JP3717128B2 - ピラゾロインドリウム誘導体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗腫瘍作用を有する新規化合物及び該化合物を有効成分として含む医薬に関する。さらに具体的には、本発明はエキソメチレン基又はイミノ基を有し抗腫瘍作用を有するピラゾロインドリウム誘導体及び該化合物を有効成分として含む抗腫瘍剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
癌化学療法薬として種々の抗腫瘍性化合物が臨床上用いられている。しかしながら、一般に、抗腫瘍性化合物は正常細胞に対しても強い細胞毒性を有しており、癌化学療法に際して嘔気、脱毛、白血球減少などが発生することが知られている。また、腫瘍細胞が抗腫瘍剤に対して耐性を獲得するということも知られている。このような状況から、新たな作用機序に基づく癌化学療法薬の開発が求められている。
【0003】
DNA トポイソメラーゼはDNA の高次構造(スーパーコイル)の変換を触媒する酵素であり、真核生物及び原核生物においてDNA の複製過程を伴う細胞増殖に必須の酵素であることが知られている。真核細胞及び原核細胞には、それぞれ2種のDNA トポイソメラーゼ、すなわち、トポイソメラーゼ I(topoisomerase I, I 型トポイソメラーゼ: Topo I) 及びトポイソメラーゼ II(topoisomerase II, II型トポイソメラーゼ: Topo II)の存在が明らかにされている。原核生物のトポイソメラーゼ II はジャイレース(gyrase)と呼ばれる場合もある。
【0004】
真核生物におけるこれら2種の酵素の機能は完全には解明されていないが、トポイソメラーゼ II は、二本鎖DNA からエネルギー的に不安定な負のスーパーコイル型のDNA を形成する作用とスーパーコイルDNA からエネルギー的に安定なリラックス型のDNA を形成する作用とを有しており、これらの作用にはいずれもATP からのエネルギー供給が必要であることが知られている。また、トポイソメラーゼ Iは、スーパーコイル型DNA からリラックス型のDNA を形成する作用を有しており、この作用はATP 及びMg2+イオン非要求性であることも明らかにされている。
【0005】
哺乳類動物に存在するDNA トポイソメラーゼの作用を阻害する物質のうち、ある種の物質が、哺乳類腫瘍細胞に対して選択的に増殖抑制作用を示し、抗腫瘍剤として有用であることが知られている。例えば、トポイソメラーゼ Iを阻害するトポテシンやトポイソメラーゼ II (Topo II) を阻害するエトポシドがそれぞれ臨床で用いられている。しかしながら、トポイソメラーゼ Iおよびトポイソメラーゼ II の両者に対して阻害作用を有する物質は未だ抗腫瘍剤として開発されていない。このような作用を有する物質は、既存の抗腫瘍剤に耐性化した腫瘍細胞に対しても交差耐性を示さず、抗腫瘍剤として有用であることが期待できる。
【0006】
一方、ピラゾロインドール骨格を有する化合物は、例えば、片山ら(Katayama, H., et al., Chem. Pharm. Bull., 38, pp.1129-1135, 1990); 片山ら(Katayama, H., et al., Chem. Pharm. Bull., 40, pp.2267-2269, 1992); シェンら(Shen, J.K., et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans.1, pp.2087-2097, 1993); 及びシェンら(Shen, J.K., et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans.1, pp.1871-1877, 1994)の報告に記載されているが、これらの刊行物には、ピラゾロインドール骨格を有する化合物のDNA トポイソメラーゼ阻害作用は示唆ないし教示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、DNA トポイソメラーゼ阻害作用を有する新規な化合物を提供することにあり、具体的には、トポイソメラーゼ I及びトポイソメラーゼ II の両者に対して阻害作用を有する新規な化合物を提供することにある。また、本発明は、DNA トポイソメラーゼ阻害作用を有し、抗腫瘍剤の有効成分として有用な化合物を提供することを目的としており、さらに、トポイソメラーゼ I及びトポイソメラーゼ II の両者に対して阻害作用を有し、抗腫瘍剤の有効成分として有用な化合物を提供することも目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、下記の一般式(I) で示される新規なピラゾロインドリウム誘導体がトポイソメラーゼ I及びトポイソメラーゼ II のいずれに対しても強い阻害活性を示しており、新しい作用機序に基づく抗腫瘍剤の有効成分として極めて有用であることを見い出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0009】
すなわち本発明は、下記の一般式(I):
【化2】
Figure 0003717128
〔式中、
Q は CH 又は窒素原子を示し;
R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、チオール基、C1-6アルキルチオ基、シアノ基、カルバモイル基、ニトロ基、アシル基、又はアシルオキシ基を示し;
R3はC1-6アルキル基(C1-6アルキル基は、ハロゲン原子、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、チオール基、C1-6アルキルチオ基、シアノ基、カルバモイル基、ニトロ基、アシル基、及びアシルオキシ基からなる群から選ばれる置換基を1個又は2個以上有していてもよい)を示し;
R4は水素原子、C1-6アルキル基、フェニル基、フェニル置換C1-6アルキル基、又はフェニル置換C2-6アルケニル基(C1-6アルキル基、フェニル基、フェニル置換C1-6アルキル基のフェニル基部分、又はフェニル置換C2-6アルケニル基のフェニル基部分は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、チオール基、C1-6アルキルチオ基、シアノ基、カルバモイル基、ニトロ基、アシル基、及びアシルオキシ基からなる群から選ばれる置換基を1個又は2個以上有していてもよい)を示し;
R5はC1-6アルキル基、フェニル基、フェニル置換C1-6アルキル基又はフェニル置換C2-6アルケニル基(C1-6アルキル基、フェニル基、フェニル置換C1-6アルキル基のフェニル基部分、又はフェニル置換C2-6アルケニル基のフェニル基部分は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、チオール基、C1-6アルキルチオ基、シアノ基、カルバモイル基、ニトロ基、アシル基、及びアシルオキシ基からなる群から選ばれる置換基を1個又は2個以上有していてもよい)を示し;
X- は塩形成性陰イオンを示す(ただし、R1ないしR5のいずれか1つの置換基がプロトン供与性基である場合には X- は存在しなくてもよい)〕
で示される新規な化合物を提供するものである。
【0010】
また、本発明の別の態様によれば、上記化合物からなるDNA トポイソメラーゼ阻害剤;上記化合物からなる真核細胞のDNA トポイソメラーゼ阻害剤;上記化合物からなるトポイソメラーゼ I及びトポイソメラーゼ II 阻害剤;上記化合物からなる真核細胞のトポイソメラーゼ I及びトポイソメラーゼ II 阻害剤;上記化合物からなる医薬;上記化合物を有効成分として含む医薬;抗腫瘍剤として用いる上記の各医薬;上記化合物を有効成分として含む医薬用組成物;並びに、抗腫瘍剤として用いる上記の医薬用組成物も提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本明細書において、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基としては直鎖又は分枝鎖のいずれを用いてもよい。アルケニル基は1又は2以上の不飽和結合を有していてもよく、個々の不飽和結合はE-又はZ-配置のいずれであってもよい。また、例えば、C1-6アルキル基と記載した場合には炭素数 1〜6 個のアルキル基を示す。C1-6アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert- ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などを用いることができ、C1-6アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert- ブトキシ基、n-ペントキシ基、n-ヘキソキシ基などを用いることができる。また、本明細書において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれを用いてもよい。
【0012】
