JP3716295B2 - 表皮一体発泡射出成形用表皮材 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂発泡体の基材の表面を被覆する表皮材、特に、基材の発泡射出成形時に一体に基材の表面を被覆する表皮一体発泡射出成形用表皮材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図8および図9に示すワゴン車等の車室フロア後端に設けた収納ボックスB等を開閉するフロアリッドFは、表皮一体発泡射出成形品で、合成樹脂発泡体からなる基材1の表面を車室フロアのカーペットと同じような模様の表皮材2で被覆してある。基材1の背面には射出成形時にパイプの補強部材11をインサートし、かつ補強リブ12が一体成形してある。
【0003】
図10は従来の表皮材2の断面図で、表皮材2は、織布からなる表皮層21と、ポリエチレンフィルムからなる中間層22と、不織布からなるバッキング層23の三層構造で、表皮層21、中間層22およびバッキング層23はラミネート加工により積層一体化してある。
【0004】
図7に示すように、フロアリッドFの成形時、表皮材2は金型の雌型3Aにセットする。一方、雄型3Bには補強部材11をセットておく(図7(A))。そして、雌型3Aと雄型3Bとを型閉めし(図7(B))、雄型3Bの射出ゲート30から表皮材2と雄型3Bとの間に発泡剤を配合した溶融合成樹脂材料を射出する。射出した合成樹脂材料の射出圧および発泡圧により表皮材2は雌型3Aに押し付けられ、キャビティ内には合成樹脂材料が充填される(図7(C))。その後、合成樹脂材料が冷えた時点で成形品を金型から取り出す。基材1と表皮材2とは、バッキング層23に溶融合成樹脂材料が浸透し、冷え固まることにより接合される。また、中間層22はバッキング層23で浸透を制御される溶融合成樹脂材料の表皮層21側への浸透を防止する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、フロアリッドFの基材1は材料にポリプロピレンが用いられ、ポリプロピレンの融点は150〜170°Cで、射出成形時の樹脂温度は約200°Cである。これに対して、表皮材2の中間層22(ポリエチレン)の融点は80〜130°Cであり、中間層22はこれを厚くして、射出成形時に溶融材料が表皮層21側へ浸透するのを防ぐようにしている。中間層22の厚みは約280μmに設定している。
【0006】
しかしながら、中間層22を厚くすると射出成形後の放熱性が悪くなる。このため、図11に示すように、成形されたフロアリッドFは、金型から取り出した後でも、基材1の厚肉部、例えば補強部材11の保持部やリブ12の根元が冷めず、これ等の部分では成形後も発泡が進み、表皮材2の表面に膨れが発生する問題があった。また、この膨れをなくすためには、成形品の金型内での冷却時間を長くとる必要があり、生産性が悪かった。
【0007】
そこで本発明は、射出成形後の放熱性が良好で、表面に膨れが生じない表皮一体発泡射出成形用表皮材を提供することを課題としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、合成樹脂発泡体からなる基材の表面を覆う表皮材であって、表皮層と、合成樹脂フィルムからなる中間層と、溶融状態の基材は浸透するが中間層への浸透は制御する繊維質材料からなるバッキング層の積層一体化構造で、基材の発泡射出成形時に基材と一体に基材の表面を被覆する表皮一体発泡射出成形用表皮材において、上記中間層を、融点が上記基材の融点よりも高い第1の合成樹脂フィルムの上下に、融点が第1の合成樹脂フィルムの融点よりも低い第2の合成樹脂フィルムおよび第3の合成樹脂フィルムを積層した積層フィルムで構成した(請求項1)。中間層はこれを薄くしても、融点の高い第1の合成樹脂フィルムにより射出成形時の基材の表皮層側への浸透を確実に防止できる。また、融点の低い第2の合成樹脂フィルムにより表皮層およびバッキング層との接着性が良好である。薄肉の積層フィルムを用いることで射出成形後の放熱性がよく、基材の合成樹脂材料の後発泡を防ぎ表面を平滑に成形できる。
