブチルアンモニウム
1−23 ヘキサデシルトリメチルアンモニウム
【0072】
2.含窒素飽和環状アンモニウム
2−1 ピロリジニウム
2−2 ピペリジニウム
2−3 1−メチルピペリジニウム
2−4 1−メチルピロリジニウム
2−5 1,1−ジメチルピロリジニウム
2−6 キヌクリジニウム
2−7 1−メチルキヌクリジニウム
2−8 1,1−ジメチルピペリジニウム
2−9 N−メチルキヌクリジニウム
2−10 5−アゾニアスピロ[4.4]ノナン
2−11 5−アゾニアスピロ[4.5]デカン
2−12 6−アゾニアスピロ[5.5]ウンデカン
2−13 1−ブチル−1−メチルピペリジニウム
2−14 メチルヘキサメチレンテトラミニウム
2−15 N,N’−ジメチルピペラジニウム
2−16 エチルヘキサメチレンテトラミニウム
2−17 プロピルヘキサメチレンテトラミニウム
2−18 ブチルヘキサメチレンテトラミニウム
2−19 イソブチルヘキサメチレンテトラミニウム
2−20 N,N’−ジエチルピペラジニウム
【0073】
3.含窒素不飽和環状アンモニウム
3−1 ピリジニウム
3−2 3−メチルピリジニウム
3−3 1−メチルピリジニウム
3−4 1,3−ジメチルピリジニウム
3−5 3,5−ジメチルピリジニウム
3−6 2,6−ジメチルピリジニウム
3−7 1,2,6−トリメチルピリジニウム
3−8 3,4,6−トリメチルピリジニウム
3−9 1,3,5−トリメチルピリジニウム
3−10 キノリニウム
3−11 1,2,4,6−テトラメチルピリジニウム
3−12 1,2,3,6−テトラメチルピリジニウム
3−13 1−メチルキノリニウム
3−14 1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリニウム
3−15 2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリニウム
3−16 1−エチルキノリニウム
3−17 1,2−ジメチルキノリニウム
3−18 1,2−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリニウム
3−19 1,1−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリニウム
3−20 2,2−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニウム
3−21 1−エチル−2−メチルキノリニウム
3−22 1−エチル−2,6−ジメチルキノリニウム
3−23 N−メチルフェナントリジニウム
【0074】
4.飽和炭素環式アンモニウム
4−1 シクロペンチルアンモニウム
4−2 シクロプロピルトリメチルアンモニウム
4−3 シクロヘキシルアンモニウム
4−4 シクロペンチルトリメチルアンモニウム
4−5 シクロヘキシルトリメチルアンモニウム
4−6 ブチルシクロヘキシルジメチルアンモニウム
4−7 1−アダマンチルトリメチルアンモニウム
【0075】
5.不飽和炭化水素アンモニウム
5−1 4−メチル−4−アゾニアシクロヘキセン
5−2 アリルトリメチルアンモニウム
5−3 4,4−ジメチル−4−アゾニアシクロヘキセン
【0076】
6.アリールアンモニウム
6−1 フェニルアンモニウム
6−2 トリメチルフェニルアンモニウム
6−3 エチルジメチルフェニルアンモニウム
【0077】
7.ベンジルアンモニウム
7−1 ベンジルアンモニウム
7−2 ベンジルトリメチルアンモニウム
7−3 1−ベンジルピリジニウム
7−4 1−ベンジルキノリニウム
【0078】
また、アンモニウムイオン部分を有する化合物としては、例えば以下のものも好ましい。
【0079】
【化11】
【0080】
上記N−1〜N−7において、Xはハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、より好ましくはヨウ素原子または臭素原子である。上記N−1において、Rは水素原子またはメチル基である。上記N−3において、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基であり、2つのRは、通常、同一であるが、異なっていてもよい。
