JP3715726B2 - 超電導複合円筒及びその製造方法並びに超電導マグネット - Google Patents

超電導複合円筒及びその製造方法並びに超電導マグネット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インターベンショナル型MRI(磁気共鳴医療画像診断装置)の主マグネットとして誘導着磁して使用する超電導複合円筒及びその製造方法、並びにそれを用いた超電導マグネットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インターベンショナル型MRIの主マグネットとして、超電導複合円筒の応用が期待されている。インターベンショナル型MRIのマグネットとは、図1に示すように、超電導冷却機能を備えた容器1に配した2個一組の超電導円筒2を誘導着磁し、2個の超電導円筒の間にできた空間の直流磁場を利用するMRI装置のことである。超電導マグネットの場合、その磁石としての性能は臨界電流密度と超電導体の総厚で決まるので、板厚を増やすため超電導円筒は複合一体化されて使用される。従来のインターベンショナル型MRI用超電導円筒型マグネットには以下に述べる3つの問題点があった。
【0003】
第1は、一対の複合円筒間の距離は、被験者が横たわるスペースとして距離が空いているが、誘導着磁された円筒の磁場は、円筒の中心位置から離れるに従い急激に低下してしまうという問題である。円筒の中心位置から離れるに従い磁場が低下するという意味は、次のようなことである。半径a、長さL、単位長さ当たりの巻き数をN、流れる電流Iとしたとき、ソレノイド円筒軸上の中心点Oから距離dの点Pにおける磁場Bpは有限長のビオ・サバールの式より次のように表される。
Bp=μo・I・N/2〔(d+L/2)/{a+(d+L/2)1/2
−(d−L/2)/{a+(d−L/2)1/2〕(Wb/m
・・・・・・(1)
ソレノイド端面Q及び軸上中心点Oの磁場は、それぞれ
HQ=I・N・L/2(a+L)・・・・・・(2)
Ho=I・N・L/(4a+L)・・・・・・(3)
と表され中心部に比べ端面では明らかに磁場は低下する。端面からさらに離れた点では磁場はさらに低下する。
【0004】
第2に、インターベンショナル型MRIの超電導円筒マグネットの着磁は、複合一体化した超電導円筒の外側に巻いたヒーター線に通電することにより、部分的に超電導状態を破り超電導円筒の中へ磁場を入れて着磁を行うが、超電導円筒の外側に巻いたヒーターに通電するため、ヒーターの熱が円筒の加熱の他、液体ヘリウムの蒸発のために費やされ、効率が悪いという問題である。
【0005】
第3は、磁場の均一性の問題である。NbTi超電導体を使用した超電導多層板を用いる場合、該板は圧延により作製されるため、NbTiの超電導特性を決定する主因子であるTi析出物は方向性を持つ。従って、超電導多層板の臨界電流密度や機械的特性も圧延方向に対して強い異方性を持つ。このような超電導多層板から深絞りにより作製した円筒を無造作に複合化すると、誘導着磁後の発生磁場の場所による不均一性が生じる。また、超電導多層板から深絞りにより作製した円筒は、図4のように圧延方向8と幅方向9が凹み、圧延方向に対して45°の方向が凸となるような耳6が発生する。超電導多層板そのものに異方性がある上、さらに深絞り加工で材料に複雑な変形が施されるため、臨界電流密度が場所によって異なり、誘導着磁後の発生磁場の不均一性がさらに増長されてしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前節に記載した問題点を鑑みてなされたものである。本発明が解決しようとする課題は以下の3点である。
まず、着磁した円筒型マグネットの中心位置から離れた位置の磁場は、中心の磁場に比べかなり小さいという問題、即ち着磁磁場の位置的低下を抑えることである。インターベンショナル型MRI用のマグネットでは、被験者の位置はどうしても超電導円筒から離れた位置にせざるを得ないため、実際に磁場を利用する場所における磁場は円筒の中心位置に比べかなり低い。本発明はこの磁場の低下を抑えることを第1の課題とする。
次に、インターベンショナル型MRI用超電導マグネットの内部への磁場の閉じこめ、即ち着磁を効率的に行うことである。マンガニン線等の抵抗線を超電導複合円筒の外側に巻いて通電する場合、マンガニン線自体が液体ヘリウムに直接触れ、蒸発が顕著で、しかも超電導円筒が加熱されるのに時間を要する。本発明は、少ない通電時間で、液体ヘリウムの蒸発量を抑えることのできる熱スイッチを持った超電導複合円筒を提供することを第2の課題とする。
さらに、圧延及び深絞り加工により作製した超電導多層複合円筒の超電導マグネットの発生磁場の場所によるバラツキを抑えることである。圧延により作製された超電導多層板の臨界電流密度は、圧延方向と幅方向で特性が異なり、深絞り加工時の材料の伸びも方向によって異なるため、超電導多層円筒を無造作に複合すると、円筒内部や外部空間における発生磁場が本来均一であるべき場所にも関わらずバラツキを生じてしまう。本発明はこの点を解決することを第3の課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1、請求項6に記載の本発明は、少なくとも1層のNbTi合金と高導電率金属が交互に積層され、かつ前記NbTi合金と前記高導電率金属の間にNbまたはTaのバリヤー層が存在する超電導多層板を深絞り成形して得られる円筒容器から切り出された円筒(深絞り超電導円筒)が少なくとも2個以上同軸状に複合一体化された超電導複合円筒であって、該超電導複合円筒を構成する前記深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に、前記超電導多層板をロール状に丸めて作製したロール巻き超電導円筒を一層以上内包することを特徴とする超電導複合円筒及びその製造方法である。また、請求項2、請求項7に記載の本発明は、隣り合う前記深絞り超電導円筒同士が板であったときの圧延方向がそれぞれ45°+90°×N(N:整数)だけ異なること、及び隣り合う超電導多層深絞り円筒の底部と上端部がそれぞれ逆向きに複合化されていることを特徴とする超電導複合円筒及びその製造方法である。請求項4に記載の本発明は、本超電導複合円筒2個一組とし、該超電導複合円筒を誘導着磁する機構を有することを特徴とした超電導マグネットである。
