JP3716229B2 - レーダ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーダ装置に係り、更に詳しくは、電波を送信し、その反射波を受信することによって測定対象を検出し、検出された測定対象までの距離や相対速度等を算出するレーダ装置、例えば車載レーダ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図15は、従来のレーダ装置を用いて1つの測定対象についてレーダ測定を行う場合の様子を示した図である。図中の71はレーダ装置、72はレーダ装置の走査範囲、73は測定対象、Rは測定対象までの距離、Vは測定対象との相対速度、θは測定対象の方向を示している。レーダ装置71は車両等の移動体に搭載され、レーダ信号を送受信し、その周波数解析を行うことにより、他の移動体との距離、相対速度、方向を測定するレーダ送受信装置であり、ここでは、測定対象73である車両に後続する車両に搭載されたレーダ装置であるものとする。
【0003】
このレーダ装置71は、送信波に周波数変調を施して送信するとともに、当該送信波の測定対象73における反射波を受信し、この反射波及び送信波のビート信号の周波数に基づいて、測定対象73との距離R、相対速度Vを算出している。また、所定角度からなる走査範囲72内で送信方向を変化させて、測定対象73の方向θを算出している。なお、相対速度Vはレーダ装置71及び測定対象73が離反する方向を正とし、方向θは、レーダ装置71の搭載車両の進行方向に対する角度とする。
【0004】
図16は、図15のレーダ装置71の送受信波形の一例を示した図であり、縦軸に周波数、横軸に時間をとり、送信波(実線)及び受信波(破線)の波形が示されている。送信波には、周波数を時間軸上で線形に増大させる上昇区間81と、時間軸上で線形に減少させる下降区間82とを交互に繰り返す三角波の周波数変調が施されており、その繰返周波数をfm、中心周波数をf0、変調幅を△fとする。なお、繰返周期1/fmに相当する送信波を送信し始めてから、その反射波を受信し終えるまでの時間を送受時間86とする。
【0005】
送信波と受信波との間には、測定対象73までの距離Rに基づく送受信時刻のずれ△tが生じるとともに、測定対象73との相対速度Vに基づく中心周波数のずれ(ドップラーシフト)fbが生じる。このため、送受信信号をミキシングすることによって、上昇区間81では周波数fuのビート信号が得られ、下降区間82では周波数fdのビート信号が得られる。
【0006】
図17は、図16の送受信波に基づいて求められるビート信号のパワースペクトルの一例を示した図であり、縦軸に受信強度、横軸に周波数をとって、上昇区間81及び下降区間82におけるビート信号のスペクトル分布が示されている。図中のfrはfu及びfdの平均値、fpはfu及びfdからfrまでの距離であり、fu,fdはfr及びfpを用いて次式(1),(2)により表される。
【数1】
【0007】
ここで、frは測定対象73までの距離Rに比例する量、fpは測定対象73の相対速度Vに比例する量であり、fr,fpは光速C、距離R、相対速度Vを用いて次式(3),(4)により表される。
【数2】
【0008】
上式(1)〜(4)から、レーダ装置71から測定対象73までの距離R、レーダ装置71及び測定対象73の相対速度Vは、それぞれfu,fdの加減算処理を用いて次式のように表される。
【数3】
【0009】
但し、
【数4】
【0010】
上式(7)〜(10)に示したように、上昇区間81のビート信号の周波数fuと下降区間82のビート信号の周波数fdが得られれば、測定対象73までの距離R、測定対象73との相対速度Vを求めることができる。
【0011】
ところで、上述したレーダ装置は、測定対象73が1つしか存在しない場合には、その距離R及び相対速度Vを正確に求めることができるが、測定対象73が複数存在する場合は、各々の測定対象との距離R及び相対速度Vを決定することが困難になるという問題があった。
【0012】
図18は、従来のレーダ装置を用いて2つの測定対象についてレーダ測定を行う場合の様子を示した図である。図中の71はレーダ装置、72はレーダ装置の走査範囲、7a,7bは測定対象、Ra,Rbは測定対象までの距離、Va,Vbは各測定対象との相対速度を示している。レーダ装置71は、測定対象7a、7bである2台の車両に後続する車両に搭載されたレーダ装置である。
【0013】
図19は、図17と同様にして、測定対象が2つの場合に求められるビート信号のパワースペクトルの一例を示した図であり、図16に示された変調信号をレーダ装置71から送信した場合が示されている。測定対象が2つの場合、図16に示した三角波の周波数変調の上昇区間81、下降区間82において得られるビート信号の周波数成分は、それぞれ少なくとも測定対象の数(ここでは2)だけ発生する。すなわち、上昇区間81の送信波が2つの測定対象7a,7bに反射して得られたビート信号の周波数成分fua、fubと、下降区間82の送信波が2つの測定対象7a、7bに反射して得られたビート信号の周波数成分fda,fdbが発生することになる。
【0014】
このため、測定対象が2つ存在する場合には、{fua,fda}、{fua,fdb}、{fub,fda}、{fub,fdb}の4つの組み合わせの中から測定対象7a、7bのものとしての正しい2つの組み合わせを選択しなければ、測定対象7a、7bとの距離Ra,Rb及び相対速度Va,Vbとして間違った値を算出してしまうという問題があった。
【0015】
図20は、従来のレーダ装置71の送受信波形の他の例を示した図であり、縦軸に周波数、横軸に時間をとり、送信波(実線)及び受信波(破線)の波形が示されている。この信号波形は、測定対象が2以上の場合における上記課題を解決するために特開平7−20233号公報に開示されたものである。
【0016】
この送信波は、周波数が時間的に変化する上昇区間121及び下降区間122と、周波数が時間的に変化しない無変調区間123とを繰り返す周波数変調が施され、上昇区間121及び下降区間122でのビート信号から得られる複数の周波数成分の組み合わせの中から、無変調区間122のビート信号の周波数成分に基づいて、正しい組み合わせを選択している。以下、この特開平7−20233号公報にかかる従来の技術について、詳しく述べる。
【0017】
2つの測定対象7a,7bが存在する場合、図20に示された上昇区間121、下降区間122における送信波によって得られるビート信号の周波数成分は、図19と同様、上昇区間81に基づく周波数成分fua,fubと、下降区間82に基づく周波数成分fda,fdbからなる。そして、2つの測定対象7a,7bの距離Ra,Rbは、前述したように{fua,fda}{fua,fdb}{fub,fda}{fub,fdb}の4つの組み合わせの中から正しい組み合わせを2つ選択して求めなければならない。
【0018】
また、図20に示された無変調区間123における送信波によって得られるビート信号の周波数成分は、2つの周波数成分fca,fcbからなる。2つの測定対象7a,7bのうち、走行速度の遅い方を7a、走行速度の速い方を7bとする、つまりfca<fcbとすると、それぞれの速度Va,Vbは、次式(11),(12)により求まる。
【数5】
【0019】
ここで、上昇区間121、下降区間122及び無変調区間123において得られる周波数成分fua,fub,fda,fdb,fca,fcbの間には、次式(13),(14)の関係が成り立つ。
【数6】
【0020】