【0009】
上記中間層の第1の合成樹脂フィルムとしては、ポリアミド樹脂が好適であり、第2および第3の合成樹脂フィルムにはオレフィン系合成樹脂が好適である(請求項2)。
【0010】
上記中間層の第1の合成樹脂フィルムと、第2および第3の合成樹脂フィルムとを積層するには、変性オレフィン系樹脂からなる接着層を介在させるのが好適である(請求項3)。
【0011】
【発明の実施の形態】
図8および図9に示すワゴン車等の荷室フロアに設けた収納ボックスB等を開閉する合成樹脂製のフロアリッドFの表面に本発明の表皮材2を被覆した実施形態を説明する。図1(A)はフロアリッドFの断面を示し、フロアリッドFは、ポリプロピレンからなる基材1の発泡射出成形時に、基材1の表面にこれと一体に表皮材2を貼着した表皮一体発泡射出成形品である。尚、基材1の背面には幅方向に延びるパイプ状の補強部材11をインサートし、かつ背面側へ突出する補強リブ12が一体成形してある。
【0012】
表皮材2は、表皮層21と、合成樹脂フィルムからなる中間層22と、不織布からなるバッキング層23とを積層一体化した三層構造としてある。表皮層21は綿または合成繊維の織布で、フロアカーペットと同様な意匠面を有する。バッキング層23を構成する不織布は、基材1の発泡射出成形時に溶融状態の合成樹脂材料を浸透させ、冷え固まることで表皮材2を基材1に接合するものである。
【0013】
中間層22はそれ自体が三層構造で第1の合成樹脂フィルム22aの上下に第2の合成樹脂フィルム22bおよび第3の合成樹脂フィルム22cが積層してある。図1(B)は中間層22の断面を示し、第1の合成樹脂フィルム22aは、基材1の合成樹脂材料たるポリプロピレン樹脂よりも融点の高いポリアミド樹脂フィルム、例えば6ナイロンと66ナイロンの共重合体フィルム、または6ナイロンフィルムで構成してある。それらフィルムの融点は200〜225°Cである。第1の合成樹脂フィルム22aの厚みは15〜20μmとしてある。
【0014】
第1の合成樹脂フィルム22aの上下にそれぞれ積層した第2の合成樹脂フィルム22bおよび第3の合成樹脂フィルム22cは、いずれも第1の合成樹脂フィルム22aよりも融点の低いオレフィン系合成樹脂フィルム、例えばポリエチレンフィルムで構成してある。ポリエチレンフィルム22b,22cの融点は80〜130°Cである。第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cの厚みはそれぞれ15〜35μmとしてある。第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cは変性オレフィン系樹脂からなる接着層22dを介して第1の合成樹脂フィルム22aの上面および下面に積層してある。
【0015】
図2ないし図5に示すように、第1、第2および第3の合成樹脂フィルム22a,22b,22cはインフレーション成形法により積層フィルムとして一体に製造される。図2、図3に示すように、第1、第2、第3の合成樹脂フィルム22a,22b,22cおよび接着層22d,22dの各合成樹脂フィルム材料を押出機4のダイ41から上向きに円筒状に押し出す。ダイ41には各合成樹脂フィルム材料を押し出す円形リング状の押出口42が同軸に複数設けてあり、押出口42の中心にはエアー吹出し口43を備えている。そして、外側の押出口42からは第2の合成樹脂フィルム材料22bを押し出し、その内側の押出口42からは接着層22dを押し出し、以下、各押出口42から第1の合成樹脂フィルム材料22a、接着層22dおよび第3の合成樹脂フィルム材料22cの順に円筒状に押し出す。
【0016】
図2、図4に示すように、円筒状に押し出された各合成樹脂フィルム材料の最も内側の第3の合成樹脂フィルム材料22cの筒内に空気を吹き込み各合成樹脂フィルム材料を膨らませ薄肉に伸ばしながら、各合成樹脂フィルム材料を重ね合わせて接着する。そして、図2、図5に示すように、一対の送りローラー44間を通して二つ折りに重ね、両端の折り返し部をカットすることで上下に2枚の中間層フィルム22が成形される。