【0008】
本発明材料は直流強磁場中で使用されるため、超電導的に安定であることが必要である。超電導マグネット材料として、超電導材料と高導電率金属の複合材料を用いる理由は、この超電導安定性を高めるためである。超電導材料は超電導状態においては、電気抵抗がゼロであるが、何らかの理由で部分的に常電導に転移すると、常電導状態では電気抵抗が大きいため発熱し、常電導部分が拡大して材料全体の超電導状態が一気に破れる現象が起こる(クエンチ現象)。一方、超電導材料に高導電率材料が隣接した複合材料では、部分的な常電導転移が起こっても、超電導材料に流れていた電流は高導電性金属を経由して流れ、一旦常電導に転移した部分も超電導状態に復帰することができ、超電導状態が安定に保たれる。
【0009】
1テスラ以上の直流の強磁場下において超電導状態を保つためには、超電導材料として臨界磁場Hc2が高い(1テスラ以上)材料であることが必要であることと、圧延などの加工性が良好なことから、超電導材料としてNbTi合金を選定した。NbTi層と高導電率材料層の間にNbまたはTaのバリヤー層を配したのは、製造工程における熱間圧延工程で銅等の高導電金属とNbTi中のTiとが金属間化合物を形成させないようにするためである。
【0010】
また、本発明は、図2に示すように深絞り加工で作製した複数個の深絞り超電導円筒2の間に超電導多層板4をロール状に丸めて挿入することを特徴とする。深絞り加工で作製した複数個の深絞り超電導円筒の間に超電導多層板をロール状に丸めて入れるのは、着磁した2個の超電導複合円筒間においてできるだけ大きな磁場を利用できるようにするためである。超電導線材をコイル状に巻いた超電導コイルに超電導多層板をロール状に丸めて挿入すると、コイル内の発生磁場が均一化されることは、特開平6−196321号公報に記述されている。
【0011】
本発明では、超電導コイルではなく、深絞り加工法で作製した深絞り超電導円筒同士の間にロール状に丸めた超電導多層板を挿入し、深絞り超電導円筒とロール巻き超電導円筒を一体化させた所に特徴がある。ロール巻きにした超電導円筒を挿入することによって、超電導複合円筒の端部からやや離れた位置での磁場の低下を抑えること、すなわち2個の超電導複合円筒を相対して配置したMRI用マグネットにおいて、磁場を使用する箇所、即ち2つの超電導複合円筒の円筒同士の中間地点(図1の点O)における磁場をできるだけ大きく利用することを目的としている。また、ロール巻き超電導円筒を深絞り超電導円筒の間に挟むことにより、ロール巻き超電導円筒の巻きがほどけてずり落ちるという心配もなく、超電導複合円筒の超電導冷却容器への取り付けが容易となる。
【0012】
請求項3に記載の本発明は、複合一体化された超電導複合円筒を構成する深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に抵抗の高い金属板または、抵抗の高い金属の線を電気的絶縁材で被覆した発熱体を挿入した超電導複合円筒である。本発明は、図3に示すように深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に抵抗の高い金属板または、抵抗の高い金属の線を電気的絶縁材で被覆した発熱体5を挿入することを特徴とする。電気抵抗の高い金属板、線とは、例えば、Ni−Cr合金箔、マンガニン線等である。一般に、超電導円筒を着磁する際は、外部の磁場を円筒内部に入れるため、円筒の超電導状態を一時的に解除する必要がある。この役割をするのが電気抵抗の高い金属板または、線である。抵抗発熱体を深絞り超電導円筒の間に入れる理由は、抵抗体が直接液体ヘリウムに触れず、熱の逃げが少ない、加熱時間の短い、効率の良い熱スイッチを得るためである。
【0013】
さらに、本発明では、ロール状に丸めたロール巻き超電導円筒を内包する超電導複合円筒内の深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に、前記抵抗の高い金属板または、抵抗の高い金属の線を電気的絶縁材で被覆した発熱体を挿入したので、超電導複合円筒の端部から離れた実際に磁場を利用する位置での磁場の低下を抑えることが出来ると同時に、加熱時間の短い効率の良い熱スイッチが得られる。
【0014】
請求項5に記載の本発明は、請求項3に記載の本発明の超電導複合円筒2個一組とし、該円筒を誘導着磁する機構と、該発熱体への通電を入切する機構を有することを特徴とした超電導マグネットである。
【0015】