すなわち、上昇区間121で得られるビート信号の周波数fuと、下降区間122で得られるビート信号の周波数fdと、無変調区間123で得られるビート信号の周波数fcとの間に、fd−fu=2・fcなる関係が成り立つ時、これら3つの周波数成分が単一の測定対象に属するものと判断できる。
【0021】
従って、測定対象7aに関するビート信号の周波数成分を{fua,fda}、測定対象7bに関するビート信号の周波数成分を{fub,fdb}と決定することができる。測定対象が複数存在する場合でも、先の上昇区間と下降区間のみからなる送信波を利用するレーダ装置と比較して、正しい距離及び相対速度を求めることができる可能性が高くなる。
【0022】
ところで、送信波と受信波をミキサー等によって検波する際に、ビート信号の実数部(以下同相成分と記す)のみの周波数成分を用いれば、レーダを構成するハードウェア要素を少なくすることができるため、小型化、低価格化に有利であり、各種レーダ装置において採用されている。しかしながら、このような構成とした場合、計測すべき周波数の絶対値を得ることはできるが、正負の符号を得ることができなくなってしまう。具体的には、全て非負の周波数範囲に折り返したものとなるので、式(1),(2)は、次式(15),(16)のように変形される。
【数7】
【0023】
式(15),(16)をfuとfdの符号に応じて場合分けすると、次のように表される。
【数8】
【0024】
以上のように、ビート信号の実数部のみの周波数成分を用いると、組み合わせの種類(選択肢)が4倍になるため、これらの周波数成分の組み合わせの中から正しい組み合わせを選択することがさらに困難になるという問題があった。
【0025】
特開平10−132925号公報には、このような課題を解決するためのレーダ信号処理方法が開示されている。このレーダ信号処理方法によれば、図20と同様にして、送信波の周波数を上昇区間121、無変調区間123、下降区間122に周波数変調するレーダ装置を用いて、fuとfdの加減算処理を行うだけで測定対象の距離R、相対速度Vを求めることができる。以下、具体的にその内容を説明する。
【0026】
無変調区間123では、ビート信号の周波数fcが測定対象との相対速度Vによって決まるため、fcは相対速度Vを用いて次式(25)のように表される。
【数9】
式(17)〜(24)によれば|fu+fd|,|fu−fd|のどちらか一方がfpの2倍に一致しており、式(25)によればfp=fcであるから、これらのうち2fcに一致する方がfpの倍数であり、一致しない方がfrの倍数であると判定することができる。
【0027】
図21は、離反、接近する各測定対象について、レーダ装置71の送受信波形と、そのビート信号の例を示した図であり、(a)には離反する測定対象の場合が示され、(b)には接近する測定対象の場合が示されている。図21から分かるように同相成分のみの検波では、
【数10】
となるため、fuとfdを比較することでドップラー周波数成分fcの符号が判別できる。
【0028】
さらに、距離R>0なので、距離による周波数成分frは、次式(27)となる。
【数11】
【0029】
以上の説明により理解される通り、式(25)〜(28)によってfr、fpの大小及び正負関係が得られ、式(7)〜(10)、式(17)〜(24)によって測定対象73の距離R、相対速度Vを求めることができる。
【0030】
図22及び図23のステップ2201〜2215は、上記公報に記載された従来のレーダ信号処理方法を示すフローチャート図であり、測定対象が複数存在する場合におけるレーダ信号処理方法が示されている。このフローチャートに従えば、測定対象が複数存在する場合でも、各測定対象との距離Rmn及び相対速度Vmnを求めることができる。以下、図22及び図23の各ステップについて詳細に説明する。
【0031】
ステップ2201:変調周波数の上昇区間121におけるビート信号の周波数スペクトルから1又は2以上の目標候補を検出し、それぞれの周波数を求める。例えば、受信強度を所定の閾値と比較して当該閾値以上となる周波数スペクトルのピークを検出し、これらの周波数fu(i){i=1,2,…,I}を求める。
【0032】
ステップ2102:周波数の無変調区間123におけるビート信号の周波数スペクトルから1又は2以上の目標候補を検出し、それぞれの周波数を求める。例えば、受信強度を所定の閾値と比較して当該閾値以上となる周波数スペクトルのピークを検出し、これらの周波数fc(k){k=1,2,…,K}を求める。
【0033】
ステップ2203:変調周波数の下降区間122におけるビート信号の周波数スペクトルから1又は2以上の目標候補を検出し、それぞれの周波数を求める。例えば、受信強度を所定の閾値と比較して当該閾値以上となる周波数スペクトルのピークを検出し、これらの周波数fd(j){j=1,2,…,J}を求める。
【0034】
ステップ2204:ステップ2201及びステップ2203で検出された目標候補のスペクトルの周波数fu(i){i=1,2,…,I}とfd(j){j=1,2,…,J}の全ての組み合わせについて、次式(29),(30)に従って、周波数和fsum(i,j)及び周波数差fdif(i,j)を求める。
【数12】
【0035】
ステップ2205:ステップ2202で検出された各目標候補の周波数fc(k){k=1,2,…,K}を、ステップ2204で求められたfsum(i,j)及びfdif(i,j)と比較し、fc(l)=fsum(m,n)あるいはfc(l)=fdif(m,n)となるfu(m)及びfd(n)を正しい組み合わせとして選択する。
【0036】
ステップ2206:fc(l)がfsum(m,n)と等しいかどうかを判定し、等しければステップ2207へ進み、等しくなければステップ2211へ進む。
【0037】
ステップ2207:fc(l)=fsum(m,n)の場合、まず、距離周波数fr(m,n)をfdif(m,n)とする。
【0038】
ステップ2208:次に、fu(m)とfd(n)の大きさを比較し、fu(m)≧fd(n)であればステップ2209へ進み、fu(m)<fd(n)であればステップ2210へ進む。
【0039】
ステップ2209:速度周波数fp(m,n)をfsum(m,n)としてステップ2215へ進む。
【0040】
ステップ2210:速度周波数fp(m,n)を−fsum(m,n)としてステップ2215へ進む。
【0041】
ステップ2211:一方、fc(l)≠fsum(m,n)の場合、まず、距離周波数fr(m,n)をfsum(m,n)とする。
【0042】
ステップ2212:次に、fu(m)とfd(n)の大きさを比較し、fu(m)≧fd(n)であればステップ2213へ進み、fu(m)<fd(n)であればステップ2214へ進む。
【0043】
ステップ2213:速度周波数fp(m,n)をfdif(m,n)としてステップ2215へ進む。
【0044】
ステップ2214:速度周波数fp(m,n)を−fdif(m,n)としてステップ2215へ進む。
【0045】
ステップ2215:求められたfr(m,n),fp(m,n)に基づいて、式(3),(4)から相対距離Rmnと相対速度Vmnを求める。
【0046】
【発明が解決しようとする課題】
上述した通り、送信波として周波数の上昇区間81及び下降区間82からなる周波数変調波を用いるレーダ装置の場合、測定対象が複数存在する場合に、各々の測定対象との距離及び相対速度を決定することが困難であるという問題があった。
【0047】
この様な問題を解決するため、上記公報(特開平7−20233号、特開平10−132925号)に記載の従来のレーダ装置では、送信波として周波数の上昇区間121、下降区間122及び無変調区間123からなる周波数変調波を用いることにより、複数ある各測定対象との距離R及び相対速度Vを求めている。
