JP3716282B2 - 人工樹木およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、室内装飾などに用いられる人工樹木およびその製造方法に関し、特に、表面形状の凹凸感が異なるものを容易に製造できるようにして、表面形状の多様化を図ることができるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、人工樹木は、伐採された本物の樹木の幹や枝、つる等に代えて、自然保護の観点および自然物と比較して軽量であるといった利点により、主に室内装飾用として用いられている。そして、この人工樹木としては、従来、プラスチック等の合成樹脂を用いて金型で所定形状に成型し、この成型品の表面にペンキ等による塗装などの装飾を施したものが大部分である。
【0003】
なお、人工樹木の一つとしては、紙材を用いて樹木表面のような凹凸を適宜形成し、この表面にペンキ等で塗装するようにしたものがあるが、このようにして作成された人工樹木はその作成作業に時間がかることから超高級品として取り扱われているのが現状であり、室内装飾用としては、コストの面で適したものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の、合成樹脂を用いた人工樹木は、金型を用いて成型されるため、その表面形状は一つの金型について一種類であり、表面形状が異なる人工樹木を容易に成型できるものではなく、表面形状について多様化を図ることが困難であるといった問題点を有している。したがって、複数本の人工樹木を室内にセットするときに、同一の表面形状を持つ人工樹木を用いたのでは、より自然な感じを持たせることが難しいものとなっている。
【0005】
また、合成樹脂を用いた人工樹木において、異なる表面形状のものを成型するには、異なる表面形状ごとにそれに対応したそれぞれの金型が必要となるため、その金型の形成にかかる費用が高いことから、多種類の人工樹木の成型についてコストが高くなってしまうといった問題点を有し、特に、この種の人工樹木が少量生産されることを考慮するとコストの増加は問題となる。
【0006】
そこで、本発明では、表面形状の異なる人工樹木を容易に製造できるようにして、表面形状の多様化を容易に図ることができるとともに、成型用の金型を不要としてコストの低下を図ることができるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この課題を以下の人工樹木によって解決する。
(1)管状または棒状,線状などのものからなる基材の外周面に、凹凸感を出すための発泡状部を形成した人工樹木において、前記外周面の一部に形成されたこぶ用の内側発泡状部と、当該内側発泡状部およびそれ以外の基材外周面部分に形成された凹凸感表現用の外側発泡状部とを備え、かつ、前記内側発泡状部と前記外側発泡状部との間には、外側発泡状部形成用の発泡剤の定着化を図るとともに前記外周面を粗くして実際の樹木表面に近づけるための紙が設けられたものとする。
(2)上記(1)において、前記紙をクレープ紙とする。
(3)上記(1)または(2)において、枝,木材のスライス片,造花などの樹木構成要素を付加する。
【0008】
また、以下の人工樹木の製造方法によって解決する。
(4)先ず、管状または棒状,線状などのものからなる基材の外周面の一部にこぶ用の内側発泡状部を形成し、次に、前記内側発泡状部およびそれ以外の基材外周面部分に、外側発泡状部形成用の発泡剤の定着化を図るとともに前記外周面を粗くして実際の樹木表面に近づけるための紙を巻きつけ、次に、前記紙に凹凸感表現用の外側発泡状部を形成する。
(5)上記(4)において、前記紙をクレープ紙とする。
【0009】
【作用】
このように、基材の外周面に発泡状部を設けているため、実際の樹木に近い凹凸感を持つ表面形状を容易に得られる一方、本物の樹木と比較してその重量が軽くなっている。したがって、室内において、特に壁面や天井への人工樹木のセット時における取扱いを容易にするとともに、人工樹木をセットした部分が移動するものであるときにその移動の支障とならないようにしている。
【0010】
また、発泡状部は、発泡剤を膨らませることにより形成されるものであるため、基材外周面の、発泡状部を形成する部分を任意に設定することができ、これによって、表面形状の多様化を図ることが可能となる。すなわち、発泡剤の塗布量や加熱温度、加熱時間を変えることにより発泡剤が発泡する程度(厚さや気泡の大きさ等)を変えて製造することにより表面形状が異なる人工樹木が簡単に形成される。
【0011】
