JP3714485B2 - TiN薄膜の形成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、半導体等の電子デバイスにおいて、異種材料間の拡散を防止するために用いられるTiN薄膜の形成方法に係り、特にデバイスの特性や歩留まりに重大な影響を及ぼすプロセス異物の発生を抑制する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は例えば「スパッタリング現象」(1985年東京大学出版会発行)に記載された従来のスパッタリング装置の構成を示す概略図であり、TiN薄膜はこの種スパッタリング装置によって形成されている。
図において、1は内部に冷却水が流れる第1の電極で、電源2により負の高電圧が印加される。3は第1の電極1に保持されたTi材でなるターゲットである。
【0003】
4は第1の電極1と対向する位置に配設された第2の電極、5はこの第2の電極4上に載置された基板、6はターゲット3と基板4との間を遮るように配置されたシャッタ、7は第1の電極1およびターゲット3を囲繞するように配設されたシールド板、8はこれら1〜7を収容する成膜室としての容器、9はこの容器8内に放電ガスとしてのArおよびNの混合ガスを導入するためのガス導入管、10は一端が容器8に連結され、他端が図示されない真空ポンプに接続された排気管である。
【0004】
次いで、上記のように構成されたスパッタリング装置によって行われる従来のTiN薄膜の形成方法について説明する。
まず、真空ポンプを作動させ排気管10を介して容器8内をほぼ10-6Torr以下の高真空に排気した後、ガス導入管9からN2ガスを含むArガスを放電用ガスとして内部に導入し、10-3Torr程度に調整する。そして、この状態で両電極1、4間、すなわちターゲット3と基板5との間に、電源2により所定の高電圧を印加し、容器8内に導入されたガスを電離させてプラズマを発生させる。
【0005】
これによりイオン化した放電ガス(Ar+、N2+、N+など)は、陰極であるターゲット3に引き寄せられて加速しターゲット3に衝突する。そして、このイオンの衝突によりターゲット3の表面のTi原子は弾き飛ばされる。この現象がスパッタであり、弾き飛ばされたTi原子はターゲット3の表面と対向する位置に配設された基板5の方向に飛んでいき、基板5の表面に付着・堆積する。又、イオン化されず電気的に中性なガスも容器8内を分子運動により飛び回り、ターゲット3や基板5に衝突する。そして、この飛び回っているガスの内、N2ガスはターゲット3の表面ならびに基板5の表面に付着、堆積されたTiを窒化してTiN薄膜を形成する。
【0006】
次に、このTiN薄膜の成膜の過程を図7について説明する。図7は放電ガスのガス流量と成膜速度との関係を示す特性曲線図である。
図において、ガス流量の他に成膜速度に影響を及ぼす因子である放電パワー、N2ガスおよびArガスの混合比は一定にしている。まず、ガス流量を低流量領域から徐々に増加していくと、図に示すようにある臨界点の流量まではTi薄膜のみが形成されTiN薄膜の形成は見られず、又、Tiのスパッタ率が高いことを反映して成膜速度も大きい。
【0007】
ところが、ある臨界点をガス流量が越えると、急激に成膜速度が低下し、Ti薄膜の形成は停止されてTiN薄膜の形成が始まる。したがって、従来はそれぞれのスパッタリング装置に応じてこの臨界点を見極め、これよりもガス流量の大きな領域でTiN薄膜を形成するようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のTiN薄膜の形成方法は以上のようになされているので、図8に示すように、ターゲット3から弾き飛ばされたTi原子は、放電ガスと衝突して散乱されるため、基板5以外の例えば容器8の内壁やシールド7等にも付着する。
そして、これら付着されたもののうち、ターゲット3から見て蔭になる部分(裏側)に付着した堆積物は、幾度も散乱されて到達した粒子から形成されており付着力が弱いため、剥離して異物となり基板5の表面に飛来して付着することにより膜質を損ない、又、半導体等の微細パターンにこの異物が付着すると、回路のショートや断線を来す等して、製品としての信頼性を低下させるという問題点があった。
【0009】
この発明は上記のような問題点を解消するために成されたもので、異物の発生を抑制して、製品の信頼性の向上を図ることが可能なTiN薄膜の形成方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1に係るTiN薄膜の形成方法は、放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、ターゲット表面を所定の速度で窒化する第1の工程と、第1の工程における窒化速度より遅く且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望の窒化速度で基板上に成膜を行う第2の工程とを包含するものである。