上記の一般式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、チオール基、C1-6アルキルチオ基、シアノ基、カルバモイル基、ニトロ基、アシル基、又はアシルオキシ基を示す。C1-6アルキルアミノ基としては1個のC1-6アルキル基、又は同一若しくは異なる2個のC1-6アルキル基で置換されたアミノ基を用いることができ、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基などを用いることができる。C1-6アルキルカルボニルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基やプロピオニルアミノ基などを用いることができる。
【0013】
アシル基(R'-CO-)としては、アルデヒド基 (R'= 水素原子)、アルキル置換カルボニル基 (R'= アルキル基)、及びアリール置換カルボニル基 (R'= アリール基)のいずれを用いてもよい。アルキル置換カルボニル基においてカルボニル基に置換するアルキル基としてはC1-6アルキルが好ましく、アリール置換カルボニル基においてカルボニル基に置換するアリール基としてはフェニル基やナフチル基などのアリール基、好ましくはフェニル基を挙げることができる。アシルオキシ基は上記のアシル基のカルボニル炭素に酸素原子が結合して形成される基(R'-CO-O-)を意味する。
【0014】
R1及びR2は上記式で示される化合物の5-ないし8-位の任意の2カ所に置換することができ、それぞれの置換位置は特に限定されない。R1が水素原子を示す場合には、R2は6-位の置換基であることが好ましい。この場合には、R2がアミノ基、C1-6アルキルアミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、又はアシルオキシ基であることがさらに好ましく、R2がアミノ基、ヒドロキシ基、塩素原子、フッ素原子、又はアセトキシ基であることが最も好ましい。また、R1及びR2が同時に水素原子を示す化合物は本発明の最も好ましい態様である。
【0015】
R3は1-位の窒素原子上に置換して4級塩を形成するC1-6アルキル基を示す。R3が示すアルキル基は、ハロゲン原子、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、チオール基、C1-6アルキルチオ基、シアノ基、カルバモイル基、ニトロ基、アシル基、及びアシルオキシ基からなる群から選ばれる1個又は2個以上の置換基を任意の位置に有していてもよい。2個以上の置換基を有する場合には、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよく、それぞれC1-6アルキル基の同一又は異なる炭素上に置換することができる。例えば、R3として、無置換のC1-6アルキル基、ベンジル基やフェネチル基などのアラルキル基、トリフルオロメチル基や2,2,2-トリフルオロエチル基などのハロゲン化アルキル基などが好ましい。これらのうち、無置換の直鎖C1-4アルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0016】
R4は水素原子、C1-6アルキル基、フェニル基、フェニル置換C1-6アルキル基、又はフェニル置換C2-6アルケニル基を示し、R5はC1-6アルキル基、フェニル基、フェニル置換C1-6アルキル基又はフェニル置換C2-6アルケニル基を示す。これらの基において、C1-6アルキル基、フェニル基、フェニル置換C1-6アルキル基のフェニル基部分、又はフェニル置換C2-6アルケニル基のフェニル基部分は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、C1-6アルキルカルボニルアミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、チオール基、C1-6アルキルチオ基、シアノ基、カルバモイル基、ニトロ基、アシル基、及びアシルオキシ基からなる群から選ばれる1個又は2個以上の置換基を任意の位置に有していてもよい。2個以上の置換基を有する場合には、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよく、それぞれ該C1-6アルキル基の同一又は異なる炭素上、又はフェニル環の任意の異なる炭素上に置換することができる。
【0017】
R4としては、水素原子、C1-6アルキル基、フェニル基、フェニル置換C1-6アルキル基、又はフェニル置換C2-6アルケニル基が好ましい。また、C1-6アルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、又はニトロ基から選ばれる1の置換基を任意の位置、好ましくはp-位に有するフェニル基もR4として好適に使用できる。R4として、より好ましくは、水素原子、直鎖C1-4アルキル基、フェニル基、ベンジル基やフェネチル基等のフェニル置換直鎖C1-4アルキル基、2-フェニルエテニル基や3-フェニル-1- プロペニル基等のフェニル置換直鎖C2-4アルケニル基、p-ジメチルアミノ基等のp-C1-4ジアルキルアミノフェニル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-アセトキシフェニル基等のp-C1-4アルキルカルボニルオキシフェニル基、又はp-ニトロフェニル基を用いることができる。例えば、R4がC1-6アルキル基、フェニル基、フェニル置換C1-6アルキル基、又はフェニル置換C2-6アルケニル基であることが好ましく、さらに好ましい基は、水素原子、メチル基、フェニル基、フェネチル基、2-フェニルエテニル基であり、メチル基、フェニル基、2-フェニルエテニル基が最も好ましい基である。
【0018】
R5としては、フェニル基又はp-位にC1-6アルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、又はニトロ基から選ばれる1の置換基を有するフェニル基が好ましい。より好ましくは、フェニル基、p-アミノフェニル基、p-C1-6アルキルアミノフェニル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-アシルオキシフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-C1-6アルコキシフェニル基、又はp-C1-6アルキルカルボニルアミノフェニル基を用いることができる。さらに好ましくは、フェニル基、p-アミノフェニル基、p-メチルアミノフェニル基やp-ジメチルアミノフェニル基等のp-C1-4モノ若しくはジアルキルアミノフェニル基、p-ヒドロキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基などのp-C1-4直鎖アルキルカルボニルアミノフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-C1-4直鎖アルコキシフェニル基、又はアセトキシフェニル基等のp-C1-4直鎖アルキルカルボニルオキシフェニル基を用いることができる。特に好ましい基は、フェニル基、p-ジC1-4直鎖アルキルアミノフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-C1-4直鎖アルキルカルボニルオキシフェニル基であり、フェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-アセトキシフェニル基が最も好ましい。
【0019】
Q は CH 又は窒素原子を示し、より具体的には、Q が CH の場合には =Q-R5はエキソメチレン基(=CH-R5)を示し、Q が窒素原子の場合には=Q-R5 はイミノ基(=N-R5)を示す。 X- は塩形成性陰イオンを示すが、R1ないしR5のいずれか1つの置換基がプロトン供与性基である場合には、1-位の窒素原子の陽性電荷と該プロトン供与性基の陰性電荷とが釣り合って中性電荷の分子(いわゆるツビッターイオン型の分子)が形成される場合がある。従って、 X- を有しないツビッターイオン型の化合物も本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。このような場合としては、例えば、R1がヒドロキシル基である場合等を例示することができる。
【0020】
塩形成性陰イオンは、1-位の窒素原子により形成される4級アンモニウムの陽イオンと対をなして、実質的に中性の電荷の分子を与えることができるものならば特に限定されることはなく、例えば、ヒドロキシアニオン;クロルアニオン、ブロモアニオン、ヨードアニオン、フルオロアニオン等のハロゲンアニオン;酸アニオン等を用いることができる。酸アニオンは広義にプロトン供与性分子から水素原子を除いた残りの原子団を意味し、より具体的には、その例として有機酸残基および無機酸残基を挙げることができる。
【0021】