【0017】
図6に示すように、表皮材2は、表皮層21、中間層22およびバッキング層23を一対の加熱ローラー50間を通すラミネート加工により積層一体化される。加熱ローラー50は140〜150°C程度に加熱してあり、加熱ローラー50の熱により中間層22の第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cが溶融し、表皮層21、中間層22およびバッキング層23が積層一体化され、表皮材2を構成する。
【0018】
表皮材2は、図7(A)に示すように、フロアリッドFを成形する成形装置の雌型3A内に、表皮層21を雌型3Aの成形面に向けてにセットする。このとき、表皮材2はその端部を図略のクリップ等で雌型3Aに係止して位置ずれしないようにする。成形装置の雄型3Bには補強部材11をセットておく。
【0019】
この状態で、雌型3Aと雄型3Bとを型閉めし(図7(B))、図7(C)に示すように、雄型3Bの射出ゲート30から表皮材2と雄型3Bとの間に、基材1の樹脂材料として発泡剤を混合率1%程度配合した樹脂温度約200°Cの溶融ポリプロピレン樹脂を射出する。溶融合成樹脂材料の射出圧および発泡圧により表皮材2は雌型3Aの成形面に押し付けられ、キャビティ内には溶融合成樹脂材料が充填される。このとき表皮材2のバッキング層23には溶融合成樹脂材料が浸透する。その後、合成樹脂材料が冷えた時点で成形品を成形型から取り出す。これにより基材1の表面を一体に表皮材2で被覆したフロアリッドFが成形される。基材1と表皮材2とは、バッキング層23に浸透した溶融合成樹脂材料が冷え固まることにより強固に接合される。
【0020】
本実施形態によれば、表皮材2の中間層22を三層構造の合成樹脂からなる積層フィルムとし、その中間に第1の合成樹脂フィルム22aとして、基材1の合成樹脂材料たるポリプロピレン樹脂よりも融点が高い6ナイロンと66ナイロンの共重合体フィルム、または6ナイロンフィルムを用いたので、これを薄くしても、基材1の射出成形時、第1の合成樹脂フィルム22aは、バッキング層23に浸透した溶融状態の基材1の合成樹脂材料を確実に遮断して、基材1の合成樹脂材料の表皮層21側への浸透を防止することができる。
【0021】
また中間層22は、第1の合成樹脂フィルム22aの上下に、第1の合成樹脂フィルム22aよりも融点の低いポリエチレンフィルムからなる第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cを積層したので、表皮層21、中間層22およびバッキング層23をラミネート加工する際の加熱温度が低くすむ。即ち、低い温度で充分に各第2、第3の合成樹脂フィルム22b,22cを溶融でき、表皮材2の生産性が良好である。
【0022】
更に、中間層22は、第1の合成樹脂フィルム22aの優れた基材1の合成樹脂材料の表皮層21側への浸透防止性能により、全体の厚みを60〜70μm程度と、従来構造に比べて大幅に薄くでき、表皮材2の射出成形後の放熱性を大幅に向上できる。従って、射出成形後、比較的短時間で製品を取り出しても、基材1の補強部材11の保持部やリブ12の根元に後発泡が発生せず、フロアリッドFの表面を平坦にすることができ、生産性が向上する。
【0023】
中間層22は、第1の合成樹脂フィルム22aと、第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cとを変性オレフィン系樹脂からなる接着層22dを介して積層したので密着性が高い。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、射出成形後の放熱性が良好な表皮一体発泡射出成形用表皮材を提供でき、これを用いて射出成形した表皮一体発泡射出成形品の表面は平坦となり、射出成形品の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は本発明の表皮一体発泡射出成形用表皮材を用いた射出成形品の要部断面図、図1(B)は上記表皮材の中間層を構成する積層フィルムの要部断面図である。