本発明の高導電率金属とは、銅、アルミニウム等を指す。深絞り超電導円筒を複合一体化する際、隣り合う深絞り超電導円筒同士が板であったときの圧延方向がそれぞれ45°、135°、225°、または315°異なるように深絞り超電導円筒を配するのは、隣り合う深絞り超電導円筒同士の深絞り加工時の耳の発生箇所をずらすためと超電導特性の平均化を図るためである。耳の凹部は伸びの劣る部分であるため板厚が若干厚いので、凹部と凹部が同じ位置で複合化すると板厚の厚い部分がさらに顕著になり、磁気シールド特性や磁化特性に影響する。超電導多層板の圧延異方性により耳の凸部付近と凹部付近の超電導特性は異なるため、隣り合う深絞り超電導円筒同士の耳の凸部と凹部が一致すると特性の異方性はさらに増長される。さらに深絞り加工した超電導円筒の底部分と、上端部の材料の加工状態は異なるため、超電導特性や機械特性等がそれぞれの部分で異なる。従って、複合化した超電導複合円筒の特性を均一化するためには、隣り合う深絞り超電導円筒同士の深絞り方向がそれぞれ反対になっていることが必要である。
【0016】
圧延法で作製した超電導多層板は、図4のように圧延方向に対して45°の方向を向いた部分が耳の凸部となり、圧延方向と幅方向を向いた部分が耳の凹部となる。従って、隣り合う深絞り超電導円筒同士が板であったときの圧延方向を45°+90°×N(N:整数)だけずらすことにより、凸部と凹部の位置をちょうど反対にすることができる。例えば、4個の深絞り超電導円筒を複合一体化したときのそれぞれの凸部と凹部の位置は図5のようになる。また、このとき隣り合う深絞り超電導円筒同士の深絞り加工方向はそれぞれ反対向きになるように複合化する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例により発明の実施の形態を具体的に説明するとともに、予備実験により本発明の個々の発明特定事項の効果について説明する。
[実施例1]
まず、本発明に必須の発明特定事項である、ロール巻き超電導円筒を内包させる効果についての検討結果について、以下に説明する。
30層の厚さ約10μmのNbTi合金層と29層の厚さ約10μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.1μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約100μmの銅であるトータル厚さ1mmの超電導多層材から、内径100〜110mm、高さ120mmの底付き円筒を深絞りにより作製し、本円筒の耳部分と底部分を切断し長さ100mmの深絞り超電導円筒とした。
【0018】
次に、図6のように本円筒を内径112mmの鋼鉄製の金型円筒12の中に入れ、円筒の中に筒状のウレタンゴム11を入れて上下からプレス機13でプレスし、円筒を拡径した。拡径した円筒の中に内径100mmの第2の深絞り超電導円筒を入れ、同様の方法で第2の深絞り超電導円筒を拡径し、第1の深絞り超電導円筒の内側に一体化させた。次に、30層の厚さ約1μmのNbTi合金層と29層の厚さ約1μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.01μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約10μmの銅であるトータル厚さ0.1mmの超電導多層板を幅100mm、長さおよそ3mの板に切り、一体化した2個の深絞り超電導円筒からなる複合円筒の内側にロール巻きにして挿入した。このときロール巻きにした円筒の肉厚は約1mmである。
【0019】
次に、ロール巻き超電導円筒の内側に内径100mm、肉厚1mmの第3の深絞り超電導円筒を入れ、さらにウレタンゴム円筒を挿入し上下からプレスして拡径し、第3の深絞り超電導円筒も一体化した。第4の深絞り超電導円筒も同様の方法で一体化することにより、図2に示すようなロール巻き超電導円筒を内包する超電導複合円筒ができた。4つの深絞り超電導円筒に1つのロール巻き超電導円筒を内包した超電導複合円筒に磁場を円筒軸と平行に6テスラ印加してからゼロ磁場に戻すことにより本超電導複合円筒を着磁し、円筒軸上の円筒端部から50mm離れた箇所の磁場を測定した。このときの磁場は0.88テスラであった。一方、ロール巻き超電導円筒を内包しない4個の深絞り超電導円筒だけを一体化した超電導複合円筒の場合、超電導複合円筒端部から50mm離れた軸上の箇所の磁場は0.79テスラであった。尚、ロール巻き超電導円筒単独の場合、軸に平行な磁場を印加してもほとんど磁化されないので、着磁された磁場の増加は、ロール巻き超電導円筒と深絞り超電導円筒を併用したことによるものである。
【0020】
上述した方法で作製した超電導複合円筒10を2組用意し、図7のように対向して配置することにより、超電導複合円筒同士が向かい合う空間に磁場を発生させた。超電導複合円筒同士の距離は100mmとした。両円筒には6テスラの磁場を印加してゼロ磁場まで下げることにより、それぞれの超電導複合円筒の中心位置でおよそ3.2テスラの磁場を着磁した。このとき超電導複合円筒軸上の端部から50mmの位置(図7の点Oの位置)の磁場を測定した。比較例として、ロール巻き超電導円筒を内包しない4個の深絞り超電導円筒を一体化した超電導複合円筒2個を対向して同様の実験を行った。ロール巻き超電導円筒を内包させた円筒では測定個所の磁場は1.74テスラであったのに対し、ロール巻き超電導円筒を内包させなかった比較例の円筒では、同様の箇所の磁場は1.32テスラであった。ロール巻き超電導円筒を内包させた超電導複合円筒を用いた場合、円筒から離れた場所(端部から50mmの位置)における発生磁場の位置的な低下を約25%抑えることができた。
【0021】
[予備実験1]