有機酸残基としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等の低級脂肪酸;安息香酸、p-ニトロ安息香酸等の置換又は未置換の安息香酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の(ハロ)低級アルキルスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p-ニトロベンゼンスルホン酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホン酸等の置換又は未置換のアリールスルホン酸;ジフェニルリン酸等の有機リン酸等から水素原子を除いた残りの原子団を挙げることができる。無機残基としては、亜硝酸、硝酸、硫酸又は過塩素酸、あるいはホウフッ化水素酸等のハロゲン化水素酸等から水素原子を除いた残りの原子団を挙げることができる。
【0022】
本発明の化合物がアミノフェニル基やジメチルアミノフェニル基などの塩基性置換基を有する場合、本発明の化合物は、これらの基について、遊離形態又は酸付加塩の形態として存在する場合がある。このような場合、酸付加塩としては、例えば、上記の有機酸又は無機酸の塩を用いればよい。また、上記一般式(I) で表される化合物には、=Q-R5 で示される置換エキソメチレン基又は置換イミノ基のそれぞれについてZ-配置又はE-配置の立体配座を有する化合物が存在するが、これらの純粋な形態の化合物または任意の割合の混合物はいずれも本発明の範囲に包含される。さらに、本発明の化合物は置換基の種類により、1又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、これらの1若しくは2個以上の不斉炭素に基づく任意の光学異性体、又は2個以上の不斉炭素に基づく任意のジアステレオ異性体、あるいは、純粋な形態の上記異性体、任意の2以上の上記異性体の任意の割合の混合物、又はラセミ体等も本発明の範囲に包含される。上記に説明した種々の形態の本発明の化合物の任意の水和物や任意の溶媒和物も本発明の範囲に包含される。
【0023】
以下の表1に本発明の好ましい化合物を例示するが、本発明の範囲はこれらの化合物に限定されることはない。表中、例えば 6-NH2及びp-(CH3)2N-C6H5などの表記は、それぞれ6-位に置換したアミノ基及びp-ジメチルアミノフェニル基を示し、 OAcはアセトキシ基を示す。TFMSはCF3SO3 - (トリフルオロメタンスルホン酸アニオン)を示し、また、表中の例示化合物番号は、実施例中の化合物番号に対応しており、これらの化合物は本発明のうち特に好ましい化合物である。
【0024】
【表1】
───────────────────────────────────
R1 R2 R3 R4 R5 Q X
───────────────────────────────────
H H CH3 C6H5 C6H5 CH TFMS (例2)
H H CH3 C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS (例1)
H H CH3 C6H5 p-NO2-C6H5 CH TFMS (例3)
H H CH3 C6H5 p-OH-C6H5 CH TFMS (例4)
H H CH3 C6H5 p-OCH3-C6H5 CH TFMS
H H CH3 C6H5 p-OAc-C6H5 CH TFMS (例5)
H H CH3 C6H5 p-NH2-C6H5 CH TFMS
H H CH3 C6H5 p-NHCH3-C6H5 CH TFMS
H H CH3 C6H5 p-NHAc-C6H5 CH TFMS
H H CH3 C6H5 C6H5 N TFMS
H H CH3 C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 N TFMS (例8)
H H CH3 C6H5 p-NO2-C6H5 N TFMS
H H CH3 C6H5 p-OH-C6H5 N TFMS
H H CH3 C6H5 p-OAc-C6H5 N TFMS
H H CH3 C6H5-CH=CH- C6H5 CH TFMS
H H CH3 C6H5-CH2CH2- C6H5 CH TFMS
H H CH3 CH3 C6H5 CH TFMS
H H CH3 H C6H5 CH TFMS
H H CH3 p-(CH3)2N-C6H5 C6H5 CH TFMS
H H CH3 p-OH-C6H5 C6H5 CH TFMS
H H CH3 p-AcO-C6H5 C6H5 CH TFMS
H H CH3 p-NO2-C6H5 C6H5 CH TFMS
H H CH3 C6H5-CH=CH- p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS (例6)
H H CH3 C6H5-CH2CH2- p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H H CH3 CH3 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS (例7)
H H CH3 H p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H H CH3 p-(CH3)2N-C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H H CH3 p-OH-C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H H CH3 p-AcO-C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H H CH3 p-NO2-C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 p-NO2-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 p-OH-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 p-OCH3-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 p-OAc-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 p-NH2-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 p-NHCH3-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 p-NHAc-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5-CH=CH- C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5-CH2CH2- C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 CH3 C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 H C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 p-(CH3)2N-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 p-OH-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 p-AcO-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 p-NO2-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 N TFMS
H 6-NH2 CH3 C6H5-CH=CH- p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H 6-NH2 CH3 CH3 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 p-NO2-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 p-OH-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 p-OCH3-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 p-OAc-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 p-NH2-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 p-NHCH3-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 p-NHAc-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5-CH=CH- C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5-CH2CH2- C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 CH3 C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 H C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 p-(CH3)2N-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 p-OH-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 p-AcO-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 p-NO2-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 N TFMS