【0081】
上記した各単量体は、アミン化合物とハロゲン化合物とから通常の方法にしたがって合成すればよい。
【0082】
金属ハロゲン化物
固体電解質の調製に用いる金属ハロゲン化物としては、AgまたはCuのハロゲン化物が好ましく、これらのうちでは、塩化物、臭化物またはヨウ化物が好ましく、臭化物またはヨウ化物がより好ましい。金属ハロゲン化物中の金属が固体電解質中において導電性を担うのであり、この金属としてAgまたはCuを用いることにより、安定性の高い固体電解質となる。
【0083】
固体電解質の製造
固体電解質は、上記した重合体または単量体の固体電解質原料と、上記した金属ハロゲン化物とを熱処理することにより製造する。具体的には、まず、固体電解質原料と金属ハロゲン化物とをよく混合した後、好ましくは成形し、次いで、加熱して反応させる。
【0084】
固体電解質原料と金属ハロゲン化物との混合比率は、使用する化合物によっても異なるが、一般に、固体電解質原料のアンモニウム基1モル当たり金属ハロゲン化物4〜8モルとすることが好ましい。
【0085】
混合物を粉体のまま加熱して反応させると高い導電性が得られにくいので、好ましくは混合物の粉体を成形する。このときの成形圧力は、好ましくは400kgf/cm2 以上、より好ましくは700kgf/cm2 以上である。
【0086】
熱処理温度の好ましい範囲は固体電解質原料によって異なるが、一般に好ましくは100〜220℃であり、より好ましくは120〜190℃である。熱処理温度が低すぎると、反応が進みにくくなって十分なイオン伝導性を得るために必要な熱処理時間が長くなりすぎる。一方、熱処理温度が高すぎると、固体電解質原料の熱分解が生じやすくなる。なお、熱処理時間は、通常、8〜20時間程度である。熱処理は大気中で行ってよい場合もあるが、通常、減圧して雰囲気中の酸素量を減らすことが好ましい。大気雰囲気から減圧した場合の好ましい圧力は、通常、10-2Torr程度以下である。この圧力が高すぎると、残存酸素により有機物に酸化反応が生じて劣化してしまい、好ましくない。なお、酸素を含まないArやN2等の不活性気体雰囲気中で熱処理を行う場合には、特に減圧する必要はない。
【0087】
熱処理後、処理物を粉砕して微粉とし、再び成形することが好ましい。このときの成形圧力は、好ましくは400kgf/cm2 以上、より好ましくは700kgf/cm2 以上である。成形圧力が低すぎると、成形品が脆くなって実用的な強度を得ることが困難となる。特に、固体電解質原料として炭素数の少ない直鎖状アルキル基を含む単量体を用いた場合には、この傾向が著しくなる。固体電解質原料として重合体を用いた場合には、脆さについての問題はないが、この場合でも、高い機械的強度を得るためには成形圧力を高くすることが好ましい。なお、高密度の成形体を得るために、成形時に金型内を減圧状態にしておくことが好ましい。
【0088】
検知極
検知極材料には、二酸化炭素と解離平衡を形成する金属炭酸塩を用いる。具体的には、炭酸銀または炭酸銅が好ましく、これらのいずれかを、固体電解質の可動イオン種に応じて選択すればよい。これら炭酸塩は、従来、検知極材料として用いられている炭酸ナトリウムに比べて、耐湿性が良好であり、また、室温でもイオン伝導性が比較的高いことが特長である。このため、室温でも十分な起電力が得られ、また、応答速度も十分に速いものとなる。
【0089】
検知極材料として例えば炭酸銀を用いた場合、検知極側の反応は、
【0090】
【化12】
【0091】
であると考えられる。
【0092】
検知極の形成方法は特に限定されないが、通常、検知極材料の粉末と上記した固体電解質とを積層してプレスすることにより形成することが好ましい。このとき、あらかじめ検知極材料の粉末中または粉末上にPtやNi等からなる導電性メッシュを載せておき、このメッシュにリード線を接続する構造とすることが好ましい。なお、ガス透過性を妨げないものであれば、メッシュ以外の導電材を用いてもよい。例えば、検知極材料粉末と樹脂とを混合したペーストを塗布することにより、検知極を形成してもよい。このとき、相溶性のない溶剤等を混合したり、発泡剤を混合したりしておき、塗布後、乾燥することにより多孔質化することが好ましい。