【0011】
又、この発明の請求項2に係るTiN薄膜の形成方法は、放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、放電ガスの所定のガス流量より大きいガス流量でターゲットの表面を窒化させる第1の工程と、所定のガス流量より小さく且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望のガス流量で基板上に成膜を行う第2の工程とを包含するものである。
【0012】
又、この発明の請求項3に係るTiN薄膜の形成方法は、請求項2において、所定のガス流量の値を予め設定しておくようにしたものである。
【0013】
又、この発明の請求項4に係るTiN薄膜の形成方法は、請求項2において、排気ポンプ側のゲートバルブの開度調節によりガス流量を制御するようにしたものである。
【0014】
又、この発明の請求項5に係るTiN薄膜の形成方法は、放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、ターゲットの表面を窒化し得る最大の投入パワーより小さい所定の投入パワーでターゲットの表面を窒化させる第1の工程と、所定の投入パワーより大きく且つ最大の投入パワーより小さい所望の投入パワーで基板上に成膜を行う第2の工程とを包含するものである。
【0015】
又、この発明の請求項6に係るTiN薄膜の形成方法は、請求項5において、所定の投入パワーの値を予め設定しておくようにしたものである。
【0016】
又、この発明の請求項7に係るTiN薄膜の形成方法は、放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、放電ガスのArに対するN2の混合比をターゲットの表面を窒化し得る最小の混合比より高い所定の混合比でターゲットの表面を窒化させる第1の工程と、所定の混合比より低く且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望の混合比で基板上に成膜を行う第2の工程とを包含するものである。
【0017】
又、この発明の請求項8に係るTiN薄膜の形成方法は、請求項7において、所定の混合比の値を予め設定しておくようにしたものである。
【0018】
【作用】
この発明の請求項1におけるTiN薄膜の形成方法は、第1の工程によりターゲット表面を所定の速度で窒化するとともに、第2の工程により第1の工程における窒化速度よりも遅く、且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望の窒化速度で基板上に成膜を行うことにより、放電ガス圧を低くして異物の発生を抑制する。
【0019】
又、この発明の請求項2におけるTiN薄膜の形成方法は、第1の工程によりターゲット表面を放電ガスの所定のガス流量より大きなガス流量で窒化するとともに、第2の工程により所定のガス流量より小さく且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望のガス流量で基板上に成膜を行うことにより、放電ガス圧を低くして異物の発生を抑制する。
【0020】
又、この発明の請求項3におけるTiN薄膜の形成方法は、第1の工程において、予め設定された所定のガス流量より大きなガス流量でターゲット表面を窒化させる。
【0021】
又、この発明の請求項4におけるTiN薄膜の形成方法は、排気ポンプ側のゲートバルブの開度を調節して放電ガスのガス流量を制御する。
【0022】
又、この発明の請求項5におけるTiN薄膜の形成方法は、第1の工程によりターゲット表面を、このターゲット表面を窒化し得る最大の投入パワーより小さい所定の投入パワーで窒化するとともに、第2の工程により所定の投入パワーより大きく且つ最大の投入パワーより小さい所望の投入パワーで基板上に成膜を行うことにより、放電ガス圧を低くして異物の発生を抑制する。
【0023】
又、この発明の請求項6におけるTiN薄膜の形成方法は、第1の工程において、予め設定された所定の投入パワーでターゲット表面を窒化させる。
【0024】
又、この発明の請求項7におけるTiN薄膜の形成方法は、第1の工程によりターゲット表面を、放電ガスのArに対するN2の混合比をターゲットの表面を窒化し得る最小の混合比より高い所定の混合比で窒化するとともに、第2の工程により所定の混合比より低く且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望の混合比で基板上に成膜を行うことにより、放電ガス圧を低くして異物の発生を抑制する。
【0025】
又、この発明の請求項8におけるTiN薄膜の形成方法は、第1の工程において、予め設定された所定の混合比でターゲットの表面を窒化させる。
【0026】
【実施例】
実施例1.