次に、深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に発熱体(抵抗体)を内包させるという請求項3に記載の発明の発明特定事項の効果についての検討結果について、以下に説明する。なお、ここでは、請求項1に記載の本発明の「ロール巻き超電導円筒」に関する発明特定事項、および請求項2に記載の本発明の「板の異方性」や「深絞り方向」に関する発明特定事項は考慮していない。
30層の厚さ約10μmのNbTi合金層と29層の厚さ約10μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.1μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約100μmの銅であるトータル厚さ1mmの超電導多層材から、内径100〜110mm、高さ120mmの円筒を深絞りにより作製し、本円筒の耳部分と底部分を切断し長さ100mmの深絞り超電導円筒とした。
【0022】
次に、図6のように本深絞り超電導円筒を内径112mmの鋼鉄製の金型円筒の中に入れ、深絞り超電導円筒の中に筒状のウレタンゴムを入れて上下からプレスし、深絞り超電導円筒を拡径した。拡径した深絞り超電導円筒の中に内径100mmの第2の深絞り超電導円筒を入れ、同様の方法で第2の深絞り超電導円筒を拡径し、第1の深絞り超電導円筒の内側に一体化させた。次に、厚さ約0.1mmのNi−Cr箔製の抵抗素子をポリイミド樹脂で封止し、銀でクラッドした銅線をリード線とした抵抗体を一体化した2つの複合円筒の内側に挿入した。挿入した抵抗体の内側に内径100mm、肉厚1mmの第3の深絞り超電導円筒を入れ、さらにウレタンゴム円筒を挿入し上下からプレスして拡径し、第3の深絞り超電導円筒も一体化した。第4の深絞り超電導円筒も同様の方法で一体化することにより、図3に示すような抵抗体を内包する超電導複合円筒を得た。
【0023】
比較例として、4個の深絞り超電導円筒を一体化した超電導複合円筒に0.5mmφのマンガニン線を図8のように5回巻いたものを用意した。両超電導複合円筒を液体ヘリウム中に浸し、磁場を超電導複合円筒の軸と平行に3テスラ印加した。この状態で1Aの電流を流し、超電導複合円筒の中に磁場が入り込む時間とヘリウムの蒸発量を比較した。ヘリウムの蒸発量は、通電を開始する前と通電を開始して超電導複合円筒内部に磁場が完全に入り込んだ後のヘリウムの残量の差異を測定した。抵抗体を内包した超電導複合円筒では、およそ90秒で磁場が該円筒内部に侵入し始め、その後約30秒で3テスラの磁場がすべて超電導複合円筒内部に入った。このときヘリウムの蒸発量は、ヘリウム液面の減少で1.7cmであった。一方、比較例のマンガニン線を巻いた超電導複合円筒では、該円筒内部に磁場が入り込むまでに約140秒、その後3テスラの磁場が全て超電導複合円筒内にトラップされるまでに約40秒かかった。この時ヘリウム液面の減少は3.5cmで、抵抗体を内包させる場合の約2倍の蒸発量であった。
【0024】
上述した方法で作製した超電導複合円筒を2個用意し、図7のように対向して配置することにより、超電導複合円筒同士が向かい合う空間に磁場を発生させた。該円筒同士の距離は100mmとした。両円筒には3テスラの磁場を印加した後抵抗体に1Aの電流を流して局所的に超電導状態を破り3テスラの磁場をトラップした。一方、比較例として、4個の深絞り超電導円筒を一体化した超電導複合円筒に0.5mmφのマンガニン線を図8のように5回巻いた超電導複合円筒2個を対向し、マンガニン線に同じ電流を流して同じく3テスラの磁場をトラップした。このとき円筒の中に磁場が入り込む時間とヘリウムの蒸発量を比較した。
【0025】
抵抗体を内包した超電導複合円筒(2個)では、それぞれの円筒におよそ90秒で磁場が侵入し始め、その後約30秒で3テスラの磁場がすべて超電導複合円筒内部に入った。このときヘリウムの蒸発量は、ヘリウム液面の減少で3.5cmであった。一方、比較例のマンガニン線を巻いた超電導複合円筒(2個)では、それぞれの円筒内部に磁場が入り込むまでに約140秒、その後3テスラの磁場が全て超電導複合円筒内にトラップされるまでに約40秒かかった。この時ヘリウム液面の減少は7.2cmで、抵抗体を内包させた場合の約2倍の蒸発量であった。
【0026】
[実施例2]
次に、ロール巻き超電導円筒を内包させる効果と、深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に発熱体(抵抗体)を内包させる効果の相乗効果についての検討結果について、以下に説明する。
30層の厚さ約10μmのNbTi合金層と29層の厚さ約10μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.1μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約100μmの銅であるトータル厚さ1mmの超電導多層材から、内径100〜110mm、高さ120mmの円筒を深絞りにより作製し、本円筒の耳部分と底部分を切断し長さ100mmの深絞り超電導円筒とした。
【0027】