【0093】
参照極
可動イオンがAgイオンである場合には、溶液系において参照極として多用される銀/塩化銀電極を、本発明のセンサにおける安定な参照極として利用できる。この場合の電極反応は
【0094】
【化13】
【0095】
であると考えられ、検知極に炭酸銀を用いた場合には、全電極反応は
【0096】
【化14】
【0097】
であると考えられる。
【0098】
銀/塩化銀電極を用いない場合には、参照極界面で酸化銀が生成するものと思われる。この場合には、酸素イオン伝導性固体電解質と組み合わせることにより酸素濃度の影響を防ぐことができるが、酸素イオン伝導性固体電解質は、一般にイットリウム安定化ジルコニアなどであって、導電性発現のためには高温が必要となるので、本発明には不適である。したがって、銀/塩化銀電極を用いない場合には、自体が酸化銀を含む参照極、具体的には銀/酸化銀電極を用いることにより、室温動作が可能となる。この場合の電極反応は、
【0099】
【化15】
【0100】
であると考えられ、この場合の全電極反応は、
【0101】
【化16】
【0102】
となると考えられる。なお、可動イオンがCuイオンである場合についても、同様な理由により酸化銅を含む参照極、具体的には銅/酸化銅電極を用いることにより、室温動作が可能となる。この場合の電極反応は、
【0103】
【化17】
【0104】
であると考えられ、この場合の全電極反応は、
【0105】
【化18】
【0106】
となると考えられる。
【0107】
参照極の形成方法は特に限定されないが、例えば以下の方法を用いることが好ましい。銀/塩化銀電極および銀/酸化銀電極の場合には、銀の粉末と塩化銀または酸化銀の粉末とを混合し、固体電解質材料と積層した後に同時に加圧成形することにより形成するか、銀ペーストと塩化銀または酸化銀の粉末とを混合して銀/塩化銀ペーストまたは銀/酸化銀ペーストを調製し、これをPtやNiのメッシュと共に塗布した後、加熱して硬化することにより形成すればよい。また、銅/酸化銅電極の場合には、銅粉末と酸化銅粉末とを混合したものを、固体電解質材料と積層して同時に加圧成形することにより形成するか、上記した銀/酸化銀電極形成の際の銀ペーストおよび酸化銀の替わりに、それぞれ銅ペーストおよび酸化銅を用いればよい。なお、加熱硬化のための温度は、通常、80〜200℃程度であり、セラミックス材料を用いたときのように1000℃前後の高温で焼成する必要がないので、センサの製造が容易であり、省エネルギーでもある。
【0108】
センサ構造および測定時の作用
本発明の二酸化炭素センサの構成例を、図1に示す。このセンサ1は、参照極3、固体電解質4および検知極5が順次積層された構造であり、参照極3内および検知極5内には、それぞれ導電性メッシュ31および51が存在し、各メッシュからはそれぞれリード線31およびリード線51が引き出されて、電位差計に接続されている。本発明の二酸化炭素センサでは、湿度の影響を防ぐために検知極表面以外は測定雰囲気に触れないような構成とすることが好ましい。このため、検知極表面以外には、ガス非透過性材料からなる被覆を設けることが好ましい。ガス非透過性材料としては、例えば塩化ビニル、エバール、アイオノマ、PVAからなる被覆膜、あるいはこれらとAI蒸着フィルムとのラミネート膜等が好ましい。具体的な構造としては、例えば図示するように検知極5表面を除いて、ガス非透過性材料からなる容器2で覆う構造とすることが好ましい。
【0109】
図示例では、固体電解質を挟んで検知極および参照極を対向して設けているが、これら両電極は固体電解質の一方の面上に設けてもよい。両電極をスクリーン印刷法等により固体電解質の同一面上に形成する構成とすれば、生産上、効率が高くなる。
【0110】
本発明の二酸化炭素センサの寸法は特に限定されないが、検知極が形成される表面を固体電解質の上面としたとき、通常、固体電解質の厚さは1μm〜1mm程度、固体電解質の上面の面積は1〜100mm2程度である。また、検知極の厚さは1μm〜1mm程度、検知極の面積は1〜50mm2 程度である。また、参照極の厚さは10μm〜1mm程度、参照極の面積は1〜50mm2 程度である。
【0111】
【実施例】