【0048】
しかしながら、この様なレーダ装置の場合、上昇区間121及び下降区間122に加え、無変調区間123についても周波数スペクトル解析を行う必要があるため、無変調区間についての演算時間の分だけ、走査中の一方向当たりの測距周期(距離及び相対速度を取得する周期)が長くなってしまうという問題があった。
【0049】
また、上昇区間121、下降区間122及び無変調区間123の各送信波を送信する時の走査方向が異なると、測定対象の整合性が取りにくくなるため、送信波を送信してから受信波を受信するまでの間、送受信方向が同一となるように、走査することを止めるか、あるいは走査の速度を下げることが望ましい。しかしながら、走査することを止めることができる走査の機構系は一般的に複雑かつ高価になってしまうという問題があった。また、走査速度を下げると走査範囲が狭くなるか所定の走査範囲を走査するための走査周期が長くなってしまうという問題があった。
【0050】
さらに、測距周期1/fmを所定時間以下に抑えるために、図20における送受時間126を図16における送受時間86と等しくしようとする場合、図20に示した送信波の中に無変調区間123の分だけ、上昇区間121、下降区間122の時間が上昇区間81、下降区間82の時間に比べて短くなり、FFT(First Fourier Transfer)処理部におけるサンプリング数が少なくなって、距離及び相対速度の測定精度を悪化させてしまうという問題があった。
【0051】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、測定対象が2以上存在する場合でも各測定対象の距離又は相対速度を測定することができるとともに、走査中の一方向当たりの測距周期の短いレーダ装置を提供することを目的とする。
【0052】
また、本発明は、測定精度の低下、測距周期の増加、機構系の複雑化、高価格化、あるいは走査範囲の狭域化を招くことなく、測定対象が2以上存在する場合でも各測定対象の距離又は相対速度を測定することができるレーダ装置を提供することを目的とする。
【0053】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明によるレーダ装置は、周波数が時間軸上で増大する周波数上昇区間、周波数が時間軸上で減少する周波数下降区間及び周波数が時間軸上で一定となる周波数無変調区間からなる送信波を生成する周波数変調手段と、生成された送信波を送出するとともに、測定対象による反射波を受信する送受信手段と、送受信手段の送受信方向を所定の走査範囲において繰り返し走査させる走査手段と、送信波及び受信波に基づいて、2以上の各測定対象ごとに距離又は相対速度を求める信号処理手段とを備えたレーダ装置であって、周波数変調手段が、周波数上昇区間、周波数下降区間及び周波数無変調区間のいずれか2つの区間を交互に繰り返す第1の送信波と、残る1つの区間を繰り返す第2の送信波とを生成し、第1の送信波及び第2の送信波が走査周期に同期して切り替えられるように構成される。
【0054】
請求項2に記載の本発明によるレーダ装置は、第1の送信波及び第2の送信波が、走査周期ごとに交互に送出されるように構成される。
【0055】
請求項3に記載の本発明によるレーダ装置は、上記第1の送信波が、周波数上昇区間及び周波数下降区間からなり、上記第2の送信波が周波数無変調区間からなる。
【0056】
請求項4に記載の本発明によるレーダ装置は、周波数変調手段が、周波数上昇区間、周波数下降区間及び周波数無変調区間のいずれか2つの区間を交互に繰り返す第1の送信波と、残る1つの区間及び第1の送信波を構成するいずれか1つの区間を交互に繰り返す第2の送信波とを生成し、第1の送信波及び第2の送信波が走査周期に同期して切り替えられるように構成される。
【0057】
請求項5に記載の本発明によるレーダ装置は、第1の送信波及び第2の送信波が、走査周期ごとに交互に送出されるように構成される。
【0058】
請求項6に記載の本発明によるレーダ装置は、上記第1の送信波が、周波数上昇区間及び周波数下降区間からなり、上記第2の送信波が周波数上昇区間及び周波数無変調区間からなる。
【0059】
請求項7に記載の本発明によるレーダ装置は、上記第1の送信波が、周波数上昇区間及び周波数下降区間からなり、上記第2の送信波が周波数下降区間及び周波数無変調区間からなる。
【0060】
請求項8に記載の本発明によるレーダ装置は、上記第1の送信波が、周波数上昇区間及び周波数無変調区間からなり、上記第2の送信波が周波数下降区間及び周波数無変調区間からなる。
【0061】
請求項9に記載の本発明によるレーダ装置は、送信波を生成する周波数変調手段と、生成された送信波を送出するとともに、測定対象による反射波を受信する送受信手段と、送受信手段の送受信方向を所定の走査範囲において繰り返し走査させる走査手段と、送信波及び受信波によるビート信号を生成するビート信号生成手段と、このビート信号に基づいて、2以上の各測定対象ごとに距離又は相対速度を求める信号処理手段とを備えたレーダ装置であって、周波数変調手段が、周波数が時間軸上で増大する周波数上昇区間、周波数が時間軸上で減少する周波数下降区間及び周波数が時間軸上で一定となる周波数無変調区間のうち2以下の区間を繰り返す第1の送信波と、残りの全ての区間を含む2以下の区間を繰り返す第2の送信波とを生成し、第1の送信波及び第2の送信波が走査周期に同期して切り替えられるように構成される。
【0062】
請求項10に記載の本発明によるレーダ装置は、第1の送信波及び第2の送信波が、走査周期ごとに交互に送出されるように構成される。
【0063】
請求項11に記載の本発明によるレーダ装置は、上記信号処理手段が、走査範囲に含まれる複数の走査方向のそれぞれについて、周波数上昇区間、周波数下降区間及び周波数無変調区間の各ビート周波数から測定対象との距離又は相対速度を求めるように構成される。
【0064】
請求項12に記載の本発明によるレーダ装置は、上記信号処理手段が、周波数上昇区間のビート周波数及び周波数下降区間のビート周波数の各組合わせについて、周波数和及び周波数差の絶対値を求めるステップと、周波数和又は周波数差の絶対値が周波数無変調区間のビート周波数と等しくなる周波数上昇区間のビート周波数及び周波数下降区間のビート周波数の組合わせを選択するステップと、周波数和に基づいて測定目標までの距離を求めるステップと、周波数差に基づいて測定目標との相対速度を求めるステップからなる処理を各走査方向ごとに実行するように構成される。
【0065】
請求項13に記載の本発明によるレーダ装置は、上記ビート信号生成手段が、送信波及び受信波から得られるビート信号の実数部の周波数成分を求め、信号処理手段が、求められたビート周波数に基づいて、測定対象との距離又は相対速度を求めるように構成される。
【0066】
請求項14に記載の本発明によるレーダ装置は、上記信号処理手段が、周波数上昇区間のビート周波数及び周波数下降区間のビート周波数の各組合わせについて、周波数和及び周波数差の絶対値を求めるステップと、周波数和又は周波数差の絶対値が周波数無変調区間のビート周波数と等しくなる周波数上昇区間のビート周波数及び周波数下降区間のビート周波数の組合わせを選択するステップと、周波数和又は周波数差の絶対値のうち周波数無変調区間のビート周波数と異なる値に基づいて、測定目標までの距離を求めるステップと、周波数和又は周波数差の絶対値のうち周波数無変調区間のビート周波数と等しくなる値に基づいて、測定目標との相対速度を求めるステップからなる処理を各走査方向ごとに実行するように構成される。