【図2】上記積層フィルムを製造するインフレーション成形法の概略説明図である。
【図3】上記積層フィルムの押し出し時の状態を示す図である。
【図4】上記積層フィルムの押し出し後の状態を示す図である。
【図5】上記積層フィルムが押し出し後に重ね合わされた状態を示す図である。
【図6】上記表皮材のラミネート加工工程を示す概略説明図である。
【図7】本発明の表皮一体発泡射出成形品の成形工程を示した図で、図7(A)は金型内に表皮材をセットした成形装置の断面図、図7(B)は金型を型閉めした成形装置の断面図、図7(C)は金型内に溶融合成樹脂材料を射出した成形装置の断面図である。
【図8】本発明を適用する表皮一体発泡射出成形品たる車両のフロアリッドの斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】従来の表皮一体発泡射出成形用表皮材の要部断面図である。
【図11】従来の表皮一体発泡射出成形用表皮材の射出成形品の要部断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 表皮材
21 表皮層
22 中間層(積層フィルム)
22a 第1の合成樹脂フィルム
22b 第2の合成樹脂フィルム
22c 第3の合成樹脂フィルム
22d 接着層
23 バッキング層
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂発泡体の基材の表面を被覆する表皮材、特に、基材の発泡射出成形時に一体に基材の表面を被覆する表皮一体発泡射出成形用表皮材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図8および図9に示すワゴン車等の車室フロア後端に設けた収納ボックスB等を開閉するフロアリッドFは、表皮一体発泡射出成形品で、合成樹脂発泡体からなる基材1の表面を車室フロアのカーペットと同じような模様の表皮材2で被覆してある。基材1の背面には射出成形時にパイプの補強部材11をインサートし、かつ補強リブ12が一体成形してある。
【0003】
図10は従来の表皮材2の断面図で、表皮材2は、織布からなる表皮層21と、ポリエチレンフィルムからなる中間層22と、不織布からなるバッキング層23の三層構造で、表皮層21、中間層22およびバッキング層23はラミネート加工により積層一体化してある。
【0004】
図7に示すように、フロアリッドFの成形時、表皮材2は金型の雌型3Aにセットする。一方、雄型3Bには補強部材11をセットておく(図7(A))。そして、雌型3Aと雄型3Bとを型閉めし(図7(B))、雄型3Bの射出ゲート30から表皮材2と雄型3Bとの間に発泡剤を配合した溶融合成樹脂材料を射出する。射出した合成樹脂材料の射出圧および発泡圧により表皮材2は雌型3Aに押し付けられ、キャビティ内には合成樹脂材料が充填される(図7(C))。その後、合成樹脂材料が冷えた時点で成形品を金型から取り出す。基材1と表皮材2とは、バッキング層23に溶融合成樹脂材料が浸透し、冷え固まることにより接合される。また、中間層22はバッキング層23で浸透を制御される溶融合成樹脂材料の表皮層21側への浸透を防止する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、フロアリッドFの基材1は材料にポリプロピレンが用いられ、ポリプロピレンの融点は150〜170°Cで、射出成形時の樹脂温度は約200°Cである。これに対して、表皮材2の中間層22(ポリエチレン)の融点は80〜130°Cであり、中間層22はこれを厚くして、射出成形時に溶融材料が表皮層21側へ浸透するのを防ぐようにしている。中間層22の厚みは約280μmに設定している。
【0006】