実施例1
固体電解質原料の合成
アミン化合物とハロゲン化物とを下記表1に示すように組み合わせ、各組み合わせをエタノールに溶解した後、室温でまたは加温しながら、スターラを用いて1〜3日間攪拌した。次いで、生成した白色沈殿を濾過し、少量のエタノールで洗浄し、次いでエーテルで洗浄した後、減圧乾燥して、重合体または単量体の固体電解質原料を得た。収量はいずれも90%以上であった。必要に応じて、エタノールから再結晶により精製してから使用した。なお、アミン化合物とハロゲン化物との混合比は、重合体生成の場合には等モル量とし、単量体生成の場合にはハロゲン化物を大過剰とした。
【0112】
【表1】
【0113】
固体電解質の合成
合成した固体電解質原料と金属ハロゲン化物とをメノウ乳鉢中でよく混合し、700kgf/cm2 で加圧してペレット状の成形体を得、これを減圧下(1×10-3Torr)で熱処理することにより反応させた。熱処理後のペレットは、黒褐色から緑褐色であった。固体電解質と金属ハロゲン化物との組み合わせ、および各組み合わせにおける熱処理温度(反応温度)を、表2に示す。
【0114】
熱処理後のペレットを粉砕し、再び700kgf/cm2 で加圧して成形したところ、ほとんどが黒色となった。
【0115】
このようにして得た固体電解質のイオン伝導度(導電率)を交流インピーダンスメータにて求めた。結果を表2に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
表2から、本発明にしたがって製造された固体電解質は、1×10-4Scm-1 以上の導電率が得られることがわかる。また、環状アミンから得られた固体電解質のほうが導電率が高いことがわかる。
【0118】
なお、原料として重合体を用いた固体電解質のほうが単量体を用いたものよりも吸湿性が低かった。吸湿性は、25℃、80%RH雰囲気中に放置したときの増加重量により評価した。また、成形後の機械的強度を比較したところ、単量体を用いた固体電解質ペレットは比較的脆かったが、重合体を用いたペレットは、機械的強度が高かった。重合体を用いた固体電解質のうち特に好ましい結果を示したものはSE5およびSE11であり、これらには吸湿性がほとんど認められなかった。
【0119】
二酸化炭素センサの作製
固体電解質がAgイオン移動型の場合には、参照極に銀/塩化銀電極または銀/酸化銀電極を用い、Cuイオン移動型の場合には、銅/酸化銅電極を用いて、表3に示すセンサを以下の手順で作製した。
【0120】
銀/塩化銀または銀/酸化銀からなる参照極を、固体電解質および検知極と同時成形することにより形成したセンサでは、まず、参照極となる銀粉末と塩化銀粉末または酸化銀粉末との混合物100mgを金型に入れて軽くプレスした。次に、この上に上記合成工程で得られた熱処理後のペレットを粉砕した粉末200mgを投入して軽くプレスした。さらに、この上に検知極となる炭酸銀等の粉末を50mg載せて軽くプレスし、次いで、ロータリーポンプで減圧しながら700kgf/cm2 の圧力でプレスして、参照極と固体電解質と検知極とからなる積層体を得た。このとき、あらかじめ炭酸銀等の粉末の上に白金メッシュを載せておき、プレス後に白金メッシュにリード線を接続した。
【0121】
参照極が銅/酸化銅電極の場合には、銀粉末の替わりに銅粉末を、塩化銀粉末または酸化銀粉末の替わりに酸化銅粉末を用い、これ以外は上記と同様にして参照極を形成した。
【0122】
なお、センサDでは、参照極を同時成形せず、固体電解質と検知極とを上記と同様にして同時成形により形成した後、参照極形成面と対向する表面に参照極を形成した。この方法では、まず、市販のエポキシ系導電性銀ペーストに塩化銀の粉末を混合してペーストを調製した。このペーストを、リード線を接続した銀メッシュに塗布した後、銀メッシュを固体電解質の前記表面に密着させ、90〜150℃で熱処理してペーストを硬化させ、参照極とした。
【0123】
次に、固体電解質および参照極が測定雰囲気に接触することを防止するために、参照極、固体電解質および検知極からなる積層体を、検知極表面だけが露出するように容器に埋め込み、図1に示す構造のセンサを得た。容器には、ガス透過性のほとんどない厚さ1mmの硬質塩化ビニル製のものを用いた。