また、発泡状部の一部を複数の層となる状態で設けたものでは、この複数の層となった部分により、直線状の基材が曲がった状態に見えることになり、本物の樹木に近い感じを出すようにしている。さらに、枝や木材スライス片、造花などの樹木構成要素を付加したものでは、一層樹木に近い感じを出せるようにしている。
【0012】
【実施例】
本発明の実施例を、図1ないし図5を参照して説明する。
図において、1は基材、1aは外周面、1bは上端面、2は内側発泡状部、2aは発泡剤、3は外側発泡状部、3aは発泡剤、4は塗装面、5は木材スライス片、6は木材スライス小片、7は枝部、8はクレープ紙をそれぞれ示している。なお、木材スライス片5、木材スライス小片6および枝部7は樹木構成要素として用いられる。
【0013】
ここで、図1に示すように、基材1の外周面1aには、内側発泡状部2や外側発泡状部3を設け、発泡状部の一部が複数の層となるようにしている。そして、この基材1には、塗装面4や、木材スライス片5、木材スライス小片6および枝部7などの樹木構成要素が付加されている。すなわち、外側発泡状部3の表面を塗装面4、木材スライス小片6および枝部7で覆うとともに、基材1の上端面1bに木材スライス5を取り付けている。
【0014】
基材1は、市販されている紙管やプラスチック製チューブなどの管状のものが用いられるが、これに限定されるものではなく、管状でない棒状のものや針金などの線状のものであってもよい。なお、人工樹木の枝やつるとしては、プラスチック製チューブ、プラスチック製チューブの中に針金を入れたもの、針金にクラフト紙等の紙を巻いたものなどが用いられる。人工樹木の幹としては、紙管や、塩ビ等の合成樹脂製の管が用いられる。また、単一の紙管等を用いることに代えて、複数の紙管等を束ねた状態で基材1として用いるようにしてもい。
【0015】
内側発泡状部2は、発泡剤2aを加熱することにより形成されるものであり、基材1の外周面1aに設けられ、設ける箇所および個数は任意である。ここで用いられる発泡剤2aは、後述する外側発泡状部3に用いられる発泡剤3aと同じものが用いられるがこれに限定されず、他のものであってもよい。
【0016】
また、発泡剤2aを外周面1aに塗布してから加熱して内側発泡状部2を設けるか、他所で発泡剤2aを加熱して形成した起伏状のものを外周面1aに取り付けて内側発泡状部2を設けるかは任意である。
【0017】
外側発泡状部3は、発泡剤3aを加熱することにより形成されるものであり、基剤1の外周面1aを覆う状態で設けられる。このとき、内側発泡状部2も覆うことにより、この内側発泡状部2の部分は発泡状部が複数の層となった状態となり、外見上こぶになってあらわれる。なお、外側発泡状部3を基材1の外周面1a全体に設けるか、外周面1aの一部に設けるかは任意である。
【0018】
また、発泡剤3aを外周面1aに塗布してから加熱して外側発泡状部3を設けるか、他所で発泡剤3aを加熱して形成したシート状のものを外周面1aに巻付けて外側発泡状部3を設けるかは任意である。いずれの場合であっても、基材1の外周面1aに外側発泡状部3を設けることにより、実際の樹木の表面形状に近い凹凸感が容易に表現できることになる。
【0019】
ここで用いられる発泡剤3aは、それ自体が他物に対する接着性を持つものであり、例えば、特殊発泡体とアクリル系エマルジョンまたはエステル系ウレタンの配合物が用いられる。そして、その一例としては、
からなるものがある。
【0020】
なお、発泡剤を膨らませる方法としては、熱を加えて発泡させる方法の他に、この発泡剤を攪拌して発泡させる方法がある。ただし、本発明の人工樹木においては、熱を加えて発泡させる方法が好ましい。なお、発泡剤3aには、顔料を混入させるようにしてもよい。
【0021】
また、発泡剤3aを膨らませる過程等を変えることによって、表面形状としてあらわれる凹凸感を容易に変更でき、これにより表面形状が異なる人工樹木の製造が容易となり、表面形状の多様性が図られる。この発泡剤3aを膨らませる過程は、発泡剤3aの塗布量、加熱温度および加熱時間を変えることにより異なるものとなる。
【0022】
ただし、同一条件であっても、発泡剤3aの膨らみかたはわずかに異なるため、全く同一の表面形状を持つ人工樹木が製造されることはほとんどない。したがって、発泡剤3aの塗布量等を意識しなくても表面形状が異なる人工樹木が製造されることになる。
【0023】
また、図示のものは、発泡状部が、内側発泡状部2と外側発泡状部3との二層になったものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、内側発泡状部2が発泡剤2aの二度にわたる塗布、加熱を繰り返すことにより設けられ、発泡状部3が設けられたときには、発泡状部の一部が三層となるようなものであってもよい。一方、発泡状部を図示のような複数の層ではなく、外側発泡状部3のみで設けるようにしてもよい。この場合、発泡剤3aの塗布量を一部で多くすることにより、膨らみの大きなこぶ状部分を形成することができる。