以下、この発明の実施例を図について説明する。図1はN2ガスをArガスに混合して放電ガスとする反応性スパッタリングにおいて、Ti、TiN薄膜の形成状態を放電ガスのガス流量Qをパラメータとして実験により求めた状態図である。
図において、成膜速度が大きい領域ではTi薄膜が形成され、成膜速度が小さい領域ではTiN薄膜が形成される。この成膜速度とガス流量Qとの関係においては、図から明らかなように、成膜速度はヒステリシスを持つという著しい特徴が実験事実として認められる。
【0027】
即ち、放電パワーおよび放電ガスの混合比N2:Arを一定として放電ガスのガス流量Qを順次増加させると、最初は、基板上にはTi薄膜のみが形成される。さらにガス流量Qを増加させると、ある臨界のガス流量(図中Q1で示す)を境界として、図中曲線Aで示すように急激に成膜速度が低下(約1/3)し、この時点からTiN薄膜が形成され始める。すでに述べたように、従来のTiN薄膜の形成方法は、この領域でTiN薄膜を形成しているのである。
【0028】
ところで、一旦TiN薄膜が形成され始めた後に、今度は逆にガス流量Qを順次低下させると、臨界点(ガス流量Q1の位置)を過ぎてもTiN薄膜を安定に形成できる領域が存在する。そして、さらにひき続きガス流量Qを低下させると、前記臨界点よりも小さいある臨界点(ガス流量Q2の位置)を境界として、図中曲線Bで示すように急激に成膜速度が増大し同時にTi薄膜が形成され始める。すなわち、ガス流量の増減に対して成膜速度は、一本の曲線上を往復せずに両曲線A、B上を移動しヒステリシスを描く。
【0029】
次に、上記のようにガス流量Qの増減に対して、成膜速度がヒステリシスを有している理由を詳しく説明する。
まず、ターゲットの表面におけるスパッタエロージョン速度と窒化速度との大小を比較し、窒化速度がスパッタエロージョン速度より大きい場合に、基板上にTiN薄膜が形成されると考える。ここで、スパッタエロージョン速度は、放電パワーに比例しパワーが大きくなればこの速度も大きくなる。なお、ガス流量Qの変化にはあまり影響を受けないので、ガス流量Qに対しては一定と考えても良い。
一方、窒化速度は、ターゲットを叩くN2ガスの個数に比例するから窒素分圧Pに比例する。そして、この窒素分圧Pはガス流量Qを排気速度Aで除したものとして与えられる。
【0030】
さて、この発明は排気速度Aを詳しく考察した点にその特徴がある。つまり、蒸着膜の持つガス吸蔵能力に着目し、ポンプの排気能力にこのガス吸蔵能力を加えた実効の排気速度を考慮したことである。そして、このガス吸蔵能力はTiN薄膜に比べてTi薄膜の方が著しく大きい。これはTiがサブリメーションポンプのガス吸蔵板として実用に供されていることからも理解される。よって、Ti薄膜、TiN薄膜の吸着排気速度をATi、ATiNとすると、ATi>ATiNと表される。又、ポンプの排気速度はAPと表しここでは一定と考える。
【0031】
したがって、図1においてガス流量Qを増加させたときに、Ti成膜領域からTiN成膜領域に切り替わる点(ガス流量Q1に対応)までは、成膜室の内壁に付着したTiが有効なポンプとして働く。そして、この状態におけるターゲット表面の窒化速度は、この時の窒素分圧P1に比例し、この窒素分圧P1は下記式(1)で与えられる。
P1=Q1/(AP+ATi)・・・・・(1)
一方、図1においてTiN成膜領域を出発点としてガス流量Qを減少させたときに、TiN成膜領域からTi成膜領域に切り替わる点(ガス流量Q2に対応)における窒素分圧P2は下記式(2)で与えられる。
P2=Q2/(AP+ATiN)・・・・・(2)
【0032】
さて、Ti成膜領域とTiN成膜領域との切り替えが起る臨界点(ガス流量Q1、Q2に対応)では、放電パワーおよびガス混合比N2:Arを一定とした場合、表面が窒化されたターゲットのスパッタエロージョン速度はある一定値をとるから、これと等しくなる窒化速度もまたある一定値となる。そして、この一定の窒化速度は当然ある一定の窒素分圧P0のみ、すなわち上記式1および式2におけるP1、P2が等しい値で実現されるべきである。ところが、上述のように蒸着膜の吸着排気速度を加味した実効の排気速度にAP+ATi>AP+ATiNの大小関係があるため、P1=P2であるためにはQ1、Q2が異なる値をとることになり、ヒステリシスを持つことが理解できる。
【0033】
したがって、実施例1においては、第1の工程で従来と同様に所定の速度(Q1以上の流量)でターゲット表面を窒化し、その後第2の工程で、第1の工程における窒化速度よりも遅く、且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望の窒化速度(Q2、Q1間の流量)で基板上に成膜を行う。すなわち、このようにすれば、TiN薄膜の形成を維持しつつスパッタ時の圧力を低くすることができるので、図5に示すようにガスによるTi粒子の回り込みを防止することができ、付着力の小さな堆積物が少なくなり異物の発生を抑制することが可能になる。
【0034】
実施例2.