次に、図6のように本円筒を内径112mmの鋼鉄製の金型円筒の中に入れ、深絞り超電導円筒の中に筒状のウレタンゴムを入れて上下からプレスし、深絞り超電導円筒を拡径した。拡径した円筒の中に内径100mmの第2の深絞り超電導円筒を入れ、同様の方法で第2の深絞り超電導円筒を拡径し、第1の深絞り超電導円筒の内側に一体化させた。次に、30層の厚さ約1μmのNbTi合金層と29層の厚さ約1μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.01μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約10μmの銅であるトータル厚さ0.1mの超電導多層板を幅100mm、長さおよそ3mの板に切り、一体化した2層の複合円筒の内側にロール巻きにしてロール巻き超電導円筒を挿入した。このときロール巻き超電導円筒の肉厚は約1mmである。次にロール巻き超電導円筒の内側に内径100mm、肉厚1mmの第3の深絞り超電導円筒を入れ、さらにウレタンゴム円筒を挿入し上下からプレスして拡径し、第3の深絞り超電導円筒も一体化する。次に、厚さ約0.1mmのNi−Cr箔製の抵抗素子をポリイミド樹脂で封止し、銀でクラッドした銅線をリード線とした抵抗体を一体化した3つの複合円筒の内側に挿入する。次に、第4の深絞り超電導円筒も同様のプレス拡径方法で一体化することにより、ロール巻き超電導円筒及び加熱用抵抗体を内包する超電導複合円筒ができた。
【0028】
比較例は、4つの深絞り超電導円筒のみを一体化した超電導複合円筒に0.5mmφのマンガニン線14を図8のように5回巻いたものを用意した。これは予備実験1で記載した超電導複合円筒と同等のものである。ロール巻き超電導円筒及び加熱用抵抗体を内包する超電導複合円筒に磁場を円筒軸と平行に6テスラ印加してからゼロ磁場に戻して着磁することにより、円筒軸上の端部から50mm離れた軸上の点O(図5)の磁場を測定した。このときの磁場は0.88テスラであった。一方、比較例の超電導複合円筒の場合、円筒端部から50mm離れた軸上の箇所の磁場は実施例での比較例で示したのと同様に0.79テスラであった。
【0029】
次に、ロール巻き超電導円筒及び加熱用抵抗体を内包する超電導複合円筒及び比較円筒の両者を液体ヘリウム中に浸し、磁場を超電導複合円筒の軸と平行に6テスラ印加した状態で1Aの電流を流し、円筒の中に磁場が入り込む時間とヘリウムの蒸発量を比較した。ヘリウムの蒸発量は、通電を開始する前と通電を開始して超電導複合円筒内部に磁場が完全に入り込んだ後のヘリウムの残量の差異を測定した。ロール巻き超電導円筒及び抵抗体を内包した超電導複合円筒では、およそ90秒で磁場が円筒内部に侵入し始め、その後約30秒で6テスラの磁場がすべて円筒内部に入った。このときヘリウムの蒸発量は、ヘリウム液面の減少で1.7cmであった。一方、比較例のマンガニン線を巻いた超電導複合円筒では、円筒内部に磁場が入り込むまでに約140秒、その後6テスラの磁場が全て円筒内に入るまでに約40秒かかった。この時ヘリウム液面の減少は3.5cmで、本発明の場合の約2倍の蒸発量であった。
【0030】
[予備実験2]
次に、請求項2、請求項7に記載の本発明の「板の異方性」や「深絞り方向」に関する発明特定事項の効果についての検討結果について、以下に説明する。なお、ここでは、請求項1に記載の本発明の「ロール巻き超電導円筒」に関する発明特定事項、および請求項3に記載の本発明の「深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間の発熱体(抵抗体)」に関する発明特定事項は考慮していない。
30層の厚さ約10μmのNbTi合金層と29層の厚さ約10μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.1μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約100μmの銅であるトータル厚さ1mmの超電導多層材から、内径100〜110mm、高さ120mmの円筒を深絞りにより作製した。円筒の上部には、図4に示すように圧延方向と幅方向は凹部、圧延方向に対して45°の方向は凸部の耳が生じる。圧延方向がわかるように印を付け、本円筒の耳部分と底部分を切断し長さ100mmの深絞り超電導円筒とした。
【0031】
次に、図6のように本円筒を内径120mmの鋼鉄製の金型円筒の中に入れ、深絞り超電導円筒の中に筒状のウレタンゴムを入れて上下からプレスし、深絞り超電導円筒を拡径した。最初の深絞り超電導円筒と同じ大きさの深絞り超電導円筒を既に拡径した深絞り超電導円筒の中に底部があった側が上になるように入れた。このとき耳の位置が外側の位置とずれるように、圧延方向の印を45°回転した。内側の深絞り超電導円筒の中に同じくウレタンゴムを中に入れて上下からプレスし外側の円筒に内側の円筒を複合化した。この操作を8回繰り返し、8個の深絞り超電導円筒が一体化した超電導複合円筒を作製した。図9に示した超電導複合円筒の軸上中心からプラスマイナス50mmで軸から25mm離れたT0からT315までとB0からB315まで位置の磁場を超電導複合円筒の軸と平行な向きに直流の6.5テスラの磁場を印加した場合について測定した。
【0032】
比較例として、8個の深絞り超電導円筒の圧延方向の印を一致させた超電導複合円筒を作製し、円筒の同じ位置における磁場を測定した。表1に本発明の「板の異方性」や「深絞り方向」に関する発明特定事項の特徴を有する円筒(本段落および表1では、本発明と表記する。)を用いた場合と比較円筒を用いた場合の超電導複合円筒内の磁場を示した。T0からT315までの円筒内部の磁場は、比較例では、最大約20%も異なって大きく変動している上、TとBの位置でも最大5%も異なって大きく変動しているのに対し、本発明ではTとBの場所の違いを含めても約3%程度の差違に収まっていることが分かる。
【0033】