【0067】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるレーダ装置の一構成例を示したブロック図である。図中の1はレーダ装置、10は信号処理装置、11は発振器、12はパワーデバイダ、13は送信アンプ、14はサーキュレータ、15aはホーンアンテナ、15bはアンテナ反射鏡、16は受信アンプ、17はミキサー、18はフィルタ、19はアンプ、20はA/D変換器、21はアンテナ走査用モータである。
【0068】
ホーンアンテナ15aは、送受信共用のアンテナであり、アンテナ反射鏡15bは、ホーンアンテナ15aの送受信波を反射して、ホーンアンテナ15aに指向性を持たせている。つまり、ホーンアンテナ15a及びアンテナ反射鏡15bにより指向性アンテナを構成している。アンテナ走査用モータ21は、アンテナ反射鏡15bを回転駆動させるための駆動装置であり、信号処理装置10から出力される走査方向に応じた制御信号に基づいて、アンテナ角度(例えば水平面内におけるアンテナの方位)を制御し、送受信方向を制御している。
【0069】
発振器11は、信号処理装置10からの制御信号に基づいて、周波数変調が施された送信信号を発生させる。発振器11で生成された送信信号は、パワーデバイダ12において2つに分岐され、その一方はミキサー17に入力され、他方は送信アンプ13で増幅された後、サーキュレータ14を経由してホーン15aから放射される。
【0070】
ホーンアンテナ15aから出力された電波は、アンテナ反射鏡15bで反射され、所定の送信方向へ向けて空間に放射される。空間へ出射された電波は測定対象(不図示)で乱反射され、その反射波の一部が、再びアンテナ反射鏡15bにより反射され、ホーンアンテナ15aに入射され受信される。
【0071】
この受信信号は、サーキュレータ14を経由して受信アンプ16で増幅された後、ミキサー17により上記送信信号とミキシングされる。受信信号は、送信信号に対して遅延時間△tを持ってホーンアンテナ15aに入射され、また、測定対象がレーダ装置に対して相対速度を持つ場合、送信信号に対してドップラーシフトfbを持ってホーンアンテナ15aに入力される。
【0072】
このため、ミキサー17において、遅延時間△tとドップラーシフトfbに対応したビート周波数信号が生成される。なお、実施の形態1及び2では、ミキサー17で求められるビート信号の周波数には符号が付されているものとする。
【0073】
生成されたビート周波数信号は、フィルタ18を通過し、アンプ19により増幅されてA/D変換器20、さらには信号処理装置10に入力される。信号処理装置10では、ビート周波数信号の周波数スペクトル解析を行い、この解析結果に基づいて、測定対象までの距離、相対速度が求められる。
【0074】
このレーダ装置は、アンテナ走査用モータ21がアンテナ反射鏡15bを駆動することにより、レーダ装置の送受信方向を所定の走査範囲において繰り返し走査させている。走査範囲は、更に複数の走査方向からなり、レーダ装置1は、各走査方向について、以上の動作を繰り返し行っている。
【0075】
図2は、図1のレーダ装置1の送受信波形の一例を示した図であり、縦軸に周波数、横軸に時間をとり、送信波(実線)及び受信波(破線)の波形が示されている。(a)には、図16と同様、周波数を時間軸上で線形に増大させる上昇区間31と、時間軸上で線形に減少させる下降区間32とを繰返周期1/fmで交互に繰り返す三角波の周波数変調が施された送受信信号が示されている。一方、(b)には、周波数が時間的に変化しない周波数無変調信号が示されている。つまり、周波数無変調区間33のみからなる。発振器11は、信号処理装置10の指示に基づいて、2種類の送信信号、すなわち図6の(a)又は(b)のいずれかの送信信号を生成している。
【0076】
図3は、図1のレーダ装置1の走査方向の一例を示した図である。アンテナ走査用モータ21により駆動されるアンテナ反射鏡15bは、ホーンアンテナ15aを各走査方向40〜44に変化させ、走査範囲40〜44を所定の走査周期で走査している。
【0077】
図4は発振器11により生成される送信波の切替タイミングの一例を示した図である。図2に示した2種類の送信波を生成する発振器11は、同一の走査周期内においては同一の送信波を生成し、走査周期に同期して送信波を切り替えている。図4では、走査周期ごとに送信波を切り替える例が示されている。すなわち、2n回目(n=0,1,2…)の走査周期では、図3の各走査方向40〜44に対して、図2(a)に示された上昇区間31及び下降区間32からなる周波数変調信号が送信される。また、(2n+1)回目の走査周期では、図3の各走査方向40〜44に対して、図2(b)に示された周波数無変調信号が送信される。
【0078】
図5のステップ501〜506は、本発明の実施の形態1によるレーダ信号処理方法の一例を示したフローチャートであり、図6〜図8は、それぞれ図5のステップ504〜506の詳細を示したフローチャートである。これらのフローチャートに従えば、一方向当たりの測定周期を長くすることなく、測定対象が複数存在する場合でも、各測定対象との距離Rmn及び相対速度Vmnを求めることができる。以下、図5のフローチャートの各ステップについて詳細に説明する。
【0079】
ステップ501:信号処理装置10は、何番目の走査周期であるのかを認識するためのカウンタScanCntを備え、この走査周期を示すカウンタScanCntをインクリメントして、走査周期ごとの処理を開始する。
【0080】
ステップ502:信号処理装置10は、同一の走査周期中の何番目の走査方向40〜44であるのかを認識するためのカウンタDCntを備え、このカウンタDCntをリセットする。このため、その値はゼロとなり、まず最初の走査方向40を対象として以下の処理が行われる。
【0081】
ステップ503:カウンタScanCntが偶数の時はステップ504に進み、奇数の時は、ステップ505に進む。つまり、ステップ504及びステップ505は、走査周期ごとに交互に実行される。
【0082】
ステップ504:図2(a)に示した上昇・下降変調信号からなる送信波を走査しながら、各走査方向40〜44について、上昇区間におけるビート信号のピーク周波数fuと、下降区間におけるビート信号のピーク周波数fdが求められた後、ステップ506に進む。
【0083】
ステップ505:図2(b)に示した無変調信号からなる送信波を走査しながら、各走査方向40〜44について、ビート信号のピーク周波数fcが求められた後、ステップ506に進む。
【0084】
ステップ506:ステップ504及びステップ505において求められたfu、fd及びfcに基づいて信号処理装置10による演算処理が行われ、各走査方向40〜44について、1又は2以上の測定対象との距離R及び相対速度Vが求められる。その後、再びステップ501に戻る。
【0085】
図6のステップ601〜606は、図5のステップ504(上昇・下降変調信号による走査)の詳細を示したフローチャートであり、上昇・下降変調信号を用いて、各走査方向ごとに上昇区間と下降区間のそれぞれにおけるビート信号のピーク周波数fu、fdを求めるための処理方法が示されている。以下、図6のフローチャートの各ステップについて詳細に説明する。
【0086】
ステップ601:カウンタDCntの値に基づき、アンテナ走査用モータ21がアンテナ反射鏡15bを回転駆動させ、ホーンアンテナ15aによる送受信方向を変化させる。
【0087】