H 6-OH CH3 C6H5-CH=CH- p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H 6-OH CH3 CH3 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 p-NO2-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 p-OH-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 p-OCH3-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 p-OAc-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 p-NH2-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 p-NHCH3-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 p-NHAc-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5-CH=CH- C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5-CH2CH2- C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 CH3 C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 H C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 p-(CH3)2N-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 p-OH-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 p-AcO-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 p-NO2-C6H5 C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5 p-(CH3)2N-C6H5 N TFMS
H 6-AcO CH3 C6H5-CH=CH- p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
H 6-AcO CH3 CH3 p-(CH3)2N-C6H5 CH TFMS
───────────────────────────────────
【0025】
本発明の化合物は種々の方法により製造することができるが、その代表的な製造法を以下のスキームに一例として示す。もっとも、本発明の化合物の製造方法はこれらの方法に限定されることはなく、また、本発明の化合物の範囲はこの製造方法によって製造されたものに限定されることはない。
【化3】
Figure 0003717128
【0026】
スキーム中の式(V) で表される化合物(「化合物(V) 」という。以下、同様である。)とR5-CHOで表されるアルデヒド誘導体又はR5-NO で表されるニトロソ誘導体とを酸性条件で縮合させることにより、目的とする本発明の化合物(I) を得ることができる。この縮合反応により、エキソメチレンまたはイミン部分に関してE-配置又はZ-配置の異性体が得られるが、一般的には、縮合の反応時間が短いとE-配置の異性体とZ-配置の異性体がほぼ同量生成し、縮合の反応時間が長いとZ-配置の異性体が主生成物として得られる。
【0027】
化合物(V) は公知の化合物(例えば、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1. pp.2087-2097, 1993; J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1. pp.1871-1877, 1994; 及び Chem. Pharm. Bull., 40, pp.2267-2269, 1992)であるか、またはこの分野で通常用いられる方法に従って、容易に入手可能な原料から当業者が容易に製造可能な化合物である。例えば、化合物(V) は、化合物(II)の酸化あるいは化合物(III) の脱水によって得られる化合物(IV)をさらに4級化反応に付するすることによって製造可能である。化合物(II)及び(III) の代表的な化合物は公知刊行物に記載されている(化合物(II)について Chem. Pharm. Bull., 38, pp.1129-1135, 1990 等、化合物(III) については J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1., pp.2087-2097, 1993 等を参照)。
【0028】
上記のスキームに示した反応についてより具体的に説明するが、本発明の化合物(1) の製造条件はこれらの説明の特定の細部に限定されることはなく、当業者はこれらの条件に適宜の変更や修飾を加えることが可能であることはいうまでもない。
【0029】
化合物(II)を溶媒の存在下に酸化剤で処理することにより化合物(IV)を得ることができる。溶媒として、例えば、クロロホルム、ジクロルメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒;又はこれらの混合物を用いることができる。酸化剤としては、例えば、2,3-ジクロロ-5,6- ジシアノ-1,4- ベンゾキノン(DDQ) 又はクロラニル等を挙げることができる。通常の場合、反応は 0〜200 ℃、好ましくは10〜100 ℃の温度範囲で 5分〜72時間、好ましくは20分〜8 時間程度行えばよい。
【0030】
化合物(III) を溶媒中で塩基の存在下にトシルクロライドあるいはメシルクロライド等で処理することにより対応する化合物(IV)を得ることができる。また化合物(III) を脱水剤の存在下、溶媒中で処理することによっても化合物(IV)を製造することができる。溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロルメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;又は、これらの混合溶媒を用いることができる。塩基としては、トリエチルアミン、水素化ナトリウム、t-ブトキシカリウム、炭酸ナトリウム等を用いることができ、脱水剤としては、p-トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、硫酸水素カリウム、アルミナ、n-ブチルリチウム、フェニルリチウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0] ウンデスー7ー エン(DBU) 等を用いることができる。通常の場合、反応は -20〜200 ℃、好ましくは 0〜100 ℃の温度範囲で 5分〜72時間、好ましくは20分〜8 時間程度行えばよい。
【0031】
化合物(IV)を溶媒の存在下若しくは非存在下にアルキル化試薬で処理することにより化合物(V) を得ることができる。またこの反応は所望により塩基を加えて行ってもよい。溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロルメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル;またはこれらの混合溶媒を用いることができる。アルキル化剤としては、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、クロルアセトニトリル、クロルアセトアミド等や硫酸ジメチル等を挙げることができる。塩基を用いる場合には、水素化ナトリウム、t-ブトキシカリウム、n-ブチルリチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を用いればよい。通常の場合、反応は -20〜200 ℃、好ましくは 0〜100 ℃の範囲で 5分〜72時間、好ましくは20分〜24時間程度行えばよい。
