JP3717294B2 - エンジン用排気弁の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジン用排気弁の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン用排気弁は、エンジンの燃焼室に臨み高温の排気ガスの流れを制御する弁であるから、耐熱性及び耐食性が要求される。
この様な排気弁の製造技術には、例えば特開平4−193912号公報「エンジンバルブの製造方法」が提案され、この製造方法は同公報の第1図のフローに基づいて、SUH35系のオーステナイト系弁用鋼を用いて、加熱温度と鍛造温度を1150〜1250℃として熱間鍛造し、1050〜1150℃で溶体化処理し、機械加工するというものであり、この熱間鍛造温度と溶体化処理温度に加熱することにより、耐クリープ性に優れた排気弁を製造するものである。
なお、溶体化処理(solution treatment)は固溶化処理、固溶化熱処理と同じであって、合金を固溶体範囲まで加熱し、この温度で十分保持して成分金属を固溶させ、これを急冷する熱処理法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
図16は従来のSUH35系オーステナイト鋼における溶体化温度と結晶粒度番号との関係を調べたグラフであり、縦軸の結晶粒番号はJIS−G−0551「鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法」で規定されるもので、その一部を次に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
従って、粒度番号が大きいと結晶粒は小さく、逆に粒度番号が小さいと結晶粒は大きくなる。なお、一般的に耐クリープ性を向上させるには結晶粒を大きくすることが効果的であるが、その反面、結晶粒が大きいと機械的強度が低下するという逆効果がある。
【0006】
また、熱間で鍛造し、室温で機械加工することになるが、熱間温度(1150℃以上)と室温(約25℃)とでは極端に温度が異なるため、熱膨張を見込んで鍛造を実施しても得られた鍛造品の寸法精度は良くない。そのために機械加工が必須となる。
そこで、本発明の目的は耐クリープ性に優れ、しかも機械的強度にも優れ、機械加工を不要若しくは最小限にすることのできる成形方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、13.5%〜19.5%のCrと29.5%〜62.0%のNiとを主成分とし、Cが0.08%以下、Siが0.5%以下、Mnが0.5%以下、Alが0.75%〜2.2%、Nbが0.4%〜1.5%、Bの上限が0.01%、Pが0.03%以下、不純物が0.015%以下で残部がFeからなるオーステナイト系耐熱鋼のビレットを1050℃〜1130℃に加熱して溶体化処理する工程と、
溶体化したビレットをスケール除去し、潤滑処理する工程と、
処理済ビレットを、冷間鍛造で縮径することで軸部を得る軸部形成工程と、
この軸部形成工程を経たビレットを、金型又はビレットを冷却することで、200℃を超えない温度に保ちながら実施する冷間鍛造で拡径するとともに、このときの変形量は前記軸部形成工程における変形量よりも小さく設定して傘部を得る傘部形成工程と、
得られたワークを1000℃〜1080℃に加熱して再度溶体化処理を行い、次いで時効処理する工程とを実施することで、
傘部内部の結晶粒度が3.5〜4.5で、傘部表面及び軸部の結晶粒度が少なくとも7.0であるエンジン用排気弁を得ることを特徴とするエンジン用排気弁の成形方法である。
【0008】
Crが13.5%未満であると耐酸化性が著しく低下する。また19.5%を超えるとσ相脆化が顕著となる。そこで、Crは13.5%〜19.5%の範囲とする。
Niはオーステナイト組織を安定化するための主成分であり、29.5%未満では高温強度並びに疲労強度が不十分となり、また、62.0%超では強度は十分であるが、非常に高価なためコストメリットがなくなる。そこで、Niは、29.5%〜62.0%の範囲にする。
【0009】
溶体化処理温度が、1050℃未満では結晶粒が十分に大きくならず期待する耐クリープ性が得られない。逆に、1130℃を超えると結晶粒は十分に大きくなるものの、鍛造後の表面肌に梨地状の凹凸模様が発生し好ましくない。そこで、溶体化処理は1050℃〜1130℃の温度で実施する。