上述した方法で作製した超電導複合円筒を2個用意し、図7のように対向して配置することにより、超電導複合円筒同士が向かい合う空間に磁場を発生させた。円筒同士の距離は100mmとした。両円筒には10テスラの磁場を印加してゼロ磁場まで下げることにより、およそ超電導複合円筒の中心位置で5.6テスラの磁場をトラップした。このとき図7に示したP0からP315までの8点における磁場を測定した。図5において、Oは超電導複合円筒の端部から50mm離れた点であり、点Oと各P点の距離は25mmである。比較例として、8個の深絞り超電導円筒の圧延方向の印を一致させた超電導複合円筒を作製し、超電導複合円筒の同じ位置における磁場を測定した。表2に本発明の「板の異方性」や「深絞り方向」に関する発明特定事項の特徴を有する円筒(本段落および表2では、本発明と表記する。)の組み合わせを用いた場合の磁場を示した。本発明ではP1からP315までの磁場は1.84から1.86テスラと均一であるのに対し、比較例の超電導複合円筒を用いた場合、同様の箇所の磁場は1.73から1.98テスラと不均一であった。
【0034】
【表1】
Figure 0003715726
【0035】
【表2】
Figure 0003715726
【0036】
[実施例3]
次に、ロール巻き超電導円筒を内包させる効果と、「板の異方性」や「深絞り方向」に関する発明特定事項の効果との相乗効果についての検討結果について、以下に説明する。
30層の厚さ約10μmのNbTi合金層と29層の厚さ約10μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.1μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約100μmの銅であるトータル厚さ1mmの超電導多層材から、内径100〜110mm、高さ120mmの円筒を深絞りにより作製した。円筒の上部には、図4に示すように圧延方向と幅方向は凹部、圧延方向に対して45°の方向は凸部の耳が生じる。圧延方向がわかるように印を付け、本円筒の耳部分と底部分を切断し長さ100mmの深絞り超電導円筒とした。
【0037】
次に、図6のように本円筒を内径120mmの鋼鉄製の金型円筒の中に入れ、深絞り超電導円筒の中に筒状のウレタンゴムを入れて上下からプレスし、深絞り超電導円筒を拡径した。最初の円筒と同じ大きさの深絞り超電導円筒を既に拡径した円筒の中に底部があった側が上になるように入れた。このとき耳の位置が外側の位置とずれるように、圧延方向のしるしを45°回転した。内側の円筒の中に同じくウレタンゴムを中に入れて上下からプレスし外側の円筒に内側の円筒を複合化した。次に、30層の厚さ約1μmのNbTi合金層と29層の厚さ約1μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.01μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約10μmの銅であるトータル厚さ0.1mmの超電導多層板を幅100mm、長さおよそ3mの板に切り、一体化した2層複合円筒の内側にロール巻きにしてロール巻き超電導円筒を挿入する。このときのロール巻き超電導円筒の肉厚は約1mmである。
【0038】
次に、ロール巻き超電導円筒の内側に内径100mm、肉厚1mmの第3の深絞り超電導円筒を入れ、さらにウレタンゴム円筒を挿入し上下からプレスして拡径し、第3の深絞り超電導円筒も一体化する。第4、第5、第6の深絞り超電導円筒も同様の方法で一体化し、6つの深絞り超電導円筒に1つのロール巻き超電導円筒を内包した超電導複合円筒を作製した。本超電導複合円筒に磁場を円筒軸と平行に10テスラ印加してからゼロ磁場に戻すことにより円筒を磁化する複合円筒の端部から50mm離れた軸上の箇所の磁場を測定した。このときの磁場は1.31テスラであった。一方、ロール巻き超電導円筒を内包しない6個の深絞り超電導円筒を一体化した超電導複合円筒の場合、円筒端部から50mm離れた軸上の箇所の磁場は0.98テスラであった。
【0039】
また、予備実験2と同様に、超電導複合円筒の軸上中心からプラスマイナス50mmで軸から25mm離れた図9のT0からT315までとB0からB315まで位置の磁場を円筒の軸と平行な向きに直流の6.5テスラの磁場を印加した場合について調べた。比較例として、6個の深絞り超電導円筒の圧延方向のしるしを一致させた超電導複合円筒を作製し、円筒の同じ位置における磁気シールド特性を調べた。表3に本発明円筒を用いた場合と比較円筒を用いた場合の超電導複合円筒内の磁場を示した。T0からT315までの円筒内部の磁場は、比較例では、最大約20%も異なって大きく変動している上、TとBの位置でも最大5%も異なって大きく変動しているのに対し、本発明ではTとBの場所の違いを含めても約3%程度の差違に収まっていることが分かる。
【0040】
【表3】
Figure 0003715726
【0041】
[予備実験3]
次に、請求項2に記載の本発明の「板の異方性」や「深絞り方向」に関する発明特定事項、および請求項3に記載の本発明の「深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間の発熱体(抵抗体)」に関する発明特定事項の効果についての検討結果について、以下に説明する。なお、ここでは、請求項1に記載の本発明の「ロール巻き超電導円筒」に関する発明特定事項は考慮していない。