ステップ602:発振器11は、信号処理装置10の指令に基づいて、図2(a)に示した変調周波数の上昇区間31及び周波数下降区間32からなる送信波を生成し、この送信波がホーンアンテナ15aから出力される。
【0088】
ステップ603:1つの走査方向に関して、変調周波数の上昇区間31におけるビート信号の周波数スペクトルから1又は2以上の目標候補を検出し、それぞれの周波数を求める。例えば、受信強度を所定の閾値と比較して当該閾値以上となる周波数スペクトルのピークをI個(Iは1又は2以上)検出し、これらの周波数fu(i、DCnt){i=1,2,3,…,I}を求める。
【0089】
ステップ604:1つの走査方向に関して、変調周波数の下降区間32におけるビート信号の周波数スペクトルから1又は2以上の目標候補を検出し、それぞれの周波数を求める。例えば、受信強度を所定の閾値と比較して当該閾値以上となる周波数スペクトルのピークをJ個(Jは1又は2以上)検出し、これらの周波数fd(j,DCnt){j=1,2,3,…,J}を求める。
【0090】
ステップ605:走査方向を示すカウンタDCntをインクリメントして、次の走査方向41、42,…が処理の対象とされる。
【0091】
ステップ606:カウンタDCntが5未満であればステップ601に戻り、新たな走査方向について同様の動作(ステップ601〜605)を繰り返す。カウンタDCntが5以上であれば、全ての走査方向40〜44について走査が完了しているため、当該処理を終了して図5のステップ506に進む。
【0092】
図7のステップ701〜705は、図5のステップ505(無変調信号による走査)の詳細を示したフローチャートであり、無変調信号を用いて、各走査方向ごとにビート信号のピーク周波数fcを求めるための処理方法が示されている。以下、図7のフローチャートの各ステップについて詳細に説明する。
【0093】
ステップ701:カウンタDCntの値に基づき、アンテナ走査用モータ21がアンテナ反射鏡15bを回転駆動させ、ホーンアンテナ15aによる送受信方向を変化させる。
【0094】
ステップ702:発振器11は、信号処理装置10の指令に基づいて、図2(b)に示した周波数を無変調とした送信波を生成し、この送信波がホーンアンテナ15aから出力される。
【0095】
ステップ703:1つの走査方向に関して、無変調周波数のビート信号の周波数スペクトルから1又は2以上の目標候補を検出し、それぞれの周波数を求める。例えば、受信強度を所定の閾値と比較して当該閾値以上となる周波数スペクトルの1又は2以上のピークをK個(Kは1又は2以上)検出し、これらの周波数fc(k、DCnt){k=1,2,3,…,K}を求める。
【0096】
ステップ704:走査方向を示すカウンタDCntをインクリメントして、次の走査方向41、42,…が処理の対象とされる。
【0097】
ステップ705:カウンタDCntが5未満であればステップ701に戻り、新たな走査方向について同様の動作(ステップ701〜704)を繰り返す。カウンタDCntが5以上であれば全ての走査方向40〜44について走査が完了しているため、当該処理を終了して図5のステップ506に進む。
【0098】
図8のステップ801〜810は、図5のステップ506(演算処理)の詳細を示したフローチャートであり、2以上の測定対象までの距離及び相対速度を各走査方向ごとに求めるための処理方法が示されている。以下、図8のフローチャートの各ステップについて詳細に説明する。
【0099】
ステップ801:走査方向を示すカウンタDCntをリセットして、その値がゼロとなり、まず最初の走査方向40について以下の演算が行われる。
【0100】
ステップ802:図6のステップ603及びステップ604で検出された目標候補のスペクトルの周波数fu(i,DCnt){i=1,2,…,I}とfd(j,DCnt){j=1,2,…,J}について、全てのi,jの組み合わせについて、周波数和fsum(i,j)と周波数差fdif(i,j)を次式(31),(32)により求める。
【数13】
【0101】
ステップ803:図7のステップ703で検出された目標候補の周波数fc(k,DCnt){k=1,2,…,K}と、ステップ802で求められたfsum(i,j)およびfdif(i,j)を比較して、次式(33)又は(34)を満足するfc(l),fu(m),fd(n)の1又は2以上の組み合わせを正しい組み合わせとして選択する。
【数14】
【0102】
ステップ804:距離周波数fr(m,n)を周波数和fsum(m,n)とする。
【0103】
ステップ805:fu(m)とfd(n)の大きさを比較し、fu(m)≧fd(n)であればステップ806へ、fu(m)<fd(n)であればステップ807へ進む。
【0104】
ステップ806:速度周波数fp(m,n)を周波数差fdif(m,n)として、ステップ808へ進む。
【0105】
ステップ807:速度周波数fp(m,n)を−fdif(m,n)として、ステップ808へ進む。
【0106】
ステップ808:ステップ806およびステップ807で求められたfr(m,n)およびfp(m,n)から、次式(35),(36)により距離Rmn及び相対速度Vmnが求められる。
【数15】
【0107】
ステップ809:走査方向を示すカウンタDCntをインクリメントして、次の走査方向41、42,…が処理の対象とされる。
【0108】
ステップ810:カウンタDCntが5未満であればステップ802に戻り、新たな走査方向について同様の動作(ステップ802〜809)を繰り返す。カウンタDCntが5以上であれば全ての走査方向40〜44について走査が完了しているため、当該処理を終了して図5のステップ501に戻る。
【0109】
本実施の形態によるレーダ装置では、変調周波数の上昇区間及び下降区間から構成され無変調区間を有しない図2(a)の送信波と、無変調区間のみで構成される図2(b)の送信波とを各走査周期ごとに切り替えて送信している。そして、走査周期の単位で時間的に前後して得られる、図2(a)の送信波に基づくビート信号の周波数成分fu,fdと、図2(b)の送信波に基づくビート信号の周波数成分fcを用いて、測定対象の距離及び相対速度を算出している。
【0110】
すなわち、従来のレーダ装置のように、変調周波数の上昇区間及び下降区間とともに無変調区間を有する図20に示したような送信波を用いることなく、従来の装置と同様にして、上昇区間、下降区間及び無変調区間におけるビート周波数を用いて測定対象との距離及び相対速度を求めている。
【0111】
これにより、測定対象が2以上存在する場合でも、周波数成分の誤組み合わせを防止して正しく測定することができるとともに、測定精度の低下、測距周期の増加、機構系の複雑化あるいは高価格化、走査範囲の狭域化などの問題を引き起こすことがない。従って、2以上の測定対象が存在する場合でも、各測定対象までの距離及び相対速度を精度よく求めることができる。
【0112】
なお、本実施の形態では、上昇区間及び下降区間からなる送信波信号と、無変調区間のみからなる送信波信号とを走査周期ごとに切り替えて送信する場合について説明したが、本発明はこのような送信波信号の場合に限定されない。つまり、上昇区間、下降区間、無変調区間の3区間を任意に組み合わせて2種類の送信波信号を生成し、走査周期に同期して切り替えて送信すれば、同様の効果を奏することができるため、3区間の組み合わせは他の組み合わせであってもよい。具体的には、上昇区間及び無変調区間からなる送信波信号と、下降区間のみからなる送信波信号とを用いてもよいし、無変調区間及び下降区間からなる送信波信号と、上昇区間のみからなる送信波信号とを用いてもよい。
【0113】
実施の形態2.