鍛造が冷間鍛造であるから、精密鍛造が可能となり、鍛造品の寸法精度が飛躍的に高まり、機械加工を省く若しくは最小限にすることができる。
【0010】
さらに、冷間鍛造によって変形力を受けて変形応力の発生した部分は、再溶体化処理によって再結晶微細化するが、それの程度は変形量に依存し、変形が大きいほど微細化する。
1000℃未満では再結晶化は十分には進まず、期待した機械強度が得られない。また、1080℃を超えると再結晶粒の成長が進み粗大化してしまい、これまた期待した機械的強度が得られない。
従って、1000℃〜1080℃で再度溶体化処理し、その後に時効処理することで、耐クリープ性にも、機械的強度にも優れたエンジン用排気弁を得ることができる。
【0011】
エンジン用排気弁は、エンジンの燃焼室に臨み高温の排気ガスの流れを制御する弁であり、特に傘部は高温に晒されるので高い耐熱性や耐食性が要求される。これに対して軸部は相手部品との摺動を主に考えなければならないので、機械的強度が要求される。この様に、エンジン用排気弁は1つの部品でありながら、部位毎に異なる特性が要求される。
更には、小径の軸部のビレットからの変形量と、大径の傘部のビレットからの変形量とが異なるので、鍛造成形は非常に難しいものとなる。
【0012】
そこで、本発明は、傘部と軸部との変形量が大きく異なっていても、鍛造成形に好適で、しかも、部位毎に要求される特性を満足させ得る最適径のビレットを用意し、このビレットを用いて、適度な成形過程(冷間鍛造)を経た後、更に再溶体化処理や時効処理を実施するエンジン用排気弁の成形方法である。
すなわち、傘部は変形量が少ないことから、鍛造前の溶体化処理で得られた大きな結晶粒がそのまま残り、高温強度、耐クリープ性に優れる。また、軸部は大きな変形量によって十分な再結晶微細化が起こり、機械的特性が優れたものとなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るエンジン用排気弁の成形フロー図であり、実施例に比較例を併記したものである。ST××はステップ番号を示す。
ST01:排気弁の素材として、次表に示す実施例1,2,3のオーステナイト系耐熱鋼のビレットを準備する。
【0014】
【表2】
【0015】
ST02:上記ビレットを炉に入れて溶体化処理する。処理条件は次の通である。
炉内温度 1050℃〜1130℃
保持時間 0.5時間
後処理 抽出後、直ちに水冷
【0016】
ST03:酸化スケールを除去する。
ST04:冷間鍛造に備えて、シュウ酸塩および金属石鹸で被膜を形成する。
【0017】
ST05:ビレットを冷間鍛造するが、従来は熱間鍛造であったものが本実施例で冷間鍛造が可能になった理由を含めて以下に詳しく述べる。
図2(a)〜(d)は本発明に係る冷間鍛造の工程図(前半、軸部形成)である。
(a):直径D、長さLのビレット1を第1金型2(先端に円錐面を形成する)にセットし第1パンチ3で据え込む。
(b):先端が円錐になった中間品4(中間加工品を「中間品」と呼ぶことにする。以下同じ。)を第2金型5(径d2の軸部を形成する)にセットし第2パンチ6で据え込む。
(c):径d2の軸部を有する中間品7を第3金型8(径d3の軸部を形成する)にセットし第3パンチ9で据え込む。
(d):径d3の軸部を有する中間品11を第4金型12(径d4の軸部を形成する)にセットし第4パンチ13で据え込む。
【0018】
図3(a)〜(c)は本発明に係る冷間鍛造の工程図(後半、傘部形成)である。
(a):径d4の軸部を有し、且つ径D1の傘部を有する中間品14を第5金型15(径D2の傘部を形成する)にセットし第5パンチ16で据え込む。
(b):径D2の傘部を有する中間品17を第6金型18(径D3の傘部を形成する)にセットし第6パンチ19で据え込む。
(c):以上の6工程を経て完成したエンジン用排気弁20を示す。
【0019】
図4(a),(b)は排気弁における据込み率の説明図である。
(b)の排気弁20は軸部21と傘部22とからなり、軸部21は径d6、長さl6のストレート部分とする。傘部22の長さ(高さ)はL6とする。軸部21の体積v6は(π/4)×(d6)2×l6で求まる。