【0032】
化合物(V) と各種アルデヒド誘導体あるいは各種ニトロソ誘導体を酸性溶媒で処理するか、あるいは溶媒の存在下に酸性触媒で処理することにより本発明の化合物(I) を得ることができる。酸性溶媒としては、例えば、酢酸、蟻酸等を用いることができ、酸性触媒としては、例えば、酢酸、蟻酸、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、アルミナ等を用いることができる。酸性触媒を用いる場合の溶媒としては、酢酸や蟻酸等の酸性溶媒の他、クロロホルム、ジクロルメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル;又はこれらの混合溶媒を用いることができる。通常の場合、反応は 0〜200 ℃、好ましくは70〜150 度の温度範囲で 5分〜120 時間、好ましくは20分〜72時間程度行えばよい。
【0033】
本発明の化合物は哺乳類の各種の腫瘍に対して抗腫瘍活性を有しており、抗腫瘍剤の有効成分として有用である。いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、本発明の化合物は、哺乳類動物に存在するトポイソメラーゼ I及びトポイソメラーゼ II のいずれに対しても強い阻害作用を有しており、これらのDNA トポイソメラーゼを阻害することにより腫瘍細胞に対して選択的に抗腫瘍活性を発揮するものと考えられる。従って、既存の抗腫瘍剤に耐性化した腫瘍細胞に対しても交差耐性を示さず、強い抗腫瘍活性を有するという特徴がある。また、本発明の化合物は、DNA トポイソメラーゼの阻害剤としても有用である。
【0034】
本発明の化合物を抗腫瘍剤として用いる場合には、本発明の化合物の1種または2種以上を経口的または非経口的に投与してもよいが、一般的には、本発明の化合物の1種または2種以上を有効成分として含む医薬用組成物を調製して経口的または非経口的に用いることが好適である。医薬用組成物としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、又は、油性若しくは水性の懸濁液等の経口投与用製剤;あるいは、静脈内注射、筋肉内注射、若しくは皮下注射用の注射剤や点滴剤、経皮若しくは経粘膜吸収剤、又は座剤等の非経口投与用製剤を挙げることができる。これらのうち、静脈内投与用の水性の注射剤や点滴剤、及び経口投与用製剤が好ましい。医薬組成物の有効成分である本発明の化合物の形態は特に限定されず、水和物や薬理学的に許容される酸による酸付加塩などを用いてもよい。特に水性の注射剤や点滴剤の製造には酸付加塩の形態の化合物を用いることが好ましい。
【0035】
医薬用組成物の製造には、当業者に利用可能な薬理学的及び製剤学的に許容しうる製剤用添加物やコーティング剤、より具体的には、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。経口投与に適する医薬用組成物の製造には、例えば、ブドウ糖、乳糖、D-マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。
【0036】
経皮又は経粘膜投与に適する医薬用組成物の製造には、例えば、フロン,ジエチルエーテル、又は圧縮ガス等の噴射剤;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリイソブチレン、ポリブテン等の粘着剤;木綿布又はプラスチックシート等の基布等を用いることができ、注射あるいは点滴用に適する製剤には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の製剤用添加物を用いることができる。もっとも、医薬用組成物の製造に用いる製剤用添加物やコーティング剤はこれらに限定されることはなく、製造する医薬用組成物の種類や治療目的に応じて適宜選択可能すべきである。
【0037】
本発明の医薬用組成物の治療対象となる腫瘍の種類は特に限定されず、脳腫瘍、食道癌、舌癌、胃癌、肺癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、十二指腸若しくは小腸癌、大腸癌、皮膚癌、子宮癌、乳癌、又は前立腺癌などの固形癌、あるいは、白血病又は急性リンパ種などの非固形癌等を治療の対象とすることができる。上記の医薬用組成物の投与量は、有効成分である本発明の化合物重量として、成人1日当り1 mg〜2 g の範囲、好ましくは5 mg〜1 g 程度であるが、治療の目的、治療すべき腫瘍の種類、患者の年齢や状態などに応じて適宜増減すべきである。以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されることはない。
【0038】
【実施例】
例1:1- メチル -4-(Z)-(p- ジメチルアミノフェニルメチレン )-2- フェニル -4H- ピラゾロ [1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩
1- メチル-2- フェニル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩(以下、実施例においてこの化合物を「化合物(1) 」という。)(0.30 g, 0.82 mmol)およびp-ジメチルアミノベンズアルデヒド(0.14 g, 0.94 mmol) を氷酢酸(30 ml) に加え、窒素気流下20時間加熱環流した。反応液を濃縮後、エタノールで再結晶し、標記化合物を得た(0.32g, 86%)。
融点:237.0-237.5 ℃.
IR (KBr) cm -1: 1583(s), 1529, 1464, 1360, 1325, 1188, 1161, 1095(s).
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 3.11(6H, s), 4.43(3H, s), 6.93(2H, d, J=9.0Hz), 7.45(1H, s), 7.56(2H, m), 7.70(3H, m), 7.82(2H, m), 7.84(2H, d, J=9.0Hz), 8.14(1H, m), 8.22(1H, m), 8.30(1H, s).
元素分析 C27H24F3N3O3S に対して計算値(%)C, 61.47; H, 4.59; N, 7.97. 実測値(%)C, 61.44; H, 4.66; N, 7.98.
なお、上記反応において1.5 時間加熱撹拌の条件ではE-アイソマーがZ-アイソマーとほぼ同量得られた。
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 3.10(s), 4.43(s), 6.52(d, J=9Hz), 7.49(s), 7.54-7.58(m), 7.68-7.19(m), 7.81(d, J=9Hz), 7.81-7.82(m), and 8.28(s).
【0039】
例2:1- メチル -2- フェニル -4-(Z)- フェニルメチレン -4H- ピラゾロ [1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩
化合物(1)(0.50 g, 1.26 mmol)およびベンズアルデヒド(0.17 ml, 1.67 mmol)を酢酸(50 ml) に加え、20時間加熱撹拌した。反応液を濃縮し、得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(ジクロロメタン−メタノール=9 : 1)して標記化合物を得た(0.61 g, 99%) 。
融点:233-235 ℃.
IR (KBr) cm -1: 1627, 1544, 1467, 1383, 1263, 1226, 1157, 1034, 766, 700, 641.
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 4.46(3H, s), 7.39(1H, s), 7.59-7.81( H, m), 7.90(2H, d, J=7Hz), 8.18(1H, d, J=8Hz), 8.18(1H, d, J=8Hz), 8.34(1H, d, J=7Hz), 8.55(1H, s).
元素分析 C25H19F3N2O3S に対して計算値(%)C, 62.07; H, 3.95; N, 5.78. 実測値(%)C, 62.07; H, 4.01; N, 5.82.
【0040】
例3:1- メチル -4-(Z)-(p- ニトロフェニルメチレン )-2- フェニル -4H- ピラゾロ [1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩
化合物(1)(0.50 g, 1.37 mmol)およびp-ニトロベンズアルデヒド(0.25 g, 1.26 mmol) を氷酢酸(50 ml) に加え10時間加熱環流した。反応液を濃縮しメタノール−イソプロピルエーテルで再結晶して標記化合物を得た(0.53 g, 79%) 。
融点:188-190 ℃.