【0024】
外側発泡状部3の表面には塗料を塗布することにより塗装面4が形成される。この塗料には、作成する樹木の色にあわせた顔料のものが用いられ、プリント用バインダー(顔料を衣服等にプリントするときの固着剤)を含んだものが用いられる。また、外側発泡状部3の表面には木材スライス片5、木材スライス小片6および枝部7が設けられる。
【0025】
木材スライス片5は、木材の幹部分を約5mm程度の厚さにスライスしたものであり、また、木材スライス小片6は、本物の小枝部分を約2mm程度の厚さにスライスしたものである。そして、木材スライス片5は、基材1の上端面1bや下端面に取り付けられ、木材スライス小片6は、外側発泡状部3の周面に取り付けられる。なお、これらの取付には接着剤等が用いられる。
【0026】
また、木材スライス小片6の取付位置およびその個数は任意であるが、内側発泡状部2によって外見上こぶが形成された部分に取り付けることが好ましく、これにより実際の樹木に近い感じ(小枝が切り落とされた感じ)が出せることになる。なお、木材スライス小片6が取り付けられた部分には、上述の塗装面4は形成されない。
【0027】
さらに、このような、木材スライス片5および木材スライス小片6を用いることに代えて、これらの切り口部分を印刷したシール等を張るようにしたものや、切り口部分を塗料によって表現するようにしたものであってもよい。
【0028】
枝部7は、本物の小枝を用いてもよく、また、各種の造花を用いるようにしてもよい。この枝部7は、プラスチック製チューブを基材として用い、この表面に発泡剤を用いて所定の発泡状部を設けてからその上に塗装等を施すといった手順によって作成することもできる。
【0029】
この枝部7は、外側発泡状部3の表面に接着剤を用いて取り付ける方法の他に、外側発泡状部3(内側発泡状部2および基材1を含む)に孔部を設けてこれに枝部7を差し込むことにより取り付けるようにしてもよい。なお、枝部7の取付位置およびその本数は任意であるが、木材スライス小片6と同様に、内側発泡状部2によって外見上こぶが形成された部分に取り付けることが好ましい。
【0030】
次に、この人工樹木の製造方法について説明すると、先ず、図2に示すように、基材1の外周面1aの複数箇所にはけ塗りによって発泡剤2aを塗布する。そして、この状態のまま予備乾燥した後に加熱して発泡剤2aを発泡させ、内側発泡状部2を設ける。なお、この発泡剤2aの塗布、加熱を繰り返して、内側発泡状部2を多層とできることは上述のとおりである。
【0031】
この予備乾燥とは、常温にて約1時間放置するものであり、基材1に対する発泡剤2aの定着を目的とするものである。また、加熱は、通常乾燥機において120℃〜150℃で約1分行われる。なお、発泡剤2aの塗布は、はけ塗りに代えてスプレーによる吹き付けによっても行うことは可能である。
【0032】
図3に示すように、基材1に内側発泡状部2を設けることにより、基材1は直線的でなくなり、実際の樹木のような曲がった感じをだすことになる。続いて、この基材1の外周面1aにクレープ紙8(しわしわの紙)を巻く。このクレープ紙8は、次の発泡剤3aの定着化を図るとともに、基材1の外周面1aを粗くして実際の樹木の表面に近づける目的で用いられる。
【0033】
次に、図4に示すように、クレープ紙8の上からはけ塗りによって発泡剤3aを塗布する。この発泡剤3aに、予め顔料を混入させることも可能な点は前述のとおりである。そして、この状態で予備乾燥した後に加熱して発泡剤3aを発泡させ、外側発泡状部3を設ける。この外側発泡状部3によって表面形状がより凹凸となり、実際の樹木の表面形状に近い凹凸感が出ることになる。
【0034】
また、発泡剤3aの塗布が、スプレーによる吹き付けでも可能な点は、発泡剤2aの場合と同様である。なお、予備乾燥は、発泡剤2aの場合と同様に、常温にて約1時間放置するものである。このとき、予備乾燥の段階では発泡剤3aを発泡させないように注意する。これは、皮膜強度の低下を招くからである。
【0035】
また、加熱は、通常乾燥機によって120℃〜150℃で約1分行われる点は発泡剤2aの場合と同様である。このとき、加熱の温度および時間が過剰に設定されると発泡層のヘタリが生じるため注意を要する。さらに、発泡後に荷重をかけた状態で放置するとブロッキングやヘタリの原因となるため注意を要する。
【0036】