本実施の形態における構成及び動作は、実施の形態1の場合と基本的には同じであるが、発振器11によって生成される2種類の送信波が異なる。また、これに伴って信号処理装置10における処理内容が異なる。
【0114】
図9は、図1のレーダ装置1の送受信波形の他の例を示した図であり、縦軸に周波数、横軸に時間をとり、送信波(実線)及び受信波(破線)の波形が示されている。図9(a)には、図2(a)と同様、周波数を時間軸上で線形に増大させる上昇区間31と、時間軸上で線形に減少させる下降区間32とを交互に繰り返す三角波の周波数変調が施された送受信信号が示されている。一方、図9(b)には、周波数を時間軸上で線形に増大させる上昇区間34と、周波数が時間的に変化しない無変調区間33が示されている。発振器11は、信号処理装置10の指示に基づいて、2種類の送信信号、すなわち図9の(a)又は(b)のいずれかの送信信号を生成している。
【0115】
図10は発振器11により生成される送信波の切替タイミングの一例を示した図である。図9に示した2種類の送信波を生成する発振器11は、同一の走査周期内においては同一の送信波を生成し、走査周期に同期して送信波を切り替えている。図10では、走査周期ごとに送信波が切り替えられている。すなわち、2n回目(n=0,1,2…)の走査周期では、各走査方向40〜44に対して、図9(a)に示された上昇区間及び下降区間からなる周波数変調信号が送信される。また、(2n+1)回目の走査周期では、各走査方向40〜44に対して、図9(b)に示された上昇区間及び無変調区間からなる周波数変調信号が送信される。
【0116】
図11のステップ1101〜1106は、本発明の実施の形態2によるレーダ信号処理方法の一例を示したフローチャートであり、図12は、図11のステップ1105(無変調信号による走査)の詳細を示したフローチャートである。図11のフローチャートを図5の場合と比較すれば、ステップ1105のみが異なり、他のステップ1101〜1104及び1106は図5の対応するステップと同じである。以下、図11のフローチャートの各ステップについて詳細に説明する。
【0117】
ステップ1101:信号処理装置10は、何番目の走査周期であるのかを認識するためのカウンタScanCntを備え、この走査周期を示すカウンタScanCntをインクリメントして、走査周期ごとの処理を開始する。
【0118】
ステップ1102:信号処理装置10は、同一の走査周期中の何番目の走査方向40〜44であるのかを認識するためのカウンタDCntを備え、このカウンタDCntをリセットする。このため、その値はゼロとなり、まず最初の走査方向40を対象として以下の処理が行われる。
【0119】
ステップ1103:カウンタScanCntが偶数の時はステップ1104に進み、奇数の時は、ステップ1105に進む。つまり、ステップ1104及びステップ1105は、走査周期ごとに交互に実行される。
【0120】
ステップ1104:図9(a)に示した上昇・下降変調信号からなる送信波を走査しながら、各走査方向40〜44について、上昇区間31におけるビート信号のピーク周波数fuと、下降区間32におけるビート信号のピーク周波数fdが求められた後、ステップ1106に進む。
【0121】
ステップ1105:図9(b)に示した上昇・無変調信号からなる送信波を走査しながら、各走査方向40〜44について、上昇区間34におけるビート信号のピーク周波数fuと、無変調区間33におけるビート信号の周波数fcが求められた後、ステップ1106に進む。
【0122】
ステップ1106:ステップ1104及びステップ1105において求められたfu、fd及びfcに基づいて信号処理装置10による演算処理が行われ、各走査方向40〜44について、1又は2以上の測定対象との距離R及び相対速度Vが求められる。このとき、上昇区間における周波数fuは、ステップ1104及び1105で求められた値の中から、より新しい方の値が用いられる。その後、再びステップ1101に戻る。
【0123】
図12は、図11のステップ1105(上昇・無変調信号による走査)の詳細を示したフローチャートであり、上昇・無変調信号を用いて、各走査方向ごとに上昇区間34と無変調区間33のそれぞれにおけるビート信号のピーク周波数fu、fcを求めるための処理方法が示されている。図12のフローチャートを図7の場合と比較すれば、ステップ1203のみが異なり、他のステップ1201,1202及び1204〜1206は図7の対応するステップと同じである。以下、図12のフローチャートの各ステップについて詳細に説明する。
【0124】
ステップ1201:カウンタDCntの値に基づき、アンテナ走査用モータ21がアンテナ反射鏡15bを回転駆動させ、ホーンアンテナ15aによる送受信方向を変化させる。
【0125】
ステップ1202:発振器11は、信号処理装置10の指令に基づいて、図9(b)に示した変調周波数の上昇区間34及び周波数無変調区間33からなる送信波を生成し、この送信波がホーンアンテナ15aから出力される。
【0126】
ステップ1203:1つの走査方向に関して、変調周波数の上昇区間34におけるビート信号の周波数スペクトルから1又は2以上の目標候補を検出し、それぞれの周波数を求める。例えば、受信強度を所定の閾値と比較して当該閾値以上となる周波数スペクトルのピークをI個(Iは1又は2以上)検出し、これらの周波数fu(i、DCnt){i=1,2,3,…,I}を求める。
【0127】
このとき、図11のステップ1104において求められた上昇区間の周波数fu(i、DCnt){i=1,2,3,…,I}に上書きすることにより、fuを新たなデータに置き換えている。全く同様にして、図11のステップ1104が実行される場合には、ステップ1203で求められたfuに上書きし、新たなデータへの置き換えが行われる。
【0128】
ステップ1204:1つの走査方向に関して、周波数の無変調区間33におけるビート信号の周波数スペクトルから1又は2以上の目標候補を検出し、それぞれの周波数を求める。例えば、受信強度を所定の閾値と比較して当該閾値以上となる周波数スペクトルのピークをK個(Kは1又は2以上)検出し、これらの周波数fc(k,DCnt){k=1,2,3,…,K}を求める。
【0129】
ステップ1205:走査方向を示すカウンタDCntをインクリメントして、次の走査方向41、42,…が処理の対象とされる。
【0130】
ステップ1206:カウンタDCntが5未満であればステップ1201に戻り、新たな走査方向について同様の動作(ステップ1201〜1205)を繰り返す。カウンタDCntが5以上であれば、全ての走査方向40〜44について走査が完了しているため、当該処理を終了して図11のステップ1106に進む。
【0131】
本実施の形態によるレーダ装置では、変調周波数の上昇区間及び下降区間から構成される図9(a)の送信波と、上昇区間及び無変調区間で構成される図9(b)の送信波とを走査周期に同期して切り替えて送信している。このため、各走査周期ごとに上昇区間におけるビート信号の周波数成分を得ることができる。つまり、走査周期の単位で時間的に前後して得られる下降区間及び無変調区間でのビート信号の周波数成分と、全ての走査周期で得られる上昇区間でのビート信号の周波数成分とを用いて、測定対象の距離及び相対速度を算出している。
【0132】
従って、実施の形態1と同様の効果を奏することができるのは勿論であるが、更に、実施の形態1の場合と比較して、測定対象の距離及び相対速度を検出するリアルタイム性を向上させることができるという効果も奏する。
【0133】
なお、本実施の形態では、無変調信号による走査周期において変調周波数上昇区間を加える場合の例について説明したが、周波数上昇区間の代わりに変調周波数下降区間を加えてもよい。この場合、各走査周期ごとに周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分を得ることができるため、同様の効果が得られる。
【0134】
さらに、2種類の送信波の一方を周波数上昇区間及び周波数無変調区間の繰返信号として構成し、他方を周波数下降区間及び周波数無変調区間の繰返信号として構成してもよい。この場合、各走査周期ごとに無変調区間におけるビート信号の周波数成分を得ることができるため、同様の効果が得られる。
【0135】
すなわち、周波数の上昇区間、下降区間および無変調区間のうち、異なるいずれか2区間を組み合わせた送信波として2種類生成し、これらの送信波のいずれかに3区間全てが含まれていれば、2種類の送信波の両方に含まれる区間については、各走査周期ごとにその区間のビート信号の周波数成分を得ることができ、リアルタイム性を向上させることができる。
【0136】
実施の形態3.