(a)において、ビレット1を軸部分1aと傘部分1bに仮想的に区分けする。具体的には軸部分1aを前記v6相当高さ{v6÷(π/4)×D2}とし、残りを傘部分1bの高さL0とすればよい。
据込み率は据込み長さを据込み前の長さで除した値であるから、本発明においては、据込み率は{(L0−L6)/L0}×100(%)と定義する。
【0020】
ところで、図2,3の冷間鍛造工程でワーク(中間品、完成品)が熱くなることが分かった。そこで、温度を計測した。
図5は排気弁を冷間鍛造したときの据込み率と表面温度の関係を示すグラフであり、横軸は据込み率、縦軸は表面温度である。
冷間鍛造では変形しにくい素材を塑性変形するために、据込み率に比例して表面温度が上り、据込み率70%では約250℃、据込み率80%では約300℃に達した。
【0021】
そこで本発明者らは温度と耐熱鋼の割れの関係を調べた。
図6はオーステナイト系耐熱鋼の温度と据込み限界との関係を示すグラフであり、横軸は試験温度、縦軸は割れが発生したときの据込み率を示す。
【0022】
図6において実施例1,2,3共に、−50℃〜600℃の領域では温度上昇と共に据込み限界が小さくなる。すなわち、割れやすくなる。これが、図5で述べた加工に伴なう温度上昇でワークが割れた原因であると思われる。
細かくは、実施例1(30Ni−15Cr材)では200℃で据込み限界が70%を切る。実施例2(40Ni−15Cr材)では200℃での据込み限界が73%、実施例3(60Ni−18Cr材)では200℃での据込み限界が75%であるから、いづれも実施例1よりは有利である。
このことから、オーステナイト系耐熱鋼のビレットを70%の据込み率で且つ冷間鍛造法で排気弁にするには、ビレットや中間品の温度を200℃以下にすれば、割れは防止できることが分かる。
ビレット(中間品を含む)を200℃を超えぬように管理することで、排気弁の完全冷間鍛造化が実現した。冷間鍛造法であるから、スケール化の心配がなく、加熱設備は不要となり、仕上り精度が良好となる。
【0023】
図7は本発明に係る鍛造金型の断面図であり、この鍛造金型は図3(a)に示した第5金型15であり、この第5金型15は超硬合金のダイ15aを合金工具鋼(例えばSKD−JIS)のベース15bに嵌合したものであり、円柱状のダイ15aの底のエッジを大きく削って三角断面通路24を形成したことを特徴ととする。
【0024】
図8は本発明に係る鍛造金型の平面図であり、ベース15bに冷却剤の供給路25及び排出路26を開け、供給路26を通じて例えば冷却水を三角断面通路24へ供給する。冷却水は三角断面通路24を巡る間にダイ15aを強制冷却したのち、排出路26を通じて排出する。27は給水ホース、28は排水ホースである。
ダイ15aを強制冷却したことにより、ワークを200℃を超えないようにしたものである。
【0025】
なお、三角断面通路24は上記した通りに、ベース15bにダイ15aを嵌合する構造の金型であれば、極めて容易に形成することができ、型代の高騰を抑えることができる。しかし、水等の冷却剤を流すことが重要であるため、断面形状、形成箇所、本数は任意である。
【0026】
また本実施例では、第5金型15並びに第6金型18に前記三角断面通路24を設け、他の第1〜第4金型2,5,8,12には、三角断面通路24を設けなかった。その理由は次の通である。
図2(a)〜(d)は実質的に軸部形成工程である。軸部はビレット1を縮径することで得られる。オーステナイト系耐熱鋼やマルテンサイト系耐熱鋼は延性には乏しいものの圧縮には強い。軸部形成に伴なう縮径は表面を圧縮するものであるから、仮に200℃を超えても割れの発生する心配はない。よって、第1〜第4金型2,5,8,12は無冷却とした。
一方、図3(a),(b)は傘部形成工程であり、傘部は拡径して得られる。オーステナイト系耐熱鋼やマルテンサイト系耐熱鋼は圧縮には強いが引張りには弱い。傘部形成に伴なう拡径は表面に引張りが作用する。従って、200℃を超えると割れが心配となる。よって、第5金型15並びに第6金型18を強制冷却するようにしたものである。
【0027】
第5金型15並びに第6金型18のみを冷却金型にしたことで、諸経費の高騰を押えるこができる。しかし、第1〜第4金型2,5,8,12をも冷却金型にすることは差支えない。