しかしながら、中間層22を厚くすると射出成形後の放熱性が悪くなる。このため、図11に示すように、成形されたフロアリッドFは、金型から取り出した後でも、基材1の厚肉部、例えば補強部材11の保持部やリブ12の根元が冷めず、これ等の部分では成形後も発泡が進み、表皮材2の表面に膨れが発生する問題があった。また、この膨れをなくすためには、成形品の金型内での冷却時間を長くとる必要があり、生産性が悪かった。
【0007】
そこで本発明は、射出成形後の放熱性が良好で、表面に膨れが生じない表皮一体発泡射出成形用表皮材を提供することを課題としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、合成樹脂発泡体からなる基材の表面を覆う表皮材であって、表皮層と、合成樹脂フィルムからなる中間層と、溶融状態の基材は浸透するが中間層への浸透は制御する繊維質材料からなるバッキング層の積層一体化構造で、基材の発泡射出成形時に基材と一体に基材の表面を被覆する表皮一体発泡射出成形用表皮材において、上記中間層を、融点が上記基材の融点よりも高い第1の合成樹脂フィルムの上下に、融点が第1の合成樹脂フィルムの融点よりも低い第2の合成樹脂フィルムおよび第3の合成樹脂フィルムを積層した積層フィルムで構成した(請求項1)。中間層はこれを薄くしても、融点の高い第1の合成樹脂フィルムにより射出成形時の基材の表皮層側への浸透を確実に防止できる。また、融点の低い第2の合成樹脂フィルムにより表皮層およびバッキング層との接着性が良好である。薄肉の積層フィルムを用いることで射出成形後の放熱性がよく、基材の合成樹脂材料の後発泡を防ぎ表面を平滑に成形できる。
【0009】
上記中間層の第1の合成樹脂フィルムとしては、ポリアミド樹脂が好適であり、第2および第3の合成樹脂フィルムにはオレフィン系合成樹脂が好適である(請求項2)。
【0010】
上記中間層の第1の合成樹脂フィルムと、第2および第3の合成樹脂フィルムとを積層するには、変性オレフィン系樹脂からなる接着層を介在させるのが好適である(請求項3)。
【0011】
【発明の実施の形態】
図8および図9に示すワゴン車等の荷室フロアに設けた収納ボックスB等を開閉する合成樹脂製のフロアリッドFの表面に本発明の表皮材2を被覆した実施形態を説明する。図1(A)はフロアリッドFの断面を示し、フロアリッドFは、ポリプロピレンからなる基材1の発泡射出成形時に、基材1の表面にこれと一体に表皮材2を貼着した表皮一体発泡射出成形品である。尚、基材1の背面には幅方向に延びるパイプ状の補強部材11をインサートし、かつ背面側へ突出する補強リブ12が一体成形してある。
【0012】
表皮材2は、表皮層21と、合成樹脂フィルムからなる中間層22と、不織布からなるバッキング層23とを積層一体化した三層構造としてある。表皮層21は綿または合成繊維の織布で、フロアカーペットと同様な意匠面を有する。バッキング層23を構成する不織布は、基材1の発泡射出成形時に溶融状態の合成樹脂材料を浸透させ、冷え固まることで表皮材2を基材1に接合するものである。
【0013】
中間層22はそれ自体が三層構造で第1の合成樹脂フィルム22aの上下に第2の合成樹脂フィルム22bおよび第3の合成樹脂フィルム22cが積層してある。図1(B)は中間層22の断面を示し、第1の合成樹脂フィルム22aは、基材1の合成樹脂材料たるポリプロピレン樹脂よりも融点の高いポリアミド樹脂フィルム、例えば6ナイロンと66ナイロンの共重合体フィルム、または6ナイロンフィルムで構成してある。それらフィルムの融点は200〜225°Cである。第1の合成樹脂フィルム22aの厚みは15〜20μmとしてある。
【0014】
第1の合成樹脂フィルム22aの上下にそれぞれ積層した第2の合成樹脂フィルム22bおよび第3の合成樹脂フィルム22cは、いずれも第1の合成樹脂フィルム22aよりも融点の低いオレフィン系合成樹脂フィルム、例えばポリエチレンフィルムで構成してある。ポリエチレンフィルム22b,22cの融点は80〜130°Cである。第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cの厚みはそれぞれ15〜35μmとしてある。第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cは変性オレフィン系樹脂からなる接着層22dを介して第1の合成樹脂フィルム22aの上面および下面に積層してある。