IR (KBr) cm -1: 1518, 1338, 1262(s), 1153, 1028.
1H-NMR(DMSO-d6) δ : 4.48(1H, s), 7.45(1H, s), 7.61-7.81(7H, m), 8.09(2H, d, J=8.8Hz), 8.19(1H, d, J=7.8Hz), 8.33(1H, d, J=7.1Hz), 8.45(2H, d, J=8.8Hz), 8.61(1H, s).
元素分析 C25H18F3N3O5S に対して計算値(%)C, 56.71; H, 3.43; N, 7.94. 実測値(%)C, 56.57; H, 3.47; N, 7.88.
【0041】
例4:1- メチル -4-(Z)-(p- ヒドロキシフェニルメチレン )-2- フェニル -4H- ピラゾロ [1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩
化合物(1)(100 mg, 0.25 mmol)およびp-ヒドロキシベンズアルデヒド(37 mg, 0.30 mmol)を酢酸(10 ml) に加え、窒素気流下、22.5時間加熱撹拌した。反応液を濃縮し、得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製 (ジクロロメタン−メタノール=19 : 1) して標記化合物を得た(87mg, 69%) 。
融点:113-115 ℃.
IR (KBr) cm -1: 3242, 1599, 1580, 1465, 1280, 1268, 1243, 1224. 1162, 1029.
1H-NMR(DMSO-d6) δ : 4.45(3H, s), 7.03(2H, d, J=8.5Hz), 7.52(1H, s), 7.52-7.72(7H, m), 7.83(2H, d, J=8.5Hz), 8.16(1H, d, J=8.5Hz), 8.26-8.30(1H, m), 8.40(1H, s).
【0042】
例5:1- メチル -4-(Z)-(p- アセトキシフェニルメチレン )-2- フェニル -4H- ピラゾロ [1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩
化合物(1)(100 mg, 0.25 mmol)およびp-アセトキシベンズアルデヒド(0.05 ml, 0.35 mmol)を酢酸(10 ml) に加え、窒素気流下、14時間加熱撹拌した。反応液を濃縮し、得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(ジクロロメタン−メタノール=9 : 1)して標記化合物を得た(110 mg, 80%) 。融点:197-198 ℃.
IR (KBr) cm -1: 1764, 1467, 1276, 1264, 1229, 1199, 1162, 1031, 764, 638.1H-NMR(DMSO-d6)δ : 2.23(3H, s), 4.46(3H, s), 7.42(2H, d, J=8.6Hz), 7.43(1H, s), 7.59-7.82(7H, m), 7.96(2H, d, J=8.6Hz), 8.18(1H, d, J=7.3Hz), 8.32(1H, d, J=7.6Hz), 8.52(1H, s).
元素分析 C27H21F3N2O5S ・1/2H2Oに対して計算値(%)C, 58.79; H, 4.02; N, 5.08. 実測値(%)C, 59.03; H, 3.79; N, 5.05.
【0043】
また、例5の化合物を以下の方法でも得た。例4で得た化合物1-メチル-4-(Z)-(p-ヒドロキシフェニルメチレン)-2-フェニル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドリウム(250mg, 0.50 mmol)をピリジン(10 ml) と無水酢酸(0.47 ml) の混液中に加え、室温で5 時間撹拌させた。反応液を濃縮し水を加えジクロルメタンで抽出し、1N−塩酸、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製( ジクロロメタン−メタノール=9 : 1)して標記化合物を得た(137 mg, 51%) 。
【0044】
例6:1- メチル -4-(Z)-(p- ジメチルアミノフェニルメチレン )-2- スチリル -4H- ピラゾロ [1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩
2-(E)-スチリル-3- ヒドロキシ-3a,4-ジヒドロ-3H-ピラゾロ[1,5-a] インドール(0.63g 、2.1 mmol) を無水ジクロルメタン(38 ml)に溶解し、氷冷下、メタンスルホニルクロライド(0.25 ml, 3.1 mmol)、トリエチルアミン(0.60 ml, 4.3 mmol) を加え、4 時間撹拌した。反応液を水で希釈し炭酸ナトリウムでアルカリ性に調整後、有機層を抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥して濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製( ヘキサン−酢酸エチル=5 : 1)して2-スチリル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドールを得た(0.48 g, 91%) 。
融点:148-149 ℃.
IR (KBr) cm -1: 2908, 1619, 1591, 1480, 1401, 1306 .
1H-NMR(DMSO-d6) δ : 3.86 (2H, s), 6.50(1H, s), 7.11-7.55(10H, m), 7.62(1H, br d, J=8.0Hz).
【0045】
上記反応で得られた化合物(1.0 g, 3.87 mmol)に無水ジクロルメタン(20 ml) トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル(0.88 ml, 7.74 mmol)を加え、窒素気流下、室温で48時間撹拌した。反応液を濃縮し、メタノール−酢酸エチルで再結晶して1-メチル-2- スチリル- 4H- ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩を得た(1.35g、82%)。
融点:223.5-225.0 ℃.
IR (KBr) cm -1: 1539, 1468, 1291, 1247, 1224, 1154, 1027.
1H-NMR(DMSO-d6) δ : 4.38 (2H, s), 4.49(3H, s), 7.43-7.86(11H, m), 8.10(1H, br.d, J=7.81Hz).
元素分析 C22H22F3N3O3S に対して計算値(%)C, 56.86; H, 4.06; N, 6.63. 実測値(%)C, 56.98; H, 3.97; N, 6.63.
【0046】
上記反応で得られた化合物(500 mg, 1.18 mmol) とp-ジメチルアミノベンズアルデヒド(229 mg, 1.53 mmol) を氷酢酸(50 ml) に加え、12時間加熱環流した。反応液を濃縮しエタノールで再結晶して標記化合物を得た(336 mg, 51%) 。
融点:144.5-146.5 ℃(分解).
IR (KBr) cm -1: 1579, 1529, 1369, 1261, 1159, 1031, 638.
1H-NMR(DMSO-d6) δ : 3.13(6H, s), 4.59(3H, s), 6.96(2H, d, J=8.79Hz), 7.45-7.99(12H, m), 8.07-8.12(1H, m), 8.15-8.20(1H, m), 8.24(1H, s).