また、冷却剤は十分に冷却することが望ましく、安価な水の他、不凍液、冷凍機用冷媒であればよい。
【0028】
図9は本発明に係る冷却方式の別実施例を示す図であり、第5金型15と第5パンチ16との間の中間品14を冷却ノズル31,31から噴射した冷却ガスで強制冷却するものである。
冷却ガスは冷凍機で十分に冷やした空気が好適である。
この例は、中間品14の傘部を狙って、冷却ガスを吹きつけたので、即効性があり、且つ金型費を低く抑えることができる。しかし、冷却ガスは熱容量が冷却液に比べて格段に小さいので、大きな中間品14には不向きである。
【0029】
そこで、図7の金型冷却と図9のガスによる直接冷却との双方を組合わせ、お互いの長所を引出すようにしてもよい。
【0030】
図1に戻って、ST05を経たものを第1次排気弁とし、この第1次排気弁を完成した排気弁とすることはできる。この第1次排気弁の機械的強度を向上することを目的に、再度溶体化処理することは有益である。
ST06:第1次排気弁を次の要領で再度溶体化処理を行う。
炉内温度 1000℃〜1080℃
保持時間 0.5時間
後処理 抽出後、直ちに水冷
次いで、時効処理を実施する。
炉内温度 700℃〜800℃
保持時間 4時間
後処理 空冷
これで、機械的強度は高まる。
【0031】
比較例は、ST101〜ST105からなるが、1150℃〜1250℃での熱間鍛造、1050℃〜1150℃での溶体化処理、機械加工を基本工程としたものである。
これに対して、実施例は、1050℃〜1130℃での溶体化処理、200℃以下での冷間鍛造、必要に応じて実施する1000℃〜1080℃での再度の溶体化処理を基本工程とするものである。
即ち、本実施例は冷間鍛造を円滑に実施するために、溶体化処理(1050℃〜1130℃)でビレットを軟化処理したこと。冷間鍛造に伴なう内部歪などを再度の溶体化処理(1000℃〜1080℃)で是正して機械的強度を改善したものである。
【0032】
【実施例】
本発明に係る実施例を次に説明する。
ビレットの材質:オーステナイト系耐熱鋼(前記実施例1,2,3相当品)
溶体化処理の条件:
炉内温度 1120℃
保持時間 0.5時間
後処理 抽出後、直ちに水冷
【0033】
得られた処理品を、スケール除去し、潤滑処理し、200℃以下で冷間鍛造して、第1次排気弁を得た。
図10は第1次排気弁の断面模式図であり、第1次排気弁41は、断面の大部分が次図で示す結晶粒度であった。
図11は第1次排気弁の断面の顕微鏡写真(拡大倍率100)であり、この写真から結晶粒度は、塑性変形でつぶれて見えるが、約「3.5」であることが判明した。
【0034】
上記第1次排気弁41を再度溶体化処理して第2次排気弁とした。
再度溶体化処理の条件:
炉内温度 1050℃
保持時間 0.5時間
後処理 抽出後、直ちに水冷
【0035】
図12は第2次排気弁の断面模式図であり、第2次排気弁42の傘部43は、コア44と中間層45と表層46とが明らかに結晶粒度が異なり、軸部47はほぼ一様であった。
鍛造での変形量に依存して再結晶化の程度が変化し、大きな変形部位ほど再結晶化が進み微細な粒度になったことにより、前記の結晶粒度の違いとなって現れている。
【0036】
図13(a),(b)は第2次排気弁のコア及び中間層の断面の顕微鏡写真(拡大倍率100)である。
コア44の結晶粒度は約「3.5」であった。
中間層45の結晶粒度は約「4.5」であった。
図14(a),(b)は第2次排気弁の表層及び軸部の断面の顕微鏡写真(拡大倍率100)である。
表層46の結晶粒度は約「7.0」であった。
軸部47の結晶粒度は約「7.0」であった。
【0037】
結晶粒度が7.0であれば結晶粒径は十分に小さく、機械的強度は高い。一方、結晶粒度が3.5〜4.5であれば結晶粒径は十分に大きく、高温クリープ強度が高い。
傘部の表層46はバルブシートに当るため機械強度が高い程よい。軸部47も圧縮軸力が作用するため機械強度は高い程よい。この点において、表層46,軸部47ともに結晶粒度が7.0であって機械的強度は十分に高い。そして、コア44や中間層45は結晶粒度が3.5〜4.5であるため高温クリープ強度が高いため、優れた排気弁が得られたことになる。
【0038】
図15は本発明のオーステナイト鋼(実施例1,2,3)における溶体化温度と結晶粒度番号との関係を調べたグラフである。