30層の厚さ約10μmのNbTi合金層と29層の厚さ約10μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.1μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約100μmの銅であるトータル厚さ1mmの超電導多層材から、内径100〜110mm、高さ120mmの円筒を深絞りにより作製した。円筒の上部には、図4に示すように圧延方向と幅方向は凹部、圧延方向に対して45°の方向は凸部の耳が生じる。圧延方向がわかるようにしるしを付け、本円筒の耳部分と底部分を切断し長さ100mmの深絞り超電導円筒とした。
【0042】
次に、図6のように本円筒を内径120mmの鋼鉄製の金型円筒の中に入れ、深絞り超電導円筒の中に筒状のウレタンゴムを入れて上下からプレスし、深絞り超電導円筒を拡径した。最初の深絞り超電導円筒と同じ大きさの深絞り超電導円筒を既に拡径した円筒の中に底部があった側が上になるように入れた。このとき耳の位置が外側の位置とずれるように、圧延方向のしるしを45°回転した。内側の円筒の中に同じくウレタンゴムを中に入れて上下からプレスし外側の円筒に内側の円筒を複合化した。
【0043】
次に、厚さ約0.1mmのNi−Cr箔製の抵抗素子をポリイミド樹脂で封止し、銀でクラッドした銅線をリード線とした抵抗体を一体化した2つの超電導複合円筒の内側に挿入する。挿入した抵抗体の内側に内径100mm、肉厚1mmの第3の深絞り超電導円筒を入れ、さらにウレタンゴム円筒を挿入し上下からプレスして拡径し、第3の円筒も一体化する。第4、5、6の深絞り超電導円筒も同様の方法で一体化することにより、図3に示すような抵抗体を内包する超電導複合円筒ができる。実施例3と同様に、円筒の軸上中心からプラスマイナス50mmで軸から25mm離れた図9のT0からT315までとB0からB315まで位置の磁場を円筒の軸と平行な向きに直流の6テスラの磁場を印加した場合について調べた。比較例として、6個の深絞り超電導円筒の圧延方向のしるしを一致させた超電導複合円筒を作製し、円筒の同じ位置における磁場を測定した。
【0044】
表4に本発明の「板の異方性」や「深絞り方向」に関する発明特定事項、および「深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間の発熱体(抵抗体)」に関する発明特定事項の特徴を有する円筒(本段落および表4では、本発明と表記する。)を用いた場合と比較円筒を用いた場合の超電導複合円筒内の磁場を示した。T0からT315までの円筒内部の磁場は、比較例では、最大約20%も異なって大きく変動している上、TとBの位置でも最大5%も異なって大きく変動しているのに対し、本発明ではTとBの場所の違いを含めても約3%程度の差違に収まっていることが分かる。一方、超電導複合円筒に内包した抵抗体に電流を流したところ予備実験1と同様に液体ヘリウムの蒸発量が少なく短時間で印加した磁場を超電導複合円筒内部に入れることができた。
【0045】
【表4】
Figure 0003715726
【0046】
[実施例4]
30層の厚さ約10μmのNbTi合金層と29層の厚さ約10μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.1μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約100μmの銅であるトータル厚さ1mmの超電導多層材から、内径100〜110mm、高さ120mmの円筒を深絞りにより作製した。円筒の上部には、図4に示すように圧延方向と幅方向は凹部、圧延方向に対して45°の方向は凸部の耳が生じる。圧延方向がわかるようにしるしを付け、本円筒の耳部分と底部分を切断し長さ100mmの深絞り超電導円筒とした。
【0047】
次に、図6のように本円筒を内径120mmの鋼鉄製の金型円筒の中に入れ、深絞り超電導円筒の中に筒状のウレタンゴムを入れて上下からプレスし、深絞り超電導円筒を拡径した。最初の深絞り超電導円筒と同じ大きさの深絞り超電導円筒を既に拡径した深絞り超電導円筒の中に底部があった側が上になるように入れた。このとき耳の位置が外側の位置とずれるように、圧延方向のしるしを45°回転した。内側の深絞り超電導円筒の中に同じくウレタンゴムを中に入れて上下からプレスし外側の円筒に内側の円筒を複合化した。
【0048】
次に、30層の厚さ約1μmのNbTi合金層と29層の厚さ約1μmの銅層が交互に積層され、NbTi合金層と銅層の間に約0.01μmのNb層を配し、かつ最外層が厚さ約10μmの銅であるトータル厚さ0.1mmの超電導多層板を幅100mm、長さおよそ3mの板に切り、一体化した2層の複合円筒の内側にロール巻きにしてロール巻き超電導円筒を挿入する。このときのロール巻き超電導円筒の肉厚は約1mmである。次にロール巻き超電導円筒の内側に内径100mm、肉厚1mmの第3の深絞り超電導円筒を入れ、さらにウレタンゴム円筒を挿入し上下からプレスして拡径し、第3の深絞り超電導円筒も一体化する。次に、厚さ約0.1mmのNi−Cr箔製の抵抗素子をポリイミド樹脂で封止し、銀でクラッドした銅線をリード線とした抵抗体を一体化した3つの複合円筒の内側に挿入する。次に、第4の深絞り超電導円筒も同様のプレス拡径方法で一体化することにより、ロール巻き超電導円筒及び加熱用抵抗体を内包する超電導複合円筒ができる。
【0049】
本超電導複合円筒に円筒軸と平行に6テスラ印加してからゼロ磁場に戻すことにより円筒を磁化し、超電導複合円筒の端部から50mm離れた軸上の箇所の磁場を測定した。このときの磁場は0.88テスラであった。一方、ロール巻き超電導円筒を内包しない4個の深絞り超電導円筒を一体化した超電導複合円筒の場合、円筒端部から50mm離れた軸上の箇所の磁場は0.79テスラであり、実施例1での比較例の結果と同じであった。また、本超電導複合円筒に3テスラ印加した場合の液体ヘリウムの蒸発量、磁場の着磁時間は、予備実験1の場合と同様で、磁場の均一度は予備実験2の場合と同様であった。すなわち磁場の位置的な低下が少なく、液体ヘリウムの蒸発量の少ない効率的な着磁が可能で、しかも発生磁場の等価な場所における均一性の高い超電導複合円筒が得られた。