【0015】
図2ないし図5に示すように、第1、第2および第3の合成樹脂フィルム22a,22b,22cはインフレーション成形法により積層フィルムとして一体に製造される。図2、図3に示すように、第1、第2、第3の合成樹脂フィルム22a,22b,22cおよび接着層22d,22dの各合成樹脂フィルム材料を押出機4のダイ41から上向きに円筒状に押し出す。ダイ41には各合成樹脂フィルム材料を押し出す円形リング状の押出口42が同軸に複数設けてあり、押出口42の中心にはエアー吹出し口43を備えている。そして、外側の押出口42からは第2の合成樹脂フィルム材料22bを押し出し、その内側の押出口42からは接着層22dを押し出し、以下、各押出口42から第1の合成樹脂フィルム材料22a、接着層22dおよび第3の合成樹脂フィルム材料22cの順に円筒状に押し出す。
【0016】
図2、図4に示すように、円筒状に押し出された各合成樹脂フィルム材料の最も内側の第3の合成樹脂フィルム材料22cの筒内に空気を吹き込み各合成樹脂フィルム材料を膨らませ薄肉に伸ばしながら、各合成樹脂フィルム材料を重ね合わせて接着する。そして、図2、図5に示すように、一対の送りローラー44間を通して二つ折りに重ね、両端の折り返し部をカットすることで上下に2枚の中間層フィルム22が成形される。
【0017】
図6に示すように、表皮材2は、表皮層21、中間層22およびバッキング層23を一対の加熱ローラー50間を通すラミネート加工により積層一体化される。加熱ローラー50は140〜150°C程度に加熱してあり、加熱ローラー50の熱により中間層22の第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cが溶融し、表皮層21、中間層22およびバッキング層23が積層一体化され、表皮材2を構成する。
【0018】
表皮材2は、図7(A)に示すように、フロアリッドFを成形する成形装置の雌型3A内に、表皮層21を雌型3Aの成形面に向けてにセットする。このとき、表皮材2はその端部を図略のクリップ等で雌型3Aに係止して位置ずれしないようにする。成形装置の雄型3Bには補強部材11をセットておく。
【0019】
この状態で、雌型3Aと雄型3Bとを型閉めし(図7(B))、図7(C)に示すように、雄型3Bの射出ゲート30から表皮材2と雄型3Bとの間に、基材1の樹脂材料として発泡剤を混合率1%程度配合した樹脂温度約200°Cの溶融ポリプロピレン樹脂を射出する。溶融合成樹脂材料の射出圧および発泡圧により表皮材2は雌型3Aの成形面に押し付けられ、キャビティ内には溶融合成樹脂材料が充填される。このとき表皮材2のバッキング層23には溶融合成樹脂材料が浸透する。その後、合成樹脂材料が冷えた時点で成形品を成形型から取り出す。これにより基材1の表面を一体に表皮材2で被覆したフロアリッドFが成形される。基材1と表皮材2とは、バッキング層23に浸透した溶融合成樹脂材料が冷え固まることにより強固に接合される。
【0020】
本実施形態によれば、表皮材2の中間層22を三層構造の合成樹脂からなる積層フィルムとし、その中間に第1の合成樹脂フィルム22aとして、基材1の合成樹脂材料たるポリプロピレン樹脂よりも融点が高い6ナイロンと66ナイロンの共重合体フィルム、または6ナイロンフィルムを用いたので、これを薄くしても、基材1の射出成形時、第1の合成樹脂フィルム22aは、バッキング層23に浸透した溶融状態の基材1の合成樹脂材料を確実に遮断して、基材1の合成樹脂材料の表皮層21側への浸透を防止することができる。
【0021】