実施例1,2,3においては、▲1▼1050℃〜1130℃で溶体化処理すると、結晶粒度番号3〜5.5が得られる。しかし、1130℃を超えると結晶が粗大化し、鍛造後に表面に梨地状の凹凸模様が発生する。また、1050℃以下では結晶粒は大きくならず、軟化も不十分で冷間鍛造が困難になること、及び排気弁に求められる高温クリープ特性が得られない。従って、溶体化処理は1050℃〜1130℃で実施する。
【0039】
また実施例1,2,3において、▲2▼1000℃〜1080℃で再度の溶体化処理をすると、表層及び軸部は結晶粒度番号が4.5〜7.5となり、結晶粒が微細化されたことにより、機械的強度が高まる。
【0040】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、鍛造が冷間鍛造であるから、精密鍛造が可能となり、鍛造品の寸法精度が飛躍的に高まり、機械加工を省く若しくは最小限にすることができる。
【0041】
さらに、得られたワークを1000℃〜1080℃に加熱して再度溶体化処理を行い、次いで時効処理を実施する。再度溶体化処理後の時効処理で、鍛造品の結晶粒度の調整を行い、高温クリープ強度の高い傘部と、機械的強度の高い軸部とを併せ持った排気弁を得ることができる。
【0042】
そして、本発明の成形方法によれば、成分範囲が異なる他の材料においても、溶体化処理して冷間鍛造成形及び加工した後に、再度溶体化処理して時効処理を施すことにより、1つの製品で求められる要件が部位毎に異なる製品、例えば耐クリープ性が要求される、傘部の変形量(歪量)が小さくて軸部の変形量(歪量)が大きい製品、特にエンジンバルブなどの自動車エンジン部品などを生産することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエンジン用排気弁の成形フロー図
【図2】本発明に係る冷間鍛造の工程図(前半、軸部形成)
【図3】本発明に係る冷間鍛造の工程図(後半、傘部形成)
【図4】排気弁における据込み率の説明図
【図5】排気弁を冷間鍛造したときの据込み率と表面温度の関係を示すグラフ
【図6】オーステナイト系耐熱鋼の温度と据込み限界との関係を示すグラフ
【図7】本発明に係る鍛造金型の断面図
【図8】本発明に係る鍛造金型の平面図
【図9】本発明に係る冷却方式の別実施例を示す図
【図10】第1次排気弁の断面模式図
【図11】第1次排気弁の断面の顕微鏡写真(拡大倍率100)
【図12】第2次排気弁の断面模式図
【図13】第2次排気弁のコア及び中間層の断面の顕微鏡写真(拡大倍率100)
【図14】第2次排気弁の表層及び軸部の断面の顕微鏡写真(拡大倍率100)
【図15】本発明のオーステナイト鋼(実施例1,2,3)における溶体化温度と結晶粒度番号との関係を調べたグラフ
【図16】従来のSUH35系オーステナイト鋼における溶体化温度と結晶粒度番号との関係を調べたグラフ
【符号の説明】
1…ビレット、2,5,8,12,15,18…金型、20…エンジン用排気弁、41…第1次排気弁、42…第2次排気弁。
Claims (1)
- 13.5%〜19.5%のCrと29.5%〜62.0%のNiとを主成分とし、Cが0.08%以下、Siが0.5%以下、Mnが0.5%以下、Alが0.75%〜2.2%、Nbが0.4%〜1.5%、Bの上限が0.01%、Pが0.03%以下、不純物が0.015%以下で残部がFeからなるオーステナイト系耐熱鋼のビレットを1050℃〜1130℃に加熱して溶体化処理する工程と、
溶体化したビレットをスケール除去し、潤滑処理する工程と、
処理済ビレットを、冷間鍛造で縮径することで軸部を得る軸部形成工程と、
この軸部形成工程を経たビレットを、金型又はビレットを冷却することで、200℃を超えない温度に保ちながら実施する冷間鍛造で拡径するとともに、このときの変形量は前記軸部形成工程における変形量よりも小さく設定して傘部を得る傘部形成工程と、
得られたワークを1000℃〜1080℃に加熱して再度溶体化処理を行い、次いで時効処理する工程とを実施することで、
傘部内部の結晶粒度が3.5〜4.5で、傘部表面及び軸部の結晶粒度が少なくとも7.0であるエンジン用排気弁を得ることを特徴とするエンジン用排気弁の成形方法。
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