【0050】
【発明の効果】
以上本発明によれば、深絞り超電導円筒と深絞り超電導円筒の間に前記超電導多層板をロール状に丸めて作製したロール巻き超電導円筒を挿入し一体化した超電導複合円筒を用いることにより、超電導複合円筒からやや離れた箇所の磁場の位置的低下を抑えることが可能となった。また、深絞り超電導円筒を、隣り合う円筒同士が板であったときの圧延方向がそれぞれ45°+90°×N(N:整数)だけ異なるように複合一体化、かつ深絞り超電導円筒の深絞り方向がそれぞれ逆向きになるように複合一体化することにより、圧延及び深絞り加工により作製した深絞り超電導円筒の磁気シールド特性や超電導マグネットの発生磁場の場所によるバラツキを抑えることが可能となった。さらに、深絞り超電導円筒と深絞り超電導円筒の間に発熱体として抵抗の高い金属板または、抵抗の高い金属の線を挿入した超電導複合円筒を用いることにより、磁場の閉じこめを効率的に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インターベンショナル型(インターベンショナル型)MRIの概念図。
【図2】 複合した深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間にロール巻きにした超電導多層板(ロール巻き超電導円筒)を挿入し一体化した超電導複合円筒を示す模式図。
【図3】 Ni−Cr合金で作製した抵抗体を複合した深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に挿入し一体化した超電導複合円筒を示す模式図。
【図4】 超電導多層板を深絞り加工して作製した円筒の耳の発生位置を示す模式図。
【図5】 4個の深絞り超電導円筒を耳の凸凹部が交互になるように複合一体化した超電導複合円筒の模式図。
【図6】 深絞り超電導円筒に円筒形状のウレタンゴムを挿入、プレスして拡径する様子を示す模式図。
【図7】 2個の超電導複合円筒を対向させたインターベンショナル型円筒マグネットの配置と磁場の測定箇所を示す模式図。
【図8】 超電導複合円筒にマンガニン線を巻いた様子を示す模式図。
【図9】 超電導複合円筒内部の磁場測定箇所を示す模式図。
【符号の説明】
1 冷却容器
2 NbTi/Nb/Cu超電導多層円筒(深絞り超電導円筒)
3 人体
4 ロール巻き超電導多層板(円筒)
5 抵抗発熱体
6 深絞り超電導円筒耳(凸部)
7 深絞り超電導円筒耳(凹部)
8 圧延方向
9 幅方向
10 超電導複合円筒
11 ウレタンゴム
12 金型円筒
13 プレス機
14 マンガニン線

Claims (7)

  1. 少なくとも1層のNbTi合金と高導電率金属が交互に積層され、かつ前記NbTi合金と前記高導電率金属の間にNbまたはTaのバリヤー層が存在する超電導多層板を深絞り成形して得られる円筒容器から切り出された円筒(深絞り超電導円筒)が少なくとも2個以上同軸状に嵌合して複合一体化された超電導複合円筒であって、該超電導複合円筒を構成する前記深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に、前記超電導多層板をロール状に丸めて作製したロール巻き超電導円筒を一層以上内包することを特徴とする、超電導複合円筒。
  2. 隣り合う前記深絞り超電導円筒同士が板であったときの圧延方向がそれぞれ45°+90°×N(N:整数)だけ異なり、かつ隣り合う深絞り超電導円筒の深絞り方向がそれぞれ逆向きで複合化されていることを特徴とする、請求項1に記載の超電導複合円筒。
  3. 前記複合一体化された超電導複合円筒を構成する深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に、電気抵抗の高い金属板または、電気抵抗の高い金属の線を電気的絶縁材で被覆した発熱体として内包することを特徴とする、請求項1または2に記載の超電導複合円筒。
  4. 請求項1または2に記載の超電導複合円筒を2個一組とし、該超電導複合円筒を誘導着磁する機構を有することを特徴とする、超電導マグネット。
  5. 請求項3に記載の超電導複合円筒を2個一組とし、該超電導複合円筒を誘導着磁する機構と、前記発熱体への通電を入切する機構を有することを特徴とする、超電導マグネット。
  6. 少なくとも1層のNbTi合金と高導電率金属が交互に積層され、かつ前記NbTi合金と前記高導電率金属の間にNbまたはTaのバリヤー層が存在する超電導多層板を深絞り成形して得られる円筒容器から切り出された円筒(深絞り超電導円筒)が少なくとも2個以上同軸状に嵌合され複合一体化した超電導複合円筒の製造方法において、前記深絞り超電導円筒の円筒と円筒の間に、前記超電導多層板をロール状に丸めて作製したロール巻き超電導円筒を一層以上内包させることを特徴とする、超電導複合円筒の製造方法。
  7. 隣り合う前記深絞り超電導円筒同士が板であったときの圧延方向がそれぞれ45°+90°×N(N:整数)だけ異なり、かつ隣り合う深絞り超電導円筒の深絞り方向をそれぞれ逆向きにして複合化することを特徴とする、請求項6に記載の超電導複合円筒の製造方法。
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