本実施の形態における構成及び動作は、実施の形態1の場合と基本的には同じであるが、送信波と受信波をミキサー17によって検波する際、ビート信号の同相成分のみを用いる点で異なる。また、これに伴って信号処理装置10における処理内容が異なる。
【0137】
図13のステップ1301〜1306は、本発明の実施の形態3によるレーダ信号処理方法の一例を示したフローチャートであり、図14は、図13のステップ1306(演算処理)の詳細を示したフローチャートである。図13のフローチャートを図5の場合と比較すれば、ステップ1306のみが異なり、他のステップ1301〜1305は図5の対応するステップと同じである。以下、図13のフローチャートの各ステップについて詳細に説明する。
【0138】
ステップ1301:信号処理装置10は、何番目の走査周期であるのかを認識するためのカウンタScanCntを備え、この走査周期を示すカウンタScanCntをインクリメントして、走査周期ごとの処理を開始する。
【0139】
ステップ1302:信号処理装置10は、同一の走査周期中の何番目の走査方向40〜44であるのかを認識するためのカウンタDCntを備え、このカウンタDCntをリセットする。このため、その値はゼロとなり、まず最初の走査方向40を対象として以下の処理が行われる。
【0140】
ステップ1303:カウンタScanCntが偶数の時はステップ1304に進み、奇数の時は、ステップ1305に進む。つまり、ステップ1304及びステップ1305は、走査周期ごとに交互に実行される。
【0141】
ステップ1304:図2(a)に示した上昇・下降変調信号からなる送信波を走査しながら、各走査方向40〜44について、上昇区間におけるビート信号のピーク周波数fuと、下降区間におけるビート信号のピーク周波数fdが求められる。このとき、ピーク周波数fu,fdとして周波数の絶対値のみが求められる。その後、ステップ1306に進む。
【0142】
ステップ1305:図2(b)に示した無変調信号からなる送信波を走査しながら、各走査方向40〜44について、ビート信号のピーク周波数fcが求められる。このとき、ピーク周波数fcとして周波数の絶対値のみが求められる。その後、ステップ1306に進む。
【0143】
ステップ1306:ステップ1304及びステップ1305において求められたfu、fd及びfcに基づいて信号処理装置10による演算処理が行われ、各走査方向40〜44について、1又は2以上の測定対象との距離R及び相対速度Vが求められる。ただし、実施の形態1,2の場合と異なり、ビート信号のピーク周波数fu,fd,fcは絶対値として求められているため、処理方法が異なる。その後、再びステップ1301に戻る。
【0144】
図14のステップ1401〜1415は、図13のステップ1306(演算処理)の詳細を示したフローチャートであり、2以上の測定対象までの距離及び相対速度を各走査方向ごとに求めるための処理方法が示されている。以下、図14のフローチャートの各ステップについて詳細に説明する。
【0145】
ステップ1401:走査方向を示すカウンタDCntをリセットして、その値がゼロとなり、まず最初の走査方向40について以下の演算が行われる。
【0146】
ステップ1402:図13のステップ1304で検出された目標候補のスペクトルの周波数fu(i,DCnt){i=1,2,…,I}とfd(j,DCnt){j=1,2,…,J}について、全てのi,jの組み合わせについて、周波数和fsum(i,j)と周波数差fdif(i,j)を次式(37),(38)により求める。
【数16】
【0147】
ステップ1403:図13のステップ1305で検出された目標候補の周波数fc(k,DCnt){k=1,2,…,K}と、ステップ1402で求められたfsum(i,j)およびfdif(i,j)を比較して、次式(39)又は(40)を満足するfc(l),fu(m),fd(n)の1又は2以上の組み合わせを正しい組み合わせとして選択する。
【数17】
【0148】
ステップ1404:fc(l)がfsum(m,n)と等しいかどうかを判定し、等しければステップ1405へ進み、等しくなければステップ1409へ進む。
【0149】
ステップ1405:fc(l)=fsum(m,n)の場合、まず、距離周波数fr(m,n)を周波数差fdif(m,n)とする。
【0150】
ステップ1406:次に、fu(m)とfd(n)の大きさを比較し、fu(m)≧fd(n)であればステップ1407へ進み、fu(m)<fd(n)であればステップ1408へ進む。
【0151】
ステップ1407:速度周波数fp(m,n)をfsum(m,n)としてステップ1413へ進む。
【0152】
ステップ1408:速度周波数fp(m,n)を−fsum(m,n)としてステップ1413へ進む。
【0153】
ステップ1409:一方、fc(l)≠fsum(m,n)の場合、まず、距離周波数fr(m,n)をfsum(m,n)とする。
【0154】
ステップ1410:次に、fu(m)とfd(n)の大きさを比較し、fu(m)≧fd(n)であればステップ1411へ進み、fu(m)<fd(n)であればステップ1412へ進む。
【0155】
ステップ1411:速度周波数fp(m,n)をfdif(m,n)としてステップ1413へ進む。
【0156】
ステップ1412:速度周波数fp(m,n)を−fdif(m,n)としてステップ1413へ進む。
【0157】
ステップ1413:ステップ1405〜1412で求められたfr(m,n),fp(m,n)から、次式(41),(42)により距離Rmn及び相対速度Vmnが求められる。
【数18】
【0158】
ステップ1414:走査方向を示すカウンタDCntをインクリメントして、次の走査方向41、42,…が処理の対象とされる。
【0159】
ステップ1415:カウンタDCntが5未満であればステップ1402に戻り、新たな走査方向について同様の動作(ステップ1402〜1414)を繰り返す。カウンタDCntが5以上であれば全ての走査方向40〜44について走査が完了しているため、当該処理を終了して図13のステップ1301に戻る。
【0160】
本実施の形態によるレーダ装置では、送信波と受信波をミキサー17によって検波する際、ビート信号の同相成分のみを用いているが、この様なレーダ装置においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、周波数成分の誤組み合わせを防止して、測定対象が2以上存在する場合でも正しく測定しようとする場合に、測距周期の増加、機構系の複雑化あるいは高価格化、走査範囲の狭域化の問題を引き起こすことがない。従って、測定対象までの距離及び相対速度を精度良く求めることができる。
【0161】
なお、本実施の形態では、実施の形態1で用いられた送受信波、すなわち、図2に示された送受信波をミキサー17によって検波する際、ビート信号の同相成分のみを用いるレーダ装置の例について説明したが、本発明は、実施の形態2で説明した送受信波、すなわち図9に示された送受信波その他の送受信波がミキサー17で検波されるレーダ装置についても適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0162】
【発明の効果】
本発明によるレーダ装置は、第1の送信波及び第2の送信波を生成し、第1の送信波及び第2の送信波を走査周期に同期して切り替えて送出している。これらの送信波は、それぞれが周波数上昇区間、周波数下降区間及び周波数無変調区間の2以下の区間からなり、各区間は、第1の送信波又は第2の送信波のいずれかに含まれている。
【0163】
このため、周波数上昇区間、周波数下降区間及び周波数無変調区間における送信波及び受信波に基づいて、2以上の測定対象が存在する場合であっても、測定対象との距離又は相対速度を測定することができるだけでなく、周波数上昇区間、周波数下降区間及び周波数無変調区間からなる送信波を用いる必要がなく、走査中の一方向当たりの測定周期を短くすることができる。
【0164】
従って、測定精度の低下、機構系の複雑化又は高価化、走査範囲の狭域化などの問題を引き起こすことなく、測定対象が2以上存在する場合でも各測定対象の距離又は相対速度について高精度の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1によるレーダ装置の一構成例を示したブロック図である。
【図2】 図1のレーダ装置1の送受信波形の一例を示した図である。
【図3】 図1のレーダ装置1の走査方向の一例を示した図である。
【図4】 発振器11により生成される送信波の切替タイミングの一例を示した図である。