図2はこの発明の実施例2におけるTiN薄膜の形成方法を説明するためのもので、TiN成膜のガス流量依存性を示す図である。
実施例2において、予め実験等により求めてターゲット表面を窒化し得る所定のガス流量を設定しておき、第1の工程でこの予め設定された所定のガス流量より大きいガス流量でターゲット表面を窒化し、その後第2の工程で、第1の工程におけるガス流量よりも小さく、且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の、図中▲2▼で示す所望のガス流量で基板上に成膜を行う。
【0035】
すなわち、このようにすれば、上記実施例1と同様にTiN薄膜の形成を維持しつつスパッタ時の圧力を低くすることができるので、図5に示すようにガスによるTi粒子の回り込みを防止することができ、付着力の小さな堆積物が少なくなり異物の発生を抑制することが可能であることは勿論のこと、ターゲット表面を窒化し得る所定のガス流量を予め設定するようにしているので、第1の工程におけるガス流量の制御が容易となり、作業時間の短縮を図ることができる。
【0036】
実施例3.
尚、上記実施例2では、ガス流量の制御については述べなかったが、排気ポンプ側のゲートバルブの開度を調節することによって行っても良く、この場合は、第1の工程におけるゲートバルブの開度は小さく、第2の工程においては第1の工程における開度より大きくすれば良く、上記実施例2におけると同様の効果を発揮し得ることは言うまでもない。
【0037】
実施例4.
又、上記実施例2では、所定のガス流量を実験等で求めて予め設定しておく場合について説明したが、ガス流量を漸次増加させて、Ti成膜領域からTiN成膜領域に切り替わった時点以降のあるガス流量を、所定のガス流量と決めても良く、この発明の趣旨を逸脱するものではない。
【0038】
実施例5.
図3はこの発明の実施例5におけるTiN薄膜の形成方法を説明するためのもので、TiN成膜の放電パワー依存性を示す図である。
図において、N2:Arの混合比は一定としてある。実施例1でも述べたように、ターゲットのスパッタエロージョン速度は放電パワーに比例する。よって成膜速度のヒステリシスは、放電パワーが大きいと図中実線で示すように右方向に移り、放電パワーが小さいと図中破線で示すように左方向に移る。
【0039】
そこで、実施例5においては、ターゲット表面を窒化し得る最大の投入パワー(図中▲1▼で示す)より小さい値の所定の投入パワー(図中▲2▼で示す)を、実験等によって予め設定しておき、第1の工程で図中破線で示すように、この所定の投入パワーでターゲット表面を窒化させ、その後第2の工程で、この所定の投入パワーより大きな値で、且つ上記最大の投入パワーより小さい値の所望の投入パワー(図中▲3▼で示す)で基板上に成膜を行う。
【0040】
すなわち、このようにすれば、上記実施例1と同様にTiN薄膜の形成を維持しつつスパッタ時の圧力を低くすることができるので、図5に示すようにガスによるTi粒子の回り込みを防止することができ、付着力の小さな堆積物が少なくなり異物の発生を抑制することが可能であることは勿論のこと、ターゲット表面を窒化する所定の投入パワーを予め設定するようにしているので、第1の工程における投入パワーの制御が容易となり、作業時間の短縮を図ることができる。
【0041】
実施例6.
又、上記実施例5では、所定の投入パワーを実験等で求めて予め設定しておく場合について説明したが、投入パワーを漸次増加させて、Ti成膜領域からTiN成膜領域に切り替わり得る最大の投入パワーより小さいある値の投入パワーを、所定の投入パワーと決めても良く、この発明の趣旨を逸脱するものではない。
【0042】
実施例7.