【0124】
各センサにおける固体電解質、検知極および参照極の組み合わせを、表3に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
表3に示す各センサを用いて、以下の測定を行った。
【0127】
まず、センサを、ガスの入出口を設けた測定容器中に置き、容器内の空気をいったん軽く減圧した後、窒素80%と酸素20%とからなる混合ガスを注入した。この減圧・注入サイクルを3回繰り返して、容器内の空気をほぼ完全に置換した。次に、センサの起電力が安定したことを確認した後、上記混合ガスに1000ppm の二酸化炭素を加えた被検ガスで容器内のガスを置換し、そのときの起電力を測定した。起電力測定には、内部インピーダンスの大きなポテンシオスタットを用いた。次に、上記混合ガスに100ppm の二酸化炭素を加えた被検ガスで容器内のガスを置換し、そのときの起電力を同様にして測定した。最後に、容器内のガスを上記混合ガスに再び置換して起電力を測定し、当初の起電力と比較した。なお、二酸化炭素濃度はガスクロマトグラフィーにて測定し、また、上記測定は、すべて室温で行った。
【0128】
この測定の結果、表3に示すセンサのすべてについて、二酸化炭素濃度の対数にほぼ比例して起電力が変化すること、また、測定後に二酸化炭素を排除すると当初の起電力に戻ることが確認できた。
【0129】
センサD、E、I、Qのそれぞれにおける二酸化炭素濃度と起電力との関係を示すグラフを、それぞれ図2、図3、図4、図5に示す。これらの図から、二酸化炭素濃度の対数にほぼ比例する起電力が生じていること、センサとして十分な大きさの起電力変化が得られていることがわかる。
【0130】
上記各センサは応答性も良好であり、起電力の変化は10分間前後で安定化した。
【0131】
被検ガスを50%RHとしたときでも、上記各センサの安定性はほとんど影響を受けなかったが、固体電解質原料として重合体を用いたもののほうが、より影響が小さかった。
【0132】
なお、上記表1に示す固体電解質原料の他、下記表4に示す固体電解質原料を用いた場合でも上記と同様な結果が得られた。
【0133】
【表4】
【0134】
以上の結果から、本発明のセンサは、室温動作が十分可能であるといえる。
【0135】
以上の実施例の結果から本発明の効果が明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の二酸化炭素センサの構成例を示す断面図である。
【図2】二酸化炭素濃度とセンサの起電力との関係を示すグラフである。
【図3】二酸化炭素濃度とセンサの起電力との関係を示すグラフである。
【図4】二酸化炭素濃度とセンサの起電力との関係を示すグラフである。
【図5】二酸化炭素濃度とセンサの起電力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 二酸化炭素センサ
2 容器
3 参照極
31 導電性メッシュ
32 リード線
4 固体電解質
5 検知極
51 導電性メッシュ
52 リード線
Claims (6)
- 主鎖中に第4級アンモニウム基を有しハロゲンイオンを対イオンとする、ジアミン化合物とジハロゲン化合物との重合体と、金属ハロゲン化物とを熱処理することにより生成されたものである固体電解質。
- 前記金属ハロゲン化物が、AgまたはCuのハロゲン化物である請求項1の固体電解質。
- 検知極と参照極とがそれぞれ固体電解質に接して設けられており、検知極が二酸化炭素と解離平衡を形成する金属炭酸塩を含み、固体電解質が、アンモニウムイオン部分を有する化合物と金属ハロゲン化物とを熱処理することにより生成されたものである二酸化炭素センサ。
- 前記アンモニウムイオン部分を有する化合物が、アルキルアンモニウムハロゲン化物、アリールアンモニウムハロゲン化物または含窒素環状アンモニウムハロゲン化物である請求項3の二酸化炭素センサ。
- 前記固体電解質が、請求項1の固体電解質である請求項3の二酸化炭素センサ。
- 前記金属ハロゲン化物が、AgまたはCuのハロゲン化物である請求項3〜5のいずれかの二酸化炭素センサ。
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