【図5】 本発明の実施の形態1によるレーダ信号処理方法の一例を示したフローチャートである。
【図6】 図5のステップ504(上昇・下降変調信号による走査)の詳細を示したフローチャートである。
【図7】 図5のステップ505(無変調信号による走査)の詳細を示したフローチャートである。
【図8】 図5のステップ506(演算処理)の詳細を示したフローチャートである。
【図9】 図1のレーダ装置1の送受信波形の他の例を示した図である(実施の形態2)。
【図10】 発振器11により生成される送信波の切替タイミングの一例を示した図である。
【図11】 本発明の実施の形態2によるレーダ信号処理方法の一例を示したフローチャートである。
【図12】 図11のステップ1105(無変調信号による走査)の詳細を示したフローチャートである。
【図13】 本発明の実施の形態3によるレーダ信号処理方法の一例を示したフローチャートである。
【図14】 図13のステップ1306の詳細を示したフローチャートである。
【図15】 従来のレーダ装置を用いて1つの測定対象についてレーダ測定を行う場合の様子を示した図である。
【図16】 図15のレーダ装置71の送受信波形の一例を示した図である。
【図17】 図16の送受信波に基づいて求められるビート信号のパワースペクトルの一例を示した図である。
【図18】 従来のレーダ装置を用いて2つの測定対象についてレーダ測定を行う場合の様子を示した図である。
【図19】 測定対象が2つの場合に求められるビート信号のパワースペクトルの一例を示した図である。
【図20】 従来のレーダ装置71の送受信波形の他の例を示した図である。
【図21】 離反、接近する各測定対象について、レーダ装置71の送受信波形と、そのビート信号の例を示した図である。
【図22】 測定対象が複数存在する場合における従来のレーダ信号処理方法を示すフローチャート図である。
【図23】 図22に引き続き、従来のレーダ信号処理方法を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
1 レーダ装置、10 信号処理装置、11 発振器、
12 パワーデバイダ、13 送信アンプ、14 サーキュレータ、
15a ホーンアンテナ、15b アンテナ反射鏡、16 受信アンプ、
17 ミキサー、18 フィルタ、19 アンプ、20 A/D変換器、
21 アンテナ走査用モータ、31 周波数上昇区間、32 周波数下降区間、
33 周波数無変調区間、34 周波数無変調区間、40〜44 走査方位、
fu 周波数上昇区間のビート周波数、fd 周波数下降区間のビート周波数、
fu 周波数無変調区間のビート周波数、fm 繰返周波数、
f0 中心周波数、△f 変調幅、
Claims (14)
- 周波数が時間軸上で増大する周波数上昇区間、周波数が時間軸上で減少する周波数下降区間及び周波数が時間軸上で一定となる周波数無変調区間からなる送信波を生成する周波数変調手段と、生成された送信波を送出するとともに、測定対象による反射波を受信する送受信手段と、送受信手段の送受信方向を所定の走査範囲において繰り返し走査させる走査手段と、送信波及び受信波に基づいて、2以上の各測定対象ごとに距離又は相対速度を求める信号処理手段とを備えたレーダ装置において、
周波数変調手段が、周波数上昇区間、周波数下降区間及び周波数無変調区間のいずれか2つの区間を交互に繰り返す第1の送信波と、残る1つの区間を繰り返す第2の送信波とを生成し、第1の送信波及び第2の送信波が走査周期に同期して切り替えられることを特徴とするレーダ装置。 - 第1の送信波及び第2の送信波が、走査周期ごとに交互に送出されることを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
- 上記第1の送信波が、周波数上昇区間及び周波数下降区間からなり、上記第2の送信波が周波数無変調区間からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダ装置。
- 周波数が時間軸上で増大する周波数上昇区間、周波数が時間軸上で減少する周波数下降区間及び周波数が時間軸上で一定となる周波数無変調区間からなる送信波を生成する周波数変調手段と、生成された送信波を送出するとともに、測定対象による反射波を受信する送受信手段と、送受信手段の送受信方向を所定の走査範囲において繰り返し走査させる走査手段と、送信波及び受信波に基づいて測定対象との距離又は相対速度を求める信号処理手段とを備えたレーダ装置において、
周波数変調手段が、周波数上昇区間、周波数下降区間及び周波数無変調区間のいずれか2つの区間を交互に繰り返す第1の送信波と、残る1つの区間及び第1の送信波を構成するいずれか1つの区間を交互に繰り返す第2の送信波とを生成し、第1の送信波及び第2の送信波が走査周期に同期して切り替えられることを特徴とするレーダ装置。 - 第1の送信波及び第2の送信波が、走査周期ごとに交互に送出されることを特徴とする請求項4に記載のレーダ装置。
- 上記第1の送信波が、周波数上昇区間及び周波数下降区間からなり、上記第2の送信波が周波数上昇区間及び周波数無変調区間からなることを特徴とする請求項4又は5に記載のレーダ装置。
- 上記第1の送信波が、周波数上昇区間及び周波数下降区間からなり、上記第2の送信波が周波数下降区間及び周波数無変調区間からなることを特徴とする請求項4又は5に記載のレーダ装置。
- 上記第1の送信波が、周波数上昇区間及び周波数無変調区間からなり、上記第2の送信波が周波数下降区間及び周波数無変調区間からなることを特徴とする請求項4又は5に記載のレーダ装置。
- 送信波を生成する周波数変調手段と、生成された送信波を送出するとともに、測定対象による反射波を受信する送受信手段と、送受信手段の送受信方向を所定の走査範囲において繰り返し走査させる走査手段と、送信波及び受信波からビート周波数を生成するビート信号生成手段と、ビート周波数に基づいて、2以上の各測定対象ごとに距離又は相対速度を求める信号処理手段とを備えたレーダ装置において、
周波数変調手段が、周波数が時間軸上で増大する周波数上昇区間、周波数が時間軸上で減少する周波数下降区間及び周波数が時間軸上で一定となる周波数無変調区間のうち2以下の区間を繰り返す第1の送信波と、残りの全ての区間を含む2以下の区間を繰り返す第2の送信波とを生成し、第1の送信波及び第2の送信波が走査周期に同期して切り替えられることを特徴とするレーダ装置。 - 第1の送信波及び第2の送信波が、走査周期ごとに交互に送出されることを特徴とする請求項9に記載のレーダ装置。
- 上記信号処理手段は、走査範囲に含まれる複数の走査方向のそれぞれについて、周波数上昇区間、周波数下降区間及び周波数無変調区間の各ビート周波数から測定対象との距離又は相対速度を求めることを特徴とする請求項9又は10に記載のレーダ装置。
- 上記信号処理手段が、周波数上昇区間のビート周波数及び周波数下降区間のビート周波数の各組合わせについて、周波数和及び周波数差の絶対値を求めるステップと、周波数和又は周波数差の絶対値が周波数無変調区間のビート周波数と等しくなる周波数上昇区間のビート周波数及び周波数下降区間のビート周波数の組合わせを選択するステップと、周波数和に基づいて測定目標までの距離を求めるステップと、周波数差に基づいて測定目標との相対速度を求めるステップからなる処理を各走査方向ごとに実行することを特徴とする請求項11に記載のレーダ装置。
- 上記ビート信号生成手段は、送信波及び受信波から得られるビート信号の実数部の周波数成分を求め、信号処理手段が、求められたビート周波数に基づいて、測定対象との距離又は相対速度を求めることを特徴とする請求項9、10又は11に記載のレーダ装置。
- 上記信号処理手段が、周波数上昇区間のビート周波数及び周波数下降区間のビート周波数の各組合わせについて、周波数和及び周波数差の絶対値を求めるステップと、周波数和又は周波数差の絶対値が周波数無変調区間のビート周波数と等しくなる周波数上昇区間のビート周波数及び周波数下降区間のビート周波数の組合わせを選択するステップと、周波数和又は周波数差の絶対値のうち周波数無変調区間のビート周波数と異なる値に基づいて、測定目標までの距離を求めるステップと、周波数和又は周波数差の絶対値のうち周波数無変調区間のビート周波数と等しくなる値に基づいて、測定目標との相対速度を求めるステップからなる処理を各走査方向ごとに実行することを特徴とする請求項13に記載のレーダ装置。
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