元素分析 C29H26F3N3O3S に対して計算値(%)C, 62.92; H, 4.73; N, 7.59. 実測値(%)C, 62.46; H, 4.65; N, 7.62.
【0047】
例7:1,2- ジメチル -4-(Z)-(p- ジメチルアミノフェニルメチレン )-4H- ピラゾロ [1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩
2-メチル-2,3,3a,4-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[1,5-a] インドール(2.23 g, 12.8 mmol)を無水ジクロルメタン(80 ml) に溶解し 2,3−ジクロロ−5,6-ジシアノ-1,4−ベンゾキノン(6.39 g, 28.2 mmol) を加え、2 時間室温で撹拌した。反応液をエーテル(30 ml)で希釈し不溶物を濾去し、濾液を10% 水酸化ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。残さをエーテル-n−ヘキサンで再結晶して2-メチル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドールを得た(1.0g, 46%) 。
融点:66.0-67.5 ℃.
IR (KBr) cm -1: 1619, 1592, 1565, 1545, 1472, 1402, 1332, 1301, 1199, 1129, 1097, 1003.
1H-NMR(DMSO-d6) δ : 2.42(3H, s), 3.81(2H, s), 6.06(1H, s), 7.09-7.17(1H, m), 7.32-7.43(2H, m), 7.56(1H, d).
【0048】
上記反応で得られた化合物(0.5 g, 2.9 mmol)を無水ジクロルメタン(20 ml)に溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル(2.66 ml, 23.5 mmol)を二分割して加えた。42時間後、析出物を濾取しメタノールで再結晶して1,2-ジメチル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩を得た(0.45 g, 46%) 。
融点:210-212 ℃.
IR (KBr) cm -1: 1545, 1485, 1398, 1267, 1227, 1157, 1029.
1H-NMR(DMSO-d6) δ : 2.58(3H, s), 4.31(2H, s), 4.37(3H, s), 6.91(1H, s), 7.48(1H, t), 7.59(1H, t), 7.75(1H, d), 8.06(1H, d).
元素分析 C13H13F3N2O3S に対して計算値(%)C, 46.71; H, 3.92; N, 8.38. 実測値(%)C, 46.41; H, 3.91; N, 8.21.
【0049】
上記反応で得られた化合物(500 mg, 1.50 mmol) とp-ジメチルアミノベンズアルデヒド(291 mg, 1.95 mmol) を酢酸(50 ml) に加え、32時間加熱撹拌した。反応液を濃縮しメタノールで再結晶して標記化合物を得た(576 mg, 85%) 。
融点:249-251 ℃.
IR (KBr) cm -1: 1585, 1532, 1378, 1362, 1266, 1192, 1164, 1142, 1031.
1H-NMR(DMSO-d6) δ : 2.58(3H, s), 3.02(6H, s), 4.36(3H, s), 6.88(2H, AB type, J=8.78Hz), 7.20(1H, s), 7.44-7.54(2H, m), 7.72(2H, AB type, J=8.8Hz), 8.00-8.04(1H, m), 8.01-8.15(1H, m), 8.17(1H, s).
元素分析 C22H22F3N3O3S に対して計算値(%)C, 56.76; H, 4.77; N, 9.03. 実測値(%)C, 56.57; H, 4.64; N, 9.03.
【0050】
例8:1- メチル -4-(Z)-(p- ジメチルアミノフェニルイミノ )-2- フェニル -4H- ピラゾロ [1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩
化合物(1)(0.1 g, 0.27 mmol) とN,N-ジメチル-p- ニトロソアニリン(0.05 ml, 0.25 mmol)を酢酸(10 ml) に加え、窒素気流下、1.5 時間加熱撹拌した。反応液を濃縮し、得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製( ジクロロメタン- メタノール=95 : 5) して標記化合物を得た(0.12 g, 90%) 。
融点:204-206 ℃.
IR (KBr) cm -1: 1618, 1551, 1364, 1261(s), 1151(s), 1030.
1H-NMR(DMSO-d6) δ : 3.08(6H, s), 4.45(3H, s), 6.90(2H, d, J=9Hz), 7.23(1H, s), 7.45(2H, d, J=9.0Hz), 7.61(1H, t, J=7.6Hz), 7.65-7.77(8H, m), 8.08(1H, d, J=7.4Hz), 8.15(1H, d, J=8.0Hz).
元素分析 C26H23F3N4O3S に対して計算値(%)C, 59.08; H, 4.39; N, 10.60. 実測値(%)C, 60.02; H, 4.27; N, 10.10.