また中間層22は、第1の合成樹脂フィルム22aの上下に、第1の合成樹脂フィルム22aよりも融点の低いポリエチレンフィルムからなる第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cを積層したので、表皮層21、中間層22およびバッキング層23をラミネート加工する際の加熱温度が低くすむ。即ち、低い温度で充分に各第2、第3の合成樹脂フィルム22b,22cを溶融でき、表皮材2の生産性が良好である。
【0022】
更に、中間層22は、第1の合成樹脂フィルム22aの優れた基材1の合成樹脂材料の表皮層21側への浸透防止性能により、全体の厚みを60〜70μm程度と、従来構造に比べて大幅に薄くでき、表皮材2の射出成形後の放熱性を大幅に向上できる。従って、射出成形後、比較的短時間で製品を取り出しても、基材1の補強部材11の保持部やリブ12の根元に後発泡が発生せず、フロアリッドFの表面を平坦にすることができ、生産性が向上する。
【0023】
中間層22は、第1の合成樹脂フィルム22aと、第2および第3の合成樹脂フィルム22b,22cとを変性オレフィン系樹脂からなる接着層22dを介して積層したので密着性が高い。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、射出成形後の放熱性が良好な表皮一体発泡射出成形用表皮材を提供でき、これを用いて射出成形した表皮一体発泡射出成形品の表面は平坦となり、射出成形品の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は本発明の表皮一体発泡射出成形用表皮材を用いた射出成形品の要部断面図、図1(B)は上記表皮材の中間層を構成する積層フィルムの要部断面図である。
【図2】上記積層フィルムを製造するインフレーション成形法の概略説明図である。
【図3】上記積層フィルムの押し出し時の状態を示す図である。
【図4】上記積層フィルムの押し出し後の状態を示す図である。
【図5】上記積層フィルムが押し出し後に重ね合わされた状態を示す図である。
【図6】上記表皮材のラミネート加工工程を示す概略説明図である。
【図7】本発明の表皮一体発泡射出成形品の成形工程を示した図で、図7(A)は金型内に表皮材をセットした成形装置の断面図、図7(B)は金型を型閉めした成形装置の断面図、図7(C)は金型内に溶融合成樹脂材料を射出した成形装置の断面図である。
【図8】本発明を適用する表皮一体発泡射出成形品たる車両のフロアリッドの斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】従来の表皮一体発泡射出成形用表皮材の要部断面図である。
【図11】従来の表皮一体発泡射出成形用表皮材の射出成形品の要部断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 表皮材
21 表皮層
22 中間層(積層フィルム)
22a 第1の合成樹脂フィルム
22b 第2の合成樹脂フィルム
22c 第3の合成樹脂フィルム
22d 接着層
23 バッキング層
Claims (3)
- 合成樹脂発泡体からなる基材の表面を覆う表皮材であって、表皮層と、合成樹脂フィルムからなる中間層と、溶融状態の基材は浸透するが中間層への浸透は制御する繊維質材料からなるバッキング層の積層一体化構造で、基材の発泡射出成形時に基材と一体に基材の表面を被覆する表皮一体発泡射出成形用表皮材において、上記中間層を、融点が上記基材の融点よりも高い第1の合成樹脂フィルムの上下に、融点が第1の合成樹脂フィルムの融点よりも低い第2の合成樹脂フィルムおよび第3の合成樹脂フィルムを積層した積層フィルムで構成したことを特徴とする表皮一体発泡射出成形用表皮材。
- 上記中間層の第1の合成樹脂フィルムをポリアミド樹脂で構成し、第2および第3の合成樹脂フィルムをそれぞれオレフィン系合成樹脂で構成した請求項1に記載の表皮一体発泡射出成形用表皮材。
- 上記中間層の第1の合成樹脂フィルムと、第2および第3の合成樹脂フィルムとを、変性オレフィン系樹脂からなる接着層を介して積層した請求項2に記載の表皮一体発泡射出成形用表皮材。
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