次に、図5に示すように、基材1の上端面1bに木材スライス片5を接着剤によって取り付けるとともに、外側発泡状部3の周面の複数箇所に木材スライス小片6を接着剤で取り付ける。なお、木材スライス小片6の取付位置として、内側発泡状部2に対応する部分が好ましい点は上述のとおりである。また、基材1の下端面に木材スライス5を取り付けるか否かは任意である。
【0037】
さらに、外側発泡状部3の周面に、基材1の内側まで貫通する孔部9を設け、この孔部9に枝部7を差し込むことにより、枝部7を取り付けるようにしている。したがって、上述のとおり、枝部8は、各種造花の他に本物の小枝等を用いることが可能となっている。
【0038】
そして、外側発泡状部3が露出している周面部分に、樹木の色にあわせた顔料を含んだ塗料をはけ塗りによって塗布し、図1に示すように、塗装面4を設け、人工樹木を完成させる。また、基材1を複数連結することにより、長い状態の人工樹木を形成することも可能である。このとき、基材1として紙管を用いている場合は、両者間を接着剤等で接続することにより、連結が容易となる。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、基材の外周面に発泡状部を設けているため、この発泡状部によって実際の樹木の表面形状に近い凹凸感を容易に出すことができるとともに、発泡状部の表面形状を変化させることが容易なことから、表面形状が異なる人工樹木を簡単に作成できるといった多様化を容易に図ることができる。
【0040】
また、従来の合成樹脂の人工樹木の製造に必要な金型が不要であり、異なる表面形状のものを作成するのに複数の金型を用いないため、金型の形成にかかる費用を省くことができ、異なる表面形状の人工樹木を製造する際のコストの低下を図ることができ、特に、多品種少量製造に容易に対応することができる。
【0041】
さらに、発泡状部の一部を複数の層となった状態で設けたものでは、本物の樹木に近い曲がった感じをだすことができ、また、樹木構成要素として枝や木材スライス片、造花などを付加したものでは、より一層本物の樹木に近い感じを出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、人工樹木の実施例を示す説明図である。
【図2】本発明の、内側発泡状部形成用の発泡剤を塗布した状態の説明図である。
【図3】図2の発泡剤を加熱した状態の説明図である。
【図4】本発明の、外側発泡状部形成用の発泡剤を塗布した状態の説明図である。
【図5】図4の発泡剤を加熱した状態の説明図である。
【符号の説明】
1・・・基材
1a・・外周面
1b・・上端面
2・・・内側発泡状部
2a・・発泡剤
3・・・外側発泡状部
3a・・発泡剤
4・・・塗装面
5・・・木材スライス片
6・・・木材スライス小片
7・・・枝部
8・・・クレープ紙
9・・・孔部
Claims (5)
- 管状または棒状,線状などのものからなる基材の外周面に、凹凸感を出すための発泡状部を形成した人工樹木において、
前記発泡状部として、前記外周面の一部に形成されたこぶ用の内側発泡状部と、当該内側発泡状部およびそれ以外の基材外周面部分に形成された凹凸感表現用の外側発泡状部とを備え、
前記内側発泡状部と前記外側発泡状部との間には、外側発泡状部形成用の発泡剤の定着化を図るとともに前記外周面を粗くして実際の樹木表面に近づけるための紙が設けられている、
ことを特徴とする人工樹木。 - 前記紙はクレープ紙である、
ことを特徴とする請求項1記載の人工樹木。 - 枝,木材のスライス片,造花などの樹木構成要素を付加した、
ことを特徴とする請求項1または2記載の人工樹木。 - 先ず、管状または棒状,線状などのものからなる基材の外周面の一部にこぶ用の内側発泡状部を形成し、
次に、前記内側発泡状部およびそれ以外の基材外周面部分に、外側発泡状部形成用の発泡剤の定着化を図るとともに前記外周面を粗くして実際の樹木表面に近づけるための紙を巻きつけ、
次に、前記紙に凹凸感表現用の外側発泡状部を形成する、
ことを特徴とする人工樹木の製造方法。 - 前記紙としてクレープ紙を用いる、
ことを特徴とする請求項4記載の人工樹木の製造方法。
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JP15544895A JP3716282B2 (ja) | 1995-05-30 | 1995-05-30 | 人工樹木およびその製造方法 |
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- 1995-05-30 JP JP15544895A patent/JP3716282B2/ja not_active Expired - Fee Related
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