図4はこの発明の実施例7におけるTiN薄膜の形成方法を説明するためのもので、TiN成膜のN2ガス依存性を示す図である。
図において、放電パワーは一定としてある。実施例1でも述べたように、ターゲットの窒化速度はターゲットに衝突する窒素ガスの個数、すなわち窒素分圧に比例する。よって成膜速度のヒステリシスは、窒素分圧すなわちArガスに対するN2ガスの混合比が高いと図中破線で示すように左方向に移り、逆にN2ガスの混合比が低いと図中実線で示すように右方向に移る。
【0043】
そこで、実施例5においては、放電ガスのArに対するN2の混合比を、ターゲット表面を窒化し得る最小の混合比(図中▲1▼で示す)より高い所定の混合比(図中▲2▼で示す)を、実験等によって求めて予め設定しておき、第1の工程で図中破線で示すように、この所定の混合比でターゲット表面を窒化させ、その後第2の工程で、この所定の混合比より低く、且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の、所望の混合比(図中▲3▼で示す)で基板上に成膜する。
【0044】
すなわち、このようにすれば、上記実施例1と同様にTiN薄膜の形成を維持しつつスパッタ時の圧力を低くすることができるので、図5に示すようにガスによるTi粒子の回り込みを防止することができ、付着力の小さな堆積物が少なくなり異物の発生を抑制することが可能であることは勿論のこと、ターゲット表面を窒化するN2の所定の混合比を予め設定するようにしているので、第1の工程における混合比の制御が容易となり、作業時間の短縮を図ることができる。
【0045】
実施例8.
又、上記実施例7では、N2の所定の混合比を実験等で求めて予め設定しておく場合について説明したが、N2の混合比を漸次低下させて、Ti成膜領域からTiN成膜領域に切り替わり得る最小の混合比より高いある比率の混合比を、所定の混合比と決めても良く、この発明の趣旨を逸脱するものではない。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、この発明の請求項1によれば、放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、ターゲット表面を所定の速度で窒化する第1の工程と、第1の工程における窒化速度より遅く且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望の窒化速度で基板上に成膜を行う第2の工程とを包含するようにしたので、異物の発生を抑制して、製品の信頼性の向上を図ることが可能なTiN薄膜の形成方法を提供することができる。
【0047】
又、この発明の請求項2によれば、放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、放電ガスの所定のガス流量より大きいガス流量でターゲットの表面を窒化させる第1の工程と、所定のガス流量より小さく且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望のガス流量で基板上に成膜を行う第2の工程とを包含するようにしたので、異物の発生を抑制して、製品の信頼性の向上を図ることが可能なTiN薄膜の形成方法を提供することができる。
【0048】
又、この発明の請求項3によれば、請求項2において、所定のガス流量を予め設定しておくようにしたので、異物の発生を抑制して、製品の信頼性の向上を図ることが可能であることは勿論のこと、作業時間の短縮を図ることが可能なTiN薄膜の形成方法を提供することができる。
【0049】
又、この発明の請求項4によれば、請求項2において、排気ポンプ側のゲートバルブの開度調節によりガス流量を制御するようにしたので、異物の発生を抑制して、製品の信頼性の向上を図ることが可能であることは勿論のこと、作業時間の短縮を図ることが可能なTiN薄膜の形成方法を提供することができる。
【0050】
又、この発明の請求項5によれば、放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、ターゲットの表面を窒化し得る最大の投入パワーより小さい所定の投入パワーでターゲットの表面を窒化させる第1の工程と、所定の投入パワーより大きく且つ最大の投入パワーより小さい所望の投入パワーで基板上に成膜を行う第2の工程とを包含するようにしたので、異物の発生を抑制して、製品の信頼性の向上を図ることが可能なTiN薄膜の形成方法を提供することができる。
【0051】
又、この発明の請求項6によれば、請求項5において、所定の投入パワーの値を予め設定しておくようにしているので、異物の発生を抑制して、製品の信頼性の向上を図ることが可能であることは勿論のこと、作業時間の短縮を図ることが可能なTiN薄膜の形成方法を提供することができる。
【0052】
又、この発明の請求項7によれば、放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、放電ガスのArに対するN2の混合比をターゲットの表面を窒化し得る最小の混合比より高い所定の混合比でターゲットの表面を窒化させる第1の工程と、所定の混合比より低く且つ第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望の混合比で基板上に成膜を行う第2の工程とを包含するようにしたので、異物の発生を抑制して、製品の信頼性の向上を図ることが可能なTiN薄膜の形成方法を提供することができる。