【0051】
例9:本発明化合物の抗腫瘍効果
2種の腫瘍細胞、P388マウス白血病細胞および PC-6(肺癌) 細胞を、 P388 は 5.0×102 cells/150 μl/well、PC-6は 5.0×103 cells/μl/wellになるように 96 ウェル−マイクロプレートに播種し、P388は2時間後、PC-6は24時間後に検体 50 μl/wellを添加した。その後、3日間培養し、MTT [3-(4,5-ジメチルチアゾール-2- イル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド] の 5 mg/ml溶液 20 μl/wellを添加した。4時間後、培養液を除去し、ジメチルスルホキシド 150μl/wellを加え、540nm にて吸光度を測定した。抗腫瘍効果は、薬剤添加群の細胞増殖を対照群の50% にする薬剤濃度をGI50値 (μg/ml) として示した。
【0052】
例10:本発明化合物の DNA トポイソメラーゼ阻害作用
25 mM Tris-HCl(pH7.5), 50 mM KCl, 5 mM MgCl2, 0.25 mM EDTA 2Na塩, 0.25 mM DTT(ジチオスレイトール), 15 μg/ml牛血清アルブミン、および5%グリセロールよりなる反応緩衝液に、DNA トポイソメラーゼ(0.5μg のSV40 DNAを完全に弛緩させる最低量のトポイソメラーゼ I(Topo I)あるいはトポイソメラーゼ II(Topo II)および0.5 μl の被検物質または溶媒(DMSO)を添加した。Topo II の場合にはさらに10 mM のATP を加えた。37℃で10分放置した後 0.5μg のSV40 DNAを添加し、同温で10分間反応させた。反応停止液 (1% SDS, 20 mM EDTA 2Na塩, 0.5 mg/ml proteinase K) 5 μl を加えて、さらに37℃で30分間処理して反応を停止させた。
【0053】
10 mM Na2HPO4, 31.3%ショ糖および 0.3% ブロモフェノールブルーを含む緩衝液 5μl と混合した後、2 μg/mlクロロキン, 10 mM EDTA, 30 mM NaH2PO4 および36 mM Tris-HCl(pH7.8) 存在下に 0.8% アガロースゲルで電気泳動 (50 mA, 20V, 一夜泳動) を行い、弛緩した超らせん(form Ir)DNAと超らせん(form I)DNA および開環状(form II)DNAとを分離した。電気泳動後、ゲルを 0.05%エチジウムブロミドで染色し、紫外線 (302 nm) にて発光させて写真に記録した。DNA 量はデンシトメーターにより定量した。Topo IあるいはTopo II の阻害率は次式に従って算出した。式中、FlrtおよびFlrcはそれぞれ被検物質存在下および非存在下に於てTopo IおよびTopo II 処理された全DNA に対するForm Ir DNA の割合である。また、Flr はTopo IおよびTopo II 非処理DNA に混在しているForm Ir DNA の割合である。50% の阻害率を与える各被検物質の濃度(IC50)を用量反応曲線より求めた。
阻害率=[1-(Flrt-Flr)/(Flrc-Flr)]×100
【0054】
以上の試験から得られた結果を表2に示す(表中の数字はIC50値: μg/mlである)。対照として、トポイソメラーゼ Iの阻害活性を有する7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン(対照薬剤A)、及びトポイソメラーゼ II を阻害するエトポシド(対照薬剤B)を用いて同様の試験を行った結果を併せて示す。これらの結果から、本発明の化合物がトポイソメラーゼ I及びトポイソメラーゼ II のいずれにも強い阻害活性を有しており、腫瘍細胞に対して強力な細胞増殖抑制作用を示すことが明らかである。
【0055】
【表2】
──────────────────────────
被検化合物 P388 PC-6 TopoI阻害 TopoII阻害
──────────────────────────
例1 0.0086 0.037 0.54 0.38
例2 0.197 0.211 >10 3.98
例3 0.668 0.828 4.76 3.50
例4 1.350 1.350 0.58 0.63
例5 0.928 0.492 4.94 0.84
例6 0.011 0.021 5.52 0.54
例7 0.010 0.035 1.46 4.74
例8 0.293 0.164 0.50 0.39
対照薬剤A 0.0031 0.0007 8.9 N.T.
対照薬剤B 0.015 0.144 N.T. 6.99
──────────────────────────
N.T. 試験せず
【0056】
【発明の効果】
本発明の化合物はトポイソメラーゼ I及びトポイソメラーゼ II を強力に阻害し、腫瘍細胞に対して増殖抑制作用を有している。従って、抗腫瘍剤の有効成分として極めて有用である。

Claims (16)

  1. 下記の一般式(I):
    Figure 0003717128
    〔式中、Q は CH 又は窒素原子を示し;R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、又は C 1-6 アルコキシ基を示し;R3C 1-6 アルキル基を示し;R4水素原子、 C 1-6 アルキル基、フェニル基、又はフェニル置換 C 2-6 アルケニル基を示し;R5フェニル基( C 1-6 アルキルアミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、及びアシルオキシ基からなる群から選ばれる置換基を1個又は2個以上有していてもよい)を示し;X- は塩形成性陰イオンを示す(ただし、R1ないしR5のいずれか1つの置換基がプロトン供与性基である場合には X- は存在しなくてもよい)〕で表される化合物。
  2. R3がメチル基である請求項1に記載の化合物。
  3. R1及びR2が同時に水素原子である請求項1又は2に記載の化合物。
  4. R1が水素原子であり、R2が6-位に置換し、かつR2ヒドロキシ基又は C 1-6 アルコキシ基である請求項1又は2に記載の化合物。
  5. R4がメチル基、フェニル基、又は 2- フェニルエテニル基である請求項1から4のうちいずれか1項に記載の化合物。
  6. R5がフェニル基又はp-置換フェニル基である請求項1から5のうちいずれか1項に記載の化合物。
  7. R5がフェニル基、p-ジC1-4アルキルアミノフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-C1-4アルキルカルボニルオキシフェニル基である請求項1から5のうちいずれか1項に記載の化合物。
  8. R5がフェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-アセトキシフェニル基である請求項1から5のうちいずれか1項に記載の化合物。
  9. Q が CH である請求項1から8のうちいずれか1項に記載の化合物。
  10. X - がトリフルオロメタンスルホン酸アニオンである請求項1から9のうちいずれか1項に記載の化合物。
  11. 以下の化合物、1-メチル-4-(Z)-(p-ジメチルアミノフェニルメチレン)-2-フェニル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩;1-メチル-2- フェニル-4-(Z)- フェニルメチレン-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩;1-メチル-4-(Z)-(p-ニトロフェニルメチレン)-2-フェニル-4H-ピラゾロ[1,5-a]インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩;1-メチル-4-(Z)-(p-ヒドロキシフェニルメチレン)-2-フェニル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩;1-メチル-4-(Z)-(p-アセトキシフェニルメチレン)-2-フェニル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩;1-メチル-4-(Z)-(p-ジメチルアミノフェニルメチレン)-2-スチリル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩;1,2-ジメチル-4-(Z)-(p-ジメチルアミノフェニルメチレン)-4H- ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩;及び1-メチル-4-(Z)-(p-ジメチルアミノフェニルイミノ)-2-フェニル-4H-ピラゾロ[1,5-a] インドリウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩からなる群から選ばれる化合物。
  12. 請求項1から11のうちいずれか1項に記載の化合物からなるDNAトポイソメラーゼ阻害剤。
  13. 請求項1から11のうちいずれか1項に記載の化合物からなる真核細胞のDNA トポイソメラーゼ阻害剤。
  14. トポイソメラーゼ I及びトポイソメラーゼ II に阻害作用を有する請求項12 又は 13に記載の阻害剤。
  15. 請求項1から11のうちいずれか1項に記載の化合物からなる医薬。
  16. 請求項1から11のうちいずれか1項に記載の化合物を有効成分として含む抗腫瘍剤。
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