【0053】
又、この発明の請求項8によれば、請求項7において、所定の混合比の値を予め設定しておくようにしたので、異物の発生を抑制して、製品の信頼性の向上を図ることが可能であることは勿論のこと、作業時間の短縮を図ることが可能なTiN薄膜の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 N2ガスをArガスに混合して放電ガスとする反応性スパッタリングにおいて、Ti、TiN薄膜の形成状態を放電ガスのガス流量Qをパラメータとして実験により求めた状態図である。
【図2】 この発明の実施例2におけるTiN薄膜の形成方法を説明するためのTiN成膜のガス流量依存性を示す図である。
【図3】 この発明の実施例3におけるTiN薄膜の形成方法を説明するためのTiN成膜の放電パワー依存性を示す図である。
【図4】 この発明の実施例7におけるTiN薄膜の形成方法を説明するためのTiN成膜のN2ガス依存性を示す図である。
【図5】 この発明におけるTiN薄膜の形成方法でスパッタリングした場合のTi原子の散乱状態を示す模式図である。
【図6】 従来のスパッタリング装置の構成を示す概略図である。
【図7】 放電ガスのガス流量と成膜速度との関係を示す特性曲線図である。
【図8】 従来のスパッタリング装置でスパッタリングした場合のTi原子の散乱状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 第1の電極、2 電源、3 ターゲット、4 第2の電極、5 基板、
6 シャッタ、7 シールド板、8 容器、9 ガス導入管、10 排気管。
Claims (8)
- 放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、ターゲット表面を所定の速度で窒化する第1の工程と、上記第1の工程における窒化速度より遅く且つ上記第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望の窒化速度で上記基板上に成膜を行う第2の工程とを包含することを特徴とするTiN薄膜の形成方法。
- 放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、上記放電ガスの所定のガス流量より大きいガス流量で上記ターゲットの表面を窒化させる第1の工程と、上記所定のガス流量より小さく且つ上記第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望のガス流量で上記基板上に成膜を行う第2の工程とを包含することを特徴とするTiN薄膜の形成方法。
- 所定のガス流量の値は予め設定されていることを特徴とする請求項2記載のTiN薄膜の形成方法。
- 排気ポンプ側のゲートバルブの開度調節によりガス流量を制御するようにしたことを特徴とする請求項2記載のTiN薄膜の形成方法。
- 放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、上記ターゲットの表面を窒化し得る最大の投入パワーより小さい所定の投入パワーで上記ターゲットの表面を窒化させる第1の工程と、上記所定の投入パワーより大きく且つ上記最大の投入パワーより小さい所望の投入パワーで上記基板上に成膜を行う第2の工程とを包含することを特徴とするTiN薄膜の形成方法。
- 所定の投入パワーの値は予め設定されていることを特徴とする請求項5記載のTiN薄膜の形成方法。
- 放電ガスとしてArおよびN2、ターゲットとしてTiをそれぞれ用い基板上にTiN薄膜を形成するTiN薄膜の形成方法において、上記放電ガスのArに対するN2の混合比を上記ターゲットの表面を窒化し得る最小の混合比より高い所定の混合比で上記ターゲットの表面を窒化させる第1の工程と、上記所定の混合比より低く且つ上記第1の工程で形成されたターゲット表面の窒化層を維持し得る範囲内の所望の混合比で上記基板上に成膜を行う第2の工程とを包含することを特徴とするTiN薄膜の形成方法。
- 所定の混合比の値は予め設定されていることを特徴とする請求項7記載のTiN薄膜の形成方法。
Priority Applications (1)
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JP28649894A JP3714485B2 (ja) | 1994-11-21 | 1994-11-21 | TiN薄膜の形成方法 |
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JP5938301B2 (ja) * | 2012-08-27 | 2016-06-22 | ルネサスエレクトロニクス株式会社 | 半導体装置の製造方法 |
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- 1994-11-21 JP JP28649894A patent/JP3714485B2/ja not_active Expired - Lifetime
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